JP3608265B2 - 制動力制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制動力制御装置に係り、特に、自動車の各車輪の制動力を制御する制動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の分野においては、車両挙動の安定化等を目的として各車輪の制動力を制御する制動力制御装置が知られている。例えば、特開平6−144180号には、車両の制動時に、前輪の制動力と後輪の制動力とが所定の関係を満たすように、後輪の制動液圧を前輪の制動液圧に比して減圧する装置が開示されている。車両の制動時には、荷重移動により前輪に大きな荷重が作用する。上記従来の装置の如く、前輪の制動液圧が後輪の制動液圧に比して高圧に制御されると、前後輪の制動能力が効果的に発揮され、高い制動能力を確保することができる。
【0003】
上記従来の装置においては、上述した制動力制御(以下、制動力配分制御と称す)の終了条件が成立すると、その後、所定時間に渡り後輪の制動液圧を徐々に増圧させる制御が実行される。制動力配分制御の実行中は、後輪の制動液圧が前輪の制動液圧に比して低圧に維持されている。従って、制動力配分制御が終了された後、何ら後輪の制動液圧が制御されないとすれば、後輪の制動液圧が急激に上昇し、車両挙動が不安定になり易い。これに対して、上記従来の装置の如く、制動力配分制御の終了後に後輪の制動液圧を徐々に増圧することとすれば、後輪の制動液圧の急上昇を避けることができ、車両挙動を安定に維持することができる。
【0004】
車両の分野においては、また、旋回内輪の制動力と旋回外輪の制動力とを適当な比率とすることで旋回挙動の安定化を図る制動力配分制御が知られている。かかる場合においても、制動力配分制御の終了条件が成立した後に、制動力配分制御により減圧制御されていた車輪の制動液圧を徐変させることとすれば、制動力配分制御が終了された後に、安定した旋回挙動を維持することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した制動力配分制御は、例えば、何れかの車輪がロック状態に近づき、アンチロックブレーキ制御の実行条件が成立した際に終了させる必要がある。制動力配分制御からアンチロックブレーキ制御に移行する際に、車両挙動を安定に維持するためには、かかる場合においても、減圧されていた車輪の制動液圧を徐変させることが適切である。
【0006】
しかしながら、急制動時等、制動操作が開始された後、速やかに大きな制動力を発生させる必要がある場合には、アンチロックブレーキ制御が開始された後、制動力配分制御によって減圧されていた車輪の制動液圧を即座に上昇させることが適切である。この点、急制動時も緩制動時も一律に制動液圧の徐変制御を実行する上記従来の装置は、急制動時においてアンチロックブレーキ制御の開始に関して優れた応答性を得難いという問題を有していることになる。
【0007】
また、旋回内輪と旋回外輪とについて制動力配分制御が実行される場合、制動力配分制御が終了された時点で車両が緩旋回状態であれば、減圧制御されていた車輪の制動液圧は速やかに増圧すべきである。一方、制動力配分制御が終了された時点で車両が急旋回状態であれば、急激な車両挙動の変動を避けるため、減圧制御されていた車輪の制動液圧は緩やかに増圧すべきである。この点、制動力配分制御の終了時における旋回状態に関わりなく一律に制動液圧の徐変制御を実行する上記従来の手法は、制御終了時における車両挙動の安定化を図る上で改良の余地を残すものであった。
【0008】
更に、旋回内輪と旋回外輪とについて制動力配分制御を実行する装置においては、ステアリングホイルの切り戻し操作等に伴って車両の旋回方向が反転された場合に、一の旋回方向に対応する制動力配分制御を終了して、速やかに他の旋回方向に対応する制動力配分制御を開始する必要が生ずる。これに対して、上記従来の装置の如く、制動力配分制御が終了された後、常に所定時間に渡る制動液圧の徐変制御が実行されるとすれば、反転後の旋回方向に対する制動力配分制御を速やかに開始することができない。上記従来の手法は、かかる点においても改良の余地を残すものであった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、制動力配分制御が終了される際の車両の走行状態に応じて、制動液圧を徐変させる際の液圧変化速度を適切に変更することにより、上記の課題を解決する制動力制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、車両の各車輪に対して所定の配分比で制動液圧を供給する配分制御手段と、制動液圧の配分制御が終了された後に、前記配分制御の対象とされていた車輪の制動液圧を徐変させる制動液圧徐変手段と、を備える制動力制御装置において、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
該走行状態検出手段の検出結果に基づいて、前記制動液圧徐変手段が制動液圧を徐変させる際の液圧変化速度を変更する液圧変化速度変更手段と、
各車輪のロック状態を判定して各車輪の制動液圧を制御するアンチロック制御手段と、
制動液圧を徐変させる車輪とは異なる車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した際に、前記配分制御の実行を終了させる配分制御終了手段と、を備えると共に、
前記配分制御手段が、車両の制動時に制動液圧の配分制御を実行する制動時配分制御手段を備え、
前記走行状態検出手段が、前記配分制御が開始された後、前記アンチロック制御の実行条件が成立するまでの時間を計数する配分制御実行時間計数手段を備え、かつ、
前記液圧変化速度変更手段が、前記配分制御実行時間計数手段により計数される時間に基づいて前記液圧変化速度を変更する制御時間対応速度変更手段を備え、さらに、
前記アンチロック制御手段は、前記制動液圧徐変手段が前記制御時間対応速度変更手段によって変更された前記液圧変化速度で制動液圧を徐変させている車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合、該車輪に対してアンチロック制御を実行する、ことを特徴とする制動力制御装置により達成される。
【0011】
本発明において、上記配分制御手段は、車両の各車輪に配設されるホイルシリンダに対して所定の配分比で制動液圧を供給する。所定の配分比は、車両の走行挙動が安定化されるように決定される。従って、かかる配分制御が実行されると、車両挙動の安定化が図られる。制動液圧の配分制御の実行中は、各車輪のホイルシリンダ圧に差圧が生ずる。上記制動液圧徐変手段は、配分制御が終了された後、かかる差圧が徐々に消滅されるように配分制御の対象とされていた車輪(以下、制御対象車輪と称す)の制動液圧を徐変させる。制動液圧がこのように徐変されると、配分制御が終了された後、制御対象車輪が発生する制動力が急変することがなく、車両挙動が安定に維持される。上記走行状態検出手段は、車両の走行状態を検出する。上記配分制御手段による配分制御は、種々の走行状態の下で終了される。配分制御が終了された後、制御対象車輪の制動液圧と、他の車輪の制動液圧との偏差を消滅させる適切な速度は、その際の走行状態により異なる。上記液圧変化速度変動手段は、走行状態に応じた適切な液圧変化速度が得られるように、上記制動液圧徐変手段が制動液圧を徐変させる際の液圧変化速度を変更する。
また、本発明において、上記配分制御手段は、制動時配分制御手段を備えている。従って、車両が制動状態となると、先ず制動液圧の配分制御が開始される。上記アンチロック制御手段は、車両の制動時に各車輪のロック状態を判定して、車輪がロック状態に移行しないように各車輪の制動液圧を制御する。また、上記配分制御終了手段は、配分制御の実行中に何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合、配分制御を終了させる。従って、車両が制動状態に移行して配分制御が開始された後、アンチロック制御の実行条件が成立すると、その後速やかに、配分制御からアンチロック制御への移行が行われる。かかる移行の過程で、制御対象車輪の制動液圧は、上記制動液圧徐変手段によって徐変される。上記配分制御実行時間計数手段は、車両が制動状態となって配分制御が開始された後、アンチロック制御の実行条件が成立するまでの時間を計数する。この時間は、車両が制動状態に移行した後、制動力が緩やかに増加された場合には長時間となり、制動力が急激に増加された場合には短時間となる。上記制御時間対応速度変更手段は、かかる時間に基づいて、車両が急制動状態である場合は制御対象車輪の制動液圧が早期に他の車輪の制動液圧と同等となるように、また、車両が緩制動状態である場合は制御対象車輪の制動液圧が緩やかに変化するように、液圧変化速度を変更する。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例のシステム構成図を示す。本実施例のシステムは、後述する電子制御ユニット(以下、ECUと称す)10により制御される。図1において、ブレーキペダル12は、車両の運転席フットスペースに配設される。ブレーキペダル12には、ブレーキブースタ14が連結されている。ブレーキブースタ14は、ブレーキペダル12に供給されたブレーキ踏力を所定の倍力比で倍力してマスタシリンダ16に伝達する。
【0019】
マスタシリンダ16は、独立した2つの油圧室を備えている。本実施例のシステムでは、マスタシリンダ16の一方の油圧室から左後輪RLおよび右前輪FRのホイルシリンダ18RL,18FRに制動液圧を供給し、他方の油圧室から右後輪RRおよび左前輪FLのホイルシリンダ18RR,18FLに制動液圧を供給する、いわゆるクロス配管方式を採用している。
【0020】
マスタシリンダ16が備える2つの油圧室には、それぞれ液圧通路20−1又は20−2が連通している。液圧通路20−1には、増圧用制御弁22RL,22FRが連通している。また、液圧通路20−2には、増圧用制御弁22RR,22FLが連通している。増圧制御弁22FL,22FR,22RL,22RR(以下、これらを総称する場合には、単に符号22を付して表す)は、ECU10から供給される駆動信号に応じて開閉状態を切替える2位置のソレノイドバルブであり、常態では開弁状態に維持される。
【0021】
増圧用制御弁22には、それぞれ下流側からマスタシリンダ16側へ向かう油液の流れのみを許容する逆止弁24FL,24FR,24RL,24RR(以下、これらを総称する場合には、単に符号24を付して表す)が内蔵されている。従って、マスタシリンダ16側の圧力が、増圧用制御弁22の下流側の圧力に比して低圧となると、増圧用制御弁22の開閉状態に関わらず、増圧用制御弁22の下流側からマスタシリンダ16側へ油液が逆流する。
【0022】
増圧用制御弁22RLの下流には、減圧用制御弁26RLおよびホイルシリンダ18RLが連通している。同様に、増圧用制御弁22FR,22FL,22RRの下流には、それぞれ減圧用制御弁26FRおよびホイルシリンダ18FR、減圧用制御弁26FLおよびホイルシリンダ18FL、または、減圧用制御弁26RRおよびホイルシリンダ18RRが連通されている。
【0023】
減圧用制御弁26FL,26FR,26RL,26RR(以下、これらを総称する場合には、単に符号26を付して表す)は、ECU10から供給される駆動信号に基づいて開閉状態を切替える2位置のソレノイドバルブであり、常態では閉弁状態に維持される。
【0024】
減圧用制御弁26RL及び26FRの下流側には、リザーバタンク28−1、および逆止弁30−1が連通している。一方、減圧用制御弁26FL及び26RRの下流側には、リザーバタンク28−2、および逆止弁30−2が連通している。逆止弁30−1,30−2には、それぞれ、ポンプ機構32−1,32−2が連通している。更に、ポンプ機構32−1,32−2は、それぞれ逆止弁34−1を介して増圧用制御弁22RL,22FRの上流側、または、逆止弁34−2を介して増圧用制御弁22FL,22RRの上流側に連通している。
【0025】
逆止弁30−1,30−2は、減圧用制御弁26の下流側からポンプ機構32−1,32−2側へ向かう油液の流れのみを許容する一方向弁である。また、逆止弁34−1,34−2は、ポンプ機構32−1,32−2側から増圧用制御弁22の上流側へ向かう油液の流れのみを許容する一方向弁である。ポンプ機構32−1,32−2は、ECU10により制御されるモータを駆動源として備えるプランジャ式ポンプ機構である。ECU10からポンプ機構32−1,32−2に対して駆動信号が供給されると、ポンプ機構32−1,32−2が備えるプランジャが往復運動を開始する。ポンプ機構32−1,32−2が上記の如く作動すると、減圧用制御弁26の下流側から増圧用制御弁22の上流側へ向けて油液が圧送される。このため、減圧ソレノイド26の下流側に流出した油液は、一時的にリザーバタンク28−1,28−2に貯留された後、ポンプ機構32−1,32−2が作動することにより、増圧用制御弁22の上流側に還流されることになる。
【0026】
上記の構成によれば、増圧用制御弁22が開弁状態、かつ、減圧用制御弁26が閉弁状態とされることにより、マスタシリンダ16で生じた制動液圧がホイルシリンダ18FL,18FR,18RL,18RR(以下、これらを総称する場合には、単に符号18を付して表す)に導かれる状態、すなわち、増圧モードが実現される。また、増圧用制御弁22が閉弁状態、かつ、減圧用制御弁26が閉弁状態とされることにより、ホイルシリンダ18内の制動液圧が保持される状態、すなわち、保持モードが実現される。更に、増圧用制御弁22が閉弁状態、かつ、減圧用制御弁26が開弁状態とされることにより、ホイルシリンダ18内の制動液圧がリザーバタンク28−1,28−2に開放される状態、すなわち、減圧モードが実現される。
【0027】
ECU10には、上述した増圧用制御弁22、減圧用制御弁26、およびポンプ機構32−1,32−2が接続されていると共に、各車輪毎に配設された車輪速センサ36FL,36FR,36RL,36RR(以下、これらを総称する場合には、単に符号36を付して表す)、ブレーキスイッチ38、車速センサ40、および加速度センサ42が接続されている。
【0028】
車輪速センサ36のそれぞれは、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWFL,VWFR,VWRL,VWRR (以下、これらを総称する場合には、単に車輪速度VW と称す)を検出する。ブレーキスイッチ38は、ブレーキペダル12が踏み込まれた際にオン信号を出力する。車速センサ40は、車両の車体速度Vを検出する。また、加速度センサ42は車両に作用する横方向の加速度Gyを検出する。ECU10は、これら各センサ、またはスイッチから供給される出力信号に基づいて車両の走行状態、各車輪FL,FR,RL,RRのロック状態等を検出し、アンチロック制御、および、制動液圧の配分制御等を実行する。
【0029】
アンチロック制御は、制動操作中に、何れかの車輪について、ロック状態へ移行する可能性が検出された際に実行される。車輪における制動力は、車輪速度VW が車体速度Vに対して遅れることにより、すなわち、車輪に適当なスリップ率Sが生ずることにより発生する。また、車輪の制動力は、その車輪のスリップ率Sが、タイヤの特性により決定される所定のスリップ率(以下、かかるスリップ率を目標スリップ率と称す)S* となる場合に最も効率良く発生される。ECU10は、ブレーキスイッチ38からオン信号が出力されており、かつ、何れかの車輪FL,FR,RL,RRのスリップ率Sが目標スリップ率S* を超えている場合にアンチロック制御の実行条件が成立すると判断する。アンチロック制御の実行条件が成立すると、以後ECU10は、各車輪のスリップ率Sが目標スリップ率S* 近傍に維持されるように、上述した増圧モード、減圧モード、および、保持モードを繰り返し実現する。上述したアンチロック制御によれば、制動操作時に、車輪をロックさせることなく大きな制動力を発生させることができる。
【0030】
また、ECU10は、車両が旋回制動状態である場合に、旋回内輪側の車輪のスリップ状態と、旋回外輪側の車輪のスリップ状態とを同等とするための制動液圧の配分制御を実行する。車両の旋回中は、車両の荷重が旋回外側に移動するため、旋回内輪側には旋回外輪側に比して小さな荷重が作用する。このため、旋回内輪と旋回外輪とに同等の制動液圧が供給されるとすれば、旋回内輪が旋回外輪に比して早期にロック状態となる。旋回中において高い旋回能力を確保するためには、旋回内輪と旋回外輪とがほぼ同時にロック状態となることが望ましい。そこで、本実施例のシステムでは、車両の旋回制動中において、旋回内輪のスリップ率と旋回外輪のスリップ率とが同等となるように、旋回内輪側のホイルシリンダに供給される制動液圧と、旋回外輪側のホイルシリンダに供給される制動液圧とが所定の比率となるように、制動液圧の配分制御を実行する。ECU10は、ブレーキスイッチ38の出力信号に基づいて車両が制動状態であるか否かを判別すると共に、加速度センサ42の出力信号に基づいて車両が旋回制動状態であるか否かの判別、および、車両の旋回方向の検出を行う。車両が旋回制動状態であると判断された場合、ECU10は、旋回外輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路を増圧モードに維持すると共に、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路において増圧モード、減圧モード、および、保持モードを適当に実現することで上述した制動液圧の配分制御を実行する。
【0031】
図2は、本実施例のシステムの動作を説明するためのタイムチャートを示す。図2(A)は、マスタシリンダ圧PMCの変化(一点鎖線で示す曲線)、および、旋回内輪側のホイルシリンダにおける制動液圧PIN(実線で示す曲線)を示す。また、図2(B)は、マスタシリンダ圧PMCの変化(一点鎖線で示す曲線)、および、旋回外輪側のホイルシリンダにおける制動液圧POUT (実線で示す曲線)を示す。
【0032】
図2に示すタイムチャートは、時刻t0 に車両が旋回制動状態となり、時刻t1 に配分制御が開始され、更に、時刻t2 に旋回外輪についてアンチロック制御が開始された場合の液圧変化を示している。図2(B)に示す如く、旋回外輪側の制動液圧POUT は、アンチロック制御が開始される時刻t2 までは、ほぼマスタシリンダ圧PMCと同等に維持されている。アンチロック制御が開始されると、旋回外輪側の制動液圧POUT は、旋回外輪のスリップ率Sを目標スリップ率S* に一致させるべくマスタシリンダ圧PMCに比して低圧の領域で増減される。
【0033】
図2(A)に示す如く、旋回内輪側の制動液圧PINは、配分制御が開始される時刻t1 以降、マスタシリンダ圧PMC、すなわち、旋回外輪側の制動液圧POUT に比して低圧に制御される。そして、時刻t2 にアンチロック制御の実行条件が成立すると、配分制御に対してアンチロック制御を優先させるため、配分制御が中止される。上記の如く旋回制動中にアンチロック条件が成立して配分制御が中止された場合、その時点での旋回内輪側の制動液圧PINはマスタシリンダ圧PMCに比して低圧とされている。このため、配分制御が中止された後、何ら旋回内輪側の制動液圧PINの制御を行わないとすれば、PINが急激にマスタシリンダ圧PMC付近まで上昇し、車両の旋回挙動が不安定化するおそれが生ずる。このため、本実施例のシステムでは、アンチロック制御の実行条件が成立することにより配分制御が終了された場合には、その後、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路において、所定周期で増圧モードと保持モードとを繰り返させることにより、旋回内輪側の制動液圧PINを徐変させることとしている。かかる徐変制御が実行された場合、配分制御が中止された後、旋回内輪側のホイルシリンダが発生する制動トルクが急変することはなく、車両を安定した旋回状態に維持することができる。
【0034】
上述の如く、配分制御が中止された後、旋回内輪側の制動液圧PINについて徐変制御を行うことは、車両を安定した旋回状態に維持するうえで有効である。また、かかる徐変制御を実行するにあたっては、旋回内輪側の制動液圧PINの増圧速度が緩やかであるほど、配分制御の終了時における車両挙動を安定に維持することができる。しかしながら、配分制御が中止された後、速やかに旋回内輪に大きな制動力を発生させるためには、制動液圧PINの増圧速度は速いほど有利である。
【0035】
そこで、本実施例においては、急激な制動力上昇が要求されていない緩制動時には、車両挙動を安定に維持することを優先して、徐変制御により緩やかに制動液圧PINを上昇させることとし、急激な制動力上昇が要求される急制動時には、大きな制動力の確保を優先して、徐変制御により速やかに制動液圧PINを上昇させることとしている。
【0036】
図3は、急制動が行われた際の本実施例のシステムの動作を説明するためのタイムチャートを示す。図3(A)は、マスタシリンダ圧PMCの変化(一点鎖線で示す曲線)、および、旋回内輪側のホイルシリンダにおける制動液圧PIN(実線で示す曲線)を示す。また、図3(B)は、マスタシリンダ圧PMCの変化(一点鎖線で示す曲線)、および、旋回外輪側のホイルシリンダにおける制動液圧POUT (実線で示す曲線)を示す。
【0037】
図3に示すタイムチャートは、時刻t0 に車両が旋回急制動状態となり、時刻t3 に配分制御が開始され、また、時刻t4 に旋回外輪についてアンチロック制御が開始され、更に、時刻t5 に旋回内輪についてアンチロック制御が開始された場合の液圧変化を示している。図3(A)に示す如く、旋回内輪側の制動液圧PINは、時刻t4 にアンチロック制御の実行条件が成立すると、比較的急激にマスタシリンダ圧PMCに向けて増圧される。このようにPINが速やかに増圧されると、旋回外輪側でアンチロック制御が実行されている間に旋回内輪の制動能力を有効に活用することができ、車両全体として高い制動能力を発揮することができる。そして、時刻t5 以降、旋回内外輪双方においてアンチロック制御が実行され、車両が発揮し得る最大の制動能力が発揮される。このように、本実施例のシステムによれば、急制動時には、配分制御が終了された後の車両挙動の安定化を図りつつ、制動操作が開始された後早期に最大の制動能力が発揮される状態を実現することができる。
【0038】
図4は、上記の機能を実現すべくECU10が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図4に示すルーチンが起動されると、先ず、ステップ100において、前回の処理時から今回の処理時にかけて制動液圧の配分制御が開始されたか否かが判別される。配分制御が開始されたと判別された場合は、次にステップ102で、カウンタCをクリア、再スタートする処理が実行された後、ステップ104の処理が実行される。カウンタCは、所定の上限値に向けて常にカウントアップを続けるカウンタである。従って、カウンタCの値は、配分制御が開始された後の経過時間を表していることになる。一方、配分制御が開始されていない、すなわち、配分制御が停止されているまたは配分制御が継続的に実行されていると判別された場合は、ステップ102がジャンプされ、次いでステップ104の処理が実行される。
【0039】
ステップ104では、何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。何れの車輪についてもアンチロック制御の実行条件が成立していない場合は、以後、何ら処理を進める実益がないと判断され、その後、今回のルーチンが終了される。一方、何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立していると判別された場合は、ステップ106においてカウンタCをストップする処理が実行される。
【0040】
上述の如く、ECU10は、制動液圧の配分制御が開始された後、アンチロック制御の実行条件が成立すると、その時点で配分制御の実行を中止する。従って、配分制御が開始された後、カウンタCが上限値に到達するまでの間にアンチロック制御の実行条件が成立した場合、カウンタCの値は配分制御が実行された時間を表していることになる。
【0041】
車両において制動操作が行われる際に、その操作が緩制動を目的とする場合、すなわち、急激な制動力の上昇が要求されていない場合は、制動操作が開始された後、アンチロック条件が成立するまで、すなわち、何れかの車輪についてロック状態に移行する可能性が検知されるまでには比較的長い時間を要する。従って、緩制動に起因してアンチロック制御の実行条件が成立する場合には、カウンタCに比較的長い時間が計数されているはずである。一方、制動力を急激に上昇させるべく急制動操作が行われた場合は、制動操作が開始された後、早期にアンチロック条件が成立する。従って、急制動に起因してアンチロック制御の実行条件が成立する場合には、カウンタCに比較的短い時間が計数されているはずである。
【0042】
本ルーチンにおいて、上記ステップ106の処理が終了すると、次に、ステップ108において、カウンタCのカウンタ値Cが所定時間T0 に比して短いか否かが判別される。その結果、C<T0 が成立する場合は、車両が旋回急制動状態にあると判断され、以後、ステップ110の処理が実行される。
【0043】
ステップ110では、旋回内輪の制動液圧PINを急増パターン、すなわち、上記図3(A)に示すパターンで増圧させるための徐変制御が実行される。具体的には、急増パターンとして予め設定された周期で増圧モードと保持モードとを繰り返すべく、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路の増圧用制御弁22および減圧用制御弁26に、所定のタイミングで駆動信号が出力される。
【0044】
ステップ110の処理が終了すると、ステップ112で、旋回内輪についてアンチロック制御の実行条件が成立しているか否か、すなわち、旋回内輪のスリップ率Sが目標スリップ率S* を超えているか否かが判別される。その結果、かかる条件が成立すると判別された場合は、ステップ114でアンチロック制御を実現するための処理が実行された後、今回のルーチンが終了される。一方、上記ステップ112の条件が成立しないと判別された場合は、次にステップ116において、制動液圧の徐変制御が開始された後、所定時間が経過したか否かが判別される。その結果、未だ所定時間が経過していないと判別された場合は、再び上記ステップ110以降の処理が繰り返される。一方、すでに所定時間が経過していると判別されと、制動液圧の徐変制御を終了させるべく、本ルーチンが終了される。
【0045】
また、上記ステップ108において、カウンタ値Cが所定時間T0 以上であると判別された場合は、車両が旋回緩制動状態にあると判断され、以後、ステップ118の処理が実行される。ステップ118では、旋回内輪の制動液圧PINを緩増パターン、すなわち、上記図2(A)に示すパターンで増圧させるための徐変制御が実行される。具体的には、緩増パターンとして予め設定された周期で増圧モードと保持モードとを繰り返すべく、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路の増圧用制御弁22および減圧用制御弁26に、所定のタイミングで駆動信号が出力される。
【0046】
ステップ118の処理が終了すると、ステップ120で、旋回内輪についてアンチロック制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。その結果、かかる条件が成立すると判別された場合は、上記したステップ114の処理が実行された後、今回のルーチンが終了される。一方、上記ステップ120の条件が成立しないと判別された場合は、次にステップ122において、制動液圧の徐変制御が開始された後、所定時間が経過したか否かが判別される。その結果、未だ所定時間が経過していないと判別された場合は、再び上記ステップ118以降の処理が繰り返される。一方、すでに所定時間が経過していると判別されと、制動液圧の徐変制御を終了させるべく、本ルーチンが終了される。
【0047】
上記の処理によれば、車両が旋回急制動状態である場合にアンチロック制御の実行条件が成立した後には、急増パターンにより所定時間にわたり旋回内輪側の制動液圧PINの増圧が図られる。また、車両が旋回緩制動状態である場合にアンチロック制御の実行条件が成立した後には、緩増パターンにより所定時間にわたり旋回内輪側の制動液圧PINの増圧が図られる。更に、制動液圧PINの増圧中に旋回内輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合には、速やかに旋回内輪についてもアンチロック制御が開始される。従って、本実施例のシステムによれば、配分制御が中止された後、車両に生ずる挙動変化を十分に小さく抑制しつつ、急制動時において優れた応答性の下に高い制動能力を得ることができる。
【0048】
尚、上記の実施例においては、ECU10が配分制御を実行することにより上記請求項1記載の配分制御手段が、上記ステップ108,110および118の処理を実行することにより上記請求項1記載の制動液圧徐変手段、および上記請求項1記載の液圧変化速度変更手段が、車両の制動時に上記ステップ102,106の処理を実行することにより上記請求項1記載の走行状態検出手段が、それぞれ実現される。
【0049】
また、上記の実施例においては、ECU10がアンチロック制御を実行することにより上記請求項1記載のアンチロック制御手段が、上記ステップ104の処理を実行することにより上記請求項1記載の配分制御終了手段が、車両の制動時に配分制御を実行することにより上記請求項1記載の制動時配分制御手段が、上記ステップ102,106の処理を実行することにより上記請求項1記載の配分制御実行時間計数手段が、また、上記ステップ108,110および118の処理を実行することにより上記請求項1記載の制御時間対応速度変更手段が、それぞれ実現される。
【0050】
次に、本発明の第2実施例について説明する。本実施例は、上述した第1実施例と同様のシステム構成により実現することができる。車両が旋回制動状態である場合に実行される制動液圧の配分制御は、上述の如く、例えば何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合等においては、車両が旋回制動状態に維持されたままであっても中止される場合がある。
【0051】
この場合、配分制御が中止された後、旋回内輪側の制動液圧PINを徐変させることで車両挙動を安定に維持し得ることは前記した通りである。ところで、車両には、旋回程度が急になるほど高度のバランスが要求される。このため、車両が緩旋回中である場合は、配分制御が中止された後に旋回内輪の制動力が比較的大きく変化しても、さほど車両挙動が不安定となることはなく、一方、車両が急旋回中である場合は、配分制御が中止された後に旋回内輪の制動力が僅かに変化しただけでも、その変化が車両挙動に大きく反映される。
【0052】
かかる観点からすれば、配分制御が中止された際に車両が急旋回状態である場合は、旋回内輪の制動液圧PINの徐変速度を緩やかとし、配分制御が中止された際に車両が緩旋回状態である場合は、旋回内輪の制動液圧PINの徐変速度を急にすることが適切である。
【0053】
図5は、上記の要求を実現すべくECU10が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図5に示すルーチンが所定時間毎に起動される定時割り込みルーチンである。図5に示すルーチンが起動されると、先ずステップ200において、ブレーキスイッチ38からオン信号が出力されているか否かが判別される。ブレーキスイッチ38からオン信号が出力されている場合は、車両が制動状態であると判断され、次にステップ202の処理が実行される。一方、ブレーキスイッチ38からオン信号が出力されていない場合は、後の処理を進める実益がないと判断されて今回のルーチンが終了される。
【0054】
ステップ202では、旋回内輪について、すなわち、配分制御における制御対象車輪について、アンチロック制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。その結果、制御対象車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立していると判別された場合は、ステップ206でアンチロック制御を実現するための処理が実行された後、今回のルーチンが終了される。一方、上記ステップ202の条件が不成立であると判別された場合は、次にステップ204の処理が実行される。
【0055】
ステップ204では、制動液圧の配分制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。具体的には、車両が制動状態であり、かつ、所定値以上の横加速度Gyを伴う旋回中であるか否かが判別される。その結果、配分制御の実行条件が成立していないと判別された場合は、以後の処理を進める実益がないと判断され、今回のルーチンが終了される。一方、配分制御の実行条件が成立していると判別された場合は、更にステップ208において、配分制御の終了条件が成立しているか否かが判別される。
【0056】
ステップ208では、何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合、および、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路が所定期間継続して、または、頻繁に増圧モードとされる場合に配分制御の終了条件が成立すると判別される。上記の終了条件が成立していない場合は、以後、ステップ210で配分制御を実現するための処理が実行された後、今回のルーチンが終了される。一方、配分制御の終了条件が成立していると判別された場合は、次に、ステップ212の処理が実行される。
【0057】
ステップ212では、図6に示すマップを参照して、配分制御の終了後に実行する旋回内輪側の制動液圧PINについての徐変制御で実現すべき増圧勾配が決定される。本実施例において、制動液圧PINの徐変制御は、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路を、図7に示すパターンで、所定回数繰り返して保持モードおよび増圧モードとすることで実現される。図7に示すパターンにおいて、増圧モードと保持モードとの繰り返し周期T2 は固定値である。一方、図7に示すパターンにおいて、油圧回路が保持モードに維持される時間T1 と、図7に示すパターンの繰り返し回数Nは変動値である。本ステップ212では、図6に示すマップを参照して、これらの変動値T1 およびNが決定される。
【0058】
図6に示すマップは、配分制御の終了条件が成立した際に車両に作用していた横加速度Gyとの関係でT1 およびNを設定したマップである。上述の如く、配分制御の終了条件が成立した際に車両に作用している横加速度Gyが大きいほど、徐変制御により旋回内輪の制動液圧PINを緩やかに変化させる必要がある。このため、図6に示すマップは、Gyが大きいほどT1 およびNが大きな値となるように設定されている。かかる設定によれば、Gyが大きくなるほど、図7に示すパターンの1周期内に占める保持時間T1 の割合が大きくなる。このため、Gyが大きいほど、徐変制御における制動液圧PINの増圧速度が緩やかとされる。この場合、Gyが大きいほど繰り返し回数Nが大きくなるため、徐変制御中に確保される増圧時間の総和は常に一定時間となる。
【0059】
上記の如く、徐変制御で実現すべき増圧勾配が決定されると、次いで、ステップ214において、徐変制御を実現するための処理が実行された後、今回のルーチンが終了される。上記の処理によれば、如何なる旋回状態で車両が走行している場合においても、車両挙動を安定に維持しつつ配分制御を終了させることができる。
【0060】
尚、上記の実施例においては、ECU10が配分制御を実行することにより上記請求項1記載の配分制御手段が、上記ステップ214の処理を実行することにより上記請求項1記載の制動液圧徐変手段が、上記ステップ212の処理を実行することにより上記請求項1記載の液圧変化速度変更手段および上記請求項1記載の走行状態検出手段が、それぞれ実現される。
【0062】
配分制御が中止された後、旋回内輪側の制動液圧PINを徐変させることで車両挙動を安定に維持し得ることは前記した通りである。しかしながら、旋回方向が切替えられることにより配分制御が中止された際に徐変制御の対象とされる車輪は、旋回方向が切替えられた後には旋回外輪となる。従って、その車輪について制動液圧を徐変させることとすれば、旋回方向が切替えられた後、新たな旋回外輪が十分な制動力を発生するまでにタイムラグが生ずることになる。
【0063】
かかる観点からすれば、一方の旋回方向に対する配分制御が終了された後、他方の旋回方向に対する配分制御が開始されるまでに十分に時間が経過している場合は、旋回内輪の制動液圧PINの徐変速度を緩やかとし、一方の旋回方向に対する配分制御が終了された後、短時間の後に他方の旋回方向に対する配分制御が開始される場合は、旋回内輪の制動液圧PINの徐変速度を急にすることが適切である。
【0064】
図8は、上記の要求を実現すべくECU10が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図8に示すルーチンが起動されると、先ずステップ300において、何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。その結果、アンチロック制御の実行条件が成立していると判別された場合は、ステップ302でアンチロック制御を実現するための処理が実行される。
【0065】
上記ステップ302の処理が終了すると、次にステップ304で、アンチロック制御の終了条件が成立しているか否かが判別される。その結果、未だアンチロック制御の終了条件が成立していないと判別された場合は、かかる条件が成立するまで、繰り返し上記ステップ302の処理が実行される。一方、アンチロック制御の終了条件が成立すると判別された場合は今回の処理が終了される。
【0066】
上記ステップ300においてアンチロック制御の実行条件が成立していないと判別された場合は、ステップ306において、配分制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。配分制御の実行条件が成立していない場合は、後の処理を進める実益がないと判断され、今回のルーチンが終了される。一方、配分制御の実行条件が成立していると判別された場合は、ステップ308で配分制御を実現するための処理が実行される。尚、ステップ308では、上記の処理が実行されると共に、左右の車輪の何れが配分制御の制御対象車輪であるか、すなわち旋回内輪であるかが記憶される。
【0067】
上記ステップ308の処理が終了したら、次に、ステップ310において配分制御の終了条件が成立しているか否かが判別される。本ステップ310では、車両に作用する横加速度Gyが0.2G以下となった場合、および、何れかの車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合に配分制御の終了条件が成立したと判別される。
【0068】
上記ステップ310において配分制御の終了条件が不成立であると判別された場合は、かかる条件が成立するまで、繰り返し上記ステップ308の処理が実行される。一方、配分制御の終了条件が成立すると判別された場合は、ステップ312において、更に、配分制御の制御対象車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。
【0069】
ステップ312で、配分制御の制御対象車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立していると判別された場合は即座に配分制御が終了され、ステップ314でアンチロック制御を実現するための処理が実行され、更に、ステップ316で、アンチロック制御の終了条件が成立しているか否かが判別される。その結果、未だアンチロック制御の終了条件が成立していないと判別された場合は、かかる条件が成立するまで、繰り返し上記ステップ314の処理が実行される。一方、ステップ316でアンチロック制御の終了条件が成立していると判別された場合は今回の処理が終了される。
【0070】
上記ステップ312で、配分制御の制御対象車輪についてアンチロック制御の実行条件が不成立であると判別された場合は、ステップ318で、カウンタCがクリアされた後、再スタートされる。カウンタCは、所定の上限値に向けて常にカウントアップを続けるカウンタである。従って、カウンタCの値は、配分制御の終了条件が成立した後の経過時間を表していることになる。
【0071】
ステップ320では、上記ステップ308で制御対象車輪とされた車輪と逆の車輪を制御対象車輪とする配分制御が開始されたか否かが判別される。本ステップ320の条件は、上記ステップ306の条件が成立した後、車両の旋回方向が反転され、逆の旋回方向に対する配分制御の実行条件が成立した場合に成立する。かかる条件が成立する場合は、上述したカウンタCがストップされた後、ステップ322の処理が、一方、かかる条件が成立しない場合はカウンタCを作動させたままステップ324の処理が実行される。この場合、カウンタ値Cは、一方の旋回方向に対する配分制御が終了された後、他方の旋回方向に対する配分制御が開始されるまでに経過した時間を表すことになる。
【0072】
ステップ322では、図9に示すマップを参照して、配分制御の終了後に実行される旋回内輪側の制動液圧PINについての徐変制御で実現すべき増圧勾配が決定される。本実施例において、制動液圧PINの徐変制御は、旋回内輪側のホイルシリンダに連通する油圧回路を、図10に示すパターンで、所定回数繰り返して保持モードおよび増圧モードとすることで実現される。図10に示すパターンにおいて、油圧回路が保持モードに維持される時間T1 と、増圧モードと保持モードとの繰り返し周期T2 は変動値である。一方、図10に示すパターンの繰り返し回数Nは固定値である。本ステップ322では、図9に示すマップを参照して、これらの変動値T1 およびT2 が決定される。
【0073】
図9に示すマップは、一方の旋回方向に対する配分制御が終了された後、他方の旋回方向に対する配分制御が開始されるまでに経過した時間、すなわち、カウンタCに計数されている時間との関係で、T1 およびT2 を設定したマップである。かかる時間が短時間である場合は、旋回方向の切替え後において適切な制動力を確保するため、徐変制御により旋回内輪の制動液圧PINを速やかに増圧させる必要がある。このため、図9に示すマップは、上記時間が短時間であるほどT1 およびT2 が小さな値となるように設定されている。かかる設定によれば、上記時間が短くなるほど図10に示すパターンの1周期内に占める増圧時間(T2 −T1 )の割合が大きくなり、徐変制御における制動液圧PINの増圧速度が急となる。尚、図9に示すマップは、上記時間が所定値を超える場合は、T1 ,T2 が上限値となるように設定されている。従って、上記時間が長期化した場合においても、図10に示すパターンのデューティ比が不当に小さくなることはない。
【0074】
上記の如く、徐変制御で実現すべき増圧勾配が決定されると、ステップ324で、決定された増圧勾配で制動液圧を徐変させるための処理が実行される。尚、T1 ,T2 には、図9に示すマップの上限値が初期値として設定されている。従って、上記ステップ320の条件が不成立であると判別され、ステップ322がジャンプされてステップ324の処理が実行された場合には、T1 ,T2 に上限値が代入されてなる緩増圧パターンで徐変制御が実行される。
【0075】
ステップ324の処理が終了すると、次に、ステップ326で、徐変制御の終了条件が成立しているか、すなわち、図10に示すパターンが所定回数繰り返されたか否かが判別される。その結果、未だ徐変制御の終了条件が成立していないと判別される場合は、上記312以降の処理が繰り返し実行される。一方、ステップ326で徐変制御の終了条件が成立すると判別された場合は今回のルーチンが終了される。
【0076】
上記の処理によれば、旋回方向が切替えられた後、速やかに新たな旋回方向に対する配分制御を実行する必要があるか否かに応じて、適切な増圧勾配で制動液圧の徐変制御を実行することができる。従って、本実施例の制動力制御装置によれば、配分制御が終了された後の車両挙動を安定に維持し得ると共に、短時間で旋回方向が切替えられた場合において、違和感のない制動力特性を実現することができる。
【0077】
尚、上記の実施例においては、ECU10が配分制御を実行することにより上記請求項1記載の配分制御手段が、上記ステップ324の処理を実行することにより上記請求項1記載の制動液圧徐変手段が、上記ステップ322の処理を実行することにより上記請求項1記載の液圧変化速度変更手段が、また、上記ステップ318,320の処理を実行することにより上記請求項1記載の走行状態検出手段が、それぞれ実現される。
【0079】
ところで、上述した第1乃至第3実施例は、旋回外輪の制動力と旋回内輪の制動力とを所定の関係とする配分制御を実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前輪の制動力と後輪の制動力とを所定の関係とする配分制御を実行する場合に適用してもよい。また、上記の説明においては、第1乃至第3実施例の制御が、それぞれ独立に行われることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の制御を組み合わせて実行することとしてもよい。
【0080】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、制動液圧の配分制御が終了された後、車両の走行状態に応じた適切な液圧速度で、制御対象車輪の制動液圧を徐変させることができる。従って、本発明にかかる制動力制御装置によれば、種々の走行状態の下で、最適な状態で配分制御を終了させることができる。
また、請求項1記載の発明によれば、車両が急制動状態である場合には、アンチロック制御の実行条件が成立した後、制御対象車輪の制動液圧を速やかに変化させることができると共に、車両が緩制動状態である場合には、アンチロック制御の実行条件が成立した後、制御対象車輪の制動液圧を緩やかに変化させることができる。制御対象車輪の制動液圧が速やかに変化すると、アンチロック制御の実行条件が成立した後即座に、制御対象車輪の制動能力を有効に活用することができる。また、制御対象車輪の制動液圧が緩やかに変化すると、アンチロック制御が実行条件が成立した後の車両の挙動変化を抑制することができる。従って、本発明にかかる制動力制御装置によれば、急制動時に高い制動能力を確保しつつ、緩制動時において高い安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のシステム構成図である。
【図2】本発明の第1実施例において緩制動が行われた際の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本発明の第1実施例において急制動が行われた際の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図4】本発明の第1実施例において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施例において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例において実行される制御ルーチン中で用いられるマップの一例である。
【図7】本発明の第2実施例において実行される制動液圧の徐変制御に用いられる増圧パターンの一例である。
【図8】本発明の第3実施例において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施例において実行される制御ルーチン中で用いられるマップの一例である。
【図10】本発明の第3実施例において実行される制動液圧の徐変制御に用いられる増圧パターンの一例である。
【符号の説明】
10 電子制御ユニット(ECU)
12 ブレーキペダル
16 マスタシリンダ
18(18RL,18RR,18FL,18FR) ホイルシリンダ
22(22RL,22RR,22FL,22FR) 増圧用制御弁
26(26RL,26RR,26FL,26FR) 減圧用制御弁
36(36RL,36RR,36FL,36FR) 車輪速センサ
38 ブレーキスイッチ
40 車速センサ
42 加速度センサ
PMC マスタシリンダ圧
PIN 旋回内輪側の制動液圧
POUT 旋回外輪側の制動液圧
Claims (1)
- 車両の各車輪に対して所定の配分比で制動液圧を供給する配分制御手段と、制動液圧の配分制御が終了された後に、前記配分制御の対象とされていた車輪の制動液圧を徐変させる制動液圧徐変手段と、を備える制動力制御装置において、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
該走行状態検出手段の検出結果に基づいて、前記制動液圧徐変手段が制動液圧を徐変させる際の液圧変化速度を変更する液圧変化速度変更手段と、
各車輪のロック状態を判定して各車輪の制動液圧を制御するアンチロック制御手段と、
制動液圧を徐変させる車輪とは異なる車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した際に、前記配分制御の実行を終了させる配分制御終了手段と、を備えると共に、
前記配分制御手段が、車両の制動時に制動液圧の配分制御を実行する制動時配分制御手段を備え、
前記走行状態検出手段が、前記配分制御が開始された後、前記アンチロック制御の実行条件が成立するまでの時間を計数する配分制御実行時間計数手段を備え、かつ、
前記液圧変化速度変更手段が、前記配分制御実行時間計数手段により計数される時間に基づいて前記液圧変化速度を変更する制御時間対応速度変更手段を備え、さらに、
前記アンチロック制御手段は、前記制動液圧徐変手段が前記制御時間対応速度変更手段によって変更された前記液圧変化速度で制動液圧を徐変させている車輪についてアンチロック制御の実行条件が成立した場合、該車輪に対してアンチロック制御を実行する、ことを特徴とする制動力制御装置。
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