JP7028148B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板、特に鉄損が低くかつ製造安定性に優れる無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。ここで、製造安定性とは、高合金鋼を健全な冷間圧延にて製造し得る性能を安定して実現することにある。
ハイブリッド車や電気自動車、または掃除機のモータは、小型化および高効率化の観点より、高周波域で駆動されている。従って、このようなモータのコア材として使用される無方向性電磁鋼板には、高周波鉄損の低いことが要望されている。高周波鉄損を低減するためには、板厚の低減と固有抵抗の増大が効果的である。このうち、板厚の低減に関しては、剛性低下に起因して材料の取り扱いが難しくなるばかりでなく、打ち抜き工数および積み工数が増加する、という問題がある。
一方、固有抵抗を高める手法は、板厚低減を招かないため、高周波鉄損を低減する手法として望ましいものと言える。固有抵抗を増加させるためにはSi添加が効果的であるが、Siは固溶強化能の大きい元素であるため、Si添加に伴い材料が硬化し、冷間圧延において割れが発生して製造安定性を阻害することが問題となる。
このような問題を解決する手段として、3%Si鋼を圧延法で製造し、仕上焼鈍時に四塩化珪素ガスを吹き付けることにより高Si鋼を製造する技術が開示されている。例えば特許文献1には、圧延可能な低珪素鋼を予め溶製して圧延により薄板化した後、表面からSiを浸透させることにより高珪素鋼帯を製造する方法が開示されている。しかし、連続浸珪法で高合金鋼を製造する技術は、コストが著しく高くなるため、工業生産には不向きであった。
特許第2605511号公報
そこで、本発明は、固有抵抗を増加させた高Si鋼における製造安定性の問題を、安価に解決する方途について提供することを目的とする。
本発明者らが鉄損の低い高合金鋼の製造安定性を改善する手法について鋭意検討したところ、高合金鋼を内層部とする一方、表層部に低Si鋼などの延性の高い材料を配置し、さらに、表層部と内層部との界面の介在物量を規定することにより、冷間圧延時の割れを防止しつつ低鉄損は維持できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明の要旨は以下の通りである。
1.質量%で、C:0.010%以下、Si:3.0~7.0%、Al:3.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.10%以下およびS:0.010%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する鋼板からなる内層部と、前記鋼板の表裏面の少なくとも片側を覆う、全伸びが30%以上の高延性金属からなる表層部と、を有し、前記内層部および表層部の合計厚みに占める表層部の厚みの比率が0.02~0.20であり、前記表層部と内層部との界面における直径5μm以上の介在物が10個/mm以下である無方向性電磁鋼板。
2.前記表層部は、質量%で、C:0.010%以下、Si:1.0%以下、Al:1.0%以下、Mn:1.0%以下およびP:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する前記1に記載の無方向性電磁鋼板。
3.前記内層部は、さらに質量%で、SnおよびSbから選ばれる1種または2種を合計で0.001~0.10%含有する前記1または2に記載の無方向性電磁鋼板。
4.前記内層部は、さらに質量%で、Cr:0.10~5.0%を含有する前記1から3のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
5.前記内層部は、さらに質量%で、Ni:0.10~5.0%を含有する前記1から4のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
6.前記表層部は、さらに質量%で、SnおよびSbから選ばれる1種または2種を合計で0.001~0.10%含有する前記2から5のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
7.前記表層部は、さらに質量%で、Cr:0.10~5.0%を含有する前記2から6のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
8.前記表層部は、さらに質量%で、Ni:0.10~5.0%を含有する前記2から7のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
9.前記合計厚みが0.25mm以下である前記1から8のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
10.前記1から9のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、該無方向性電磁鋼板の内層部となるスラブの表裏面に、同外層部となるスラブを100Pa以下の圧力雰囲気下にて貼り合わせたのち、前記外層部となるスラブの側から熱間圧延を施す無方向性電磁鋼板の製造方法。
以上述べたように、本発明によれば、製造安定性に優れた低鉄損の無方向性電磁鋼板を安価に得ることができる。
クラッド比と曲げ回数との関係を示す図である。 クラッド比と鉄損との関係を示す図である。 表層材の全伸びと繰り返し曲げ回数との関係を示す図である。 直径5μm以上の介在物個数と繰り返し曲げ回数との関係を示す図である。
以下、本発明を実験結果に基づいて詳細に説明する。
高合金鋼の圧延性および鉄損を評価するため、表層部の組成を
C:0.0018%、Si:4.0%、Al:0.9%、Mn:0.5%およびP:0.01%を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する高合金鋼からなるスラブ(内層部用)の表裏面に、C:0.0020%、Si:0.5%、Al:0.3%、Mn:0.1%およびP:0.01%を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する高延性鋼からなるスラブ(表層部用)を、低圧力雰囲気下(100Pa)で溶接することにより貼り合わせた。ここで、貼り合わせ後のスラブ全厚に対する表層部用スラブの合計厚みの比率を種々に変化させた。また、比較のため、前記内層部用スラブと同じ組成のスラブも単体で作製した。
これらスラブを熱間圧延し、板厚2.0mmとした。引き続き、この熱間圧延板に100%N雰囲気にて950℃×30sの熱延板焼鈍を施した。次に、熱延板焼鈍後、表面層のスケール層を酸洗により除去しやすくするため、ショットブラストを行った。すなわち、ショット粒は直径0.3mmの鋼球を用い、投射密度を30kg/m2とした。ショット後に酸洗を行ってから、板厚0.25mmまで冷間圧延して該板厚における表層部の合計厚みの比率(クラッド比)を種々に変化させた冷延板を作製した。なお、該クラッド比と、前記スラブ全厚に対する表層部用スラブの合計厚みの比率とは、同じであった。さらに、冷延板に、20%H-80%N雰囲気にて1000℃×10s間の仕上焼鈍を行った。なお、表層に高延性材を付与していない材料およびクラッド比の低い材料では室温での冷間圧延時に割れが発生したため、材料を70℃に温めてから圧延を行った。
ここで、ショットブラストおよび酸洗を行った後の熱延焼鈍板から幅30mmおよび長さ100mmの試験片を切り出し、この試験片に室温にて曲率半径30mmおよび曲げ角度45°の繰り返し曲げを行って、鋼板が破断するまでの繰り返し曲げ回数を測定した。この繰り返し曲げ回数によって、鋼板の冷間圧延性を評価することができる。すなわち、繰り返し曲げ回数が5回以上の範囲にあれば、冷間圧延性に優れているといえる。
さらに、ショットブラストおよび酸洗を行った後の熱延焼鈍板の機械特性を評価するため、熱延焼鈍板の表裏面の片側から片側表層部および内層部を研磨することにより表層部のみを残した材料と、熱延焼鈍板の表裏面から研磨することにより内層部のみを残した材料とを作製し、両材料からJIS5号引張試験片をそれぞれ切り出し、各試験片に引張試験を行ったところ、表層部材料の全伸びは40%、内層部材料の全伸びは17%であった。
図1に繰り返し曲げ回数に及ぼす、前記クラッド比の影響を示す。鋼板の表層に高延性の材料を付与していない場合には、繰り返し曲げ回数は非常に低いが、高延性材をクラッド比で0.02以上にて付与することにより繰り返し曲げ回数が増加していることがわかる。
高延性材を表層部とする鋼板において、繰り返し曲げ回数が増加した原因を調査するため、繰り返し曲げ前の材料組織を調査したところ、高延性材の表層部を持たない単素材の鋼板では、その表層部にショットブラストに起因した双晶が認められた。一方、高延性材を表層部とする鋼板では、双晶が著しく軽減されていた。このことから、高延性材の表層部が付与されていない鋼板では、ショットブラストによる双晶変形が導入され、繰り返し曲げ時に双晶部から亀裂が発生しているものと考えられる。一方、高延性材を表層部とする鋼板では、高延性材がショットブラストの衝撃を吸収し、双晶変形が生じにくくなり、繰り返し曲げ時の亀裂発生が抑制されたものと考えられる。
また、ショットブラストのない製造プロセスの場合も、冷間圧延時には鋼板が高速変形することから、高合金の単相材では表層部に双晶が導入され、割れが生じやすくなるため、表層部に高延性層を付与する本手法は有効である。
図1に示すように、繰り返し曲げ回数を5回以上にするには、鋼板のクラッド比の下限を0.02、好ましくは0.05以上とする。これは、内層部の鋼板の表裏面に外層部を有する場合の、片側当たりにすると、0.01好ましくは0.025である。ここで、繰り返し曲げ回数を5回以上とするのは、5回以上の繰り返し曲げが可能であれば、複層鋼板の室温での圧延が可能となるからである。
また、上記した冷延板から、幅30mmおよび長さ180mmのエプスタイン試験片を、該冷延板の圧延方向および圧延直角方向に沿って切り出し、エプスタイン法にて磁気測定を行った。図2にクラッド比と周波数400Hzでの鉄損との関係を示す。図2に示すように、クラッド比0.20以下では低鉄損が得られているが、クラッド比が0.20を超えると鉄損が増加することがわかる。これはクラッド比が低い場合は磁気特性の良好な内層部のみが磁化されるのに対し、クラッド比が高くなると磁気特性に劣る表層部も磁化されるため鉄損が増加したものと考えられる。すなわち、図2に示すように鉄損W10/400を11.75W/kg以下にするには、クラッド比の上限を0.20、好ましくは0.10とする。内層部の鋼板の表裏面に外層部を有する場合の、片側当たりにすると、0.10好ましくは0.05である。ここで、W10/400を11.75W/kg以下とするのは、モータの損失が小さくなり、HEVもしくはEVモータとした場合のコア発熱を抑制できるためである。
次に、表層部に必要な機械的特性について調査するため、表層部となるC:0.0020%、Si:0.1~5%、Al:tr.、Mn:0.1%およびP:0.01%を含む成分系により全伸びを種々に変化させた鋼スラブと、内層部となるC:0.0018%、Si:4.0%、Al:0.9%、Mn:0.5%およびP:0.01%を含む高合金鋼スラブとを、低圧力雰囲気下(100Pa)で溶接することにより張り合わせた。ここで、表層部となるスラブの厚みの張り合わせ後スラブ全厚に対する比率は0.05とした。
これらスラブを熱間圧延し、板厚2.0mmとした。引き続き、この熱間圧延板に100%N雰囲気で950℃×30sの熱延板焼鈍を施した。次いで、熱延板焼鈍後、該熱延焼鈍板の表層のスケール層を酸洗により除去しやすくするため、ショットブラストを行った。ここで、ショット粒は直径0.3mmの鋼球を用い、投射密度を30kg/m2とした。このショットブラストおよび酸洗を行った後の熱延焼鈍板を、幅30mmおよび長さ100mmに加工した後、室温にて曲率半径30mm、曲げ角度45°の繰り返し曲げを行って鋼板が破断するまでの繰り返し曲げ回数を測定した。この繰り返し曲げ回数によって、冷間圧延性を評価することができる。すなわち、繰り返し曲げ回数が5回以上の範囲にあれば、冷間圧延性に優れているといえる。
なお、表層部の材料の全伸びは、上記鋼板の作製後、該鋼板片面より研磨を行い、表層部のみ残した材料を作製し、この材料よりJIS5号引張試験片を作製し、引張試験を行うことにより評価した。
図3に、表層部の材料の全伸びと繰り返し曲げ回数との関係を示す。図3より、表層部の材料の全伸びを30%以上とすることで繰り返し曲げ回数を確実に5回以上に増加できることがわかる。これは表層部の材料の延性が増加することにより、ショットブラスト時の歪が緩和され、双晶導入が抑制されたためと考えられる。従って、表層部には全伸びが30%以上の高延性金属を適用する。ここで、繰り返し曲げ回数を5回以上とするのは、高延性金属への双晶導入が非常に少なくなり、高合金材の表面に張り合わせた場合、室温での繰り返し曲げ回数が5回以上となり、圧延が可能となるためである。
次に、製造安定性を評価するため、表層部となるC:0.0020%、Si:0.5%、Al:0.2%、Mn:0.1%およびP:0.01%を含む鋼スラブと、内層部となる組成をC:0.0018%、Si:3.5%、Al:1.4%、Mn:1.2%およびP:0.01%を含む鋼スラブとを種々の圧力雰囲気下(1~1000Pa)で溶接することにより貼り合わせた。ここで、表層部となるスラブの厚みの張り合わせ後スラブ全厚に対する比率は0.05とした。このようなスラブを実験室にて10個作製した。
これらスラブを熱間圧延し、板厚2.0mmとした。引き続き、この熱間圧延板に100%N雰囲気にて950℃×30sの熱延板焼鈍を施した。次に、該熱延焼鈍板の表層のスケール層を酸洗により除去しやすくするため、ショットブラストを行った。ここで、ショット粒は直径0.3mmの鋼球を用い、投射密度を30kg/m2とした。このショットブラストおよび酸洗を行った後の熱延焼鈍板を用い、幅30mmおよび長さ100mmに加工した後、室温にて曲率半径30mm、曲げ角度45°の繰り返し曲げを行って鋼板が破断するまでの繰り返し曲げ回数を測定した。その結果、曲げ回数は3回~10回と大きくばらついた。この原因を調査するため、曲げ回数の低かった材料の断面組織を調査したところ、貼り合わせ界面での割れが認められた。さらに、SEMを用いて貼り合わせ界面を観察したところ、割れが生じたサンプルでは介在物が多数認められた。
図4に、貼り合わせ界面における、直径5μm以上の介在物個数と曲げ回数との関係を示す。ここで、介在物の観察には光学顕微鏡を用い、鋼板の圧延方向断面における、貼り合わせ界面の単位長さあたりの介在物個数をカウントした。また、介在物直径は介在物の面積から円相当直径に換算した。図4より、直径5μm以上の介在物が1mmあたり10個を超えると、曲げ回数が5回以下に著しく低下することがわかる。これは直径5μm以上の粗大な介在物が亀裂の役割を果たし、介在物からクラッド界面に沿って亀裂が伝播していくためと考えられる。以上のことから、亀裂として作用する直径5μm以上の介在物の個数を10個/mm以下とする。ここで、繰り返し曲げ回数を5回以上とするのは、5回未満では冷間圧延が困難となるためである。
ちなみに、図1、2および3にて評価した材料における貼り合わせ界面の介在物は2~3個/mmであった。
なお、図4において、作製チャンスにより介在物個数が大きく異なった原因は溶接時の真空度のばらつきに起因したものであり、溶接が行われた際にクラッド界面が酸化したことによるものと考えられる。この介在物を低減するためには、クラッド作製時の溶接を100Pa以下の低圧力雰囲気下で行うことが効果的であるが、かような低圧力雰囲気下で溶接したとしても溶接前に表面が酸化することにより介在物が多く認められる場合がある。よって、低圧力雰囲気下で溶接する場合においても、予めスケール層を研削等により除去し、速やかに溶接することが重要となる
次に、表層部と内層部の材料について説明する。
表層部の材料については全伸びが30%以上あればよく、鉄以外の銅やアルミニウム等でも構わないが、磁気特性の観点からは強磁性体が好ましく、鉄損の観点からはSiを含んだけい素鋼板がより好ましい。
けい素鋼板で表層部を作製する場合は、次の成分組成を有するけい素鋼板が有利に適合する。すなわち、C:0.010%以下、Si:1.0%以下、Al:1.0%以下、Mn:1.0%以下およびP:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成であることが好ましい。
まず、Cは、0.010%を超えると延性が低下するため0.010%以下とする。
Siは、1.0%を超えると延性が低下するため1.0%以下とする。下限は特に設ける必要はないが、鉄損の観点から0.3%以上が好ましい。
Alは、1.0%を超えると延性が低下するため1.0%以下とする。下限は特に設ける必要はないが、鉄損の観点から0.3%以上が好ましい。
Mnは、1.0%を超えると延性が低下するため1.0%以下とする。下限は特に設ける必要はないが、鉄損の観点から0.1%以上が好ましい。
Pは、0.10%を超えると延性が低下するため0.10%以下とする。下限は特に設ける必要はないが、0.005%未満にすることは精錬コストが著しく増加するため、0.005%以上が好ましい。
一方、内層部の材料には、次の成分組成を有する必要がある。すなわち、C:0.010%以下、Si:3.0~7.0%、Al:3.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.10%以下およびS:0.010%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有することが肝要である。
まず、Cは磁気時効の原因となるため上限は0.010%、好ましくは0.005%以下とする。
Siは、固有抵抗アップによる鉄損低減に効果的な元素である。このため下限を3.0%とする。一方、7.0%を超えると飽和磁化が低下するため上限を7.0%とする。
AlもSiと同様に、固有抵抗を上昇させる効果の高い元素であるが3.0%を超えて添加すると飽和磁化が低下するため、上限を3.0%とする。下限は特に設ける必要はないが、鉄損の観点から0.3%以上が好ましい。
Mnも固有抵抗アップにより鉄損低減に効果的な元素であるが、5.0%を超えて添加すると飽和磁化が低下するため、上限を5.0%とする。なお、赤熱脆性防止の観点から0.05%以上の添加が好ましい。
Pは、脆化を招く元素であるため上限は0.10%とする。下限は特に設ける必要はないが、0.005%以下にするには精錬コストが著しく増加するため、0.005%以上が好ましい。
SはMnSを形成して鉄損を増加させるため、上限は0.010%、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.001%以下とする。
なお、けい素鋼板で表層部を作製する場合の表層部の材料や、内層部の材料には、上記の成分に加え、さらにSn:0.001~0.10%、Sb:0.001~0.10%、Cr:0.10~5.0%およびNi:0.10~5.0%から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
Snは、鋼板の集合組織を改善し、磁束密度を高める元素であるため0.001%以上の添加が好ましい。一方、0.10%を超えると材料を脆化させるため、上限は0.10%とする。
Sbは、Sn同様鋼板の集合組織を改善し、磁束密度を高める元素であるため、0.001%以上の添加が好ましい。一方、0.10%を超えると材料を脆化させるため、上限は0.10%とする。
Crは、固有抵抗アップによる鉄損低減に効果的な元素である。このため0.10%以上の添加が好ましい。一方、5.0%を超えるといたずらにコスト増を招くため、上限を5.0%とする。
Niは、磁束密度向上に効果的な元素である。このため0.10%以上の添加が好ましい。一方、5.0%を超えるといたずらにコスト増を招くため、上限を5.0%とする。
なお、最終製品の板厚は鉄損の観点から0.25mm以下が好ましく、より好ましくは0.20mm以下とする。
(製造方法)
本発明においては、表層部に延性の高い材料を用い、内層部には鉄損の低い材料を形成することにより、冷間圧延時の割れを防止しつつ低鉄損の材料を提供することができる。そのための手法として、例えば、延性の高い低Si鋼のスラブを低鉄損の高Si鋼のスラブの両面に溶接し、熱間圧延によりクラッド鋼として一体化することが挙げられる。ここで、介在物低減の観点から溶接は低圧力雰囲気下で行うことが好ましく、具体的には圧力(真空度)は100Pa以下が望ましく、10Pa以下がより望ましい。また、低圧力雰囲気下で溶接したとしても鋼板表面が酸化していると界面の介在物量が増加するため、研削等により表面の酸化物を除去し、速やかに低圧力雰囲気下にて溶接を行うことが好ましい。
次いで、一回の冷間圧延または温間圧延、もしくは中間焼鈍をはさんだ2回以上の冷間圧延または温間圧延により所定の板厚とした後に、仕上焼鈍を行う。ここで、熱間圧延時の仕上温度、巻取り温度は特に規定する必要はなく、通常でかまわない。また、熱延後の熱延板焼鈍は行っても良いが必須ではない。
表層部を高延性材、内層部を低鉄損材とする手法として、高延性材のインゴットの中心部を空洞としたものに、高Si鋼を鋳造する、いわゆる鋳ぐるみ法があるが、この手法では高延性材と低鉄損材の界面に介在物が多く生成し、圧延時の割れ抑制が難しいため、本発明では鋳ぐるみ法以外のクラッド化手法が望ましい。
表1に示す成分組成になる、表層部用スラブと内層部スラブとを、表2に示す圧力雰囲気下で溶接することにより貼り合わせた。貼り合わせ後のスラブを熱間圧延し、板厚2.0mmとした。引き続き、この熱間圧延板に100%N雰囲気で950℃×30sの熱延板焼鈍を施した。次に、熱延焼鈍板に直径0.3mmの鋼球を、投射密度を30kg/m2で投射し、その後、酸洗を行い、表2の板厚まで冷間圧延し、20%H-80%N雰囲気で仕上焼鈍を行った。なお、表2に示すNo.3、14、24および31の条件では冷間圧延時に割れが生じたため、その後の評価は行っていない。
上記のショットブラストおよび酸洗を行った後の熱延焼鈍板から、幅30mmおよび長さ100mmの試験片を切り出し、この試験片に室温にて曲率半径30mm、曲げ角度45°の繰り返し曲げを行って鋼板が破断するまでの繰り返し曲げ回数を測定した。
また、表層部の材料の機械特性を評価するため、酸洗後の熱延焼鈍板の片側表面から研磨することにより、表層部のみとした材料を作製し、本材料からJIS5号引張試験片を切り出して引張試験に供した。
さらに、仕上焼鈍後の冷延板について、光学顕微鏡を用いて介在物の観察を行った。すなわち、貼り合せ界面に存在する介在物の単位長さあたりの個数をカウントした。また、介在物直径は介在物の面積から円相当直径に換算した。
磁気測定は、仕上焼鈍後の冷延板から、幅30mmおよび長さ180mmのエプスタイン試験片を圧延方向および圧延直角方向に切り出し、エプスタイン法にて行った。
表2に示したとおり、本発明の要件を満足する発明例ではいずれも、優れた冷間圧延性と低い鉄損が得られている。
Figure 0007028148000001
Figure 0007028148000002
Figure 0007028148000003
Figure 0007028148000004

Claims (11)

  1. 質量%で、C:0.010%以下、Si:3.0~7.0%、Al:3.0%以下、Mn:5.0%以下、P:0.10%以下およびS:0.010%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する鋼板からなる内層部と、前記鋼板の表裏面を覆う、全伸びが30%以上の高延性金属からなる表層部と、を有し、前記全伸びが30%以上の高延性金属は、質量%でC:0.010%以下、Si:1.0%以下、Al:1.0%以下、Mn:1.0%以下およびP:0.10%以下を含み、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する鋼、銅、またはアルミニウムであり、前記内層部および表層部の合計厚みに占める表層部の厚みの比率が0.02~0.20であり、前記表層部と内層部との界面における直径5μm以上の介在物が10個/mm以下である無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  2. 前記内層部は、さらに質量%で、SnおよびSbから選ばれる1種または2種を合計で0.001~0.10%含有する請求項1に記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  3. 前記内層部は、さらに質量%で、Cr:0.10~5.0%を含有する請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  4. 前記内層部は、さらに質量%で、Ni:0.10~5.0%を含有する請求項1から3のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  5. 前記は、さらに質量%で、SnおよびSbから選ばれる1種または2種を合計で0.001~0.10%含有する請求項1から4のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  6. 前記は、さらに質量%で、Cr:0.10~5.0%を含有する請求項1から5のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  7. 前記は、さらに質量%で、Ni:0.10~5.0%を含有する請求項1から6のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板が製造原料である無方向性電磁鋼板。
  9. 厚みが0.27mm以下である請求項に記載の無方向性電磁鋼板。
  10. 請求項1から7のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板を製造する方法であって、前記無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板の内層部となるスラブの表裏面に、同外層部となるスラブを100Pa以下の圧力雰囲気下にて貼り合わせたのち、前記外層部となるスラブの側から熱間圧延を施し、その後熱延板焼鈍を施す、無方向性電磁鋼板製造用熱延焼鈍板の製造方法。
  11. 請求項8または9に記載の無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、前記無方向性電磁鋼板の内層部となるスラブの表裏面に、同外層部となるスラブを100Pa以下の圧力雰囲気下にて貼り合わせたのち、前記外層部となるスラブの側から熱間圧延を施し、その後熱延板焼鈍を施してから冷間圧延または温間圧延を施し、仕上げ焼鈍を施す、無方向性電磁鋼板の製造方法。」
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