JP3603360B2 - 磁気センサの製造方法及び磁気センサ - Google Patents
磁気センサの製造方法及び磁気センサ Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、磁気抵抗素子を用いた磁気センサ及び磁気センサの製造方法に関し、特にセンサの出力感度の検出回路を備えた磁気センサの製造方法及び磁気センサの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁性インクによる印刷物の識別装置や磁気カードリーダーなどに対し、磁気抵抗素子を利用した磁気センサが用いられている。従来の一例による磁気センサの構成を図9(a)に示し、その結線状態を図9(b)に示す。従来の磁気センサ10は、素子基板12上に一対の感磁部14a,14bを被着形成した磁気抵抗素子を備えている。感磁部14a,14bは、例えばInSbなどの材料から形成されており、素子基板12上に蒸着等により被着形成されている。磁気抵抗素子は、感磁部14a,14bに加わる磁界の変化に応じて信号を出力する。
【0003】
素子基板12の下方には、磁気抵抗素子を磁気バイアスする磁石16が設けられている。この磁石16は、磁気抵抗素子に磁気バイアスを加え、磁気動作点を移動させて、微小な磁界の変化に対して磁気抵抗素子からの出力信号のレベルを大きく取れるように設けられている。
【0004】
さらに、磁気抵抗素子及び磁石16などはケース18の内部に収納されている。ケース18の上部は、メタルカバー20によって覆われている。そして、このメタルカバー20の表面が検知面として機能する。
【0005】
このように構成された磁気センサ10の動作について図9(b)に示す結線図を参照して説明する。2つの磁気抵抗素子の感磁部14a,14bの各々は互いに等しい形状でかつ等しい抵抗値を持つように形成されている。そして、非動作時には磁石16からの均一な磁界の影響を受け、各々等しい抵抗値を持つ抵抗体として機能している。従って、直列に接続された磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bの両端に所定の電圧Vinを印加すると、感磁部14a,14bの間から引き出された出力端子からの出力電圧Vout はVin/2の電圧となる。
【0006】
次に、例えば磁気インクなどにより印刷された印刷物(磁性体)がメタルカバー20の検知面に沿って通過すると、この磁性体から磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bに対して磁界が与えられる。この磁性体からの磁界は、磁性体の移動に従って変化するため、各々の磁気抵抗素子の感磁部14a,14bに加わる磁界の強さが変化し、これに伴って各々の抵抗値が変化する。このため、出力端子からの出力電圧Vout も変動することになる。従って、この出力電圧の変動を検知することにより、磁性体の通過を検知することができる。
【0007】
このような磁気センサ10において、磁気抵抗素子は経時変化は少ないが、経時変化等を呈した場合、装置が正常に作動せず影響が大きいため、磁気抵抗素子の特性変化や故障の有無を診断する必要が有る。このため、従来では、図9(a)に示すような導体線22を用いて特性変化などの診断を行っていた。その診断方法は、まずメタルカバー20の検知面に導体線 22を磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bに対して等距離にかつ平行に設置する。そして、この導体線22に交流電流を流し、導体線22から一定のレベルの基準交流磁界を発生させ、磁気抵抗素子の感磁部14a,14bに印加する。そして、出力端子からの出力電圧Vout の変動分を検出する。例えば、導体層22に周波数fa (Hz)の交流電流を流し、これにより発生する磁界を基準交流磁界と設定する。そして、この基準交流磁界の影響を受けて出力される出力電圧Vout は周波数fa (Hz)の模擬電圧出力となる。この基準交流磁界に対する模擬電圧出力を検出しておけば、その後の使用時の種々のタイミングにおいて、同様に基準交流磁界を与え、その出力電圧を検出し、当初の模擬電圧出力と比較することにより特性劣化や故障の有無を診断することができる。
【0008】
しかしながら、上記の磁気センサ10では、診断を行う度に導体線22の取りつけや診断回路の設定を行わなければならず、余分な工数や治具を必要とするといった作業上の煩雑さを伴うものであった。また、診断の度に導体線22をメタルカバー20の同じ位置に取り付けることが困難なため、磁気抵抗素子の感磁部14a,14bとの位置関係が診断の度に異なることによって診断結果の精度が低下するという問題があった。
【0009】
このような問題点に鑑みて、図10に示すような磁気センサが考案された。この従来の他の例による磁気センサ10は、図10(a)〜図10(c)に示すように、素子基板12の表面に形成された磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bの間に導体層22aが設けられている。この導体層22aは、InSb、Al,Cuなどの導体材料を素子基板12表面上に被着して形成されている。さらに、導体層22aの両端は交流発生回路Nなどとの接続を行うための端子に接続されている。この導体層22aは、上述した図9に示す従来の磁気センサ10の導体線22と同様の機能を持つものである。そして、この導体層22aを利用した特性診断は以下のように行われる。
【0010】
すなわち、図10(a),(d)に示すように、導体層22aの両端に交流発生回路Nを接続し、導体層22aに一定の交流電流を流す。これにより、導体層22aの回りに交流磁界を発生させ、出力端子から出力電圧Vout を取り出す。そして、取り出された出力電圧Vout を検査することにより特性劣化や故障の有無を検出する。
【0011】
このような導体層22aを備えた磁気センサ10では、導体層22aと一対の感磁部14a,14bとの位置関係が固定されているため、診断の度に一定の交流磁界を磁気抵抗素子の感磁部14a,14bに対して及ぼすことができる。また、導体層22aは磁気センサ10の内部に組み込まれているため、診断の度に導体層22aを磁気センサ10に取り付ける必要がなく、診断操作を容易に行うことが出来る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10に示す従来の磁気センサ10においては、導体層22aから与えられる交流磁界は、メタルカバー20の検知面上の基準となる位置から与えられるべき基準交流磁界を基に、素子基板12の表面上において想定したものである。すなわち、検知面上の所定位置から一定のギャップを隔てた位置において、そのギャップ分を考慮した磁界が得られるように導体層22aに接続した交流発生回路から一定の交流電流を流している。しかしながら、磁気センサの組み立て工程においては、メタルカバー20と素子基板12との間のギャップは各センサ毎にある程度のばらつきが生じることは避けられない。このため、検知面上での基準交流磁界の代わりに、素子基板12表面上に形成した導体層22aによって得られる交流磁界を用いるためには、ギャップのばらつきに応じて各センサ毎に異ならせる必要が有る。しかし、図10に示す磁気センサ10で、導体層22aに流れる交流電流は導体層22aに接続される交流発生装置により一定の値に固定されているため、導体層22aから与えられる交流磁界は、各センサに与えるべき基準交流磁界と異なるものとなっている。このため、故障の有無の確認は可能であっても、本来の基準交流磁界に対する各磁気センサ毎の出力電圧レベルを確認することができないという問題があった。このため、個々の磁気センサの出力電圧を一定の検出レベルとなるようにゲイン調整を行った場合でも、本来の検出レベルに調整されていることが保証されないという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、基準交流磁界に対するセンサ出力のレベルの確認及び調整が容易な磁気センサの製造方法及び磁気センサを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁気センサの製造方法は、基板と、該基板上に一定の間隔を持って互いに平行に配置された一対の感磁部とを有する磁気抵抗素子と、一対の前記感磁部の各々に対して等距離となる位置に配置された導体層と、前記導体層に対して電気的に直列に接続された抵抗と、前記磁気抵抗素子を収納しており、前記一対の感磁部と一定のギャップを有するように隔てられた検知面を有するメタルカバーとを備える磁気センサの製造方法であって、前記メタルカバーの検知面において各感磁部と等しい距離となる位置に導体線を取り付ける工程と、前記導体線に第1の交流電流を流して磁界を発生させる工程と、前記第1の交流電流とは逆方向の第2の交流電流を前記導体層に流し、かつ前記第2の交流電流により生じた磁界による出力電圧が前記第1の交流電流により生じた磁界による出力電圧を相殺するように前記抵抗の抵抗値を設定する工程と、抵抗の抵抗値を設定した後に前記導体線を取り外す工程とを備える磁気センサの製造方法である。
本発明に係る磁気センサは、本発明の磁気センサの製造方法に従って得られたことを特徴とする。
【0015】
【作用】
本発明による磁気センサにおいては、導体層と抵抗とは直列に接続されている。そして、この抵抗の値を適当に調整することによって、導体層の両端に接続された交流電源から与えられる交流電流の値を制御することができる。導体を流れる交流電流の値を制御できれば、導体層から発生する磁界の強さを制御することができる。従って、各磁気センサに応じて正規の基準交流磁界を磁気抵抗素子に対して印加することができる。これにより、磁気センサからの出力電圧のレベルの確認及び検出レベルの調整を容易に行うことが可能となる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1は、本発明の実施例による磁気センサの正面断面構造図であり、図2は、その平面断面構造図である。図1及び図2に示すように、磁気センサ1は、フェライトなどからなる素子基板12の表面上に磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bが形成されている。磁気抵抗素子の感磁部14a,14bは、InSbなどで形成されており、その形状及び抵抗値は等しく設定されている。一対の感磁部14a,14bの間には導体層22aが形成されている。導体層22aは、例えばInSb,Al,Cuなどを素子基板12上に被着して形成されている。また、素子基板12の下部には磁気抵抗素子に磁気バイアスを与えるための磁石16が設けられている。
【0018】
これらの磁気抵抗素子、素子基板12、磁石16などはメタルカバー20の内部に収納されている。そして、メタルカバー20の上面(検知面)と感磁部14a,14bとの間のギャップが一定の値となるように両者の位置関係が定められている。メタルカバー20の内部の下方にはプリント配線基板2が設けられており、プリント配線基板2の下方表面上には抵抗4が半田付けされている。
【0019】
図1及び図2に示す磁気センサ1の結線状態の一例を図3に示す。磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bは互いに直列に接続され、その一方端に電圧Vinを入力するための入力端子6aが接続され、他方の端部に接地電位に接続するための接地端子6bが接続されている。また、一対の感磁部14a,14bの間には出力電圧Vout を取り出すための出力端子6cが接続されている。また、導体層22aの両端にはこの導体層22aに所定の交流電流を与えるための接続端子6d,6eが接続されている。さらに、この導体層22aに対して抵抗R1(4)が直列に接続されている。この抵抗R1は、導体層22aを流れる交流電流の値を調整し、導体層22aから生じる交流磁界が、基準交流磁界となるように調整するために設けられている。この抵抗R1の抵抗値の設定方法について以下に説明する。
【0020】
図4を参照して、まず、既に図9を用いて説明したように、導体線22をメタルカバー20の検知面上に、一対の感磁部14a,14bに平行に、かつ等距離となる基準位置に取り付ける。そして、この導体線22に所定の交流電流を流し、導体線22から基準交流磁界を発生させる。さらに、印加電圧の入力端子6aから印加電圧Vinを印加する。この場合、出力端子からの出力電圧Vout は、基準交流磁界に応じた出力電圧が検出される。
【0021】
この状態で、導体層22aの両端6d,6eに発振器などの交流発生装置8を接続し、交流電流Iを導体層22aに流す。この交流電流Iの電流方向は導体線22と逆方向となるように、すなわち、導体線22によって発生する基準交流磁界を打ち消す方向に磁界が生じる向きに設定する。そして、出力電圧Vout の基準交流磁界による出力分を相殺するように抵抗R1の大きさを決定する。このように抵抗R1の大きさを設定すれば、導体線22を取り外した状態で、導体層22aに交流電流を流せば、その電流値は抵抗R1によって制御され、基準交流磁界を発生させる電流値となっている。従って、抵抗R1が磁気センサ10内に組み込まれた後は、常に導体層22aから基準交流磁界を磁気抵抗素子の感磁部14a,14bに対して与えることができる。
【0022】
このように、常に出力端子6cから基準交流磁界に応じた出力電圧Vout が得られることになれば、その出力電圧のゲイン調整を正確に行うことができる。図5は、ゲイン調整に用いる調整回路30を磁気抵抗素子に接続した状態の回路図である。すなわち、磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bの間から引き出された端子6cに図示のようなゲイン調整回路30を接続し、可変抵抗Rcの値を調整することにより出力電圧Vout のゲインを調整することができる。なお、このゲイン調整回路を磁気センサ1の内部に組み込んでもよい。
【0023】
また、上記実施例の磁気センサ10については図6に示すような変形例が考えられる。図6は、導体層22aの両端に2つの抵抗R1,R2を直列に接続設けた場合の結線図を示している。この場合においても、抵抗R1,R2の値を適当に設定することによって導体層22aから基準交流磁界を発生させることができる。
【0024】
さらに、図7に示すように、導体層22aは、磁気抵抗素子の一対の感磁部14a,14bの間に一箇所設けるのみならず、各々の感磁部14a,14bの外側に平行に設けるように構成してもよい。
【0025】
さらに、図8に示すように、素子基板12の裏面側に設けるように構成してもよい。
さらに、導体層22aに接続される抵抗は、個々の抵抗素子を配線中に接続してもよく、あるいは、導体層22aの接続端子6d,6eを抵抗で構成してもよい。
【0026】
【発明の効果】
このように、本発明による磁気センサの製造方法では、磁気センサにおいて上記導体層に対して直列に抵抗が設けられており、かつ磁気センサのメタルカバー上に導体線を取り付けて第1の交流電流を流して磁界を発生させ、導体層に第1の交流電流とは逆方向の第2の交流電流を流し、第1,第2の交流電流による磁界が相殺するように抵抗の抵抗値を設定する。従って、第1,第2の交流電流により生じる磁界が相殺されるように、抵抗の大きさが調整される。よって、導体線を取り外した後に、導体層に交流電流を流した場合、電流が上記抵抗により制御され、確実に基準交流磁界が発生される。従って、得られた磁気センサでは、常に導体層から基準交流磁界を磁気抵抗素子の一対の感磁部に対して与えることが可能となる。よって、出力感度の確認並びにセンサの検出レベルの調整を正確にかつ容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による磁気センサの正面断面構造図。
【図2】図1に示す磁気センサの平面断面構造図。
【図3】図1に示す磁気センサの結線図。
【図4】本実施例による磁気センサの抵抗値調整の調整動作を説明するための説明図。
【図5】本実施例の磁気センサのゲイン調整回路の接続状態を示す回路図。
【図6】図1に示す磁気センサの変形例の一例を示す結線図。
【図7】図1に示す磁気センサの変形例の一例を示す要部断面構造図。
【図8】図1に示す磁気センサの変形例の他の例を示す要部断面構造図。
【図9】従来の一例による磁気センサの正面断面構造図(a)及びその結線図(b)。
【図10】従来の他の例による磁気センサの平面構造図(a)、正面要部断面構造図(b)、正面断面構造図(c)及び結線図(d)。
【符号の説明】
1…磁気センサ
2…プリント回路基板
4…抵抗
6…出力
12…素子基板
14a,14b…磁気抵抗素子
16…磁石
20…メタルカバー
22a…導体層
Claims (2)
- 基板と、該基板上に一定の間隔を持って互いに平行に配置された一対の感磁部とを有する磁気抵抗素子と、一対の前記感磁部の各々に対して等距離となる位置に配置された導体層と、
前記導体層に対して電気的に直列に接続された抵抗と、前記磁気抵抗素子を収納しており、前記一対の感磁部と一定のギャップを有するように隔てられた検知面を有するメタルカバーとを備える磁気センサの製造方法であって、
前記メタルカバーの検知面において各感磁部と等しい距離となる位置に導体線を取り付ける工程と、
前記導体線に第1の交流電流を流して磁界を発生させる工程と、
前記第1の交流電流とは逆方向の第2の交流電流を前記導体層に流し、かつ前記第2の交流電流により生じた磁界による出力電圧が前記第1の交流電流により生じた磁界による出力電圧を相殺するように前記抵抗の抵抗値を設定する工程と、
抵抗の抵抗値を設定した後に前記導体線を取り外す工程とを備える、磁気センサの製造方法。 - 請求項1に記載の発明に係る磁気センサの製造方法によって得られたことを特徴とする、磁気センサ。
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