JP3604306B2 - 絶縁皮膜付き電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁皮膜付き電磁鋼板とその製造方法およびそのための処理液に関する。本発明の電磁鋼板は、6価クロム等の有害な化合物を含まないにもかかわらず、従来の無方向性電磁鋼板用絶縁皮膜として一般的な重クロム酸塩系皮膜と同様の低い焼付温度で製造可能で、かつ同等の性能を有する。
【0002】
【従来の技術】
回転機や変圧器の鉄芯に使用される無方向性電磁鋼板は、所定の形状に打ち抜かれた後、積層されて鉄芯となる。鋼板間に導通があると、鉄芯は厚いブロックと同じことになり、鋼板の板厚を薄くしたことによる渦電流損低減という効果がなくなる。このため、電磁鋼板の表面を絶縁皮膜で被覆して使用する。
【0003】
電磁鋼板に形成する絶縁皮膜は、層間抵抗で示される絶縁性だけでなく、ユーザーにおける利便性 (打抜き性、溶接性) 、さらには耐熱性や耐食性等の種々の特性が要求される。
【0004】
現在一般的に使用されている無方向性電磁鋼板用の絶縁皮膜は、▲1▼無機皮膜、▲2▼半有機皮膜、および▲3▼有機皮膜に大別される。▲1▼の無機皮膜は耐熱性が高く、歪取り焼鈍可能で、溶接性も良好であるが、打抜き性が悪い。無機被覆に樹脂を含有させた▲2▼の半有機皮膜は、打抜き性と溶接性の両立を目指したもので、歪取り焼鈍が可能な耐熱性も備える。▲3▼の有機皮膜は、耐熱性が低く、歪取り焼鈍不可であるが、打抜き性が非常によいため、特殊用途に使用されている。
【0005】
汎用品には、歪取り焼鈍が可能な▲1▼または▲2▼の無機成分を含む絶縁皮膜が利用されている。中でも▲2▼の半有機皮膜は、▲1▼の無機皮膜に比較して打抜き性が格段に優れるため、最も広く利用されている。
【0006】
上記▲1▼、▲2▼の無機成分を含有する従来の絶縁皮膜では、無機の皮膜形成成分として、6価クロム化合物である重クロム酸塩が広く用いられてきた。この場合、クロム酸水溶液に多価金属塩を水に溶解させて調製した重クロム酸多価金属塩を含む水溶液にエチレングリコールやグリセリンなどの有機還元剤を混合し、半有機皮膜の場合にはさらに合成樹脂を混合して、絶縁皮膜形成用処理液を調製する。この処理液を電磁鋼板に塗布した後、200 ℃から330 ℃の温度で焼き付けると、皮膜中の6価クロムが3価クロムに還元されることで造膜が進行し、無機成分として3価クロム化合物を含有する絶縁皮膜が形成される。
【0007】
しかし、周知のように、処理液に用いる6価クロム化合物は毒性が強く、環境対策上から6価クロム化合物は使用しにくくなっている。また、絶縁皮膜中に含まれる3価クロムは、6価クロムにくらべ格段に毒性は小さいが、全く毒性がないとは言えない。従って、クロム化合物を全く使用せずに、電磁鋼板に無機成分を含有する絶縁皮膜を形成することが求められている。
【0008】
絶縁皮膜の無機成分として使用可能な、重クロム酸塩以外の化合物として、リン酸塩があり、リン酸塩を主成分とする半有機皮膜も従来からいくつか検討されてきた (例えば、特公昭53−28375 号公報参照) 。リン酸塩水溶液は、無機成分として数少ない造膜可能な系であり、比較的安価である。
【0009】
しかし、還元反応で造膜する重クロム酸塩系とは異なり、リン酸塩系の皮膜は脱水縮合反応でリン酸塩が不溶化する (水に対する溶解性を失う) ことにより造膜する。そのため、耐水性が十分に高い絶縁皮膜を形成するには、処理液を塗装した後の焼付けを、重クロム酸系処理液を使用した場合に比べて、かなり高温(例、 350〜450 ℃) で行う必要がある。しかし、高温での焼付けには次に述べるような問題点がある。
【0010】
(1) 造膜・不溶化させるのに必要な熱量および/または焼付け時間が必然的に増大し、工業生産性・経済的観点から不利である。
(2) 汎用の半有機皮膜に使用する樹脂の多くは、焼付け温度が高温であると一部熱分解する恐れがある。それにより、絶縁皮膜の性能 (密着性や耐食性、打ち抜き性) が低下する可能性がある。
(3) 樹脂の熱分解を抑えるため、耐熱性の高い樹脂を使用する方法も開示はされてはいるが (例、特開平6−330338号公報参照) 、そのような樹脂は汎用性に欠けるため、必然的に高価となり、経済的観点から不利である。
【0011】
クロムを使用せず、かつ重クロム酸塩系処理液と同様の低い温度で焼付け可能で、耐水性や絶縁性等の電磁鋼板用絶縁皮膜に必要な諸性能を備えた電磁鋼板用の絶縁皮膜は、これまで皆無に等しかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これまで無方向性電磁鋼板用の半有機絶縁皮膜としてリン酸塩系皮膜が使用されてきた例はいくつかあるものの、重クロム酸系の同様な皮膜に比べて高い焼付け温度が必要とされるため、ごく限られた用途にしか使用されていなかった。
【0013】
本発明の目的は、従来の重クロム酸系皮膜と同等の温度範囲での焼付けにより製造でき、かつ耐水性等の絶縁皮膜に求められる性能でも重クロム酸系皮膜と遜色がない、リン酸塩系の (即ち、クロムを含有しない) 絶縁皮膜付き電磁鋼板を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記の絶縁皮膜付き電磁鋼板により上記目的を達成することができる。
【0015】
少なくとも片面に絶縁皮膜を有する電磁鋼板であって、絶縁皮膜が1種または2種以上の多価金属リン酸塩の脱水縮合物を含み、該絶縁皮膜に含まれる多価金属の価数×モル数の積の総和ΣMiとリンのモル数ΣPiとの関係が次の(1)式を満たすことを特徴とする、耐水性の良好な絶縁皮膜付き電磁鋼板。
【0016】
1≦ [ΣMi/ΣPi] ≦5、ただし本例の場合は1〜 1.2 の場合を除く。 ・・・(1) 1態様において、この電磁鋼板の絶縁皮膜は無機皮膜である。即ち、有機合成樹脂を含まない。別の態様においては、絶縁皮膜は、多価金属リン酸塩の脱水縮合物に加えてさらに合成樹脂を含む半有機皮膜である。無機皮膜と半有機皮膜のいずれの場合であっても、絶縁皮膜はさらにホウ酸および/もしくはホウ酸塩、ならびに/またはコロイド状シリカを含んでいてもよい。
【0017】
上記の絶縁皮膜付き電磁鋼板は、1種または2種以上の上記(1) 式を満たす多価金属第一リン酸塩1〜50重量%と、このリン酸塩を安定に溶解させるのに十分な量のキレート剤、とを溶解状態で含有する絶縁皮膜形成用の水性処理液を電磁鋼板に塗布した後、焼付けることにより製造することができる。本発明は、このような処理液も提供する。この処理液は、さらに合成樹脂、ホウ酸および/もしくはホウ酸塩、ならびに/またはコロイド状シリカを含有していてもよい。焼付けは、好ましくは従来の重クロム酸塩系処理液の場合と同様の 200〜330 ℃の温度範囲で行う。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板の素地鋼板は特に限定されない。代表的な電磁鋼板はSiを 0.1〜5wt%程度含有するケイ素鋼板であり、これももちろん使用できるが、Siをほとんど含まない普通鋼も素地鋼板として使用可能である。素地鋼板は熱延鋼板と冷延鋼板のいずれでもよく、また無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板のいずれでもよい。
【0019】
本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板は、素地の電磁鋼板の少なくとも片面にリン酸塩系の絶縁皮膜を施したものである。リン酸塩に加えて合成樹脂を含有させて半有機皮膜とすると、打ち抜き性にも優れた絶縁皮膜付き電磁鋼板が得られる。
【0020】
本発明の電磁鋼板の絶縁皮膜の必須成分であるリン酸塩 (絶縁皮膜中ではリン酸塩の大部分は脱水縮合物になっているが、以下では便宜上、リン酸塩と表記する) は、1種および2種以上の多価金属リン酸塩からなる。絶縁皮膜に含まれる多価金属の価数×モル数の積の総和ΣMiとリンのモル数ΣPiの関係が、次の(1) 式を満たすようにする。
【0021】
1≦ [ΣMi/ΣPi] ≦5 ・・・ (1)
ΣMi/ΣPiの値が1より小さいと、 200〜330 ℃の温度範囲で焼付けた場合には、絶縁皮膜が十分な耐水性を示さず、高湿度のところにおいた時に皮膜が白くなったり (以下、白化という) 、皮膜にべたつきが生じるようになる。一方、ΣMi/ΣPiの値が5より大きいと、処理液の粘度が上昇したり、液中に含まれる無機成分が経時的に固化したりして、製造できる製品の品質が安定しないばかりか、素地鋼板に対する皮膜の密着性が劣ることがある。ΣMi/ΣPiの値の好ましい範囲は1.2 以上、3.0 以下であり、さらに好ましくは、1.5 以上、2.5 以下である。
【0022】
絶縁皮膜に含まれる多価金属リン酸塩の金属カチオンとしては、リン酸アニオンと水溶性の塩を形成することができる任意の多価金属カチオンが使用できる。金属カチオンがアルカリ金属などの1価のカチオンであると、絶縁皮膜の耐水性が劣る。好ましい多価金属カチオンは、Mg、Ca、Ba、Alなどの2価または3価のカチオンである。処理液の安定性を考慮すると、上記カチオン種の中でもMgおよびAlが特に好ましい。MgまたはAlのリン酸塩は、他の多価金属カチオンのリン酸塩に比べて高濃度化が可能であり、工業用原料として安価に入手可能という利点がある。
【0023】
絶縁皮膜形成用の処理液中では、リン酸アニオンは第一リン酸[(H2PO4)−] の状態で存在させる。多価金属リン酸塩の場合、リン酸アニオンが第一リン酸の状態でないと、水溶液中での溶解度が低下し、液中で沈殿が起こり易くなって、安定な処理液を形成することができないからである。
【0024】
多価金属第一リン酸塩の水溶液は市販されている。しかし、市販の多価金属第一リン酸塩の水溶液は一般にΣMi/ΣPi=1弱の状態にしてある。これは、ΣMi/ΣPi=1であると、やや高濃度 (例えば、10wt%以上) にしただけで、水溶液の安定性が不十分となり、沈殿を生じたりするからである。
【0025】
即ち、多価金属リン酸塩の水溶液は、リン酸アニオンが第一リン酸アニオンで、かつΣMi/ΣPi=1弱となるように、多価金属カチオンが化学両論量より不足した状態にしないと、安定な水溶液を得ることができない。
【0026】
本発明者は、多価金属第一リン酸塩の水溶液に対して、多価金属カチオンを例えばMgまたはAlの水酸化物の形態で添加して、ΣMi/ΣPiの値を1より大きくする方が、低い焼付け温度で耐水性の良い無機絶縁皮膜が得られることを見出していた。
【0027】
多価金属第一リン酸塩の造膜機構は完全には解明されていないが、(A) 第一リン酸アニオン末端の−OH基同士の脱水縮合反応と、(B) これにさらに多価金属カチオンが関与した脱水縮合反応、によりネットワークが形成されるためではないかと考えられている。いずれにしてもリン酸塩は脱水縮合物になている。
【0028】
(A) の脱水縮合反応で生成するP−O−P結合は耐水性が弱く容易に加水分解し易いのに対し、(B) の脱水縮合反応で生成するP−O−M−O−P結合は耐水性が強く加水分解しにくい。そのため、多価金属カチオンが多くなるほど、膜の耐水性が高まり、比較的低い温度の焼付けで耐水性の高い絶縁皮膜を得ることが可能となるものと推測される。
【0029】
しかし、多価金属第一リン酸塩の水溶液は、前述したようにΣMi/ΣPi=1弱の状態でないと不安定である。この比が1を超えるように多価金属カチオンを添加すると、処理液が不安定化し、沈殿が生じ易くなる。これは、上記の(B) の脱水縮合反応が処理液中で既に進行して、リン酸塩が高分子化してしまうためと考えられる。
【0030】
即ち、リン酸塩系の絶縁皮膜を電磁鋼板に適用するにあたって、重クロム酸塩系なみの低い焼付け温度で性能バランスのよい絶縁皮膜皮膜を得るには多価金属カチオンを添加する必要があるが、そうすると処理液の安定性が損なわれ、耐水性と処理液の安定性が相反するところであった。
【0031】
そこで、本発明者は、低い焼付け温度で形成される皮膜の耐水性向上を目指して、ΣMi/ΣPi=1弱のリン酸塩水溶液に、液の安定性を保持したまま多価金属カチオンを添加する方法について検討を重ねた結果、導入する多価金属カチオンにキレート剤を配位させて安定化することにより、ΣMi/ΣPi値が1以上の安定な処理液を得ることに成功した。
【0032】
この処理液を電磁鋼板に塗布し、焼付けると、ΣMi/ΣPi値が1以上のリン酸塩系絶縁皮膜が形成される。焼付け中に多価金属カチオンとリン酸イオンは化学変化を受けても揮発することはないので、処理液中と絶縁皮膜中とでΣMi/ΣPiの値は実質的に同じである。従って、皮膜中のΣMi/ΣPi値は処理液中のこの値と同じと推定することができる。
【0033】
ただし、皮膜中の多価金属およびPの量を分析してΣMi/ΣPi値を算出することも可能である。この分析は、例えば、皮膜の断面方向から皮膜部分を電子プロープX線マイクロアナライザー(EPMA)で分析する方法、皮膜の鉛直方向から二次イオン質量分析(SIMS)分析する方法、皮膜を化学的に溶解し、分析した後、素地鋼板に含まれる元素量を差し引く方法、などが可能である。
【0034】
処理液中或いは皮膜中のΣMi/ΣPi値が1以上であれば、焼付けを従来の重クロム酸塩系の場合と同様の低い温度で行っても、これまでのリン酸塩系絶縁皮膜と比べものにならない高い耐水性を有する絶縁皮膜が生成することを本発明者は確認した。
【0035】
本発明の電磁鋼板の絶縁皮膜は、打抜き性向上のために皮膜中に合成樹脂を含有させて、半有機皮膜としてもよい。電磁鋼板の絶縁皮膜に使用する合成樹脂種は特に制限されないが、これまでも絶縁皮膜に使用されてきた中から選択することができる。
【0036】
処理液が水性であるので、樹脂種としては水分散性樹脂 (エマルションまたはディスパージョン) および水溶性樹脂を包含する水性樹脂を使用する。樹脂の具体例として、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
絶縁皮膜中の合成樹脂量は、リン酸塩100 重量部に対して3〜100 重量部の範囲内が好ましい。合成樹脂量が3重量部未満であると、打抜き性が低下することがある。合成樹脂量が100 重量部を超えると、歪取り焼鈍後の層間抵抗が低下することがある。合成樹脂量はより好ましくは5重量部以上、50重量部以下であり、特に好ましくは7重量部以上、30重量部以下である。
【0038】
本発明の絶縁皮膜は、さらにホウ酸を配合することで、特に歪取り焼鈍後の耐食性を向上させることができる。ホウ酸配合量を増加させると、層間抵抗や歪取り焼鈍後の耐食性が向上する。しかし、添加量が過多になると、処理液中にホウ酸が溶解することができず、処理液中にホウ酸が固化することがある。そのため、ホウ酸の添加量は、多価金属リン酸塩のP換算量100 重量部あたり、B換算で50重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは30重量部以下である。
【0039】
ホウ酸は、その一部または全部を、ホウ酸塩の形態で添加してもよい。また、無水ホウ酸 (三酸化二ホウ素) を処理液に添加して、その場でホウ酸を生成させてもよい。ホウ酸塩を使用する場合、金属カチオンは、アルカリ金属、アンモニウム、および多価金属のいずれでもよい。多価金属の場合には、その金属カチオンも処理液のΣMiの中に含まれる。
【0040】
本発明の絶縁皮膜は、さらにコロイド状シリカを配合することで、層間抵抗を向上させることができる。シリカ添加量が過多であると、処理液の安定性が失われたり、表面性状が損なわれることがある。その添加量は、多価金属リン酸塩のP換算量100 重量部あたり、Si換算で150 重量部以下が好ましく、より好ましくは100 重量部以下である。
【0041】
本発明の電磁鋼板の絶縁皮膜は、絶縁皮膜の性能に著しい悪影響を及ぼさない限り、上記以外の成分も少量であれば存在させることができる。そのような成分の例として、顔料、滑剤、ワックス等がある。
【0042】
本発明の電磁鋼板の絶縁皮膜の膜厚は0.05〜2.0 μmの範囲とすることが好ましい。絶縁皮膜の膜厚が0.05μm未満であると、均一塗布が困難になる上、歪取り焼鈍時の耐焼付け性や、耐食性、層間抵抗が不足する。膜厚が2.0 μm超になると、層間抵抗の向上が飽和する上、絶縁皮膜の密着性が低下するようになる。絶縁皮膜の膜厚のより好ましい範囲は0.1 μm以上、1.0 μm以下であり、高占積率の観点から、望ましくは0.1 μm以上、0.5 μm以下である。
【0043】
本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板は、1種および2種以上の多価金属リン酸塩ををキレート剤と一緒に溶解状態で含有する処理液を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布した後、加熱して塗膜を焼付けることにより製造することができる。
【0044】
処理液中の多価金属カチオンとリン酸イオンは、多価金属カチオンの価数×モル数の積の総和ΣMiとリンのモル数ΣPiが、上記(1) 式で規定される関係、即ち、ΣMi/ΣPi=1〜5、を満たすように調整する。ΣMi/ΣPiの値が1より高くても、キレート剤の共存により、処理液が安定化され、リン酸塩の沈殿が防止される。
【0045】
前述したように、多価金属リン酸塩は第一リン酸[(H2PO4)−] の状態でないと水溶液状態で安定ではない。従って、本発明で使用する処理液を調製するには、多価金属第一リン酸塩の水溶液をベース水溶液として用意し (前述したように、市販品のこの種の水溶液ではΣMi/ΣPiが1より小さい) 、このベース水溶液にキレート剤と一緒に、水酸化物などの適当な形態の多価金属カチオンを、所定のΣMi/ΣPi値を得るのに必要な量だけ添加して、溶解させればよい。
【0046】
処理液中の多価金属リン酸塩の濃度は1〜50重量%の範囲とする。1重量%未満では形成される絶縁皮膜の膜厚が薄くなりすぎ、50重量%を超えると、処理液の安定性が低下する。液安定性の観点から、多価金属リン酸塩の濃度は好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。なお、この多価金属リン酸塩の濃度とは、リン酸アニオンの量と多価金属カチオンの量 (水酸化物等として添加した量も含む) の合計から求めた濃度である。
【0047】
焼付け温度は、従来の重クロム酸塩系の場合と同様に、板温で 200〜330 ℃の範囲内とすることが好ましい。このような低い焼付け温度でも、ΣMi/ΣPiの値が1以上と高いと、耐水性が十分に良好な絶縁皮膜を形成することができる。より好ましい焼付け温度は 230〜300 ℃の範囲である。
【0048】
処理液には、多価金属リン酸塩とキレート剤以外に、絶縁皮膜中に配合できる上記成分の1種もしくは2種以上を配合することができる。さらに、必要に応じて、防錆剤、消泡剤、処理液安定化剤等の添加剤を配合してもよい。処理液の溶媒は水であるが、水に加えて水混和性有機溶媒 (例、アルコール) を併用することもできる。
【0049】
キレート剤としては、焼付け中に蒸発または熱分解により膜から除去されるものが好ましい。使用できるキレート剤の例として、オキシカルボン酸 (例、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコン酸、マロン酸) 、アミノカルボン酸 (例、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸) 、β−ジケトン (例、アセチルアセトン) 等が挙げられる。
【0050】
キレート剤の添加量は、処理液中の多価金属リン酸塩を溶解状態で安定に保持するのに十分な量であればよい。過度の添加は経済的に好ましくない。添加の方法は、ベースの多価金属第一リン酸塩の水溶液に、多価金属カチオンと同時に、またはその前に添加することが望ましい。具体的な添加量は、処理液の安定性の見地から、処理液に添加する多価金属カチオンと等モル以上とすることが望ましい。添加量が多いほど処理液が安定する傾向にあるが、経済的に不利となる。
【0051】
処理液に添加する多価金属カチオンは、金属酸化物もしくは水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの有機酸塩などの形態で添加できる。ただし、処理液の安定性を考慮すれば、酸化物や水酸化物を用いることが望ましい。好ましい多価金属化合物は、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムである。
【0052】
打抜き性を向上させる目的で絶縁皮膜に合成樹脂を配合する場合、前述した理由で、処理液中のリン酸塩 (これは、後からの添加分も含む多価金属カチオンとリン酸アニオンの合計量である) の固形分100 重量部あたり、合成樹脂を固形分として3〜100 重量の割合で添加することが好ましい。
【0053】
処理液にはさらに、▲1▼歪取り焼鈍後の耐食性向上ためのホウ酸 (無水ホウ酸を含む) および/もしくはホウ酸塩と、▲2▼層間抵抗の向上のためのコロイド状シリカ、の一方または両方を配合することができる。これらを配合する場合の配合量は、前述した理由で、処理液中のリン酸のP換算量100 重量部あたりのBまたはSi換算量として、▲1▼は50重量部以下、▲2▼は150 重量部以下、とすることが好ましい。コロイド状シリカとしては、水性シリカであるコロイダルシリカが好ましいが、気相シリカ (ヒュームドシリカ) も使用可能である。
【0054】
本発明の電磁鋼板の製造は、多価金属リン酸塩と必要に応じて他の成分を含む水性処理液を、素地鋼板の表面に塗布し、加熱して塗膜を焼付けて絶縁皮膜を形成することにより行うことができる。通常は素地鋼板の両面に絶縁皮膜を形成する。
【0055】
処理液の塗布の方法は、特に制限されず、工業的に一般に用いられるロールコート、カーテンフローコート、スプレー塗装、ナイフコート、浸漬等の種々の方法が適用できる。
【0056】
皮膜の焼付けも、通常採用される熱風式、赤外式、誘導加熱式等の方法によって実施でき、従来の重クロム酸塩なみの焼付け温度、例えば 200〜330 ℃の温度範囲で1分以内の短時間焼付けにより、十分な耐水性を持った絶縁皮膜を形成することができる。
【0057】
本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板は、クロムを含有していないので、環境上の問題がない。主皮膜形成成分である金属リン酸塩は安価な材料である。また、焼付けを従来の重クロム酸系と同様の低い温度での短時間加熱により行うことができるので、打抜き性に優れた半有機皮膜とする場合に、低価格の汎用の合成樹脂を使用することができる。従って、製造コストも従来の重クロム酸塩系とほぼ同じですむ。
【0058】
【実施例】
(実施例1)
ΣMi/ΣPi=0.9 の第一リン酸アルミニウム水溶液 (濃度40重量%) をベース水溶液として使用し、これに水酸化マグネシウムおよびこれと等モルのキレート剤 (本例においてはシュウ酸) を量を変化させて一緒に添加した後、水を加えて水溶液中の多価金属リン酸塩の濃度 (Al+Mg+リン酸アニオン) を15重量%に調整した。この水溶液に、ガラス転移点20℃のアクリルエマルジョンを、リン酸塩固形分100 重量部に対して樹脂固形分が20重量部となるように加えて、処理液を作製した。なお、これらの処理液中のリン酸塩の濃度は10〜15重量%の範囲であった。
【0059】
Siを0.1 %含む板厚0.5 mmの電磁鋼板の両面に、焼付け後の膜厚が0.4 μmとなるように、上記処理液をロールコータにより塗布した後、鋼板温度が200 ℃、270 ℃、330 ℃、400 ℃にて30秒間の加熱により塗膜を焼付けて、電磁鋼板の両面に半有機型の絶縁皮膜を形成した。なお、この焼付け中に、溶媒の水に加えて、キレート剤も皮膜から除去された。
【0060】
作製した絶縁皮膜付き電磁鋼板について下記の性能評価試験を行った。その結果の一部を、処理液のΣMi/ΣPiの値および焼付け温度と一緒に表1にまとめて示す。
【0061】
▲1▼耐水性
50℃、98%RHの湿潤試験機内に、作製した皮膜付き電磁鋼板の試験片を吊るし、72時間後の皮膜表面の状態を、触手および色差測定により観察・調査した。耐水性の評価は下記の4段階にて行い、◎と○を合格とした。皮膜の白化については、全反射型色差測定器ミノルタ製CR−300を使用し、JIS−Z−8730で規定されるL値 (白さを表す数値) を試験前後に測定し、そのL値の変化ΔLの大きさにより白化を判断した。
【0062】
◎:べたつきなし、白化無し (ΔL≦2) 、
○:べたつきなし、白化やや有り (ΔL≦5、
△:べたつき有り、白化有り (ΔL≦10) 、
×:べたつき有り、白化顕著 (ΔL≦20) 。
【0063】
▲2▼処理液の安定性
作製した処理液を500 ml容のガラス容器に入れ、密閉した後、室温 (約25℃) にて作製日から15日間放置した。放置後の処理液を目視で観察し、下記の4段階で処理液の安定性を評価した。◎と○が合格である。
【0064】
◎:処理液が透明で浮遊物無し、
○:作製直後に比べ処理液は白色化するも、透明で、浮遊物無し、
△:作製直後に比べ処理液が白色化し不透明、液中に浮遊物発生あり、
×:作製直後に比べ処理液が白濁し不透明、液中に浮遊物、容器底に沈降物の発生あり。
【0065】
▲3▼絶縁皮膜の密着性
焼付け後の絶縁皮膜付き電磁鋼板の試験片を直径5mmの鉄棒に巻き付け、巻き付けた外側の部分についてテープ剥離試験を行い、鋼板に残存した絶縁皮膜の状況を調査した。皮膜密着性を下記の3段階で評価し、◎と○を合格とした。
【0066】
◎:皮膜剥離無し、
○:皮膜剥離発生 (評価部分の5%以下) 、
△:皮膜剥離発生 (評価部分の5%を超え、30%以下) 、
×:皮膜剥離発生 (評価部分の30%を超え、100 %以下) 。
【0067】
▲4▼打抜き性
絶縁皮膜付き電磁鋼板の試験片の打抜きを下記条件で行った:
打抜き寸法 :15mm角、
クリアランス:鋼板板厚の5%、
打抜き工具 :SKD−11、
打抜き速度 :350 ストローク/分。
【0068】
この条件で打抜き片のかえり高さが50μmに達するまでの打抜き数を求め、打抜き性を下記の4段階の基準で評価した。◎と○が合格である。
◎:200 万回超、
○:100 〜200 万回、
△:10〜100 万回未満、
×:10万回未満。
【0069】
▲5▼皮膜焼付け後の表面性状
絶縁皮膜を焼付けた後の表面状態を目視観察し、下記基準にて評価した。〇が合格である。
【0070】
○:ムラ無し、美麗、
△:ムラ有るも、表面に粉化物無し、
×:表面に粉化物有り。
【0071】
▲6▼歪取り焼鈍後の皮膜密着性
絶縁皮膜付き電磁鋼板の試験片を窒素中750 ℃で2時間焼鈍処理を行った後、この試験片を直径20 mm で 180°曲げし、屈曲部の外面の皮膜剥離状態を以下のように目視観察した。◎と○が合格である。
【0072】
◎:剥離なし、
○:剥離20%以下、
△:剥離20〜40%、
×:剥離40%〜全面剥離。
【0073】
▲7▼歪取り焼鈍前後の層間抵抗
前記と同様の焼鈍を行った後、JIS−C2550 に準じて層間抵抗を測定した。
【0074】
▲8▼歪取り焼鈍後の耐食性
前記と同様の焼鈍を行った後、50℃、98%RHの湿潤試験機内に試験片を吊るし、48時間後の赤錆発生率を目視観測して、下記基準で耐食性を評価した。◎と○が合格である。
【0075】
◎:0〜20%、
○:20〜40%、
△:40〜60%、
×:60〜100 %。
【0076】
【表1】
【0077】
ΣMi/ΣPiが0.9 の市販のリン酸アルミニウム水溶液を使用した場合、焼付け温度が 200〜330 ℃の範囲では絶縁皮膜の耐水性が劣り、400 ℃で焼付けると耐水性は改善するものの、樹脂の熱分解が起こり、打抜き性が低下する。
【0078】
これに対し、ΣMi/ΣPi=1.0 の本発明例では、焼付け温度が 270〜400 ℃の範囲で、耐水性、密着性、打抜き性とも良好となる。ΣMi/ΣPi=1.2 または1.8 の本発明例においては、焼付け温度が 200〜330 ℃の範囲で、耐水性、密着性、打抜き性とも良好である。ΣMi/ΣPiが高い方が、より低い焼付け温度で打抜き性が良好となる。
【0079】
(実施例2)
実施例1で使用したΣMi/ΣPi=1.8 のリン酸アルミニウム+キレート剤+水酸化マグネシウム水溶液を、固形分濃度 (キレート剤を除外した成分濃度の合計、即ち、この場合は金属カチオン+リン酸アニオンの合計濃度) が15重量%になるように調整した (この処理液を、以後は処理液Aと呼ぶ) 。
【0080】
処理液Aに含まれるリン酸塩のP換算100 重量部に対して、B換算で0〜60重量部の範囲でホウ酸を添加し、固形分濃度15重量%に調整した処理液B〜Fを用意した。別に、処理液Aにコロイダルシリカをリン酸塩のP換算100 重量部に対して、Si換算で0〜200 重量部の範囲で添加し、固形分濃度15重量%に調整した処理液G〜Kを用意した。なお、これらの処理液中のリン酸塩の濃度は10〜15重量%の範囲であった。
【0081】
0.3 %のSiを含有する板厚0.5 mmの電磁鋼板の両面に、焼付け後の膜厚が0.05〜2.0 μmとなるように処理液Aをロールコータにて塗布後、鋼板温度270 ℃にて25秒間乾燥して塗膜を焼付けて、絶縁皮膜を形成した。一方、処理液B〜Kについては、同様の電磁鋼板の両面に、焼付け後の膜厚が0.4 μmとなるように処理液をロールコータにて塗布後、同様に焼付けして、絶縁皮膜を形成した。
【0082】
得られた無機型絶縁皮膜を備えた電磁鋼板の性能を実施例1に説明したようにして評価した結果を、処理液の詳細および膜厚と共に表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
ホウ酸およびコロイダルシリカの適切な添加により、絶縁皮膜の層間抵抗や歪取り焼鈍後の耐食性、皮膜焼付け後の表面性状、全てにおいて性能バランスに優れた皮膜が得られるようになる。
【0085】
(実施例3)
ベースのリン酸塩水溶液として第一リン酸アルミニウム水溶液または第一リン酸マグネシウム水溶液 (いずれもΣMi/ΣPi=0.9)を用い、この水溶液に水酸化マグネシウムを2種類のキレート剤 (シュウ酸とリンゴ酸) のいずれかと一緒に添加して、ΣMi/ΣPi値を変化させたリン酸塩水溶液を作製した。この水溶液の固形分濃度 (=リン酸塩濃度) を15重量%になるように調整して、処理液として使用した。
【0086】
この処理液を、0.3 %のSiを含む板厚0.5 mmの電磁鋼板の両面に、焼付け後の膜厚が0.5 μmとなるようにロールコータにて塗布した後、鋼板温度250 ℃にて35秒間乾燥して、無機型絶縁皮膜を形成した。得られた絶縁皮膜付き電磁鋼板について耐水性、処理液の安定性、歪取り焼鈍前の皮膜密着性を調査した結果を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
表3からわかるように、ΣMi/ΣPiが1より小さいと、耐水性と皮膜密着性が悪く、ΣMi/ΣPiが5を超えると処理液の安定性が悪化する。本発明に従って、ΣMi/ΣPiが1〜5の範囲内であると、いずれの性能も良好であった。
【0089】
表1〜3から明らかなように、本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板は、電磁鋼板に必要な諸性能を有する上、クロム等の有害物を含まず、さらには従来の重クロム酸塩からなる絶縁皮膜と同様の低い焼付け温度で製造可能である。
【0090】
【発明の効果】
本発明の絶縁皮膜付き電磁鋼板は、絶縁皮膜中にクロムを含まず、環境に配慮したものである。さらに従来の重クロム酸塩系の絶縁皮膜と同等の焼付け温度で製造でき、処理液の安定性も良好で、従来のリン酸塩系絶縁皮膜に比べて焼付け温度が低いにもかかわらず、耐水性が良好である。また、電磁鋼板用の絶縁皮膜に必要な諸性能を兼ね備えている。そのため本発明の電磁鋼板は、モータ用途をはじめ広範囲の用途に有用である。
Claims (13)
- 少なくとも片面に絶縁皮膜を有する電磁鋼板であって、絶縁皮膜が1種または2種以上の多価金属リン酸塩の脱水縮合物を含み、該絶縁皮膜に含まれる多価金属の価数×モル数の積の総和ΣMiとリンのモル数ΣPiとの関係が次式を満たすことを特徴とする、耐水性の良好な絶縁皮膜付き電磁鋼板。
1.5≦ [ΣMi/ΣPi] ≦5 - 絶縁皮膜がさらに合成樹脂を含む、請求項1記載の絶縁皮膜付き電磁鋼板。
- 絶縁皮膜が、B換算量として該絶縁皮膜に含まれるリン100重量部当たり50重量部以下のホウ酸および/もしくはホウ酸塩、ならびに/またはSi換算量として該絶縁皮膜に含まれるリン100重量部当たり150重量部以下のコロイド状シリカ、をさらに含む、請求項1または2記載の絶縁皮膜付き電磁鋼板。
- 絶縁皮膜の厚みが0.05〜2.0 μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁皮膜付き電磁鋼板。
- 絶縁皮膜形成用処理液を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布し、焼付けることからなる絶縁皮膜付き電磁鋼板の製造方法であって、該処理液が1種または2種以上の第一リン酸の状態にあるリン酸アニオンと1種または2種以上の多価金属カチオンとを合計で1〜50重量%と該リン酸アニオンと該多価金属カチオンとを安定に溶解させるのに十分な量のキレート剤とを溶解状態で含有する水性処理液であり、該処理液に含まれる多価金属カチオンの価数×モル数の積の総和ΣMiとリンのモル数ΣPiとの関係が次式を満たすことを特徴とする、耐水性の良好な絶縁皮膜付き電磁鋼板の製造方法。
1.5≦ [ΣMi/ΣPi] ≦5 - 絶縁皮膜形成用処理液が、第一リン酸の状態にあるリン酸アニオンと1種または2種以上の多価金属カチオンとの合計の固形分100重量部に対して3〜100重量部の固形分量の合成樹脂をさらに含む、請求項5記載の絶縁皮膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 絶縁皮膜形成用処理液が、B換算量としてリン酸アニオンのP換算量100重量部当たり50重量部以下のホウ酸および/もしくはホウ酸塩、ならびに/またはSi換算量としてリン酸アニオンのP換算量100重量部当たり150重量部以下のコロイド状シリカ、をさらに含む請求項5または6記載の耐水性の良好な絶縁皮膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 焼付け温度が200〜330℃の範囲である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の耐水性の良好な絶縁皮膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 第一リン酸の状態にあるリン酸アニオンと1種または2種以上の多価金属カチオンとを合計で1〜50重量%と該リン酸アニオンと該多価金属カチオンとを安定に溶解させるのに十分な量のキレート剤とを含有する水溶液からなり、該処理液に含まれる多価金属カチオンの価数×モル数の積の総和ΣMiとリンのモル数ΣPiとの関係が次式を満たすことを特徴とする、耐水性の良好な絶縁皮膜形成用処理液。
1.5≦ [ΣMi/ΣPi] ≦5 - さらに合成樹脂を含有する、請求項9記載の絶縁皮膜形成用処理液。
- 合成樹脂が第一リン酸の状態にあるリン酸アニオンと1種または2種以上の多価金属カチオンとの合計の固形分100重量部に対して3〜100重量部の固形分量で存在する、請求項10記載の絶縁皮膜形成用処理液。
- さらにホウ酸および/もしくはホウ酸塩、ならびに/またはコロイド状シリカを含有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の絶縁皮膜形成用処理液。
- ホウ酸および/もしくはホウ酸塩がB換算量としてリン酸アニオンのP換算量100重量部当たり50重量部以下の量で存在し、ならびに/またはコロイド状シリカがSi換算量としてリン酸アニオンのP換算量100重量部当たり150重量部以下の量で存在する、請求項12記載の耐水性の良好な絶縁皮膜形成用処理液。
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