JP3601945B2 - 鋼板のすみ肉溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鋼構造物のT継手等の継手溶接に適用されるすみ肉溶接方法に関し、特に、継手の前加工を低コストで実施することができると共に、高能率で継手強度を向上することができる鋼板のすみ肉溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼構造物において、例えば、I形ビームを作製する場合及び補強部材を溶接する場合には、従来より、T継手をすみ肉溶接する方法が適用されている。図4は従来のT継手の開先部を示す正面図である。図4に示すT継手は、水平方向に配置された鋼板1と、この鋼板1に対して垂直となるように配置された鋼板2とが正面視でT字形をなすように組み立てられたものであり、鋼板2の端面2bは、鋼板1の表面に当接している。なお、鋼板2の端面2bは、鋼板素材を直線状に切断することによって形成されたものであり、自然開先状態となっている。
【0003】
このように組み立てられたT継手においては、鋼板2の両面側から溶接することにより、鋼板1と鋼板2とを接合することができる。このとき、要求される強度によってすみ肉溶接のビードの脚長を調整する。このように、T継手において、高い継手強度が要求されない場合には、鋼板2の端面2bを鋼板1の表面に沿うように平坦に切断するのみで、開先を加工することができる。
【0004】
しかしながら、このような開先部を有するT継手を溶接した場合には、所望の溶込み深さを確保することが困難であるので、高い継手強度を得ることはできない。そこで、より一層高い継手強度が要求される場合には、端面の両側に切欠を設けて溶接する方法が使用されている。
【0005】
図5は従来のT継手の他の開先部の形状を示す正面図である。図5に示すT継手に使用される鋼板4の端面4cには、その表面4dから端面4cに至る傾斜した切欠き4aと、裏面4eから端面4cにいたる傾斜した切欠き4bとが形成されている。そして、図4に示すT継手と同様に、水平方向に配置された鋼板3の表面に、この鋼板3に対して垂直となるように鋼板4の端面4cを当接させることにより、両者がT字形をなすように組み立てられている。
【0006】
このように組み立てられた図5に示すT継手においても、図4に示す場合と同様に、鋼板4の両面側に形成されたレ形開先部を溶接することにより、鋼板3と鋼板4とを接合することができる。このように、鋼板4の端面4cに開先加工を施すことにより、溶接金属ののど厚を増加させることができ、これにより、溶込み深さが向上して高い継手強度を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図4に示すT継手を溶接する場合に、継手強度をより一層高くするために、例えば、極めて高い溶接電流を使用して溶込み深さを深くしようとしても、良好な溶接ビード形状を得ることができない。図6は高い溶接電流でT継手を溶接した場合のビード形状を示す断面図である。図6に示すように、鋼板1と鋼板2とにより形成される開先部5に対して高い溶接電流で溶接すると、オーバラップビード6が形成される。
【0008】
他に、溶込みを深くする方法として、鋼板1と鋼板2との間にルートギャップを設けるという方法がある。しかし、溶接線全長にルートギャップを形成しようとすると、継手を組み立てる際に鋼板間にスペーサ等の部材を配置することが必要となり、その組立も煩雑となる。また、溶接中に均一な適正幅のルートギャップを維持することができなくなる虞がある。
【0009】
一方、図5に示す開先形状を形成する場合には、のど厚の増加によって溶込み深さを向上させることができるが、鋼板4の端面4bに切欠き4aを形成する工程が必要となるので、単に鋼板の端面を平坦に切断する自然開先の場合と比較して、数倍の開先加工コストが必要となる。また、ルートフェイスの厚さ等の寸法精度を確保することが極めて困難となり、溶接継手の信頼性を低下させることにもなる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、開先部の形成に必要なコストを上昇させることなく、容易に溶接開先部を加工することができると共に、良好な溶込み深さを得ることができ、これにより、高い強度を有する継手を得ることができる鋼板のすみ肉溶接方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る鋼板のすみ肉溶接方法は、第1の鋼板の端面を第2の鋼板の表面に突き合わせて2枚の鋼板をすみ肉溶接により接合する鋼板のすみ肉溶接方法において、前記第1の鋼板の前記端面に、一定間隔で交互に凹部及び凸部が配列された凹凸面を形成し、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側に形成される開先を、同時に溶接電極を移動させてすみ肉溶接するものであって、前記凹部の空間体積が前記凸部の体積の2倍未満のとき、前記第1の鋼板の板厚をt(mm)とすると、隣接する凸部間の距離を5乃至20mm、前記凹部の深さを(0.1×t)乃至(0.3×t)mmとすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他のすみ肉溶接方法は、第1の鋼板の端面を第2の鋼板の表面に突き合わせて2枚の鋼板をすみ肉溶接により接合する鋼板のすみ肉溶接方法において、前記第1の鋼板の前記端面に、一定間隔で交互に凹部及び凸部が配列された凹凸面を形成し、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側に形成される開先を、同時に溶接電極を移動させてすみ肉溶接するものであって、凹部の空間体積が凸部の体積の2倍以上、凸部の幅が8mm以下であるとき、前記鋼板の板厚をt(mm)とすると、凹部の深さを(0.1×t)乃至(0.2×t)mm、凸部間の距離を100mm以下とすることを特徴とする。
【0013】
前記第1の鋼板の前記端面に前記第1の鋼板の厚さ方向に延びる複数本の溝状の凹部を形成することにより、前記凹凸面が形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側の溶接電極は単電極であって、前記表面側における表面側溶接電極と、前記裏面側における裏面側溶接電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることが好ましい。
【0015】
更に、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側のいずれか一方の溶接面における溶接電極は単電極であると共に、他方の溶接面における溶接電極は複数電極であって、前記一方の溶接面における電極と、前記他方の溶接面における先行電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることが望ましい。また、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側の溶接電極は複数電極であって、前記表面側における表面側先行電極と、前記裏面側における裏面側先行電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明方法においては、第1の鋼板の端面に凹部と凸部からなる凹凸面を形成し、その凹凸面を第2の鋼板の表面に当接させて、第1の鋼板の表面側及び裏面側に形成される開先を同時に溶接する。このとき、凹部の空間体積と凸部の体積との関係及び凸部の幅等に応じて、隣接する凸部間の距離、凹部の深さを適切に規定している。従って、凸部の熱容量が小さくなって、溶接熱により比較的容易に凸部を溶融させることができる。また、第1の鋼板の凹凸面における凸部が第2の鋼板の表面に接触しているか又は近接していると、第1の鋼板と第2の鋼板との間において、凹部が局部的に好ましい大きさのルートギャップとなるので、溶込み深さを深くすることができ、継手強度を高めることができる。更に、仮溶接又はスペーサ等によりルートギャップを維持する必要が無く、溶接のための部材の組立が容易になる。
【0017】
更にまた、深い溶込みを得るために高電流条件で溶接した場合においても、溶接金属がルートギャップとしての凹部に吸収されるので、開先にオーバラップビードが形成されることを防止することができる。
【0018】
また、本発明方法において、第1の鋼板の厚さ方向に延びる複数本の溝状の凹部を形成することにより、第1の鋼板の端面に凹凸面を形成することができる。このような凹凸面を形成する場合には、第1の鋼板の端面の板切り加工と凹部の形成とを同時に実施することができるので、1工程のみで所望の開先を得ることができる。従って、開先の加工コストを著しく低減することができる。
【0019】
更に、本発明方法おいては、第1の鋼板の表面側における表面側溶接電極と、裏面側における裏面側溶接電極との間の溶接線方向の距離を規定すると、第1の鋼板の両面に形成された開先において、同様の深い溶込みを得ることができる。
【0020】
更にまた、第1の鋼板の表面側及び裏面側のいずれか一方又は両方を多電極で溶接すると、より一層深い溶込みを得ることができる。いずれか一方のみを多電極で溶接する場合は、その先行電極と他方の面における電極との間の溶接線方向の距離を80mm以下とすることが好ましい。また、表面側及び裏面側の両方を多電極で溶接する場合においても、先行電極間の溶接線方向の距離を80mm以下とすることが望ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の実施例に係る鋼板のすみ肉溶接方法を説明するための継手を示す正面図であり、1(b)はその側面図である。
【0023】
図1(a)及び1(b)に示すように、鋼板(第1の鋼板)12の一方の端面には、鋼板12の厚さ方向に延びるように、等間隔に複数の溝状の凹部12aが形成されており、この凹部12aを形成することにより、隣接する凹部12a間に凸部12bが形成されている。従って、図1(b)に示すように、鋼板12の端面においては、凹部12aと凸部12bとが交互に配置され、平面視で波形の凹凸面12cが形成されている。そして、水平に配置された鋼板(第2の鋼板)11の表面に、この鋼板11に対して垂直となるように鋼板12の凹凸面12cが当てられて、鋼板11と鋼板12とがT字型をなすように組み立てられている。
【0024】
このように継手10を組み立てた後、鋼板12の表面側開先部21及び裏面側開先部22に対して、鋼板12の凹凸面12cに沿って同時に溶接電極を移動させてすみ肉溶接する。
【0025】
本実施例においては、鋼板12の凸部12bは熱容量が小さいので、溶接熱により比較的容易に凸部12bを溶融させることができる。また、凸部12bが鋼板11の表面に接触しており、凹部12aが局部的に鋼板11と12とのルートギャップとしての役割を果たすので、深い溶込みを得ることができる。
【0026】
更に、本実施例においては、ルートギャップを形成する必要がないので、継手の組立時にスペーサ等が必要とされることがなく、容易に継手を組み立てることができる。更にまた、深い溶込みを得るために高電流条件で溶接した場合においても、溶接金属がルートギャップとしての凹部12aに吸収されるので、開先部21及び22に図6に示すようなオーバラップビードが形成されることを防止することができる。
【0027】
また、本実施例においては、鋼板12の端面の板切り加工と凹部12aの形成とを同時に実施することができるので、1工程のみで所望の開先を得ることができる。従って、図5に示す従来の開先を形成する場合と比較して、開先の加工コストを著しく低減することができる。
【0028】
本実施例においては、鋼板12の凹部12a及び凸部12bが一定間隔で交互に形成されているが、凹部12aの空間体積と凸部12bの体積との関係及び凸部12bの幅等に応じて、隣接する凸部12a間の距離、凹部12bの深さを適切に規定しているので、加工が容易になると共に、溶け落ちの発生を抑制することができる。
【0029】
図2は凸部間の距離P、凸部の幅W及び凹部の深さDを示す平面図である。図2に示すように、凹部と凸部とが一定間隔で交互に形成されている場合、隣接する凸部12bの先端間の距離は全て同一であるので、本実施例においては、これを凸部間の距離Pとする。また、隣接する凹部12aにおける最も深い溝間の距離及び溝の深さも全て同一であるので、これらを夫々、凸部の幅W、凹部の深さDとする。
【0030】
凹部12aの空間体積が凸部12bの体積の2倍未満である場合、隣接する凸部12a間の距離Pが5mm未満であると、加工が煩雑になる。一方、凸部間の距離Pが20mmを超えると、アンダカット又はオーバラップが発生して、ビードの外観が劣化する。また、鋼板12の板厚t(mm)に対して、凹部の深さDが(0.1×t)mm未満であると、所望の溶込み深さを得ることができず、凹部の深さDが(0.2×t)mmを超えると、アンダカット又はオーバラップが発生して、ビードの外観が劣化する。従って、凹部の空間体積が凸部の体積の2倍未満のとき、隣接する凸部間の距離Pを5乃至20mm、凹部の深さDを(0.1×t)乃至(0.3×t)mmとする。
【0031】
一方、凹部12a及び凸部12bが一定間隔で交互に形成されていて、凹部12aの空間体積が凸部12bの体積の2倍以上であると共に、凸部12bの幅Wが8mm以下である場合、隣接する凸部間の距離Pが100mmを超えると、アンダカット又はオーバラップが発生して、ビードの外観が劣化する。。また、鋼板12の板厚t(mm)に対して、凹部の深さDが(0.1×t)mm未満であると、所望の溶込み深さを得ることができず、凹部の深さDが(0.2×t)mmを超えると、アンダカット又はオーバラップが発生して、ビードの外観が劣化する。従って、凹部の空間体積が凸部の体積の2倍以上、凸部の幅が8mm以下であるとき、凸部間の距離Pを100mm以下、凹部の深さDを(0.1×t)乃至(0.2×t)mmとする。
【0032】
なお、溶接時において、表面側開先部21及び裏面側開先部22のうち一方の開先部を溶接した後に、他方の開先部を溶接すると、一方の開先部に形成された溶接金属によって、未溶込み部(他方の開先部)における局部的なルートギャップ(凹部12a)が埋められてしまう。その結果、一方の開先部においては深い溶込みを得ることができるが、他方の開先部においては溶込み増大効果が低下する。
【0033】
但し、一方の開先部を溶接した後に他方の開先部を溶接しても、例えば、一方の開先部に形成された溶接金属が凝固しない範囲、又は凝固した後であっても溶接金属が高温状態であれば、後に溶接する他方の開先部においても、溶込みを増大させる効果を得ることができる。一方の開先部における電極位置と、他方の開先部における電極位置とをずらして配置する場合に、両開先部において良好な溶込みを得ることができる溶接線方向の電極間距離は溶接条件によって異なる。
【0034】
しかし、この電極間距離を80mm以下とすると、表面側開先部21及び裏面側開先部22のいずれの開先部においても、更に一層深い溶込みを得ることができる。従って、本実施例においては、鋼板12の表面側における表面側電極と、裏面側における裏面側電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下とすることが好ましい。なお、表面側電極と裏面側電極との間の溶接線方向の距離は小さい方が好ましく、表面側と裏面側における対向する位置を同時に溶接することがより一層好ましい。
【0035】
また、鋼板12の表面側及び裏面側のいずれか一方又は両方を多電極で溶接すると、より一層深い溶込みを得ることができる。いずれか一方のみを多電極で溶接する場合は、その先行電極と他方の面における電極との間の溶接線方向の距離を80mm以下とすることが好ましい。また、表面側及び裏面側の両方を多電極で溶接する場合は、先行電極間の溶接線方向の距離を80mm以下とすることが望ましい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明に係る溶接方法を使用して得られた溶接継手の実施例についてその比較例と比較して具体的に説明する。
【0037】
第1実施例
先ず、本発明に係る溶接方法及び従来の溶接方法によりT継手を溶接し、溶込み深さ比較試験を実施した。図3は溶込み深さ比較試験に使用したT継手の形状及びワイヤの狙い位置を示す正面図である。先ず、水平に配置した鋼板14の表面に、この鋼板14に対して垂直となるように鋼板13の端面13aを当てて、T継手を組み立てた。但し、実施例としては、鋼板13の端面13aに、鋼板13の厚さ方向に延びる複数本の溝状の凹部及び凸部を、凹部の深さD、凸部間の距離P及び凸部の幅Wを種々に変化させて形成した。なお、実施例及び比較例については、鋼板14の板厚を25mmとし、鋼板13の板厚を14mm及び25mmの2種類とした。
【0038】
次に、これらのT継手に対して、単電極のサブマージアーク溶接法を使用して、下記表1に示す条件で片側のみから溶接した。溶接材料としては、ワイヤ径が4mmである市販のワイヤ15と、市販の溶融型フラックスとを使用し、図3に示すように、鋼板14とワイヤ15とがなす角度が45°となるように、ワイヤ15を配置した。そして、溶接後の溶接ビードの外観を観察して、アンダカット又はオーバラップの発生を調査すると共に、溶接部から断面マクロを採取して、溶込み深さを評価した。鋼板13の作製条件及び評価結果を下記表2乃至9に示す。
【0039】
なお、外観の評価結果欄においては、アンダカット及びオーバラップが発生していないものを○とし、それ以外のものを×とした。また、溶込みの評価結果欄においては、鋼板13の両側を溶接した場合に完全溶込みに近い継手を得るための基準として、片面溶接時において鋼板13の板厚の45%以上の溶込み深さが得られたものを○とし、それ以外のものを×とした。なお、外観の評価結果が不合格であったため、溶込みの評価試験を実施しなかったものを−とした。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
上記表2乃至9に示すように、実施例No.1乃至21は、鋼板13の端面に所望の寸法の凹凸面を形成しているので、ビード外観が優れていると共に、片面溶接で45%以上の溶込みを得ることができた。これにより、同様の条件で鋼板13の表面側及び裏面側を溶接した場合に、完全溶込みに近い溶込みが得られることが示された。
【0050】
一方、比較例No.22乃至24、29乃至32及び36は凹部の深さDが本発明範囲の下限未満であるので、十分な溶込み深さを得ることができなかった。比較例No.25乃至27、33及び34は凹部の深さDが本発明範囲の上限を超えているので、ビードの外観が不良となった。また、比較例No.28は凸部の幅Wが本発明の条件範囲を超えており、凹部の深さDも本発明範囲の上限を超えているので、溶込み不足となった。比較例No.35は凸部の幅Wが本発明の条件範囲を超えているので、ビードの外観が不良となった。
【0051】
第2実施例
次に、本発明に係る溶接方法及び従来の溶接方法によりT継手を溶接し、各溶接部の溶込み状況を比較した。溶込み状況比較試験に使用したT継手の形状及びワイヤの角度は、第1実施例と同様とした。なお、実施例及び比較例については、鋼板13及び14を、夫々板厚が25mmである軟鋼板とした。
【0052】
次に、これらのT継手に対して、単電極のサブマージアーク溶接法を使用して、下記表10に示す条件で両側から溶接した。溶接材料としては、ワイヤ径が4mmである市販のワイヤと、市販の溶融型フラックスとを使用し、鋼板13の表面側及び裏面側において、ワイヤ間の溶接線方向の距離を種々に変化させて溶接した。その後、溶接ビードの外観を観察して、アンダカット又はオーバラップの発生を調査すると共に、溶接部から断面マクロを採取して、溶込み深さを評価した。鋼板13の作製条件及び評価結果を下記表11及び12に示す。
【0053】
なお、外観の評価結果欄においては、アンダカット及びオーバラップが発生していないものを○とし、それ以外のものを×とした。また、溶込みの評価結果欄においては、鋼板13の端面のルートフェイスが残存せず、完全溶込みが得られたものを○、後方電極側の溶込みが若干不十分であったものを△とし、それ以外のものを×とした。
【0054】
【表10】
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
上記表11及び12に示すように、実施例No.51乃至58は、鋼板13の端面に所望の寸法の凹凸面を形成しており、この凹凸面を鋼板14の表面に当接させた状態で鋼板13の表面側及び裏面側をすみ肉溶接しているので、ビード外観が優れていると共に、深い溶込みを得ることができた。特に、実施例No.52乃至58は、電極間の溶接線方向の距離を80mm以下としているので、表面側及び裏面側のいずれの溶接面においても、十分な深い溶込みを得ることができた。
【0058】
一方、比較例No.59は凹部の深さDが本発明範囲の下限未満であるので、溶込みが不完全となった。比較例No.60及び61は凹部の深さDが本発明範囲の上限を超えているので、ビードの外観が不良となった。比較例No.62は鋼板13の端面に凹凸面を形成していないので、ビードの外観が不良になると共に、完全な溶込みを得ることができなかった。
【0059】
第3実施例
次いで、第2実施例において使用したT継手と同様の継手を組み立てて、このT継手に対して、鋼板13の表面側から2電極タンデム溶接により同時にすみ肉溶接し、溶接部の溶込み状況を調査した。溶込み状況比較試験に使用したT継手の形状及び溶接線方向に直交する面内におけるワイヤの角度は、第1実施例と同様とした。なお、鋼板13としては、板厚を25mm、凹部の深さDを4.5mm、凸部間の距離Pを12mm、凸部の幅Wを6mmとした。また、鋼板13の表面側及び裏面側における先行電極の溶接線方向の距離は0mmとした。溶接条件を下記表13に示す。但し、下記表13に示すワイヤの角度は、溶接線方向へのワイヤの傾斜角度である。
【0060】
【表13】
【0061】
上記表13に示す条件で溶接を実施した後、ビードの外観及び溶込み深さを評価した結果、鋼板13の表面側及び裏面側において、良好な結果となった。また、いずれの溶接面においても2電極で溶接しているので、単電極溶接の場合と比較して、より一層溶接能率を向上させることができた。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、鋼板の端面に形成した所望の寸法の凹凸面を他の鋼板の表面に当接し、この鋼板の表面側及び裏面側を同時に溶接しているので、深い溶込みを得ることができ、継手強度を高めることができる。また、溶接のための加工及び組立を低コストで容易に実施することができる。更に、鋼板の厚さ方向に延びる溝状の凹部を形成すると、更に一層加工及び組立が容易になる。更にまた、鋼板の表面側における表面側溶接電極と、裏面側における裏面側溶接電極との間の溶接線方向の距離を規定すると、より一層深い溶込みを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施例に係る鋼板のすみ肉溶接方法を説明するための継手を示す正面図であり、(b)はその側面図である。
【図2】凸部間の距離P、凸部の幅W及び凹部の深さDを示す平面図である。
【図3】溶込み深さ比較試験に使用したT継手の形状及びワイヤの狙い位置を示す正面図である。
【図4】従来のT継手の開先部を示す正面図である。
【図5】従来のT継手の他の開先部の形状を示す正面図である。
【図6】高い溶接電流でT継手を溶接した場合のビード形状を示す断面図である。
【符号の説明】
1、2、3、4、11、12、13、14;鋼板
6;オーバラップビード
10;継手
12a;凹部
12b;凸部
12c;凹凸面
21、22;開先部
Claims (10)
- 第1の鋼板の端面を第2の鋼板の表面に突き合わせて2枚の鋼板をすみ肉溶接により接合する鋼板のすみ肉溶接方法において、前記第1の鋼板の前記端面に、一定間隔で交互に凹部及び凸部が配列された凹凸面を形成し、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側に形成される開先を、同時に溶接電極を移動させてすみ肉溶接するものであって、前記凹部の空間体積が前記凸部の体積の2倍未満のとき、前記第1の鋼板の板厚をt(mm)とすると、隣接する凸部間の距離を5乃至20mm、前記凹部の深さを(0.1×t)乃至(0.3×t)mmとすることを特徴とする鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の前記端面に前記第1の鋼板の厚さ方向に延びる複数本の溝状の凹部を形成することにより、前記凹凸面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の表面側及び裏面側の溶接電極は単電極であって、前記表面側における表面側溶接電極と、前記裏面側における裏面側溶接電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の表面側及び裏面側のいずれか一方の溶接面における溶接電極は単電極であると共に、他方の溶接面における溶接電極は複数電極であって、前記一方の溶接面における電極と、前記他方の溶接面における先行電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の表面側及び裏面側の溶接電極は複数電極であって、前記表面側における表面側先行電極と、前記裏面側における裏面側先行電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 第1の鋼板の端面を第2の鋼板の表面に突き合わせて2枚の鋼板をすみ肉溶接により接合する鋼板のすみ肉溶接方法において、前記第1の鋼板の前記端面に、一定間隔で交互に凹部及び凸部が配列された凹凸面を形成し、前記第1の鋼板の表面側及び裏面側に形成される開先を、同時に溶接電極を移動させてすみ肉溶接するものであって、凹部の空間体積が凸部の体積の2倍以上、凸部の幅が8mm以下であるとき、前記鋼板の板厚をt(mm)とすると、凹部の深さを(0.1×t)乃至(0.2×t)mm、凸部間の距離を100mm以下とすることを特徴とする鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の前記端面に前記第1の鋼板の厚さ方向に延びる複数本の溝状の凹部を形成することにより、前記凹凸面が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の表面側及び裏面側の溶接電極は単電極であって、前記表面側における表面側溶接電極と、前記裏面側における裏面側溶接電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の表面側及び裏面側のいずれか一方の溶接面における溶接電極は単電極であると共に、他方の溶接面における溶接電極は複数電極であって、前記一方の溶接面における電極と、前記他方の溶接面における先行電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
- 前記第1の鋼板の表面側及び裏面側の溶接電極は複数電極であって、前記表面側における表面側先行電極と、前記裏面側における裏面側先行電極との間の溶接線方向の距離は80mm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼板のすみ肉溶接方法。
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