JP2859339B2 - ピストンリング及びその製造方法 - Google Patents

ピストンリング及びその製造方法

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JP2859339B2 JP1341640A JP34164089A JP2859339B2 JP 2859339 B2 JP2859339 B2 JP 2859339B2 JP 1341640 A JP1341640 A JP 1341640A JP 34164089 A JP34164089 A JP 34164089A JP 2859339 B2 JP2859339 B2 JP 2859339B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、内燃機関用ピストンリング、特に鋼製コン
プレッションリング及び鋼製オイルリングとその製造方
法に関する。
〔従来の技術〕
近年、社会的ニーズにより、過給機装置仕様も含む高
回転高出力型仕様、又は高圧縮比仕様等の出力アップを
狙った内燃機関が開発されており、上記内燃機関に使用
するピストンリングもこれに見合ってグレードアップさ
せていかなければならない状況にある。
また、公害問題により燃料の無鉛化が進んでいるが、
有鉛燃料も諸外国を中心に未だ広く使用されており、こ
の有鉛燃料を使用する内燃機関のシリンダ内において
は、HClやH2SO4等の腐食雰囲気が強く、そのため従来か
ら一般に使用されているクロムメッキされたピストンリ
ングは、その摺動面のクロムメッキが著しく摩耗する。
それ故に、上記ピストンリングには、厚クロムメッキが
対策仕様として実施されているが、製造コスト及び生産
性において充分に満足できるものではなかった。
これに対して、ピストンリングの上記摺動面に窒化処
理を施して摩耗を抑制するものが開発されており、以前
にも増して対摩耗性及び対腐食性アップの要求が強くな
ってきており、今後もこの仕様が増えていくと予測され
る。
第20図は、ピストンリングとしての従来のコンプレッ
ションリング1の一部を示しており、鋼製母材2の表面
に、窒化処理により窒化層3が形成されている。この窒
化処理に伴なって表層部には白層と称する非常に脆硬な
ポーラス層が生じるが、摺動面4又はこの摺動面4を含
む上下面は、後加工によって脆硬なポーラス層を除去す
ることにより製品化している。
上記鋼製母材2の組成としては、例えば重量比率
(%)にて、 C:0.60〜0.70、 Si:0.35以下、 Mn:0.20〜0.50、 Cr:13.00〜14.00、 Mo:0.20〜0.40、 残部Feと不可避の不純物とからなる組成のもの、又は、
重量比率(%)にて、 C:0.80〜0.95、 Si:0.35〜0.50、 Mn:0.25〜0.40、 Cr:17.00〜18.00、 Mo:1.00〜1.25、 V:0.08〜0.15、 残部Feと不可避の不純物とからなる組成のものがある。
〔発明が解決しようとする課題〕
このコンプレッションリング1を、上述した一部の内
燃機関のピストン溝内に取付けて使用すると、コンプレ
ッションリング1は、半径方向への拡縮動作及び上記ピ
ストン溝の壁との繰り返し衝突動作等により、運転中に
窒化層3にクラックが入って摺動面4及び側面6に割れ
5,7が生じることがあり、これが成長して脱落又は欠け
等の現象が起こり、これにより、摺動面4に剥離部8が
生じることがあった。この現象によりコンプレッション
リング1にスカッフィング、異常摩耗が起こり、さらに
はコンプレッションリング1が折損に至ることもあっ
た。
第21図は、ピストンリングとしての従来のオイルリン
グ21の一部断面を示しており、上記コンプレッションリ
ング1(第20図)と同様に鋼製母材22の表面に窒化層23
が形成されているが、オイルリングの場合は従来の窒化
処理により摺動面24のコーナー部に割れ25が生じること
があり、場合によっては窒化層23の全体に割れが生じる
ことがある。
このオイルリング用の鋼製母材22の組成としては、重
量比率(%)にて、 C:0.60〜0.70、 Si:0.35以下、 Mn:0.60〜0.80、 Cr:12.50〜13.50、 残部Feと不可避の不純物とからなる組成の鋼製オイルリ
ング母材、 又は、前記コンプレッションリング用鋼製母材2の2
種類の組成と同一の組成のもので重量比率(%)にて、 C:0.60〜0.70、 Si:0.35以下、 Mn:0.20〜0.50、 Cr:13.00〜14.00、 Mo:0.20〜0.40、 残部Feと不可避の不純物とからなる組成の鋼製オイルリ
ング母材、 又は、重量比率(%)にて、 C:0.80〜0.95、 Si:0.35〜0.50、 Mn:0.25〜0.40、 Cr:17.00〜18.00、 Mo:1.00〜1.25、 V:0.08〜0.15、 残部Feと不可避の不純物とからなる組成の鋼製オイルリ
ング母材があり、これら各母材には、摺動部の幅tが0.
25mm〜0.31mm、ベベル角度θが10°〜20°で形成されて
いるものがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもの
で、窒化層の割れ等が生じることがなく、耐摩耗性を向
上させることができるピストンリング及びその製造方法
を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明に係るピストンリングは、鋼製母材表面に窒化
により窒化層が形成されたピストンリングにおいて、前
記窒化層は、500±5℃〜550±5℃の温度での窒化処理
により、前記鋼製母材表面から内方側に向かって形成さ
れた第一拡散層と、前記の温度よりも高い温度であって
560±5℃〜600±5℃の温度での窒化処理により、前記
第一拡散層よりさらに内方側に形成された第二拡散層と
からなる二層構造であることに特徴を有する。また、上
記窒化層の第一拡散層の表面に、めっき層または溶射層
を形成してもよい。
本発明のピストンリングの製造方法は、鋼製母材表面
を、500±5℃〜550±5℃の温度で窒化処理して前記鋼
製母材表面から内方側に向かって第一拡散層を形成し、
その後連続して、前記の温度よりも高い温度であって56
0±5℃〜600±5℃の温度で窒化処理して前記第一拡散
層よりさらに内方側に第二拡散層を形成することによっ
て二層構造からなる窒化層を形成し、次いで少なくとも
前記鋼製母材表面に形成されたポーラス層を除去して前
記第一拡散層を摺動面として露出させることに特徴を有
する。また、摺動面として露出した前記第一拡散層の表
面に、めっき層または溶射層を形成してもよい。
〔作用〕
本発明においては、窒化処理を、500±5℃〜550±5
℃の温度での窒化処理と、この温度よりも高い温度であ
って560±5℃〜600±5℃の温度での窒化処理とを連続
して行なうため、窒化層が、それぞれの窒化処理によっ
て形成される第一拡散層と第二拡散層との二層構造にな
る。
〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
第1実施例 第1図乃至第3図は本発明の第1実施例を示す図で、
本実施例はピストンリングとしてコンプレッションリン
グの場合を示している。第1図は、鋼製母材としての鋼
製コンプレッションリング母材31の断面を示しており、
この鋼製コンプレッションリング母材31の全表面に、第
2図に示すように窒化により窒化層32を形成している
が、本実施例では、鋼製コンプレッションリング母材31
の表面に、500±5〜550±5℃の温度での第一の窒化処
理を施した後、この温度よりも高い温度であって560±
5℃〜600±5℃の温度での第二の窒化処理を施し、次
いで少なくとも摺動面33のポーラス層を除去して第一の
窒化処理によって形成された拡散層を露出している。こ
れにより、窒化層32が、第一の窒化処理によって形成さ
れた第一拡散層と、第二の窒化処理によって形成された
第二拡散層とにより構成されることとなり、その結果、
第3図に示すように、窒化層32は、外方に第一拡散層34
が形成され、この第一拡散層34の内方には第二拡散層35
が形成された二層構造となる。上記ポーラス層は、従来
の一定温度窒化の場合と同様に表層部に生じる白層と称
する非常に脆硬な層であり、本実施例では摺動面33を含
む全表面のポーラス層を除去して拡散層34,35を露出さ
せて製品としている。
上記第一の窒化処理の温度を、500±5℃より低い温
度としても窒化処理自体は可能であるが、所定の窒化深
さを得るのに時間がかかり、生産性及びコストの点で不
利である。一方、550±5℃を超える場合には、さらに
引き続いて上記の第二の窒化処理を施すため、この第二
の窒化処理ではさらに第一の窒化処理の温度と温度差を
設けて窒化しなければならない。さらに、第一の窒化処
理において、窒化処理の温度が550℃±5℃を超える場
合には充分な窒化硬さが得られない場合もあり、耐摩耗
性の点で満足しないことになる。これらの理由から、上
記範囲の温度とすることが好ましい。
上記第二の窒化処理の温度は、上記の第一の窒化処理
の温度よりも高い温度で処理される。ところで、600±
5℃より高い温度になると所定の窒化硬さが得られなく
なり、耐摩耗性の点で向上が望めない。したがって、上
記範囲の温度とすることが好ましい。
なお、第一の窒化処理の温度及び第二の窒化処理の温
度の公差(±5℃)は、窒化炉内の温度分布のばらつき
である。
第1実施例における実験例 (実験A) 下記供試機関により実機耐久試験を行ない、コンプレ
ッションリングの摩耗量の比較及び割れ発生の有無を確
認した。
(1)供試機関:水冷2.4リットル直4気筒ディーゼル
機関 (2)試験条件:全負荷4200rpm×1000Hr耐久 (3)供試材(コンプレッションリング) ○従来品:重量比率(%)としてC:0.83、Si:0.42、Mn:
0.30、Cr:17.50、Mo:1.03、V:0.09及び残部がFeと不可
避の不純物とからなる組成の鋼製母材に一定温度窒化
(550℃×15Hr)を施したもの。
○本発明品:鋼製母材(上記従来品と同一の組成)に50
0℃×12Hrの第一の窒化処理を施し、さらに引続き580℃
×7Hrの第二の窒化処理を施したもの。
○なお、供試材の表面の脆硬なポーラス層は除去してあ
る。
(4)結果:試験結果を第4図に示す。図示するよう
に、従来品及び本発明品とも摩耗量はほぼ同一である
が、窒化割れは、従来品では「有」、本発明品では
「無」であった。
(実験B) 供試機関を変更して窒化割れの有無を確認した。
(1)供試機関:水冷11リットルV8ディーゼル機関 (2)試験条件:全負荷2300rpm×50Hr (3)供試材 :実験Aと同じ (4)結果 :窒化割れは、従来品では「有」、本発
明品では「無」であった。
(実験C) テストピースにより基礎摩耗試験を行なった。
(1)試験機:アムスラー摩耗試験機 (2)荷 重:80kgf (3)周 速:1m/s(回転速度478rpm) (4)時 間:7Hr(25km走行に相当) (5)潤滑油:R30モータオイル(SAE#30) (6)油 温:75℃±2.5℃ (7)供試材:従来品及び本発明品とも実験Aと同一方
法でコンプレッションリング用のテストピースを製作。
なお、ボア材はFC25相当。
(8)結 果:試験結果は第5図に示す。摩耗量は、従
来品及び本発明品ともほぼ同一であった。
(実験D) テストピースによりスカッフィング性試験を行なっ
た。
(1)試験機:実験Cと同一の基礎摩耗試験機を用いて
これを一定時間走行させ、スカッフィングを発生ない時
は圧接面圧を漸次増大せしめ、スカッフィングの発生す
る限界面圧を求めた。
(2)周 速:1m/s(回転速度478rpm) (3)潤滑油:R30モータオイル(SAE#30)+白等油、
割合は1対1とした。
(4)油 温:75℃±2.5℃ (5)面 圧:初め10kgf/cm2でスタートし、5分毎に5
kgf/cm2ずつ増加させ、焼付きに至るまで。
(6)供試材:テストピース及びボア材は実験Cと同
じ。
(7)結 果:第6図に結果を示す。従来品、本発明品
とも耐スカッフィング性はほぼ同一であった。
実験A乃至Dの結果から明らかなように、本発明の窒
化方法は、耐摩耗性、耐スカッフィング性には悪影響を
及ぼすことがなく、また運転中の窒化割れ、脱落、欠け
等は全く皆無であり、優れているが確認された。したが
って、本発明に係るコンプレッションリングを使用すれ
ば、内燃機関の燃焼室からの圧縮ガス及び燃焼ガスの漏
れを最小限に押さえることができる。
第2実施例 第7図乃至第9図は本発明の第2実施例を示す図で、
本実施例ではピストンリングとしてオイルリングの場合
を示している。第7図は、鋼製母材としての鋼製オイル
リング母材41の断面を示しており、この鋼製オイルリン
グ母材41の全表面に、第8図に示すように窒化により窒
化層42を形成しているが、本実施例も上記第1実施例と
同様に、鋼製オイルリング母材41の表面に上述の第一の
窒化処理を施した後、上述の第二の窒化処理を施し、次
いで少なくとも摺動面43のポーラス層を除去して第一の
窒化処理によって形成された第一拡散層を露出してい
る。よって、窒化層42は、図9に示すように、その外方
には第一拡散層44が第一の窒化処理によって形成され、
この第一拡散層44の内方には第二拡散層45が第二の窒化
処理によって形成される。このオイルリングの寸法と一
例としては、摺動面43の幅tを0.25乃至0.31cm、摺動面
43から本体側に連なる斜面46,47のベベル角度θを10°
乃至20°としている。
なお、本第2実施例における第一の窒化処理と第二の
窒化処理の温度条件等は、上記第1実施例と同様であ
り、また、鋼製オイルリング母材41の組成としては、上
記従来技術で述べた3種類の重量比率からなる耐摩耗性
アップ仕様の母材のうちいずれか一種類のものを用いる
のが好ましい。
第2実施例における実験例 (実験E) 下記供試機関より実機耐久試験を行ない、摩耗量の比
較をした。
(1)供試機関:実験Aと同じ (2)試験条件:実験Aと同じ (3)供試材(オイルリング) ○従来品:C:0.39、Si:0.96、Mn:0.42、Cr:5.29、Mo:1.0
9、V:0.86、残部がFeと不可避の不純物とからなる組成
の鋼製母材に一定温度窒化(550℃×6Hr)を施したも
の。
○本発明品:重量比率(%)として、C:0.61、Si:0.3
7、Mn:0.34、Cr:13.54、Mo:0.22、残部がFeと不可避の
不純物とからなる組成の鋼製母材に、本発明である500
℃×10Hrの第一窒化処理を施し、さらに引続き580℃×3
Hrの第二窒化処理を施したもの。
(4)結果:結果を第10図に示す。図示するように、本
発明品は従来品より摩耗量は少なくなっている。
(実験F) テストピースにより基礎摩耗試験を行なった。
(1)試験機:アムスラー摩耗試験機 (2)荷 重:80kgf (3)周 速:1m/s(回転速度478rpm) (4)時 間:7Hr(25km走行に相当) (5)潤滑油:R30モータオイル(SAE#30) (6)油 温:75℃±2.5℃ (7)供試材: ○従来品:実験Eと同一の方法でオイルリング用のテス
トピースを製作。ボア材はFC25相当。
○本発明品: (F1):重量比率(%)として、C:0.62、Si:0.32、Mn:
0.62、Cr:13.00、残部Feと不可避の不純物とからなる組
成の鋼製オイルリング母材の全表面に、本発明である第
一の窒化処理を施し、さらに引続き第二の窒化処理を施
したもの。
(F2):重量比率(%)として、C:0.61、Si:0.37、Mn:
0.34、Cr:13.54、Mo:0.22、残部Feと不可避の不純物と
からなる組成の鋼製オイルリング母材の全表面に、本発
明である第一の窒化処理を施し、さらに引続き第二の窒
化処理を施したもの。
(F3):重量比率(%)として、C:0.83、Si:0.42、Mn:
0.30、Cr:17.50、Mo:1.03、V:0.09、残部Feと不可避の
不純物とからなる組成の鋼製オイルリング母材の全表面
に、本発明である第一の窒化処理を施し、さらに引続き
第二の窒化処理を施したもの。
なお、従来品と及び本発明品F1、F2、F3のテストピー
スには、その表層部に白層と称する非常に脆硬なポーラ
ス層が生じるが、これは研摩により除去している。窒化
条件も実験Eと同一。また、ボア材はFC25相当。
(8)結果:結果を第11図に示す。図示するように、本
発明品F1乃至F3のテストピースはいずれも従来品より摩
耗量が少ない。
(実験G) テストピースによりスカッフィング試験を行なった。
(1)試験機:実験Fと同一の基礎摩耗試験機を用いて
これを一定時間走行させ、スカッフィングを発生しない
時は圧接面圧を漸次増大せしめ、スカッフィングの発生
する限界面圧を求めた。
(2)周 速:1m/s(回転速度478rpm) (3)潤滑油:R30モータオイル(SAE#30)+白灯油 割合は1対1とした。
(4)油 温:75℃±2.5℃ (5)面 圧:初め10kgf/cm2でスタートし、5分毎に5
kgf/cm2ずつ増加させ、焼付きに至るまで。
(6)供試材:テストピース及びボア材は実験Fと同
じ。
(7)結 果:第12図に結果を示す。本発明品F1乃至F3
のテストピースはいずれも従来品より耐スカッフィング
性が向上している。
(実験H) 上記F1,F2,F3の組成と同一の組成のテストピースを、
それぞれ一定温度窒化した場合(即ち、従来技術の場
合)と、本発明による窒化をした場合とに分けて窒化割
れが発生する確率を実験した。その結果を下記表1に示
す。
実験E乃至Hの結果から明らかなように、本発明で行
なった窒化処理が、耐摩耗性アップ仕様の鋼製母材との
組合せで、耐摩耗性、耐スカッフィング性のいずれにお
いても優れていることが確認された。また、窒化割れの
現象も全くなかった。したがって、本発明に係るオイル
リングを使用すれば、内燃機関のシリンダ内壁の過剰の
オイルをかき落し、適正な油膜を保持させる機能を発揮
させることができる。
次に、金属組織の顕微鏡写真第13図乃至第18図により
本発明及び従来例を説明する。なお、第13,15,17図の写
真倍率は200倍、第14,16,18図の写真倍率は400倍であ
る。第13図、第14図は本発明に係るコンプレッションリ
ングの断面の金属組織を示している。第13図,14図の各
写真において、最上部の黒色部は試験の研摩用の樹脂で
あり、順次下方に白層(ポーラス層で灰白色部)、第一
拡散層(灰色部)、第二拡散層(灰黒色部)鋼製母材
(白色部)の順に多層構造をなしている。第15図、第16
図は従来の窒化方法(550℃×6Hr)により製造されたオ
イルリングの断面の金属組織を示しており、第15,16図
において、最上部の黒色部分は上述の樹脂で、順次下方
に白層(灰白色部)、拡散層(灰色部)、鋼製母材(白
色部)の順に多層構造であるが、上記拡散層は二層には
なっていない。第17図、第18図は本発明に係るオイルリ
ングの断面の金属組織を示しており、第17図,18図にお
いて、最上部の黒色部分は上述の樹脂で、順次下方に白
層(灰白色部)、第一拡散層(灰色部)、第二拡散層
(灰黒色部)、母材(白色部)の順に多層構造になって
いる。
第19図は、窒化処理後のN(窒素)濃度に関して表面
より内部へ元素分析を行ったEPMAライン分析の結果のグ
ラフで、横軸は金属表面からの深さ、縦軸はN(窒素)
濃度を表す特性X線強度である。Aは従来の窒化方法で
窒化した場合のデータで、第15図、第16図に示すオイル
リングの場合を示している。図示するように、表面付近
はN濃度が高く内部に少し向うとN濃度が急激に低下
し、その後内部に深くなるにつれて徐々にN濃度が低下
して表面から約90μmの深さの所よりN濃度が急激に変
化し、N濃度0となる。従来の窒化方法の場合は、表面
近傍が特にN濃度の高い脆硬な窒化層により形成されて
いる。これに対してBは本発明で行なった窒化処理によ
って窒化した場合のデータで、第17図、第18図に示すオ
イルリングの場合を示している。この場合には表面付近
は従来の窒化方法に比較してN濃度が低く、更に内部に
深く向うに従い徐々にN濃度が低下し、約140μmの深
さの所よりN濃度が急激に変化し、N濃度は0となる。
本発明の場合は表面近傍はN濃度が低く脆硬でない窒化
層で形成されており、更にN濃度が徐々にゆるやかに変
化すると共に表面より深い所まで窒化され、従来よりも
窒化層(拡散層)が深く形成されている。これにより、
窒化層にクラックが入りにくくなっている。
なお、より好ましくは、上記各実施例において、露出
した拡散層の表面にめっき層又は溶射層を形成すれば、
耐腐食性及び耐摩耗性がさらに向上する。
また、上記各実施例における鋼製母材は、従来技術で
説明した5種類の重量比率の母材のうちどの母材であっ
てもよい。
〔発明の効果〕
本発明に係るピストンリングとその製造方法は、500
±5℃〜550±5℃の温度で窒化処理して前記鋼製母材
表面から内方側に向かって第一拡散層を形成し、その後
連続して、前記の温度よりも高い温度であって560±5
℃〜600±5℃の温度で窒化処理して前記第一拡散層よ
りさらに内方側に第二拡散層を形成することによって二
層構造からなる窒化層を形成したので、ピストンリング
の耐摩耗性が向上し、窒化層に割れ等が生じない。
また、第一拡散層の表面にめっき層又は溶射層を形成
すれば、耐腐食性が向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図乃至第6図は本発明の第1実施例を示す図で、第
1図は鋼製コンプレッションリング母材の断面図、第2
図は第1図に示す母材に窒化を施した後の断面図、第3
図は第2図の拡大断面図、第4図は実験Aの結果を示す
グラフ、第5図は実験Cの結果を示すグラフ、第6図は
実験Dの結果を示すグラフ、第7図乃至第12図は本発明
の第2実施例を示す図で、第7図は鋼製オイルリング母
材の断面図、第8図は第7図に示す母材に窒化を施した
後の断面図、第9図は第8図中のa部拡大断面図、第10
図は実験Eの結果を示すグラフ、第11図は実験Fの結果
を示すグラフ、第12図は実験Gの結果を示すグラフ、第
13図乃至第18図は金属組織の顕微鏡写真で、第13図、第
14図は本発明の窒化方法に係るコンプレッションリング
の断面部の顕微鏡写真、第15図、第16図は従来の窒化方
法によるオイルリングの断面部の顕微鏡写真、第17図、
第18図は本発明の窒化方法に係るオイルリングの断面部
の顕微鏡写真、第19図はEPMAライン分析によるN濃度の
結果を示すグラフ、第20図は従来の窒化方法に係るコン
プレッションリングの一部断面斜視図、第21図は従来の
窒化方法に係るオイルリングの断面図である。 31…鋼製母材(鋼製コンプレッションリング母材)、 32,42…窒化層、 33,43…摺動面、 34,44…第一拡散層、 35,45…第二拡散層、 41…鋼製母材(鋼製オイルリング母材)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16J 9/00 - 9/28 C23C 8/00 - 12/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼製母材表面に窒化により窒化層が形成さ
    れたピストンリングにおいて、前記窒化層は、500±5
    ℃〜550±5℃の温度での窒化処理により、前記鋼製母
    材表面から内方側に向かって形成された第一拡散層と、
    前記の温度よりも高い温度であって560±5℃〜600±5
    ℃の温度での窒化処理により、前記第一拡散層よりさら
    に内方側に形成された第二拡散層とからなる二層構造で
    あることを特徴とするピストンリング。
  2. 【請求項2】上記窒化層の第一拡散層の表面に、めっき
    層または溶射層を形成したことを特徴とする請求項1に
    記載のピストンリング。
  3. 【請求項3】鋼製母材表面を、500±5℃〜550±5℃の
    温度で窒化処理して前記鋼製母材表面から内方側に向か
    って第一拡散層を形成し、その後連続して、前記の温度
    よりも高い温度であって560±5℃〜600±5℃の温度で
    窒化処理して前記第一拡散層よりさらに内方側に第二拡
    散層を形成することによって二層構造からなる窒化層を
    形成し、次いで少なくとも前記鋼製母材表面に形成され
    たポーラス層を除去して前記第一拡散層を摺動面として
    露出させることを特徴とするピストンリングの製造方
    法。
  4. 【請求項4】摺動面として露出した前記第一拡散層の表
    面に、めっき層または溶射層を形成することを特徴とす
    る請求項3に記載のピストンリングの製造方法。
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