JP3601879B2 - 表示材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭剤,芳香剤,防カビ剤,殺虫剤,防虫剤等において有効成分として用いられる揮発性の油状物質の経時的揮散の程度を知らせる表示材料に係り、特に、前記の油状物質を不織布に含浸させてその経時的揮散の程度を知らせる表示材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
常温揮発性または加温揮発性の油状物質を有効成分として用い、当該有効成分を所定の保持体に含浸させた消臭剤、芳香剤、防カビ剤、殺虫剤、防虫剤等は、取扱い性が良い、性能が優れている等の利点により、従来から用いられている揮発性のゲルまたは固体を有効成分とするものに代わって用いられてきている。上記の油状物質の中には無臭のものが多く、当該無臭の油状物質を保持体中に含浸させて利用した場合、その残存量はおろかその消滅時点さえも人の嗅覚によって確認するのは困難である。このため、油状物質の残存量や消滅時を視覚を通じて利用者に知らせることが可能な表示材料が種々開発されている。
このような表示材料のうちで、上記の油状物質を不織布に含浸させてその経時的揮散の程度を視覚を通じて利用者に知らせることが可能な表示材料としては、次の2つが提案されている。
【0003】
1つは、油液(油状物質)含有時に透明状に変性される油液透過性の紙状材(不織布を含む)の一片面を表示面とし、この紙状材の他片面上に油液不透過性の模様層を全面乃至は部分的に形成することによって基材となし、この基材中に常温揮発性の油液性防虫剤を含有させた防虫能表示兼用防虫材である(特公平4−36122号公報参照)。
【0004】
この防虫能表示兼用防虫材では、紙状材に油液性防虫剤が含有されているときには当該紙状材が透明状に変性することから、その背面に設けられている模様層を目視し得るが、油液の揮散に伴って紙状材が徐々に元来の不透明状態となることから、その背面に設けられている模様層が徐々に目視できなくなる。したがって、紙状材側から目視することができる模様層の程度によって、その利用者は油液(防虫薬剤)の経時的揮散の程度を視覚を通じて知ることが可能である。
【0005】
他の1つは、常温揮散性液剤を含有する液剤浸透性の基材シート(不織布を含む)の面上であって上記含有液剤の揮散の早遅に対応した部分に順に、上記液剤が浸透したときに透明状に変性される着色料を期間表示層として層状に塗布した期間表示器である(実開平5−14983号公報参照)。この期間表示器は、常温揮散性液剤を含有させた基材シートを水平に保持すると常温揮散性液剤が当該基材シート面上の縁部から順に揮散し易く、常温揮散性液剤を含有させた基材シートを鉛直面に沿って保持すると常温揮散性液剤が基材シートの上部から順に揮散し易いことを利用したものであるので、当該期間表示器について予め想定した設置方法に応じて、所定形状の期間表示層が順に設けられる。
【0006】
上記の期間表示器では、基材シートに液剤が含有されているときには当該液剤が期間表示層にも浸透することから期間表示層は透明状を呈するが、基材シート中の液剤の揮散に伴って期間表示層に浸透する液剤の量が減少し、これに伴って期間表示層が目視できるようになる。したがって、どの期間表示層まで目視できるようになったかによって、その利用者は液剤の経時的揮散の程度を視覚を通じて知ることが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の不織布に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸させた場合、当該不織布からの油状物質の揮散は均一には起こらない。このため、紙状材として従来の不織布を用いて上述した防虫能表示兼用防虫材と同一構成の表示材料を作製した場合には、油状物質の揮散に伴って紙状材の背面に設けられている模様層が徐々に目視できなくなるものの、その見え方は紙状材(不織布)の部分部分で異なり、斑に見える。そのため、このような表示材料では経時での油状物質の揮散の程度を明瞭に表示することが困難である。
【0008】
また、従来の不織布の油状物質に対する保液性は比較的低い。すなわち、不織布の不織布空隙量と同量以下の油状物質を当該不織布に含浸させたときに、前記の油状物質が漏れ出ないようにこれを保持する能力が比較的低い。このため、紙状材として従来の不織布を用いて上述した防虫能表示兼用防虫材と同一構成の表示材料を作製した場合には、比較的少量の油状物質しか表示材料中に含有させることができない。
【0009】
一方、基材シートとして従来の不織布を用いて上述した期間表示器と同一構成の表示材料を作製した場合でも、油状物質の経時的揮散の程度は期間表示層によって比較的明瞭には表示されない。また、当該表示材料においても比較的少量の油状物質しか含有させることができない。さらに、当該表示材料の作製時に想定していた設置方法以外の方法で設置された場合、例えば斜めや上下逆に設置された場合には、実際に経過した期間とは異なる期間を示す期間表示層が目視されることとなるので、その設置場所や設置方法が制限される。
【0010】
本発明の目的は、設置場所や設置方法を選ばず、油状物質の消滅時点のみならず、経時での当該油状物質の揮散の程度を明瞭に表示することができる表示材料を提供することにある。
【0011】
【発明を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の表示材料は、光に対して低屈折率の保持体の片面に一部または全面が着色されている樹脂層を設け、前記保持体中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸せしめたものであり、前記保持体側から前記樹脂層側をみたときに、前記油状物質の経時的揮散により前記樹脂層が目視可能な状態から前記保持体によって隠ぺいされた状態へと移行する表示材料において前記保持体が、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む不織布よりなり、保持体である不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面に、前記樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色で、油状物質の揮散が終了した旨を表示する印刷部が設けられていることを特徴とする(以下、この表示材料を「表示材料I」という)
【0012】
また、上記の目的を達成する本発明の他の表示材料は、光に対して低屈折率の保持体の片面に一部または全面が着色されている樹脂層を設け、前記保持体中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸せしめたものであり、前記保持体側から樹脂層側をみたときに、前記油状物質の経時的揮散により前記樹脂層が目視可能な状態から前記保持体によって隠ぺいされた状態へと移行する表示材料において記保持体が、密度を部分的に変化させた不織布からなることを特徴とする(以下、この表示材料を「表示材料II」という)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
先ず、本発明の表示材料Iについて説明する。
本発明の表示材料Iは、図5にその概略を示すように、光に対して低屈折率の保持体21の片面に一部または全面が着色されている樹脂層22を設け、保持体21中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質(図示せず)を含浸させたものである。そして、この表示材料Iでは、光に対して低屈折率の保持体として、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む不織布が用いられる。ここで、「光に対して低屈折率の不織布」とは、当該不織布を構成している繊維の屈折率が低いことを意味し、屈折率の値としては2.0以下が好ましく、より好ましくは1.7以下である。
【0014】
上記の不織布は、元来は不透明であるが後述する常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸させたときには実質的に透明化して、当該不織布の片面に設けられている樹脂層の色(着色部分の色)を不織布側から容易に目視することができるものであれば良い。当該不織布を構成している繊維の屈折率は、含浸させようとする油状物質の屈折率に近似していることが好ましいが、油状物質を含浸させたときに不織布全体が実質的に透明化しさえすれば、当該不織布は実質的に不透明の繊維を含有していても良い。
【0015】
保持体として使用する不織布を「繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む不織布」に限定する理由は、次の通りである。すなわち、繊度が2デニールを超える繊維によって不織布が構成されている場合には、その繊維間に油状物質を保持する能力が低いために、当該不織布に油状物質を含浸させても油状物質が漏れ出てしまい易く、特に地面に対して垂直に立てて置いたり、吊り下げたりした場合は油状物質が下方向に垂れてしまい易い。しかしながら、不織布中に上記の細デニール繊維を含ませることにより油状物質をより強く、より均一に保持させることが可能になり、これにより、不織布に含浸させた油状物質をより均一に揮散させることが可能になる。油状物質が均一に揮散した場合には、最終的に得られる表示材料において樹脂層が目視可能な状態から隠ぺい状態へと移行する過程が均一に起こり、表示材料としての色変化が明瞭となる結果、経時での油状物質の残量をより明瞭に表示することが可能になる。したがって、表示材料Iでは「繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む不織布」を保持体として使用する。
【0016】
不織布中に占める上記の「繊度が2デニール以下の細デニール繊維」の割合は9〜100重量%であることが好ましく、特に20〜100重量%であることが好ましい。また、上記の細デニール繊維は、繊度が1デニール以下であることが好ましい。
【0017】
細デニール繊維としては、後述する常温揮発性または加温揮発性の油状物質をできるだけ均一に保持することができる不織布を得るうえから、形状が一定でストランド状である人造繊維が好ましく、特にアクリル,ポリエステル,ポリプロピレン,ビニロン,ナイロン等の人造繊維が好ましい。元来は不透明であるが油状物質を含浸させたときには実質的に透明化する不織布が最終的に得られさえすれば、上記の細デニール繊維は白色顔料を含有した繊維(SD:セミダル,D:ダル)のような不透明繊維であっても良いが、二酸化チタン等の白色顔料を全く含まないかまたは殆ど含まない実質的に透明な繊維(SB:スーパーブライト,B:ブライト)であることが好ましい。実質的に透明な繊維と不透明繊維とは、併用しても良い。
【0018】
上述した細デニール繊維を含む不織布は、如何なる方法により製造されたものでも良いが、比較的低密度の不織布が製造できる乾式法よりも、非常に均一な不織布を製造することができ、かつ、不織布の密度調整が容易であるという点から、湿式抄紙法によって製造されたものがより好ましい。ここでいう湿式抄紙法とは、水中に繊維を低濃度で分散させ、必要に応じて分散剤,粘剤,凝集剤等の添加剤を加えた後、円網抄紙機,長網抄紙機,傾斜型抄紙機,あるいは2種以上の抄紙機を組み合わせたコンビネーション型抄紙機を用いて不織布を製造する方法をいう。湿式抄紙法により目的とする不織布を製造した場合には、繊維分布の均一性つまり地合いが非常に良い不織布を得ることができ、このような不織布に後述する油状物質を含浸させた場合には当該油状物質の分布がより均一となり、従って油状物質の揮散の程度もより均一化する。その結果として、最終的に得られる表示材料において樹脂層が目視可能な状態から隠ぺい状態へと移行する過程がより均一に起こり、表示材料としての変化がより明瞭となる。
【0019】
不織布の製造にあたっては、上述した細デニール繊維のみを材料として用いてもよし、上述した細デニール繊維以外の繊維、例えば、バインダー機能を有する繊維や繊度が2デニール超える人造繊維、あるいは木材パルプ,木綿,麻等の天然繊維を併用しても良い。特に、バインダー機能を有する繊維の併用は不織布に強度を持たせるうえから好ましい。バインダー繊維としては、熱により一部または全部が軟化ないし溶融して隣接する繊維と融着する熱融着繊維,熱水によって一部または全部が溶解し、乾燥する際に繊維同士を結合させるビニロン系バインダー繊維等が好ましく用いられる。一方、天然繊維を併用する場合には、当該天然繊維は後述する油状物質によって完全に濡らすことが困難であり、油状物質で濡れない部分は白く不透明化するので、後述する油状物質を含浸させたときに実質的に透明化する不織布が得られるように、その使用量を適宜選択する。
【0020】
なお、表示材料Iを構成する不織布中には、最終的に得られる表示材料において樹脂層が目視可能な状態から隠ぺい状態へと移行する過程がより明瞭に目視されるように、多孔性シリカに代表される無機顔料等の光に対する屈折率が低い物質を含有させても良い。また、製造した不織布には、所望の特性を有するように熱処理,樹脂含浸,カレンダー処理等の後処理を施しても良い。湿式抄紙法により不織布を製造した場合には、不織布を構成している繊維同士を互いに絡み合わせることによって当該不織布の強度を更に高めることを目的として、カード法,ニードルパンチ法,スパンレース法等による後処理(二次加工)を行ってもよい。
【0021】
上述した不織布の坪量は、当該不織布に含浸させようとする油状物質の量に応じて異なるが、一般に20〜200g/m とすることが好ましい。また、不織布の密度は0.1〜0.5g/cm が好ましい。密度が0.1g/cm よりも低い場合には油状物質を保持する能力に劣り、液垂れする恐れがあるので好ましくない。また、密度が0.5g/cm よりも高い場合には、油状物質を保持する能力に問題はないが、単位面積当たりの油状物質の保液量が少なくなるので、実用的な表示材料Iを得るためには非常に大きな面積の表示材料(不織布)が必要となる。不織布の単位面積当たりの油状物質の保液量は、概ね当該不織布の持つ不織布空隙量以下であるので、表示材料Iを構成する不織布の不織布空隙量は実用上50cm /m 以上であることが好ましく、特に50〜1800cm /m であることが好ましい。ここで、本発明でいう不織布空隙量とは次式によって求めた数値を意味する。
【0022】
【数1】
Figure 0003601879
【0023】
表示材料Iにおいては、上述した不織布の片面に一部または全面が着色された樹脂層が設けられている。この樹脂層は、上述した不織布に含浸させる油状物質に対して耐性を有する事が必要で、上述した不織布に含浸させる油状物質に溶解する樹脂は好ましくない。樹脂層としては、加工のし易さ、着色または印刷のし易さ等から熱可塑性樹脂よりなる層が好ましい。中でもポリオレフィン樹脂は、ほとんどあらゆる油状物質に対して耐性を有し、かつ、溶融ラミネート適性および均一なフィルム形成能を有するという点で、樹脂層の材料として好ましい。ポリオレフィン樹脂の中でもさらに好ましくは、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂である。
【0024】
一部または全面が着色された上述の樹脂層を形成する方法の具体例としては、例えば下記(1)〜(2)の方法が挙げられる。
(1)不織布の片面に当該片面を被覆する樹脂層被覆層を設けた後、有色インク等を用いた印刷法によって当該樹脂層の表面を着色する方法
この方法での上記の樹脂被覆層の形成は、塗布法,接着剤を用いる方法,溶融押出塗工法等によって行うことができる。
塗布法による上記の樹脂被覆層の形成は、例えば、溶媒に樹脂を溶解させることによって調製した塗液を不織布の片面に塗布し、乾燥させることによって行うことができる。また、接着剤を用いる方法による上記無着色の樹脂被覆層の形成は、例えば、樹脂フィルムをドライラミネート法やウェットラミネート法等によって不織布の片面に接着させることにより行うことができる。そして、溶融押出塗工法による上記の樹脂被覆層の形成は、例えば、熱可塑性樹脂を不織布の片面に溶融押出塗工することによって行うことができる。
【0025】
(2)不織布の片面に、全面が着色された樹脂被覆層を直接形成する方法
この方法での上記全面が着色された樹脂被覆層の形成は、接着剤を用いる方法や溶融押出塗工法等によって行うことができる。
接着剤を用いる方法による上記全面が着色された樹脂被覆層の形成は、例えば、全面が着色されている樹脂フィルムをドライラミネート法やウェットラミネート法等によって不織布の片面に接着させることにより行うことができる。また、溶融押出塗工法による上記全面が着色された樹脂被覆層の形成は、例えば、無色の熱可塑性樹脂と群青,コバルトブルー等の有色顔料を高濃度に分散させたマスターバッチとを押出塗工機内で溶融混合し、この混合物を不織布の片面に溶融押出塗工することによって行うことができる。
【0026】
上述した(1)および(2)の方法のいずれにおいても、均一でピンホールのない樹脂層が得られるという点から、溶融塗工法がより好ましく用いられる。
【0027】
本発明の表示材料Iは、前述した不織布の片面に上述した樹脂層を設け、かつ、前記の不織布中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸させたものである。ここで、本発明でいう「常温揮発性の油状物質」とは、最終的に得た表示材料および当該表示材料が使用される場所の雰囲気を人為的に加熱しなくても当該表示材料が使用される雰囲気温度下で揮発する油状物質を意味し、「加温揮発性の油状物質」とは、最終的に得た表示材料が使用される場所の雰囲気において適当な加熱手段により加熱しないと揮発しない油状物質を意味する。常温揮発性の油状物質および加温揮発性の油状物質についての意味は、本発明の表示材料Iおよび後述する表示材料IIに共通するものである。
【0028】
上記の常温揮発性または加温揮発性の油状物質としては、目的とする表示材料Iの用途に応じて、例えば常温揮発性または加温揮発性の油状性芳香剤,油状性消臭剤,油状性防虫剤,油状性殺虫剤等が用いられる。
【0029】
常温揮発性または加温揮発性の油状性芳香剤や油状性消臭剤の具体例としては、ベンズアルデヒド,α−ピネン,ゲラニオール,シトロネラール,リナロール,リモネン,メントール酢酸リナリル,アミルシンナミックアルデヒド,アンスラニン酸メチル,イソオイゲノール,カプロン酸アリル,酢酸イソブチル,酢酸ベンジル,サリチル酸イソアミル,シトラール,デシルアルデヒド,ヒドロキシシトロネラール,酢酸イソアミル等を成分とするものや、芳香消臭効果のある植物精油、例えばビターアーモンド油,ヒノキ油,ナツメグ油,ゼラニウム油,ラベンダー油,ライム油,ペパーミント油,ベチパー油,スウィートオレンジ油,タイム油等が挙げられる。
【0030】
また、常温揮発性または加温揮発性の油状性防虫剤もしくは油状性殺虫剤の具体例としては、α−ピネン,オイゲノール,ツヨン,チモール,ヒノキチオール,シンナミックアルデヒド等を成分とするものや、防虫効果または殺虫効果のある植物精油、例えばナツメグ油,チョウジ油,セージ油,タイム油,ラベンダー油,バジル油,ヒノキ油等が挙げられる。
【0031】
不織布中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸させる方法に特に制限はないが、油状物質に不織布を浸漬した後にプレス等を用いて搾って所定の含浸量に調整する方法、不織布に油状物質をシリンジ等を用いて直接滴下して所定の含浸量に調整する方法等が一般には用いられる。このときの油状物質の含浸量は、当該油状物質を含浸させることによって不織布が実質的に透明化する量であれば良く、この量は、不織布の不織布空隙量や目的とする表示材料Iの用途等に応じて、概ね当該不織布の不織布空隙量以下の範囲内で適宜選択可能である。
【0032】
本発明の表示材料Iは、片面に所定の樹脂層を設けた不織布に上述のようにして常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸させることにより得られる。当該表示材料Iは、この状態のまま用いても良いが、一般的には常温揮発性または加温揮発性の油状物質と回りの物との接触を避けるために、プラスティク,紙,金属等の容器の中に入れた後に所望する場所へ設置して使用することが好ましい。この場合、容器の外から表示材料Iの変化、すなわち、不織布側から樹脂層側をみたときの色変化が見てとれるように、容器の一部に窓等を設置することが好ましい。
【0033】
上述した表示材料Iは、例えば揮発性の油状物質が常温揮発性防虫剤である場合には、そのまま洋服タンス内等に設置して使用することができる。また、揮発性の油状物質が常温揮発性消臭剤である場合には、そのまま室内,トイレ内,玄関内,車内,冷蔵庫内等に設置して使用することができる。揮発性の油状物質が常温揮発性芳香剤である場合には、そのまま室内,トイレ内,玄関内,車内等に設置して使用することができる。そして、揮発性の油状物質が加温揮発性の殺虫剤である場合は、電気蚊取り器等で利用されている加熱手段と組み合わせて、室内に設置して使用することができる。
【0034】
上述のようにして使用される表示材料Iでは、不織布に十分な量の油状物質が含浸しているときには当該不織布が実質的に透明化して、不織布の片面に設けられている樹脂層における着色部分の色が不織布側から見た場合でもはっきりと認識出来る。しかしながら、不織布中の油状物質の揮散は樹脂層とは反対側から起こり、油状物質の経時的揮散により不織布が徐々に不透明化して最終的には不透明状態となるので、不織布側から樹脂層側を見たときには、油状物質の経時的揮散により、樹脂層が目視可能な状態から不織布によって隠ぺいされた状態へと徐々に移行する。そして、この移行に伴って、不織布側から樹脂層側を見たときに目視される色は樹脂層における着色部分の色から不織布自身の色へと徐々に変化する。すなわち、表示材料Iは、不織布に含浸させた常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散の程度に応じて、樹脂層における着色部分の色から不織布自身の色へと徐々に連続的に変化していく。したがって、この色の変化を見る事により、常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散の程度を一目で認識することができる。
【0035】
さらに、本発明の表示材料Iにおいては、図6に示す様に、不織布21において樹脂層22が設けられている面21aとは反対側の面21bに、樹脂層22における着色部分より淡い濃度の同系色で、不織布21中に含浸させた常温揮発性または加温揮発性の油状物質(図示せず)の揮散が終了した(消失した)旨を表示する文字,印等からなる印刷部23を印刷法等によって設けることにより、不織布21に含浸させた油状物質の揮散(消失)をより効果的に知らせることが可能になる。ここで、「樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色」とは、樹脂層における着色部分と同じ色もしくは同じ色調で、濃度が薄い色を意味する。なお、図6において図5と共通する部材については、図5と同じ符号を付してある。
【0036】
上記の印刷部23は、文字,記号,絵等、何でもよく、例えば文字としては「おとりかえください」、「揮発終了」、「おわり」、「END」等が、記号では「×」等が用いられる。また、当該印刷部23を設ける方法に特に制限はなく、いかなる印刷法を用いても良いが、スクリーン印刷法,グラビア印刷法,オフセット印刷法,凸版印刷法,インクジェット印刷法等が用いられる。
【0037】
印刷部23は、樹脂層22における着色部分より淡い濃度の同系色で設けられているので、油状物質を含浸させたことによって不織布21が透明化している場合には、不織布21側から樹脂層22側を見ても樹脂層21の着色部分の色と同化するために判読できない。しかしながら、油状物質が揮散(消失)するに従って不織布21が徐々に不透明化して樹脂層22における着色部分の色が薄く目視されるようになり、これに伴って不織布21上に設けられている印刷部23が徐々に判読できるようになる。これにより、不織布21に含浸させた常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散(消失)をより効果的に知らせることができる。
【0038】
なお、表示材料Iにおいては、不織布に含浸させた常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散の程度を効果的に知らせるうえから、不織布の色(不織布自身を目視したときに視認される色。以下同じ。)を白色もしくは白色に近い有色にし、樹脂層における着色部分の色を黒,青,赤,緑,紫等のなるべく濃い色にすることが好ましい。不織布の色と樹脂層における着色部分の色とを前述のように選択することにより両者の色のコントラストが大きくなり、常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散の程度に応じた色変化がより明瞭になる。
【0039】
以上説明した表示材料Iは、不織布に含浸している常温揮発性または加温揮発性の油状物質を揮散させる揮散装置として機能する他、前記の油状物質の揮散量を示すインジケーターの機能をも有しているものである。そして、保持体である不織布は、常温揮発性または加温揮発性の油状物質の収容器として機能する。
【0040】
上記の不織布は繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含んでいるので、このような細デニール繊維を含んでいない不織布よりも油状物質を強く、均一に保持することができ、これにより、不織布に含浸させた油状物質をより均一に揮散させることができる。さらに、表示材料Iでは油状物質の揮散に伴って樹脂層が徐々に不織布によって隠ぺいされてゆくわけであるが、上記の不織布による樹脂層の隠ぺい性は比較的高い。これらのことから、本発明の表示材料Iは、設置場所や設置方法を選ばず、油状物質の消滅時点のみならず、経時での当該油状物質の揮散の程度を明瞭に表示することができる。
【0041】
また、上記の不織布は繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含んでいるので、このような細デニール繊維を含んでいない不織布よりも油状物質についての保液性が比較的高い。したがって、本発明の表示材料Iは比較的多量の油状物質を含有することができる。
【0042】
次に、本発明の表示材料IIについて説明する。
本発明の表示材料IIは、光に対して低屈折率の保持体として用いる不織布がその密度を部分的に変化させたものである点、および当該不織布が繊度2デニール以下の細デニール繊維を含んでいなくても良い点を除いて前述した表示材料Iと同様である。ただし、不織布中に油状物質を強く均一に保持させるうえからは、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含んでいる不織布を用いることが好ましく、このような不織布の具体例としては、表示材料Iの説明の中で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0043】
表示材料IIを構成する不織布においてはその密度が部分的に変化しているので、この不織布には相対的に密度の高い部分と相対的に密度の低い部分とが存在する。当該不織布における「密度の高い部分」(以下「高密度部分」という。)の密度は0.3〜1.0g/cm が好ましく、「密度の低い部分」(以下「低密度部分という。)の密度は0.1〜0.5g/cm が好ましい。ここで、密度が0.1g/cm よりも低い場合は揮発性の油状物質を保持する能力に劣り、液垂れする恐れがあり好ましくない。また、密度が1.0g/cm よりも高い場合には、油状物質を保持する能力に問題はないが、樹脂層が目視可能な状態から不織布によって隠ぺいされた状態へと移行することによって発現する表示機能が明瞭でなくなる。不織布の単位面積当たりの油状物質の保液量は、概ね当該不織布の持つ不織布空隙量以下であるので、表示材料IIに使用する不織布の不織布空隙量は、不織布全体で50cm /m 以上であることが好ましく、特に50〜1800cm /m であることが好ましい。なお、上記において高密度部分と低密度部分とで密度の範囲が一部重複しているが、前者の密度が後者の密度よりも高くなることはないことはもちろんである。
【0044】
高密度部分および低密度部分の配置は、目的とする表示材料IIの用途等に応じて適宜選択可能であり、例えば、不織布における長手方向または短手方向の半分の領域を高密度部分とし、残りの半分を低密度部分とすることができる。また、不織布を平面視したときに高密度部分と低密度部分とが格子模様状,市松模様状,ハニカム状,亀甲模様状または同心円状に配列するように当該高密度部分および低密度部分を配設しても良い。高密度部分が低密度部分によって囲繞されるように両者を配設すると、油状物質の揮散の程度をより明瞭に表示することが可能になる。その理由は次のように推察される。
【0045】
不織布に含浸させた油状物質は低密度部分および高密度部分の双方から揮散するわけであるが、高密度部分からの油状物質の揮散に伴って、低密度部分に含浸していた油状物質が高密度部分へ自然に移行する。高密度部分の一部が不織布の周端に位置するように当該高密度部分を形成すると、油状物質の揮散に伴う低密度部分から高密度部分への油状物質の移行は、当該高密度部分において不織布の周端に位置していない部分からに限定される。一方、高密度部分が低密度部分によって囲繞されるように両者を配設すると、油状物質の揮散に伴う低密度部分から高密度部分への油状物質の移行は当該高密度部分における平面視上の全方向からとなるので、より効率よく油状物質の移行が起こる。したがって、低密度部分によって囲繞されている高密度部分では、周囲の低密度部分において油状物質が消失し終えた後でも油状物質が存在することとなり、表示材料IIを不織布側からみたときの油状物質の揮散に伴う色変化の度合いは、高密度部分と低密度部分とで大きく異なるようになる。その結果として、油状物質の揮散の程度をより明瞭に表示することが可能になる。
【0046】
なお、高密度部分における上記の色変化の進行の度合いは、上述のように、低密度部分から当該高密度部分へ油状物質がどの程度移行してくるかにも拘わっているので、同じ密度の高密度部分同士であっても低密度部分との接し方の違いによって上記の色変化の進行の度合いが変わってくる。したがって、高密度部分を形成するにあたっては、低密度部分との接し方を変えることによって、当該高密度部分において樹脂層が目視可能な状態から隠ぺいされた状態へと移行するのに要する期間を設定することもできる。
【0047】
また、不織布における密度の部分的な変化は、低密度部分と高密度部分の2段階であっても良いし、低密度部分,中密度部分および高密度部分の3段階であっても良いし、4段階以上であっても良い。
【0048】
密度を部分的に変化させた上述の不織布は、乾式法や湿式抄紙法等によって密度が実質的に均一な不織布を得た後、当該不織布の表面の所望箇所を部分的に毛羽立たせることにより、あるいは、当該不織布の所望箇所をプレスロール,熱プレスロール,型付ロール,型押し等によって押圧することにより得ることができる。さらには、密度の異なる不織布同士をつなぎ合わせることによっても得ることができる。不織布の所望箇所を押圧することによって密度が部分的に変化した不織布を得るという方法は、押圧した部分だけその密度が高くなるため加工が容易であり、また密度を変化させたい部分の形状を自由に設定することができることから、不織布の密度を部分的に変化させる方法として好適である。
【0049】
上述のようにして得られる「密度を部分的に変化させた不織布」の坪量は、当該不織布に含浸させようとする油状物質の量に応じて異なるが、一般に20〜200g/m が好ましい。
【0050】
表示材料IIでは、上述した不織布の片面に一部または全面が着色された樹脂層が設けられている。この樹脂層の材質および形成方法は、既に説明した本発明の表示材料Iにおける樹脂層の材質および形成方法と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0051】
また、片面に上記の樹脂層が設けられた不織布に含浸させる常温揮発性または加温揮発性の油状物質としては、前述した表示材料Iと同様に、目的とする表示材料IIの用途に応じて例えば常温揮発性または加温揮発性の油状性芳香剤,油状性消臭剤,油状性防虫剤,油状性殺虫剤等が用いられる。これらの油状物質の具体例としては、前述した本発明の表示材料Iの説明の中で例示したものと同じものが挙げられる。また、油状物質を不織布に含浸させる方法としても、前述した本発明の表示材料Iの説明の中で例示した方法と同じ方法を適用することができる。
【0052】
本発明の表示材料IIは、片面に所定の樹脂層を設けた不織布に上述のようにして常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸させることにより得られる。当該表示材料IIは、この状態のまま用いても良いが、前述した本発明の表示材料Iと同様に、プラスチック,紙,金属等の容器の中に入れた後に所望する場所へ設置して使用することが好ましい。この場合、容器の外から表示材料IIの変化、すなわち、不織布側から樹脂層側をみたときの色変化が見てとれるように、容器の一部に窓等を設置することが好ましい。表示材料IIは、不織布に含浸させた油状物質の種類に応じて、前述した本発明の表示材料Iと同様に所望の場所に設置して使用される。
【0053】
上述のようにして使用される表示材料IIでは、不織布に十分な量の油状物質が含浸しているときには当該不織布が実質的に透明化して、不織布の片面に設けられている樹脂層における着色部分の色が不織布側から見た場合でもはっきりと認識出来る。しかしながら、不織布中の油状物質の揮散は樹脂層とは反対側から起こり、油状物質の経時的揮散により不織布が徐々に不透明化して最終的には不透明状態となるので、不織布側から樹脂層側を見たときには、油状物質の経時的揮散により、樹脂層が目視可能な状態から不織布によって隠ぺいされた状態へと徐々に移行する。この移行に伴って、不織布側から樹脂層側を見たときに目視される色は樹脂層における着色部分の色から不織布自身の色へと徐々に変化する。そして、この色変化は、不織布における高密度部分においてよりも低密度部分においてより早く進行する。したがって、高密度部分における色変化と低密度部分における色変化とを比較して確認することができ、これにより油状物質の揮散の程度がより一層明瞭に認識することができる。
【0054】
本発明の表示材料IIでは、不織布に含浸させた油状物質の揮散(消失)をより効果的に知らせるために、不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面のうちで当該不織布における密度の高い部分の面に、樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色で、油状物質の揮散が終了した旨を表示する印刷部(以下、この印刷部を「印刷部i」という。)を設けても良い。この印刷部iは文字,記号,絵等、何でもよく、例えば文字としては「おとりかえください」、「揮発終了」、「おわり」、「END」等が、記号では「×」等が用いられる。
【0055】
また、不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面のうちで当該不織布における密度の低い部分の面に、樹脂層における着色部分より濃いかもしくは同濃度の同系色で、または不織布と同系色で、油状物質が揮散途中である旨を表示する印刷部(以下、この印刷部を「印刷部ii」という。)を設けても良い。この印刷部iiは文字,記号,絵等、何でもよく、例えば文字としては「使用中です」、「揮発途中」、「効いてます」等が、記号では「→→→」等が用いられる。
さらに、不織布における低密度部分と高密度部分にそれぞれ別個に、または低密度部分と高密度部分の両方に跨るようにして、「→→→」,「↑↑↑↑」等の記号や所望の文字,絵等からなる印刷部iiを不織布と同系色で設けても良い。
【0056】
上述した印刷部iおよび印刷部iiを設ける方法に特に制限はなく、いかなる印刷法を用いても良いが、スクリーン印刷法,グラビア印刷法,オフセット印刷法,凸版印刷法,インクジェット印刷法等が用いられる。
【0057】
不織布における密度の高い部分の面に上述した印刷部iを設けた場合、不織布に油状物質を含浸させた時点では当該不織布が実質的に透明化していることから印刷部iは樹脂層における着色部分の色と同化して目視できないが、油状物質が揮散(消失)するに従って不織布が徐々に不透明化して樹脂層における着色部分の色が薄く目視されるようになって、印刷部iが判読できるようになる。その結果として、よりきめ細かく油状物質の揮散の程度を表示することができる。
【0058】
また、不織布における密度の高い部分の面に上述した印刷部iを設け、密度の低い部分の面に上述した印刷部iiを樹脂層における着色部分の色より濃いかもしくは同濃度の同系色で設けると、次の第1段階〜最終段階のような段階的な表示状態を達成することができる。
【0059】
すなわち、第1段階では不織布が実質的に透明化していることから、不織布側から樹脂層側をみたときには全面が樹脂層における着色部分の色を呈し、油状物質が含浸しているのが確認できる。
【0060】
そして使用開始後しばらくの間を第2段階とすると、この第2段階では、油状物質の揮散に伴う色変化が不織布における高密度部分よりも低密度部分において早く進行することから、印刷部iiが見え始める。ただし、印刷部iiの色が樹脂層における着色部分と同濃度の同系色の場合には、この印刷部iiはまだ確認できない。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)では変化は確認できず、樹脂層における着色部分の色を呈している。
【0061】
次の第3段階では、油状物質の揮散に伴う色変化がさらに進行することから、不織布における低密度部分は樹脂層における着色部分の色を淡くした色に目視されるようになり、その結果として、印刷部iiの色が樹脂層における着色部分と同濃度の同系色の場合であっても当該印刷部iiが読み取れる状態になる。しかし、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)では依然として変化が確認できない。
【0062】
その後の第4段階では、油状物質の揮散に伴う色変化がさらに進行して不織布における低密度部分は不織布自身の元色を呈するようになり、この部分については不織布によって樹脂層が隠ぺいされる。そのため、印刷部iiが明瞭に表示される。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)も淡色に変化するが、印刷部iが淡色であるため、揮発終了である旨の印刷部iは目視できない。
【0063】
そして最終段階では、不織布に含浸させた油状物質が全て揮散してしまい、色変化の進行の早い部分(不織布における低密度部分)および遅い部分(不織布における高密度部分)の双方が不織布自身の元色を呈するようになり、不織布によって樹脂層が隠ぺいされる。そのため、印刷部iiのみならず印刷部iも明瞭に表示される。すなわち、油状物質の揮散が終了した旨が明瞭に表示される。
【0064】
また、不織布における密度の高い部分の面に上述した印刷部iを設け、密度の低い部分の面に上述した印刷部iiを不織布自身と同じ色で設けると、次の第1段階〜最終段階のような段階的な表示状態を達成することができる。
【0065】
すなわち、第1段階では、不織布が実質的に透明化していることと、印刷部iiが不織布自身と同じ色で設けられていることから、不織布側から樹脂層側をみたときには印刷部iiが明瞭に目視され、他の部分は樹脂層における着色部分の色を呈する。印刷部ii以外の部分が樹脂層における着色部分の色を呈することから、油状物質が含浸しているのが確認できる。
【0066】
そして使用開始後しばらくの間を第2段階とすると、この第2段階では油状物質の揮散に伴う色変化が不織布における高密度部分よりも低密度部分において早く進行するが、印刷部iiが不織布自身と同じ色で設けられていることから、印刷部iiは依然として目視できる。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)では変化は確認できず、樹脂層における着色部分の色を呈している。
【0067】
次の第3段階では、油状物質の揮散に伴う色変化がさらに進行することから、色変化の進行の早い部分(不織布における低密度部分)の色が淡色に変化して印刷部iiが目視され難くなるが、なお目視可能である。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)では依然変化が確認できない。
【0068】
その後の第4段階においては、油状物質の揮散に伴う色変化がさらに進行して不織布における低密度部分は不織布自身の元色を呈するようになる。そのため、不織布自身と同じ色で設けられている印刷部iiが目視できなくなる。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)は淡色に変化するが、印刷部iは樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色で設けられているため、この状態では印刷部iは目視できない。
【0069】
そして最終段階では、不織布に含浸させた油状物質が全て揮散してしまい、色変化の進行の早い部分(不織布における低密度部分)および遅い部分(不織布における高密度部分)の双方が不織布自身の元色を呈するようになる。そのため、不織布自身と同じ色で設けられている印刷部iiは第4段階と同じく目視できないが、樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色で設けられている印刷部iは明瞭に表示される。すなわち、油状物質の揮散が終了した旨が明瞭に表示される。
【0070】
また、不織布における低密度部分と高密度部分にそれぞれ別個に、または低密度部分と高密度部分の両方に跨るようにして、「→→→」,「↑↑↑↑」等の記号や所望の文字,絵等からなる印刷部iiを不織布と同系色で設けると、次の第1段階〜最終段階のような段階的な表示状態を達成することができる。
【0071】
すなわち、第1段階では、不織布が実質的に透明化していることと、印刷部iiが不織布自身と同じ色で設けられていることから、不織布側から樹脂層側をみたときには印刷部ii全体が明瞭に目視され、他の部分は樹脂層における着色部分の色を呈する。印刷部ii以外の部分が樹脂層における着色部分の色を呈することから、油状物質が含浸しているのが確認できる。
【0072】
そして使用開始後しばらくの間を第2段階とすると、この第2段階では油状物質の揮散に伴う色変化が不織布における高密度部分よりも低密度部分において早く進行するが、印刷部iiが不織布自身と同じ色で設けられていることから、印刷部ii全体が依然として目視される。
【0073】
次の第3段階では、油状物質の揮散に伴う色変化がさらに進行することから、色変化の進行の早い部分(不織布における低密度部分)の色が淡色に変化して当該部分上の印刷部iiが目視され難くなるが、なおも目視可能である。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)上の印刷部iiは依然として明瞭に目視される。
【0074】
その後の第4段階においては、油状物質の揮散に伴う色変化がさらに進行して不織布における低密度部分は不織布自身の元色を呈するようになる。そのため、不織布自身と同じ色で設けられている印刷部iiのうちで色変化の進行の早い部分(不織布における低密度部分)上に設けられているものは目視できなくなる。一方、色変化の進行の遅い部分(不織布における高密度部分)は淡色に変化するが、印刷部iiは不織布自身と同じ色で設けられているので、当該部分上の印刷部iiは依然として目視される。
【0075】
そして最終段階では、不織布に含浸させた油状物質が全て揮散してしまい、色変化の進行の早い部分(不織布における低密度部分)および遅い部分(不織布における高密度部分)の双方が不織布自身の元色を呈するようになる。そのため、不織布自身と同じ色で設けられている印刷部ii全体を目視することができなくなる。すなわち、油状物質の揮散が終了した旨が明瞭に表示される。
【0076】
なお、表示材料IIにおいても、前述した本発明の表示材料Iと同様に、不織布に含浸させた常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散の程度を効果的に知らせるうえから、表示材料IIを構成する不織布の色(油状物質を含浸させる前の色)を白色もしくは白色に近い有色にし、樹脂層の色を黒,青,赤,緑,紫等のなるべく濃い色にすることが好ましい。不織布の色と樹脂層における着色部分の色とを前述のように選択することにより両者の色のコントラストが大きくなり、常温揮発性または加温揮発性の油状物質の揮散の程度に応じた色変化が大きく明瞭になる。
【0077】
以上説明した表示材料IIは、不織布に含浸している常温揮発性または加温揮発性の油状物質を揮散させる揮散装置として機能する他、前記の油状物質の揮散量を示すインジケーターの機能をも有しているものである。そして、保持体である不織布は、常温揮発性または加温揮発性の油状物質の収容器として機能する。
【0078】
上記の不織布は密度を部分的に変化させたものであるので、油状物質の経時的揮散に伴う色変化の進行の早い部分(密度の低い部分)と遅い部分(密度の高い部分)とを有している。したがって、表示材料IIは、油状物質の経時的揮散に伴う色変化の進行の早い部分(密度の低い部分)と遅い部分(密度の高い部分)の色変化の違いにより、油状物質の消滅時点のみならず、経時での当該油状物質の揮散の程度を明瞭に表示することができる。また、上記色変化の進行の早い部分および色変化の進行の遅い部分での色変化は、表示材料IIの設置場所や設置方法を実質的に問わずに、それぞれ別個に起きる。したがって、表示材料IIは、不織布側から樹脂層側を見ることができる状態であれば如何なる場所および方法で設置しても使用することが可能である。
【0079】
また、上記の不織布として繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含んでいる不織布を用いた場合には、前述した表示材料Iと同様に、不織布に含浸させた油状物質をより均一に揮散させることが可能になると共に、不織布による樹脂層の隠ぺい性が高まることから、設置場所や設置方法を選ばず、油状物質の消滅時点のみならず、経時での当該油状物質の揮散の程度をより明瞭に表示することができる表示材料IIが得られる。同時に、不織布による油状物質の保液性が比較的高くなるので、比較的多量の油状物質を含有することができる表示材料IIが得られる。
【0080】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は以下の実施例に限られるものではない。なお、部とあるのは重量部を意味する。
【0081】
実施例1〜13(表示材料Iの作製)および比較例1〜2
表1または2に示す繊維配合で、円網抄紙機を用いた湿式抄紙法により抄紙した後、実施例および比較例毎にウエットプレスパート、乾燥パート、カレンダーパートを適宜調節して、保持体としての不織布をそれぞれ作製した。ただし、実施例13のみ乾式法(カード法)により不織布を作製した。これらの不織布の元色は白色を呈しており、屈折率は全ての不織布において1.7以下であった。作製した各不織布の坪量、密度および不織布空隙量を表1または表2に示した。
【0082】
上記の不織布それぞれの片面に、低密度ポリエチレン(日本ユニカー社製NUC8008)に青色群青を1%混合した樹脂組成物を樹脂温度320℃にて溶融押出塗工して、全面が濃青色に着色された樹脂層を形成した。溶融押出塗工にあたっては溶融押出塗工機を用い、樹脂塗工量は20g/m とした。
片面に樹脂層を設けた上記の不織布のそれぞれに、常温揮発性の油状物質である酢酸イソブチルを100g/m 含浸させて、実施例1〜13においては本発明に包含される表示材料Iを、比較例1〜2においては本発明に包含されない表示材料をそれぞれ得た。
【0083】
これらの表示材料のうち、本発明に包含される表示材料Iはいずれも、水平に載置しても、斜めに載置しても、あるいは垂直に吊り下げても、経時での油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示することができた。このことから、当該表示材料Iは設置場所や設置方法を選ばず使用可能であることが確認された。なお、実施例1〜13および比較例1〜2で得られた各表示材料の性能については、それぞれ以下の方法により判定し、評価した。
【0084】
[樹脂層目視性]
表示材料Iについて不織布側から樹脂層側をみたときに、樹脂層の色がどの程度明瞭に目視できたかを判定した。
○:樹脂層の色が明瞭に認識できた。
△:樹脂層の色はやや白色がかっていたが認識できた。
×:樹脂層の色は認識できなかった。
【0085】
[樹脂層隠ぺい性]
表示材料Iを常温下に放置して完全に油状物質を揮散させた時点で不織布側から樹脂層側をみたときの、不織布層による樹脂層の隠ぺい性を判定した。
○:不織布層の隠ぺい性は完全で樹脂層の色は認識できなかった。
○〜△:○と△の中間性能を有していた。
△:不織布層の隠ぺい性はやや不完全で樹脂層の色がやや認識できた。
△〜×:△と×の中間性能を有していた(全く使用に供し得ない×とは異なる)。
×:不織布層の隠ぺい性は不完全で樹脂層の色が認識できた。
【0086】
[表示移行性]
表示材料Iを常温下に放置して、不織布側から樹脂層側をみたときの経時的な色変化を判定した。
○:表示材料は明瞭な色変化を示した。
○〜△:○と△の中間性能を有していた。
△:表示材料はやや不明瞭であるが色変化を示した。
△〜×:△と×の中間性能を有していた(全く使用に供し得ない×とは異なる)。
×:表示材料はほとんど色変化を示さなかった。
【0087】
[保液性]
表示材料Iを垂直に吊り下げ、油状物質が表示材料中に保持される程度を判定した。
○:表示材料中から油状物質が全く漏れ出なかった。
○〜△:○と△の中間性能を有していた。
△:表示材料の下に油状物質の溜まりが認められた。
△〜×:△と×の中間性能を有していた(全く使用に供し得ない×とは異なる)。
×:表示材料から油状物質が漏れ出てきた。
【0088】
【表1】
Figure 0003601879
【0089】
【表2】
Figure 0003601879
【0090】
比較例3
保持体としての不織布を、アクリル繊維(三菱レイヨン社製、0.1d、3mm)50部と熱融着繊維(大和紡社製、NBF−E、2d、5mm)50部の配合で、円網抄紙機を用いた湿式抄紙法により作製した。作製した不織布の坪量は50g/m であり、密度は0.33g/cm であった。樹脂層は設けなかった。
【0091】
比較例4
低密度ポリエチレン(日本ユニカー社製NUC8008)に青色群青を1%混合した樹脂組成物を樹脂温度320℃にて溶融押出塗工して50g/m のフィルムを作製し、樹脂層とした。不織布からなる保持体は設けなかった。
【0092】
表1または2に示した実施例1〜13および比較例1〜2並びに比較例3〜4について樹脂目視性、樹脂隠ぺい性、表示移行性、保液性を判定した結果を表3示す。なお、各特性判定中に別途判明した事項に付いては備考欄に示した。
【0093】
【表3】
Figure 0003601879
【0094】
実施例14(表示材料Iの作製)
実施例1と同様にして保持体としての不織布を作製し、低密度ポリエチレン(日本ユニカー社製NUC8008)に青色群青を混合せずに当該低密度ポリエチレンのみを樹脂層の材料として用いた以外は実施例1と同様にして、前記の不織布の片面に樹脂層を形成した。この後、藍色インク(東洋インキ社製TSP202藍)を用いたオフセット印刷法によって、前記の樹脂層の表面を藍色に印刷した。
この後、上記の不織布に酢酸イソブチルを実施例1と同様にして含浸させて、表示材料Iを得た。
得られた表示材料Iの性能を実施例1と同様にして判定し、評価したところ、実施例1で得た表示材料Iと同様に、設置場所や設置方法を選ばず、経時での油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示することができるものであった。
【0095】
実施例15(表示材料Iの作製)
片面に樹脂層を設けた不織布を実施例1と同様にして作製した後、樹脂層とは反対側の面、すなわち不織布面に、樹脂層の色と同系色でより淡い色である淡青色のインク(東洋インキ社製TSP202藍)を用いて、オフセット印刷法により「おわり」という文字の印刷部を設けた。
この後、実施例1と同様にして酢酸イソブチルを不織布に含浸させて、表示材料Iを作製した。
【0096】
この表示材料Iの作製直後においては「おわり」という文字を認識することができなかったが、酢酸イソブチルの揮散に伴って「おわり」という文字が徐々に認識できるようになり、酢酸イソブチルが完全に揮散した(消失した)時点では「おわり」という文字が明瞭に判読できた。その結果、酢酸イソブチルの消滅をより明瞭に認識することができた。
なお、この表示材料Iは、実施例1で得た表示材料Iと同様に、設置場所や設置方法を選ばず、経時での油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示することができるものであった。
【0097】
実施例16(表示材料Iの作製)
片面に樹脂層を設けた不織布を実施例1と同様にして作製した後、樹脂層とは反対側の面、すなわち不織布面に、不織布の色と同系色である白色のインク(東洋インキ社製TSP202白)を用いて、オフセット印刷法により「揮散中」という文字の印刷部を設けた。
この後、実施例1と同様にして酢酸イソブチルを不織布に含浸させて、表示材料Iを作製した。
【0098】
この表示材料Iの作製直後においては「揮散中」という文字が樹脂層の色である濃青色の中に明瞭に判読できたが、酢酸イソブチルの揮散に伴って「揮散中」という文字が徐々に判読しづらくなり、酢酸イソブチルが完全に揮散した(消失した)時点では「揮散中」という文字を全く判読することができなかった。このように、当該表示材料Iでは酢酸イソブチルの揮散状態をより明瞭に認識することができた。
なお、この表示材料Iは、実施例1で得た表示材料Iと同様に、設置場所や設置方法を選ばず、経時での油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示することができるものであった。
【0099】
実施例17(表示材料IIの作製)
保持体としての不織布を、アクリル繊維(三菱レイヨン社製、0.5d、3mm)50重量部と熱融着繊維(大和紡社製、NBF−E、3d、5mm)50重量部の配合で、円網抄紙機を用いた湿式抄紙法により作製した。作製した不織布の坪量は50g/m で、密度は0.3g/cm であった。
この不織布上面のほぼ半分にプレスロールをかけ、プレスロールによってこの部分を押圧することにより当該部分の密度を高くして、不織布に高密度部分と低密度部分とを形成した。この押圧により形成した高密度部分の密度は0.5g/cm であり、低密度部分(押圧していない部分)の密度は0.3g/cm であった。なお、この不織布の元色は白色を呈している。
【0100】
上記の不織布の片面に実施例1と同様にして樹脂層を形成した。図1は、このようにして得られた不織布−樹脂積層物1の斜視図を示す。同図において、不織布−樹脂積層物1は、全面が着色した樹脂層2と不織布3とからなり、不織布3は、高密度部分3aと低密度部分3bとからなる。
上記のように作製した不織布−樹脂積層物1の不織布3に、酢酸イソブチルを実施例1と同様にして含浸させて、表示材料IIを得た。この表示材料IIの斜視図を図2に示す。図2より、この表示材料11においては、不織布3が、油状物質含浸後の高密度部分3cと低密度部分3dとからなり、高密度部分3c、低密度部分3dのいずれにおいても樹脂層2の濃青色が保持体である不織布3側から明瞭に見ることができた。
【0101】
次にこの表示材料11を水平にして室内に放置したところ、酢酸イソブチルの揮散に伴って、図3に示すように、不織布3の低密度部分3dが濃青色から青色に変色していったが、不織布3の高密度部分3cは濃青色を呈したままの状態であった。さらに放置すると、不織布3の低密度部分3dは青色から淡青色に変色し、一方不織布3の高密度部分3cは濃青色から青色に変化していった。さらに放置すると、不織布3の低密度部分3dは淡青色から白色に変化して、この部分での酢酸イソブチルの揮散はほぼ終了した。一方、不織布3の高密度部分3cは青色から淡青色へ変化していった。最終段階である酢酸イソブチルの芳香臭が消失した時点では、不織布3全面が不織布3の元色である白色へ変化した。
また、この表示材料11を斜めに載置して、または垂直に吊り下げて観察したところ、高密度部分3cの色変化と低密度部分3dの色変化とは、上述したと同様に前後して起こることが確認された。
【0102】
このように、上記の表示材料11では、段階的に青色、淡青色、白色に変化するのが保持体である不織布3の左半分、右半分で前後して起こるため、変色の程度を比較して確認でき、油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示できた。また、この表示材料11は設置場所や設置方法を選ばず使用可能であった。
【0103】
実施例18(表示材料IIの作製)
不織布における高密度部分を、当該不織布における平面視上の略中央部に円形に形成した以外は実施例17と同様にして、表示材料IIを作製した。
図4に示すように、上記の表示材料15においては、不織布16が、油状物質含浸後の高密度部分16aと低密度部分16bとからなる。不織布16の高密度部分16aは平面視上円形を呈し、当該高密度部分16aは不織布16の平面視上の略中央部に形成されている。一方、不織布16の低密度部分16bは高密度部分16aの周囲にあり、当該低密度部分16bは高密度部分16aを囲繞している。高密度部分16a、低密度部分16bのいずれにおいても、不織布16の片面に設けられている樹脂層17の濃青色が保持体である不織布16側から明瞭に見ることができた。
【0104】
上記の表示材料15においては、不織布16に含浸させた酢酸イソブチル(図4中には図示せず)は高密度部分16aおよび低密度部分16bの双方から揮散するわけであるが、高密度部分16aからの酢酸イソブチルの揮散に伴って、低密度部分16bに含浸していた酢酸イソブチルが高密度部分16aへ自然に効率よく移行する。そのため、不織布16側から樹脂層17側をみたとき、高密度部分16aは実施例17における高密度部分3cよりも長期に亘って濃青色に目視された。さらに、低密度部分16bにおいて酢酸イソブチルが消失し終えて当該低密度部分16bが白色に目視されるようになった後でも、高密度部分16aはしばらくの間、濃青色に目視されたが、その後急速に白色へと変化した。
高密度部分16aの色変化と低密度部分16bの色変化とは、この表示材料15を水平に載置しても、斜めに載置しても、あるいは垂直に吊り下げても、上述のように前後して起こることが確認された。
【0105】
このように、上記の表示材料15では、油状物質(酢酸イソブチル)の揮散に伴う色変化の度合いが高密度部分16aと低密度部分16bとで大きく異なるため、油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度をより明瞭に表示できた。また、この表示材料15は、設置場所や設置方法を選ばず使用可能なものであった。
【0106】
実施例19(表示材料IIの作製)
実施例17と同様にして不織布−樹脂積層物を作製した後、当該不織布−樹脂積層物を構成している不織布の高密度部分に、樹脂層の色と同系色でより淡い色である淡青色で「おとりかえください」という文字の印刷部をオフセット印刷法によって設け、低密度部分にオフセット印刷法によって濃青色で「使用中です」という文字の印刷部を設けた。この後、前記の不織布に酢酸イソブチルを実施例1と同様にして含浸させて、表示材料IIを得た。
【0107】
上記のように作製した表示材料IIでは、酢酸イソブチルを含浸させた段階では樹脂層の濃青色が不織布層側から明瞭に見え、「使用中です」の文字は樹脂層とほぼ同色であるため目視できない状態にあり、また「おとりかえください」の文字も淡青色であるので目視できない状態にある。次にこの表示材料IIを水平にして室内に置くと、酢酸イソブチルの揮散に伴って不織布の低密度部分が濃青色から青色に変色していき、「使用中です」の文字が確認できる状態となった。この時、不織布の高密度部分は濃青色を呈したままであり、「おとりかえください」の文字は目視できない状態のままとなっている。その後さらに時間が経過すると、不織布の低密度部分は青色から淡青色に変色していき、不織布の高密度部分は濃青色から青色へ変色していった。この時もまだ「おとりかえください」の文字は目視できない状態にあった。その後さらに時間が経過すると、不織布の低密度部分では淡青色から不織布の元色である白色に変化していき、一方、不織布の高密度部分は青色から淡青色へ変色していった。そして最終段階である酢酸イソブチルの芳香臭が消失した時点では不織布全面が不織布の元色である白色へ変化し、淡青色の「使用中です」の文字と濃青色の「おとりかえください」の文字が確認できる状態となった。
【0108】
また、この表示材料IIを斜めに載置して、または垂直に吊り下げて観察したところ、高密度部分の色変化と低密度部分の色変化とは、上述したと同様に前後して起こることが確認された。
【0109】
このように、上記の表示材料IIでは、段階的に青色、淡青色、白色に変化するのが保持体である不織布の左半分、右半分で前後して起こるため、変色の程度を比較して確認でき、明瞭に油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を表示できた。また、「おとりかえください」の文字は芳香剤(酢酸イソブチル)の効果がなくなるまで表示されないので、交換時期を明瞭に確認できる。さらに、この表示材料IIは設置場所や設置方法を選ばず使用可能であった。
【0110】
実施例20(表示材料IIの作製)
実施例17と同様にして不織布−樹脂積層物を作製した後、当該不織布−樹脂積層物を構成している不織布の高密度部分にオフセット印刷法によって淡青色で「おとりかえください」という文字の印刷部を設け、低密度部分にオフセット印刷法によって白色で「使用中です」という文字の印刷部を設けた。この後、前記の不織布に酢酸イソブチルを実施例1と同様にして含浸させて、表示材料IIを得た。
【0111】
上記のように作製した表示材料IIでは、酢酸イソブチルを含浸させた段階では樹脂層の濃青色が不織布層側から明瞭に見え、「使用中です」の文字は白色であるため明瞭に読み取ることが出来た。また、「おとりかえください」の文字は淡青色であるので目視できない状態にある。次にこの表示材料IIを水平にして室内に置くと、酢酸イソブチルの揮散に伴って不織布の低密度部分が濃青色から青色に変色していった。この時も「使用中です」の文字が確認できる状態にあり、一方不織布の高密度部分は濃青色を呈したままであり、「おとりかえください」の文字は目視できない状態のままとなっている。その後さらに時間が経過すると、不織布の低密度部分は青色から淡青色に変色していき、一方不織布の高密度部分は濃青色から青色へ変色していった。この時もまだ「おとりかえください」の文字は目視できない状態にあった。その後さらに時間が経過すると、不織布の低密度部分では淡青色から白色に変化していき、「使用中です」の文字は読み取れなくなり、一方不織布の高密度部分は青色から淡青色へ変色していった。そして最終段階である酢酸イソブチルの芳香臭が消失した時点では不織布全面が不織布の元色である白色へ変化し、「おとりかえください」の文字が確認できる状態となった。
【0112】
また、この表示材料IIを斜めに載置して、または垂直に吊り下げて観察したところ、高密度部分の色変化と低密度部分の色変化とは、上述したと同様に前後して起こることが確認された。
【0113】
このように、上記の表示材料IIでは、段階的に青色、淡青色、白色に変化するのが保持体である不織布の左半分、右半分で前後して起こるため、変色の程度を比較して確認でき、明瞭に油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を表示することができた。また、「おとりかえください」の文字は芳香剤(酢酸イソブチル)の効果がなくなるまで表示されず、逆に「使用中です」の文字は芳香剤(酢酸イソブチル)の効果がなくなると消失するので、交換時期をより明瞭に表示することができた。さらに、この表示材料IIは設置場所や設置方法を選ばず使用可能であった。
【0114】
実施例21(表示材料IIの作製)
保持体としての不織布を、アクリル繊維(三菱レイヨン社製、2d、3mm)50重量部と熱融着繊維(大和紡社製、NBF−E、3d、5mm)50重量部の配合で、傾斜型抄紙機を用いて湿式抄紙法により作製した。作製した不織布の坪量は50g/m で、密度は0.1g/cm であった。
この不織布上面のほぼ半分にプレスロールをかけ、プレスロールによってこの部分を押圧することにより当該部分の密度を高くして、不織布に高密度部分と低密度部分とを形成した。この押圧により形成した高密度部分の密度は0.3g/cm であり、低密度部分(押圧していない部分)の密度は0.1g/cm であった。なお、この不織布の元色は白色を呈している。
【0115】
上記の不織布の片面に実施例1と同様にして樹脂層を形成して不織布−樹脂積層物を作製した後、当該不織布−樹脂積層物の不織布に酢酸イソブチルを実施例1と同様にして含浸させて、表示材料IIを得た。
上記のように作製した表示材料IIについて、実施例17と同様に表示材料としての性能を判定し、評価した結果、この表示材料IIは実施例17で得た表示材料IIと同様に、設置場所や設置方法を選ばず、油状物質(酢酸イソブチル)の消滅時のみならず、経時での当該油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示することができるものであった。
【0116】
実施例22(表示材料IIの作製)
アクリル繊維(三菱レイヨン社製、3d、3mm)50重量部と熱融着繊維(大和紡社製、NBF−E、3d、5mm)50重量部とを用いて実施例21に準じて保持体としての不織布を作製した後、当該不織布の密度を実施例21と同様にして部分的に変化させて、坪量50g/m 、高密度部分の密度0.3g/cm 、低密度部分(押圧していない部分)の密度0.09g/cm の不織布を得た。この後、実施例21と同様にして樹脂層の形成および酢酸イソブチルの含浸を行って、表示材料IIを得た。
【0117】
上記のように作製した表示材料IIについて、実施例17と同様に表示材料としての性能を判定し、評価した結果、実施例17と同様に表示移行(色変化)が段階的に区別された。すなわち、不織布の密度を部分的に変化させた効果が十分に認められた。また、設置場所や設置方法を選ばず、油状物質(酢酸イソブチル)の消滅時のみならず、経時での当該油状物質(酢酸イソブチル)の揮散の程度を明瞭に表示することができるものであった。ただし、低密度部分において酢酸イソブチルの揮散がほぼ終了した時点では、当該低密度部分から樹脂層の色を薄く目視することができ、樹脂隠ぺい性は実施例21のものに比べてやや劣っていた。また、初期の段階では、低密度部分のうちで高密度部分から離れている部分の保液性が実施例21のものより劣っていた。
【0118】
【発明の効果】
以上、実施例および比較例を挙げて詳述した様に、本発明によれば、設置場所や設置方法を選ばず、油状物質の消滅時点のみならず、経時での当該油状物質の揮散の程度を明瞭に表示することができる表示材料を提供することが可能になる。さらに、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む織布を保持体として用いた本発明の表示材料では、比較的多量の油状物質を含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例17で作製した不織布−樹脂積層物の概略を示す斜視図である。
【図2】実施例17で作製した表示材料IIの概略を示す斜視図である。
【図3】実施例17で作製した表示材料IIの使用時における部分的な変色状態を概略的に示す斜視図である。
【図4】実施例18で作製した表示材料IIの概略を示す斜視図である。
【図5】表示材料Iの好ましい具体例の概略を示す断面図である。
【図6】表示材料Iの他の好ましい具体例の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 不織布−樹脂積層物
2 樹脂層
3 不織布
3a 高密度部分
3b 低密度部分
3c 油状物質含浸後の高密度部分
3d 油状物質含浸後の低密度部分
11 表示材料II
15 表示材料II
16 不織布
16a 油状物質含浸後の高密度部分
16b 油状物質含浸後の低密度部分
17 樹脂層
21 不織布
21a 樹脂層が設けられている側の不織布面
21b 樹脂層が設けられている側とは反対の側の不織布面
22 樹脂層
23 印刷部

Claims (17)

  1. 光に対して低屈折率の保持体の片面に一部または全面が着色されている樹脂層を設け、前記保持体中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸せしめたものであり、前記保持体側から前記樹脂層側をみたときに、前記油状物質の経時的揮散により前記樹脂層が目視可能な状態から前記保持体によって隠ぺいされた状態へと移行する表示材料において、
    前記保持体が、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む不織布よりなり、
    保持体である不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面に、前記樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色で、油状物質の揮散が終了した旨を表示する印刷部が設けられてい
    ことを特徴とする表示材料。
  2. 保持体である不織布の密度が0.1〜0.5g/cmである、請求項1に記載の表示材料。
  3. 保持体である不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面に、油状物質が揮散途中である旨を表示する印刷部が前記不織布と同系色で設けられている、請求項1または請求項2に記載の表示材料。
  4. 光に対して低屈折率の保持体の片面に一部または全面が着色されている樹脂層を設け、前記保持体中に常温揮発性または加温揮発性の油状物質を含浸せしめたものであり、前記保持体側から前記樹脂層側をみたときに、前記油状物質の経時的揮散により前記樹脂層が目視可能な状態から前記保持体によって隠ぺいされた状態へと移行する表示材料において、
    前記保持体が、密度を部分的に変化させた不織布からなることを特徴とする表示材料。
  5. 保持体である不織布中の相対的に密度の高い部分が、相対的に密度の低い部分によって平面視上囲繞されている、請求項に記載の表示材料。
  6. 保持体である不織布が、実質的に均一な密度を有する不織布を部分的に押圧してその密度を部分的に変化させたものである、請求項または請求項に記載の表示材料。
  7. 保持体である不織布が、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を含む、請求項〜請求項のいずれか1項に記載の表示材料。
  8. 保持体である不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面のうちで該不織布における密度の高い部分の面に、前記樹脂層における着色部分より淡い濃度の同系色で、油状物質の揮散が終了した旨を表示する印刷部が設けられている、請求項〜請求項のいずれか1項に記載の表示材料。
  9. 保持体である不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面に、前記樹脂層における着色部分より濃いかもしくは同濃度の同系色で、または前記不織布と同系色で、油状物質が揮散途中である旨を表示する印刷部が設けられている、請求項〜請求項のいずれか1項に記載の表示材料。
  10. 油状物質が揮散途中である旨を表示する印刷部が、保持体である不織布において樹脂層が設けられている面とは反対側の面のうちで該不織布における密度の低い部分の面に設けられている、請求項に記載の表示材料。
  11. 保持体である不織布が、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を9〜100重量%含む、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の表示材料。
  12. 保持体である不織布が、繊度が2デニール以下の細デニール繊維を20〜100重量%含む、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の表示材料。
  13. 保持体である不織布が、繊度が1デニール以下の細デニール繊維を含む、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の表示材料。
  14. 保持体である不織布が熱融着繊維を含む、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の表示材料。
  15. 保持体である不織布が、湿式抄紙法によって製造された不織布を材料とするものである、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の表示材料。
  16. 樹脂層が、一部または全面が着色された熱可塑性樹脂被覆層である、請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の表示材料。
  17. 樹脂層の表面の一部または全面が印刷法によって着色されている、請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の表示材料。
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