JP7428899B2 - 溝形鋼の製造方法および溝形鋼 - Google Patents
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Description
しかし、ダイヤフラムを使用する場合には、角形鋼管部材の設計、施工に一定の制限が生じる。すなわち、ダイヤフラムの位置に合わせてH形鋼を溶接する必要があることから、ファブリケータ(鉄骨加工業者)はそれに合わせて構造設計を行う必要があり、梁に段差、偏心あるいは傾斜をつけるような設計が難しくなる。また実際の施工においても加工に手間がかかる、検査工数が多くなるといった問題があった。
ダイヤフラムを省略した角形鋼管部材の柱材(角形鋼管)には、断面が正方形の柱とするため、フランジ幅L0とウェブ高さH0の比が1:2である溝形鋼のフランジ同士を突き合わせて溶接したものが用いられる。例えば、特許文献1には、溶接施工性を向上させるために、フランジの外面のみに開先を形成した溝形鋼が記載されている。
しかしながら、近年では角形鋼管の大型化、厚肉化に伴い、一度の溶接で角形鋼管を製造することができないことから、フランジ同士を突き合わせた溝形鋼の内側及び外側から溶接を行い、角形鋼管を製造することが増えている。
特許文献2には、フランジの両側(内外面)に開先を形成した厚肉溝形鋼が記載されている。
上述の特許文献2には、フランジの両側(内外面)に開先を形成した厚肉溝形鋼の製造方法も記載されている。しかしながら、この製造方法では、以下のような2つの課題があると考えられる。
<1>開先部の形状制御
上記の製造方法では、フランジの先端に相当する位置に間隙(逃がし空間)を設けた圧延ロールを用いて仕上圧延を行う。このような圧延ロールを用いることで、鋼材が断面変形してフランジ先端方向に伸延し、間隙に鋼材が押し付けられて開先が付与される。しかしながら、押し付け力の大きさによっては、開先部の高さや幅が不均一になる。
<2>開先部の圧潰
上記の製造方法では、フランジを下側(下に凹向き)にして溝形鋼を製造する。この場合、圧延後、搬送テーブルでは続けてフランジを下側に搬送することになる。
フランジ先端は開先を形成していることにより先端面積は小さく、かつ圧延後の溝形鋼はまだ高温化にあることから、自重による荷重がフランジ先端の開先部に集中し、開先が潰れやすく、所望の開先を形成することができない。
まず、上記<2>の課題に対しては、単純にフランジを上側(上に凹向き)にして溝形鋼を製造すればよい。このようにすれば、搬送テーブル上で開先に荷重が集中することはない。
よって、フランジを上側にして溝形鋼を製造することを前提として、溝形鋼の圧延工程について見直した。
(2)これらの制御は仕上圧延機で圧延ロールの諸条件を調整することで行えばよい。上述の特許文献2に記載の方法では、圧延ロールにおけるフランジの先端に相当する位置に間隙(逃がし空間)を設けて仕上圧延を行う。この場合、上述のように押しつけ力の大きさによっては、適切な開先形状を付与することができない。よって、仕上圧延機ではこのような間隙を設けないで圧延を行えばよいと考えられる。
(4)そこで、仕上圧延前、すなわち前工程の中間圧延機(エッジャー圧延機)で未充満部をできるだけなくしフランジ幅および開先形状を概ね整えてから、仕上圧延機(仕上ユニバーサル圧延機)でフランジ形状も含めて整形することで、仕上圧延機でロール間の間隙を設けないで圧延してもフランジの先端部が未充満とならないようにすることを考えた。
(5)未充満部となりやすいのはフランジの先端面であるルートフェイスと開先面の境目近傍である。このことから、圧延ロールにおけるルートフェイスを形成するルートフェイス形成部と開先面を形成する開先面形成部が一定の角度をもって接する(例えば、特許文献2に記載の溝形鋼では90°)のではなく、フランジのルートフェイス形成部の両端からそれぞれフランジの両側面に向かって開先面形成部の角度が徐々に変化し、上凸の湾曲面が形成され、続いて下凸の湾曲面が形成されている(言い換えれば、圧延ロールの断面を見た場合、少なくともルートフェイス形成部近傍の開先面形成部が上凸および下凸の弧を描く)孔型を有する圧延ロールを用いればよい。
(7)このようにして溝形鋼を製造すれば、溝形鋼はそのルートフェイスの両端からフランジの両側面に向かって、順に上凸の湾曲面、下凸の湾曲面が形成された開先形状を有する溝形鋼となる。この場合、ルートフェイス近傍の開先が丸みを帯びる(R部を有する)ことになることから、安全上も取り扱いが容易になる。
前記ブレークダウン圧延機、前記粗ユニバーサル圧延機、前記エッジャー圧延機および前記仕上ユニバーサル圧延機では、前記ウェブとなる部分が前記フランジとなる部分に対して下方に位置するように圧下を行い、
前記エッジャー圧延機では、前記フランジのルートフェイスを形成するためのルートフェイス形成部の両端からそれぞれ前記フランジの両側面を形成するためのフランジ側面形成部に向かって延びる、前記フランジの開先面を形成するための開先面形成部を有し、当該開先面形成部が、前記ルートフェイス形成部の両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えた孔型を有する圧延ロールを用いて、フランジ先端およびフランジ内側面を拘束、フランジ外側面を開放して圧下を行い、
前記仕上ユニバーサル圧延機では、前記フランジのルートフェイスを形成するためのルートフェイス形成部の両端からそれぞれ前記フランジの両側面を形成するためのフランジ側面形成部に向かって延びる、前記フランジの開先面を形成するための開先面形成部を有し、当該開先面形成部が、前記ルートフェイス形成部の両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えた孔型を有する圧延ロールを用いて、フランジ先端およびフランジ両側面を拘束して圧下することを特徴とする。
また、エッジャー圧延機では、ルートフェイス形成部の両端からそれぞれフランジ側面形成部に向かって延びる開先面形成部がルートフェイス形成部の両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えた孔型を有する圧延ロールを用いて、フランジ先端およびフランジ内側面を拘束、フランジ外側面を開放して圧下を行い、仕上ユニバーサル圧延機では、ルートフェイス形成部の両端からそれぞれフランジ側面形成部に向かって延びる開先面形成部の角度が徐々に変化し、上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えた孔型を有する圧延ロールを用いて、フランジ先端およびフランジ両側面を拘束して圧下する。
孔型において、未充満部となりやすいのはフランジの先端面であるルートフェイスと開先面の境目近傍であるが、ルートフェイス形成部の両端からフランジ側面形成部に向かって延びる開先面形成部がルートフェイス形成部の両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えているので、孔型に鋼材が十分に流動して、フランジの先端部が鋼材で充満となり開先形状を適切に形成することができる。したがって、開先部の高さや幅が均一である溝形鋼を製造できる。
前記フランジの先端に、前記ウェブと平行な面を有するルートフェイスと、当該ルートフェイスの端から前記フランジの両側面に向かって延びる開先面を有し、当該開先面は、前記ルートフェイスの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えていることを特徴とする。
図1は、本実施形態の溝形鋼の製造ラインの概略構成を模式的に示すものである。
この製造ラインには、上流側からブレークダウン圧延機10、粗ユニバーサル圧延機11、エッジャー圧延機12、仕上ユニバーサル圧延機13の順に各圧延機が配置されている。
なお、エッジャー圧延機12と仕上ユニバーサル圧延機13との間に第2の粗ユニバーサル圧延機を配置してもよい。
エッジャー圧延機12は、図2(a)に示すように、上下一対の水平圧延ロール31,32を備えている。なお、図2(b)は図2(a)におけるX円部の拡大図である。
また、図2(b)に示すように、水平圧延ロール31は、ルートフェイス形成部31aを有している。ルートフェイス形成部31aは、溝形鋼のウェブと平行な平坦面であり、水平圧延ロール31は、ルートフェイス形成部31aの両端からそれぞれフランジの両側面を形成するためのフランジ側面形成部31d,31dに向かって延びる、フランジの開先面を形成するための開先面形成部31b,31cを有している。開先面形成部31b,31cは、ルートフェイス形成部31aの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面31eおよび下凸の湾曲面31fを有している。したがって、ルートフェイス形成部31aと、開先面形成部31b,31cとの接線で角度が急に変化することなく、滑らかにルートフェイス形成部31aと開先面形成部31b,31cとが接続されている。
圧延の際に鋼材が未充満部となりやすいのはフランジの先端面であるルートフェイスと開先面の境目近傍であるが、本実施形態では、ルートフェイス形成部31aと、開先面形成部31b,31cとが滑らかに接続されているので、孔型に鋼材が十分に流動して、フランジの先端部が鋼材で充満となり開先形状を適切に形成することができる。
図3(b)に示すように、上の水平圧延ロール33は、フランジのルートフェイスを形成するためのルートフェイス形成部33aを有している。ルートフェイス形成部33aは、溝形鋼のウェブと平行な平坦面であり、水平圧延ロール33は、ルートフェイス形成部33aの両端からそれぞれフランジの両側面を形成するフランジ側面形成部35d,33dに向かって延びる、フランジの開先面を形成するための開先面形成部33b,33cを有している。開先面形成部33b,33cは、ルートフェイス形成部33aの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面33eおよび下凸の湾曲面33fを有している。したがって、ルートフェイス形成部33aと、開先面形成部33b,33cとの接線で角度が急に変化することなく、滑らかにルートフェイス形成部33aと開先面形成部33b,33cとが接続されている。
なお、図3(b)において、水平圧延ロール33と垂直圧延ロール35との間には、水平圧延ロール33と垂直圧延ロール35とを区別し易いように、隙間が形成されているが、実際には、水平圧延ロール33と垂直圧延ロール35との間に隙間はない。
すなわち、ルートフェイス形成部33aの両端からそれぞれフランジ側面形成部35d,33dに向かって延びる開先面形成部33b,33cがルートフェイス形成部33aの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面33eおよび下凸の湾曲面33fを備えた孔型を有する水平圧延ロール33,34および垂直圧延ロール35,36を用いて、フランジ先端およびフランジ両側面を拘束して圧下する。
圧延の際に鋼材が未充満部となりやすいのはフランジの先端面であるルートフェイスと開先面の境目近傍であるが、本実施形態では、ルートフェイス形成部33aと、開先面形成部33b,33cとが滑らかに接続されているので、孔型に鋼材が十分に流動して、フランジの先端部が鋼材で充満となり開先形状を適切に形成することができる。
また、エッジャー圧延機12では、ルートフェイス形成部31aの両端からそれぞれフランジ側面形成部31d,31dに向かって延びる開先面形成部31b,31cがルートフェイス形成部31aの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面31eおよび下凸の湾曲面31fを備えた孔型を有する水平圧延ロール31,32を用いて、フランジ先端およびフランジ内側面を拘束、フランジ外側面を開放して圧下を行い、仕上ユニバーサル圧延機13では、ルートフェイス形成部33aの両端からそれぞれフランジ側面形成部35d,33dに向かって延びる開先面形成部33b,33cがルートフェイス形成部33aの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面33eおよび下凸の湾曲面33fを備えた孔型を有する水平圧延ロール33,34および垂直圧延ロール35,36を用いて、フランジ先端およびフランジ両側面を拘束して圧下する。
孔型において、未充満部となりやすいのはフランジ22の先端面であるルートフェイス23と開先面24,25の境目近傍であるが、ルートフェイス形成部31a,33aの両端からフランジ側面形成部31d,31d,35d,33dに向かって延びる開先面形成部31b,31c,33b,33cがルートフェイス形成部31aの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面31eおよび下凸の湾曲面31fを備えているので、孔型に鋼材が十分に流動して、フランジ22の先端部が鋼材で充満となり開先形状を適切に形成することができる。したがって、開先部の高さや幅が均一である溝形鋼を製造できる。
次に実験例について説明する。
まず、ブレークダウン圧延機10により粗圧延を行い圧延素材(スラブ)Mをおおかた凹形状の粗形鋼片RSとした。続く中間圧延では、粗ユニバーサル圧延機11でウェブ厚,フランジ厚を整えるとともに、エッジャー圧延機12でフランジ幅を整えて中間圧延材RMとした。そして、この中間圧延材RMに対し仕上ユニバーサル圧延機13によりさらに圧延を行い、フランジの先端の内外面に開先を有する溝形鋼CSに仕上げた。
この際、フランジの先端形状は、エッジャー圧延機12および仕上ユニバーサル圧延機13の圧延に大きく依存することから、エッジャー圧延機12で用いる孔型の形状および圧延方法、ならびに仕上圧延における仕上ユニバーサル圧延機13で用いる孔型の形状および圧延方法を変化させ、様々な条件で圧延を行った。
エッジャー圧延機12および仕上ユニバーサル圧延機13による圧延について、本発明例および比較的1~3の孔型の形状と圧延方法を表1に記載し、製造した溝形鋼のフランジの先端形状についても表2に記載した。
仕上ユニバーサル圧延機13について、比較例1および2では、図7に示すように、水平圧延ロール42は、凸型のルートフェイス形成部42aの両端からそれぞれフランジの両側面を形成するフランジ側面形成部35d,42dに向かって延びる、開先面形成部42b,42cの角度が一定の孔型を有し、比較例3では、図8に示すように、水平圧延ロール43が開先面形成部43bを有し、垂直圧延ロール45が開先面形成部45bを有している。開先面形成部43bと開先面形成部45bとの間には、フランジの先端に相当する位置に間隙(逃がし空間)Sを設けている。
11 粗ユニバーサル圧延機
12 エッジャー圧延機
13 仕上ユニバーサル圧延機
21 ウェブ
22 フランジ
23 ルートフェイス
24,25 開先面
26a 上凸の湾曲面
26b 下凸の湾曲面
31 水平圧延ロール(圧延ロール)
31e 上凸の湾曲面
31f 凸の湾曲面
33 水平圧延ロール(圧延ロール)
33e 上凸の湾曲面
33f 凸の湾曲面
35 垂直圧延ロール(圧延ロール)
31a,33a ルートフェイス形成部
31b,31c,33b,33c 開先面形成部
31d,33d,35d フランジ側面形成部
RS 粗形鋼片
RM 中間圧延材
CS 溝形鋼
Claims (2)
- 圧延素材にブレークダウン圧延機を用いて粗圧延を行って粗形鋼片とし、該粗形鋼片に少なくとも1基の粗ユニバーサル圧延機と、エッジャー圧延機とを用いて中間圧延を行って中間圧延材とし、該中間圧延材に仕上ユニバーサル圧延機を用いて仕上圧延を行うことにより、ウェブおよび2つの平行なフランジを有する溝形鋼を製造する方法であって、
前記ブレークダウン圧延機、前記粗ユニバーサル圧延機、前記エッジャー圧延機および前記仕上ユニバーサル圧延機では、前記ウェブとなる部分が前記フランジとなる部分に対して下方に位置するように圧下を行い、
前記エッジャー圧延機では、前記フランジのルートフェイスを形成するためのルートフェイス形成部の両端からそれぞれ前記フランジの両側面を形成するためのフランジ側面形成部に向かって延びる、前記フランジの開先面を形成するための開先面形成部を有し、当該開先面形成部が、前記ルートフェイス形成部の両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えた孔型を有する圧延ロールを用いて、フランジ先端およびフランジ内側面を拘束、フランジ外側面を開放して圧下を行い、
前記仕上ユニバーサル圧延機では、前記フランジのルートフェイスを形成するためのルートフェイス形成部の両端からそれぞれ前記フランジの両側面を形成するためのフランジ側面形成部に向かって延びる、前記フランジの開先面を形成するための開先面形成部を有し、当該開先面形成部が、前記ルートフェイス形成部の両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えた孔型を有する圧延ロールを用いて、フランジ先端およびフランジ両側面を拘束して圧下することを特徴とする溝形鋼の製造方法。 - ウェブおよび2つの平行なフランジを有する溝形鋼であって、
前記フランジの先端に、前記ウェブと平行な面を有するルートフェイスと、当該ルートフェイスの端から前記フランジの両側面に向かって延びる開先面を有し、当該開先面は、前記ルートフェイスの両端から角度が徐々に変化し、かつ上凸の湾曲面および下凸の湾曲面を備えていることを特徴とする溝形鋼。
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