JP3597777B2 - 耐錆性に優れるFe−Ni系合金材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐錆性に優れるFe-Ni系合金板の製造方法に関するものであり、とくに、表面に特徴的な耐錆性酸化皮膜を有するFe-Ni系合金の薄板を製造する方法について提案する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼板や合金板の薄板に、所望の特性を付与し、または改善するために行う光輝焼鈍や、歪取り焼鈍などの熱処理は、例えばステンレス鋼帯の場合、その薄板表面が酸化しないように、水素ガスを含む還元性の雰囲気ガス下で行うのが普通である。しかも、露点の上昇によって前記雰囲気ガスの還元能力が低下し、ひいては被熱処理金属板の表面が酸化されて着色するようなことがないように、露点を−40゜C以下に下げて操業するのが普通である。
【0003】
また、このことはステンレス鋼帯に限らずFe−Ni合金の場合でも同様であって、水素ガスを含む還元性の雰囲気ガスを使用する熱処理では、被処理金属板表面に酸化物が生成しないようにすることが重要であり、次のような技術が提案されている。
(1)特開昭61−113746号公報には、シャドウマスク用Fe−Ni合金表面への酸化物の形成を抑制することにより、シャドウマスク用素材の、エッチング穿孔性を改善する例が開示されている。
(2) 特開平8−319540号公報には、表面酸化皮膜中の酸素濃度を抑えることによって、スジムラやレジスト不良等の発生を抑制し、製品歩留まりを改善したシャドウマスク用Fe−Ni合金薄板が開示されている。
(3)特開昭平−150232号公報には、エッチング性及び黒化膜密着性を改善するために、Si含有量の上限を0.07wt%に規定することにより、光輝焼鈍後の合金表面にSiの濃縮が起こらないようにように、水素濃度と焼鈍雰囲気の露点を制御する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、LNGタンカー用金属板等の場合、板の製造時だけでなく、輸送時・保管時・施工時あるいは航行時にも錆が発生する。従って、こうした錆を防止するためには、素材それ自体の耐錆性を向上させることが肝要である。
一般に、大気腐食錆の主要なものには、α−FeOOOH(ゲーサイト)、β−FeOOOH(アカガサイト)、γ−FeOOOH(レピドクロサイト)、のオキシ水酸化鉄、酸化鉄(Fe3O4/マグネタイト)およびX線的非晶質成分がある。とくに、暴露初期の錆の主要構成は、レクドクロサイト、ゲーザイトおよびX線的非晶質成分の錆となる。しかも、この錆の生成は、湿度のある大気環境下での腐食であり、下記のようなFeとH2Oとのカソード反応が律速となる。
Fe + 3/4O2 + 1/2H2O = FeOOH
【0005】
錆の発生を効果的に防止するには、上記の反応を抑えることが有効である。この点、もし大気中に湿分が存在していなければ、大気にさらされた鉄の腐食速度は無視できる程度に小さくできる。しかし、大気による腐食は、大気に含まれている湿分ばかりではなく、金属表面への湿分の凝縮を助ける作用をもつダストの量や汚染物質(塩素、腐食性ガス等)の濃度にも依存する。もちろん、湿度や温度、汚染物質の量などは、大気成分によっても異なるので、大気腐食の速度は敷設場所によって著しく異なる。
【0006】
一方、鋼板表面の錆は、鋼板製造時のBA処理(例えば75%水素+25%窒素、露点は−60゜C)でも生し易く、例えば大気中に放置しておくだけでも、表面に種々の形態の腐食錆を発生する。また、生成したその錆を放置すれば錆がより一層進行し、最悪の場合は板が錆で貫通する場合もある。
【0007】
このような理由から、錆の発生を効果的に防止するには、有機系または無機系保護フィルムを用いる方法、あるいは金属めっきを施す方法等がある。しかし、これらの方法は、溶接性やコストの面からみると課題が多い。とくに、金属板(例えば鋼板)というのは、耐錆性が求められていると同時に、シーム(抵抗)溶接性やTIG溶接性も必要とされており、もし鋼板の表面に塗装処理等の表面処理を行うと、これらの特性の低下を招く。これに対し、施工時や素材保管時に過剰な防錆対策や錆取り作業を行うこともできるが製造コストが高くなる。
このような理由から、材料自身の耐錆性を向上させることが有効であると考えられる。
【0008】
本発明の目的は、耐錆性に優れたFe-Ni合金材料の有利な製造方法を開発することにある。とくに、本発明では、金属めっきや保護フィルムの貼着に頼ることなく、合金材料表面に耐錆保護用複合酸化物皮膜を直接形成することにて、過剰な保護皮膜の使用を抑えて耐錆性を低コストで実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的の実現に向けて鋭意検討した結果、発明者らは、素材表面に、Fe以外の元素からなる酸化物の極く薄い層を形成させることによって、Feと大気環境中のH2Oとを遮断して、上述したカソード反応を抑制すると、錆の生成が防止できることを知見した。
即ち、本発明者らは、Fe-Ni合金の化学成分、表面性状および製造条件等を種種検討した結果、合金微量成分の設計、最終焼鈍の条件を限定すれば、合金材料の表面に耐錆性を示す複合酸化物層(皮膜)を生成させることができ、これによって上記課題を解決できることを知見した。
【0010】
本発明は、表面に耐錆保護用の非鉄系複合酸化物層を形成してなる耐錆性に優れるFe−Ni合金材料の製造方法を提案する。
【0011】
本発明方法においては、上記複合酸化物層が、Si、Mn、CrおよびAlのいずれか少なくとも一種以上の酸化物からなる層であることが好ましい。
また、上記複合酸化物層は、厚みが200nm以下で、温度70゜C、湿度100%の条件下で、1サイクル/1日の評価試験を行った材料について、その表面に占める錆の面積比である発錆面積率が、20%以下を示す層であることが好ましい。さらに、合金基材中には、円相当直径20μm以上の酸化物系介在物を、1cm2当たり1個以下の数で含有し、かつその酸化物系介在物についての断面清浄度が0.05%以下が好ましい。
【0012】
本発明方法において、Fe−Ni合金の冷延材としては、C:0.01〜0.05 wt%、Ni:34〜39 wt%、Si:0.05〜0.4 wt%、Cr:0.01〜0.5 wt%、Mn:0.05〜1.0 wt%、Al:0.001〜0.1 wt%を主要成分として含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものが用いられる。
また、上記の主要成分に加えてさらに、溶接性改善成分として、下記のいずれか1種以上の成分を含有することが好ましい。
S:0.003 wt%以下 Ca:0.005 wt%以下
Ti:0.1 wt%以下 N:0.01 wt%以下
B:0.002 wt%以下 O:0.0005〜0.01 wt%
Mg:0.005 wt%以下 H:0.001 t%以下
【0013】
即ち、本発明は、
C: 0.01 〜 0.05wt % Ni : 30 〜 45wt %
Si : 0.05 〜 0.4wt % Cr : 0.01 〜 0.5wt %
Mn : 0.05 〜 1.0wt % Al : 0.001 〜 0.1wt %
を主要成分として含有し、残部が Fe および不可避的不純物からなる
Fe-Ni合金の冷延材を、熱処理炉内雰囲気を、水素濃度(x)が5〜 80 vol. %のH 2 +N 2 混合ガスを用い、その混合ガスの露点(Dp)を、x= 3.5 Dp+ 220 〜7Dp+ 75 の範囲内に調整する最終熱処理を行うことにより、表面にSi 、 Mn および Cr または Si 、 Mn 、 Cr および Al の複合酸化物層を形成することを特徴とする耐錆性に優れるFe-Ni系合金材料の製造方法である。
【0014】
本発明方法においては、上記最終熱処理は、処理雰囲気内の温度を700〜1000゜Cとして30秒以上加熱するという条件で行うことが好ましい。
なお、本発明において上記Fe-Ni合金の冷延材は、最大径20μm以下の大きさである酸化物系介在物を1cm2当たり1個以下含有しており、かつ酸化物系介在物についての清浄度が0.05%以下のものを用いることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明において、Fe − Ni合金の冷延材の成分組成を上記のように限定する理由を説明する。
(1) Cは、固溶強化元素であり、また、組織の低温安定性にも寄与する元素である。0.01 wt%未満では十分な強度が得られない。しかし、0.05 wt%を超える過剰のCを含有すると、多量の炭化物を生成して、靭性、耐疲労特性が劣化する。特に、優れた強度、耐疲労特性及び低温特性を得るためには、このCの含有量を厳しく制限する必要があり、本発明では、0.01〜0.05 wt%、望ましくは0.02〜0.04 wt%に限定する。
(2) Siは、安定な酸化皮膜を形成する元素であり、表面にSiの酸化物層(皮膜)を形成することによって錆によるカソード促進反応を抑制し、防錆効果を上げる働きがある。また、このSiは強度の向上にも寄与する他、脱酸剤として、さらには良好な溶接性を維持するためにも有効である。このSiの含有量が0.05 wt%未満では溶接時に十分な溶け込み深さが得られないと共に、光輝焼鈍後の製品表面にSi濃度の高い層(Si酸化皮膜)を形成できない。一方、このSiの含有量が0.4 wt%超では熱膨張係数が大きくなり、溶接時に凝固割れや再熱割れが発生する。このような観点から、本発明においては、Si含有量を0.05〜0.4 wt%とし、好ましくは0.05〜0.3 wt%、より好ましくは0.15〜0.25 wt%とする。
(3) Mnは、固溶強化元素であると共に酸化皮膜の形成元素であり、脱酸剤としても有効な元素である。また、MnSを形成してSの固定を促進し、熱間加工性と耐溶接割れ性を向上させる。このような効果を得るためには0.05 wt%以上の添加が必要である。しかし、1.0 wt%を超える過剰のMnを含有すると、Fe-Ni系合金の熱膨張係数が増大し、加工性も劣化する。そのため、本発明においては、Mn含有量を0.05〜1.0 wt%に限定する。好ましくは、0.2〜0.7 wt%とする。
(4) Sは、0.003 wt%を超えると熱間加工性を阻害し、耐溶接割れ性も劣化する。そのため、S含有量は0.003 wt%以下に抑制した。好ましくは、0.002 wt%以下とする。
(5) Niは、Fe-Ni系合金の熱膨張係数を低く維持する上で重要な合金化元素である。このNi含有量は30〜45 wt%であるが、好ましくは34〜39 wt%である。これらの範囲を外れると、熱膨張係数が増大する。そこで、Ni含有量は、30〜45 wt%の範囲に設定し、好ましくは、34〜39 wt%、より好ましくは、35〜37 wt%とする。
(6) Crは、酸化皮膜形成元素であり、0.01 wt%未満の場合は十分な酸化皮膜を形成しない。一方、0.5 wt%を超えると熱膨張係数が高くなり本来の低熱膨張特性を失う。また、このCrは、Siと同様に、酸化皮膜を安定化する元素でもあり、製品表面に、Siと一緒になって複合酸化物皮膜を生成することによって、耐錆性をより一層向上させる。そこで、本発明においては、このCrの含有量を0.01〜0.5 wt %添加することとし、好ましくは、0.02〜0.2 wt%とする。
(7) Alは、脱酸剤として使用しているが、酸化層(皮膜)の形成元素でもある。このAlを適正な量を合金中に残留させると、防錆性を有する複合酸化物皮膜を効果的に形成し、耐錆性を一層向上する。このAlの含有量は0.001 wt%未満の場合、十分な酸化皮膜を形成できない。一方、0.10 wt%を超えると熱膨張係数が高くなり、溶接の溶け込み性が劣化する。そのため、本発明においてAlは、0.001〜0.10 wt%の範囲に規制する。好ましくは0.002〜0.020 wt%とする。
(8) Tiは、0.1 wt%を超えると、熱膨張係数が高くなり、溶接ビードにおける溶接割れが生じ、溶接ビードの品質が劣化する。このTiは非添加元素であるが、原料から混入する場合がある。従って、Tiの混入を極力抑えることが必要である。本発明においては、Tiの含有量の上限を0.1 wt%に規定した。好ましくは、0.01 wt%以下、より好ましくは0.005wt%以下とする。
(9) Bは、0.002 wt%を超えると、溶接ビードにおける割れが生じ、溶接ビードの品質が劣化する。そのため、本発明においては、B含有量を厳しく制限する必要があり、その上限は0.002 wt%に限定した。
(10) Mgは、0.005 wt%を超えると、大型な酸化系介在物が多量に形成し、溶接ビードの品質が劣化するため、0.005 wt%以下に抑制する。好ましくは、0.0010 wt%以下とする。
(11) Caは、0.002 wt%を超えると、酸化系介在物が多量に形成し、溶接時低融点酸化系介在物によって溶接ビードの品質が劣化する。そのため、0.005 wt%以下に抑制する。好ましくは、0.0010 wt%以下とする。
(12) Nは、0.01 wt%を超えると、溶接ビードの品質が劣化する。また、窒化物を形成し、機械的性質を著しく低下させるため、N含有量の上限を0.01 wt%に限定した。好ましくは、0.0005 wt%以下とする。
(13) Oは、0.0005 wt%以下では溶接時の溶け込み性が不十分となり、一方、0.01 wt%を超える過剰なOを含有すると、溶接時の溶け込み深さが深すぎ、また、溶接金属の粘度が著しく低下し、良好な溶接ビードを得ることができなくなる。また、酸化物系介在物の生成も著しく、溶接ビードの品質と表面の耐錆性が劣化する。優れた溶接性と防錆性を得るためにはO含有量を著しく制限する必要がある。本発明では、O含有量を0.0005〜0.01 wt%の範囲に設定する。好ましくは、0.001〜0.005 wt%以下とする。
(14) Hは、0.001 wt%を超えると、熱間加工性が著しく劣化し、溶接ビードの品質が低下するため、0.001 wt%以下に抑制する。
【0016】
本発明において上記合金材料の表面には、下記の複合酸化物層(皮膜)を形成するが、その厚みは200nm以下とする。もし、この層(皮膜)の厚みが200nmを超えると、シーム溶接時に溶接抵抗が大きくなり、溶接性が劣化する。従って、本発明では、複合酸化物層の皮膜厚みは200nm以下とする。
【0017】
かかる複合酸化物層(皮膜)は、非鉄系のSi、Mn、CrおよびAlのいずれか少なくとも一種の酸化物からるもので形成する。これらの酸化物に着目した理由は、Feより酸化酸素分圧が低いため、Feの酸化酸素分圧以下のFeを酸化しない雰囲気中で酸化層を形成することによって、母材のFeと大気又は溶液を遮断して錆の生成を防止することにある。
【0018】
次に、本発明方法において、得られる合金材料は、酸化物系介在物によって決まる断面清浄度(JIS O 555に準拠する値)を0.05%未満とする。この清浄度が0.05%を超えると、多量の介在物を起因として溶接ビードの品質と耐疲労特性が劣化する。その上、材料表面にも多量の酸化物系介在物が現れ、製品材料の耐錆性が劣化するため、0.05%以下に制限した。
【0019】
なお、表面に現れる酸化物系介在物は、材料表面の欠陥発生原因となり、錆の起点にもなる。そのため本発明では、酸化物系介在物の大きさは、円相当直径(最大径)で20μmとし、1ヶ/cm2以下の密度で分散していることが必要である。一定の視野内に存在する介在物の量が、1ヶ/cm2を超えて例えば2ヶ/cm2以上になると、上述した発錆面積率は20%以上になり、またその大きさが円相当直径(最大径)で20μmのものが多くなると、発錆面積率を20%以上になるとともに、シーム溶接とTIG溶接とも品質が劣化する(充分な品質を得ることができない)。
【0020】
次に本発明の製造方法について説明する。この方法の特徴の1つは、冷延材の最終熱処理にある。
一般に、高温加熱中の酸化酸素分圧は、Al<Si<Mn<Cr<Feの順に高くなる。ところで、Fe−Ni合金の冷延材を最終熱処理するに当たっては、熱処理炉中の雰囲気を、H2+N2混合ガスの露点を上げるか、および/またはH2濃度を下げることにより、該雰囲気中の酸素分圧をFeの酸化酸素分圧以下に制御し、それと同時に、少なくともCrの酸化酸素分圧以上に調整して熱処理を行うことが必要である。
このような熱処理は、本発明では、酸化物層(皮膜)を形成する加熱炉中での雰囲気、または加熱後の冷却中の雰囲気はすべて、Feは酸化しない雰囲気とする一方で、Fe以外の元素(Si、Mn、Cr、Al)については、酸化するという雰囲気に維持することにした。
即ち、そのような雰囲気としては、水素濃度5〜80vol.%以上の水素ガスと窒素ガスとの混合ガス(H2+N2)で構成し、かつ、図1に示すように、混合ガスの露点をx=3.5Dp+220以上7Dp+75以下に抑制することにした。ここで、xは水素の濃度(vol.%)、Dpは露点(゜C)である。
【0021】
また、上記熱処理に当たって、雰囲気内の加熱温度700〜1000゜Cの範囲とする。この温度が700゜C未満では十分な再結晶が行われないし、一方1000゜Cを超えると結晶粒が粗大化し、結晶粒度はASTM No.9以下になるため、材料の強度と疲労寿命を低下する。また、加熱時間は30秒以下では均一な再結晶を売ることが困難で、製品表面への複合酸化物皮膜の形成も不利となる。従って、本発明では、加熱条件は700〜1000゜C×30秒以上とすることが好ましい。
【0022】
上述の雰囲気中で板等を加熱するとき、または加熱後に冷却するときには、Si、Mn、Cr、Al等の少なくても1種または2種以上の元素を含む複合酸化物からなる酸化皮膜が表層に形成される。その酸化皮膜は、Fe以外元素による酸化物皮膜であって、Feと大気環境中のH2Oを遮断し、錆によるカソード促進反応に効果的に抑制し、防錆作用を呈するようになる。
【0023】
【実施例】
次に、本発明にかかる一実施例について説明する。
表1に示す化学成分を有するFe−Ni合金をAODとVODで溶解し、200mm厚さの連続鋳造スラブ(CCスラブ)とした。1100゜C以上の温度で熱間圧延を行い、厚さ3mmの板を得た。さらに、脱スケール処理および表面疵取り処理後に、冷間圧延により厚さ0.7mmの板を得た。それから、表2に示す雰囲気熱処理条件で焼鈍を行った。製造した0.7mm厚の雰囲気焼鈍板の耐錆性評価、即ち発錆面積率を表2に併記した。発錆面積率の評点は上述したとおりの基準である。
【0024】
【耐錆性の評価法】
温度は80゜C、湿度は80%、1サイクル1日の評価試験を実施して、以下の評価基準で耐錆性能を相対評価した。
◎:赤錆発生面積率 5%以下、○:赤錆発生面積率 5%〜10%、△:赤錆発生面積率 10%〜20%、×:赤錆発生面積率 20%以上
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
図2、3、4、5に雰囲気焼鈍を行った薄板の合金元素をGDS(グロー放電型発行分光分析装置)で板表面から深さ方向に合金元素の分布を測定した結果を示す。
図2は、発明例3(表2)を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
図3は、発明例5(表2)を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
図4は、発明例6(表2)を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
図5は、比較例1(表2)を示し、十分な酸化皮膜を生成していない例のグラフである。
上記の各図に明らかなように、本発明適合例では、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸下層を有するため耐錆性が優れていることであり、一方、比較例では、十分な酸化皮膜を生成していないため、耐錆性が非常に劣ることである。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、Fe-Ni 合金材料の錆の発生を効果的に抑制することができ、そのために施工時、素材保管時の過剰な防錆対策を省略することができると共に、錆取り作業の負荷も軽減できる。また、板が錆の進行によって貫通するようなこともなくなり、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、加熱雰囲気中のH2濃度xと加熱雰囲気の露点Dpとの関係を示すグラフである。
【図2】図2は、発明例3を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
【図3】図3は、発明例5を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
【図4】図4は、発明例6を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
【図5】図5は、比較例1を示し、十分な酸化皮膜を生成していない例のグラフである。
Claims (4)
- C: 0.01 〜 0.05wt % Ni : 30 〜 45wt %
Si : 0.05 〜 0.4wt % Cr : 0.01 〜 0.5wt %
Mn : 0.05 〜 1.0wt % Al : 0.001 〜 0.1wt %
を主要成分として含有し、残部が Fe および不可避的不純物からなる
Fe-Ni合金の冷延材を、熱処理炉内雰囲気を、水素濃度(x)が5〜 80 vol. %のH 2 +N 2 混合ガスを用い、その混合ガスの露点(Dp)を、x= 3.5 Dp+ 220 〜7Dp+ 75 の範囲内に調整する最終熱処理を行うことにより、表面にSi 、 Mn および Cr または Si 、 Mn 、 Cr および Al の複合酸化物層を形成することを特徴とする耐錆性に優れるFe-Ni系合金材料の製造方法。 - 請求項1に記載した主要成分に加えてさらに、溶接性改善成分として、下記のいずれか1種以上の成分を含有することを特徴とする請求項1に記載のFe−Ni系合金材料の製造方法。
S:0.003wt%以下 Ca:0.005wt%以下
Ti:0.1wt%以下 N:0.01wt%以下
B:0.002wt%以下 O:0.0005〜0.01wt%
Mg:0.005wt%以下 H:0.001wt%以下 - 上記最終熱処理は、処理雰囲気内の温度を700〜1000゜Cとして30秒以上加熱するという条件で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 上記Fe-Ni合金の冷延材は、最大径が20μm以下の大きさである酸化物系介在物を1cm2当たり1個以下含有しており、かつ酸化物系介在物についての清浄度が0.05%以下のものを用いることを特徴とする請求項1〜3いずれかに1項記載の製造方法。
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