JP3612791B2 - リコート性及び耐汚染性の向上方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規にして有用なるリコート性および耐汚染性の向上方法に関する。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、それぞれ、分子中に、塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(以下、塩基性窒素原子含有含フッ素ビニル共重合体ともいう。)と、分子中に、加水分解性シリル基を有する化合物(以下、加水分解性シリル基含有化合物ともいう。)および/または分子中に、シラノール基を有する化合物(以下、シラノール基含有化合物ともいう。)と、有機溶剤とを、必須の成分とすることから成り、
【0003】
一層、好ましくは、これら上記の加水分解性シリル基またはシラノール基の縮合用触媒をも含有することから成る、長期に亘る屋外での使用にあっても、非常に汚染されにくく、しかも、皮膜を重ね設けた場合の、とりわけ、皮膜間の密着性などにも優れるという、特に、フィルム、接着剤またはシーリング剤などとして、極めて実用性の高い樹脂組成物を用いるリコート性および耐汚染性の向上方法に関する。
【0004】
【従来の技術】
これまでにも、含フッ素ビニル共重合体を、いわゆるベース樹脂成分とする組成物は、よく知られているし、しかも、斯かる組成物は、常温で、容易に硬化ないしは乾燥せしめるということによって、耐候性に優れる硬化物を与えるということもまた、よく知られており、塗料用途を中心に、実用に供されているというものである。
【0005】
ところが、このようにして得られる乾燥塗膜は、どうしても、帯電性が高いものであるために、とくに、屋外で以て使用されるときには、空気中の煤煙や砂塵などの、いわゆる汚染物質が、塗装物の表面に付着し易く、その結果として、この塗装物が汚染され、ひいては、美観の低下を招来するという、重大なる問題点を有している。
【0006】
こうした問題点に対して、本発明者らは、すでに、親水性基を有する含フッ素共重合体をベース樹脂成分とし、さらに、有機シリケート化合物と、有機溶剤とをも含有することから成る樹脂組成物が、屋外で以て、長期に亘って使用した場合においても、非常に汚染されにくいという、極めて実用性の高い皮膜を与えることを見出している。
【0007】
しかしながら、こうした、親水基を有する含フッ素共重合体の場合には、それを得るために使用する、いわゆる親水性基含有単量体が、一般に、他の単量体に比して、頗る、高価であるという問題がある。
【0008】
加えて、それらの多くは、水溶液の形態で以て市販されているという処から、そのままでは、有機溶剤可溶型フッ素樹脂の調製には、使用が頗る困難である。さらに、従来型の、親水性基を、一切、含有しない形のフッ素樹脂を調製するという場合に比して、重合反応中に、ゲル化を起こし易いなどのような、いわゆる調製上における問題点を抱えている。
【0009】
一方、親水性基を含有しない、従来型のフッ素樹脂に、有機シリケート化合物を配合して、塗膜の汚染性を改善化するという試みもまた、行われてはいる。このような方法によっても、従来型のフッ素樹脂を使用する場合に比べると、なるほど、塗膜の汚染性こそは改良されるというものの、塗料として必要不可欠なる性能の一つでもある、塗膜を塗り重ねた場合の、塗膜間の密着性、つまり、いわゆるリコート性が全く無いという、致命的なる欠点を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、耐候性ならびにリコート性などをはじめとする、従来型のフッ素樹脂塗膜が、本来、有している諸性能を、何ら、失うことなく、加えて、屋外において長期に亘って使用をする場合においても、頗る、汚染されにくいという、極めて実用性の高い樹脂組成物を用いることによるリコート性および耐汚染性の向上方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
こうした課題は、分子中に、塩基性窒素原子を有し、さらに必要に応じて、硬化反応性部位をも有する、含フッ素ビニル共重合体という特定のベース樹脂成分と、加水分解性シリル基含有化合物および/またはシラノール基含有化合物と、有機溶剤とを含有することから成り、
【0012】
さらに好ましくは、これらの、それぞれ、加水分解性シリル基またはシラノール基の縮合用触媒をも含有するということから成る、斬新なる樹脂組成物の使用によってはじめて、見事に解決されるということである。
【0013】
すなわち、本発明は、基本的には、それぞれ、分子中に塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)とを、必須の成分として含有することから成る樹脂組成物を用いて、
【0014】
あるいは、それぞれ、分子中に、塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)と、上記した加水分解性シリル基またはシラノール基の縮合用触媒(E)とを、必須の成分として含有すること成る樹脂組成物を基材に塗布することによるリコート性および耐汚染性の向上方法を提供しようとするものであるし、
【0015】
さらには、分子中に塩基性窒素原子を有し、しかも、硬化反応性部位をも有する含フッ素ビニル共重合体(A−2)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)と、上記硬化反応性部位と反応し得る硬化剤(F)とを、必須の成分として含有することから成る樹脂組成物を基材に塗布することによるリコート性および耐汚染性の向上方法も提供しようとするものである。
【0016】
そして、具体的には、共重合体の重量を基準として規定される、該共重合体中の塩基性窒素原子の含有割合が、アミン価で以て、0.4〜25KOHミリ・グラム/共重合体グラム(以下、mg−KOH/g−共重合体とも記載する。)なる範囲内の塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)とを、必須の構成成分として含有する樹脂組成物を用いるか、
【0017】
あるいは此のアミン価で以て、0.4〜25mg−KOH/g−共重合体なる範囲内の塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)と、上記した加水分解性シリル基またはシラノール基の縮合用触媒(E)とを、必須の構成成分として含有する樹脂組成物を用いることから成り、
【0018】
さらには、ベース樹脂成分たる含フッ素ビニル共重合体(A)が、硬化反応性部位をも併せ有するという場合には、上記したような、それぞれ、ベース樹脂成分たる、こうした、分子中に、それぞれ、塩基性窒素原子と硬化反応性部位とを併有する含フッ素ビニル共重合体(A−2)と、化合物(B)および/または化合物(C)と、有機溶剤(D)と、縮合用触媒(E)という、必須成分に加えて、さらに、当該硬化反応性部位と反応し得る硬化剤(F)をも、必須の構成成分として含有する樹脂組成物を用いることから成る、
【0019】
とりわけ、耐候性ならびにリコート性などをはじめとする、従来型のフッ素樹脂塗膜の有する諸性能を失うことなく、しかも、屋外において長期に使用した場合においても、非常に汚染されにくいという、極めて実用性の高い塗膜を与える樹脂組成物を基材に塗布することによるリコート性および耐汚染性の向上方法を提供しようとするものである。
【0020】
《構成》
以下に、本発明を、一層、詳細に説明することにする。
【0021】
すなわち、まず、前記した含フッ素ビニル共重合体(A)なるベース樹脂成分を調製するには、つまり、それそれ、分子中に、塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)、あるいは分子中に、塩基性窒素原子を有し、さらに、硬化反応性部位をも併有する含フッ素ビニル共重合体(A−2)を調製するには、公知慣用の種々の方法が適用できるが、
【0022】
就中、塩基性窒素原子含有単量体類と、含フッ素ビニル単量体類とを、さらに必要に応じて、硬化反応性部位含有単量体類をも、さらには、必要に応じて、その他の共重合性ビニル単量体類をも用いて、これらの各単量体類を、有機溶剤中で以て、ラジカル共重合せしめるという方法が、最も簡便であるので、特に推奨される。
【0023】
その際に用いられる、該塩基性窒素原子含有単量体類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、N−tert−ブチルアミノエチルビニルエーテル、N−ジブチルアミノエチルビニルエーテル、N−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、N−ジエチルアミノプロピルビニルエーテル、
【0024】
N−エチルピペリジニルエチルビニルエーテル、N−ジメチルアミノブチルビニルエーテル、N−ジエチルアミノブチルビニルエーテル、N−tert−ブチルアミノブチルビニルエーテル、N−ジブチルアミノブチルビニルエーテル、N−エチルピペリジニルブチルビニルエーテル、
【0025】
N−ジメチルアミノペンチルアミノビニルエーテル、N−ジエチルアミノペンチルビニルエーテル、N−ジメチルアミノヘキシルアミノビニルエーテル、N−ジエチルアミノヘキシルビニルエーテル、6−N−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシルビニルエーテルもしくは6−N−ジエチルアミノ−2−エチルヘキシルビニルエーテルの如き、各種のアミノ基含有ビニルエーテル類;
【0026】
N−ジメチルアミノエチルアリルエーテル、N−ジエチルアミノエチルアリルエーテル、N−tert−ブチルアミノエチルアリルエーテル、N−ジブチルアミノエチルアリルエーテル、N−ジメチルアミノプロピルアリルエーテル、N−ジエチルアミノプロピルアリルエーテル、N−エチルピペリジニルエチルアリルエーテル、N−ジメチルアミノブチルアリルエーテル、N−ジエチルアミノブチルアリルエーテル、N−tert−ブチルアミノブチルアリルエーテル、N−ジブチルアミノブチルアリルエーテル、
【0027】
N−エチルピペリジニルブチルアリルエーテル、N−ジメチルアミノペンチルアミノアリルエーテル、N−ジエチルアミノペンチルアミノアリルエーテル、N−ジメチルアミノヘキシルアミノアリルエーテル、N−ジエチルアミノヘキシルアリルエーテル、6−N−ジメチルアミノ−2−ヘキシルアリルエーテルもしくは6−N−ジエチルアミノ−2−ヘキシルアリルエーテルの如き、各種のアミノ基含有アリルエーテル類;
【0028】
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはN−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの如き、各種のアミノ基含有アミド系不飽和単量体類;
【0029】
あるいはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;またはtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアミノ基含有単量体類などである。
【0030】
此の塩基性窒素原子含有ビニル単量体類の使用量としては、得られる含フッ素ビニル共重合体(A)のアミン価が、0.4〜25mg−KOH/g−共重合体(以下、此の単位を省略することもある。)という程度となるような範囲内が適切である。
【0031】
アミン価が約0.4未満というような場合には、どうしても、本発明の目指す効果が、充分には発現され得なくなり易いし、一方、アミン価が約25を超えて余りに高くなるというような場合には、当該含フッ素ビニル共重合体(A)が着色し易くなったり、塗装時の作業性が低下するようになり易いので、いずれの場合も好ましくない。
【0032】
さらに、当該含フッ素ビニル共重合体(A)にとっての、必要欠くべからざる成分である、前記した含フッ素ビニル単量体類とは、分子中に、フッ素原子を含有し、しかも、重合性不飽和二重結合(以下、不飽和二重結合ともいう。)をも併せ有するというような形の化合物を指称するものであって、好ましくは、斯かる含フッ素ビニル単量体類が重合した場合において、次の一般式(I)
【0033】
【化1】
【0034】
[ただし、式中のW、X、YおよびZは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい、水素原子もしくはハロゲン原子、アルキル基またはハロゲン化アルキル基を表わすものとし、しかも、これらのW、X、YまたはZのうちの少な
くとも一つは、フッ素原子であるものとする。]
【0035】
で示されるフルオロオレフィン構造単位を、主鎖中に、導入し得るというような化合物を指称するものである。
【0036】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくはヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフッ素含有−α−オレフィン類;
【0037】
あるいはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルの如き、各種のパーフルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテル類などであるし、
【0038】
さらには、各種の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル類(ただし、此のアルキル基の炭素数としては、1〜18なる範囲内であるものとする。)などであるが、就中、耐候性などの上からは、上掲の一般式(I)で示されるフルオロオレフィン構造単位が、当該含フッ素ビニル共重合体(A)の分子中に、共重合反応を通して導入されるという処から、
【0039】
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンよりなる群から選ばれる、少なくとも1種の含フッ素ビニル単量体類の使用が望ましい。
【0040】
斯かる含フッ素ビニル単量体類の使用量としては、全単量体中に、20〜70重量%程度の範囲内が適切である。20重量%未満の場合には、どうしても、得られる塗膜の耐候性などが劣るというようになり易いし、一方、70重量%を超えて余りに多くなる場合には、どうしても、含フッ素ビニル共重合体の、溶剤類に対する溶解性などが低下するというようになり易いので、いずれの場合も好ましくない。
【0041】
これら上掲の含フッ素ビニル単量体類は、単独使用でも2種以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0042】
さらに必要に応じて、当該含フッ素ビニル共重合体(A)中に導入される硬化反応性部位とは、たとえば、前記した硬化剤(F)のような、いわゆる硬化剤成分との反応に与る、いわゆる反応性官能基(以下、官能基ともいう。)または自己硬化性の官能基などを指称するというものである。
【0043】
それらのうち、前者の硬化剤反応性官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、水酸基、アミノ基、酸アミド基または不飽和二重結合などであるし、後者の自己硬化性の官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、N−メチロールアクリルアミド基もしくはアルキルエーテル化N−メチロールアクリルアミド基または不飽和二重結合などである。
【0044】
硬化反応性部位含有単量体類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、該硬化反応性部位が水酸基であるというような場合には、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;これら上掲のような各種のビニルエーテル類と、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;
【0045】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル類;
【0046】
これら上掲のような各種のアリルエーテル類と、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種の水酸基含有アクリレート類;
【0047】
これら上掲のような各種の水酸基含有アクリレート類と、ε−カプロラクトンとの付加反応生成物などであるし、そして、該硬化反応性部位がアミノ基ないしはアミド基であるというような場合には、上記した塩基性窒素原子含有ビニル単量体類などが使用できる。
【0048】
当該硬化反応性部位含有単量体類の使用量としては、全単量体中に、1〜40重量%程度の範囲内が適切である。1重量%未満であるという場合には、どうしても、硬化物の機械的強度などが劣るというようになり易いし、一方、40重量%を超えて余りに多くなるという場合には、どうしても、硬化物の耐候性などが劣るというようになり易いので、いずれの場合も好ましくない。
【0049】
さらに、斯かる硬化反応性部位の一つとして、不飽和二重結合を導入せしめる方法としては、たとえば、水酸基含有の当該含フッ素ビニル共重合体中の水酸基に対して、無水マレイン酸などのような、各種の不飽和酸無水物類を開環付加反応せしめるという方法や、イソシアネートエチル(メタ)アクリレートなどのような、各種のイソシアネート基含有ビニル系単量体類を、同水酸基に対して付加反応せしめるという方法などがある。
【0050】
こうした方法によって不飽和二重結合の導入された、当該含フッ素ビニル共重合体(A)は、紫外線や光などの、いわゆる活性エネルギー線や、ラジカル発生剤類や熱などを利用しての、それ自体の自己硬化反応が可能となるし、あるいは其の際に、エチレングリコール−ジアクリレートまたはトリメチロールプロパントリアクリレートなどのような、各種の多官能性不飽和化合物を、反応性希釈剤成分ないしは硬化剤成分として使用することが出来る。
【0051】
さらにまた、以上に掲げられたような、種々の単量体類のほかに、必要に応じて用いられる、その他の共重合性ビニル単量体類としては、勿論、以上に掲げられた、それぞれ、塩基性窒素原子含有単量体類と、含フッ素ビニル単量体類と、さらに必要に応じて、硬化反応性部位含有単量体類と共重合性を有するようなものであれば、何らの支障もなく、使用することが出来るが、
【0052】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルもしくはフェネチルエチルビニルエーテルの如き、各種の(置換)アルキル−ないしはアラルキルビニルエーテル類;
【0053】
またはシクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニルもしくはステアリン酸ビニル、炭素数が9なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニル、炭素数が10なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニルもしくは炭素数が11なる分岐状(分枝状)脂肪族カルボン酸ビニルの如き、各種の脂肪族カルボン酸ビニルエステル類;
【0054】
あるいは安息香酸ビニルもしくはp−tert−ブチル安息香酸ビニルの如き、環状構造を有する、各種のカルボン酸ビニルエステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートもしくはシクロヘキシルアクリレートの如き、各種のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートもしくはベンジルメタクリレートの如き、各種のメタクリル酸エステル類;
【0055】
エチレン、プロピレンもしくはブテン−1の如き、各種のα−オレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンの如き、フルオロオレフィン類を除く、各種のハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンもしくはビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル化合物;
【0056】
ビニル−2,2−ジメチルプロパノエート、ビニル−2,2−ジメチルブタノエート、ビニル−2,2−ジメチルペンタノエート、ビニル−2,2−ジメチルヘキサノエート、ビニル−2−エチル−2−メチルブタノエート、ビニル−2−エチル−2−メチルペンタノエートもしくはビニル−3−クロロ−2,2−ジメチルプロパノエート、
【0057】
あるいは(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸もしくはフマル酸の如き、各種のカルボキシル基含有単量体類;または其れらのうちのイタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸の如き、各種の多価カルボキシル基含有単量体類と、炭素数が1〜18なるモノアルキルアルコール類とのモノエステル類(ハーフ・エステル類)などである。
【0058】
以上に掲げられたような、種々の単量体類から、当該含フッ素ビニル共重合体(A)を調製するには、公知慣用の、いずれの重合法法をも適用し得るが、溶液ラジカル重合法によるのが、最も簡便である。
【0059】
その際に用いられる溶剤類としては、当該含フッ素ビニル共重合体(A)を溶解し得るようなものであれば、いずれをも適用し得るが、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンもしくはオクタンの如き、各種の炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールもしくはエチレングリコールモノメチルエーテルの如き、各種のアルコール類;
【0060】
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルもしくは酢酸アミルの如き、各種のエステル類;またはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンもしくはシクロヘキサノンの如き、各種のケトン類などであり、これらは単独使用でも2種以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0061】
斯かる溶剤類と、さらに、アゾ系や過酸化物系などのような、公知慣用の種々のラジカル重合開始剤類とを用いて、常法により、重合反応を行えばよく、その際に、さらに必要に応じて、分子量調節剤類として、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸またはα−メチルスチレン・ダイマーなどのような、公知慣用の種々の連鎖移動剤類をも用いることが出来る。
【0062】
このようにして得られる当該含フッ素ビニル共重合体(A)が、それ自体で、硬化反応性部位を有するものであるという場合において使用される、該硬化反応性部位と反応し得る、前記した硬化剤(F)というものは、該硬化反応性部位の種類に応じた、種々の硬化剤類の中から、適宜、選択して使用することが、充分なる効果を発現するというためにも、重要なことである。
【0063】
此の硬化反応性部位に対して、組み合わせて用いられる、当該硬化剤(F)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、此の硬化反応性部位が、それぞれ、水酸基、アミノ基またはアミド基などのような、いわゆる活性水素原子を有する基であるというような場合には、ポリイソシアネート化合物系硬化剤、アミノプラスト系硬化剤、ポリエポキシ化合物あるいは酸無水物などである。
【0064】
当該硬化剤(F)として、上記ポリイソシアネート化合物を使用するという場合には、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き、各種の環状脂肪族ジイソシアネート類(脂環式ジイソシアネート類);
【0065】
またはトリレンジイソシアネートもしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類などのような、種々の有機ジイソシアネート類が、特に代表的なものであるし、
【0066】
さらには、これら上掲の有機ジイソシアネート類と、多価アルコール類、低分子量ポリエステル樹脂類(ポリエステルポリオール類)または水などとの付加反応生成物;あるいは上掲されたような種々の有機ジイソシアネート類同志の重合体類(イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物をも含む。)や、イソシアネート・ビウレット体などが、特に代表的なものである。
【0067】
こうしたポリイソシアネート化合物のうちでも、特に代表的なる市販品の例のみを挙げるにとどめれば、「バーノック D−750、D−800、DN−950、DN−970、DN−980、DN−981もしくは15−455」[大日本インキ化学工業(株)製の商品名];
【0068】
「デスモジュール L、N、HLもしくはLL」(ドイツ国バイエル社製の商品名);「タケネート D−102、D−202、D−110NもしくはD−123N」[武田薬品工業(株)製の商品名];「コロネート L、HL、EHもしくは203」[日本ポリウレタン工業(株)製の商品名]または「デュラネート
24A−90EX」[旭化成工業(株)製の商品名]などである。
【0069】
また、ブロック・ポリイソシアネート化合物とは、たとえば、上掲されたような種々の有機ジイソシアネート類を、公知慣用の種々のブロック化剤類を用いてブロック化せしめるということによって得られるような化合物を指称するものであるが、それらのうちでも特に代表的なる市販品のみを例示するにとどめれば、
【0070】
「バーノック D−550」または「バーノック B7−887−60もしくはB9−282」[大日本インキ化学工業(株)製の商品名];「タケネート D−815−N」[武田薬品工業(株)製の商品名];「アディトール(ADDITOL) VXL−80」[ヘキスト合成(株)製の商品名];あるいは「コロネート 2507」[日本ポリウレタン工業(株)製の商品名]などである。
【0071】
さらに、上記したアミノプラストとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メラミン、尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ステログアナミンまたはスピログアナミンの如き、各種のアミノ基含有化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはグリオキザールの如き、各種のアルデヒド系化合物とを、
【0072】
常法により、反応せしめて得られる縮合物を、あるいは此等の各縮合物を、モノアルコール類で以てエーテル化せしめることによって得られるようなものなどであるが、通常、塗料用などとして用いられるようなものであれば、いずれも使用し得ることは、勿論である。
【0073】
それらのうちでも、C1 〜C4 なるモノアルコール類で以て、部分的に、あるいは完全にエーテル化せしめた形のものの使用が望ましく、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ヘキサメチルエーテル化メチロールメラミン、ヘキサブチルエーテル化メチロールメラミン、メチルブチル混合エーテル化メチロールメラミン、メチルエーテル化メチロールメラミン、ブチルエーテル化メチロールメラミンまたはイソブチルエーテル化メチロールメラミン;あるいは其れらの縮合物などである。
【0074】
さらにまた、当該硬化剤(F)として使用し得るものには、ポリエポキシ化合物や、酸無水物なども挙げられるが、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ビスフェノールAグリシジルエーテルなどで以て代表されるような、公知慣用の種々のエポキシ樹脂類;
【0075】
またはグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンジグリシジルエーテルの如き、各種のポリエポキシ化合物などであるし、無水ピロメリット酸の如き、一分子中に2個以上の酸無水物基を有する、各種の酸無水物類などである。
【0076】
さらに、本発明においては、前述した含フッ素ビニル共重合体(A)に、加水分解性シリル基含有化合物(B)および/またはシラノール基含有化合物(C)を加えた形で以て使用するということが、充分なる効果を発現する上で以て、重要なことである。
【0077】
上記した加水分解性シリル基含有化合物(B)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、テトラメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、テトラ(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラベンジルオキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、
【0078】
ジフェニルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランもしくはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのような、各種の(置換)アルコキシシラン類;
【0079】
またはテトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアセトキシシラン、テトラプロピオニルオキシシランもしくはフェニルトリプロピオニルオキシシランなどのような、各種の(置換)アシロキシシラン類;
【0080】
あるいは上掲した(置換)アルコキシシラン類の部分加水分解縮合物などであるし、さらには、テトラクロルシラン、フェニルトリクロルシラン、テトラブロモシランもしくはベンジルトリブロモシランの如き、各種のハロシラン類などである。
【0081】
一方、上記したシラノール基含有化合物(C)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メチルトリクロルシラン、フェニルトリクロルシラン、エチルトリクロルシラン、ジメチルジクロルシランもしくはジフェニルジクロルシランの如き、各種のハロシラン類を完全に加水分解せしめることによって得られるような形の、低分子量のシラノール化合物;
【0082】
あるいは此等のシラノール化合物を、さらに、脱水縮合せしめることによって得られるような形の、シラノール基を有するポリシロキサン・オリゴマー類;または上掲したような各種のアルコキシシラン類の如き化合物を加水分解縮合せしめることによって得られるような形の、シラノール基を有するシリコーン樹脂などをはじめ、
【0083】
さらには、「トーレシリコーン SH−6018」[東レシリコーン(株)製の商品名]などで以て代表されるような、環状シロキサン構造を有する、各種のシラノール化合物などである。
【0084】
次いで、前記した有機溶剤(D)についての説明をすることにするが、本発明の樹脂組成物を、たとえば、塗料やフィルムなどのように、膜状で以て実用に供するというような場合には、特に、成膜性などの面から、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類またはエステル類などのような、種々の有機溶剤の使用が望ましい。
【0085】
このような有機溶剤類を、本発明に用いる樹脂組成物の必須構成成分として用いるという意義は、たとえば、此の樹脂組成物を、常時、均一なる状態に置いておき、そして、容易に、実用に供し得るというようにするためと、所望の諸性能を、充分に発揮せしめるというためとにある。
【0086】
当該有機溶剤(D)としては、勿論、重合反応時において用いられるようなものは、いずれをも使用し得るが、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンもしくはオクタンの如き、各種の脂肪族−、環状脂肪族−(脂環式−)ないしは芳香族炭化水素類;
【0087】
酢酸エチル、酢酸n−ブチルもしくは酢酸アミルの如き、各種のエステル類;またはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンもしくはシクロヘキサノンの如き、各種のケトン類などである。
【0088】
また、本発明の樹脂組成物中における、それぞれ、含フッ素ビニル共重合体(A)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)との配合割合としては、まず、此の含フッ素ビニル共重合体(A)が、硬化反応性部位をも有するというような場合には、含フッ素ビニル共重合体(A)の一つである、含フッ素ビニル共重合体(A−2)の固形分100重量部に対して、前記硬化剤(F)が、0.1〜200重量部程度の範囲内が適切である。
【0089】
次いで、加水分解性シリル基含有化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)の配合割合としては、それぞれ、含フッ素ビニル共重合体(A)成分の固形分100重量部に対して、あるいは此の含フッ素ビニル共重合体(A)が、硬化反応性部位をも有するという場合には、
【0090】
含フッ素ビニル共重合体(A−2)と、前記硬化剤(F)成分との固形分の総量100重量部に対して、0.5〜500重量部程度の範囲内が適切であり、好ましくは、1〜200重量部程度の範囲内が適切である。
【0091】
さらに、有機溶剤(D)の配合割合としては、含フッ素ビニル共重合体(A)成分と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)成分との固形分の総量100重量部に対して、10〜2,000重量部程度の範囲内が適切である。
【0092】
上述した、それぞれ、(A)〜(D)なる諸成分を必須の構成成分として含有し、さらに、含フッ素ビニル共重合体(A)が、硬化反応性部位をも併せ有するというような場合には、此の硬化反応性部位と反応し得る硬化剤(F)をも含有するという形の樹脂組成物を用いれば、本発明の効果が発現されるが、さらに好ましくは、加水分解性シリル基と、シラノール基との両基にとっての縮合用触媒(E)をも併せて使用するということが望ましい。
【0093】
その際の、当該加水分解性シリル基またはシラノール基の縮合用触媒(E)の使用量としては、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)成分の固形分の総量100重量部に対して、0.001〜10重量部程度を、配合せしめるというようにすればよい。
【0094】
当該加水分解性シリル基およびシラノール基の縮合用触媒(E)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、tert−ブチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、イソホロンジアミン、イミダゾール、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくはナトリウムメチラートの如き、各種の塩基性化合物類;
【0095】
テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、オクチル酸錫、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジ−n−ブチル錫ジアセテート、ジ−n−ブチル錫ジオクトエート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートもしくはジ−n−ブチル錫マレートの如き、各種の含金属化合物類;
【0096】
またはp−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸などをはじめ、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの燐酸エステルまたはモノアルキル亜燐酸の如き、各種の酸性化合物などである。
【0097】
本発明に用いる樹脂組成物には、さらに必要に応じて、有機系ないしは無機系の顔料類をはじめ、流動調整剤類、色分かれ防止剤類、紫外線吸収剤類、光安定剤類または酸化防止剤類などのような、公知慣用の、種々の添加剤類をも添加せしめることが出来るし
【0098】
さらには、ニトロセルロースもしくはセルロースアセテートブチレートの如き、各種の繊維素誘導体類;あるいはケトン樹脂、石油樹脂、アクリル共重合樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンまたは塩化ゴムの如き、各種の樹脂類をも添加せしめることが出来る。
【0099】
就中、アクリル樹脂は、相溶性の面で以て、非常に適しているというものである。
【0100】
かくして得られる、本発明に用いる樹脂組成物は、特に、自動車上塗り用、自動車補修用、木工用、建設用、建築外装用、建材用、ガラス用または各種のプラスチックス素材ないしは製品用、あるいはアルミニウム、ステンレス、クロムめっきなどのような種々の金属素材ないしは製品用の塗料などとしても、さらには、成型材料用、各種のフィルムないしはシート用などとしても、またはシーリング剤用などとしても、あるいはまた、接着剤用などとしても、広範に利用し適用することが出来るというものである。
【0101】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明することにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるというようなものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0102】
参考例1[含フッ素ビニル共重合体(A)の調製例]
内容積が3リットルなるステンレス製のオートクレーブに、キシレンの1,000部と、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル)セバケートの10部と、tert−ブチル−パーオキシピバレートの15部と、エチルビニルエーテルの187部と、
【0103】
2−ヒドロキシエチルビニルエーテルの113部と、「ベオバ−9」〔オランダ国シェル社製の、炭素数が9なる分岐状(分枝状)脂肪酸のビニルエステルの商品名〕の145部と、ジメチルアミノエチルメタクリレートの5部とを仕込み、窒素ガスを吹き込んで、オートクレーブ内の空気を置換した。
【0104】
さらに、液化採取したクロロトリフルオロエチレンの550部を仕込んで密封してから、このオートクレーブを60℃に保温し、15時間のあいだ反応を行うことによって、不揮発分が50.3%で、かつ、数平均分子量が16,200なる目的共重合体の溶液を得た。以下、これを共重合体(A−1)と略記する。
【0105】
此の共重合体(A−1)の調製に当たって使用した単量体類の種類と、それらの使用量とを、第1表に示す。また、此処において得られた共重合体(A−1)の諸特性値をも、同表に示す。
【0106】
参考例2〜7(同上)
使用すべき単量体類の種類とその使用量、ならびに重合開始剤の使用量を、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様にして、それぞれ、共重合体(A−2)〜共重合体(A−7)なる、都合、6種類の含フッ素ビニル共重合体(A)の溶液を得た。
【0107】
此処において得られた、それぞれの含フッ素ビニル共重合体の諸特性値をも、同表に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
《第1表の脚註》
各原料の使用量は、いずれも、重量部を意味するものとする。
【0110】
「CTFE」……………クロロトリフルオロエチレンの略記
「HFP」………………ヘキサフルオロプロピレンの略記
【0111】
「DMABVE」………ジメチルアミノブチルビニルエーテルの略記
【0112】
「DMAEMA」………ジメチルアミノエチルメタクリレートの略記
「DEAEA」…………ジエチルアミノエチルアクリレートの略記
「TBAPMA」………tert−ブチルアミノプロピルメタクリレートの略記
【0113】
「EVE」………………エチルビニルエーテルの略記
「CHVE」……………シクロヘキシルビニルエーテルの略記
【0114】
「VAc」………………酢酸ビニルの略記
「VV−9」……………「ベオバ−9」(オランダ国シェル社製の、炭素数が9なる分岐状脂肪酸のビニルエステルの商品名)の略記
【0115】
「HEVE」……………2−ヒドロキシエチルビニルエーテルの略記
「HBVE」……………4−ヒドロキシエチルビニルエーテルの略記
【0116】
「CrA」………………クロトン酸の略記
【0117】
「TBPV」……………tert−ブチルパーオキシピバレートの略記
【0118】
【表2】
【0119】
《第1表の脚註》
アミン価………共重合体についてのアミン価を表わす値であって、その単位は、「mg−KOH/g−共重合体」である。
【0120】
酸 価………共重合体についての酸価を表わす値であって、その単位は、「mg−KOH/g−共重合体」である。
【0121】
水酸基価………共重合体についての水酸基価を表わす値であって、その単位は、「mg−KOH/g−共重合体」である。
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
実施例1〜6ならびに比較例1〜5
各参考例で得られた、それぞれの共重合体溶液の640部と、「タイペーク
CR−95」[石原産業(株)製の、酸化チタン系白色顔料の商品名]の260部と、キシレン/酢酸n−ブチル=50/50(容量比)なる混合溶剤の67部とを配合せしめ、
【0125】
バッチ式SGミルを用いて、粒度が5ミクロン(μm)以下となるまで、分散せしめることによって塗料化し、さらに、第2表に示すような、それぞれ、硬化剤成分と、加水分解性シリル基含有化合物および/またはシラノール基含有化合物とを、さらに必要により、加水分解−縮合用触媒をも配合せしめて、各種の塗料を得た。
【0126】
次いで、それぞれの塗料を、トルエン/キシレン/「ソルベッソ 100」/酢酸n−ブチル=40/20/10/30(容量比)なる混合溶剤(シンナー)で以て、スプレー粘度に調整してから、厚さが0.8mmなるアルミ板上に、膜厚が30〜40μmとなるように、スプレー塗装せしめた。
【0127】
なお、上記の「ソルベッソ 100」は、アメリカ国エクソン社製の、芳香族炭化水素系溶剤混合物の商品名である。
【0128】
しかるのち、それぞれの塗装板を、室温において、7日間のあいだ乾燥せしめることによって、各種の性能評価試験に供した。それらの結果は、まとめて、第2表に示す。
【0129】
ただし、実施例2および4ならびに比較例2および4の場合に限っては、塗装してから、室温に、10分間のあいだ放置して乾燥せしめ、しかるのち、170℃で、20分間のあいだ、オーブン中で焼き付けを行って、各種の性能評価試験に供した。
【0130】
【表5】
【0131】
《第2表の脚註》
各原料の使用量は、いずれも、重量部を意味するものとする。
【0132】
「DN−950」……「バーノック DN−950」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、イソシアネート・プレポリマーの商品名である。
【0133】
「D−550」………「バーノック D−550」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、ブロック・ポリイソシアネート化合物の商品名である。
【0134】
「L−117」………「スーパーベッカミン L−117−60」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、ブチルエーテル化メラミン樹脂の商品名である。
【0135】
「40」………………「シリケート40」の略記であって、アメリカ国コルコート社製の、テトラエチルシリケートのモノマー、ダイマー、トリマーおよびテトラマーの混合物の商品名である。
【0136】
「SH−6018」…「トーレシリコーン SH−6018」の略記であって、東レシリコーン(株)製の、環状シロキサン構造を有するシラノール基含有化合物の商品名である。
【0137】
【表6】
【0138】
《第2表の脚註》
「汚染性」……………水の1リットルと、JIS Z−8901に定められた当該汚染性試験用の12種類の混在ダスト[(財)日本粉体工業技術協会品]の5グラムとからなる懸濁水中に、それぞれの試験片を、10分間のあいだ、浸漬してから引き上げたのち、2分間のあいだ、シャワーで以て水洗せしめるという操作を、1サイクルとして、所定のサイクル数だけ、繰り返して試験を行い、しかるのち、試験片を乾燥して、未試験の試験片との色差(△E)を測定し、こうした色差値を以て、目的とするデータとした。此の値が大きいほど、汚れの度合いが顕著であるということを意味している。
【0139】
「リコート性」………前述した通りの室温乾燥(室温下に7日間)または焼き付け(170℃において20分間)により形成した塗膜上に、同じ塗料を塗布し、これと同様の方法で、室温乾燥または焼き付けを行ったのち、その塗膜に、ナイフで以て、1mm間隔で、10個×10個の碁盤目を作り、セロファン・テープで以て、いわゆる剥離試験を行い、塗膜として残存している碁盤目の数を計測して、その残存目数を以て表示した。
【0140】
「促進耐候性」………スガ試験機(株)製のサンシャイン・ウェザオメーターによる、3,000時間経過後の光沢保持率(%)で以て評価し、その値で以て表示した。
【0141】
【表7】
【0142】
《第2表の脚註》
「51」………………「メチルシリケート51」の略記であって、三菱化成工業(株)製の、テトラメチルシリケートのダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマーおよびヘプタマーの混合物の商品名である。
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
【表10】
【0146】
【表11】
【0147】
【表12】
【0148】
第2表に示した結果からも、すでに、明らかなように、本発明に係る樹脂組成物は、いずれも、耐汚染性ならびに耐候性などに優れるというものであるし、しかも、とりわけ、リコート性にも優れる、斬新なる塗膜を与えるという、極めて実用性の高いものであることが知れよう。
【0149】
換言するならば、本発明に用いる樹脂組成物は、叙上のような諸性能のバランス化が確実に果たされているものである、と言い得よう。
【0150】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明の方法を用いるならば、とりわけ、耐候性ならびにリコート性などをはじめとする、従来型のフッ素樹脂から形成される皮膜ないしは被膜が、本来的に有している諸性能を、何ら、損なうことなく、しかも、屋外で以て、長期に亘って使用した場合においても、非常に汚染されにくいという、極めて実用性の高い皮膜ないしは被膜を得ることが出来る。
【0151】
したがって、本発明の方法は、特に、塗料用などとして、極めて実用性の高いものである。また、本発明に用いる樹脂組成物は、接着剤などとしても、あるいはシーリング剤などとしても、さらには、フィルムなどとしても、有利に、利用し適用することが出来るという、大なる適用効果を兼ね備えている、というものである。
Claims (6)
- 分子中に、塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)とを、必須の成分として含有する樹脂組成物を基材に塗布することを特徴とするリコート性および耐汚染性の向上方法。
- 分子中に、塩基性窒素原子を有する含フッ素ビニル共重合体(A−1)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)と、上記した加水分解性シリル基またはシラノール基の縮合用触媒(E)とを、必須の成分として含有する樹脂組成物を基材に塗布することを特徴とするリコート性および耐汚染性の向上方法。
- 前記した含フッ素ビニル共重合体(A−1)が、此の共重合体の重量を基準とする、該共重合体中の塩基性窒素原子の含有割合として、アミン価で以て、0.4〜25KOHミリ・グラム/共重合体グラムなる範囲内の塩基性窒素原子を有するものである、請求項1または2に記載のリコート性および耐汚染性の向上方法。
- 分子中に、塩基性窒素原子を有し、しかも、硬化反応性部位をも有する含フッ素ビニル共重合体(A−2)と、加水分解性シリル基を有する化合物(B)および/またはシラノール基を有する化合物(C)と、有機溶剤(D)と、上記硬化反応性部位と反応し得る硬化剤(F)とを、必須の成分として含有する樹脂組成物を基材に塗布することを特徴とするリコート性および耐汚染性の向上方法。
- 前記した含フッ素ビニル共重合体(A−2)が、此の共重合体の重量を基準とする、該共重合体中の塩基性窒素原子の含有割合として、アミン価で以て、0.4〜25KOHミリ・グラム/共重合体グラムなる範囲内の塩基性窒素原子を有するものである、請求項4に記載のリコート性および耐汚染性の向上方法。
- 前記した硬化反応性部位が水酸基である、請求項5に記載のリコート性および耐汚染性の向上方法。
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