JP3611324B2 - マグネトロンプラズマ用磁場発生装置 - Google Patents

マグネトロンプラズマ用磁場発生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマグネトロンプラズマ用磁場発生装置に関し、特に、半導体ウエハ等の被処理基板にエッチング等のプラズマ処理を施すマグネトロンプラズマ処理装置に用いる磁場発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、半導体装置の製造分野において、処理室内にプラズマを発生させ、このプラズマを処理室内に配置した被処理基板例えば半導体ウエハ等に作用させて、所定の処理、例えば、エッチング、成膜等を行うプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置において、良好な処理を行うためには、プラズマの状態をプラズマ処理に適した良好な状態に維持する必要がある。このため、従来からプラズマを制御するための磁場を形成する磁場発生装置を具備したマグネトロンプラズマ処理装置が多い。
【0004】
このような磁場発生装置としては、図7に示すように、被処理面を上方に向けて水平に配置した半導体ウエハ等の被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成するマルチポール型の磁場発生装置が知られている。この装置は、処理室の外部に複数の永久磁石2をその磁極が交互に変わるようにリング状に配置し、半導体ウエハ4の上方には磁場を形成せず(或いは弱い磁場状態にして)、ウエハ4の縁部の周囲にマルチポール磁場を形成してプラズマを閉じ込めて被処理基板上でプラズマ処理を行うものである。マルチポール磁石(磁場発生装置)には、電力を消費する電磁石を用いる例は少なく、永久磁石を使用するのが普通であり、永久磁石を用いた場合にはマルチポール磁場自体を制御するという提案はこれまで存在しなかった。また、永久磁石を用いた場合においても,図8に示すように、リング状の磁性体片を用いているため、磁場強度を適切に調整することはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者等の研究によれば、プラズマ処理、例えば、プラズマエッチング等においては、被処理基板面上のエッチング速度はマルチポール磁場の強度に依存することが判明した。マルチポール磁場の強度は、磁場発生装置を電磁石で構成すれば磁場強度の調整は容易に行うことができるが、上述のように、電磁石を用いると消費電力が増大するという問題が生じるし、電磁石を用いた装置であっても、マルチポール磁場自体を制御するという提案はこれまで存在しなかった。
【0006】
本発明は、永久磁石を用いたマルチポール磁石(磁場発生装置)において、エッチングなどの処理に応じて適切なマルチポール磁場の強度を設定することによって良好なプラズマ処理を容易に実現できるマグネトロンプラズマ用磁場発生装置を提供するものである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明に係る実施の形態は、永久磁石からなる複数の磁石セグメントをリング状に配置し、処理室内の被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成するマグネトロンプラズマ用磁場発生装置であって、この磁場発生装置は、分割された磁性体片を用い、該磁性体片は架台に取外し可能に設けられていることを特徴とするものであり、更に、前記磁性体片を磁場発生装置の径方向に移動させることにより磁場調整を行うことを特徴としている。本発明に係る他の実施の形態は、永久磁石からなる複数の磁石セグメントをリング状に配置し、処理室内の被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成するマグネトロンプラズマ用磁場発生装置であって、この磁場発生装置は、分割された磁性体片を用い、磁場発生装置の中心軸に直角の前記磁性体片の断面形状が台形または扇形であり、前記磁性体片を架台に取り付けた際に隣り合う磁性体片は夫々面で接触することを特徴とするものであり、更に、前記磁性体片は架台から取外し可能であり、更に又、前記磁性体片を磁場発生装置の径方向に移動させることにより磁場調整を行うことを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施の形態に係るマルチポール磁石(磁場発生装置)10の上面図であり、更に、この図1は、このマルチポール磁石10の内側に配置される真空チャンバ12の垂直壁12a及びこのチャンバ内に置かれる半導体ウエハ14を模式的に示している。図2は図1のA−B切断線での断面の概略を示す。尚、図1では、図面を簡略にするため、図2に示した架台(磁性体片の支持具)13の図示は省略してある。
【0010】
マルチポール磁石10の内側には、上述したように、真空チャンバ12があり、この真空チャンバ12の内部には半導体ウエハ14にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置が設けられている。このプラズマ処理装置自体は公知であり、本願発明は特定のプラズマ処理装置に限定されるものでないので、図2では、半導体ウエハ14の他に上部電極板16及び下部電極板18を図示して簡単に説明するに止め、プラズマ処理装置全体の詳細な説明は省略する。周知のように、上部及び下部電極板16及び18には高周波電圧が印加されて両電極板間の電場の方向が変化し、電場と磁場との相互作用により高密度のプラズマを発生させる。矢印19は上部及び下部電極16,18の間に発生するある瞬間の電場の方向を示している。
【0011】
図1に示すように、マルチポール磁石10は、互いに隣接してリング状に分割して配置した複数の磁性体片20を備え、これらの磁性体片20には一つ置きに永久磁石であるセグメント磁石22が取り付けられている(接着されている)。図1及び図2からは必ずしも明らかでないが、リング状に配置した磁性体片20は、非磁性体材料で製作した複数の架台13(磁性体片20と同様にリング状に配置されている)によって支持されている。
【0012】
図1に示すマルチポール磁石10には、磁性体片20が32個に分割され、セグメント磁石22が16個設けられているが、本発明はこのような個数に限定されるものでなく、複数に磁性体片が分割されていればよく、好ましくは、8〜64個に分割され、セグメント磁石もまた磁性体片と同数またはそれ以下の数の構成になっている。マルチポール磁石10の中心軸(紙面に垂直)に直角方向のセグメント磁石22の断面の形状は任意であり、例えば、円、正方形、長方形、台形或いは瓦形でもよい。図1に示す第1の実施の形態では、セグメント磁石22の断面形状は長方形である。セグメント磁石22に描かれた矢印はこのセグメント磁石の磁化の向きを示している。
【0013】
図1に示すように、セグメント磁石22を、その磁極が交互にN及びSとなるように配置すると、真空チャンバ内の壁12aの近傍に矢印24で示す向きの磁場(磁力線)が生成される。この磁場強度は、例えば、0.005〜0.2T(200〜2000G)、好ましくは0.03〜0.045T(300〜450G)とするのが望ましい。この場合、半導体ウエハ14の中心部は実質的に無磁場状態(或いは磁場が弱められている状態)となるようにマルチポール磁場が形成される。
【0014】
例えば、図1及び図2に示すように、セグメント磁石22に内接する円はD=φ450mmで、セグメント磁石の幅W=40mm、厚さTM=7mm、高さL=120mm、磁性体片20の厚さTY=9mm及び高さL=120mmとしたとき、真空チャンバ12の内壁近傍では0.03T(300G)の磁場が形成され、これによりプラズマを閉じ込める機能が発揮される。なお、セグメント磁石22は残留磁化密度が1.3Tの希土類磁石で、磁性体片20は低炭素鋼S15C、架台13にはアルミを使用した場合である。
【0015】
セグメント磁石22は特に限定されるものではなく、例えば、希土類磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等を使用することができる。磁性体片20は、強磁性の性質をもつ純鉄、炭素鋼、鉄−コバルト鋼、ステンレス鋼等を使用し、架台の材料としては、非磁性の性質をもつアルミ、ステンレス鋼、真鍮、樹脂等が使用できる。
【0016】
上述したように、半導体ウエハ14の中心部では実質的に無磁場(ゼロT)であることが望ましい。しかし、実際には、半導体ウエハ14の配置部分にエッチング処理に影響を与える磁場が形成されず、実質的にウエハ処理に影響を及ぼさない値であればよい。図1に示す状態では、ウエハ周辺部には、例えば、磁束密度420μT(4.2G)以下の磁場が存在する。
【0017】
更に、上述したように、マルチポール磁石10は、互いに隣接してリング状に配置した複数の磁性体片20を備え、これらの磁性体片20には一つ置きに永久磁石であるセグメント磁石22が取り付けられている(接着されている)。しかし、本実施の形態では、このような配置に限定されるものではなく種々の変形例が考えられる。
【0018】
例えば、図3に示すように、マルチポール磁石10から、セグメント磁石22が接着されていない(取り付けられていない)磁性体片20を取り外すと、真空チャンバ12の内壁近傍での磁場強度を変えることができる。尚、図3に示す変形例では、リング状に配した磁性体片20は、同じようにリング状に設けた架台13に支持されているが、架台13の図示は省略している。本発明者の実験によれば、図3のようにマルチポール磁石10を構成し、図1で説明したセグメント磁石及び磁性体片と同じものを使用した場合、真空チャンバ12(図1)の内壁近傍での磁場を0.023T(230G)に減少させることができた。
【0019】
さらに、また、図1に示したマルチポール磁石10を構成する「磁性体片20とこの磁性体片に接着したセグメント磁石22」の配置位置を変更することによっても真空チャンバ12の内壁近傍での磁場強度を変えることができる。例えば、図4に示すように、2個の「一体化した磁性体片20とセグメント磁石22」と、2個の「セグメント磁石を取り付けていない磁性体片20」とを交互に配置して、8極のマルチポール磁場を形成することも可能である。このように、極数を減らすと真空チャンバ12(図1参照)内に磁力線が延びて真空チャンバ12の内壁近傍及び半導体ウエハ外周近傍での磁場を大きくすることができる。さらに又、図示しないが、4個の「一体化した磁性体片20とセグメント磁石22」と、4個の「セグメント磁石を取り付けていない磁性体片20」とを交互に配置すれば4極のマルチポール磁場を形成することも可能である。このように、エッチング処理に応じて適切な磁場を真空チャンバ12の内壁近傍に形成することができる。
【0020】
さらに、図1、図3及び図4で説明したマルチポール磁石10において、セグメント磁石22を取り付けた磁極片20を、マルチポール磁石(磁場発生装置)10の中心軸から延びる径方向に沿って外側或いは内側に移動させても、真空チャンバ12の内壁近傍での磁場強度を変化させることが可能である。図5(a)は、架台13に取り付けた磁性体片20の位置を図1、図3及び図4と同様とした場合(即ち磁性体片20を移動する前の状態)を示し、図5(b)は、架台13に取り付けた磁性体片20を径方向で且つ外側に移動させた状態を示す。
【0021】
本発明者による実験によると、図1に示したマルチポール磁石10を構成する「セグメント磁石22を接着した磁性体片20」の全てを径方向で且つ外側に20mm移動した場合、真空チャンバ12の内壁近傍の磁場を0.01T(100G)に減らすことができた。さらに、図1のマルチポール磁石10の内、セグメント磁石22が接着されていない磁性体片20のみを径方向で且つ外側に20mm移動して、隣接する磁性体片20の間に隙間を作ると真空チャンバ12の内壁近傍の磁場強度を減らすことができる。この場合、セグメント磁石22が接着されていない磁性体片20を取り外すのと同様な効果がある。
【0022】
なお、上述の場合とは逆に、架台13に取り付けた磁性体片20を径方向で且つ内側に移動させて真空チャンバ12の内壁近傍の磁場強度を調節することも可能である。
【0023】
このように、本実施の形態においては、マルチポール磁場の強度を変更するために最初に設置したセグメント磁石の他に他に新たなセグメント磁石を用意しなくても、磁性体片20を取り外したり、セグメント磁石22を固定した磁性体片20の配置位置を変更したり、セグメント磁石22を固定した磁性体片20を径方向に移動したり、或いは、セグメント磁石22を取り付けていない磁性体片20を径方向に移動したりすることによって、真空チャンバ12内に設けた半導体ウエハ14の周囲のマルチポール磁場強度を調節することが可能である。
【0024】
上述した磁性体片20の断面形状(磁場発生装置であるマルチポール磁石の中心軸に直角の平面での断面形状)は、図6(a)及び(b)に示すように、台形或いは扇形とし、隣接する磁性体片20を面接触とすることにより接触面での磁束の損失を極力少なくすることが好ましい。つまり、磁性体片20を架台13で支持し状態(図1及び図4)の場合、隣接する磁性体片20の間に隙間ができないようにするのが好ましい。例えば、図6(c)に示す比較例のように、磁性体片の断面形状を長方形にすると、隣接する磁性体片20の間に隙間ができ、磁気飽和により磁束数が減少し、結果として真空チャンバ12内に形成される磁束数が減少するという不都合が生ずる。上述の如く、隣接する磁性体片20を面接触とすることにより接触面での磁束の損失を極力少なくすれば、接触面での磁束の損失を少なくすることができ、結果として同じ量のセグメント磁石を用いてもマルチポール磁場の強度を大きくすることができるので、高価な磁石を有効に使えるという利点がある。
【0025】
なお、上記実施の形態においては、本発明を半導体ウエハのエッチングを行う装置に応用した場合について説明したが、本発明はこのような応用例に限定されるものではなく、例えば、半導体ウエハ以外の基板を処理するものであっても良く、エッチング以外のプラズマ処理、例えばCVD等の成膜処理装置にも応用することができる。
【1126】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、永久磁石を用いた磁場発生装置でエッチング等のプラズマ処理を行う際、マルチポール磁場の強度を適切に設定できるので良好なプラズマ処理を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るマルチポール磁石(磁場発生装置)の実施の形態の概略を示す図
【図2】図1の切断線A−Bでの断面を示す図。
【図3】図1に示した実施の形態の変形例の概略を示す図。
【図4】図1に示した実施の形態の他の変形例の概略を示す図。
【図5】図1に示した実施の形態の更に他の変形例を説明する図。
【図6】本発明に係る実施の形態に使用する磁極片及び比較例として挙げた磁極片の断面図。
【図7】従来のマルチポール磁石(磁場発生装置)を説明するための図。
【図8】従来のマルチポール磁石(磁場発生装置)を説明するための図。
【符号の説明】
10:マルチポール磁石(磁場発生装置)
12:真空チャンバ
14:半導体ウエハ(被処理基板)
20:磁性体片
22:セグメント磁石

Claims (4)

  1. 永久磁石からなる複数の磁石セグメントをリング状に配置し、処理室内の被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成するマグネトロンプラズマ用磁場発生装置であって、該磁場発生装置は、分割された磁性体片を用い、該磁性体片は架台に取外し可能に設けられていることを特徴とするマグネトロンプラズマ用磁場発生装置。
  2. 永久磁石からなる複数の磁石セグメントをリング状に配置し、処理室内の被処理基板の周囲にマルチポール磁場を形成するマグネトロンプラズマ用磁場発生装置であって、該磁場発生装置は、分割された磁性体片を用い、磁場発生装置の中心軸に直角の前記磁性体片の断面形状が台形または扇形であり、前記磁性体片を架台に取り付けた際に隣り合う磁性体片は夫々面で接触することを特徴とするマグネトロンプラズマ用磁場発生装置。
  3. 前記磁性体片は架台から取外し可能であることを特徴とする請求項2に記載のマグネトロンプラズマ用磁場発生装置。
  4. 前記磁性体片を磁場発生装置の径方向に移動させることにより磁場調整を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネトロンプラズマ用磁場発生装置。
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