JP3603741B2 - コークス炉の炉壁管理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉の炭化室を構成する炉壁のプロフィールを測定し、これに基づいて行うコークス炉炭化室の炉壁管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コークス炉は、炭化室に装入された石炭を高温下でコークスに乾留し、乾留が完了したコークスを押出機で窯の外へ排出した後、再び装炭孔から常温に近い石炭を装入するといった、温度的にも機械的にも苛酷な条件下で操業される。炉団によっては、築炉されてから30年以上という長期間に渡って使用されている例もある。
【0003】
このような条件下においては、コークス炉の炭化室と燃焼室とを仕切る、煉瓦等によって構成された隔壁の壁面、特に炭化室側の壁面 (以下、炉壁あるいは炭化室炉壁と称する) に、石炭の乾留過程で得られる炭化水素の分解により発生するカーボンが付着・成長する。このカーボンの成長速度は特に炉壁の温度の影響が大きく、炉壁温度が均一でない炭化室では付着カーボンの厚みは均一ではないので、結果としてそのような炭化室炉壁に局所的に厚いカーボン層が形成され、凹凸が増加する。
【0004】
また、石炭装入時およびコークス押出時にも炭化室炉壁との機械的接触、熱衝撃等により炭化室炉壁は摩耗・損傷を受け、これも均一ではないため炉壁が凹凸となる。
【0005】
このようにカーボン付着と摩耗により、築炉直後は平滑であった炭化室炉壁は長年の使用により平滑ではなくなっている。
炭化室炉壁が平滑でなくなると、コークス押出時のコークス塊と炭化室炉壁との間の抵抗が増加するため押出に必要な負荷が増加し、最終的にはコークス塊が炭化室内で詰まって押出ができなくなる、押し詰まりの状態になる。
【0006】
押し詰まりはコークス炉操業度の悪化、炭化室からのコークス掻き出しに要する作業負荷の増加のみならず、炭化室炉壁に過大な負荷が掛かることにより、炉壁煉瓦の亀裂・目地切れ・欠損・陥没・脱落等の損傷、あるいは炉壁の湾曲が生じ、これが進行すると当該窯の炉壁が崩壊し、操業不可能となる。また炉壁湾曲は隣接の炭化室へも悪影響を与え、炉団全体に損傷が進行することになる。
【0007】
カーボン付着による炉壁凹凸増加に関しては空窯によるカーボン焼き落としが、炉壁損傷に関しては溶射等の不定形耐火物による補修がそれぞれ可能である。しかし、作業負荷の増大、操業度の低下、また炉壁カーボン焼き落とし時に炉壁煉瓦や補修材が一緒に脱落する可能性もあり、頻繁なカーボン焼き落としは回避すべきである。
【0008】
また不定形耐火物による炉壁補修は、コークス炉操業中に実施するには対象炭化室数が多く、また作業時間が制約される等の理由から、亀裂・目地切れ・凹凸を完全に修復出来るものではない。
【0009】
このような背景から、コークス押出時の押出負荷を、多くの場合、押出機のモータの電力値もしくは電流値のピーク値により監視しこれにより炭化室炉壁の状況を判断し、押出負荷が上昇するようであれば炉壁カーボンの焼き落としを行うのが一般的である。しかし、この方法では、コークス押出負荷上昇の要因が炭化室炉壁でのカーボン成長にあるのか炭化室炉壁損傷にあるのか、もしくは他の操業要因にあるのかは特定できない。よって、対処方法、時期が不適切となる可能性がある。
【0010】
そこで、特開昭52−21002 号、特開平8−134459号、特開平10−219256号各公報等で開示されるような、押出機のラムヘッドの移動量に対する押出負荷の変動波形より、押出抵抗上昇要因を判定し、炭化室炉壁異常が原因である場合はその位置を特定する方法が、多く提案されている。
【0011】
しかし、これらの方法では炭化室炉壁異常を間接的に推定しているに過ぎず、また、炉壁異常のあらゆるケースに関して炉壁異常と押出負荷の変動波形との関係が明確になっている訳ではないため、炉壁カーボン付着の度合いを定量的に評価することはできず、またその原因が炉壁カーボン付着か炉壁損傷かを断定することは出来ない。
【0012】
よって、炉壁異常対策が不確実・不適切になる可能性がある。
例えば炉壁凹凸の要因として煉瓦損傷と炉壁カーボン付着とを誤判定した場合、焼き落としを行っても凹凸は解消されず、却って炉壁を痛めてしまう。
【0013】
そこで小型乾留炉による試験や、実炉炭化室上部空間に試験片を吊り下げる方法により、炭化室炉壁カーボン付着速度と装入炭性状等のコークス炉操業要因との関係を明らかにする方法 (「材料とプロセス」vol.9 ,pp.643 、「材料とプロセス」vol.10,pp.160 等) が試みられている。
【0014】
しかしながら、小型乾留炉による試験は石炭乾留状況や乾留ガスが炉壁を通過する速度等、実炉と大きく異なり、その結果をそのまま実炉に適応することはできない。また実炉炭化室上部空間に試験片を吊り下げる方法も、乾留コークスと接触する領域の炭化室炉壁とは温度や乾留ガス流速、さらに装入炭の炉壁への圧密等全く条件が異なり、よって、これをもって実炉の炉壁に凹凸を形成するカーボンの成長速度を推測することは困難である。
【0015】
そこで炭化室の幅を実際に測ることにより炭化室炉壁プロフィールを明らかにし、カーボン付着量・炉壁損傷量を定量的に測定する方法がいくつか提示されている。
【0016】
また、実開昭63−312390号公報や”Cokemaking International”2(1996)vol.8pp42 においては、押出機のラムヘッドに搭載した非接触式の距離計によるコークス炉炭化室の窯幅計測を提案しており、特に後者では、その結果より窯間の炭化室炉壁プロフィール差異やコークス塊押出時の押し詰まりによる炉壁変形に関して言及している。しかしながら、まだ十分な問題解決には至っていない。
【0017】
特開平8−43314 号公報では炭化室炉壁プロフィールの測定結果を定性的に判定しコークス炉劣化判定システムに取り込む提案がなされているが、実用的見地からは、炭化室炉壁プロフィールの測定結果を利用しているとは言えない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、非接触式の距離計によりコークス炉炭化室炉壁プロフィールを測定し、その平滑度を定量的に評価し、あるいは指標化して管理することで、押出負荷上昇抑制・押し詰まり防止ひいては炉体損傷防止を実現する技術を開発することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、カーボン焼き落とし直後と、その後一定期間経過し炉壁カーボンが成長した後の炭化室プロフィールを、断熱容器に収納した非接触式距離計により測定し、その結果の差異と、炉壁カーボン付着前後の測定期間の間隔とにより炉壁におけるカーボン成長速度を決定する。
【0020】
したがって、最も広義には本発明はコークス炉の炭化室プロフィールの計測を行い、その結果を基に炭化室炉壁状態を指標化することで健全度を判定し、その判定結果に基づいて管理を行うコークス炉の炉壁管理方法である。
【0021】
併せてこの時の乾留温度・乾留時間・装入炭性状・炉蓋開放時間等の操業条件を記録しておき、これらの要因と先に求めた炉壁カーボン成長速度との関係を求める。
【0022】
これらの関係を基に、特に炉壁カーボンの成長を促進するような操業要因がある場合、これを調整することでコークス塊の押出性を阻害するような炉壁カーボンの成長速度を抑制する。
【0023】
したがって、本発明は、炉壁カーボン付着前と付着後のコークス炉炭化室プロフィールを距離計等により定量的に測定し、その差異から炭化室炉壁に付着する炉壁カーボンの成長速度を測定し、得られた炉壁カーボン成長速度と操業要因との関係を求め、該関係に基づいて行うコークス炉の炉壁管理方法である。
【0024】
なお、例えば特開昭57−53612 号公報では押出機ラムヘッドもしくはビームの近傍に断熱箱を取付け、これからバネ等で両側の炉壁の各々に、先端にローラをつけたガイドを接触させ、その変位量で炭化室幅を測定する、接触式の距離計を用いる方法が提示されている。しかし、このような接触式の距離計では押出過程で炭化室の凹凸面に引っかかり、ガイドが変形して測定出来なくなる。また、ガイド先端のローラの径より小さい凹凸は測定出来ず、すなわち測定精度が低いことになる。よって非接触式の距離計による炭化室窯幅計測が望ましい。
【0025】
上記非接触式距離計は、押出ラムもしくはビームに取り付けた断熱容器に収納し、これと押出ラムの移動量とにより炭化室プロフィールを測定する。
別の面からは、本発明は、炭化室プロフィールを求め、その結果をもとに炉壁平滑度を指標化することで炭化室炉壁の管理を行い、この管理指標が基準値を越えた場合には炉壁平滑度異常の原因に応じてカーボン焼き落としや異常箇所の溶射等の補修を行う方法である。
【0026】
このときの炭化室プロフィールの変化原因の判定方法としては、ほぼ完全にカーボンが焼き落とされた直後の炭化室プロフィールを事前に測定しておき、これと炉壁平滑度に異常が生じた時の測定結果とを比較することで、カーボンの付着量もしくは炉壁損耗量を測定し炉壁平滑度異常原因を特定する方法、および非接触式の距離計と同一もしくは別体の断熱容器にビデオカメラ等の撮像装置を搭載し、その映像より炉壁平滑度異常原因がカーボンによるものか炉壁損耗によるものかを判定する方法、特開平11−61138 号公報で示されるような放射温度計を用いてカーボン付着位置を特定する方法等の、単独もしくは複数を組み合わせて行う。
【0027】
なお、従来にあっても非接触式距離計によって炭化室プロフィールを求めることは知られていたが、それを基に炉壁カーボン成長速度を算出することも、またそれを基に炉壁状況を指標化することも、行われていなかった。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明を実現するための装置は、非接触式距離計とこれを炭化室内に装入する押出ラムのような装入装置とその炭化室内での位置検出装置、および各々のデータを収納する記憶装置から成り、炭化室内への装入装置 (例:押出ラムもしくはビーム) に搭載される上記距離計などの計器に関しては断熱箱に収納される。
【0029】
かかる構成の装置を用いて炭化室の各位置での炉壁プロフィールを計測することができる。
またこの時、非接触式距離計と同一もしくは別体の断熱容器にビデオカメラ等の撮像装置を搭載しておけば、炉壁異常原因の特定をより容易にすることが出来る。
【0030】
カーボン焼き落とし直後とそれから一定期間経過後の炉壁プロフィールとの比較を行い、その差異と測定期間の間隔とから炉壁カーボン成長速度が測定できたことになる。
【0031】
このときの炉壁カーボン付着速度は炭化室内各所で一定ではなく、その位置により異なる。これは炭化室と隣接し、石炭に乾留熱量を与える役割を果たす燃焼室の温度が必ずしも炉内全域で同一温度ではなく、偏差があるためと考えられる。そこで乾留温度を測定するには炉内の一点ではなく炉壁プロフィール測定位置での温度分布を測定することが望ましい。よって距離計を炉内に装入する装入装置に非接触の温度計を設置し炭化室炉壁温度を測定する方法もしくは複数室に区切られた燃焼室の各室に熱電対を装入する方法等のいずれかにより、乾留温度を測定する。
【0032】
また装入炭性状 (水分・揮発分等) の分析結果や乾留時間、コークス塊押出の際の炉蓋開放時間等を別途記録しておく。
このようにして得られた炉壁カーボン成長速度と各操業条件との関係を明らかにすることで操業の各要因と炉壁カーボン成長速度の関係を、例えば定量式として求めることができる。必要があれば回帰式により1つの式にまとめることも可能である。
【0033】
これは一般式では次のように記述される。
炉壁カーボン成長速度=f( x)(x: 乾留温度、装入炭性状、ect.)
したがって、これからもわかるように、上記炉壁カーボン成長式において、調整可能な要因があれば炉壁カーボンの成長を制御できる。例えば局所的な高乾留温度領域があり、その箇所で炉壁カーボンが局所成長しておれば、この部分の乾留温度を上記炉壁カーボン成長式に基づいて調整することにより、炉壁カーボン局所成長の進行を抑制することができる。
【0034】
一方で、カーボン付着が見られない箇所において、炉壁プロフィールの変化が見られる場合は炭化室炉壁レンガの異常と考えられるため、溶射等の耐火物による補修、レンガの部分/全体積み替えを行う必要がある。
【0035】
一方、同じ手法によって炭化室プロフィールを計測しても、基準となる平滑面から、上記装置を用い計測した炭化室炉壁プロフィールを減算することにより炭化室炉壁の凹凸を示すデータが得られる。
【0036】
かかる態様にあっては、このデータを指標化することで炉壁平滑度の指標とし、この指標が予め決めたしきい値を越えた場合、当該炭化室炉壁の凹凸が大きい炉壁を異常窯と判定するのである。
【0037】
このように炉壁異常窯と判断された場合、カーボン焼き落とし直後の炉壁プロフィールとの比較およびもしくは前記の撮像装置により異常原因を判定することが出来、原因に応じてカーボン焼き落としや、溶射等の補修を行うことで炉壁平滑度を回復する。
【0038】
ここで、炉壁平滑度を示す指標としては、基準となる炉壁プロフィールとの差分により求められる炉壁の凹凸量を積分する方法が最も簡便である。
また、しきい値は、平滑度指標と押出負荷力ピーク値との関係の実績により、押出負荷ピーク値がその実績にもとづく管理値以内に収まるような平滑度指標に決定するのが妥当である。
【0039】
次に、添付図面を参照して本発明の実施例についてさらに具体的に説明する。
【0040】
【実施例1】
図1(a) 、(b) は、本発明において用いる非接触式距離計の構成、操作を説明する、それぞれ平面図および側面図である。
【0041】
図中、レーザ光を用いた非接触式の距離計1によって一対の、対向した壁面4が測定できる。この距離計1は、断熱箱内に設置され、押出機5のラムヘッド3に取り付けられ、ラムヘッドと共に炭化室6内に装入される。移動距離は歯車7によって計測される。
【0042】
押出方向に向かって炭化室の左右両炉壁の各々までの距離が測定できるように上記距離計を押出機のラムヘッド部の炉底から2.8mの位置に設置し、またこのラムヘッドの移動量と本装置により測定した炭化室内各位置における炭化室窯幅をもって炉壁プロフィールとみなした。
【0043】
このようにして計測した、カーボン焼き落とし直後の炭化室窯幅、つまり炭化室プロフィールの一例を図2に点線のグラフで示す。このグラフの横軸は炭化室に隣接する燃焼室を30箇所に等間隔で区分けする各室すなわちフリューNo.である。つまり、図中、炭化室内の距離は、フリューNo.で示すが、これは炭化室内の温度を隣接する燃焼室の区画、つまりフリュー単位で計測しているためである。
【0044】
カーボン焼き落とし直後の炭化室窯幅の計測結果と併せて、これから1ヶ月経過後の炉壁カーボン成長後の炭化室窯幅の計測結果を図2に実線のグラフで示す。図中、破線はカーボン焼き落とし直後のデータに相当するもので、実線が1ケ月経過後のデータである。
【0045】
図2の各データの差分が、この1ヶ月の期間内に成長した炉壁カーボン量であり、これを図3に示す。
またこの計測対象の炭化室に隣接する燃焼室の30室に区分けされた各室 (以下フリューと称す) に装入した電熱対による乾留温度の測定結果を図3に併せて示す。なお、電熱対は炭化室窯幅の計測位置と同一高さに設置し、各温度は測定間隔である1ヶ月の平均である。
【0046】
図3に示す結果からも分かるように、炉壁カーボン成長速度が特に顕著な位置においては乾留温度も高位であり、これが局所カーボン成長要因となっているものと考えられる。結果として、フリュー間の温度偏差が原因で炉壁カーボン要因により1ヶ月で最大20mmの段差ができ、これを放置するとコークス塊の押出性が阻害されることは容易に推察できる。
【0047】
この炭化室内においては炉壁温度偏差以外は、装入炭性状・乾留時間等の操業要因は同一条件と考え、乾留温度と炉壁カーボン成長速度の関係を明らかにしたのが図4である。
【0048】
図4より乾留温度以外の操業要因が一定としたときの、乾留温度と炉壁カーボンとの関係式は、次式で与えられる。
炉壁カーボン成長速度(mm/day)=35248 ×exp[−17483/乾留温度(k)]
なお、このときの操業条件は、炉高6m のコッパース複式炉においてコークス炉稼働率=98%、装入炭水分=9.3 %、装入炭揮発分=28.8%、装入炭量=28.1(dry ton) 、炉蓋開放時間=162 分/日であり、本式の係数はこの時の操業要因に依存するものである。
【0049】
上式より、図3のケースでは隣接フリュー間の乾留温度差を30℃以下にしてやれば、カーボン焼き落としから1年経過後も、局所カーボン成長による炉壁段差を10mm程度に抑制できることが分かる。
【0050】
そこで燃焼室各隣接フリューの乾留温度差を30℃以下に調整すべく、燃焼ガス吐出孔の口径を調整することで温度偏差是正を図った結果が図5である。この調整を行い、炉壁カーボン焼き落としを行った後1ヶ月後の炭化室窯幅計測結果を併せて表記する。上記で問題とした局所カーボン量による段差は減少し、炉壁凹凸は改善方向であることが分かる。なお、図5において、破線は図2中の実線と同じく温度分布是正を行わなかった場合の炭化室窯幅計測結果である。図5の実線と破線の差分が本発明の効果であり、凹凸が抑制できていることを示す。
【0051】
以上の過程におけるコークス塊押出時の押出抵抗の推移を図6に示す。
図6から分かるように、本発明を未適用の場合、カーボン焼き落とし後、図3に示すような局所カーボン成長により炉壁凹凸量が増加して押出抵抗が増加している。しかし、その後、本発明にしたがってフリュー間の乾留温度差を30℃以内に調整してやることにより炉壁凹凸は解消方向に向かい、その結果、押出抵抗は低下し、炉壁破壊につながる押詰まりは回避できた。
【0052】
なお、本例では操業の制約上、乾留温度の偏差是正調整のみで炉壁カーボン成長偏差抑制を図ったが、可能であれば、装入炭・水分・性状・量の炉内分布調整や、水蒸気、空気等の特定箇所導入によるカーボン成長速度の調整も有効である。
【0053】
【実施例2】
炉壁プロフィールの測定は図1に示す装置を用い、実施例1と同様にして行ったが、本例の場合、ほぼ同じ高さに断熱箱内に収納した撮像装置2をさらに設置した。
【0054】
これにより計測した炭化室窯幅、つまり炭化室プロフィールの一例を図7に示す。
図7には併せて、炭化室内の計測位置と炭化室窯幅のデータとの回帰式により求めた基準線を実線で示す。
【0055】
ここで、回帰式で求めた基準線から炭化室窯幅の計測結果を減算したのが図8であり、これは炉壁の凹凸量を示す。図8中の斜線部で示す凹凸の面積の総和を求めることで、炭化室窯幅測定窯の炉壁の凹凸量を表す指標 (以下、炉壁凹凸指数と称す) とした。
【0056】
この炉壁凹凸指数が大きいほど炉壁の凹凸量が大きいことを示し、コークス塊の押出抵抗も増加するものと考えられる。
図9に、このようにして求めた炉壁凹凸指数を横軸に、コークス塊押出時の押出抵抗を示す押出所要力ピーク値を縦軸に取ったグラフを示すが、炉壁凹凸量が増加するに従い押出抵抗が増加していることがわかる。なお、石炭配合の影響を排除するため、各データは同一石炭配合時の結果である。
【0057】
本実施例の炉団においては、押出抵抗管理値上限、つまりしきい値を18ton としており、石炭配合や炉温管理等に問題がないと考えられる場合、押出抵抗の高位窯に対してはこれが18ton 以内に収まるよう炉壁凹凸指数、すなわち炉壁凹凸量を低下させる必要がある。
【0058】
なお、炉壁凹凸指数が低位であるにもかかわらず押出抵抗が高位である場合は、操業設備の機械的要因・炉温管理・石炭配合等が原因である可能性が高く、これらに関し対処を行う。
【0059】
図10および図11に、炉壁カーボン焼き落としによる炉壁凹凸指数低下で、押出抵抗を低下させた実施例を示す。
図10は該当窯の炭化室窯幅測定結果であり、破線が炉壁カーボン焼き落とし後、実線が炉壁カーボン焼き落とし前に計測した結果である。
【0060】
図11は炉壁凹凸指数を横軸に、コークス塊押出所要力ピーク値を縦軸に取ったグラフであり、図中白丸が該当窯の炉壁カーボン焼き落とし実施前、黒丸が焼き落とし実施後のデータである。
【0061】
該当窯の炉壁凹凸指数が高位である原因が、図10の破線と実線の比較および撮像装置による画像より、炉壁カーボン付着によるものと判定されたため炉壁カーボン焼き落としを実施したところ、図11に示すように炉壁凹凸指数が低下し、押出抵抗を低位に抑制出来た。一方、炉壁損傷進行により炉壁凹凸指数が上昇したと判断される窯に関しては、不定形耐火物による炉壁補修等により炉壁平滑度を回復することで、本例と同様に押出抵抗低位抑制が可能である。
【0062】
なお、本実施例では行っていないが、押出抵抗はコークス乾留温度・石炭配合・押し出されるコークス塊の量等によっても変化するため、これら要因による押出抵抗変動量を補正することで炉壁平滑度と押出抵抗との関係がより明確になるものと考えられる。
【0063】
本実施例では炉高方向1箇所に関しその窯幅により炭化室炉壁平滑度を評価したが、より高精度な管理を行うためには、炉高方向複数箇所で測定したデータを用いたり、押出方向に向かって左右両壁の個別の凹凸量を評価したりする等、より細分化されたデータを用いることが望ましい。
【0064】
また炉壁凹凸量の指標化に関しても、複数の炉壁凹凸構成要素に関し、実測データに基づいてその大きさや形状の評価を折り込んだ指数であればより高精度な管理が可能となる。
【0065】
【発明の効果】
本発明のコークス炉の炉壁管理方法によれば、非接触式距離計により計測した炭化室炉壁プロフィールから、一方では操業要因との関係を求め、これにより炉壁カーボン成長量を各操業要因により制御することで炉壁カーボン異常成長を抑制することができ、他方では、それに基づいて炭化室炉壁状態を指標化することで炉壁の現状を把握でき、その結果、押詰まり防止・炉壁損傷回避・安定操業継続を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b) は、炉壁プロフィールを計測するための装置構成例を示すそれぞれ模式的平面図および側面図である。
【図2】炭化室内各位置におけるカーボン焼き落とし直後と1ヶ月経過し、炉壁カーボンが成長した後の窯幅計測結果の一例を示すグラフである。
【図3】図2の各グラフの差分より求められる、測定間隔の1ヶ月間に成長した炉壁カーボンの成長量と、測定間隔の1ヶ月間における各フリューの乾留温度の分布を比較して示すグラフである。
【図4】本発明実施により決定された炭化室炉壁カーボンの成長速度と乾留温度との関係を示すグラフである。
【図5】炉壁カーボン局所成長を抑制すべく、乾留温度分布を是正した結果と、そのような温度分布是正を行い炉壁カーボン焼き落としを行った後、1ヶ月経過後の炭化室窯幅計測結果とを比較して示すグラフである。
【図6】本発明を適用しなかった場合と、本発明を適用した場合のコークス塊押出抵抗の経時推移を示すグラフである。
【図7】炭化室内各位置における窯幅計測結果の一例を示すグラフである。
【図8】図2の測定例において炭化室窯幅実測値から回帰式で求めた基準線を減算した炉壁凹凸量を示すグラフである。
【図9】炉壁凹凸指数とコークス塊の押出所要力ピーク値の関係を示すグラフである。
【図10】炭化室炉壁カーボン付着前と付着後の炭化室炉壁プロフィール計測結果例を示すグラフである。
【図11】炉壁カーボン焼き落とし実施により炉壁凹凸指数が低下し、それに伴いコークス塊の押出所要力ピーク値が低下したことを示すグラフである。
【符号の説明】
1:非接触式距離計
2:撮像装置
3:ラムヘッド
4:炭化室炉壁
5:押出機
6:炭化室
7:歯車
Claims (4)
- コークス炉の炭化室プロフィールを定量的に測定し、その結果と基準となる炉壁プロフィールとの差分により求められる炉壁の平滑度を指標化し、その指標に基づいて管理を行うコークス炉の炉壁管理方法。
- 炉壁カーボン付着前と付着後のコークス炉炭化室プロフィールを定量的に測定し、その差異から炭化室炉壁に付着する炉壁カーボンの成長速度を測定し、得られた炉壁カーボン成長速度と操業要因との関係を求め、該関係に基づいて行うコークス炉の炉壁管理方法。
- 前記操業要因の一つとして乾留温度の窯内偏差を選び、炉壁カーボン成長速度偏差を制御すべく、乾留温度窯内偏差の是正を行い、さらに必要により装入炭量・水分・性状の分布制御の実施やカーボン成長抑制効果のある気体の炉内局所導入を行う請求項2 記載の
コークス炉の炉壁管理方法。 - コークス炉炭化室プロフィールを定量的に測定し、その結果と基準となる炉壁プロフィールとの差分により求められる炉壁凹凸量の積分値を炉壁平滑度の指数とし、これが一定範囲を超えたときにカーボン焼き落しおよび/または炉体補修を実施することを特徴とするコークス炉の炉壁管理方法。
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