JP3602576B2 - 揺動型圧縮機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば気体等の流体を圧縮するのに用いて好適な揺動型圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、クランク軸を回転可能に支持したクランクケースと、シリンダヘッドを有し該クランクケース上に搭載されたシリンダと、前記クランク軸にピストンロッドを介して連結され、該シリンダ内を揺動しつつ往復動し、前記シリンダヘッドとの間に圧縮室を形成するピストンと、内周側が該ピストンに取付けられる環状の取付部となり、外周側が該ピストンから外向きに突出し前記シリンダの内周面に摺接するリップ部となったリップシールとを備えた揺動型圧縮機は知られている。
【0003】
この種の従来技術による揺動型圧縮機では、クランク軸を回転駆動すると、この回転がピストンロッドを介してピストンに伝達され、該ピストンはシリンダ内を揺動しつつ往復動し、圧縮室内で空気等の流体を圧縮する。そして、ピストンがシリンダ内を揺動しつつ往復動する間、ピストンに設けたリップシールはリップ部がシリンダの内周面に摺接することにより、前記圧縮室内を気密にシールする。
【0004】
この場合、ピストンはシリンダ内を往復動するときに上死点と下死点との間で、シリンダ内周面に対して傾斜するように揺動するから、ピストンの揺動時には該ピストンの外周とシリンダの内周面との間に隙間が形成される。そこで、この隙間を塞ぐように、リップシールには、ピストンの外周から外向きに突出するリップ部を設け、該リップをシリンダの内周面に常に摺接させるようにしている。そして、リップシールのリップ部は、ピストンからの突出寸法が全周に亘って均等となるように環状に形成され、前記圧縮室からの圧力を受圧することにより、リップ部はシリンダの内周面に押圧され、シール作用を発揮するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、ピストンに取付けるリップシールを、弾性樹脂材料等により環状平板として形成し、外周側のリップ部をピストンから全周に亘って均等に突出させる構成としているから、リップ部の突出寸法を大きくすると、リップ部がシリンダの内周面に摺接するときの摺接面積や面圧が大きくなり、シリンダに対するピストンの摺動特性が低下し、動力損失が大きくなるという問題がある。
【0006】
また、リップ部の突出寸法を短くした場合には、シリンダ内でピストンが揺動するときに、この揺動方向に位置するリップ部の部位は、揺動方向と直交する方向に位置する部位に比較して摺動距離が長く、かつ速い摺動速度をもってシリンダの内周面に摺接するために、リップ部はピストンの揺動方向において早期に摩耗し、リップシールとしての寿命が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明はピストンの摺動特性を向上でき、動力損失を低減できると共に、リップシールの寿命を延ばすことができるようにした揺動型圧縮機を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明による揺動型圧縮機は、クランク軸を回転可能に支持したクランクケースと、シリンダヘッドを有し該クランクケース上に搭載されたシリンダと、前記クランク軸にピストンロッドを介して連結され、該シリンダ内を揺動しつつ往復動し、前記シリンダヘッドとの間に圧縮室を形成するピストンと、内周側が該ピストンに取付けられる環状の取付部となり、外周側が該ピストンから外向きに突出し前記シリンダの内周面に摺接するリップ部となったリップシールとから構成されている。
【0009】
そして、本発明が採用する構成の特徴は、前記リップシールのリップ部は、前記ピストンからの突出寸法が該ピストンの揺動方向で大きく、該ピストンの揺動方向と直交する方向では小さくなるように形成したことにある。
【0010】
【作用】
上記構成により、ピストンがシリンダ内を揺動しつつ往復動するときに、リップシールのリップ部は、ピストンとシリンダとの間を気密にシールすべくシリンダの内周面に摺接する。そして、リップシールのリップ部は、前記ピストンからの突出寸法が該ピストンの揺動方向で大きく、該ピストンの揺動方向と直交する方向では小さくなるように形成されているので、ピストンの揺動方向に位置するリップ部の部位は、ピストン揺動時にシリンダの内周面に確実に摺接し、ピストンとシリンダとの間を長期に亘ってシールし続けることができる。
【0011】
また、揺動方向と直交する方向に位置するリップ部の部位は、ピストンからの突出寸法が小さくなっているから、シリンダの内周面に余分な接触面積をもって摺接することがなくなり、シリンダの内周面に対するリップ部全体の面圧を減少でき、ピストンの摺動特性を向上できる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例による揺動型圧縮機を図1ないし図5に基づき、空気圧縮機として用いた場合を例に挙げて説明する。
【0013】
図において、1は内部にクランク室Aを画成したクランクケースで、該クランクケース1には、クランク室A内に位置して電動モータ2の出力軸3に連結されたクランク軸4が回転可能に設けられ、該クランク軸4にはバランスウエイト5が一体に設けられている。また、前記出力軸3の先端には冷却ファン6が取付けられ、電動モータ2の出力軸3はクランク軸4を回転駆動すると共に、前記冷却ファン6を回転駆動する。そして、該冷却ファン6によって発生した冷却風はクランク室A内を矢示F方向に流れ、クランクケース1の通風穴1Aを介して電動モータ2内を冷却する。
【0014】
7はクランクケース1上に搭載された円筒状のシリンダで、該シリンダ7の上端には弁板8が気密に固着されている。ここで、該弁板8には下面側にねじ収容部8Aが凹設されると共に、吐出穴9が穿設され、該吐出穴9は後述の吐出弁21によって開,閉される。
【0015】
10は前記弁板8上に搭載されたシリンダヘッドを示し、該シリンダヘッド10は弁板8の上側面との間により吐出室Bを画成し、後述の圧縮空気を該吐出室Bから吐出ポート11を介して外部の空気タンク(図示せず)に向けて吐出させている。
【0016】
12はシリンダ7内に往復動可能に挿嵌されたピストンとしてのロッキングピストンを示し、該ロッキングピストン12は図2に示す如く、ピストンロッド13が一体形成されたピストン本体14と、該ピストン本体14上に設けられ、後述のリップシール19をピストン本体14と共に挟持するリテーナ15とから構成されている。そして、前記ピストン本体14にはリテーナ15を貫通して小径の吸気穴16が穿設され、該吸気穴16はクランク室Aを後述の吸気弁20を介して圧縮室C内に連通,遮断する。
【0017】
ここで、ピストン本体14の上側面には浅底の円形状をなす凹部12Aが形成され、該凹部12Aの周囲は環状の縁取り部12Bとなっている。そして、リテーナ15にはピストン本体14の凹部12Aに嵌合する凸部15Aが形成され、該凸部15Aの外周側に位置する環状部15Bは、ピストン本体14の縁取り部12Bとの間で後述するリップシール19の取付部19Aを挟持している。
【0018】
一方、前記ピストンロッド13の下端側は、キー17により出力軸3に固着されたクランク軸4に、軸受18を介して回転可能に連結されている。そして、電動モータ2によりクランク軸4を回転駆動するときには、ピストンロッド13を介してロッキングピストン12がシリンダ7内を揺動しつつ往復動し、弁板8との間に圧縮室Cを形成する。
【0019】
19はシリンダ7とロッキングピストン12との間をシールするリップシールを示し、該リップシール19は図3ないし図5に示すように、ポリテトラフルオロエチレン(フッ素系樹脂)等の耐摩耗性と摺動性の高い樹脂材料によって形成され、前記ピストン本体14の縁取り部12Bとリテーナ15の環状部15Bとの間に挟持して固定される環状の取付部19Aと、該取付部19Aから径方向外向きで、かつ上向きに斜めに傾斜して突出し、シリンダ7の内周面に摺接するリップ部19Bとから一体形成されている。そして、該リップ部19Bはロッキングピストン12の外周側から外向きに突出し、シリンダ7とロッキングピストン12との間に形成される隙間を塞ぐようになっている。
【0020】
ここで、リップシール19のリップ部19Bは図3ないし図5に示すように、ロッキングピストン12の揺動方向に位置する長軸部19C,19Cと、ロッキングピストン12の揺動方向と直交する方向に位置する短軸部19D、19Dとを有し、各長軸部19C側から各短軸部19D側に向けて除々にリップ部19Bの長さ(突出寸法)が短くなり、リップシール19の全体は略楕円形状をなしている。そして、ロッキングピストン12から突出するリップ部19Bは、各長軸部19C側の突出寸法t1 が各短軸部19Dの突出寸法t2 より大きくなるように形成されている。
【0021】
さらに、20はロッキングピストン12に設けられた吸気弁、21は弁板8に設けられた吐出弁を示している。
【0022】
本実施例による揺動型圧縮機は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0023】
まず、電動モータ2の出力軸3によりクランク軸4を回転駆動すると、ロッキングピストン12はクランク軸4を介して駆動され、シリンダ7内を揺動しつつ往復動する。そして、ロッキングピストン12が上死点から下死点へと達する吸入行程では、圧縮室C内が負圧になり、クランク室A側の空気を吸気穴16から吸気弁20を介して圧縮室C内へと吸入する。
【0024】
一方、ロッキングピストン12が下死点から上死点へと達する圧縮行程では、ロッキングピストン12によって圧縮室C内の空気を圧縮する。そして、圧縮室C内で圧縮された圧縮空気は吐出穴9から吐出弁21を介して吐出室B内に吐出されると共に、吐出ポート11からエアドライヤ等を介して空気タンク(いずれも図示せず)に貯留される。
【0025】
ところで、ロッキングピストン12がシリンダ7内を下死点と上死点との間で移動するときに、シリンダ7内で揺動するロッキングピストン12は、シリンダ7の内周面に対して傾斜するから、ロッキングピストン12の外周とシリンダ7の内周面との間には、この傾斜(揺動)方向において隙間が形成される。
【0026】
そこで、本実施例では、この隙間を塞ぐようにロッキングピストン12にリップシール19を取付け、該リップシール19のリップ部19Bをシリンダ7の内周面に確実に摺接させると共に、リップ部19Bは、ロッキングピストン12からの突出寸法が、ロッキングピストン12の揺動方向となる各長軸部19C側で大きく、ロッキングピストン12の揺動方向と直交する方向となる各短軸部19D側では小さくなるように形成している。
【0027】
この結果、ロッキングピストン12の圧縮行程では、ロッキングピストン12とシリンダ7との間の隙間を介して圧縮室C内から漏洩しようとする圧縮空気の圧力を、リップシール19のリップ部19Bがその全周で受圧し、該リップ部19Bはシリンダ7の内周面に向けて拡径する方向に弾性変形することにより、リップシール19のリップ部19Bはシリンダ7の内周面に確実に摺接し、圧縮空気の漏洩を効果的に防止できる。
【0028】
特に、リップシール19はシリンダ7の内周面に摺接するリップ部19Bのうち、ロッキングピストン12の揺動方向と直交する方向の各短軸部19D側で突出寸法t2 が小さくなるように、リップシール19全体は略楕円形状に形成されているから、リップ部19Bの各短軸部19D側は余分な接触面積および面圧をもってシリンダ7の内周面に摺接することがなくなり、シリンダ7の内周面にかかるリップ部19Bの全周に亘る面圧を従来に比較して効果的に小さくでき、ロッキングピストン12の摺動特性を向上させ、動力損失を低減できると共に、電動モータ2等の駆動源に作用する負荷を確実に軽減できる。
【0029】
また、リップ部19Bの各長軸部19C側では突出寸法t1 が大きくなっているから、許容摩耗量を大きく取ることができ、ロッキングピストン12とシリンダ7との間を長期に亘って確実にシールできると共に、寿命を大幅に延ばすことができ、リップシール19の耐久性を向上できる。
【0030】
従って、本実施例によれば、ロッキングピストン12の摺動特性を向上でき、動力損失を効果的に低減できると共に、リップシール19のシール性を向上でき、寿命や耐久性を大幅に延ばすことができる等、種々の効果を奏する。
【0031】
なお、前記実施例では、ピストン本体14の縁取り部14Bとリテーナ15の環状部15Bとの間で取付部19Aを挟持することにより、ロッキングピストン12にリップシール19を取付けるものとして述べたが、本発明はこれに限らず、摺動によるリップシール19の脱落を防止するために、例えば環状の支持材等を介して、リップシール19の取付部19Aをロッキングピストン12に取付ける構成としてもよい。
【0032】
また、前記実施例では、ロッキングピストン12に吸気穴16および吸気弁20を設け、クランク室Aから圧縮室C内に空気を吸入させるものとして述べたが、これに替えて、例えば弁板8とシリンダヘッド10との間に吸気室と吐出室とを画成し、弁板8には吸気穴、吸気弁と吐出穴、吐出弁とをそれぞれ設ける構成としてもよい。
【0033】
さらに、前記実施例では、揺動型圧縮機として空気圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものでなく、例えば冷媒圧縮機等にも広く適用することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明では、ピストンから突出するリップシールのリップ部を、ピストンの揺動方向に位置するリップ部の部位で突出寸法が大きく、ピストンの揺動方向と直交する方向では小さくなるように形成したから、シリンダ内でピストンが往復動する間に、揺動方向と直交する方向の部位でリップ部に余分な面圧が作用したり、摺接面積が余分に大きくなったりするのを効果的に防止でき、揺動運動が阻害されることがなくなると共に、リップ部全体の面圧を小さくして、ピストンの摺動特性を向上でき、リップ部の摺動による動力損失を低減できる。また、リップシールのリップ部のうち、ピストンの揺動方向に位置して、シリンダとの摺動距離が長く摺動速度が速くなる部位では、ピストンからの突出寸法を大きくしているから、許容摩耗量を大きく取ることができ、圧縮気体の漏れを効果的に防止できると共に、寿命や耐久性を確実に向上させることができる。さらに、ピストンのストローク長が大きい揺動型圧縮機にも簡単に適用できる等、種々の効果を奏す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による揺動型圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向断面図である。
【図3】図2中のリップシールを拡大して示す平面図である。
【図4】図3中の矢示IV−IV方向拡大断面図である。
【図5】図3中の矢示V−V方向拡大断面図である。
【符号の説明】
1 クランクケース
2 電動モータ
3 出力軸
4 クランク軸
7 シリンダ
10 シリンダヘッド
12 ロッキングピストン(ピストン)
13 ピストンロッド
14 ピストン本体
15 リテーナ
19 リップシール
19A 取付部
19B リップ部
19C 長軸部(部位)
19D 短軸部(部位)
Claims (1)
- クランク軸を回転可能に支持したクランクケースと、シリンダヘッドを有し該クランクケース上に搭載されたシリンダと、前記クランク軸にピストンロッドを介して連結され、該シリンダ内を揺動しつつ往復動し、前記シリンダヘッドとの間に圧縮室を形成するピストンと、内周側が該ピストンに取付けられる環状の取付部となり、外周側が該ピストンから外向きに突出し前記シリンダの内周面に摺接するリップ部となったリップシールとを備えた揺動型圧縮機において、前記リップシールのリップ部は、前記ピストンからの突出寸法が該ピストンの揺動方向で大きく、該ピストンの揺動方向と直交する方向では小さくなるように形成したことを特徴とする揺動型圧縮機。
Priority Applications (1)
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JP19002694A JP3602576B2 (ja) | 1994-07-20 | 1994-07-20 | 揺動型圧縮機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP19002694A JP3602576B2 (ja) | 1994-07-20 | 1994-07-20 | 揺動型圧縮機 |
Publications (2)
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JP19002694A Expired - Fee Related JP3602576B2 (ja) | 1994-07-20 | 1994-07-20 | 揺動型圧縮機 |
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