JP3604452B2 - ピストンリング - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐摩耗性、耐焼付性に優れかつオイル消費量の少ない内燃機関用のピストンリングに関する。
【０００２】
【従来の技術】
内燃機関用のピストンリングの外周面は、シリンダ内周面と高温、高圧下で高速摺接し、これらの条件はエンジン出力の増大に伴いさらに厳しくなることから、一層の耐摩耗性、耐焼付性が要求される。このようなピストンリングの厳しい使用条件を満たすため、ピストンリングの外周面にクロムめっき層、イオンプレーティング法による金属の窒化物や炭化物の層、複合分散めっき層、窒化処理層、或いはこれらの層の組合せ層等が提案されている。しかしながら、耐摩耗性の良い層が、必ずしも耐焼付性に優れる層とはならないことから、特開昭６２−１２０４７１号公報は、ピストンリング外周面に金属クロムと窒化クロムとの均一混合層の利用を、又、特開平３−１３４１５８号公報は、ピストンリング外周面に窒化クロム層を形成し、その上にクロム層を重ねることを教示する。
【０００３】
前述した要件とは別に、エンジン出力の増大に伴うピストンの高速往復動は、焼付けとオイル消費量の増大を招くことから、焼付けとこのオイル消費量の低減を要求する。この要求に適する手段は、ピストン外周面をバレルフェース形状とすることである。このため、バレルフェース面に前述の層を形成することが一般化している。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
図３に示すピストンリング１は、ねずみ鋳鉄製のリング本体２の外周面にクロムめっき層３をバレルフェース形状５に形成したものである。４は面取り部を示す。このようなピストンリング１を高速高出力のエンジンに用いると、バレルフェース形状５の中央部が摩耗し、リング本体２の外周面と平行な面が現出し、シリンダ内周面に油膜を形成し、焼付けを防止するとともに、オイル消費量を低減させるのに効果的なバレルフェース形状を消失させ、焼付けやオイル消費量の増大となっている。
【０００５】
それ故に、本発明は、ピストンリングの外周面のバレルフェース形状を常時維持させることで、前述した不具合を解消させることを解決すべき課題とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述した課題を解決するために、ピストンリング外周面の中央部を硬度の高い高耐摩耗性の層とし、その両側の上下端部を硬度の低い通常の耐摩耗性の層とする手段を基本的に採用する。
【０００７】
具体的には、本発明は、外周面がバレルフェース形状で、該外周面に母材より硬度の低い層が形成されたピストンリングにおいて、使用前に前記外周面の中央部で母材が現出していることを特徴とするピストンリング、又は、外周面がバレルフェース形状で、該外周面に高硬度の内層が形成され、該内層の上に内層より硬度の低い外層が形成されたピストンリングにおいて、使用前に前記外周面の中央部で内層が現出していることを特徴とするピストンリングを提供する。
【０００８】
【作用】
ピストンリングはその往復動中シリンダ内周面とほぼ平行（同心関係）な復動をし、バレルフェース形状のピストンリングの外周面の中央部がシリンダ内周面に接する。しかし、爆発工程や圧縮工程の一時期には、ピストンがシリンダ内周面に対し傾き、ピストンリングの上下端部がシリンダ内周面に接する。ピストンリング外周面の中央部のシリンダ内周面に摺接する時間は、その両側の上下端部のシリンダ内周面への摺接時間に比し多い。しかし、ピストンリングの上下端部の硬度は、中央部の硬度より小さいので両者の摩耗量は同じ度合いで、常に、バレルフェース形状を保ちつつ全体的に等しく摩耗していくことになる。かくして、焼付けやオイル消費量の増大を抑制できる。
【０００９】
【実施例】
図１に示す例は、ピストンリング１１のリング本体１２をねずみ鋳鉄又はその外表面に窒化処理をしたステンレス鋼とし、その外周面に半径Ｒ_１ の円弧状のバレルフェース面を形成したものに、銅めっきやニッケル基複合分散めっき又は通常のクロムめっき層１３を設けたものである。銅めっき層やニッケル基複合分散めっき層又はクロムめっき層１３の外周面の半径はＲ_２ で、Ｒ_１ より大（Ｒ_２ ＞Ｒ_１ ）とする。図１からも明らかなように、リング本体１２の外周面中央部は硬度の高いリング本体の母材からなり、その両側の上下端部に３−３０μの硬度の小さい層が形成され、ピストン（図示なし）がシリンダ内周面に対して揺れながら動くと、上下端部がシリンダ内周面に摺接し、常時は中央部がシリンダ内周面に摺接し、リング本体外周面が全体的に均一に摩耗し、常にバレルフェース形状を維持できる。
【００１０】
図２に示す例は、リング本体１２のバレルフェース形の外周面に、常用のＰＶＤ法による金属窒化物からなるセラミックス層１４の上に外層として硬質クロムめっき層１３を形成したもの、又は、硬質クロムめっき層１４の上に外層としてニッケル基複合分散めっき層１３を設けたものである。内層１４が半径Ｒ_１ の円弧面に対し、外層１３の半径がＲ_２ （Ｒ_２ ＞Ｒ_１ ）であり、両側の上下端部は外層１３の厚みが大（３−３０μ）となっている。リング本体１２の中央部は内層１４が現出する程度に半径Ｒ_２ を選定しかつ表面加工をする。
【００１１】
前述した表面処理層は公知手法により形成する。リング本体中央部に対するその両側の上下端部の硬度の比は、好ましくは、０．６〜０．８とさせる。図２の例も図１と同じように、常に、バレルフェース形状が維持される。
【００１２】
次に実験例を説明する。ステンレス鋼の表面に窒化処理をしたリング本体の外周面（硬度Ｈｖ９００〜１３００）にニッケル基複合分散めっき層（硬度Ｈｖ７００〜９００）を形成した図１の例のものを供試体とし、比較例として、ステンレス鋼のリング本体の外周面に窒化処理のみを施したものを用いる。リング本体の中心より上下０．８ｍｍの位での水平面から外表面への寸法を８μとなるようバレルフェース加工をした。
【００１３】
直列６気筒（７０００ｃｃクラス）のターボディーゼルエンジンを用い、２８００ｒｐｍ ×４／４の負荷で供試体と比較例各３本の耐久テストを行なった。１５００時間後比較例３本中２本に焼付け跡がみられるのに対し、供試体の３本には全く焼付け跡がみられなかった。尚、供試体の上下端部を含む外周面のバレルフェース面は均一に摩耗し、バレルフェース形状が維持されていたが、比較例は、外周面中央部のみが摩耗し、バレルフェース面が平坦面に変形していた。
オイル消費量は、供試体を用いたときの方が、比較例のときより少ないことが確認されている。
【効果】
本発明のピストンリングは高速、高出力のエンジンに用いても、バレルフェース形状のリング外周面の特色を常時充分に発揮し、焼付け防止、オイル消費量の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一例のピストンリングの部分断面図である。
【図２】本発明の別の例のピストンリングの部分断面図である。
【図３】従来例のピストンリングの部分断面図である。
【符号の説明】
１１ ピストンリング
１２ リング本体
１３ 外層
１４ 内層

Claims (3)

1. 外周面がバレルフェース形状で、該外周面に母材より硬度の低い層が形成されたピストンリングにおいて、使用前に前記外周面の中央部で母材が現出していることを特徴とするピストンリング。
2. 外周面がバレルフェース形状で、該外周面に高硬度の内層が形成され、該内層の上に内層より硬度の低い外層が形成されたピストンリングにおいて、使用前に前記外周面の中央部で内層が現出していることを特徴とするピストンリング。
3. 前記内層が硬質クロムめっき層であり、前記外層がニッケル基複合分散めっき層であることを特徴とする請求項２に記載のピストンリング。

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