JP6984998B2 - 高性能モータ用無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
以上の知見に基づき、本発明を完成した。具体的には以下の通りである。
母鋼板の両表面部での[O]量を100ppm以上、600ppm以下とする。ここで、母鋼板の両表面部での[O]量とは、アルカリ等で両表面の絶縁皮膜を除去した母鋼板の[O]量から、酸洗によって母鋼板表面を両側10μm以上減厚して表面酸化層を除去した母鋼板中心部での[O]量を減じた値であり、質量基準で測定する。母鋼板中には製鋼での溶製中に形成されるアルミナ等の介在物が存在するため、上記の方法で[O]量を算出すれば、主に表面酸化層のみによる[O]量の増分が算出できる。また、[O]量の測定方法は、鋼板サンプルを黒鉛るつぼに挿入し不活性ガス中で高温に加熱溶解してるつぼ中のCと反応させて発生させたCO2を赤外吸光法で検出する等、一般的な機器分析方法による分析で構わない。ここで、[O]量の下限を100ppmに設定したのは、これ以下だと歪取り焼鈍時の焼付き防止の効果がないためであり、[O]量の上限を600ppmに設定したのは、これ以上では占積率の低下が大きいためである。
電気自動車、ハイブリッド自動車、エアコンコンプレッサ等、エネルギー消費を極力抑えることが必要なモータの更なる高効率化が求められる中、モータコアの積層鉄心に使用される電磁鋼板にも益々の低鉄損化が必須となってきている。特に電気自動車、ハイブリッド自動車に搭載されるモータは高出力でありながら小型化が求められるため、高速で回転されることが多く、高周波での鉄損に優れる薄手電磁鋼板が有効である。通常の無方向性電磁鋼板の板厚は0.50mm厚や0.35mm厚であるが、上記の高周波鉄損低減を目的として、0.30mm厚あるいは0.25mm厚の無方向性電磁鋼板が開発されてきている。ところが、板厚が0.20mm厚以下の薄手の無方向性電磁鋼板では、積層して鉄心を作製すると鉄の占積率が著しく低下して、素材の磁束密度から期待される所期のモータトルクを得られなくなる。本発明では0.20mm厚以下の薄手の無方向性電磁鋼板を対象とする。より好ましくは0.15mm厚、あるいは0.10mmの方が高周波鉄損は低減できるが、鋼板の剛性が保てず、電気自動車のような大型のモータコアを構成することが困難になるため、下限は0.10mm厚とする。
本発明では、母鋼板の成分は特に限定されないが、一例として以下の成分とすることができる。なお、各成分量を示す%は、質量%である。
Siは電気抵抗を高めて鉄損を改善する必須元素であるため、鉄損改善効果の得られる0.5%を下限とする。またSiが低くオーステナイト変態を生じると、熱延組織が大きく変化し磁化特性が劣化するとともに、仕上げ焼鈍において変態し良好な磁気特性を得ることができない。オーステナイト変態を完全に生じない2.0%以上が好ましく、2.5%以上がさらに好ましい。
一方、Si含有量が4.0%を超えると鋼板の加工性が悪化し、さらに飽和磁束密度Bsも低下する。このため、Si含有量は、4.0%以下であり、3.7%以下が好ましく、3.5%以下がさらに好ましい。
Alは、Siと同様に電気抵抗を高めて鉄損を改善する元素であるために、Al含有量は、0.1%以上であり、0.3%以上が好ましく、0.5%以上がさらに好ましい。
しかし、Alは飽和磁束密度Bsを大きく低下させ、また飽和磁歪定数λsを高くする元素であるために、Al含有量は、2.0%以下であり、1.5%以下が好ましく、1.0%以下がさらに好ましい。
Mnは、熱間加工性を良好にするために有効な元素である。Mn含有量が0.1%未満ではこの効果を得られないため、Mn含有量は、0.1%以上であり、0.3%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがさらに好ましい。
一方、Mn含有量が3.0%を超えると、オーステナイト変態が生じるようになるため、Mn含有量は、3.0%以下であり、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。
Pは、0.01%以上含有することにより、磁化特性の改善が見られるため、P含有量は、0.01%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.10%以上である。
しかし、P含有量が0.2%を超えると、延性が劣化し、冷間圧延時に圧延材の破断等のトラブルを生じる。このため、P含有量は、0.2%以下であり、好ましくは0.15%以下であり、さらに好ましくは0.12%以下である。
Snは、0.01%以上含有することにより鉄損の改善に有効である。このため、Sn含有量は、0.01%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、さらに好ましくは0.10%以上である。しかし、Sn含有量が0.3%を超えると、脆性が著しく劣化する。このため、Sn含有量は、0.3%以下であり、好ましくは0.2%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。
Feおよび不純物である。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。
鋼板表面に形成される絶縁被膜としては、リン酸塩、クロム酸塩、ホウ酸塩の何れかあるいは複合したものを主たる成膜成分とする被膜とすることができる。また、上記成膜成分に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の粒子を混合して打抜き性を改善した被膜、あるいは、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニア、ジルコニア等を添加して耐疵付き性を改善した被膜でも良い。また、アクリル等の有機樹脂を成膜成分とする被膜や、これらにコロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニア、ジルコニア等を添加して耐疵付き性を改善した被膜、等、いずれの絶縁被膜でも構わない。あるいは、CVD、PVD等の技術を活用して、鋼板表面に窒化物の極薄絶縁被膜を形成してもよい。これらの内、特に、クロム酸塩を含まず主にリン酸塩のみを成膜成分とし、アクリル樹脂等の粒子を分散含有させた絶縁被膜が、簡便なロールコータによる塗布、焼付け工法を使用でき、また最近の環境規制の動きに合致するため特に好ましい。
板厚が0.20mm厚以下の薄手の無方向性電磁鋼板を積層して製造する鉄心の磁気的な特性を担う鉄の比率(占積率)を高めるためには、鋼板表面に塗布されている絶縁被膜の厚みを小さくする必要がある。そこで、本発明では膜厚が0.8μm未満の絶縁被膜を有する無方向性電磁鋼板を対象とする。占積率を高めるためには、絶縁被膜は薄ければ薄いほどよいが、鋼板表面の冷延粗度による凹凸が0.2−0.3μm程度あるため、絶縁被膜に覆われていない部分を作らないために、0.3μm以上の絶縁被膜厚が必要である。工業的なバラツキを吸収するため、0.5μm以上がさらに好ましい。絶縁被膜の厚みは、通常、1〜2μm程度であるため、占積率を向上させるためには、最大0.8μm未満の絶縁被膜が必要である。
次に、本発明の実施の形態に係る高性能モータ用無方向性電磁鋼板の製造方法を例示する。なお、本発明の高性能モータ用無方向性電磁鋼板は、以下の製造方法で得られたものに限定されない。
Claims (1)
- 0.8μm未満の絶縁被膜厚を有する0.20mm厚以下の無方向性電磁鋼板であり、
絶縁被膜を除去した母鋼板表面の[O]量が、質量基準で100ppm以上、600ppm以下である、高占積率と歪取り焼鈍後の焼付き防止を両立できる高性能モータ用無方向性電磁鋼板。
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