JP3607963B2 - トルク検出装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トルク検出装置に係り、更に詳細にはトルク−磁気変換を利用したトルク検出装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
トルク−磁気変換を利用したトルク検出装置の一つとして、例えば特開昭62−203030号公報に記載されている如く、円筒状のトルク伝達体の外周面に固定された円筒状の磁歪管と、軸線方向に互いに隔置された一対の検出コイル極と該一対の検出コイル極を結ぶ線分を底辺とする直角二等辺三角形の頂点に対応する位置に配置された励磁コイル極と、一対の検出コイル極及び励磁コイル極を接続し支持する磁性体よりなる筐体とを有するトルク検出装置が従来より知られている。
【0003】
一般に軸に軸線周りのトルクが作用すると、磁歪管には軸線に対し±45°傾斜した方向に圧縮応力及び引張り応力が発生し、これらの応力により磁歪効果が発生され、これにより磁歪定数が正の場合には引張り応力の方向の透磁率が増大すると共に圧縮応力の方向の透磁率が減少する。また透磁率の増減はトルクの方向により定まり、透磁率の増減量はトルクの大きさにより定まる。
【0004】
従って上記トルク検出装置によれば、励磁コイル極によって磁歪管が交番励磁されることにより発生される誘導磁界であって、軸に作用するトルクによる透磁率変化が最も大きい方向、即ち軸線に対し±45°傾斜した方向の誘導磁界の磁束の変化が検出されるので、例えば軸線方向の磁束の変化が検出される場合に比して精度よく軸に作用するトルクの大きさ及び方向を検出することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の如き従来のトルク検出装置に於いては、周方向について見て磁歪材の一部についてしかトルクによる透磁率変化が利用されないので、磁歪材に於けるトルクによる透磁率変化が有効に利用されず、そのためトルクの大きさ及び方向の検出精度を更に向上させるためには改良の余地がある。
【0006】
本発明は、周方向について見て磁歪材の一部のみしか利用されていない従来のトルク検出装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、磁歪材を実質的にその全周に亘りトルク検出に有効に利用することにより、トルクの検出精度を更に一層向上させることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の如き主要な課題は、本発明によれば、軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置されたコアを有する一対の励磁コイルと、前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端の間に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項1の構成)、又は軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置されたコアを有する一対の励磁コイルと、前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端の間に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び前記軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項2の構成)、又は軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置された一対のコアと、少なくとも前記磁歪材の両側に延在し前記一対のコアの他端を接続する接続部材と、前記一対のコアの少なくとも一方に配置された励磁コイルと、前記一対のコアの前記他端の間にて前記接続部材に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項3の構成)、又は軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置された一対のコアと、少なくとも前記磁歪材の両側に延在し前記一対のコアの他端を接続する接続部材と、前記一対のコアの少なくとも一方に配置された励磁コイルと、前記一対のコアの前記他端の間にて前記接続部材に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び前記軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項4の構成)によって達成される。
【0008】
軸線の両側にて磁歪材の周りには、上記請求項1及び2の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定され、上記請求項3及び4の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、接続部、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定されている。第一及び第二の磁束通路が励磁コイルにより励磁されると、一対の検出コイルには誘導起電力が発生する。これらの構成に於いて、軸に軸線周りのトルクが作用することにより前述の如く磁歪材に軸線に対し±45°傾斜した方向に圧縮応力及び引張り応力が発生されると、引張り応力の方向の透磁率が増大すると共に圧縮応力の方向の透磁率が減少し、これにより一方の検出コイルの誘導起電力は増大し他方の検出コイルの誘導起電力は減少し、誘導起電力の増減及び増減量はそれぞれトルクの方向及び大きさに対応している。
【0009】
また第一及び第二の磁束通路は磁歪材に於いて軸線の周りに実質的に180°の範囲に亘り延在しているので、磁歪材に於ける磁束通路の延在範囲が比較的小さい従来のトルク検出装置の場合に比して、軸にトルクが作用することによる磁歪材の透磁率の変化が有効に利用される。従って請求項1乃至4の構成によれば、軸に作用するトルクの大きさ及び方向が更に一層高精度に検出される。
【0011】
上記請求項1乃至4の構成に於て、第一及び第二の磁束通路の磁歪材の周りの部分に於いて軸にトルクが作用することによる磁束の変化が最も顕著に現れるのは一対のコアの他端を磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿う方向である。請求項1及び3の構成によれば、一対の検出コイルは磁歪材の両側にて一対のコアの他端を磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在しているので、軸にトルクが作用することによる第一及び第二の磁束通路の磁束の変化が最も効率的に検出される。
【0013】
上記請求項1乃至4の構成に於て、磁歪材の両側にて一対のコアの他端を結ぶ線に垂直な方向は等磁位面の方向であり、一対の検出コイルが一対のコアの他端を結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していれば、一対の検出コイルにはそれらの両端の等磁位面からの磁位差に起因する誘導起電力が発生する。
【0014】
またこれらの誘導起電力は軸にトルクが作用していない場合には互いに同一であるが、軸にトルクが作用すると一方の検出コイルの誘導起電力は増大し他方の検出コイルの誘導起電力は減少し、誘導起電力の増減及び増減量はそれぞれトルクの方向及び大きさに対応している。従って請求項2及び4の構成によれば、上記誘導起電力の増減及び増減量により軸に作用するトルクの大きさ及び方向が検出される。
【0015】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の構成に於て、前記一対の検出コイルの出力の和に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されるよう構成される(請求項5の構成)。
【0016】
トルクの大小及び方向に拘らず軸にトルクが作用することによる第一及び第二の磁束通路に於ける磁歪材の透磁率の増大量及び減少量は実質的に互いに同一であり、従って二つの磁束通路の磁束の増大量及び磁束の減少量は実質的に互いに同一であるので、トルク検出装置に外乱が作用していなければ、第一及び第二の磁束通路が励磁コイルによって励磁されることにより発生される磁束の総和の実効値は実質的に一定であり、従って一対の検出コイルの出力の和の実効値も実質的に一定である。換言すれば、一対の検出コイルの出力の和の実効値の変動は温度変化の如き外乱を意味する。
【0017】
請求項5の構成によれば、一対の検出コイルの出力の和に基づいて励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正されるので、温度変化の如き外乱の影響を排除することが可能であり、従って上記請求項1乃至4の構成の場合に比して更に一層トルクの検出精度が向上する。
【0018】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の構成に於て、前記一対のコアの間にて前記磁歪材の周りにはフィードバックコイルが配置され、前記フィードバックコイルの出力に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されるよう構成され(請求項6の構成)、また上記請求項1乃至4の構成に於て、前記励磁コイルは前記一対のコアの一方に配置され、前記一対のコアの他方にはフィードバックコイルが配置され、前記フィードバックコイルの出力に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されるよう構成される(請求項7の構成)。
【0019】
請求項6及び7の構成のフィードバックコイルは第一及び第二の磁束通路の両方に流れる磁束による誘導起電力を検出するので、これらのフィードバックコイルの出力は請求項5の構成に於ける一対の検出コイルの出力の和と同様に機能する。従って請求項6及び7の構成によれば、請求項5の構成の場合と同様、上記請求項1乃至4の構成の場合に比して更に一層トルクの検出精度が向上する。
【0020】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至7の何れかの構成に於いて、一対のコアの径方向の間隔及び軸線方向の間隔は実質的に同一であるよう構成される。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至7の何れかの構成に於いて、一対の検出コイルは一対のコアの他端より等距離の位置に配置される。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、一対の励磁コイル及び一対の検出コイルは軸部材の軸線に沿って延在するよう配置される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明によるトルク検出装置の幾つかの実施形態について詳細に説明する。
【0024】
第一の実施形態
図1は本発明によるトルク検出装置の第一の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図2は第一の実施形態の磁歪管を示す斜視図(A)及び展開図 (B)である。
【0025】
図1に於いて、トルク検出装置10は軸線Gに沿って互いに密に嵌合する実質的に円柱状の軸12及び実質的に円筒状の磁歪管14と、磁歪管14の周りにてこれに近接して配置された磁気検出器16とを含んでいる。軸12は低透磁率の非磁性体にて形成され、磁歪管14は磁歪定数が正の磁歪材にて形成され、これらは互いに焼嵌めにより一体的に嵌合されている。
【0026】
磁気検出器16は軟磁性材にて形成された一対のコア(脚部)18A及び18Bを含んでいる。コア18A及び18Bは磁歪管14の表面の一対の対向部A及びBに近接して配置され、磁歪管14に対し径方向に延在している。対向部A及びBは軸線Gに沿って互いに隔置され且つ軸線の周りに180°互いに隔置されている。対向部A及びBの径方向の間隔及び軸線方向の間隔は実質的に同一であり、従って磁歪管14の表面に沿って対向部A及びBを螺旋状に結ぶ線分La 及びLb は図2(B)の展開図で見て軸線Gに対し実質的に45°の角度をなしている。尚以上の構成は特に言及がない限り後述の他の実施形態についても同様である。
【0027】
この実施形態に於いては、コア18A及び18Bにはそれぞれ対応するコアを同一方向に(磁歪管14に対し逆方向に)励磁する励磁コイル20A及び20Bが同一の巻き数にて巻回されており、これらのコイルは互いに直列に接続されている。また磁気検出器16は軟磁性材にて形成された一対のコア22A及び22Bを含んでいる。コア22A及び22Bはコア18A及び18Bの磁歪管14とは反対の側の端部を実質的に磁歪管の表面に平行に螺旋状に結ぶ線分Lc 及びLd の中点に位置し、線分Lc 及びLd に沿って延在している。コア22A及び22Bにはそれぞれ検出コイル24A及び24Bが同一の巻き数にて巻回されている。尚図には示されていないが、コア18A、18B及びコア22A、22Bは非磁性材にて形成されたハウジングにより支持されている。
【0028】
従って図1(B)に示されている如く、コア18A、磁歪管14の線分La に沿う部分、コア18B、大気及びコア22Aを通る第一の磁束通路26Aと、コア18A、磁歪管14の線分Lb に沿う部分、コア18B、大気及びコア22Bを通る第二の磁束通路26Bとが形成されており、検出コイル24A及び24Bはそれぞれ第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの磁気変化を検出する。励磁コイル20A、20B及び検出コイル24A、24Bは制御装置28に接続されている。
【0029】
図3に示されている如く、制御装置28はそれぞれ検出コイル24A及び24Bに接続された増幅器30A及び30Bを有し、これらの増幅器の出力は加算増幅器32及び差動増幅器34へ入力される。また制御装置28は励磁コイル20A及び20Bに接続された発振回路36を有し、発振回路36は数K〜100KHz 程度の正弦波状又はパルス状の高周波電圧を励磁コイル20A及び20Bに印加する。
【0030】
励磁コイル20A及び20Bが発振回路36により駆動され、第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bに交播磁束が与えられると、検出コイル24A及び24Bには磁束の変化に対応する誘導起電力が発生するので、これらの誘導起電力の電圧がそれぞれ増幅器30A及び30Bにより増幅される。加算増幅器32は増幅器30A及び30Bの出力を加算増幅しその出力はAGC(オートゲインコントロール)38へ入力される。また差動増幅器34は増幅器30A及び30Bの出力を差動増幅して実効値化回路39へ出力する。実効値化回路39により実効値化された電圧はその大きさ及び符号によりそれぞれトルクの大きさ及び方向を示し、該電圧信号を受ける表示装置40はトルクの大きさ及び方向を表示する。
【0031】
特に増幅器30A及び30Bのゲインは調節可能であり、これらのゲインは軸12にトルクが作用していない状況に於ける差動増幅器32の出力が0になるよう調節され、これによりコア22A及び22Bと磁歪管14の外周円筒面との間のクリアランスの相違等に起因する二つの磁束通路26A及び26Bの磁気抵抗の相違が補正される。またAGC38は加算増幅器32よりの出力に基づき増幅器30A及び30Bの出力の実効値の和が実質的に一定になるよう、換言すれば二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20Bに与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう、発振回路36のゲインを制御する。
【0032】
この実施形態に於いて、二つの磁束通路26A及び26Bの磁気抵抗が同一であり、また漏れ磁束を無視できるとすれば、軸12にトルクが作用していない状況にて励磁コイル20A及び20Bが駆動されコア18A及び18Bが励磁されると、これらのコアに流れる磁束は二つの磁束通路26A及び26Bに等しく分割される。従って検出コイル24A及び24Bに発生する誘導起電力は同一であり、差動増幅器32の出力は0になり、軸12にはトルクが作用していないことが判る。
【0033】
これに対し図4(A)に示されている如く、軸12にトルクTd が作用することにより、軸線Gに対し45°傾斜した方向の引張り応力Fdt及び圧縮応力Fdcが磁歪管14に作用すると、引張り応力Fdtの方向(第一の磁束通路26Aに平行な方向)の透磁率が増大すると共に圧縮応力Fdcの方向(第二の磁束通路26Bに平行な方向)の透磁率が減少し、その増減量はトルクTd の大きさに実質的に比例する。また図4(B)に示されている如く、図4(A)の場合とは逆方向にトルクTd が作用することにより、軸線Gに対し45°傾斜した方向の引張り応力Fdt及び圧縮応力Fdcが図4(A)の場合とは逆の方向に作用すると、図4(A)の場合とは逆の態様にて透磁率が増減し、この場合にも透磁率の増減量はトルクTd の大きさに実質的に比例する。
【0034】
従って第一の実施形態によれば、トルクTd の方向に応じて第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの一方の透磁率が増大すると共に他方の透磁率が減少し、その透磁率の増減に応じて差動増幅器34の出力電圧が正又は負になり、またトルクTd の大きさに応じて差動増幅器34の出力電圧が増減するので、実効値化回路39の出力電圧の符号及び大きさにより軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを検出することができる。
【0035】
また第一の実施形態によれば、磁歪管14に於ける第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bは軸線Gに対し±45°傾斜してそれぞれ軸線Gの周りに180°の範囲に亘り延在しているので、二つの磁束通路の傾斜方向が軸線に対し±45°以外の方向である場合や、磁束通路の延在範囲が軸線Gの周りのごく一部である従来の構造に比して、磁歪材14に於ける磁歪効果を有効に利用することができ、これによりトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0036】
また図4(A)及び図4(B)の何れの場合にも、軸12にトルクが作用することによる第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの一方の透磁率の増大量及び他方の透磁率の減少量は実質的に同一であるので、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギと発振回路36により励磁コイル20A及び20Bに与えられる励振エネルギとの間の偏差の変化又ははこれらのエネルギの間の比の変化は、例えば温度変化による透磁率の変化などの外乱によるものである。
【0037】
図示の第一の実施形態によれば、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20Bに与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう、AGC38により発振回路36のゲインが制御されるので、温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去することができ、このことによってもトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0038】
第二の実施形態
図5は本発明によるトルク検出装置の第二の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図6は第二の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。尚図5及び図6に於いて、それぞれ図1及び図3に示された部分に対応する部分には図1及び図3に於いて付された符号と同一の符号が付されている(このことは後述の他の実施形態についても同様である)。
【0039】
この実施形態に於いては、磁気検出器16は一対の対向部A及びBに近接して配置され径方向に延在する一対の脚部18A及び18Bと、磁歪管14の周りにて軸線Gと同心に延在する実質的に円筒状をなし脚部18A及び18Bを一体的に接続する接続部材18Cとを含んでいる。接続部材18Cも軟磁性材にて形成され、磁歪管14の両側にて接続部材18Cには二組の一対の溝40が設けられている。検出コイル24A及び24Bはこれらの溝40の間の部分に巻回され、それぞれ線分Lc 及びLd に沿って延在している。脚部18Aには励磁コイル20が巻回されているが、脚部18Bには励磁コイルは巻回されていない。
【0040】
この実施形態は、他の点については第一の実施形態と同様に形成されており、脚部18Aのみが励磁コイル20により励磁され、第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの脚部18A及び18Bの外端の間の部分が接続部材18Cにより郭定される点を除き第一の実施形態と同様に作動するので、この実施形態の場合にも温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去して軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0041】
またこの実施形態によれば、接続部材18Cが実質的に円筒状のハウジングとしての機能をも果たし、脚部18A及び18Bが接続部材18Cの内面に例えばねじ止めにより固定されればよいので、第一の実施形態の場合に比して部品点数及びコストを低減することができる。
【0042】
第三及び第四の実施形態
図7は本発明によるトルク検出装置の第三の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図8は第三の実施形態の電気回路を示すブロック線図、図9は本発明によるトルク検出装置の第四の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図10は第四の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【0043】
図7及び図8に示された第三の実施形態は第一の実施形態に対応しており、この実施形態に於いては、励磁コイル20A、20B及び検出コイル24A、24Bに加えてフィードバックコイル42が設けられており、フィードバックコイル42は脚部18Aと18Bとの間にて磁歪管14の周りに巻回されている。一方図9及び図10に示された第四の実施形態は第二の実施形態に対応しており、この実施形態に於いては、脚部18Aには励磁コイル20が巻回されており、脚部18Bにはフィードバックコイル42が巻回されている。
【0044】
また図8及び図10に示されている如く、これらの実施形態の制御装置28には、第一及び第二の実施形態に於ける加算増幅器32は設けられておらず、フィードバックコイル42に発生する誘導起電力の電圧は増幅器44により増幅され、増幅器44の出力はAGC38へ入力される。フィードバックコイル42には第一の磁束通路26Aに流れる磁束による起電力と第二の磁束通路26Bに流れる磁束による起電力との和に等しい起電力が発生するので、これらの実施形態に於けるAGC38も二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20に与えられる励振エネルギと実質的に一致するよう、発振回路36のゲインを制御する。
【0045】
これら第三及び第四の実施形態は、他の点についてはそれぞれ第一及び第二の実施形態と同様に形成されており、従って第一及び第二の実施形態と同様に作動するので、これらの実施形態の場合にも温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去して軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0046】
第五の実施形態
図11は本発明によるトルク検出装置の第五の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図12は本発明によるトルク検出装置の第六の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図13は軸にトルクが作用していない場合(A)及び軸にトルクが作用している場合(B)について第五及び第六の実施形態の磁歪管を示す展開図である。
【0047】
図11に示された第五の実施形態に於いては、一対のコア22A及び22Bは軸線Gに平行に延在し、これにより検出コイル24A及び24Bも軸線Gに平行に延在している。一方図12に示された第六の実施形態に於いては、一対のコア22A及び22Bは軸線G及び一対の対向部A、Bを通る仮想平面(図示せず)に平行であってそれぞれ線分La 及びLb に垂直な方向に延在し、これにより検出コイル24A及び24Bもそれぞれ線分La 及びLb に垂直な方向に延在している。また何れの実施形態も他の点については第一の実施形態と同様に形成されている。
【0048】
磁歪管14の焼嵌めによる周方向及び軸線方向の引っ張り残留応力が小さく、軸12にトルクが作用していない場合には、図13(A)に示されている如く、磁歪管14の周りに於ける第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの等磁位面Pc 及びPd は線分Lc 及びLd に垂直であるので、励磁コイル20A及び20Bが駆動されると、コア22A及び22Bの両端の等磁位面Pc 及びPd からの励位差により、検出コイル24A及び24Bには起電力が発生し、それらの起電力は実質的に互いに等しい。
【0049】
これに対し軸12に例えば図4(B)に示されている如くトルクTd が作用すると、磁歪管14の透磁率がトルクTd による引張り応力Fdtの方向については増大し、圧縮応力Fdcの方向については減少するので、図13(B)に示されている如く、第一の磁束通路26Aの磁束は増大するが、第二の磁束通路26Bの磁束は減少する。従って検出コイル24Aに発生する起電力は増大するが、検出コイル24Bに発生する起電力は減少し、その差は軸12に作用するトルクTd の大きさに比例し、差の符号は軸12に作用するトルクTd の方向に対応している。
【0050】
従ってこれらの実施形態の場合にも、上述の他の実施形態の場合と同様温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去して軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。また第一、第五、第六の実施形態より、二つの検出コイル24A及び24Bはそれぞれ線分Lc 及びLd に垂直な方向以外の方向であって前記仮想平面に平行な方向に延在していればよいことが解る。
【0051】
以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0052】
例えば上述の各実施形態に於いては、一対の脚部18A及び18Bは磁歪管14の軸線Gに垂直に延在しているが、これらの脚部は磁歪管14の軸線方向に延在していてもよく、更には対向部AとBとを直線的に結ぶ直線に沿って延在していてもよい。
【0053】
また上述の各実施形態に於いては、軸12は非磁性材にて形成されているが、磁歪管14に於ける磁歪効果の逆現象と同一の逆現象が軸に於いても発生するよう、軸は負の磁歪定数を有する磁歪材にて形成されてもよく、その場合には図示の各実施形態の場合よりもトルクの検出感度及び検出精度を更に一層向上させることができる。
【0054】
また上述の第二及び第四の実施形態に於いて、脚部18Bにも励磁コイルが巻回されてもよく、第三及び第四の実施形態に於いて、検出コイル24A及び24Bはそれぞれ線分Lc 及びLd に垂直な方向以外の方向であって前記仮想平面に平行な任意の方向に設定されてもよく、また第四の実施形態に於いてフィードバックコイル42は脚部18Bに巻回されてもよい。
【0055】
また上述の各実施形態に於いて、検出コイル24A及び24Bはそれぞれ線分Lc 及びLd の中点に設けられているが、これらの検出コイルは脚部18A又は18Bの他端より実質的に等距離の位置である限り、図示の位置よりも脚部18Aの他端又は18Bの他端側に位置していてもよく、また図示の位置よりも軸線Gに近い位置又は遠い位置に位置していてもよい。
【0056】
更に上述の各実施形態に於いては、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20B又は20に与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう、発振回路36のゲインがAGC38によって制御されるようになっているが、加算増幅器32の出力又は増幅器44の出力に基づき差動増幅器34のゲインが制御されることにより、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20B又は20に与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう制御されてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、上記請求項1及び2の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定され、上記請求項3及び4の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、接続部、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定され、第一及び第二の磁束通路は磁歪材に於いて軸線の周りに実質的に180°の範囲に亘り延在しているので、磁歪材に於ける磁束通路の延在範囲が比較的小さい従来のトルク検出装置の場合に比して、軸にトルクが作用することによる磁歪材の透磁率の変化を有効に利用することができ、従って請求項1乃至4の構成によれば、軸に作用するトルクの大きさ及び方向を更に一層高精度に検出することができる。
【0058】
また請求項1及び3の構成によれば、一対の検出コイルは磁歪材の両側にて一対のコアの他端を磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在しているので、軸にトルクが作用することによる第一及び第二の磁束通路の磁束の変化を最も効率的に検出することができる。
【0059】
また請求項2及び4の構成によれば、一対の検出コイルにそれらの両端の等磁位面からの磁位差に起因して発生する誘導起電力の増減及び増減量として軸に作用するトルクの大きさ及び方向が検出することができる。
【0060】
また請求項5の構成によれば、一対の検出コイルの出力の和に基づいて励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正され、請求項6の構成によれば、一対の励磁コイルの間にて磁歪材の周りに配置されたフィードバックコイルの出力に基づき励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正され、請求項7の構成によれば、一対のコアの一方に励磁コイルが配置され、一対のコアの他方に配置されたフィードバックコイルの出力に基づき励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正されるので、温度変化の如き外乱の影響を排除することができ、従ってこれらの構成によれば、請求項1乃至4の構成の場合に比して更に一層トルクの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるトルク検出装置の第一の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図2】第一の実施形態の磁歪管を示す斜視図(A)及び展開図(B)である。
【図3】第一の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図4】軸にトルクが作用した場合に磁歪管に生じる応力を示すベクトル図である。
【図5】本発明によるトルク検出装置の第二の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図6】第二の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図7】本発明によるトルク検出装置の第三の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図8】第三の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図9】本発明によるトルク検出装置の第四の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図10】第四の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図11】本発明によるトルク検出装置の第五の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図12】本発明によるトルク検出装置の第六の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図13】軸にトルクが作用していない場合(A)及び軸にトルクが作用している場合 (B)について第五及び第六の実施形態の磁歪管を示す展開図である。
【符号の説明】
10…トルク検出装置
12…軸
14…磁歪管
16…磁気検出器
18A、18B…脚部(コア)
20、20A、20B…検出コイル
24A、24B…検出コイル
26A4、26B…磁束通路
28…制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、トルク検出装置に係り、更に詳細にはトルク−磁気変換を利用したトルク検出装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
トルク−磁気変換を利用したトルク検出装置の一つとして、例えば特開昭62−203030号公報に記載されている如く、円筒状のトルク伝達体の外周面に固定された円筒状の磁歪管と、軸線方向に互いに隔置された一対の検出コイル極と該一対の検出コイル極を結ぶ線分を底辺とする直角二等辺三角形の頂点に対応する位置に配置された励磁コイル極と、一対の検出コイル極及び励磁コイル極を接続し支持する磁性体よりなる筐体とを有するトルク検出装置が従来より知られている。
【0003】
一般に軸に軸線周りのトルクが作用すると、磁歪管には軸線に対し±45°傾斜した方向に圧縮応力及び引張り応力が発生し、これらの応力により磁歪効果が発生され、これにより磁歪定数が正の場合には引張り応力の方向の透磁率が増大すると共に圧縮応力の方向の透磁率が減少する。また透磁率の増減はトルクの方向により定まり、透磁率の増減量はトルクの大きさにより定まる。
【0004】
従って上記トルク検出装置によれば、励磁コイル極によって磁歪管が交番励磁されることにより発生される誘導磁界であって、軸に作用するトルクによる透磁率変化が最も大きい方向、即ち軸線に対し±45°傾斜した方向の誘導磁界の磁束の変化が検出されるので、例えば軸線方向の磁束の変化が検出される場合に比して精度よく軸に作用するトルクの大きさ及び方向を検出することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の如き従来のトルク検出装置に於いては、周方向について見て磁歪材の一部についてしかトルクによる透磁率変化が利用されないので、磁歪材に於けるトルクによる透磁率変化が有効に利用されず、そのためトルクの大きさ及び方向の検出精度を更に向上させるためには改良の余地がある。
【0006】
本発明は、周方向について見て磁歪材の一部のみしか利用されていない従来のトルク検出装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、磁歪材を実質的にその全周に亘りトルク検出に有効に利用することにより、トルクの検出精度を更に一層向上させることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の如き主要な課題は、本発明によれば、軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置されたコアを有する一対の励磁コイルと、前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端の間に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項1の構成)、又は軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置されたコアを有する一対の励磁コイルと、前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端の間に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び前記軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項2の構成)、又は軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置された一対のコアと、少なくとも前記磁歪材の両側に延在し前記一対のコアの他端を接続する接続部材と、前記一対のコアの少なくとも一方に配置された励磁コイルと、前記一対のコアの前記他端の間にて前記接続部材に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項3の構成)、又は軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置された一対のコアと、少なくとも前記磁歪材の両側に延在し前記一対のコアの他端を接続する接続部材と、前記一対のコアの少なくとも一方に配置された励磁コイルと、前記一対のコアの前記他端の間にて前記接続部材に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び前記軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していることを特徴とするトルク検出装置(請求項4の構成)によって達成される。
【0008】
軸線の両側にて磁歪材の周りには、上記請求項1及び2の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定され、上記請求項3及び4の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、接続部、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定されている。第一及び第二の磁束通路が励磁コイルにより励磁されると、一対の検出コイルには誘導起電力が発生する。これらの構成に於いて、軸に軸線周りのトルクが作用することにより前述の如く磁歪材に軸線に対し±45°傾斜した方向に圧縮応力及び引張り応力が発生されると、引張り応力の方向の透磁率が増大すると共に圧縮応力の方向の透磁率が減少し、これにより一方の検出コイルの誘導起電力は増大し他方の検出コイルの誘導起電力は減少し、誘導起電力の増減及び増減量はそれぞれトルクの方向及び大きさに対応している。
【0009】
また第一及び第二の磁束通路は磁歪材に於いて軸線の周りに実質的に180°の範囲に亘り延在しているので、磁歪材に於ける磁束通路の延在範囲が比較的小さい従来のトルク検出装置の場合に比して、軸にトルクが作用することによる磁歪材の透磁率の変化が有効に利用される。従って請求項1乃至4の構成によれば、軸に作用するトルクの大きさ及び方向が更に一層高精度に検出される。
【0011】
上記請求項1乃至4の構成に於て、第一及び第二の磁束通路の磁歪材の周りの部分に於いて軸にトルクが作用することによる磁束の変化が最も顕著に現れるのは一対のコアの他端を磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿う方向である。請求項1及び3の構成によれば、一対の検出コイルは磁歪材の両側にて一対のコアの他端を磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在しているので、軸にトルクが作用することによる第一及び第二の磁束通路の磁束の変化が最も効率的に検出される。
【0013】
上記請求項1乃至4の構成に於て、磁歪材の両側にて一対のコアの他端を結ぶ線に垂直な方向は等磁位面の方向であり、一対の検出コイルが一対のコアの他端を結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していれば、一対の検出コイルにはそれらの両端の等磁位面からの磁位差に起因する誘導起電力が発生する。
【0014】
またこれらの誘導起電力は軸にトルクが作用していない場合には互いに同一であるが、軸にトルクが作用すると一方の検出コイルの誘導起電力は増大し他方の検出コイルの誘導起電力は減少し、誘導起電力の増減及び増減量はそれぞれトルクの方向及び大きさに対応している。従って請求項2及び4の構成によれば、上記誘導起電力の増減及び増減量により軸に作用するトルクの大きさ及び方向が検出される。
【0015】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の構成に於て、前記一対の検出コイルの出力の和に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されるよう構成される(請求項5の構成)。
【0016】
トルクの大小及び方向に拘らず軸にトルクが作用することによる第一及び第二の磁束通路に於ける磁歪材の透磁率の増大量及び減少量は実質的に互いに同一であり、従って二つの磁束通路の磁束の増大量及び磁束の減少量は実質的に互いに同一であるので、トルク検出装置に外乱が作用していなければ、第一及び第二の磁束通路が励磁コイルによって励磁されることにより発生される磁束の総和の実効値は実質的に一定であり、従って一対の検出コイルの出力の和の実効値も実質的に一定である。換言すれば、一対の検出コイルの出力の和の実効値の変動は温度変化の如き外乱を意味する。
【0017】
請求項5の構成によれば、一対の検出コイルの出力の和に基づいて励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正されるので、温度変化の如き外乱の影響を排除することが可能であり、従って上記請求項1乃至4の構成の場合に比して更に一層トルクの検出精度が向上する。
【0018】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の構成に於て、前記一対のコアの間にて前記磁歪材の周りにはフィードバックコイルが配置され、前記フィードバックコイルの出力に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されるよう構成され(請求項6の構成)、また上記請求項1乃至4の構成に於て、前記励磁コイルは前記一対のコアの一方に配置され、前記一対のコアの他方にはフィードバックコイルが配置され、前記フィードバックコイルの出力に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されるよう構成される(請求項7の構成)。
【0019】
請求項6及び7の構成のフィードバックコイルは第一及び第二の磁束通路の両方に流れる磁束による誘導起電力を検出するので、これらのフィードバックコイルの出力は請求項5の構成に於ける一対の検出コイルの出力の和と同様に機能する。従って請求項6及び7の構成によれば、請求項5の構成の場合と同様、上記請求項1乃至4の構成の場合に比して更に一層トルクの検出精度が向上する。
【0020】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至7の何れかの構成に於いて、一対のコアの径方向の間隔及び軸線方向の間隔は実質的に同一であるよう構成される。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至7の何れかの構成に於いて、一対の検出コイルは一対のコアの他端より等距離の位置に配置される。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、一対の励磁コイル及び一対の検出コイルは軸部材の軸線に沿って延在するよう配置される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明によるトルク検出装置の幾つかの実施形態について詳細に説明する。
【0024】
第一の実施形態
図1は本発明によるトルク検出装置の第一の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図2は第一の実施形態の磁歪管を示す斜視図(A)及び展開図 (B)である。
【0025】
図1に於いて、トルク検出装置10は軸線Gに沿って互いに密に嵌合する実質的に円柱状の軸12及び実質的に円筒状の磁歪管14と、磁歪管14の周りにてこれに近接して配置された磁気検出器16とを含んでいる。軸12は低透磁率の非磁性体にて形成され、磁歪管14は磁歪定数が正の磁歪材にて形成され、これらは互いに焼嵌めにより一体的に嵌合されている。
【0026】
磁気検出器16は軟磁性材にて形成された一対のコア(脚部)18A及び18Bを含んでいる。コア18A及び18Bは磁歪管14の表面の一対の対向部A及びBに近接して配置され、磁歪管14に対し径方向に延在している。対向部A及びBは軸線Gに沿って互いに隔置され且つ軸線の周りに180°互いに隔置されている。対向部A及びBの径方向の間隔及び軸線方向の間隔は実質的に同一であり、従って磁歪管14の表面に沿って対向部A及びBを螺旋状に結ぶ線分La 及びLb は図2(B)の展開図で見て軸線Gに対し実質的に45°の角度をなしている。尚以上の構成は特に言及がない限り後述の他の実施形態についても同様である。
【0027】
この実施形態に於いては、コア18A及び18Bにはそれぞれ対応するコアを同一方向に(磁歪管14に対し逆方向に)励磁する励磁コイル20A及び20Bが同一の巻き数にて巻回されており、これらのコイルは互いに直列に接続されている。また磁気検出器16は軟磁性材にて形成された一対のコア22A及び22Bを含んでいる。コア22A及び22Bはコア18A及び18Bの磁歪管14とは反対の側の端部を実質的に磁歪管の表面に平行に螺旋状に結ぶ線分Lc 及びLd の中点に位置し、線分Lc 及びLd に沿って延在している。コア22A及び22Bにはそれぞれ検出コイル24A及び24Bが同一の巻き数にて巻回されている。尚図には示されていないが、コア18A、18B及びコア22A、22Bは非磁性材にて形成されたハウジングにより支持されている。
【0028】
従って図1(B)に示されている如く、コア18A、磁歪管14の線分La に沿う部分、コア18B、大気及びコア22Aを通る第一の磁束通路26Aと、コア18A、磁歪管14の線分Lb に沿う部分、コア18B、大気及びコア22Bを通る第二の磁束通路26Bとが形成されており、検出コイル24A及び24Bはそれぞれ第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの磁気変化を検出する。励磁コイル20A、20B及び検出コイル24A、24Bは制御装置28に接続されている。
【0029】
図3に示されている如く、制御装置28はそれぞれ検出コイル24A及び24Bに接続された増幅器30A及び30Bを有し、これらの増幅器の出力は加算増幅器32及び差動増幅器34へ入力される。また制御装置28は励磁コイル20A及び20Bに接続された発振回路36を有し、発振回路36は数K〜100KHz 程度の正弦波状又はパルス状の高周波電圧を励磁コイル20A及び20Bに印加する。
【0030】
励磁コイル20A及び20Bが発振回路36により駆動され、第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bに交播磁束が与えられると、検出コイル24A及び24Bには磁束の変化に対応する誘導起電力が発生するので、これらの誘導起電力の電圧がそれぞれ増幅器30A及び30Bにより増幅される。加算増幅器32は増幅器30A及び30Bの出力を加算増幅しその出力はAGC(オートゲインコントロール)38へ入力される。また差動増幅器34は増幅器30A及び30Bの出力を差動増幅して実効値化回路39へ出力する。実効値化回路39により実効値化された電圧はその大きさ及び符号によりそれぞれトルクの大きさ及び方向を示し、該電圧信号を受ける表示装置40はトルクの大きさ及び方向を表示する。
【0031】
特に増幅器30A及び30Bのゲインは調節可能であり、これらのゲインは軸12にトルクが作用していない状況に於ける差動増幅器32の出力が0になるよう調節され、これによりコア22A及び22Bと磁歪管14の外周円筒面との間のクリアランスの相違等に起因する二つの磁束通路26A及び26Bの磁気抵抗の相違が補正される。またAGC38は加算増幅器32よりの出力に基づき増幅器30A及び30Bの出力の実効値の和が実質的に一定になるよう、換言すれば二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20Bに与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう、発振回路36のゲインを制御する。
【0032】
この実施形態に於いて、二つの磁束通路26A及び26Bの磁気抵抗が同一であり、また漏れ磁束を無視できるとすれば、軸12にトルクが作用していない状況にて励磁コイル20A及び20Bが駆動されコア18A及び18Bが励磁されると、これらのコアに流れる磁束は二つの磁束通路26A及び26Bに等しく分割される。従って検出コイル24A及び24Bに発生する誘導起電力は同一であり、差動増幅器32の出力は0になり、軸12にはトルクが作用していないことが判る。
【0033】
これに対し図4(A)に示されている如く、軸12にトルクTd が作用することにより、軸線Gに対し45°傾斜した方向の引張り応力Fdt及び圧縮応力Fdcが磁歪管14に作用すると、引張り応力Fdtの方向(第一の磁束通路26Aに平行な方向)の透磁率が増大すると共に圧縮応力Fdcの方向(第二の磁束通路26Bに平行な方向)の透磁率が減少し、その増減量はトルクTd の大きさに実質的に比例する。また図4(B)に示されている如く、図4(A)の場合とは逆方向にトルクTd が作用することにより、軸線Gに対し45°傾斜した方向の引張り応力Fdt及び圧縮応力Fdcが図4(A)の場合とは逆の方向に作用すると、図4(A)の場合とは逆の態様にて透磁率が増減し、この場合にも透磁率の増減量はトルクTd の大きさに実質的に比例する。
【0034】
従って第一の実施形態によれば、トルクTd の方向に応じて第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの一方の透磁率が増大すると共に他方の透磁率が減少し、その透磁率の増減に応じて差動増幅器34の出力電圧が正又は負になり、またトルクTd の大きさに応じて差動増幅器34の出力電圧が増減するので、実効値化回路39の出力電圧の符号及び大きさにより軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを検出することができる。
【0035】
また第一の実施形態によれば、磁歪管14に於ける第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bは軸線Gに対し±45°傾斜してそれぞれ軸線Gの周りに180°の範囲に亘り延在しているので、二つの磁束通路の傾斜方向が軸線に対し±45°以外の方向である場合や、磁束通路の延在範囲が軸線Gの周りのごく一部である従来の構造に比して、磁歪材14に於ける磁歪効果を有効に利用することができ、これによりトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0036】
また図4(A)及び図4(B)の何れの場合にも、軸12にトルクが作用することによる第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの一方の透磁率の増大量及び他方の透磁率の減少量は実質的に同一であるので、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギと発振回路36により励磁コイル20A及び20Bに与えられる励振エネルギとの間の偏差の変化又ははこれらのエネルギの間の比の変化は、例えば温度変化による透磁率の変化などの外乱によるものである。
【0037】
図示の第一の実施形態によれば、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20Bに与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう、AGC38により発振回路36のゲインが制御されるので、温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去することができ、このことによってもトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0038】
第二の実施形態
図5は本発明によるトルク検出装置の第二の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図6は第二の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。尚図5及び図6に於いて、それぞれ図1及び図3に示された部分に対応する部分には図1及び図3に於いて付された符号と同一の符号が付されている(このことは後述の他の実施形態についても同様である)。
【0039】
この実施形態に於いては、磁気検出器16は一対の対向部A及びBに近接して配置され径方向に延在する一対の脚部18A及び18Bと、磁歪管14の周りにて軸線Gと同心に延在する実質的に円筒状をなし脚部18A及び18Bを一体的に接続する接続部材18Cとを含んでいる。接続部材18Cも軟磁性材にて形成され、磁歪管14の両側にて接続部材18Cには二組の一対の溝40が設けられている。検出コイル24A及び24Bはこれらの溝40の間の部分に巻回され、それぞれ線分Lc 及びLd に沿って延在している。脚部18Aには励磁コイル20が巻回されているが、脚部18Bには励磁コイルは巻回されていない。
【0040】
この実施形態は、他の点については第一の実施形態と同様に形成されており、脚部18Aのみが励磁コイル20により励磁され、第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの脚部18A及び18Bの外端の間の部分が接続部材18Cにより郭定される点を除き第一の実施形態と同様に作動するので、この実施形態の場合にも温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去して軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0041】
またこの実施形態によれば、接続部材18Cが実質的に円筒状のハウジングとしての機能をも果たし、脚部18A及び18Bが接続部材18Cの内面に例えばねじ止めにより固定されればよいので、第一の実施形態の場合に比して部品点数及びコストを低減することができる。
【0042】
第三及び第四の実施形態
図7は本発明によるトルク検出装置の第三の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図8は第三の実施形態の電気回路を示すブロック線図、図9は本発明によるトルク検出装置の第四の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図10は第四の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【0043】
図7及び図8に示された第三の実施形態は第一の実施形態に対応しており、この実施形態に於いては、励磁コイル20A、20B及び検出コイル24A、24Bに加えてフィードバックコイル42が設けられており、フィードバックコイル42は脚部18Aと18Bとの間にて磁歪管14の周りに巻回されている。一方図9及び図10に示された第四の実施形態は第二の実施形態に対応しており、この実施形態に於いては、脚部18Aには励磁コイル20が巻回されており、脚部18Bにはフィードバックコイル42が巻回されている。
【0044】
また図8及び図10に示されている如く、これらの実施形態の制御装置28には、第一及び第二の実施形態に於ける加算増幅器32は設けられておらず、フィードバックコイル42に発生する誘導起電力の電圧は増幅器44により増幅され、増幅器44の出力はAGC38へ入力される。フィードバックコイル42には第一の磁束通路26Aに流れる磁束による起電力と第二の磁束通路26Bに流れる磁束による起電力との和に等しい起電力が発生するので、これらの実施形態に於けるAGC38も二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20に与えられる励振エネルギと実質的に一致するよう、発振回路36のゲインを制御する。
【0045】
これら第三及び第四の実施形態は、他の点についてはそれぞれ第一及び第二の実施形態と同様に形成されており、従って第一及び第二の実施形態と同様に作動するので、これらの実施形態の場合にも温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去して軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。
【0046】
第五の実施形態
図11は本発明によるトルク検出装置の第五の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図12は本発明によるトルク検出装置の第六の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)、図13は軸にトルクが作用していない場合(A)及び軸にトルクが作用している場合(B)について第五及び第六の実施形態の磁歪管を示す展開図である。
【0047】
図11に示された第五の実施形態に於いては、一対のコア22A及び22Bは軸線Gに平行に延在し、これにより検出コイル24A及び24Bも軸線Gに平行に延在している。一方図12に示された第六の実施形態に於いては、一対のコア22A及び22Bは軸線G及び一対の対向部A、Bを通る仮想平面(図示せず)に平行であってそれぞれ線分La 及びLb に垂直な方向に延在し、これにより検出コイル24A及び24Bもそれぞれ線分La 及びLb に垂直な方向に延在している。また何れの実施形態も他の点については第一の実施形態と同様に形成されている。
【0048】
磁歪管14の焼嵌めによる周方向及び軸線方向の引っ張り残留応力が小さく、軸12にトルクが作用していない場合には、図13(A)に示されている如く、磁歪管14の周りに於ける第一の磁束通路26A及び第二の磁束通路26Bの等磁位面Pc 及びPd は線分Lc 及びLd に垂直であるので、励磁コイル20A及び20Bが駆動されると、コア22A及び22Bの両端の等磁位面Pc 及びPd からの励位差により、検出コイル24A及び24Bには起電力が発生し、それらの起電力は実質的に互いに等しい。
【0049】
これに対し軸12に例えば図4(B)に示されている如くトルクTd が作用すると、磁歪管14の透磁率がトルクTd による引張り応力Fdtの方向については増大し、圧縮応力Fdcの方向については減少するので、図13(B)に示されている如く、第一の磁束通路26Aの磁束は増大するが、第二の磁束通路26Bの磁束は減少する。従って検出コイル24Aに発生する起電力は増大するが、検出コイル24Bに発生する起電力は減少し、その差は軸12に作用するトルクTd の大きさに比例し、差の符号は軸12に作用するトルクTd の方向に対応している。
【0050】
従ってこれらの実施形態の場合にも、上述の他の実施形態の場合と同様温度変化による透磁率の変化などの外乱成分を除去して軸12に作用するトルクTd の方向及び大きさを正確に検出することができる。また第一、第五、第六の実施形態より、二つの検出コイル24A及び24Bはそれぞれ線分Lc 及びLd に垂直な方向以外の方向であって前記仮想平面に平行な方向に延在していればよいことが解る。
【0051】
以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0052】
例えば上述の各実施形態に於いては、一対の脚部18A及び18Bは磁歪管14の軸線Gに垂直に延在しているが、これらの脚部は磁歪管14の軸線方向に延在していてもよく、更には対向部AとBとを直線的に結ぶ直線に沿って延在していてもよい。
【0053】
また上述の各実施形態に於いては、軸12は非磁性材にて形成されているが、磁歪管14に於ける磁歪効果の逆現象と同一の逆現象が軸に於いても発生するよう、軸は負の磁歪定数を有する磁歪材にて形成されてもよく、その場合には図示の各実施形態の場合よりもトルクの検出感度及び検出精度を更に一層向上させることができる。
【0054】
また上述の第二及び第四の実施形態に於いて、脚部18Bにも励磁コイルが巻回されてもよく、第三及び第四の実施形態に於いて、検出コイル24A及び24Bはそれぞれ線分Lc 及びLd に垂直な方向以外の方向であって前記仮想平面に平行な任意の方向に設定されてもよく、また第四の実施形態に於いてフィードバックコイル42は脚部18Bに巻回されてもよい。
【0055】
また上述の各実施形態に於いて、検出コイル24A及び24Bはそれぞれ線分Lc 及びLd の中点に設けられているが、これらの検出コイルは脚部18A又は18Bの他端より実質的に等距離の位置である限り、図示の位置よりも脚部18Aの他端又は18Bの他端側に位置していてもよく、また図示の位置よりも軸線Gに近い位置又は遠い位置に位置していてもよい。
【0056】
更に上述の各実施形態に於いては、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20B又は20に与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう、発振回路36のゲインがAGC38によって制御されるようになっているが、加算増幅器32の出力又は増幅器44の出力に基づき差動増幅器34のゲインが制御されることにより、二つの磁束通路26A及び26Bに流れる磁束による起電力の合計のエネルギが発振回路36により励磁コイル20A及び20B又は20に与えられる励振エネルギと常に実質的に一定の関係をなすよう制御されてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、上記請求項1及び2の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定され、上記請求項3及び4の構成に於いては、一対のコア、磁歪材、大気、接続部、検出コイルを通る第一及び第二の磁束通路が郭定され、第一及び第二の磁束通路は磁歪材に於いて軸線の周りに実質的に180°の範囲に亘り延在しているので、磁歪材に於ける磁束通路の延在範囲が比較的小さい従来のトルク検出装置の場合に比して、軸にトルクが作用することによる磁歪材の透磁率の変化を有効に利用することができ、従って請求項1乃至4の構成によれば、軸に作用するトルクの大きさ及び方向を更に一層高精度に検出することができる。
【0058】
また請求項1及び3の構成によれば、一対の検出コイルは磁歪材の両側にて一対のコアの他端を磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在しているので、軸にトルクが作用することによる第一及び第二の磁束通路の磁束の変化を最も効率的に検出することができる。
【0059】
また請求項2及び4の構成によれば、一対の検出コイルにそれらの両端の等磁位面からの磁位差に起因して発生する誘導起電力の増減及び増減量として軸に作用するトルクの大きさ及び方向が検出することができる。
【0060】
また請求項5の構成によれば、一対の検出コイルの出力の和に基づいて励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正され、請求項6の構成によれば、一対の励磁コイルの間にて磁歪材の周りに配置されたフィードバックコイルの出力に基づき励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正され、請求項7の構成によれば、一対のコアの一方に励磁コイルが配置され、一対のコアの他方に配置されたフィードバックコイルの出力に基づき励磁コイルの出力若しくは一対の検出コイルの出力が補正されるので、温度変化の如き外乱の影響を排除することができ、従ってこれらの構成によれば、請求項1乃至4の構成の場合に比して更に一層トルクの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるトルク検出装置の第一の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図2】第一の実施形態の磁歪管を示す斜視図(A)及び展開図(B)である。
【図3】第一の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図4】軸にトルクが作用した場合に磁歪管に生じる応力を示すベクトル図である。
【図5】本発明によるトルク検出装置の第二の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図6】第二の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図7】本発明によるトルク検出装置の第三の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図8】第三の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図9】本発明によるトルク検出装置の第四の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図10】第四の実施形態の電気回路を示すブロック線図である。
【図11】本発明によるトルク検出装置の第五の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図12】本発明によるトルク検出装置の第六の実施形態を示す正面図(A)及び側面図(B)である。
【図13】軸にトルクが作用していない場合(A)及び軸にトルクが作用している場合 (B)について第五及び第六の実施形態の磁歪管を示す展開図である。
【符号の説明】
10…トルク検出装置
12…軸
14…磁歪管
16…磁気検出器
18A、18B…脚部(コア)
20、20A、20B…検出コイル
24A、24B…検出コイル
26A4、26B…磁束通路
28…制御装置
Claims (7)
- 軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置されたコアを有する一対の励磁コイルと、前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端の間に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在していることを特徴とするトルク検出装置。
- 軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置されたコアを有する一対の励磁コイルと、前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端の間に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び前記軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していることを特徴とするトルク検出装置。
- 軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置された一対のコアと、少なくとも前記磁歪材の両側に延在し前記一対のコアの他端を接続する接続部材と、前記一対のコアの少なくとも一方に配置された励磁コイルと、前記一対のコアの前記他端の間にて前記接続部材に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に沿って延在していることを特徴とするトルク検出装置。
- 軸線に沿って延在し少なくとも外周部が磁歪材にて形成された軸部材と、前記磁歪材表面の一対の対向部であって前記軸線に沿って互いに隔置され且つ前記軸線の周りに180°互いに隔置された一対の対向部に一端にて近接して配置された一対のコアと、少なくとも前記磁歪材の両側に延在し前記一対のコアの他端を接続する接続部材と、前記一対のコアの少なくとも一方に配置された励磁コイルと、前記一対のコアの前記他端の間にて前記接続部材に配置された一対の検出コイルとを有し、前記一対の検出コイルは前記磁歪材の両側にて前記一対のコアの他端を前記磁歪材の表面に平行に螺旋状に結ぶ線に垂直な方向以外の方向であって前記一対の対向部及び前記軸線を通る仮想平面に平行な方向に延在していることを特徴とするトルク検出装置。
- 請求項1乃至4のトルク検出装置に於いて、前記一対の検出コイルの出力の和に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されることを特徴とするトルク検出装置。
- 請求項1乃至4のトルク検出装置に於いて、前記一対のコアの間にて前記磁歪材の周りにはフィードバックコイルが配置され、前記フィードバックコイルの出力に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されることを特徴とするトルク検出装置。
- 請求項1乃至4のトルク検出装置に於いて、前記励磁コイルは前記一対のコアの一方に配置され、前記一対のコアの他方にはフィードバックコイルが配置され、前記フィードバックコイルの出力に基づき前記励磁コイルの出力若しくは前記一対の検出コイルの出力が補正されることを特徴とするトルク検出装置。
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