JP5299694B2 - 薬剤揮散器 - Google Patents

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Description

本発明は、容器の内部に収容した処方液を揮散させる薬剤揮散器に関する。なお、本明細書において「処方液」とは、薬剤揮散器に付与すべき機能(芳香効果/消臭効果/脱臭効果/防虫効果など)に応じた薬剤が処方された液体を意味するものとする。
たとえば、家庭やマイカー等の室内空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、芳香剤等を自然に揮散させる小型の薬剤揮散器(芳香器)が広く使用されている。
この薬剤揮散器には、ゲル状、固形状、液状などの薬剤が用いられている。液状の薬剤(薬液)を用いる薬剤揮散器は、一般に、上部に開口部を有し薬液を収納する容器と吸上揮散部材とを備え、吸上揮散部材の一端部が薬液に浸漬され、他端部が容器の開口部から室内空間部に露出可能に構成されている。
吸上揮散部材による吸上揮散には、通常毛細管現象が利用されており、吸上部で処方液を吸い上げ、揮散部で空気中に薬液を揮散させるようになっている。そのため、吸上揮散部材には、たとえば、フエルトなどの不織布、パルプや合成繊維等の繊維質の材料が軽く固められた吸水性のあるものが利用されている。
特許文献1および2には、容器内に収容された吸上揮散部材を容器上部の開口から外気に露出するように引き上げることで、容器内の芳香液が吸上揮散部材から揮散される構成の芳香器が開示されている。
特許文献3には、容器内の芳香液が吸い上げ芯材により吸上げられ、吸い上げ芯材の上部に設けられた揮散部材から容器内の芳香液が揮散される構成の芳香消臭器が開示されている。
特許文献4には、装飾性のある吸水性基材の先端に複数の色に着色した結晶が析出する構成の装飾体が開示されている。
特許文献5には、容器の外部に露呈する吸上揮散部材を有し、吸上揮散部材に供給された溶媒を揮発させることで、吸上揮散部材に絵柄が表出する構成の揮散器が開示されている。
特許文献6には、絵柄を印刷したシートに、揮発性薬剤と色素を混合したワックス剤を塗布し、薬剤が約80%揮発することでシート絵柄が表出する構成の機能材が開示されている。
特許文献7には、ガス不透過層と、薬剤浸透により屈折率の変わる基剤と、薬剤透過性基剤とからなり、3段階で減量とともに絵柄が変化する構成の薬液剤揮散装置が開示されている。
上記した薬剤揮散器は、家庭(リビング、玄関、トイレ等)やマイカー等の人の目に触れる場所に設置される場合が多い。そのため、薬剤揮散器にもインテリア性が求められる結果、外観におけるインテリア性が重要視され、容器についてはデザイン性が重視されている。一方、容器から露出する部分を有する吸上揮散部材については、露出面積(揮散面積)を大きく確保するという機能面が重視される一方、吸上揮散部材のデザイン性については十分考慮されていない。
上記特許文献5では、吸上揮散部材に供給された溶媒を揮発させることで、吸上揮散部材に模様が表出する構成が採用されているが、吸上揮散部材の先端部が色素により色付くことにより芳香の効果を視覚的に認知できるものの、任意形状の絵柄を局所的に付すことでデザイン性を向上させることについては考慮されていない。
特開2005−000329号公報 特開2007−105447号公報 特開2008−086528号公報 特開平07−329498号公報 特開2004−329794号公報 特開2003−033428号公報 特開平09−117243号公報
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、容器の内部に収容した処方液を揮散させる薬剤揮散器において、任意形状の絵柄や文字を局所的に表出させることが可能な揮散部を有する薬剤揮散器を提供することを目的とする。
この発明に基づいた薬剤揮散器においては、開口部を有する容器と、上記容器に収容され揮発性の油系液体に不揮発性物質を配合した処方液と、上記開口部に配置され、上記処方液を吸い上げ上記処方液中の揮発性液体を揮散させる吸上揮散部材とを備えている。
また、上記吸上揮散部材は、上記処方液を吸い上げる繊維層と、上記繊維層の一部を覆い絵柄表示領域を構成する親油性層とを含む。
この発明に基づいた薬剤揮散器によれば、任意形状の絵柄や文字を局所的に表出させることが可能な揮散部を有する薬剤揮散器を提供することを可能とする。
実施の形態1における薬剤揮散器の全体構成を示す図である。 実施の形態1における薬剤揮散器の揮散部を除く全体構成を示す断面図である。 実施の形態1における薬剤揮散器の保持枠および揮散部の構成を示す断面図である。 実施の形態1における薬剤揮散器の揮散部を引き上げた状態での全体構成を示す図である。 実施の形態1における揮散部を展開した状態を示す図である。 実施の形態1における揮散部に設けられる絵柄領域を示す図であり、(A)は変化前の状態を示す図であり、(B)は変化後の状態を示す図である。 図5中のVII−VII線矢視断面図である。 実施の形態1における揮散部の他の形態を示す断面図である。 実施の形態1における揮散部のさらに他の形態を示す断面図である。 実施の形態2における薬剤揮散器の使用前の全体構成を示す断面図である。 実施の形態2における薬剤揮散器の使用時の全体構成を示す断面図である。 実施の形態2における揮散部に設けられる絵柄領域を示す図であり、(A)は変化前の状態を示す図であり、(B)は変化後の状態を示す図である。 実施の形態2における揮散部の他の形態を示す断面図である。 実施の形態2における揮散部に設けられる他の形態絵柄領域を示す図であり、(A)は変化前の状態を示す図であり、(B)は変化後の状態を示す図である。 実施の形態2における揮散部のさらに他の形態を示す断面図である。
以下、本発明の各実施の形態における薬剤揮散器について、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の構成を適宜組み合わせることは、当初から予定されている。
(実施の形態1)
(薬剤揮散器1Aの全体構成)
図1から図3を参照して、本実施の形態における薬剤揮散器1Aの全体構成について説明する。薬剤揮散器1Aは、容器3の上端の開口部2にキャップ7が螺合されている。キャップ7には、その上端部でキャップ7に対して回転可能に連結された保持枠8が取り付けられている。
容器3の内部には、処方液4が収容されている。処方液4は、薬剤揮散器1Aの使用にともなって徐々に減少するが、使用開示時には、容器3の略8割程度を占めている。なお、処方液4には揮発性の油系液体に不揮発性物質(色素)を配合した処方液4が用いられている。処方液4の詳細については後述する。
保持枠8の上端部には、嵌合孔9aが設けられた連結部9が設けられている。キャップ7の頂部内面から突き出して設けられたボス7aに連結部9の嵌合孔9aを嵌合することで、保持枠8はキャップ7に回転可能に連結される。
ボス7aは、先端頭部7bが、三つ割り状態の爪形に成形され、各爪の外面には、戻り止めの段部7cが設けられている。嵌合孔9aに先端頭部7bを圧入することで、段部7cが連結部9の下面外周縁と係合し、ボス7aが連結部9から抜け出ることなく、保持枠8がキャップ7に対して回転可能になる。
連結部9の下面両側には、補強板9bが設けられている。補強板9bには、容器3の内部下方まで延びる外枠8aが設けられている。外枠8aの下端部には、外枠8aから外方に突出する係止部8bが設けられている。保持枠8を引き上げる際、保持枠8が容器3の首部14に係止し、保持枠8が抜け出ることを防止する。
図3に、吸上揮散部材6の保持枠8への取り付け方の一例を示す。なお、吸上揮散部材6の詳細は後述する。帯状の形態を有する吸上揮散部材6は、吸上部6aと揮散部6bとが連続して一体化されていた形態を有している。揮散部6bは、保持枠8に巻き回されるようにして保持枠8に取り付けられる。吸上部6aは、保持枠8の下端部から吊り下げられるように取り付けられる。
なお、吸上揮散部材6に関し、全体の形状がほぼ帯状であり、吸上部6aの幅よりも揮散部6bの幅の方が大きい場合について図示しているが、吸上部6aの幅と揮散部6bの幅とが同じであってもかまわない。また、吸上揮散部材6の形状は帯状に限定されない。筒状、紐状など、処方液の吸上げ、揮散効果を有する形状であれば利用可能である。
上記構成を有する薬剤揮散器1Aにおいて、容器3の開口部2にキャップ7が螺合された状態では、吸上部6aは処方液4の中に浸漬し、揮散部6bの略全体が処方液4の中に浸漬している。
図4に、キャップ7を用いて、保持枠8を引き上げた状態を示す。開口部2の上方において揮散部6bが外気に露出する状態となり、処方液4の揮発成分が空気中に揮散する。保持枠8の引き上げ量を調節することで、処方液4の揮散量を調節することができる。また、揮散部6bにおいて匂い成分を吸収させることもできる。
図5の吸上揮散部材6の展開図に示すように、本実施の形態における揮散部6bの表面側の所定領域には、絵柄表示領域100が設けられている。なお、揮散部6bの表面側とは、図3に示す揮散部6bの保持枠8への取り付け状態において、外側に位置する側を意味するものとする。また、絵柄表示領域100は、揮散部6bを保持枠8に巻き回して固定した後、人の目に触れる位置に設けられる。なお、絵柄表示領域100とは、絵、柄、模様若しくは文字又はこれらの結合によって構成される領域が他の領域との色彩の相違により浮かび上がるようにして表示される領域をいう。
この絵柄表示領域100においては、花柄模様に親油処理された領域が設けられている。これにより、保持枠8を引き上げて揮散部6bが外気に露出する状態にした使用開示時から、処方液4は絵柄表示領域100に積極的に吸収される。その結果、図6(A)に示すように、揮散部6bに吸上げられた処方液4の色素の色と絵柄表示領域100の色との間にコントラストが生じ、花柄模様を揮散部6bを浮かび上がらせることができる。なお、親油処理とは、処理面に親油性の高い樹脂成分を分散或いは溶解した溶液を噴霧や印刷などにより塗工し、親油性を高める処理方法である。
また、保持枠8を引き上げて揮散部6bが外気に露出する状態を維持した場合には、時間の経過とともに、絵柄表示領域100の表面には、処方液4の色素が徐々に蓄積される。その結果、絵柄表示領域100の表面における色素の色が徐々に濃くなる。これにより、図6(B)に示すように、さらに明瞭に花柄模様を揮散部6bに浮かび上がらせることができる。
(吸上揮散部材6)
以下、図7を参照して、上記した絵柄表示領域100を有する吸上揮散部材6の詳細断面構造について説明する。吸上揮散部材6は、処方液4を吸い上げる繊維層110と、繊維層110の表面側を覆う表面層120と、表面層120の一部を覆い絵柄表示領域100を構成する親油性層130とを有している。
繊維層110は、毛細管現象を利用した処方液4の吸上・揮散効果に優れた機能が求められる。繊維としては植物繊維やパルプなどの天然繊維やレーヨン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維又はそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。なお、本実施の形態においては、処方液4として、揮発性の油系液体に不揮発性物質(色素)を配合した処方液が用いられていることから、ポリエステルが好適である。
繊維層110は、植物繊維やパルプなどの天然繊維やレーヨン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成繊維又はそれらの混合繊維などの繊維質材料に低融点繊維(融点の低いポリプロピレンやポリエチレンなどの合成繊維)を混合して熱溶着させるサーマルボンド法やエアレイド法、あるいは繊維同士を絡ませるニードルパンチ法などの製法によって製造され、全体の形が保持されている。この他、織物、編物などの層であってもよい。
繊維層110の厚さは特に限定されないが、容器3の大きさ、取り扱い性、付与すべき機能(芳香効果/消臭効果/脱臭効果/防虫効果など)の観点から、約2mm〜約20mm程度が好ましい。特に、全体の形状が帯状で、折り畳むように曲げる必要がある場合には、目付けにもよるが、厚さ約10mm以下が好ましく、揮散部6bに関しては厚さ約20mmまでとすることができる。
また、繊維層110は必ずしも繊維質材料の層で構成されていなくてもよい。毛細管現象を利用した処方液の吸い上げが可能であれば、たとえば、編織物、発泡ウレタンなどの合成樹脂製のスポンジ材料を用いることもできる。
表面層120は、内部の繊維層110を構成する繊維質材料の形状を保持する機能を有するとともに、吸上揮散部材6に引張りなどの外力に耐える強度を与える効果を有している。また、繊維層110に表面層120を設けることで、繊維層110の表面の毛羽立ちや繊維の脱落を抑制し、表面層120からの処方液4の揮散量の調節、および処方液4中への繊維の溶出を防止することもできる。
表面層120には、レーヨン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの繊維で構成される不織布や、パルプなどの紙状のものが用いられる。厚さは、目付けにもよるが、約0.1mm〜1mm程度が好ましい。繊維層120としては、スパンボンド法、スパンレース法、サーマルボンド法などによって製造される不織布が好適であり、この繊維層120は、表面に対してほぼ水平方向に繊維が並んで、全体の形が保持されている。
親油性層130は、油系の処方液4を吸収する必要があるため、ポリウレタン、ポリエチレンなどの親油性の高い樹脂成分を分散或いは溶解した溶液を噴霧する塗工方法、グラビア印刷による塗工方法、または、スクリーン印刷による塗工方法により構成された層で構成することができる。厚さは、目付けにもよるが、約0.1mm〜1mm程度が好ましい。
(吸上揮散部材6の製造方法)
吸上揮散部材6は、次の方法によって製造することができる。吸上揮散部材6の繊維層110を構成する主な繊維は、前述のように植物繊維やパルプなどの天然繊維、人造繊維又はそれらの混合繊維などであり、はじめに、それらの繊維質材料を砕いて短くする。その繊維質材料に熱融着性繊維をできるだけ均一に混合する。この混合物により、たとえば、シート状のウエブを形成する。
表面層120を形成する場合には、繊維層110の両面に、たとえば、薄いレーヨンなどの繊維を重ね合わせる。次に、表面層120でサンドイッチされたウエブを熱融着性繊維の溶融温度より高い温度であって、その他の材料が熱による損傷を受けない温度以下に加熱する。この加熱によって、繊維層110の形が保持された吸上揮散部材6の繊維層110を形成することができる。
熱融着性繊維としては、たとえば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維等を使用することができる。なお、バインダには、熱融着性繊維以外に、液状のバインダを利用することもできる。
親油性層130は、次の方法によって形成することができる。揮発部表面にポリウレタン、ポリエステルなどの樹脂成分を分散或いは溶解した溶液をグラビア印刷、スクリーン印刷などにより装飾的に塗工することで形成することができる。
(処方液4)
本実施の形態おいて用いる処方液4について説明する。処方液4は、揮発性の油系液体に不揮発性物質を配合している。揮発性の油系液体としては、香料や油系の溶剤を主成分として用いることができる。油系溶剤としては、イソパラフィン、ポリブテン、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル等を挙げることが可能であるが、親油性層への吸収が促進される限り、これらに限定されない。この場合も、少量の水性の成分(消臭剤等の有効成分)を配合したい場合は、界面活性剤等を用いて、公知の方法で適宜、可溶化や乳化をすることができる(水性成分を配合する場合も、親油性層による吸収促進が妨げられない限り許容される)。
例えば、処方液4を油系の液体芳香剤とする場合、油系溶剤(イソパラフィン)70%、ラベンダー調の調合香料30%、として調製することができる。
上記のようにして調合した揮発性の油系液体をベースとして、不揮発性物質として適当量(微量)の色素や染料が加えられる。たとえば、Solvent Green 29、Solvent Red 146、Disperse Yellow 54等が例示されるが、これらに特に限定されるものではない。この他に、必要に応じて界面活性剤、乳化剤、防腐剤、UV吸収剤、消臭剤、殺虫剤、防虫剤、忌避剤などが適宜配合される。
以上、本実施の形態における薬剤揮散器1Aによれば、揮散部6bに親油処理された絵柄表示領域100が設けられている。これにより、保持枠8を引き上げて揮散部6bが外気に露出する状態にした使用開示時から、揮発性の油系液体をベースとする処方液4は絵柄表示領域100に積極的に吸収されることとなる。
また、保持枠8を引き上げて揮散部6bが外気に露出する状態を維持した場合には、時間の経過とともに、絵柄表示領域100の表面には、処方液4の色素が徐々に蓄積される。その結果、絵柄表示領域100の表面における色素の色が徐々に濃くなる。これにより、さらに明瞭に花柄模様を揮散部6bに浮かび上がらせることができる。
以上により、本実施の形態における薬剤揮散器1Aによれば、使用開始時は全体として同じ色調であるが、時間の経過とともに、絵柄表示領域100には、処方液4の色素がより多く蓄積される。これにより、絵柄表示領域100における色素の色が他の領域と比較して徐々に濃くなり、図6(B)に示すように、明瞭に花柄模様を絵柄表示領域100に浮かび上がり、絵柄表示領域100においては、絵柄表示領域100が設けられていない領域よりも、絵柄表示領域100が設けられている領域における色彩の変化が人の目により明確に感知されることとなる。これにより、薬剤揮散器1Aの使用感を高め、また、薬剤揮散器1Aに付与される薬剤等の効果感・効き目感を高めることが可能となる。
なお、吸上揮散部材6の構成として、図7においては、繊維層110の上に表面層120を形成し、この表面層120の上に親油性層130を形成する場合について説明したが、この構造に限られない。たとえば、図8に示すように、表面層120を設けることなく繊維層110の上に直接親油性層130を設ける構成を採用することも可能である。
また、他の構成として、図9に示すように、繊維層110の上に親油性層130を形成し、この親油性層130の上に表面層120を形成しても良い。この図9に示す構成では、繊維層110の上に設けられた親油性層130により油系の処方液4が積極的に吸上げられる。これにより、表面層120においては、親油性層130に接しない領域に比較して、親油性層130に接する領域の表面層120の部分においては油系の処方液4が積極的に吸上げられる。その結果、絵柄表示領域100の表面における色素の色が徐々に濃くなる。これにより、花柄模様を揮散部6bに浮かび上がらせることができる。
(実施の形態2)
上記実施の形態1における薬剤揮散器1Aにおいては、吸上部6aと揮散部6bとが連続して一体化され、保持枠8を引き上げて揮散部6bが外気に露出する機構を採用した場合について説明した。
本実施の形態における薬剤揮散器1Bは、吸上部6aと揮散部6bとは切り離されており、使用時に両者が接触し、処方液4が吸上部6aから揮散部6bに移動するように構成したものである。なお、処方液4および揮散部6bの構造については、上記実施の形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。よって、以下の説明では、薬剤揮散器1Bの構造について説明する。
(薬剤揮散器1Bの全体構成)
まず、図10を参照して、使用前における本実施の形態における薬剤揮散器1Bの全体構成について説明する。吸上部6aは、容器3の開口部2に設けられた支持部材15により保持されている。吸上部6aの先端の一部が容器3の開口部2から突出した状態で支持部材15により保持されている。容器3の開口部2から突出した吸上部6aの上部を覆うようにキャップ16が開口部2の外周に螺合している。
容器3の上部に、揮散部6bを支持する揮散部支持部材17が、容器3に対して取り外し可能な状態で固定されている。揮散部6bは、その表面部分が外部に露出した状態で揮散部支持部材17に支持されている。
図11を参照して、薬剤揮散器1Bの使用時の状態について説明する。使用時には、容器3から揮散部支持部材17を一旦取り外す。次に、容器3の開口部2からキャップ16を取り除く。次に、揮散部支持部材17を容器3に再度固定する。
これにより、容器3の開口部2から突出している吸上部6aの先端が、揮散部支持部材17に支持されている揮散部6bと接触する状態となり、処方液4が吸上部6aから揮散部6bに移動可能となる。揮散部支持部材17の内周に設けられた凸部17aが、容器3の溝部3aに嵌まることで、容器3に対する揮散部支持部材17の固定が可能となる。
揮散部支持部材17に設けられた凸部17aが、容器3に設けられた複数の溝部3a、所定の溝部3aに嵌まることで、容器3に対する揮散部支持部材17の位置決めが行なわれる。
このように、吸上部6aと揮散部6bとが使用時に接触するように構成されている場合には、揮散部6bの形状は、ブロック状、円板状、その他のより複雑な形状など、様々な形状を採用することができる。
以上、本実施の形態2における薬剤揮散器1Bにおいても、実施の形態1における薬剤揮散器1Aと同様に、花柄模様の絵柄を局所的に表出させることが可能な揮散部6bを有する薬剤揮散器を提供することが可能となる。
具体的には、絵柄表示領域100においては、吸上部6aと揮散部6bとが接触した当初は、図12(A)に示すように、揮散部6bと絵柄表示領域100との間に色のコントラストは大きく生じないが、時間の経過とともに、絵柄表示領域100の表面には、処方液4の色素が徐々に蓄積される。その結果、図12(B)に示すように、絵柄表示領域100の表面における色素の色が徐々に濃くなる。これにより、さらに明瞭に花柄模様を揮散部6bに浮かび上がらせることができる。
また、他の吸上揮散部材6の構成として、図13に示すように、繊維層110の上に表面層120を形成し、この表面層120の上に親油性層130を形成する場合であっても、表面層120の繊維層110に接する側の表面にエンボス加工120eを施して、繊維層110に対して表面層120を点接触させることも可能である。エンボスの個数は、1cm〜5cm当りに1個程度、エンボス1個当りの横断面積は0.01mm〜3mm、エンボス加工の凹凸の程度は、0.2mm〜1mm程度が好ましい。
この図13に示す構成では、繊維層110の表面と表面層120との間に一定の距離が確保されることになる。その結果、図14(A)に示すように、使用開始時は処方液4が上がっていないため、絵柄表示領域100は他の領域と同じ色調であるが、親油性層130が設けられた領域は、油性層130が設けられていない領域に比べて、時間の経過とともに、処方液4の色素がより多く蓄積される。これにより、絵柄表示領域100における色素の色が徐々に濃くなり、図14(B)に示すように、明瞭に花柄模様が絵柄表示領域100に浮かび上がり、絵柄表示領域100においては、絵柄表示領域100が設けられていない領域よりも、絵柄表示領域100が設けられている領域における色彩の変化が人の目により明確に感知されることとなる。これにより、薬剤揮散器1Aの使用感を高め、また、薬剤揮散器1Aに付与される薬剤等の効果感・効き目感を高めることが可能となる。
また、図13に示す構成では、表面層120の繊維層110側にエンボス加工120eを施すことにより、表面層120と繊維層110とが点接触状態となり、繊維層110の表面と表面層120との間に一定の距離が確保されることになる。その結果、繊維層110により吸上げられた処方液4の色は、表面層120には殆ど写らないことから、図12(B)に示す場合よりも図14(B)に示す構成の方が、より明瞭に花柄模様を絵柄表示領域100に浮かび上がらせることができる。
なお、図15に示すように、繊維層110の上に表面層120を設け、この表面層120の上面側にエンボス加工120eを施し、このエンボス加工120eの上にさらに別の表面層121を設け、この表面層121の上に絵柄表示領域100を設ける構成を採用することも可能である。
なお、上記各実施の形態では、絵柄表示領域100の一例として花柄を採用した場合について説明しているが、絵柄は花柄に限定されるものでなく、動物、建物、漫画のキャラクターその他の絵、柄、模様若しくは文字又はこれらの結合によって表示される領域を採用することで、揮散部のデザイン性を高めることが可能である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1A,1B 揮散器、2 開口部、3 容器、3a 溝部、4 処方液、6 吸上揮散部材、6a 吸上部、6b 揮散部、7 キャップ、7a ボス、7b 先端頭部、7c 段部、8 保持枠、8a 外枠、8b 係止部、9 連結部、9a 嵌合孔、9b 補強板、14 首部、15 支持部材、16 キャップ、17 揮散部支持部材、17a 凸部、100 絵柄表示領域、110 繊維層、120,121 表面層、130 親油性層。

Claims (9)

  1. 開口部を有する容器と、
    前記容器に収容され揮発性の油系液体に不揮発性物質を配合した処方液と、
    前記開口部に配置され、前記処方液を吸い上げ前記処方液中の揮発性液体を揮散させるための吸上揮散部材と、
    を備え、
    前記吸上揮散部材は、前記処方液を吸い上げる繊維層と、前記繊維層の一部を覆い絵柄表示領域を構成する親油性層とを含む、薬剤揮散器。
  2. 前記撥水性層は、親油性の高い樹脂成分を分散或いは溶解した溶液を噴霧する塗工方法、グラビア印刷による塗工方法、または、スクリーン印刷による塗工方法により構成された層である、請求項1に記載の薬剤揮散器。
  3. 前記親油性の高い樹脂成分は、ポリウレタンまたはポリエステルである、請求項2に記載の薬剤揮散器。
  4. 前記不揮発性物質は色素である、請求項1から3のいずれかに記載の薬剤揮散器。
  5. 前記繊維層の表面を覆う表面層をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の薬剤揮散器。
  6. 前記吸上揮散部材は、吸上げ部と揮散部とを有し、前記揮散部に前記絵柄表示領域を構成する前記親油性層が設けられる、請求項1から5のいずれかに記載の薬剤揮散器。
  7. 前記吸上揮散部材は、前記吸上げ部と前記揮散部とが連続して一体化している、請求項6に記載の薬剤揮散器。
  8. 前記吸上揮散部材は、前記吸上げ部と前記揮散部とが分離し、使用時に前記吸上げ部と前記揮散部とが接触するように設けられている、請求項6に記載の薬剤揮散器。
  9. 開口部を有する容器と、
    前記容器に収容され揮発性の油系液体に不揮発性物質を配合した処方液と、
    前記開口部に配置され、前記処方液を吸い上げ、前記処方液中の揮発性液体を揮散させる吸上揮散部材と、
    を備え、
    前記吸上揮散部材は、分離して設けられた吸上げ部と揮散部とを含み、使用時に前記吸上げ部と前記揮散部とが接触するように設けられ、
    前記揮散部は、前記処方液を吸い上げる繊維層と、前記繊維層の一部を覆い絵柄表示領域を構成する親油性層とを含み、
    前記表面層の前記繊維層側には凹凸処理が施されている、薬剤揮散器。
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