JP3816203B2 - ピストンリング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、初期なじみ性に優れた内燃機関用ピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンの高出力化、高回転化、長寿命化および排ガス規制の対応に伴って、ピストンリングの使用環境がますます苛酷になっているため、ピストンリングの外周摺動面には、非常に硬い窒化層や硬質Crめっき、あるいはPVD皮膜等が形成される例が多くなっている。これにより、ピストンリングの摩耗特性は格段に向上し、特にエンジンの長寿命化を実現している。
【0003】
しかしながら、窒化層や硬質Crめっき、あるいはPVD皮膜は、運転初期の状態では、初期なじみ性が悪く、初期状態でのシリンダボアのかじりによる焼き付き、初期の潤滑油消費量の悪化をもたらす。
【0004】
これに対して、上記耐摩耗層の上に、Ni−Co−PマトリックスにSi3 N4 粒子を分散させた複合めっきを被覆することが提案されている(特開平2−150574号、特公平8−11943号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、硬質粒子を含む皮膜では、自身の摩耗速度が遅く、自身のなじみ性が劣り、また、硬質粒子により相手材を傷付け、スカッフの発生原因となる。
【0006】
本発明の目的は、初期なじみ性、耐スカッフ性に優れたピストンリングを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外周摺動面に耐摩耗層を形成し、その上に複合めっきを被覆したピストンリングにおいて、
前記複合めっきが、ポリテトラフルオロエチレン微粒子が分散しているFe−P複合めっきであり、前記複合めっきのマトリックスとなるFe−P合金のP含有量が0.1〜10重量%、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の最大粒径が5.0μm以下、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の分散量が5〜40体積%の範囲にあり、前記複合めっきの硬度がHV350〜700、厚さが2〜15μmの範囲にあることを特徴とする。
【0009】
P含有量が0.1重量%未満であると、皮膜の必要な硬度が得られず摩滅が早すぎてボアとの必要な初期なじみ効果が得られない。10重量%を越えると、皮膜硬度が上がりすぎ必要な摩耗速度が得られない。ポリテトラフルオロエチレン微粒子の最大粒径が5.0μmを越えると、皮膜中ポリテトラフルオロエチレンが不均一となり粒子の無い部分で摺動特性が劣り、スカッフの原因となる。ポリテトラフルオロエチレン微粒子の分散量が5体積%未満であると、耐スカッフ性が劣り、40体積%を越えると皮膜硬度が軟化して異常摩耗となる。
【0010】
複合めっきの硬度はHV350〜700がよい。複合めっきの硬度がHV700を越えると初期なじみ性が低下し、HV350未満では摩滅が早すぎてボアとの必要な初期なじみ効果が得られない。
【0011】
上記複合めっきの厚さは、なじみ代として下限が2μm、上限は摩滅した際に合い口が必要以上に拡大するとブローバイの増加の原因となることから15μm以下とする。より好ましい範囲は5〜10μmである。
【0012】
前記耐摩耗層としてはHV900以上の硬度を有する窒化層やHV800以上の硬度を有するCrめっきが使用される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1(a)に基づいて説明する。
【0014】
ピストンリング1の全表面にHV900以上の硬度を有するガス窒化層2が形成されており、外周摺動面のガス窒化層2上に複合めっき3が被覆されている。
【0015】
複合めっき3は、ポリテトラフルオロエチレン微粒子が分散しているFe−P複合めっきである。複合めっき3のマトリックスとなるFe−P合金のP含有量は0.1〜10重量%、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の最大粒径は5.0μm以下、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の分散量は5〜40体積%の範囲にある。複合めっき3の硬度はHV350〜700、厚さは2〜15μmの範囲にある。
【0016】
複合めっき3のめっき浴組成とめっき条件を下記に示す。
▲1▼めっき浴組成
硫酸第一鉄 300g/l
次亜燐酸ソーダ 3g/l
硼酸 30g/l
ポリテトラフルオロエチレン微粒子(1μm以下)懸濁液 12ml(荏原ユージライト(株)製)
▲2▼めっき条件
電流密度 6A/dm2
浴温 50℃
PH 2.5
【0017】
図1(b)は本発明の別の実施形態を示す。
【0018】
本実施形態はピストンリング1の外周摺動面にHV800以上の硬質Crめっき4が形成されており、その硬質Crめっき4上に複合めっき3が被覆されている。複合めっき3は上記実施形態で記載したものと同じである。
【0019】
以下、本発明の効果を確認する試験結果を説明する。
【0020】
往復動摩擦試験機を使用して摩耗試験とスカッフ試験を行った。
【0021】
1.摩耗試験
(1)往復動摩擦試験機
図2に往復動摩擦試験機の構成を示す。ピン状の上試験片10は固定ブロック11により保持され、上方から油圧シリンダ12により下向きの荷重が加えられて、下試験片13に押接される。矩形の平盤形状の下試験片13は可動ブロック14により保持され、クランク機構15により往復動させられる。16はロードセルである。
【0022】
(2)試験片
上試験片10:17Crマルテンサイト系ステンレス鋼からなる直径8mm×長さ25mmの丸棒の一端にR18mmの球面加工を施し、その球面上にガス窒化層(硬度HV1100)を形
成し、そのガス窒化層上に表1に示すめっきを施した。
下試験片13:長さ70mm×幅17mm×高さ14mmの平板で材質は
鋳鉄材(FC250)
【0023】
【0024】
(3)試験条件
5kg×300cpm×60min
潤滑油:10W
【0025】
(4)試験結果
図3(a)に示す。図3(a)における摩耗比は、上試験片10に施すめっきが硬質Crめっき(硬度HV950)のときの摩耗量を1としたときの比である。図3(a)の試験結果から、比較例1,2(Si3 N4 粒子を含む複合めっき)は、耐摩耗性が高すぎて初期なじみ性が劣ることがわかる。一方、比較例3(硬質粒子を含んでいないFe−Pめっき)と実施例(ポリテトラフルオロエチレン微粒子を含むFe−P複合めっき)は、適当な摩耗速度を有しており、初期なじみ性の点で良好な結果を示している。
【0026】
2.スカッフ試験
(1)往復動摩擦試験機
上記摩耗試験で説明したものと同じである。
【0027】
(2)試験片
上記摩耗試験で説明したものと同じである。
【0028】
(3)試験条件
速度:100cpm
荷重:初期2kgから2kg/minずつステップアップ
潤滑油:軽油相当粘度軸受油一塗り
【0029】
(4)試験結果
図3(b)に示す。図3(b)の試験結果から、比較例2(Si3 N4 粒子を含むFe−P複合めっき)と比較例3(硬質粒子を含んでいないFe−Pめっき)は耐スカッフ性が低いことがわかる。一方、比較例1(Si3 N4 粒子を含むNi−P複合めっき)と実施例(ポリテトラフルオロエチレン微粒子を含むFe−P複合めっき)は、耐スカッフ性が良好であり、特に実施例は比較例1と比べてもかなり高い耐スカッフ性を備えていることがわかる。
【0030】
次に、実機試験を行った結果を説明する。
【0031】
(1)供試ピストンリング
比較例4:表面にガス窒化層(硬度HV1100)を形成し、外周摺動面のガス窒化層上に硬質Crめっき(硬度HV950)を被覆した。
比較例5:表面にガス窒化層(硬度HV1100)を形成した。
実施例1:表面にガス窒化層(硬度HV1100)を形成し、外周摺動面のガス窒化層上に表1の実施例1に示す複合めっきを被覆した。
【0032】
(2)試験条件
φ81mm直列4気筒ガソリンエンジンを使用し、6000rpm×全負荷の条件で、初期の潤滑油消費量試験を行った。
【0033】
(3)試験結果
図4に示す。図4の試験結果から、実施例の複合めっきは窒化層や硬質Crめっきよりも初期の潤滑油消費量が少なく、初期なじみ性が優れていることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のピストンリングによれば、耐摩耗性に優れ、かつ、初期なじみ性と耐スカッフ性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態を示す縦断面図、(b)は本発明の別の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】往復動摩擦試験機の構成を示す図である。
【図3】(a)は摩耗試験結果を示すグラフ、(b)はスカッフ試験結果を示すグラフである。
【図4】実機試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ピストンリング
2 ガス窒化層
3 複合めっき
4 硬質Crめっき
10 上試験片
11 固定ブロック
12 油圧シリンダ
13 下試験片
14 可動ブロック
15 クランク機構
16 ロードセル
Claims (3)
- 外周摺動面に耐摩耗層を形成し、その上に複合めっきを被覆したピストンリングにおいて、
前記複合めっきが、ポリテトラフルオロエチレン微粒子が分散しているFe−P複合めっきであり、前記複合めっきのマトリックスとなるFe−P合金のP含有量が0.1〜10重量%、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の最大粒径が5.0μm以下、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の分散量が5〜40体積%の範囲にあり、前記複合めっきの硬度がHV350〜700、厚さが2〜15μmの範囲にあることを特徴とするピストンリング。 - 前記耐摩耗層が窒化層であることを特徴とする請求項1記載のピストンリング。
- 前記耐摩耗層がHV800以上の硬度を有するCrめっきであることを特徴とする請求項1記載のピストンリング。
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- 1997-08-04 JP JP22189197A patent/JP3816203B2/ja not_active Expired - Fee Related
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