JP3985605B2 - コークス炉の操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉の操業方法に関し、とくにコークス用配合炭の配合変化による乾留時の水平方向収縮特性の変動に応じて、クリアランス不良が生じるのを防止し、かつ、コークス炉操業を安定化させるためのコークス炉の操業方法について提案する。
【0002】
【従来の技術】
コークス炉の操業においては、乾留熱量の観点から石炭の水分は低いことが望ましい。しかし、石炭水分の過度の低下は、コークス炉への石炭装入時の発塵が問題となるばかりでなく、コークス炉へ装入される石炭の嵩密度を上昇させるため、場合によってはコークス炉からのコークスの押出しが困難となる、いわゆる押詰りを引き起こすことがある。
【0003】
一般に、コークス炉に装入される配合炭は、炭化室炉壁方向、いわゆる水平方向に収縮する特性がある。この特性は、乾留後のコークスケーキと炭化室壁面との間に生成する間隙(いわゆる「クリアランス」のこと)の大小となって顕われるため、この特性の把握が不十分で正確に制御されないと、コークスの押出不良(押詰り)が生じ、生産性の低下を招くだけでなく、炉体に対しても大きなダメージを与えることになる。
【0004】
この押詰りは、主に炉壁へのカーボン付着や炉壁表面の肌荒れ等、炭化室の炉壁れんがの表面形状にも左右されるが、この影響を助長するのがコークスの性状、とりわけ水平方向の収縮特性である。したがって、コークス炉に装入される配合炭の炉内水平方向での収縮特性の管理は、コークス炉操業の安定性および炉体管理上極めて重要な因子として考えられている。
【0005】
特に、最近のように原料炭のコストダウンや生産性の向上を指向した炉内嵩密度向上技術を採用している場合、炉内でのコークスケーキの収縮量の低下が顕著になる。また、コークス炉の長寿命化によって、炉壁表面形状の凹凸が増加した炉の場合においては、配合炭の水平方向の収縮特性を誤ると前述の操業安定性や炉体管理の面で悪影響を及ぼす押詰りなどの操業トラブルを招く恐れが増大する。
【0006】
このような考え方の下で従来、例えば、特開平2−235989号公報では、所定の条件で乾留したるつぼ中のコークスの水平方向の収縮係数を測定することにより、実炉によるコークスの水平方向の収縮率を推定する方法についての提案がある。しかしながら、この方法は、炉壁の状態や稼動率などの乾留条件が異なる場合、必要な水平方向の収縮量が異なるため、配合を変えて収縮量を管理しようとすれば非常に煩雑な配合の変更が必要となる。もし、このような煩雑な作業を回避しようとすれば、収縮量が最も必要な炉に合わせて、石炭の配合を行い、前記収縮量を管理することが必要になり、コークス製造コストの上昇を招くという問題があった。また、石炭ヤード等の制約から使用できる石炭銘柄は限られており、場合によっては、配合のみによる対策では収縮量を十分に確保できない場合があった。
【0007】
さらに、上述したように、実炉でのコークス押出し時の負荷というのは、コークス炉壁に付着したカーボンの状況などにより大きく異なるため、コークス押出し時の負荷と石炭配合や石炭水分、稼動率などとの関係を求めようとしても精度が上がらず、コークス押出し時の負荷が一定になるように、石炭配合と稼動率とから石炭水分を設定することは非常に困難であるといった問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、コークスの収縮量を常に一定に管理して適正なクリアランスを確保することにより、安定したコークス炉の操業と炉寿命の向上を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的の実現に向けた研究の中で、発明者らは、上記クリアランスと配合炭の水分量との間には良好な関係があることに着目し、まず、試験コークス炉で測定された配合炭の水分量とコークス炉のクリアランスとの関係に基づき石炭調湿設備出側の配合炭水分を制御することにより、コークスケーキ収縮量を常に一定に制御すれば、コークス炉の操業を安定化させることができることを知見し、本発明を開発するに到った。
すなわち、本発明は、配合炭を石炭調湿設備にて水分調整した上でコークス炉にて乾留するに当たり、あらかじめ、配合炭を装入するコークス炉の稼働率と石炭配合種毎に、試験コークス炉を用いて測定しておく配合炭の水分とクリアランスとの関係に基づき、実炉において所望のクリアランスを確保するのに必要な配合炭の目標水分を求め、石炭調湿設備出側の配合炭の全水分が前記の目標水分となるように、石炭調湿設備の入熱量を制御して、コークスケーキと炭化室壁面との間に生じるクリアランスを制御することを特徴とするコークス炉のである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、配合炭を石炭調質設備を使って水分調整した上で、コークス炉に装入し、乾留する方法において、以下に述べるような水分調整を行った上でコークス炉にて乾留するコークス炉の操業方法を提案するものである。そのために本発明では、調湿炭設備出側の配合炭の水分を決定するにあたり、配合炭を装入するコークス炉の稼動率と石炭配合種毎に、まず試験コークス炉を用いて基準となる乾留条件で測定した場合の配合炭水分とコークスクリアランスとの関係から、コークスケーキの収縮量を下限値以上にするために必要な水分量(目標水分)を求め、調湿炭設備出側の配合炭の全水分が前記目標水分になるように、コークス炉の操業を行うことにした。以下、そのコークス炉の操業方法、とくに配合炭全水分の調整による円滑なコークス炉の操業を行うための方法について詳しく説明する。
【0011】
上述したように、円滑なコークス炉の操業を行うには、装入炭(配合炭)の全水分と前記クリアランスの関係を明らかにすることが重要である。そこで、発明者らは、まず、試験コークス炉を用いて、同じ配合炭を使用したケースにおけるクリアランスを、コークス炉稼働率や配合炭水分量を変えて測定した。なお、試験コークス炉と実炉では炉幅が異なるため、前記配合水分量を、次式により実炉相当での乾留時間を求めて補正し、試験炉と実炉との整合を図ることにした。
(t0/t1)=(W0/W1)n
ただし、t0:実炉での乾留時間、t1:試験炉での乾留時間、W0:実炉の炉幅、W1:試験炉の炉幅、n:定数
【0012】
なお、一般に配合炭の水分を変えると、実炉での配合炭の嵩密度が変化することが知られている。したがって、試験コークス炉に装入する配合炭の嵩密度は、実炉での嵩密度と同じ嵩密度にして装入充填した。
【0013】
また、前記クリアランスは、使用する石炭の品位、配合割合、粒度、乾留時間、乾留温度、嵩密度などにより変化する関数と考えられるが、これらのうち実炉での乾留時間と乾留温度は、コークス炉の稼動率に応じて設定され、また、装入炭の嵩密度は、付着水分の関数として表される。そこで、実炉でのコークスケーキのクリアランス(CL)は、近似的に下記式で与えられるものと考えた。
CL=CLbase+f(WR)+g(MA)+const.
ただし、WR:コークス炉稼働率、MA:配合炭付着水分、const.:定数、CLbase:基準となる乾留条件でのクリアランス、f(WR):クリアランスに及ぼす稼働率WRの影響を表す関数、g(MA):クリアランスに及ぼすMAの影響を表す関数
【0014】
このような関係式が成立する下で、配合炭の水分調整に際し、たとえば、石炭調湿設備で配合炭の水分を調整する場合、装入するコークス炉の稼働率(WR)、配合毎に使用する石炭品位、石炭粒径および配合割合から基準となる乾留条件でのクリアランス(CLbase)を求めることができる。これらの関数は予め実験的に定めておくものである。また、クリアランスに及ぼすMAの影響関数g(MA)が付着水分(MA)についての単調増加関数となるため、クリアランスの下限値を満たす付着水分(MA)は、既知のWR、CLbaseから求めることができる。従って、少量の配合炭サンプルさえあれば、基準となるヒートパターンおよび嵩密度でのクリアランスを、試験コークス炉により測定することは容易である。
【0015】
なお、クリアランス(CL)は下限値以下になると、実炉では押出し負荷が急激に増大する。従って、予め実炉にて、稼働率一定かつ付着水分一定の条件で、クリアランスと押出し負荷の関係を測定しておく。このことにより、一定のクリアランスの下での、石炭調湿設備による石炭の調湿程度を炉団毎に設定することが必要になる。
【0016】
このような方法によれば、炉壁の状況が異なり、クリアランスの下限値および稼働率の異なる炉団に対しても、石炭調湿設備出側の水分を、炉団毎の付着水分下限値以上に管理することになるから、コークス炉の押出し負荷を容易に安定化させることができるようになる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。
図1に示すコークスケーキのクリアランス測定用の小型模擬レトルト(114 mmL×190 mmW×120 mmH)からなる40 kg乾留炉(試験炉)において、表1に示す乾留条件にて乾留実験を行った。時間について実炉(炉幅430 mm)と試験炉(炉幅190 mm)では(430/190)1.6 = 3.69倍の違いと仮定して、伝熱計算により所定の時間で炭中温度が950 ℃になるようにヒートパターンを決定した。
【0018】
【表1】
【0019】
乾留後、この小型模擬レトルトを所定の位置にセットしてステンレス鋼板までの距離をレーザー変位計で測定し、その後、側壁(ステンレス鋼板)を取り除いてこの側壁からコークス面までの距離を測定した(図2)。測定データは、パソコンに転送し、各ポイントでのコークス収縮量(=コークス表面から側壁までの距離)を求め、測定した全ポイントでのコークス収縮量を平均した値をコークス収縮量の測定量とした。そして、クリアランスCL=100×(両面でのコークス収縮量の和)/炉幅とした。
【0020】
図3に同一の石炭を使用して実炉での稼動率相当の乾留時間および付着水分で乾留してクリアランスを測定した結果を示す。この結果より基準となる乾留条件(WR150 %、付着水分4.0 %)でのクリアランスをCL0とすると、
CL=CL0−17.5×(WR/100)+5.82×(WR/100)2
+0.395×(付着水分)+11.6
となった。CL0は推定式を作成して推定してもよいが、試験コークス炉で乾留して実測した値を使用した方が精度が向上するため好ましい。
【0021】
付着水分4.0 %一定、稼動率120 %一定の条件で押出時のラムを駆動させるモーターのアンペアを押出負荷の指数としてクリアランスと押出負荷の関係を調査した結果を図4に示す。図4に示されるようにクリアランスの低下に伴って押出負荷は急激に上昇するがデータのバラツキは大きい。この炉団では7.0 %をCL下限値として設定した。また、CL0は配合を変更する度に試験コークス炉で乾留して実測したものを使用した。したがって、上式より配合毎のCL0が分かれば設定稼働率でCL=7.0となる付着水分量を求めることができるのである。
【0022】
表2に稼働率およびCL0を変えた時のコークス炉操業試験の結果を示す。CL0は配合を変えることで水準を変えた実験を行った。また、この期間石炭の平均包蔵水分は3.0 %で一定となっていた。No.1〜No.4の実験例ではいずれも上述の水分下限値よりも石炭調湿設備出側の付着水分が高くなっており、コークス炉の押出負荷は低く安定していた。No.5〜No.8の比較例ではいずれも付着水分下限値よりも石炭調湿設備出側の付着水分が低くなっており、コークス押出負荷が上昇し、いわゆる押詰りも一部発生した。
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、稼働率および石炭性状に基づいて石炭調湿設備出側の水分を制御することでコークスの収縮性を一定に管理することができるので、コークス炉の操業を安定化および炉体の長寿命化の実現が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験コークス炉で乾留したコークスの模式図である。
【図2】 試験コークス炉で乾留したコークスの収縮量の測定装置の模式図である。
【図3】 石炭の付着水分とクリアランスの関係を示す図である。
【図4】 押出負荷とクリアランスの関係を示す図である。
Claims (1)
- 配合炭を石炭調湿設備にて水分調整した上でコークス炉にて乾留するに当たり、あらかじめ、配合炭を装入するコークス炉の稼働率と石炭配合種毎に、試験コークス炉を用いて測定しておく配合炭の水分とクリアランスとの関係に基づき、実炉において所望のクリアランスを確保するのに必要な配合炭の目標水分を求め、石炭調湿設備出側の配合炭の全水分が前記の目標水分となるように、石炭調湿設備の入熱量を制御して、コークスケーキと炭化室壁面との間に生じるクリアランスを制御することを特徴とするコークス炉の操業方法。
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