JP3596438B2 - シリンダブロックの冷却構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのシリンダブロックの冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、実開昭57−43338号公報は、単一のボア孔の周囲にウォータジャケットが設けられ、該ウォータジャケット内にボア孔軸方向に異形状、周方向に同一形状のスペーサが配置されたシリンダブロックを開示している。
この構造により、燃焼室に近くボア壁温が高温となるボア孔上部付近には十分な冷却水を供給し、燃焼室から遠くボア壁温が高温とならないボア孔下部付近にはスペーサを充填することで不必要な冷却水を供給することをなくしたので、冷却水の供給効率が向上するという効果が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来構造にはつぎの問題がある。
▲1▼ 冷却水入口部では低温の冷却水にてボア壁が冷却されるが、高温のボア壁周囲を通過する間に冷却水温が上昇し、冷却水出口部付近のボア壁の冷却が不十分となる。このボア壁周方向のボア壁冷却効率の相違に起因し、ボア孔が不均一に変形する。その結果、ピストンなどのボア壁追従性の悪化、フリクション増大、燃費悪化を招く。
▲2▼ 複数のボア孔周囲に連続してウォータジャケットが設けられるオープン構造のシリンダブロックにあっては、隣接するボア孔からの熱伝達やボア孔間に十分な冷却水が供給されないことなどのため、他の部位に比べ壁温が上昇する。このボア孔間と他の部位とのボア壁冷却効率の相違に起因し、同様に、ボア孔が不均一に変形する。
本発明の目的は、ボア孔が不均一に変形することを低減できるシリンダブロックの冷却構造を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) ボア壁周囲にウオータジャケットが連続して設けられたシリンダブロックの前記ウォータジャケット内にボア壁温を均一化するように働くスペーサを配置したシリンダブロックの冷却構造であって、
前記スペーサが、(イ)シリンダボア間よりもスラスト・反スラスト側のスペーサの熱伝達率を材料または構造上低くする、(ロ)スラスト・反スラスト側よりもシリンダボア間のスペーサの熱伝達率を材料または構造上高くする、の何れか少なくとも一つの構造をとるシリンダブロックの冷却構造。
) ボア壁周囲にウオータジャケットが連続して設けられたシリンダブロックの前記ウォータジャケット内にボア壁温を均一化するように働くスペーサを配置したシリンダブロックの冷却構造であって、
前記スペーサが、(イ)シリンダボア壁外周の冷却水当り面積を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする、(ロ)スペーサの熱伝達率を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする、(ハ)シリンダボア壁外周面に触れる冷却水通路断面積を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする、(ニ)冷却水入口水温の水を冷却水入口から離れたシリンダボア壁周囲に回すようにスペーサにウォータジャケット内でかつスペーサ外にある冷却水通路とは別の経路を設ける、の何れか少なくとも一つの構造をとるシリンダブロックの冷却構造。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明実施例のシリンダブロックの冷却構造を、図1〜図34を参照して、説明する。本発明の全実施例にわたって共通するまたは類似する構成部分には、本発明の全実施例にわたって同じ符号を付してある。
【0006】
まず、本発明のシリンダブロックの冷却構造のうち、本発明実施例にわたって共通するまたは類似する部分を、たとえば図1〜図3を参照して、説明する。
本発明のシリンダブロックの冷却構造は、ボア壁4周囲にウオータジャケット2が連続して設けられたシリンダブロック1に冷却媒体を供給しボア壁温を均一化するシリンダブロック1の冷却構造において、ボア孔3軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁4周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケット2の性状を設定したシリンダブロック1の冷却構造からなる。
【0007】
シリンダブロック1は冷却水入口部6および冷却水出口部7を有する。ウォータポンプからのエンジン冷却水は冷却水入口部6からシリンダブロック内ウォータジャケット2に入り、冷却水入口部7から出てシリンダヘッド内ウォータジャケットに流れる。ウォータポンプからのエンジン冷却水は、直接シリンダブロック1に流入してもよいし、あるいはいったんシリンダヘッドに入りシリンダヘッドからシリンダブロック1に流入してもよい。図示例では、気筒数が2の場合を示しているが、2以外でも勿論よく、たとえば1、3、4、6、8など任意の気筒数であってもよい。また、図示例では、冷却水入口部6がシリンダブロック1の側部に設けられている場合を示しているが、冷却水入口部6はシリンダブロック1の上部に設けられていてもよい。
【0008】
ボア孔3軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁4周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケット2の性状を設定する構造5は、
(イ)ウォータジャケット2内に配置された、シリンダブロックと別体形成のスペーサ(上記構造5と同じであるためスペーサの符番も5とする)からなるか、または
(ロ)シリンダブロック自体、またはシリンダブロックに一体に形成されウォータジャケット2内に設けられたスペーサ(構造5と同じであるためスペーサの符番も5とする)からなる。
【0009】
本発明実施例にわたって共通するまたは類似する部分の作用を説明する。
シリンダブロックの冷却構造は、ボア孔3軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁4周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケット2の性状を設定してあるので、シリンダボア壁温が高い所の冷却を強め、シリンダボア壁温が低い所の冷却を弱めるこのとにより、よりシリンダボア壁温を均一化することができる。
【0010】
上記(イ)のようにスペーサ5がシリンダブロック1と別体に形成されてウォータジャケット2内に配置される場合は、別体形成とすることにより、シリンダブロックの鋳造における型構造の自由度が上がり、また生産性が上がり、またシリンダヘッド締結時のシリンダブロック外壁の変形がシリンダボアに悪影響を及ぼさなくなる。
ただし、上記(ロ)のようにスペーサ5はシリンダブロック1と一体に形成されてもよい。スペーサ5の材料は、金属、樹脂、ゴム、スポンジ等、任意であるが、シリンダヘッドとのボルト締結時にシリンダブロックの外壁の変形がシリンダボアに影響しないようにする観点からは、外力が加わった時に自身が変形して吸収できるものであることが望ましい。
【0011】
つぎに、本発明の各実施例に特有な構成、作用を説明する。
本発明の実施例1〜7のシリンダブロックの冷却構造では、図1〜図10に示すように、スペーサ5がシリンダブロック1と別体に形成されてウォータジャケット2内に配置されている。実施例1〜7では、スペーサ5はシリンダボア周方向にボア壁温を均一化するように働く。
【0012】
さらに具体的には、実施例1〜7では、スペーサ5は、つぎの▲1▼〜▲6▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例1(図1、図2、図3):ボア間2aよりもスラスト・反スラスト側2bの冷却水のシリンダボア壁外周面への当り面を小さくする。図2が一般部としてのボア間2aを示し、図3がスラスト・反スラスト側2bを示す。ただし、抵抗を増加させないようにするため、通路断面積はほぼ一定である。図2の通路断面積Acmと図3の通路断面積Bcmとは、等しいかほぼ等しい。
▲2▼実施例2(図1、図2、図4):ボア間2aよりもスラスト・反スラスト側2bの冷却水通路を狭くする。図2が一般部としてのボア間2aを示し、図4がスラスト・反スラスト側2bを示す。
▲3▼実施例3(図1、図2、図5、図6):一般部よりもスラスト・反スラスト側2bのスペーサ5の熱伝達率を材料または構造上低くする。図2が一般部を示し、図5がスラスト・反スラスト側2bを示す。熱伝達率を材料上低くする例を図5に示す。図5中、スペーサ5の材料はたとえばゴムまたは連泡ゴムで、スペーサ5のうち熱伝達率が悪い部分5aの部分はたとえば独立発泡ゴムからなる。また、熱伝達率を構造上低くする例を図6に示す。図6中、スペーサ5中に空気層5cまたはオイル層を形成してある。
▲4▼実施例4(図1、図2、図5):一般部よりもボア間2aのスペーサ5の熱伝達率を材料または構造上高くする。図2が一般部を示し、図5がボア間2aを示す。熱伝達率を材料上高くする例を図5に示す。図5中、スペーサ5の材料はたとえばゴムまたは連泡ゴムで、スペーサ5のうち熱伝達率が良い部分5bの部分はたとえば金属または樹脂からなる。また、熱伝達率を構造上高くする例を図7に示す。図7中、熱伝導率のよい材料からなるスペーサ5でウォータジャケット下部を埋めシリンダボア壁の熱を熱伝導でシリンダブロック外壁に伝熱し外壁から放熱する。
▲5▼実施例5(図1、図2、図8):他部(図2)より壁温が高いシリンダボア部分、たとえばボア間部(図8)に、スペーサ5とシリンダボア壁4外周との間にスペーサ5にスリット5dを入れる。そして、スリット5dに冷却水を通してシリンダボア壁4を冷却する。
▲6▼実施例6(図1、図2、図9):他部(図2)より壁温が高いシリンダボア部分(図9)において、スペーサ5のテーパ部5eを深くする。
▲7▼実施例7(図1、図2、図10):一般部(図2)よりもシリンダボア間(図10)の流路面積をスペーサ5により絞って流速を上げる。流速を大とした部分は熱伝達率が上がって冷却度が強くなる。
【0013】
実施例1〜実施例7のシリンダブロックの冷却構造では、スペーサ5により、シリンダボア壁温がボア孔周方向に均一化されるという作用がある。
【0014】
本発明の実施例8〜12のシリンダブロックの冷却構造では、図11〜図18に示すように、スペーサ5がシリンダブロック1と別体に形成されてウォータジャケット2内に配置されている。そして、スペーサ5は、気筒並び方向にシリンダボア壁温を均一化するように働く。実施例8〜12では、スペーサ5は、つぎの▲1▼〜▲5▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例8(図11、図12、図13):シリンダボア壁外周の冷却水当り面積を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする。
▲2▼実施例9(図11、図12、図14):スペーサ5の熱伝達率を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする。熱伝達率を小とするには、図14の左部分に示すようにスペーサ5内に空気層やオイル層5fを形成するか、または図14の右部分に示すようにスペーサ5をゴムか連泡ゴムで形成しスペーサ内面部に熱伝達率の悪い材料(たとえば独立発泡ゴム)を設ければよい。また、熱伝達率を良くするには、図14の右部分に示すようにスペーサ5をゴムか連泡ゴムで形成しスペーサ内面部に熱伝達率の良い材料(たとえば金属、樹脂)を設ければよい。
▲3▼実施例10(図11、図12、図15):シリンダボア壁外周面に触れる冷却水通路断面積を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする。冷却水入口での冷却水通路を複数にわけ、そのうちの一部のみをシリンダボア壁外周面に触れるようにする。複数の通路の断面積AとBの和は、冷却水出口での冷却水通路の断面積Cとほぼ等しく、通水抵抗が増大しないようにすることが望ましい。
▲4▼実施例11(図11、図12、図16、図17):冷たい水を冷却水入口から離れたシリンダボア壁周囲に回すようにスペーサ5に独立の経路5gを設ける。たとえば、入口水温が82℃、出口水温が90℃とした場合、独立経路5gからは82℃の水温の冷却水を全シリンダボア壁回りに流すようにする。
▲5▼実施例12(図11、図12、図18):下流(RR)側ほどシリンダボア壁周囲の流速を上げる。流速の上げ型は、図18のように、独立経路5gの複数の出口を下流ほど絞ってもよいし、あるいは、
・ヘッドガスケットの孔径を下流程絞る、
・シリンダヘッドの孔を下流程絞る、
・プラグタイトで邪魔板を下流側に設置し通路断面積を減らす、
等の手段によってもよい。
【0015】
実施例8〜実施例12のシリンダブロックの冷却構造では、スペーサ5により、気筒間でシリンダボア壁温が均一化されるという作用が得られる。
【0016】
本発明の実施例13、14のシリンダブロックの冷却構造では、図19、図20に示すように、スペーサ5がシリンダブロック1と別体に形成されてウォータジャケット2内に配置されている。実施例13、14では、スペーサ5が、シリンダボア縦方向にシリンダボア壁温を均一化するように働く。
シリンダボア壁温縦方向均一化手段はつぎの▲1▼、▲2▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例13(図19):スペーサ5の熱伝達率を上部で大とし下部で小とする。すなわち、スペーサ5の上部の熱伝達率を下部の熱伝達率より大とする。
▲2▼実施例14(図20):スペーサ上部にスペーサ上部とシリンダボア壁外周面との間を絞る絞り5hを形成し、スペーサ上部の流速を下部より上げる。
【0017】
実施例13、実施例14のシリンダブロックの冷却構造では、スペーサ5により、シリンダボア壁温が縦方向に均一化されるという作用が得られる。
【0018】
本発明の実施例15〜20のシリンダブロックの冷却構造では、シリンダブロック1と別体形成のスペーサ5において、スペーサ5のウォータジャケット2への挿入荷重を小さくするか、または無くした構造(挿入荷重低減構造)としてある。
この挿入荷重低減構造は、つぎの▲1▼〜▲6▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例15(図21):スペーサ5の側面にシリンダブロック1(シリンダボア壁4を含む)との間に隙間a、a’を設ける。
▲2▼実施例16:スペーサ5をウォータジャケット2内で成形する。たとえば、ウォータジャケット2内へ発泡ゴム材を充填し、加熱成形してスペーサ5を成形する。
▲3▼実施例17:スペーサ5の一部のみに締め代をもたせる。
▲4▼実施例18:スペーサ5のシリンダブロック1との接触面に摩擦係数をさげる表面処理を施す。
▲5▼実施例19(図22):スペーサ5のシリンダブロック1との接触面に樹脂5i等を張りつけて摩擦係数をさげた構造とする。
▲6▼実施例20(図23):シリンダブロック横孔のタイトプラグ8にスペーサ5を形成して横挿入型とする。
【0019】
実施例15〜実施例20のシリンダブロックの冷却構造では、挿入荷重低減構造が設けられているので、スペーサ5のウォータジャケット2への挿入をスムーズに行うことができる。
【0020】
本発明の実施例21〜29のシリンダブロックの冷却構造では、シリンダブロック1と別体形成のスペーサ5において、スペーサ5がウォータジャケット2内で浮き上がらない構造(浮き上がり阻止構造)としてある。
この浮き上がり阻止構造は、つぎの▲1▼〜▲9▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例21:スペーサ5をウォータジャケット2を流れる液体(水)の比重よりも重い材料で構成する。
▲2▼実施例22(図24、図25):スペーサ上部に支柱5jを設けてシリンダヘッド9またはヘッドガスケットで支柱5jを上から押さえる。
▲3▼実施例23(図26):ヘッドガスケット10に突起部10aを設けて突起部10aでスペーサ5を上から押さえる。
▲4▼実施例24(図27):シリンダヘッド9に突起部9aを設けて突起部9aでスペーサ5を上から押さえる。
▲5▼実施例25(図28):シリンダブロック側面からピン11を差してピン11でスペーサ5を押さえる。
▲6▼実施例26(図29):シリンダブロック側面に穴12をあけ穴12にスペーサ5をひっかける。
▲7▼実施例27(図30):スペーサ5をヘッドガスケット9と一体化する。
▲8▼実施例28(図31):スペーサ5の一部5kを上方に延ばしてシリンダヘッド9とシリンダブロック1との間に挟み込む。
▲9▼実施例29:スペーサ5をウォータジャケット面に接着する。
【0021】
実施例21〜実施例29のシリンダブロックの冷却構造では、浮き上がり阻止構造を備えているので、ウォータジャケット2に挿入後のスペーサ5の浮き上がりが阻止される。
【0022】
本発明の実施例30〜33のシリンダブロックの冷却構造では、ボア孔3軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁4周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケット2の性状を設定する構造5が、シリンダブロック1自体、またはシリンダブロック1に一体に形成されウォータジャケット2内に設けられたスペーサ(構造5と同じもののため、符番を5とする)からなる。
本発明の実施例30〜33では、上記構造5は、シリンダボア周方向にシリンダボア壁温を均一化するように働く。
本発明の実施例30〜33では、上記構造5は、つぎの▲1▼〜▲4▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例30:ボア間よりもスラスト・反スラスト側のシリンダボア壁4肉厚を厚くする。
▲2▼実施例31:ボア間よりもスラスト・反スラスト側の冷却水通路を狭くする。
▲3▼実施例32:ボア間よりもスラスト・反スラスト側のスペーサの熱伝達率を材料または構造上低くする。
▲4▼実施例33:ボア間を絞り流速を上げる。
【0023】
本発明の実施例30〜33のシリンダブロックの冷却構造では、上記5により、シリンダボア周方向にシリンダボア壁温が均一化するという作用が得られる。
【0024】
本発明の実施例34〜38のシリンダブロックの冷却構造では、ボア孔3軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁4周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケット2の性状を設定する構造5が、シリンダブロック1自体、またはシリンダブロック1に一体に形成されウォータジャケット2内に設けられたスペーサ5からなる。
そして、上記構造5は、気筒並び方向にシリンダボア壁温を均一化するように働く。
本発明の実施例34〜38では、上記構造5は、つぎの▲1▼〜▲5▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例34:冷却水入口6側より冷却水出口7側の方をシリンダボア壁4の肉厚を薄くする。
▲2▼実施例35(図32、図33):冷却水入口6側より冷却水出口7側の方を順次冷却水通路を大きくして、シリンダボア外周のスラスト・反スラスト部位で、シリンダボア壁外周面の冷却水に触れる面積を冷却水入口6側より冷却水出口7側の方を順次大きくする。シリンダブロック1に一体形成のスペーサ5から見れば、シリンダボア外周のスラスト・反スラスト部位で、冷却水入口6側から冷却水出口7側にかけて順次スペーサ形状を小さくする。図33の部位A、B、C、D、Eは図32の部位A、B、C、D、Eに対応する。
▲3▼実施例36:冷却水入口6側より冷却水出口7側の方を熱伝導率の良いスペーサ材料とする。
▲4▼実施例37:冷却水出口7側を絞り、流速を上げる。
▲5▼実施例38(図34):冷たい水を冷却水入口6から離れたシリンダボア壁周囲に回すようにシリンダブロック1またはシリンダブロック1に一体形成のスペーサ5に独立の経路13を設ける。
【0025】
本発明の実施例34〜38のシリンダブロックの冷却構造では、上記構造5により、気筒間でシリンダボア壁温が均一化されるという作用が得られる。
【0026】
本発明の実施例39〜42のシリンダブロックの冷却構造では、ボア孔3軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁4周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケット2の性状を設定する構造5が、シリンダブロック1自体、またはシリンダブロック1に一体に形成されウォータジャケット2内に設けられたスペーサ5からなる。
そして、上記構造5は、シリンダボア縦方向にシリンダボア壁温を均一化するように働く。
本発明の実施例39〜42では、上記構造5は、つぎの▲1▼〜▲4▼の何れか少なくとも一つの構造をとる。
▲1▼実施例39:上部側より下部側の方をシリンダボア壁肉厚を厚くする。
▲2▼実施例40:上部側より下部側の方を冷却水通路を小さくする。
▲3▼実施例41:上部側より下部側の方をスペーサの材料を熱伝導率の悪い材料を設定する。
▲4▼実施例42:上部側を絞り流速を上げる。
【0027】
本発明の実施例39〜42のシリンダブロックの冷却構造では、上記構造5により、シリンダボア縦方向にシリンダボア壁温が均一化するという作用が得られる。
【0028】
【発明の効果】
本発明のシリンダブロックの冷却構造によれば、ボア孔軸直交方向でのボア壁温の高低とボア壁周囲を通過する冷却媒体温の高低の少なくとも一つに基づきウォータジャケットの性状を設定したので、ボア壁温が高い部位では冷却を強めボア壁温が低い部位では冷却を弱めることにより、シリンダボア壁温を均一化することができ、ボア孔が不均一に変形することを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1〜7のシリンダブロックの冷却構造の平面図である。
【図2】本発明の実施例1〜7のシリンダブロックの冷却構造の一般部の断面図である。
【図3】本発明の実施例1のシリンダブロックの冷却構造のスラスト・反スラスト部の断面図である。
【図4】本発明の実施例2のシリンダブロックの冷却構造のスラスト・反スラスト部の断面図である。
【図5】本発明の実施例3のシリンダブロックの冷却構造のスラスト・反スラスト部の断面図、または本発明の実施例4のシリンダブロックの冷却構造のボア間部の断面図である。
【図6】本発明の実施例3のシリンダブロックの冷却構造のスラスト・反スラスト部の断面図である。
【図7】本発明の実施例4のシリンダブロックの冷却構造のボア間部の断面図である。
【図8】本発明の実施例5のシリンダブロックの冷却構造のボア壁温の高い部分の断面図である。
【図9】本発明の実施例6のシリンダブロックの冷却構造のボア壁温の高い部分の断面図である。
【図10】本発明の実施例7のシリンダブロックの冷却構造のボア間部の断面図である。
【図11】本発明の実施例8〜12のシリンダブロックの冷却構造の平面図である。
【図12】本発明の実施例8〜12のシリンダブロックの冷却構造の一般部の断面図である。
【図13】本発明の実施例8のシリンダブロックの冷却構造の冷却水入口、中間部、冷却水出口での断面図である。
【図14】本発明の実施例9のシリンダブロックの冷却構造の冷却水入口と冷却水出口での断面図である。
【図15】本発明の実施例10のシリンダブロックの冷却構造の冷却水入口と冷却水出口での断面図である。
【図16】本発明の実施例11、12のシリンダブロックの冷却構造の平面図である。
【図17】本発明の実施例11のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図18】本発明の実施例12のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図19】本発明の実施例13のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図20】本発明の実施例14のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図21】本発明の実施例15のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図22】本発明の実施例19のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図23】本発明の実施例20のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図24】本発明の実施例22のシリンダブロックの冷却構造の斜視図である。
【図25】本発明の実施例22のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図26】本発明の実施例23のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図27】本発明の実施例24のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図28】本発明の実施例25のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図29】本発明の実施例26のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図30】本発明の実施例27のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図31】本発明の実施例28のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【図32】本発明の実施例35のシリンダブロックの冷却構造の平面図である。
【図33】本発明の実施例35のシリンダブロックの冷却構造の各部位での断面図である。
【図34】本発明の実施例38のシリンダブロックの冷却構造の断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダブロック
2 ウォータジャケット
3 シリンダボア
4 シリンダボア壁
5 スペーサ
5a 熱伝達率が悪い部分
5b 熱伝達率が良い部分
5c 空気層
5d スリット
5e テーパ部
5f 空気層
5g 独立経路
5h 絞り
5i 樹脂
5j 支柱
5k 上に延びるスペーサの一部
6 冷却水入口部
7 冷却水出口部
8 タイトプラグ
9 シリンダヘッド
9a 突起部
10 ヘッドガスケット
10a 突起部
11 ピン
12 穴
13 独立経路

Claims (2)

  1. ボア壁周囲にウオータジャケットが連続して設けられたシリンダブロックの前記ウォータジャケット内にボア壁温を均一化するように働くスペーサを配置したシリンダブロックの冷却構造であって、
    前記スペーサが、(イ)シリンダボア間よりもスラスト・反スラスト側のスペーサの熱伝達率を材料または構造上低くする、(ロ)スラスト・反スラスト側よりもシリンダボア間のスペーサの熱伝達率を材料または構造上高くする、の何れか少なくとも一つの構造をとるシリンダブロックの冷却構造。
  2. ボア壁周囲にウオータジャケットが連続して設けられたシリンダブロックの前記ウォータジャケット内にボア壁温を均一化するように働くスペーサを配置したシリンダブロックの冷却構造であって、
    前記スペーサが、(イ)シリンダボア壁外周の冷却水当り面積を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする、(ロ)スペーサの熱伝達率を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする、(ハ)シリンダボア壁外周面に触れる冷却水通路断面積を冷却水入口で小、冷却水出口で大とする、(ニ)冷却水入口水温の水を冷却水入口から離れたシリンダボア壁周囲に回すようにスペーサにウォータジャケット内でかつスペーサ外にある冷却水通路とは別の経路を設ける、の何れか少なくとも一つの構造をとるシリンダブロックの冷却構造。
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