JP3596833B2 - 熱可塑性樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性に優れた熱可塑性樹脂成形体およびその製造方法に関する。特に本発明は、ABS系樹脂に優れた耐薬品性を付与することができる特定のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂とABS系樹脂を同時に成形機に供給し成形(以下、直接成形法と称する。)して得られた熱可塑性樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS系樹脂は高い衝撃強度と剛性、成形加工性、光沢および外観性に優れ、工業用部品や家庭電気製品に数多く採用されている。一方これらの用途では、種々の薬品や洗剤等と接触する機会が多く、ABS系樹脂成形品に亀裂が発生することがある。これを防止するために、ABS系樹脂に耐薬品性を付与することが要求されている。
【0003】
ABS系樹脂の耐薬品性を改良する目的で、ABS系樹脂の樹脂成分を構成するAS樹脂の分子量を増大させる方法、あるいはAS樹脂を構成する極性単量体であるアクリロニトリルの組成比を増大させる方法は公知であるが、これらの方法ではABS系樹脂の成形加工性を損ね、また耐薬品性も十分でない。
【0004】
さらには、ゴム含有スチレン系樹脂とアクリル酸エステル系重合体の混合物からなる組成物も提案されており(特公昭63−22222号公報)、耐薬品性が著しく改善されることが知られている。しかし、この方法では種々の耐薬品性レベルやその他の機械的物性の要求に対応した成形体を生産するのには、その特性レベルの応じた多くの品種の品揃えをしなければならないこととその品種を得るために混練操作等非常に煩雑な操作が必要となり、また経済上も多大なコストが発生するなどの欠点を有している。さらにその品種を得るために混練操作を経るので、特にABS系樹脂が劣化し衝撃強度の低下を招いていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ABS系樹脂に優れた耐薬品性を付与することができるアクリル系ゴム状重合体含有樹脂とABS系樹脂とを直接成形して得られた耐薬品性に優れた成形体を提供することであり、また特性レベルに応じた成形体を得る際に生じていた上記の多品種の品揃えと煩雑な操作、経済性の不利、および衝撃強度の低下等を解決することでもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、下記のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂とABS系樹脂を直接成形することによって得られた熱可塑性樹脂成形体を見い出し、この成形体によってその目的を達成できることを知見した。
すなわち本発明は、カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)の存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)、並びに必要に応じて配合される、芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位からなるビニル共重合体(B)とからなるアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS系樹脂(II)とを同時に成形機に供給し成形して得られた熱可塑性樹脂成形体であり、さらにアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS系樹脂(II)とを同時に成形機に供給し成形する熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明はビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)50〜100重量%とビニル共重合体(B)0〜50重量%とからなるアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)5〜40重量%とABS系樹脂(II)60〜95重量%とを同時に成形機に供給し成形して熱可塑性樹脂成形体を得る方法である。
そして、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)は、カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位0.05〜10重量%を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)100重量部の存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を50〜200重量部重合することにより得られる重合体であり、ビニル共重合体(B)は芳香族ビニル単量体単位50〜80重量%とシアン化ビニル単量体単位20〜50重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜30重量%とからなる重合体である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)に用いるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)の(イ)成分のアクリル系ゴム状重合体から説明する。
(イ)成分のアクリル系ゴム状重合体としては、カルボキシル基または水酸基を有する単量体の中から選ばれた1種以上の単量体と、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等の1種以上のアクリル酸エステル単量体との共重合体、およびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、デシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートおよびペンチルメタクリレートから選ばれた1種以上のメタクリル酸エステル単量体との共重合体、並びにカルボキシル基または水酸基を有する単量体の中から選ばれた1種以上の単量体と、アクリル酸エステル単量体とメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、および上記メタクリル酸エステル単量体等の1種もしくは2種以上の単量体との共重合体が挙げられる。なかでも特にブチルアクリレートとの共重合体が好ましい。
【0009】
アクリル系ゴム状重合体(イ)に用いるカルボキシル基または水酸基を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸およびマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸などのカルボキシル基を有する単量体、並びにヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド等の水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0010】
カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位の量は、アクリル系ゴム状重合体(イ)の構成単量体全体に対して、0.05〜10重量%である。好ましくは0.1〜8重量%である。この量が多すぎても少なすぎても熱可塑性樹脂成形体の外観が不良となる。
【0011】
また、アクリル系ゴム状重合体(イ)の重合に際して、多官能性ビニル単量体を用いても良い。多官能性ビニル単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート等が挙げられる。その使用量はアクリル系ゴム状重合体(イ)の構成単量体全体に対して、0〜10重量%が好ましい。10重量%を越えると、熱可塑性樹脂成形体の外観が損なわれることがある。
【0012】
本発明のアクリル系ゴム状重合体(イ)成分の製造方法については特に制限はないが、乳化重合法による製造が工業的に有利であり、乳化重合法の公知の技術がそのまま適用できる。
【0013】
本発明のビニル系単量体(ロ)として使用する単量体にはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシメチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体などが挙げられる。なかでも、スチレンおよびアクリロニトリルが好ましく用いられる。
【0014】
ビニル系単量体(ロ)は、アクリル系ゴム状重合体(イ)100重量部に対して50〜200重量部を用いる。好ましくは70〜150重量部である。50重量部より少ないと熱可塑性樹脂成形体の外観が不良となり、200重量部より多いと衝撃強度が低下する。
【0015】
ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)の製造は、アクリル系ゴム状重合体(イ)存在下に、ビニル系単量体(ロ)を重合して行われる。重合方法は乳化重合法を好適に用いることができる。
【0016】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、および過硫酸カリウム等の無機過酸化物が挙げられる。
【0017】
また、必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。例えば、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等の化合物が挙げられる。
【0018】
次に、ビニル共重合体(B)について説明する。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体およびその置換単量体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
【0019】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0020】
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、メチルアクリル酸エステルやエチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリル酸エステルやエチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステル単量体、アクリル酸やメタクリル酸等のビニルカルボン酸単量体およびアクリル酸アミドやメタクリル酸アミド、マレイミド、N−フェニルマレイミド、無水マレイン酸等の単量体が挙げられる。
【0021】
重合方法は、公知のいずれの重合技術も採用可能であって、例えば懸濁重合、乳化重合、溶液重合等が採用出来るが、(A)成分のビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体が乳化重合法で製造される場合は、ビニル共重合体(B)も乳化重合法により製造することにより、両者をラテックスブレンドにより混合できるため有利である。
【0022】
この(B)成分のビニル共重合体は、芳香族ビニル単量体単位50〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位20〜50重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜30重量%とからなる。この範囲を逸脱すると熱可塑性樹脂成形体の外観が不良となり、さらには衝撃強度も低下する。より好ましい範囲は、芳香族ビニル単量体単位55〜75重量%、シアン化ビニル単量体単位25〜45重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜25重量%である。
【0023】
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)は、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)と必要に応じて用いられるビニル共重合体(B)とからなり、(A)成分50〜100重量%、(B)成分0〜50重量%が好ましい。(A)成分の量が50重量%未満だと、熱可塑性樹脂成形体の耐薬品性が十分でない場合がある。(B)成分を配合することにより、ABS系樹脂(II)との直接成形性が良好となり、より良好な外観性を有する熱可塑性樹脂成形体を得ることが出来る。
【0024】
ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)と必要に応じて用いられるビニル共重合体(B)との混合方法には、特に制限はなく、公知の手段を使用することが出来る。その手段としては、例えば、バンバリーミキサー、混合ロールおよび1軸または2軸押出機等の押出機が挙げられる。また、両者とも乳化重合法で製造される場合は、ラテックス状態で所定量混合し、析出凝固させ、脱水・乾燥後、上記方法で混合するのが好ましい。
【0025】
次に、本発明の熱可塑性樹脂成形体は、上記のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS系樹脂(II)を成形機に供給し成形して得ることができる。本発明で用いるABS系樹脂(II)の具体例としては、ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン)樹脂、α−メチルスチレン系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−α−メチルスチレン)樹脂、マレイミド系耐熱ABS(アクリロニトリル−ブタジェン−N−フェニルマレイミド)樹脂、AES(アクリロニトリル−EPDM−スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリレート−スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート−ブタジェン−スチレン)樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤を目的に合わせて配合しておくことが出来る。また、(I)の樹脂とABS系樹脂(II)を成形機に供給する際に、これらの添加剤を同時に供給することも出来る。
【0027】
また、アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)には、本発明の目的を逸脱しない範囲、具体的には、0〜20重量%の範囲で、ABS系樹脂(II)をあらかじめ配合しておくことも出来る。
【0028】
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS系樹脂(II)とを直接成形する場合の組成は、アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)5〜40重量%、ABS系樹脂60〜95重量%が好ましい。(I)の樹脂が5重量%未満では、得られた成形体の耐薬品性が十分でなく、一方40重量%を越えると、成形体の外観が不良となる。好ましくは、(I)の樹脂は10〜35重量%、(II)の樹脂は65〜90重量%である。
【0029】
本発明で用いる成形機としては、射出成形機、シート成形機、ブロー成形機、射出−ブロー成形機等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明においてアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS系樹脂(II)とを成形機に供給する方法としては、タンブラーミキサーやVブレンダー等の公知の装置を用いてプリブレンドしたものを供給する方法や、成形機の供給口に、両材料を別々に定量的に供給する方法も採用することが出来る。特に供給する方法にこだわるものではない。また、目的に応じて着色剤あるいは着色剤マスターバッチを同時に供給することもできる。
【0031】
成形機のシリンダー設定温度は、220〜250℃が好ましい。また、射出成形の場合は、成形機シリンダーとノズルの間に、公知の静止型混合器、例えばスルーザータイプ、ケニックスタイプ、東レタイプ等を設置することにより、より高品質の外観性を有する成形体を得ることが出来る。
【0032】
さらに、射出成形機のスクリューは、最も汎用性の高いフルフライトスクリューを用いることが出来るが、より混練性の高いダルメージタイプ、ピンタイプ、マドックタイプのスクリューを用いることも出来る。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例中の部、%はことわりのない限り重量基準で表す。
【0034】
実験例1 アクリル系ゴム状重合体(イ)の製造
純水120部、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム4部をオートクレーブに仕込み、撹拌しながら温度65℃に加熱した。ここに、硫酸第一鉄七水塩0.005部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム・二水塩0.01部およびナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・二水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注入した。次いで、表1に示したアクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体の混合物100部のうち20部をオートクレーブに注入し、残りの80部は、過硫酸カリウム0.05部を20部の純水に溶解した水溶液とともに6時間かけて均等に連続添加した。添加終了後、冷却し、アクリル系ゴム状重合体イ−1〜イ−4のラテックスを得た。
【0035】
【表1】
【0036】
実験例2 ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)の製造
表3に示したアクリル系ゴム状重合体(イ)を100部含むラテックス250部とステアリン酸カリウム2部および純水50部をオートクレーブに仕込み、撹拌しながら温度50℃に加熱した。ここに、硫酸第一鉄・七水塩0.005部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム・二水塩0.01部、およびナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・二水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注入した。次いで、表2に示したビニル系単量体(ロ)の混合液を表3に示した割合でターシャリーブチルパーオキシアセテート0.1部とともに5時間かけて連続添加した。単量体混合液の添加終了後、ターシャリーブチルパーオキシアセテート0.1部を更に添加し、温度70℃に昇温して、さらに2時間撹拌後冷却し、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体A−1〜A−6のラテックスを得た。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
実験例3 ビニル共重合体(B)の製造例
純水150部、ステアリン酸カリウム2部をオートクレーブに仕込み、撹拌しながら温度50℃に加熱した。ここに、硫酸第一鉄・七水塩0.005部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム・二水塩0.01部、およびナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・二水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注入した。次いで、スチレン70%、アクリロニトリル30%からなる混合液100部およびα−メチルスチレンダイマー1.0部を4時間かけて連続添加した。単量体混合液の添加終了後、ターシャリーブチルパーオキシアセテート0.1部を添加し、反応液温度を70℃に上げ、さらに2時間撹拌して重合を終了し、ビニル共重合体Bのラテックスを得た。このビニル共重合体Bの重量平均分子量は250,000であった。
なお、重量平均分子量は、(B)成分重合体の乳化液をメタノ−ル析出して得た固体を試料とし、昭和電工株式会社製「SHODEX GPC SYSTEM−21」を用い、標準分子量のポリスチレンを用いて作製した検量線を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
【0040】
実験例4 アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)の製造例
アクリル系ゴム状重合体(イ)、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)およびビニル共重合体(B)のラテックスを所定量ブレンドし、塩化カルシウム水溶液を添加して、温度90℃で析出させた析出物を濾過、脱水した。これを乾燥後、1軸押出機にてペレットとし、アクリル系ゴム状重合体含有樹脂I−1〜I−8を得た。これらの組成比を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
ABS系樹脂(II)としては、電気化学工業株式会社製ABS樹脂「GR−1500」を用いた。このABS樹脂の衝撃強度、耐薬品性は表5の参考例に示した。
【0043】
実施例1〜5
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂I−1〜I−4およびABS樹脂を、それぞれ定量フィーダーにて、表5に示す割合で射出成形機に供給し、試験片を成形した。成形機は川口鉄工株式会社製射出成形機K−125にて行った。
その他の成形条件は次の通りである。
シリンダー設定温度:220℃
射出圧力:最小充填圧力+5kg/cm2 G
射出速度:70%
金型温度:40℃
スクリュー:フルフライトタイプ
このようにして得られた試験片を用いて、アイゾット衝撃強度測定、耐薬品性評価、外観評価を行った。その結果を参考例として示したABS樹脂単独評価とともに表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
比較例1〜4
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂I−5〜I−8およびABS樹脂を、表6に示す割合で用いた以外は、実施例と同様の方法で行った。
【0046】
比較例5
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂I−1の20%とABS樹脂の80%とを、40mmφ1軸押出機にて温度230℃で押出し、ペレットを得た。このペレットを用い、実施例と同一の成形条件にて試験片を作成した。その評価結果を表6に示した。
【0047】
【表6】
【0048】
各物性測定および外観評価は次の方法で行った。
(1)アイゾット衝撃強度:肉厚1/4インチのノッチ付き試験片を用い、ASTM D−256に準じて測定した。
(2)耐薬品性:JIS K−7113の1号形試験片に50mmのたわみを与えて具に固定し、エチレングリコールモノエチルエーテルを塗布し、温度23℃に放置したときの破断に至るまでの時間を分で表した。
(3)外観:縦127mm、横127mm、肉厚2mmの角板をフィルムゲートで、前記射出成形条件にて成形し、その成形品の外観を目視し、以下の基準で判定した。
○:ゲート部や表面に不良現象(剥離、シルバーストリーク)が発生していない。
×:ゲート部や表面に不良現象(剥離、シルバーストリーク)が発生している。
【0049】
表5の実施例に示す通り、本発明のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS樹脂(II)とを直接成形した成形品は、優れた耐薬品性を有するとともに、衝撃強度、外観性にも優れている。一方、表6の比較例に示す通り、本発明の範囲を逸脱したアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)とABS樹脂(II)とを直接成形した成形品は、これらの優れた品質を保持できない。
【0050】
【発明の効果】
以上、説明した通り、本発明のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂はABS系樹脂と直接成形が可能で、得られた成形体は優れた耐薬品性を有し、工業用部品や家庭電気部品等の広範囲な分野で極めて有用である。
Claims (2)
- 下記のアクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)5〜40重量%と、ABS系樹脂(II)60〜95重量%とを成形機に供給し成形して得られた熱可塑性樹脂成形体。
アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)は、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)50〜100重量%とビニル共重合体(B)0〜50重量%とからなるものである。さらに、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(A)は、構成単量体単位中にカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を0.05〜10重量%含むアクリル系ゴム状重合体(イ)100重量部の存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)50〜200重量部を重合することにより得られる重合体である。そしてビニル共重合体(B)は、芳香族ビニル単量体単位50〜80重量%とシアン化ビニル単量体単位20〜50重量%およびこれらと共重合可能なビニル単量体単位0〜30重量%とからなる重合体である。 - アクリル系ゴム状重合体含有樹脂(I)5〜40重量%とABS系樹脂(II)60〜95重量%とを同時に成形機に供給し成形することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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