JP3597930B2 - 無線通信用の部屋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線電話や無線LAN(構内情報通信網)等の無線通信システムが使用される無線通信用の部屋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報化社会への発展に伴って部屋内での無線電話や無線LAN等の無線通信システムの使用が拡大しつつある。この無線通信システムのうち、個人用簡易無線電話システム(PHS)や中速無線LANには1.9GHz帯及び2.45GHz帯の準マイクロ波帯域が、また高速無線LANには19GHz帯の準ミリ波帯域及び60GHz帯のミリ波帯域がそれぞれ割り当てられて実用化されようとしている。また諸外国においては、900MHz帯や5.7GHz帯も無線LAN等の無線通信システムに利用されようとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のように同一の部屋内で広い周波数帯を用いた無線通信システムの需要が拡大していくと、壁面、天井面、床面及び什器や事務機器の表面で各無線通信システムの電磁波が反射され、電磁波が相互干渉を起こしたり遅延分散特性の悪化を起こしたりして無線通信システムの混信、誤作動や盗聴等の問題が発生し、通信環境の悪化を招くという問題があった。
【0004】
また多数の部屋が集まったビル等の建物では、ある部屋で発信された無線通信システムの電磁波が、同一の周波数帯の電磁波を用いた他の部屋の無線通信システムに影響を与えることがあり、同一の周波数帯で多数の無線通信システムを利用することができないという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、通信環境が悪化しないようにすることができ、また同一の周波数帯で多数の無線通信システムを利用することができる無線通信用の部屋を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、1〜60GHzの周波数帯において反射減衰率が−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する薄型の電磁波低反射材1を、天井と床、或いは向かい合う側壁面と側壁面等の面の組み合わせのうち、向かい合わない二面或いは向かい合わない三面に設置して成ることを特徴とするものであり、電磁波低反射材1で無線通信システムから発信される電磁波を吸収して反射しにくくし、電磁波が相互干渉を起こしたり遅延分散特性の悪化を起こしたりして無線通信システムの混信による信号品質の低下、誤作動や盗聴等の問題が発生しないようにすることができ、また部屋外に無線通信システムの電磁波が漏れないようにすることができ、部屋外の同一の周波数帯で使用されている他の無線通信システムに悪影響を与えないようにすることができ、さらに薄型の電磁波低反射材1を用いることによって、部屋の空間が狭くならないようにすることができる。
【0006】
また、1〜60GHzの周波数帯において−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する電磁波低反射材1を用いることによって、無線通信システムで使用される大部分の周波数帯の電磁波を一様に弱く吸収することができる。
また、天井と床、或いは向かい合う側壁面と側壁面等の面の組み合わせのうち、向かい合わない二面或いは向かい合わない三面に電磁波低反射材1を設けることを特徴とするものであり、電磁波は直進して部屋の構成面で反射するので、最初に電磁波低反射材1を設置した面と向かい合わない面に電磁波低反射材1を設置することで、電磁波低反射材1に関連する反射面が四面となり、部屋全体での電磁波の吸収効率を向かい合う面の両方に電磁波低反射材1を配置するよりも良好にすることができる。さらに電磁波低反射材1の装着面を増やす場合には、残された電磁波低反射材1の設置されていない向かい合う面のいずれかに電磁波低反射材1を設置することで、部屋全体の電磁波の吸収効率を向上させることができる。もちろん部屋内の全面に電磁波低反射材1を設けることには問題はないが、限られた材料で電磁波の吸収効率を向上させるには、上記のような態様が好ましい。
また本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加えて、複数の電磁波吸収層を有する電磁波低反射材1を用いて成ることを特徴とするものであり、各層で異なる周波数帯の電磁波をそれぞれ吸収することができ、各層の組み合わせにより無線通信システムで使用される大部分の周波数帯の電磁波を一様に吸収することができる。
【0007】
また本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2の構成に加えて、上記電磁波吸収層として、導電性のある第一層と、金属酸化物磁性体の粉末或いは金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第二層と、金属酸化物磁性体の粉末或いは金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第三層とを有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とするものであり、これら電磁波吸収層の組み合わせにより初めて1〜60GHzの周波数帯で反射減衰率が−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する電磁波低反射材を得ることができると共に各電磁波吸収層の特徴が生かせて薄膜で高吸収な電磁波低反射材を得ることができる。
【0008】
また本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成に加えて、難燃性を有する電磁波低反射材1を用いて成ることを特徴とするものであり、部屋内の壁面、天井、床にこの電磁波低反射材1を用いることによって、部屋内の電磁波吸収能とともに部屋内の防火性能を向上させることができる。
また本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかの構成に加えて、磁性を有する電磁波低反射材1を用いて成ることを特徴とするものであり、電磁波低反射材1を金属面に磁着させて任意の場所に取り付けることができる。
【0010】
また本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの構成に加えて、電磁波低反射材1を用いて間仕切り、ブラインド、ドア9、衝立、パーティション10、什器、事務機器、収納庫を形成して成ることを特徴とするものであり、電磁波低反射材1を任意の場所に設置することができる。
また本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかの構成に加えて、電磁シールドされていない部屋であることを特徴とするものであり、電磁シールドされていない部屋に電磁波低反射材1を設けることによって、外部から部屋内に進入する電磁波や、外部から部屋内に進入する電磁波が部屋内に設置された金属什器、金属家具等の強力な電磁波反射面で反射された電磁波を電磁波低反射材1で吸収することができ、部屋の電磁波環境の悪化を防止することができる。
【0011】
また本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかの構成に加えて、電磁シールドされた部屋であることを特徴とするものであり、外部からの電磁波の進入を防止したり部屋内で発生させた電磁波を外部に漏洩させたりしないようにする目的で電磁波シールドされた部屋に電磁波低反射材1を設けることによって、部屋内で発生する電磁波を電磁波低反射材1で吸収することができ、シールドされた部屋内の電磁空間の電界強度分布が大きく乱れたり、電界強度が異常に高くなったり、電磁波が減衰しなかったりして、電磁波の相互干渉や遅延分散特性を大きく悪化させないようにすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
電磁波低反射材1は広い周波数帯の電磁波を弱く吸収するものであって、無線通信システムの使用頻度が高い1〜60GHzの周波数帯で反射減衰率(反射減衰量と称する場合もある)が−2dB〜−15dB、より好ましくは反射減衰率が−3dB〜−12dBの電磁波吸収能を有するものである。
【0013】
無線通信での障害を無くすためには、電磁波低反射材1は広い周波数範囲で、高い反射減衰率を得ることが必要である。しかし電波暗室に使用されるフェライトタイル等を用いて電磁波低反射材1を形成すると、非常に分厚い構造で重いものとなり、この電磁波低反射材1を部屋の建材として使用した場合には、設置作業性が悪くなったり、建具としての全体の取り廻し性が悪くなったり、設置後の構造補強が必要となったり、設備費が高くなったりするという問題が発生し、実際の使用には適さなくなってしまう。
【0014】
そこで電磁波は部屋内で何度も反射吸収を繰り返すので、電磁波低反射材の反射減衰率が小さくとも、その電磁波環境改善効果は大きく無線通信での問題を生じない水準が容易に得られることに着目して、厚みが厚くならないように電磁波低反射材1の反射減衰率(量)を−2dB〜−15dBに設定した。
電磁波低反射材1の反射減衰率が−2dB未満では電磁波の吸収性が不十分となって無線通信環境の改善効果が小さく、また電磁波低反射材1の反射減衰率が−15dBを超えると、電磁波低反射材1が分厚く重くなってしまう。また電磁波低反射材1の反射減衰率を−3〜−12dBに設定すると、電磁波低反射材1の電磁波の吸収性能と設置の際の作業性、装着性のバランスがとれて取り扱い易くて問題がなく、その設計も容易である。
【0015】
また電磁波低反射材1は薄型に形成してあるので、容易に部屋内の構成材、内装材としての使用や内装材に組み込んでの使用や、部屋内に設置する仕切り材や事務用什器の部材としての使用も可能であり、いずれの場合も部屋内の空間が狭くならないようにすることができる。また1〜60GHzの周波数帯以外で電磁波を吸収する電磁波低反射材1は、無線通信システムの電磁波の吸収することができず、実用的でない。本発明において薄型とは、厚みが2〜55mmのものをいう。
【0016】
電磁波低反射材1としては単層型のもの、複層型のもののいずれのものも使用することができる。
単層型とは電磁波吸収層が単独層であるものをいい、複層型とは、例えば図2に示すような第1層40と第2層41と第3層42からなるものや、図3に示すように第1層40と第2層41と第3層42と第4層43からなるものなどを挙げることができ、電磁波吸収層が少なくとも二層以上であるものをいう。単層型の具体例は特願平7−183915号において示されており、また複層型の具体例は特願平6−158398号、特願平7−95407号、特願平7−170711号、特願平7−222557号に示されている。
【0017】
さらにこれら電磁波低反射材1を他の材料と複合させ、例えば、ハードフェライト層と組み合わせることにより、簡単に金属面に装着できるようにした電磁波低反射材としては、特願平7−183915号に示されている。
また両面に電磁波吸収層を有する電磁波低反射材1については、特願平7−222561号に示されている。
【0018】
さらに詳しく述べれば、単層型の電磁波低反射材1としては、導電性材料からなる第1層の上にインピーダンス整合させた磁性体粉末と結合剤からなる吸収層を第2層とする構造を有するものを用いることができる。
上記導電性材料は、導電性によるシールド能として、20dB以上、好ましくは、30dB以上をもたらす材料であれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、鋼、鉄、ニッケル、ステンレス、真鍮等の金属の板、或いはこれらの金属がメッキされた金属板や金網や金属布、或いは鉄板の上にアルミニウム、亜鉛、鋼等が熱又は電気によりメッキされたメッキ鋼板等を挙げることができる。このような導電性材料は、プレコート鋼板のように層間密着性を向上させるための表面処理又はプライマー処理を施したものであってもよい。
【0019】
また上記導電性材料からなる第1層は、プラスチック材料等の非導電性材料の上に上記導電性材料として使用される金属と結合剤とを含む導電性塗膜を設けたもの、或いはプラスチック材料等の非導電性材料の上に鋼、Ni等の無電解メッキ層を形成したもの、或いはプラスチック材料等の非導電性材料の上にアルミニウム等の蒸着層を形成した金属化材料等であってもよい。
【0020】
上記第1層の厚さは、50μm〜3mmが好ましい。50μm未満であると、第1層としての機械的強度が低下し、3mmを超えると、第1層の重量が重くなって実用的ではない。
電磁波吸収能を有する第2層に用いられる磁性体は、金属酸化物磁性体粉末や金属磁性体粉末の中から選ばれる。上記金属酸化物磁性体微粉末としては特に限定されず、例えば、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mg−Znフエライト、Liフェライト、Mn−Cu−Znフェライト、Baフェライト、Srフェライト等を挙げることができる。なかでも、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mg−Znフェライト等が好ましい。好ましいのは、粒径1〜30μm、特に好ましいのは10〜20μmのMn−Znフェライトである。
【0021】
上記金属磁性体微粉末を構成する金属磁性体としては特に限定されず、例えば、磁性金属単体材料、磁性金属合金等を挙げることができる。また上記磁性金属単体材料としても特に限定されず、例えば、Fe、Ni、Co等を挙げることができる。さらに上記磁性金属合金としても特に限定されず、例えば、珪素鋼とかセンダストやスーパーセンダスト又はパーマロイやアモルファス金属、或いはSi、Al、Co、Ni、V、Sn、Zn、Pb、Mn、Mo、Ag等の群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含んでなる鉄磁性合金等を挙げることができる。
【0022】
また本発明にあっては、金属磁性体微粉末として上記の他にも高純度のFe粉末を使用することができる。カルボニル鉄粉末又はアトマイズ法で製造された鉄を80重量%以上含有する磁性合金及びその合金粉末も好適に使用される。これらの金属酸化物磁性体微粉末や金属磁性体微粉末は必要に応じてシランカップリング剤、チタン系カップリング剤等により表面処理されて用いられる。
【0023】
上記第2層を構成する結合剤としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の有機高分子材料、或いはセメント系、ケイカル系、石膏系等の無機窯業材料等を挙げることができる。
上記有機高分子材料としては熱可塑性樹脂が好ましいが、この熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリブタジエン、結晶性ポリブタジエン、スチレンブタジエン等の非極性樹脂、或いはポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラクロロエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合体樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、スチレンーアクリロニトリル共重合体樹脂(SAN樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂(ASA樹脂)、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(ACS樹脂)、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシベンゾイル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フォスファゼン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の樹脂、或いはこれらの変性樹脂等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記有機高分子材料の酸素指数は、30以上が好ましい。30未満であると、難燃性及び不燃性が低下する。より好ましくは、40以上である。酸素指数は、JIS K 7201のプラスチック耐炎性試験法で測定することができる。有機高分子材料のうち、高い酸素指数を有している樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラクロロエチレン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合体樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、変性塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂、フォスファゼン樹脂等を挙げることができる。なかでも、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合体樹脂、塩素化ポリエチレン、変性塩素化ポリエチレン、シリコーン樹脂が好ましい。
【0025】
また結合剤の無機窯業材料としては特に限定されず、例えば、硫酸カルシウム、けい酸カルシウム、水ガラス、ポルトランドセメント、アルミナセメント、アルミナシリケート、酸化カルシウム、粘土等を挙げることができる。なかでも、硫酸カルシウム、けい酸カルシウム、ポルトランドセメント、アルミナセメントが好ましい。
【0026】
上記結合剤は、金属酸化物磁性体微粉末との濡れ性、樹脂の混練加工時の粘度、温度、フィルムの物性、耐化学性、耐熱性、耐水性、金属やプラスチックとの接着性等を考慮して適宜選択することができる。また上記金属酸化物磁性体微粉末と上記結合剤とを配合する際、層形成、塗工性、電磁波吸収能等を改良するために、必要に応じて、可塑剤、粘度調節剤、表面活性剤、難燃化剤、滑剤、消泡剤、熱安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0027】
これら磁性体と結合剤を組み合わせた場合、結合剤が有機高分子系である場合は、磁性体の体積分率が5〜70%volでその厚さが2〜25mmの範囲が好ましい。また結合剤が無機高分子や無機材料の場合は、磁性体の体積分率が5〜60%volでその厚さが5〜50mmの範囲が好ましい。
さらに具体的には、MnO、ZnO、およびFe2 O3 をモル比で29〜35:13〜16:52〜56の割合で含み、1〜30μmの広い粒径分布を有する平均粒径10〜20μmのMn−Znフェライト粉末を有機高分子(ポリ塩化ビニルや塩素化ポリエチレン)や無機高分子や無機材料(セメントや珪酸カルシウム)などの結合剤中に均一に分散して、フェライト粉末の体積分率が17〜27%volで厚さが11〜13mmのインピーダンス整合層を形成し、このインピーダンス整合層を銅、アルミニウム、鋼、鉄、ニッケル、ステンレス、真鍮などの金属板、金網、金属布等で形成される導電性材料の片面に積層して単層型の電磁波低反射材1を形成することができる。
【0028】
また他の具体例としては、MnO、ZnO、およびFe2 O3 をモル比で29〜35:13〜16:52〜56の割合で含み、1〜30μmの広い粒径分布を有する平均粒径10〜20μmのMn−Znフェライト粉末を有機高分子(ポリ塩化ビニルや塩素化ポリエチレン)や無機高分子や無機材料(セメントや珪酸カルシウム)などの結合剤中に均一に分散して、フェライト粉末の体積分率が30〜41%volで厚さが6.7〜7.9mmのインピーダンス整合層を形成し、このインピーダンス整合層を銅、アルミニウム、鋼、鉄、ニッケル、ステンレス、真鍮などの金属板、金網、金属布等で形成される導電性材料の片面に積層して単層型の電磁波低反射材1を形成することができる。
【0029】
複層型の電磁波低反射材1は、導電性材料から構成される第1層とその上に順次電磁波吸収層、或いはその他の層が形成されている。
第1層の上に順次形成される電磁波吸収層としては、(1)金属酸化物磁性体の粉末と結合剤から構成される第2層と、さらに金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第3層からなるもの、具体的には特願平6−158398号、特願平7−170711号において示されているもの、(2)金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第2層と、さらに金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第3層からなるもの、具体的には特願平7−222557号において示されているもの、(3)金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第2層と、さらに金属酸化物磁性体の粉末と結合剤から構成される第3層からなるもの、具体的には特願平7−222557号において示されているものを挙げることができる。
【0030】
全体の構成から言えば、電磁波低反射材1を構成する電磁波吸収層、或いは磁性損失層ともいえるが、その電磁波吸収層は波状構造を有しており、上記(1)(2)(3)のような構成からなる電磁波吸収層も用いられる。この具体例は特願平7−95407号に示されている。
電磁波低反射材1を形成後、導電性材料から構成される第1層に設けた電磁波吸収層とは反対の面にハードフェライトと結合剤からなる層を形成させて金属面に対して装着が容易である低反射材も用いられる。具体的には特願平7−196037号において示されている。
【0031】
さらに電磁波低反射材1を形成後、その電磁波吸収層の上にさらに難燃性材料を形成させてなる難燃性低反射材も用いられる。具体的には特願平7−201422号において示されている。
複層型の電磁波低反射材1の第1層は導電性材料から構成されており、上記単層型の第1層を形成する際に用いた導電性材料と同様のものを用いることができる。
【0032】
次に上記(1)第2層/第3層=金属酸化物磁性体/金属磁性体の組み合わせで形成される電磁波低反射材1について詳述する。第2層の金属酸化物磁性体粉末は、上記単層型で用いた金属酸化物と同様のものを用いることができる。またこの金属酸化物磁性体粉末の平均粒径は1〜50μmが好ましい。金属酸化物磁性体粉末の平均粒径が1μm未満であると、金属酸化物磁性体粉末の電磁波吸収能が不十分であり、また金属酸化物磁性体粉末の製造性が低下する。金属酸化物磁性体粉末の平均粒径が50μmを超えると、金属酸化物磁性体粉末の電磁波吸収能が不十分であり、また金属酸化物磁性体粉末の製造設備に磨耗が生じる等の問題がある。より好ましくは金属酸化物磁性体粉末の平均粒径は5〜20μmである。これら金属酸化物磁性体粉末は、製造性及び物性向上のために必要に応じて、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等により表面処理されていてもよい。
【0033】
上記金属酸化物磁性体粉末の配合量は、第2層中、75〜95重量%がよい。金属酸化物磁性体粉末の配合量が75重量%未満であると、電磁波吸収能の低下や難燃性の低下が生じ易く、また金属酸化物磁性体粉末の配合量が95重量%を超えると電磁波吸収能は良好となるが、第2層の剛性や耐久性が劣り、重量も重くなるので、電磁波低反射材として実用性が低くなるものであり、より好ましくは85〜92重量%である。
【0034】
第2層に用いられる結合剤としては、上記単層型の電磁波低反射材1の製造に用いた有機高分子材料や無機窯業系材料を用いることができる。また第2層の形成は、上記単層型の第2層の成形にも応用することができる方法で成形する。結合剤として有機高分子材料を用いる場合には、三本ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ブスコニーダー等で磁性体粉末と結合剤や添加剤を混練してから押出成形、加圧成形、カレンダリング成形等の通常の方法を採用することができ、さらに、上記混練物に適当な希釈剤を加えて塗料化し厚膜塗装をする方法などにより層を形成することができる。無機窯業系材料を用いる場合には、抄造法、モールド法、押し出し成形法等により層形成することができる。また上記第2層の厚さは、準マイクロ波帯域から準ミリ波帯域において、75%を上回る電磁波吸収率を示す実用的な低反射シートを得るためには、1.8〜3.6mmが好ましい。1.8mm未満であると、準マイクロ波帯域の吸収能が低下し、3.6mmを超えると、材料が高価になるばかりでなく、重量も重くなるので、実用上好ましくない。より好ましくは、2.2〜3.2mmである。
【0035】
また第3層は、金属磁性体微粉末及び結合剤からなる。金属磁性体微粉末を構成する金属磁性体としては特に限定されず、単層型で用いた材料を使用することができ、例えば、磁性金属単体材料、磁性金属合金等を挙げることができる。上記磁性金属単体材料としては特に限定されず、例えば、Fe、Ni、Co等を挙げることができる。上記磁性金属合金としては特に限定されず、例えば、珪素鋼、或いはセンダスト、又はスーパーセンダスト、或いはパーマロイ、又はアモルファス金属、或いはSi、Al、Co、Ni、V、Sn、Zn、Pb、Mn、Mo、Ag等の群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含んでなる鉄磁性合金等を挙げることができる。
【0036】
上記のほか、Feの純度が85〜98重量%のFe粉末も使用できる。Feの純度が85重量%未満であると、電磁波吸収能が低く、98重量%を超えると、可燃性が高くなる。好ましくは、カルボニル鉄粉末又はアトマイズ法で製造された鉄を80重量%以上含有する磁性合金粉末である。難燃性及び不燃性を考慮すると、高純度のFe粉末は好ましくない。
【0037】
上記金属磁性体微粉末は、必要に応じて、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等により表面処理されていてもよい。また上記金属磁性体微粉末の粒径は、結合剤と均一に混合可能であれば特に限定されないが、平均粒径1〜30μmが好ましい。1μm未満であると、難燃性が低下し、30μmを超えると、充分な電磁波吸収能を示さない。より好ましくは、2〜20μmである。
【0038】
上記金属磁性体微粉末の配合量は、70〜90重量%が好ましい。70重量%未満であると、電磁波吸収能の低下や難燃性の低下が生じ、90重量%を超えると、電磁波吸収能は良好となるが、剛性、耐久性等が劣り、重量も重くなるので、電磁波吸収材料として実用性が低くなる。より好ましくは、75〜90重量%である。
【0039】
上記第3層を構成する結合剤としては特に限定されず、第2層を形成する際に使用する結合剤と同種のものを使用することができる。また、層形成も第2層と同様にして行うことができる。
上記金属磁性体微粉末と上記結合剤とを配合する際、層形成、塗工性、電磁波吸収能等を改良するために、必要に応じて、可塑剤、粘度調節剤、表面活性剤、難燃化剤、滑剤、消泡剤、熱安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。また上記第3層の厚さは、準マイクロ波帯域から準ミリ波帯域において、75%を上回る電磁波吸収率を示す実用的な低反射シートを得るためには、0.2〜1.1mmが好ましい。0.2mm未満であっても、1.1mmを超えても、準ミリ波帯域及びミリ波帯域を吸収する能力が低下する。より好ましくは、0.3〜0.8mmである。また、軽量で薄い電磁波低反射材1を提供するためには、第2層と第3層との合計の厚さを4mm以下とすることが好ましい。
【0040】
上記第2層及び上記第3層の難燃性は、結合剤の選択や難燃化剤の選択により設計でき、金属酸化物磁性体微粉末や金属磁性体微粉末と結合剤や他の添加物を配合してフィルム又はシート化した状態での性能として要求される。上記第2層及び上記第3層は、フィルム自体又はシート自体が酸素指数で30以上が好ましい。30未満であると、燃焼性が高く、第4層と組み合わせた場合においても充分な難燃性を示さない。より好ましくは、35以上である。
【0041】
次に上記(2)に示す第2層/第3層=金属磁性体/金属磁性体の組み合わせで形成される電磁波低反射材1について詳述する。第1層は上記(1)第2層/第3層=金属酸化物磁性体/金属磁性体の組み合わせで形成される複層型の電磁波低反射材1と同様の材料で同様の方法によって形成される。第2層及び第3層は、上記(1)の第3層と同様の材料で同様の方法で形成することができる。
【0042】
次に上記(3)に示す第2層/第3層=金属磁性体/金属酸化物磁性体の組み合わせで形成される電磁波低反射材1について詳述する。第1層は上記(1)第2層/第3層=金属酸化物磁性体/金属磁性体の組み合わせで形成される複層型の電磁波低反射材1と同様の材料で同様の方法によって形成される。第2層は上記(1)の第3層と同様な材料で同様の方法によって形成することができる。また第3層は上記(1)の第2層と同様な材料で同様の方法によって形成することができる。
【0043】
電磁波低反射材1の電磁波吸収能の視点から、金属磁性体粉末及び結合剤からなる第2層と、金属磁性体粉末又は金属酸化物磁性体粉末、及び結合剤からなる第3層の関係は、以下に示す組み合わせが好ましい。
第2層としてCo−Fe−Si−B系アモルファス合金が用いられるときは、第3層としてカルボニル鉄粉末を選択し、第2層としてFe−Ni系アモルファス合金粉末が用いられるときは、第3層としてMn−Zn系フェライト、珪素鋼粉末又はカルボニル鉄粉末を選択する。また第2層としてセンダスト合金粉末が用いられるときには、第3層としてMn−Zn系フェライト又はカルボニル鉄粉末を選択する。
【0044】
第2層としてCo−Fe−Si−B系アモルファス合金、第3層としてカルボニル鉄粉末を選択して組み合わせた場合には、膜厚は、第2層:第3層=1.6mm:1.0mm〜3.3mm:1.0mmであり、第2層としてFe−Ni系アモルファス合金粉末、第3層としてMn−Zn系フェライトを選択して組み合わせた場合には、膜厚は、第2層:第3層=0.9mm:1.6mm〜1.4mm:1.1mmであり、第2層としてFe−Ni系アモルファス合金粉末、第3層としてカルボニル鉄粉末を選択して組み合わせた場合には、膜厚は、第2層:第3層=1.5mm:0.9mm〜3.8mm:1.0mmであり、第2層としてセンダスト合金粉末、第3層としてカルボニル鉄粉末を選択して組み合わせた場合には、膜厚は、第2層:第3層=1.8mm:0.8mm〜4.5mm:0.9mmである。
【0045】
電磁波吸収層が二層以上の複層型の電磁波低反射材1としては、(4)導電性材料からなる第1層に、金属酸化物磁性体と結合剤からなる第2層、第2層で用いたものとは異なる金属酸化物と結合剤からなる第3層、さらに金属磁性体と結合剤からなる第4層からなるもの、さらには(5)導電性材料からなる第1層に、金属磁性体と結合剤からなる第2層、金属酸化物と結合剤からなる第3層、さらに金属磁性体と結合剤からなる第4層からなるもの等が好ましい。
【0046】
(4)(5)に用いられる磁性体や結合剤は、上記単層型や複層型の電磁波低反射材1の形成において用いられた同様のものであり、また(4)(5)の電磁波低反射材1は上記単層型や複層型の電磁波低反射材1と同様にして形成することができる。具体的には、(4)の場合は、第2層はMn−Znフェライトと塩素化ポリエチレンから、第3層はMn−Mg−Znフェライトと塩素化ポリエチレンから、第4層はカルボニル鉄と塩素化ポリエチレンからなる構造のものが上げられる。また(5)の場合は、第2層はセンダスト合金粉末と塩素化ポリエチレンから、第3層はMn−Mg−Znフェライトと塩素化ポリエチレンから、第4層はカルボニル鉄と塩素化ポリエチレンからなる構造のものが上げられる。
【0047】
これら電磁波吸収層の二層以上の組み合わせは、電磁波低反射材1全体の厚さや電磁波吸収能のバランス化、最適化する方法として好ましく用いられる。
本発明の電磁波低反射材1は、表面を保護するために、また美装性を付与するために、必要に応じて、単層型では第2層の上に、複層型では電磁波吸収層の最上層を設けてもよい。電磁波吸収層が二つの層となる複層型について説明すれば、第3層の上に第4層を設けてもよい。表面保護としては、半永久的保護と一次的保護とがある。半永久的保護のためには、耐候性及び機械的強度に優れており、電磁波に対して透過性のある高分子、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂等を第4層として設け、一次的保護のためには、化粧フィルム、可剥性フィルム、可剥性塗料等を第4層として設ける。美装性を付与するためには、プリント模様等の2次元パターン、凹凸模様等の3次元パターン等を有するフィルム等を第4層として設ける。さらに防火性及び消音性を付与するためには、無機系ボード等の難燃性内装材を第4層として形成し、複合材料としてもよい。
【0048】
最上層は、無機バインダー及び有機バインダーのうち少なくとも1種からなる防火ボード又は防火シートであることが好ましい。上記無機バインダーとしては特に限定されず、例えば、硫酸カルシウム、けい酸カルシウム、水ガラス、ポルトランドセメント、アルミナセメント、アルミナシリケート、酸化カルシウム、粘土等を挙げることができる。上記有機バインダーとしては特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等を挙げることができる。
【0049】
上記無機バインダーからなる防火ボードとしては特に限定されず、例えば、石綿スレート板、石綿セメントパーライト板、石膏ボード、ロックウールシーリング板、軽カル板、セメント板、石綿セメントけい酸カルシウム板、石綿セメントサイディング、木毛セメント板、パルプセメント板、木片セメント板、内装用プラスチック化粧板類、化粧硬質繊維板、軟質繊維板、中質繊維振、硬質繊維板、パーティクルボード、化粧パーティクルボード、化粧石膏ボード、シージング石膏ボード、強化石膏ボード等を挙げることができる。上記防火ボードは、無機系の難燃化剤を含有していてもよい。
【0050】
上記無機バインダーからなる防火ボードの厚さは、難燃性と電磁波吸収性の観点から、3〜25mmが好ましい。3mm未満であると、難燃性や電磁波吸収性に対する効果が小さく、25mmを超えると、取り付けや輸送でのボードの折れや割れを生じるおそれがある。より好ましくは、9〜25mmである。
上記有機バインダーからなる防火ボード又は防火シートは、上記有機バインダーと可塑剤、無機フイラー、ガラス繊維、難燃化剤等を組み合わせて形成される。上記有機バインダーからなる防火ボード又は防火シートとしては特に限定されず、例えば、難燃合板、FRP板等を挙げることができる。
【0051】
上記有機バインダーからなる防火ボード又は防火シートの厚さは、50μm〜5mmが好ましい。50μm未満であると、難燃性や電磁波吸収性に対する効果が小さく、5mmを超えると、取り付け作業性や重量又は反りの点で問題を生ずる。
上記難燃材料は、防火壁装材料であってもよい。上記防火壁装材料としては特に限定されず、例えば、壁装材料として認定されている紙壁紙、織物壁紙、ビニル壁紙、化学繊維壁紙、無機質壁紙、特定壁紙等を挙げることができる。これらを形成する材料としては特に限定されず、例えば、第2層の結合剤として使用する塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等の有機高分子材料、紙、セルロース紙等と可塑剤、無機フイラー、ガラス繊維、難燃化剤等との組み合わせによるもの、又は第2層の結合剤として使用する無機窯業材料と無機フイラー、ガラス繊維、難燃化剤等との組み合わせによるもの等を挙げることができる。
【0052】
上記防火壁装材料の厚さは、50μm〜2mmが好ましい。50μm未満であると、難燃性や電磁波吸収性に対する効果が小さく、2mmを超えると、難燃化が難しくなるし、取り付け作業性が低下する。
上記防火壁装材料は、上記(2)(3)の複層型の電磁波低反射材1を例に取れば、第3層にそのまま積層して使用するだけではなく、難燃性材料として無機バインダー及び有機バインダーのうち少なくとも1種からなる防火ボード又は防火シートを使用した第4層に、更に重ねて第5層として使用してもよい。上記防火壁装材料を第5層として使用する場合、第4層と組み合わせることで、TEモードやTMモードにおいて電磁波吸収能を向上させることができる。特に第4層が無機バインダーからなる防火ボードであると、より効果的である。
【0053】
また第2層を形成する結合剤及び第3層を構成する結合剤のうち少なくとも1つが、無機窯業材料であることが好ましい。上記結合剤として無機窯業材料を用いると、得られる電磁波低反射材1の難燃性を高めることができる。
また第2層を形成する結合剤及び第3層を構成する結合剤のうち少なくとも1つが、有機高分子材料であることが好ましい。上記結合剤として有機高分子材料を用いると、得られる電磁波低反射材1の難燃性を高めることができる。上記有機高分子材料として、酸素指数30以上のものを用いると、さらに難燃性を高めることができる。
また第2層及び第3層のうち少なくとも1つには、難燃性及び不燃性を付与するために、更に難燃化剤を添加することができる。上記難燃化剤としては特に限定されず、例えば、(1)酸化燃焼の連鎖反応を停止させるアミン類、フェノール類、塩素化合物、臭素化合物、或いは(2)空気を遮断し酸素と可燃ガスの接触を防ぐりん化合物、ほう素化合物、或いは(3)可燃ガスを希釈して発熱量を低下させる水、二酸化炭莱、アンモニア等の不活性ガス発生剤、或いは(4)可燃物の温度を低下させて分解着火を防止する水酸化物、水和物、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。更に具体的には、上記難燃化剤としては、例えば、へキサブロモベンゼン、デカブロモベンジルフェニルエーテル、デカブロモベンジルフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノール、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリアリルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、含ハロゲン縮合りん酸エステル、塩化パラフィン、パークロロペンタシクロデカン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ほう酸亜鉛、臭化アンモニウム、りん酸チタン等を挙げることができる。
【0054】
上記難燃化剤の配合量は、第2層中及び第3層中、0.01〜15重量%が好ましい。0.01重量%未満であると、得られる電磁波低反射材1の難燃性が充分でなく、15重量%を超えると、結合剤量が減ってシートの物性が低下してしまい、結合剤量を補うと、磁性体が減って電磁波吸収能が低下する。
またこの難燃化は、上述のように(a)第4層を構成する難燃性材料により、(b)第2層を構成する結合剤及び第3層を構成する結合剤のうち少なくとも1つを、酸素指数30以上のポリマーにすることにより、(c)第2層を構成する金属酸化物磁性体微粉末及び第3層を構成する金属磁性体微粉末の種類、粒子径、粒子径分布及び添加量により、又は、(d)第2層及び第3層のうち少なくとも1つに添加される難燃化剤等により行われるが、オフィス等の壁、天井、床等に設置する際、第4層が表層となるので、(a)第4層を構成する難燃性材料の選択は特に重要である。
【0055】
この難燃性を有する電磁波低反射材1は、例えば、次のような方法で製造することができる。まず金属酸化物磁性体微粉末及び結合剤からなる混合物を混練し、熱プレスで圧延した後、熱ロールでシート状に成形する。次に得られたシートに第1層の導電性材料からなる板等を密着させて第1層と第2層の積層体を得る。ついで、金属磁性体微粉末及び結合剤からなる混合物を第2層の上にシート化して被覆することにより第3層を形成する。更にその上に防火ボード等を重ねることにより、本発明の電磁波低反射材1を得る。尚、この電磁波低反射材1は、第2層、第3層及び第4層をこの順で第1層の上に積層することが必要であり、順序を変えると、電磁波吸収能が不十分となる。
【0056】
さらに電磁波低反射材1としては、ハードフェライト及び結合剤から構成される第1層と、導電性材料から構成される第2層と、金属酸化物磁性体微粉末及び結合剤から構成される第3層と、金属磁性体微粉末及び結合剤から構成される第4層とを具備し、第1層を外部磁力により磁化させてマグネットシートとして形成した磁性を有するものを例示することができる。
【0057】
上記ハードフェライトとしては、酸化第二鉄や、マグネシウム、マンガン、亜鉛等の酸化物をもちいることができる。また上記結合剤や金属酸化物磁性体微粉末や金属磁性体微粉末は既述のものを使用することができる。また上記第4層の外側に美装性や強度の向上のために高分子フィルム等で形成される第5層を設けるようにしてもよい。
【0058】
この磁性を有する電磁波低反射材1は磁着することができる場所やもの、例えば鉄板等の金属体で形成される壁や床や天井やドア、及び収納庫などの事務機器や什器に取り付けて使用することができる。
上記電磁波低反射材1により衝立、パーティション、間仕切り、ドア等の内装材を形成することができる。図4(a)乃至(e)には電磁波低反射材1のパーティションが例示してある。これらパーテイションの基本的な構造は、導電性材料から構成される第1層と、金属酸化物磁性体微粉末及び結合剤から構成される第2層と、金属磁性体微粉末及び結合剤から構成される第3層とを具備して形成されるものである。
【0059】
図4(a)に示すパーティションは、第1層40の両表面に第2層41をそれぞれ設け、各第2層41の表面に第3層42をそれぞれ設けて形成されるものであり、第1層40を共通させて最も薄く形成することができるものである。図4(b)に示すパーティションは、第1層40をほとんど隙間なく対向させて二枚の電磁波低反射材1を配置して形成されるものであり、二枚の電磁波低反射材1を用いて電磁波の吸収性を高くしたものである。図4(c)に示すパーティションは、第1層40を隙間を開けて対向させて二枚の電磁波低反射材1を配置して形成されるものであり、第1層40間の空気層45によって断熱効果を有するものである。図4(d)に示すパーティションは、第1層40を隙間を開けて対向させて二枚の電磁波低反射材1を配置し、第1層40間に中間層46を設けて形成されるものである。中間層46として無機ボードを用いると、無機ボードによって断熱性、防音性、遮音性、防振性を有するものである。また中間層46を樹脂層とし、樹脂層をビスコエラスティックな樹脂で形成すると、特に制振性に著しい効果を有し、また樹脂層を発泡性のウレタンフォームや耐熱性の高いイソシアヌレート環を含んだ発泡ウレタンのような発泡性樹脂で形成すると、断熱性が優れたもののとなる。また中間層46をガラス繊維などの無機繊維や合成樹脂等で形成される有機繊維を用いて形成すると、断熱性や遮音性を向上させることができる。また中間層46を木材やコルクボード等の有機ボードで形成することもできる。図4(e)に示すパーティションは、第1層40を隙間を開けて対向させて二枚の電磁波低反射材1を配置し、第1層40にそれぞれ中間層46を設けると共に中間層46間に空気層45を設けて複合型に形成されるものである。
【0060】
上記パーティションのうち、図4(d)のように中間層46を挟んだ構造や図4(e)のように複合型の構造を持つものが、性能の点から好ましい。また上記パーティションは、剛性のある第1層40を有効に生かしてパネル(電磁波低反射材1)全体をフレームで囲んで形成したり、或いはパネルの剛性を生かして箱状構造体に形成したり、或いはパネル端を支柱で支えたり挟んだりして形成することができ、施工される所に適した工法で設置される。尚、ここではパーティションについて説明したが、衝立や間仕切りドアも上記パーティションと同様にして形成することができる。
【0061】
さらに電磁波低反射材1でブラインドを形成することができる。このブラインドは電磁波低反射材1を矩形状に切断してスリット片を形成し、このスリット片を多数枚連結して形成されるものである。このブラインドは窓等のガラス面の前に設置されるものである。
次に部屋内への電磁波低反射材1の設置について説明する。
【0062】
電磁波低反射材1は、図1に示すように壁材として部屋内の壁面3に取り付けることができる。壁材としての電磁波低反射材1は、防火対策から難燃性を有するものであることが好ましい。また難燃性と磁性を有する電磁波低反射材1でカーテンウォールを形成して、鋼板の壁に磁力で取り付けるようにしてもよい。
上記電磁波低反射材1は、壁面3の全体或いは部分的に用いることができるが、対向する壁面3のどちらか一方を、好ましくは対向する壁面3の両方に取り付けるようにする。また電磁波の遅延分散の悪化を防止するために、図5に示すように部屋内で最も長い間隔で対向するように形成された側壁面23a、23bの両方に電磁波低反射材1を設けるのがよい。また電磁波シールド措置を施した窓のガラス30で反射する電磁波を吸収するために為にガラス30に対向する側壁面22bに電磁波低反射材1を設けるのがよい。
【0063】
また電磁波低反射材1は、天井材或いは天井板として部屋内の天井4の全面に或いはアンテナ設置部分に取り付けることができる。天井材としての電磁波低反射材1は、防火対策から難燃性を有するものであることが好ましい。また天井板としての電磁波低反射材1は、表面に化粧用のフィルムを張りつけてデッキプレートに取り付けることもできる。
【0064】
また電磁波低反射材1は、床材として部屋内の床5の全面に或いは部分的に取り付けることができる。床材としての電磁波低反射材1は、塩化ビニル樹脂等で形成されるタイル(P−タイル)と一体化して使用することができる。また電磁波低反射材1をデッキプレート6の上に敷きつめて床を形成するようにしてもよい。尚、床には種々の機器や事務機を設置するので、床よりも天井に電磁波低反射材1を取り付ける方が、部屋内の電磁波吸収能を大きくすることができる。
【0065】
また部屋内には多くのパーティションや衝立や間仕切りが設置されるが、そのうちの全部或いはアンテナ設置部分等の一部を上記電磁波低反射材1のパーティションや衝立で形成することができる。このとき向かい合うパーティションや衝立や間仕切りのどちらか一方を、好ましくは向かい合うパーティションや衝立や間仕切りの両方を電磁波低反射材1で形成することができる。また電磁波の遅延分散の悪化を防止するために、最も長い間隔で設置された向かい合うパーティションや衝立や間仕切りを電磁波低反射材1で形成することができる。また壁面と対向するように設置されたパーティションや衝立や間仕切りを電磁波低反射材1で形成することができる。また部屋外につながる出入口等の開口部の前に設置されるパーティション10や衝立や間仕切りを電磁波低反射材1で形成することができる。また電磁波低反射材1でドア9を形成してもよい。
【0066】
また部屋内に設置された什器51や事務機器52の表面(前面や側面)に電磁波低反射材1を取り付けることができる。この場合、磁性を有する電磁波低反射材1を用いると、収納庫50等の金属で形成される平面部分に磁力で電磁波低反射材1を取り付けることができる。さらに電磁波の遅延分散の悪化を防止するために、最も長い間隔で設置された向かい合う什器51や事務機器52を電磁波低反射材1で形成することができる。また収納庫の扉を電磁波低反射材1で形成してもよい。
【0067】
またブラインドを電磁波低反射材1で形成して、部屋内の任意の場所或いはアンテナ設置場所に取り付けることができる。
このように本発明では、壁面3、天井面4、床面5及び什器51や事務機器52に電磁波低反射材1を設けたので、電磁波低反射材1で無線通信システムから発信される電磁波を吸収して反射しにくくし、電磁波が相互干渉を起こしたり遅延分散特性の悪化を起こしたりして無線通信システムの混信、誤作動や盗聴等の問題が発生しないようにすることができる。また部屋外に無線通信システムの電磁波が漏れないようにすることができ、部屋外の同一の周波数帯で使用されている他の無線通信システムに悪影響を与えないようにすることができる。
【0068】
また本発明は、インテリジェントビルなどの電磁波シールドされる部屋内、或いは電磁波シールドされていない部屋内のいずれにも適用することができる。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳述する。
(電磁波低反射材1−Aの作成)
モル比32:14:54でMnO、ZnOとFe2 O3 とを含む平均粒径15μmのフェライト微粒子を90重量部と、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA(SUMITATE RB−11、住友化学工業社製)10重量部とを110℃に設定したテストロールで混練し、混練体を更に110℃の熱プレスで圧延した後、140℃の熱ロールで2.5mmの厚さのシートに成形した。得られたシートをアルミホイルに密着させて第1層と第2層との積層体を得た。
【0070】
次いで、平均粒径3.5μmのカルボニル鉄(HLグレード、BASF社製)85重量部と、上記と同様のエチレン−酢酸ビニル共重合体EVA15重量部とを上記と同様にして第2層の上を被覆するようにしてシート化し、厚さ0.5mmの第3層を形成した。さらに厚さ11mmの石膏ボードを第3層の上に重ねて積層して第4層を形成し、図3に示すような第1層40と第2層41と第3層42と第4層43から構成される電磁波低反射材1−Aを得た。
【0071】
(電磁波低反射材1−Bの作成)
平均粒径18μmのセンダスト合金粉末(三菱マテリアル社製)75重量部と、塩素化ポリエチレン(昭和電工社製、エラスレン303A)25重量部とを110℃に設定したテストロールで混練し、混練体を更に110℃の熱プレスで圧延した後、140℃の熱ロールで2.9mmの厚さのシートに成形した。得られたシートを厚さ0.8mmの鋼板に密着させて第1層と第2層との積層体を得た。
【0072】
次いで、平均粒径3.5μmのカルボニル鉄(HLグレード、BASF社製)85重量部と、塩素化ポリエチレン(昭和電工社製、エラスレン303A)15重量部と、三酸化アンチモン5重量部とを上記と同様にして第2層の上を被覆するようにしてシート化し、厚さ0.8mmの第3層を形成した。さらに厚さ150μmの塩化ビニル系化粧フィルム(日本ペイント社製、アーテリット)を第3層の上に貼りつけて第4層を形成し、図3に示すような第1層40と第2層41と第3層42と第4層43から構成される電磁波低反射材1−Bを得た。尚、この電磁波低反射材1−Bの周囲にはプラスチック材で形成されるフレームを取り付けた。
【0073】
(電磁波低反射材1−Cの作成)
モル比32:14:5でMnO、ZnOとFe2 O3 とを含む平均粒径15μmの多分散粒径Mn−Znフェライト微粒子と、塩素化ポリエチレン(昭和電工社製、エラスレン303A)を用いて、そのフェライトの体積分率が38%volとなるように、110℃に設定したテストロールで混練し、混練体を更に110℃の熱プレスで圧延した後、140℃の熱ロールで7.2の厚さのシートに成形した。得られたシートをアルミ蒸着を施した厚さ50μmのPETフィルムと接着層を介して一体化して単層型の電磁波低反射材1−Cを得た。
【0074】
(垂直入射での反射減衰量(率)の測定)
上記のようにして作成された電磁波低反射材1−A、1−B、1−Cの垂直入射での電磁波反射減衰量(率)を測定した。電磁波が電磁波低反射材1−A、1−B、1−Cの表面に垂直入射した場合の反射減衰量を測定するために、電磁波低反射材1−A、1−B、1−CをTEM入射測定ができるように加工し、7mm空洞同軸管に入れて、ネットワークアナライザーによって周波数1.9GHz、2.45GHz、19GHzで反射減衰量を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
(斜入射での反射減衰量(率)の測定)
上記のようにして作成された電磁波低反射材1−A、1−B、1−Cの電磁波の45°斜入射での電磁波反射減衰量(率)を近傍電磁界アンテナ測定装置(アイコム社製、NFAMS)を用いて周波数1.9GHz、2.45GHz、19GHzでTEモードとTMモードで測定した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
(60GHzでの反射減衰量(率)の測定)
発振器としてガンダイオードを用い、上記のようにして作成された電磁波低反射材1−A、1−Cに対して、積層面に対してTEM入射するように導波管中に電磁波低反射材1−A、1−Cを設置し、ミキサーを介してスペクトラムアナライザーによって60GHzで反射減衰量を測定したところ、電磁波低反射材1−Aでは10.5dB、電磁波低反射材1−Cでは6.5dBであった。
【0079】
(実施例1)
図5に示すように幅30m、奥行き6m、高さ3mでエクスパンドメタル、デッキプレート、カーテンウォール、導電性材料や電磁波遮蔽ガラス30で電磁波シールドされた部屋において、床面20を除く天井21と、一方の対向する側壁面22a、22bと、他方の対向する側壁面23a、23bの五面に上記電磁波低反射材1−Aを設置した。
【0080】
(実施例2)
実施例1と同様の大きさの部屋で電磁波シールドされていない部屋において、床面20を除く天井21と、一方の対向する側壁面22a、22bを除く他の対向する側壁面23a、23bに上記電磁波低反射材1−Aを設置した。
(参考例)
実施例1と同様のシールドされた部屋において、側壁面23aに上記電磁波低反射材1−Aを設置した。
【0081】
(実施例3)
実施例1と同様のシールドされた部屋において、側壁面23aと側壁面22aに上記電磁波低反射材1−Bを設置した。
(実施例4)
実施例1と同様のシールドされた部屋において、側壁面23aと側壁面22aと天井21に上記電磁波低反射材1−Cを設置した。
【0082】
(比較例)
実施例1と同様のシールドされた部屋において、電磁波低反射材1を全く設置しなかった。
(実験1)
実施例1において、短手方向の端部のA点とB点に2.45GHzの中速無線LANシステムを組み込んだパーソナルコンピュータを設置してA点とB点で通信をおこなった。その結果、100kbyteのデータファイルを3秒で送信することができた。
【0083】
(実験2)
実施例2において、短手方向の端部のA点とB点に1.9GHzのPHS(パーソナルハンディホーン)を設置してトランシーバーモードでA点とB点で通話をおこなった。その結果、音声が途切れることなく通話できた。
(実験3)
参考例において、短手方向の端部のA点とB点に1.9GHzのPHS(パーソナルハンディホーン)を設置してトランシーバーモードでA点とB点で通話をおこなった。その結果、音声が途切れることなく通話できた。
【0084】
(実験4)
実施例3において、短手方向の端部のA点とB点に2.45GHzの中速無線LANシステムを組み込んだパーソナルコンピュータを設置してA点とB点で通信をおこなった。その結果、100kbyteのデータファイルを3秒で送信することができた。
【0085】
(実験5)
実施例4において、短手方向の端部のA点とB点に2.45GHzの中速無線LANシステムを組み込んだパーソナルコンピュータを設置してA点とB点で通信をおこなった。その結果、100kbyteのデータファイルを3秒で送信することができた。
【0086】
(実験6)
比較例において、短手方向の端部のA点とB点に2.45GHzの中速無線LANシステムを組み込んだパーソナルコンピュータを設置してA点とB点で通信をおこなった。その結果、100kbyteのデータファイルを送信しようとしたが、30秒たっても通信は完了せず、スループット速度が極端に低下していた。
【0087】
(実験7)
比較例において、短手方向の端部のA点とB点に1.9GHzのPHS(パーソナルハンディホーン)を設置してトランシーバーモードでA点とB点で通話をおこなった。その結果、音声が途切れがちであり明瞭な通話ができなかった。
【0088】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に記載の発明は、1〜60GHzの周波数帯において反射減衰率が−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する薄型の電磁波低反射材を、天井と床、或いは向かい合う側壁面と側壁面等の面の組み合わせのうち、向かい合わない二面或いは向かい合わない三面に設置するので、電磁波低反射材で無線通信システムから発信される電磁波を吸収して反射しにくくし、電磁波が相互干渉を起こしたり遅延分散特性の悪化を起こしたりして無線通信システムの混信、誤作動や盗聴等の問題が発生しないようにすることができ、通信環境が悪化しないようにすることができるものである。また部屋外に無線通信システムの電磁波が漏れないようにすることができ、部屋外の同一の周波数帯で使用されている他の無線通信システムに悪影響を与えないようにすることができ、同一の周波数帯で多数の無線通信システムを利用することができるものである。
【0089】
また、1〜60GHzの周波数帯において−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する電磁波低反射材を用いるので、無線通信システムで使用される大部分の周波数帯の電磁波を一様に弱く吸収することができるものである。
また、天井と床、或いは向かい合う側壁面と側壁面等の面の組み合わせのうち、向かい合わない二面或いは向かい合わない三面に電磁波低反射材を設けて成ることを特徴とするものであり、最初に電磁波低反射材を設置した面と向かい合わない面に電磁波低反射材を設置することで、電磁波低反射材に関連する反射面が四面となり、部屋全体での電磁波の吸収効率を向かい合い面の両方に電磁波低反射材を配置するよりも良好にすることができるものである。さらに電磁波低反射材の装着面を増やす場合には、残された電磁波低反射材の設置されていない向かい合う面のいずれかに電磁波低反射材を設置することで、部屋全体の電磁波の吸収効率を向上させることができるものである。
また本発明の請求項2に記載の発明は、複数の電磁波吸収層を有する電磁波低反射材を用いるので、各層で別の周波数帯の電磁波を吸収することができる電磁波低反射材を用いることによって、無線通信システムで使用される大部分の周波数帯の電磁波を一様に吸収することができるものである。
【0090】
また本発明の請求項3に記載の発明は、上記電磁波吸収層として、導電性のある第一層と、金属酸化物磁性体の粉末或いは金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第二層と、金属酸化物磁性体の粉末或いは金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第三層とを有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とするものであり、これら電磁波吸収層の組み合わせにより初めて1〜60GHzの周波数帯で反射減衰率が−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する電磁波低反射材を得ることができると共に各電磁波吸収層の特徴が生かせて薄膜で高吸収な電磁波低反射材を得ることができるものである。
【0091】
また本発明の請求項4に記載の発明は、難燃性を有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とするものであり、部屋内の壁面、天井、床にこの電磁波低反射材を用いることによって、部屋内の電磁波吸収能とともに部屋内の防火性能を向上させることができるものである。
また本発明の請求項5に記載の発明は、磁性を有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とするものであり、電磁波低反射材1を金属面に磁着させて任意の場所に取り付けることができるものである。
【0093】
また本発明の請求項6に記載の発明は、電磁波低反射材を用いて間仕切り、ブラインド、ドア、衝立、パーティション、什器、事務機器、収納庫を形成して成ることを特徴とするものであり、電磁波低反射材を任意の場所に設置することができるものである。
また本発明の請求項8に記載の発明は、電磁シールドされていない部屋であることを特徴とするものであり、電磁シールドされていない部屋に電磁波低反射材を設けることによって、外部から部屋内に進入する電磁波や、外部から部屋内に進入する電磁波が部屋内に設置された金属什器、金属家具等の強力な電磁波反射面で反射された電磁波を電磁波低反射材で吸収することができ、部屋の電磁波環境の悪化を防止することができるものである。
【0094】
また本発明の請求項9に記載の発明は、電磁シールドされた部屋であることを特徴とするものであり、外部からの電磁波の進入を防止したり部屋内で発生させた電磁波を外部に漏洩させたりしないようにする目的で電磁波シールドされた部屋に電磁波低反射材を設けることによって、部屋内で発生する電磁波を電磁波低反射材で吸収することができ、シールドされた部屋内の電磁空間の電界強度分布が大きく乱れたり、電界強度が異常に高くなったり、電磁波が減衰しなかったりして、電磁波の相互干渉や遅延分散特性を大きく悪化させないようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態を示す概略図である。
【図2】同上の複層型の電磁波低反射材を示す断面図である。
【図3】同上の他の複層型の電磁波低反射材を示す断面図である。
【図4】(a)は同上のパーティションを示す断面図、(b)は他のパーティションを示す断面図、(c)は他のパーティションを示す断面図、(d)は他のパーティションを示す断面図、(e)は他のパーティションを示す断面図である。
【図5】同上の他の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 電磁波低反射材
10 パーティション
22a 側壁面
22b 側壁面
23a 側壁面
23b 側壁面
50 収納庫
51 什器
52 事務機器
Claims (8)
- 1〜60GHzの周波数帯において反射減衰率が−2〜−15dBの電磁波吸収能を有する薄型の電磁波低反射材を、天井と床、或いは向かい合う側壁面と側壁面等の面の組み合わせのうち、向かい合わない二面或いは向かい合わない三面に設置して成ることを特徴とする無線通信用の部屋。
- 複数の電磁波吸収層を有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とする請求項1に記載の無線通信用の部屋。
- 上記電磁波吸収層として、導電性のある第一層と、金属酸化物磁性体の粉末或いは金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第二層と、金属酸化物磁性体の粉末或いは金属磁性体の粉末と結合剤から構成される第三層とを有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とする請求項2に記載の無線通信用の部屋。
- 難燃性を有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信用の部屋。
- 強磁性を有する電磁波低反射材を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信用の部屋。
- 電磁波低反射材を用いて間仕切り、ブラインド、ドア、衝立、パーティション、什器、事務機器、収納庫を形成して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無線通信用の部屋。
- 電磁シールドされていない部屋であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の無線通信用の部屋。
- 電磁シールドされた部屋であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の無線通信用の部屋。
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