JP3742526B2 - コークス炉の操業方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、室式コークス炉におけるコークスの製造方法に関するものであり、特にコークス押し出し時における押し出し抵抗を低減するコークス炉の操業方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
室式コークス炉によるコークス製造においては、乾留を完了したコークスを押し出すことによってコークスを炉外に排出する。コークス押し出し時においてはコークスが炉壁を押し付ける押し出し側圧がかかるが、この押し出し側圧が大きいと炉壁に負荷を及ぼすこととなる。特に、過大な押し出し側圧に基づいて、コークスが炉に詰まって全く動かなくなる現象は押し詰まりや押し止めと呼ばれ、コークス炉操業中に発生する重大トラブルの一つである。
【0003】
このような現象が発生すると炉壁に過大な負荷が作用して、炉壁損傷の原因となり、コークス炉寿命の低下を招くとともに、操業の中断や押し出し可能になるまでの置き時間が増大して装入スケジュールを変更する必要が生じて炉団としてのコークス生産量が低下し、さらに消費熱量も増大して、コークス生産コストの増加につながる。
【0004】
高炉用コークスを製造するコークス炉は老朽化が進行しており、上記のような押し詰まりの発生を防止し、コークス炉の炉壁に及ぼす負荷をおさえてコークス炉の寿命を延長することは、現在のコークス製造技術においてきわめて大きな課題の一つである。
【0005】
コークスを押し出す押し出しラムの押し出し電流を監視し、押し出し電流が増加する傾向があると押し出し抵抗を低減するための対応を講じる方法が知られている。しかし、この方法では、コークス炉操業条件の急激な変化に伴う押し出し抵抗の急増を予測することはできず、実際にコークス炉で乾留してみて押し出せるかどうかを判断せざるを得なかった。
【0006】
配合炭の揮発分の下限値を設定して押し出し抵抗の増大を防止する方法が知られている。しかし、必ずしも揮発分量が低いと押し出し性が悪いとはいえず、有効な管理指標とはいえない。
【0007】
実コークス炉に装入する予定の配合炭を試験コークス炉で試験的に乾留し、垂直焼き減り率が所定の値以上となるように配合を選択して配合する方法が特開平5−339580号公報に記載されている。また、コークス炉での乾留中に炭化室内のコークス高さを測定し、高さ方向の収縮率が所定量に達した後にコークスを炉から排出する方法が特開平6−271865号公報に記載されている。いずれの方法も押し出し異常トラブルを防止するうえで有効であるが、前者の方法では配合変更を実施するたびに試験コークス炉での評価を行う必要があり、後者の方法では乾留開始前に押し出し抵抗の少ない操業方法を把握することができない。
【0008】
特開平9−143473号公報には、原料炭特性および操業条件から実験的あるいは計算により、炉壁負荷指数としてコークスケーキ圧縮中の一定押力に対する側壁荷重の比を求め、該炉壁負荷指数を指標として操業する方法が開示されている。しかし、該指数が良好範囲でも押し詰まりが発生することがあり、また該指数が不良範囲でも押し詰まりを発生させずに押し出せることもあり、精度良く押し詰まりの発生を防止するには至っていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、押し出し時における押し出し側圧を低減し、コークス炉の炉壁に及ぼす負荷を低減し、コークス炉の寿命の延長を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは下記の通りである。
(1)コークス炉炭化室からのコークス押し出しを円滑に行うコークスの製造方法であって、押し出し時の壁側コークス収縮量、カーボン付着厚み、炉壁変位量を定め、前記押し出し時の壁側コークス収縮量からカーボン付着厚み及び炉壁変位量を減じた値を炉壁コークス間隔とし、予め炉壁コークス間隔最小値を定め、前記炉壁コークス間隔が炉壁コークス間隔最小値よりも大きい値となるようにコークス炉操業条件を選択することを特徴とするコークス炉の操業方法。
(2)押し出し時の壁側コークス収縮量は、コークス炉炉温及び当該炭化室で炭化室中心温度が500℃に到達してから押し出し時までの経過時間(置時間)の関数として定め、カーボン付着厚みは、コークス炉炉温、揮発分含有量、水分含有量及びキャリーオーバー濃度から求められるカーボン成長速度と、適用しているカーボン除去方法に基づいて求められるカーボン除去速度と、日数との関数として定め、炉壁変位量は、隣接炭化室の配合炭の推定膨張圧の単調増加関数として定めることを特徴とする上記(1)に記載のコークス炉の操業方法。
(3)隣接炭化室の配合炭の推定膨張圧は、配合する石炭の膨張圧、非微粘結炭の配合率、非微粘結炭以外の石炭の全膨張率の関数として求めることを特徴とする上記(2)に記載のコークス炉の操業方法。
(4)押し出し時における炭化室内炉幅方向温度分布を伝熱計算によって求め、コークスの収縮係数を揮発分含有量と温度との関数として求め、前記求めた温度分布と前記求めたコークスの収縮係数を用いて炭化室内炉幅方向各位置のコークスの収縮率を求め、該幅方向各位置のコークス収縮率から炉幅方向の全収縮量を求め、該全収縮量に一定値を乗じた値を壁側コークス収縮量とすることを特徴とする上記(1)乃至(3)に記載のコークス炉の操業方法。
(5)押し出し時における炭化室内炉幅方向温度分布を伝熱計算によって求め、コークスの収縮係数を揮発分含有量と温度との関数として求め、前記求めた温度分布と前記求めたコークスの収縮係数を用いて炭化室内炉幅方向各位置のコークスの収縮率を求め、該幅方向各位置のコークス収縮率を用いて炉幅方向の任意の位置が収縮中心となった場合の個別壁側コークス収縮量を求め、該個別壁側コークス収縮量の加成平均をもって壁側コークス収縮量とすることを特徴とする上記(1)乃至(3)に記載のコークス炉の操業方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らの研究の結果、コークス押し出し抵抗は、[押し出し時の壁側コークス収縮量]−[カーボン付着厚み]−[炉壁変位量]で表される「炉壁コークス間隔」に大きく影響を受けることを見出した。ここで、「押し出し時の壁側コークス収縮量」とは、石炭の乾留の進行に伴って、生成したコークスの炉壁側に発生する収縮量をいう。また、「カーボン付着厚み」とは、炉壁に付着するカーボンの厚みをいう。さらに、「炉壁変位量」とは、隣接する炭化室での石炭の乾留に伴って、該隣接する炭化室内の石炭が膨張し、その結果として当該炭化室の炉幅を狭める方向で炉壁が変位した変位量をいう。また、「炉壁コークス間隔」とは、炭化室の炉壁とコークスとの間に生じる間隔をいい、本発明においては計算によって求められる。
【0012】
即ち、コークス押し出し抵抗は、配合される石炭の性質によって定まるコークス収縮量の度合いにのみ影響されるのではなく、押し出し時におけるコークス収縮量、炉壁へのカーボン付着厚み、更に隣接する炭化室での乾留に伴って当該炉壁の炉幅が狭められる炉壁変位の総合的な要因に影響されることを見出した。そして、これら要因から求めることができるコークス押し出し時における炉壁コークス間隔を一定値(炉壁コークス間隔最小値)以上に調整することにより、押し出し負荷を増大させることなく、安定操業が可能になることを見出した。
【0013】
押し出し時の壁側コークス収縮量が大きいほど炉壁コークス間隔が大きくなるのは、壁側コークス収縮量は壁側において直接的に炉壁とコークスとの間隙を形成する作用を有するからである。また、炉壁コークス間隔の計算においてカーボン付着厚みを減じるのは、炉壁に付着するカーボンが多いほど、炉壁にはその付着カーボン厚みに応じた凹凸が生じ、コークス押し出し時において抵抗を生じる原因となるからである。また、炉壁コークス間隔の計算において炉壁変位量を減じるのは、炉壁変位量が大きくなるということは幅方向の炉内空間が狭まることであり、これによって炉壁とコークスとの間隙を狭くする作用を有するからである。
【0014】
コークスの収縮は、コークス炉内において軟化溶融層が消滅した後に開始される。そして、コークス塊中の収縮中心に向けて収縮し、体積の減少しろは炭化室中心部の収縮しろと壁側の収縮しろとに分配される。従って、壁側の収縮しろはどこに収縮中心が存在するかによって異なり、収縮中心がコークス塊の中心に近いほど壁側の収縮しろは大きくなる。収縮中心の位置は偶発的な要因によって定まるので一定しないが、コークス押し出し性に影響を及ぼす指標を得るためには、収縮中心が任意の位置に存在するとして求めた壁側のコークス収縮量を平均化することにより求めればよい。
【0015】
コークス層の各部分の収縮率は、主に石炭の揮発分と温度とから定まる。例えば、C.Meyer,D.Habermehl and O.Abel : Gluckauf-Forshungshefte, 42(1981),233には、コークスの収縮係数が揮発分と温度の関数として表されている。このような当業者に公知の手法に基づいて、揮発分と温度とを与えることにより、コークス層の各部分の収縮率を求めることができる。ここで、コークス層の各部分の温度を予め求めておく必要がある。コークス炉炭化室内炉幅方向での温度分布の時間変化は、例えば西岡ら、鉄と鋼、70(1984)、358等に記載されているような公知の方法で1次元熱伝導モデルの計算を行うことによって求めることができる。
【0016】
以上の手法によって、コークス押し出し時におけるコークス幅方向各部分のコークス収縮率を求めたら、次に該各部分のコークス収縮率に基づいて、炭化室炉幅方向の任意の位置が収縮中心となった場合の壁側のコークス収縮量を求め、更に各収縮中心位置毎に求めた壁側のコークス収縮量の加成平均値をもって壁側のコークス収縮量とする。例えば、コークス炉炭化室内は左右対称と考えられるので、炭化室の片側半分を10等分し、それぞれの位置が収縮中心となった場合における壁側のコークス収縮量を両端を含む11点について計算し、該11点の壁側のコークス収縮量の平均値を求めることにより、本発明のコークス収縮量とする。
【0017】
本発明者等の検討結果によると、炭化室再固化後における全コークス収縮量のうち、約30〜35%が本発明の壁側コークス収縮量として分配され、残りの部分は炭化室中心部の間隙として分配されることが判明した。従って、任意の位置に収縮中心をおいて計算した壁側のコークス収縮量の平均値を求めるまでもなく、コークス幅方向各部分のコークス収縮率を幅方向に平均して全収縮量を求め、該全収縮量に30〜35%の範囲にある定数を乗ずることによって壁側のコークス収縮量を定めることもできる。
【0018】
以上のように、コークス押し出し時における壁側コークス収縮量は、コークス炉の構造、炉温、押し出し時刻によって定まる押し出し時における炉内温度分布と、該温度と石炭の揮発分とから定まるコークス収縮率とによって定まる。従って、コークス炉の構造、炉温、押し出し時刻、石炭の揮発分を初期条件として与えることにより、押し出し時における壁側コークス収縮量を推算することが可能である。
【0019】
例えば、炉壁材質を珪石煉瓦、炉壁厚み100mm、炉幅450mm、石炭揮発分28%、石炭水分4%、装入嵩密度0.8t/m3、装入石炭温度20℃の条件における炉幅方向中心温度および壁側コークス収縮量の経時変化の推算結果は図1に示すようになる。壁側コークス収縮量は炭化室中心温度が500℃に到達した時点から生じていることがわかる。また、置時間(ここでは炭化室中心温度が500℃に到達した時点からの経過時間、すなわち壁側コークス収縮が生じはじめてからの時間とする)が長いほど収縮量は大きく、炭中温度一定条件下においては、炉温が低いほど収縮量が大きいことが示される。
【0020】
乾留開始から所定時間後の炭化室内温度分布は、コークス炉の炉温によって変化するが、それ以外の操業条件の変化によってはほとんど影響を受けない。また、コークスが収縮を開始するのは軟化溶融層消滅後であるから、経過時間としては、軟化溶融層が消滅してからの経過時間(置時間)を用いることができる。炭化室内の温度分布が決まれば、あとはコークス収縮率に影響を及ぼすのは揮発分のみである。従って、実用的には、壁側コークス収縮量を、炉温、揮発分、置時間の関数として表すことができる。具体的には、揮発分28%、置時間2〜4.5時間の範囲において簡易的に次式で与えられる。
Figure 0003742526
ここで、Scは押し出し時における壁側コークス収縮量(mm)、Tは炉温(℃)、STは押し出し時における置時間(h)である。
【0021】
また、上記簡易式によって推定した壁側コークス収縮量は、図2に示すとおり、石炭装入量100kgの試験コークス炉において測定した収縮量とよく一致した。
【0022】
前述したように、炉壁のカーボン付着厚みが大きくなるほど炉壁コークス間隔の値は小さくなり、押し出し抵抗を増大する要因となる。
【0023】
炉壁の付着カーボンは、炉壁に熱分解カーボンが付着することによって生成する。この付着カーボンを除去するため、エアーによる吹き払いなどさまざまなな対策が実機で講じられてはいるが、設備の稼働状況等により付着カーボンが十分に除去できない場合などには、徐々に炉壁に付着カーボンが成長し、押し出しを阻害することとなる。近年、乾燥炭装入が導入されるとともに、キャリーオーバーが増加してますますカーボン付着量が増える傾向にあり、カーボン付着が押し出し性に及ぼす影響は無視できなくなっている。
【0024】
本発明においてカーボン付着厚みを定めるに際しては、まずコークス炉の作業条件に基づいてカーボン付着成長速度を求め、次に採用しているカーボン除去作業の実績からカーボン除去速度を求め、c1×([カーボン付着成長速度]−[カーボン除去速度])×[日数]によってカーボン付着厚みを定める。ここでc1は定数である。
【0025】
カーボン付着成長速度については、例えば城本ら(燃料協会誌、第48巻第510号(1969)、P732)によって示されている下記のような公知の式に基づいて計算することができる。
Dc1=64.5×exp(-7950/(T+273))×VM×(1-0.0476×Mois)
ここで、Dc1は補正前カーボン付着成長速度(mm/day)、Tは炉温(℃)、VMは揮発分(%)、Moisは水分(%)である。
【0026】
また、カーボン付着成長速度には、キャリーオーバー(石炭微粉)濃度の影響が大きく、キャリーオーバー濃度が高いほどカーボン付着成長速度が速いことが知られており(中川ら、CAMP−ISIJ、9(1996)、P643)、上記Dc1にキャリーオーバー濃度の補正係数C2を乗ずることにより、カーボン付着成長速度Dcを正確に表現することができる。
【0027】
さらに、近年実炉において各種のカーボン除去装置が導入され、効果的なカーボン除去が可能となりつつある。導入したカーボン除去装置及びその作業方法に基づく実際のカーボン除去速度を求めておけば、上記のようにカーボン付着成長速度から該カーボン除去速度を減じることによってカーボン付着厚みを求めることができる。カーボン除去速度は実測によって定めることができる。ある期間において一定のカーボン除去作業を継続して実施し、その間の実際のカーボン付着量の増加しろを測定して1日当たりのカーボン付着量増加速度を計算しておき、別途求めておいたカーボン付着成長速度から該1日当たりのカーボン付着量増加速度を減じることによってカーボン除去速度を定めることができる。
【0028】
なお、通常操業においては、カーボン付着成長速度とカーボン除去速度はバランスしているが、付着成長速度が除去速度よりも大きい場合には、カーボン付着厚みは増加する。抽出時におけるカーボン付着厚みは、カーボン付着厚みが一定値以下になったときから押し出すまでの日数(請求項2の「日数」とはこの日数をいう。)に、1日あたりのカーボン付着厚み増加量を乗じることによって求めることができる。
【0029】
前述したように、コークス炉炉壁変位量が大きくなるほど炉壁コークス間隔の値は小さくなり、押し出し抵抗を増大する要因となる。
【0030】
炉壁変位量が発生するのは、隣接する炭化室で乾留中の石炭の膨張の影響による。当該炭化室がコークスを押し出すタイミングにおいては、隣接する炭化室は乾留の途中であり、石炭は軟化溶融状態にあり、膨張圧を生じている。膨張圧によりコークス炉の炉壁は変形し、隣接炭化室の炉室の幅が広がるかわりに、当該炭化室の炉室の幅が狭まる。この炉壁変位により、当該炭化室の炉壁コークス間隔は狭まるため、これによって押し出し抵抗が増大することとなる。
【0031】
隣接炭化室における配合炭の膨張圧は、配合炭の情報に基づいて以下の方法により推定することができる。即ち、配合炭の膨張圧は、配合する各銘柄石炭の膨張圧の加成平均値、非微粘結炭配合率、非微粘結炭以外の石炭の全膨張率に基づいて求めることができるので、配合炭を用いた実測によらず、配合する石炭の各銘柄毎に予め測定によって求めた膨張圧に基づいて、下記に示すように計算によって配合炭の膨張圧を求めることもできる。
【0032】
軟化溶融した石炭層のガス透過係数は式(1)で表せる(有馬 孝,野村誠治,福田耕一:鉄と鋼,82(’96),65)。
1/K=S(C−1) (1)
K:軟化溶融石炭のガス透過係数[m2
S:傾き[m-2
C:圧縮比[−]
【0033】
圧縮比は石炭の自由膨張がどの程度拘束されているかを示す指標であり、式(2)で定義される。
C=Vf /V (2)
f :自由膨張時の最大比容積[cm3 /g]
V :膨張拘束条件下での軟化溶融石炭比容積
(ガス透過係数測定時における装入密度の逆数)[cm3 /g]
【0034】
ここで、以下の仮定をおくことにより、配合炭の膨張圧推定式を導いた。
仮定▲1▼:膨張圧は軟化溶融した石炭層のガス透過係数に比例する。
仮定▲2▼:非微粘結炭配合割合により(1)式の傾きSは変化しない。
仮定▲3▼:非微粘結炭配合割合および粘結炭の全膨張率が膨張圧に及ぼす影響は、配合炭の圧縮比変化に起因すると仮定し、非微粘結炭を含む配合炭の圧縮比については、非微粘結炭配合割合の関数で表せる膨張阻害効果φにより、粘結炭のみの配合炭の圧縮比から推定できるとする。
仮定▲4▼:粘結炭のみの配合炭の膨張圧は高膨張圧炭膨張圧加成値の1次式で表せる。
【0035】
膨張圧は軟化溶融した石炭層のガス透過係数に比例すると仮定すれば(仮定▲1▼)、非微粘結炭を含まない粘結炭のみの配合炭の膨張圧は、基本的に次式で表せる。
b ≒kS(Cb −1) (3)
b :粘結炭のみの配合炭の膨張圧[kPa]
k :定数
b :粘結炭のみの配合炭の圧縮比[−]
b =a'TD+b' (4)
TD:粘結炭のみの配合炭の全膨張率[%]
a',b':定数
【0036】
粘結炭のみの配合炭において、X%の石炭を非微粘結炭に振り替えた場合、k、Sが変わらないと仮定すると(仮定▲2▼)、非微粘結炭をX%含む配合炭の膨張圧PX は次のように表せる。
X =kS(CX −1)
=Pb /(Cb −1)×(CX −1) (5)
X :非微粘結炭をX%含む配合炭の膨張圧
X :非微粘結炭をX%含む配合炭の圧縮比
【0037】
膨張圧が高い粘結炭の石炭化度は高く、軟化溶融範囲は高温側にある。一方、非微粘結炭の石炭化度は低く、軟化溶融範囲は低温側にあるため、膨張圧が高い粘結炭が軟化溶融している時に非微粘結炭は既に再固化しており、粘結炭の膨張を阻害する。そこで、非微粘結炭をX%含む配合炭の圧縮比については、非微粘結炭配合による膨張阻害効果φを考慮して、(6)式で表せる(仮定▲3▼)。
X =φCb (100−X)/100 (6)
φ=1−c'X
φ:非微粘結炭配合による膨張阻害効果を示す係数[−]
c':定数
【0038】
ここで、粘結炭のみの配合炭の膨張圧は高膨張圧炭膨張圧加成値の1次式で(7)式のように近似できる(仮定▲4▼)。
Pb =d'Σpi xi + e' (7)
pi :高膨張圧炭iの膨張圧[kPa]
xi :高膨張圧炭iの配合割合
Σpi xi :高膨張圧炭膨張圧の加成平均値[kPa]
d',e':定数
【0039】
(4)(5)(6)(7)式より、
Figure 0003742526
即ち、隣接炭化室における配合炭の膨張圧は、配合炭の情報に基づいて上記(8)式を用いて推定することができる。
【0040】
更に、配合炭の膨張圧Pxを用いて、当該炭化室の炉壁変位量dw(mm)を例えば以下の式により推定することができる。
dw=c3×Px+c4
ただし、c3、c4は係数である。
【0041】
ここで、係数c3、c4はコークス炉の炉形式および使用年数等により異なる値であり、当該コークス炉の実績に基づいて予め定めることができる。
【0042】
以上のようにして押し出し時の壁側コークス収縮量、カーボン付着厚み、炉壁変位量を定めることができるので、[炉壁コークス間隔]=[押し出し時の壁側コークス収縮量]−[カーボン付着厚み]−[炉壁変位量]の演算を行って炉壁コークス間隔を定める。前述したように、コークスの押し出し抵抗はこの炉壁コークス間隔の値ときわめて強い相関があるので、当該コークス炉において正常に押し出しを行うことのできる最小の炉壁コークス間隔を実績に基づいて決定し、この値を「炉壁コークス間隔最小値」とする。次いで、各乾留ロット毎に、計算した炉壁コークス間隔の予測値が該炉壁コークス間隔最小値よりも大きな値になるように乾留条件を設定すれば、常に小さな押し出し抵抗で押し出しを実施することが可能になり、押し出し異常トラブルを回避することができる。
【0043】
ここで、炉壁コークス間隔の予測値を炉壁コークス間隔最小値よりも大きくするためには、例えば置時間を長めに設定することにより、押し出し時の壁側コークス収縮量を大きくすることによって実現することができる。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
表1に、実コークス炉における配合炭性状および操業条件より推定した壁側コークスの収縮量、膨張圧による炉壁変位量、カーボン付着厚み、および押し出し時における炉壁コークス間隔と押し出し性実績との関係を示す。壁側コークス収縮量は請求項5に記載の方法によって求めた。炉壁コークス間隔最小値を0.4mmとし、本発明例においては炉壁コークス間隔が該最小値以上となるように操業条件(具体的には置時間)の調整を行った。押し出し性については、問題無く押し出せた場合を○、押し詰まり等の操業トラブルが発生した場合を×で示した。
【0045】
【表1】
Figure 0003742526
【0046】
本発明例No.1は、押し出し時における壁側コークス収縮量が大きく、膨張圧による炉壁変位およびカーボン付着厚みが小さいため、押し出し時炉壁コークス間隔が大きく、押し出し性も良好であった。
【0047】
本発明例No.2は、コークス収縮量は小さいものの、炉壁変位およびカーボン付着厚みともに小さいため、押し出し時炉壁コークス間隔が大きく押し出し性が良好である。
【0048】
本発明例No.3は、炉壁変位量はかなり大きいものの、コークス収縮量が大きくなるように置時間を調整し、かつカーボン付着厚みが小さいため、押し出し時炉壁コークス間隔が大きくなり、押し出し性が良好である。
【0049】
本発明例No.4は、カーボン付着除去装置のトラブルによりカーボン付着厚みが大きいが、コークス収縮量が大きくなるように置時間を調整し、かつ炉壁変位量が小さいため、押し出し時炉壁コークス間隔が大きくなり、押し出し性が良好である。
【0050】
一方、比較例No.5は、炉壁変位が大きく、コークス収縮量は大きいものの押し出し時炉壁コークス間隔を炉壁コークス間隔最小値より大きくするには至らず、押し出し性が不良であった。
【0051】
比較例No.6は、カーボン付着厚みが大きく、コークス収縮量を大きくする対応も取らなかったため、押し出し時炉壁コークス間隔が小さく、押し出し性が不良であった。
【0052】
比較例No.7は、コークス収縮量が小さいため、押し出し時炉壁コークス間隔が小さく、押し出し性が不良であった。
【0053】
(実施例2)
図3に、実炉における押し出し時炉壁コークス間隔と押し出し負荷(押し出し電流値)の関係を示す。炉壁コークス間隔は、実施例1と同様の推定によって求めた。図より、押し出し時炉壁コークス間隔が小さくなるほど押し出し負荷は大きくなり、今回対象とした炉においては、押し出し時炉壁コークス間隔が0.3mm以下になると押し出し電流が管理値250Aを超え、押し出し電流が急激に増加して押し出し不良になることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によって求めた炉壁コークス間隔を炉壁コークス間隔最小値よりも大きい値となるようにコークス炉の操業を行うことにより、押し出し抵抗の少ない押し出しを行うことができ、コークス炉の炉壁に及ぼす負荷を低減し、コークス炉の寿命の延長を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づき計算で求めた、炭化時間と石炭中心温度、壁側コークス収縮量との関係を示すグラフである。
【図2】本発明に基づき計算で求めた壁側コークス収縮量(推定値)と壁側コークス収縮量(測定値)との関係を示すグラフである。
【図3】本発明に基づき計算で求めた炉壁コークス間隔と押し出し電流との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. コークス炉炭化室からのコークス押し出しを円滑に行うコークス炉の操業方法であって、押し出し時の壁側コークス収縮量、カーボン付着厚み、炉壁変位量を定め、前記押し出し時の壁側コークス収縮量からカーボン付着厚み及び炉壁変位量を減じた値を炉壁コークス間隔とし、予め炉壁コークス間隔最小値を定め、前記炉壁コークス間隔が炉壁コークス間隔最小値よりも大きい値となるようにコークス炉操業条件を選択することを特徴とするコークス炉の操業方法。
  2. 押し出し時の壁側コークス収縮量は、コークス炉炉温及び当該炭化室で炭化室中心温度が500℃に到達してから押し出し時までの経過時間(置時間)の関数として定め、カーボン付着厚みは、コークス炉炉温、揮発分含有量、水分含有量及びキャリーオーバー濃度から求められるカーボン成長速度と、適用しているカーボン除去方法に基づいて求められるカーボン除去速度と、日数との関数として定め、炉壁変位量は、隣接炭化室の配合炭の推定膨張圧の単調増加関数として定めることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
  3. 隣接炭化室の配合炭の推定膨張圧は、配合する石炭の膨張圧、非微粘結炭の配合率、非微粘結炭以外の石炭の全膨張率の関数として求めることを特徴とする請求項2に記載のコークス炉の操業方法。
  4. 押し出し時における炭化室内炉幅方向温度分布を伝熱計算によって求め、コークスの収縮係数を揮発分含有量と温度との関数として求め、前記求めた温度分布と前記求めたコークスの収縮係数を用いて炭化室内炉幅方向各位置のコークスの収縮率を求め、該幅方向各位置のコークス収縮率から炉幅方向の全収縮量を求め、該全収縮量に一定値を乗じた値を壁側コークス収縮量とすることを特徴とする請求項1乃至3に記載のコークス炉の操業方法。
  5. 押し出し時における炭化室内炉幅方向温度分布を伝熱計算によって求め、コークスの収縮係数を揮発分含有量と温度との関数として求め、前記求めた温度分布と前記求めたコークスの収縮係数を用いて炭化室内炉幅方向各位置のコークスの収縮率を求め、該幅方向各位置のコークス収縮率を用いて炉幅方向の任意の位置が収縮中心となった場合の個別壁側コークス収縮量を求め、該個別壁側コークス収縮量の加成平均をもって壁側コークス収縮量とすることを特徴とする請求項1乃至3に記載のコークス炉の操業方法。
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