JP3595915B2 - 加熱薬液蒸散装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は加熱薬液蒸散装置に関し、より詳しくは殺虫剤等の薬液を加熱して蒸散させる加熱薬液蒸散装置の蒸散筒の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より殺虫等の目的で薬剤を加熱蒸散させる方法としては(1)いわゆる蚊取線香及び(2)電気蚊取マット等が愛好されてきた。近年薬液中に吸液芯を浸漬し、芯上部を加熱し薬液を加熱蒸散させる方式が使用の便利性、効果が長時間安定すること等の理由で再び注目されてきた。この方式はかなり古くから知られており、例えば、実公昭43−25081号公報には直接加熱による方式が記載されている。又、間接加熱による方式としては、吸液芯と発熱体とを一定間隔で離間して加熱する方法が、実公昭44−8361号公報、実公昭45−14913号公報および実公昭45−29244号公報に記載されている。
【0003】
薬液の蒸散効率は、加熱薬液蒸散装置の構造と密接な関係にあるが、市販品をみると器体上部に蒸散口を備えると共に、器体胴部、もしくは底部に通気孔を設け、蒸散口と連通しているものが多い。
しかしながら、加熱薬液蒸散装置は、発熱体ユニットの下側に、発熱体、スイッチ、ヒューズ、及びパイロットランプ等を接続するリード線が配設されているため、器体胴部、もしくは底部に設けられた通気孔から針金等の金属物が挿入された時、感電する危険性を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、発熱体ユニットの上端より下側を密閉して金属物の挿入による感電の危険性を除くとともに、高い蒸散効率を保持し得る構造を備えた加熱薬液蒸散装置の蒸散筒の改良を行うことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは加熱薬液蒸散装置における使用性、蒸散効率等についてあらゆる角度から検討した結果、器体の天面開口部の内側に蒸散筒を設け、天面開口部の周囲で、かつ発熱体ユニットの上端より上方の位置に、すなわち、針金等の金属物が挿入されても感電する危険性のない部位に、複数の上昇流強化孔を設け、しかも天面開口部および上昇流強化孔以外の器体部分は密閉することによって、薬液を損失することなく蒸散筒を通じて効率よく蒸散させることができ、しかも感電防止上極めて有効であることを見出した。
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、吸液芯を具有する薬液容器を器体に装着し、該吸液芯の周囲に器体の天面開口部に臨む環状の間隙を形成する発熱体ユニットを備えた加熱薬液蒸散装置において、
前記器体の天面開口部の内側に、前記環状の間隙の上方に位置する蒸散筒を設け、前記器体の天面開口部の周囲で、かつ前記発熱体ユニットの上端より上方に、複数の上昇流強化孔を設け、しかも、前記器体内は前記天面開口部および前記上昇流強化孔以外は密閉されていることを特徴とする加熱薬液蒸散装置に係るものである。
【0007】
又、請求項2の発明は、請求項1の構成において、
前記器体の天面内面に、前記蒸散筒および前記上昇流強化孔の外周に位置する第2の蒸散筒を前記蒸散筒とほぼ同心状に突設したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
請求項1の発明によると、蒸散筒と上昇流強化孔の作用が相まってすぐれた蒸散効率を示す。又、発熱体ユニットの上端より下側を密閉しているので針金等の挿入による感電の危険性は極めて低い。
【0009】
蒸散筒は、吸液芯と発熱体ユニットの間隙の上方に位置し、天面開口部の内側に形成される。蒸散筒の内径は10〜30mmが好ましく、厚みは0.5〜3mm、深さ(筒内面の上端から下端までの長さ)は5〜20mmが適当である。深さが5mm未満であると、蒸散筒による薬液蒸散効率の改善が認められない。一方、深さが20mmを越えると蒸散筒内に蒸散した薬液が蒸散筒内面に付着する等の問題を生じる。
【0010】
蒸散筒は、発熱体ユニットにできる限り近接させるのがより有利であるが、蒸散筒を構成する樹脂等の材料の熱劣化を考慮して、蒸散筒の下端と発熱体ユニットの上端との間は1mm以上の間隔を設ける必要がある。ただし、その間隔が5mmを越えると、蒸散筒を付設した効果を充分に発揮できなくなるので、蒸散筒の下端と発熱体ユニットの上端との距離は1〜5mmの範囲が好ましい。
【0011】
本発明は、天面開口部の周囲で、かつ発熱体ユニットの上端より上方に複数個の上昇流強化孔を設けたことに特徴を有する。上昇流強化孔は、蒸散筒による薬液蒸散効率を一層向上させる作用を有し、その数、形状、開口面積等は、デザイン等も考慮して適宜決定される。
【0012】
請求項2の発明によると、蒸散筒および上昇流強化孔の外周に第2の蒸散筒を突設してあるので、蒸散効率を更に高めることができる。第2の蒸散筒は前記蒸散筒とほぼ同心状に突設され、内径は30〜50mmが好ましい。又、深さ(筒内面の上端から下端までの長さ)は5〜20mmが適当で、前記上昇流強化孔の下端部(外端部)から垂下させるようにしてもよい。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の加熱薬液蒸散装置を図面に従って説明する。
図1ないし図4は、本発明の加熱薬液蒸散装置を示すものであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
図1および図2に示す本発明の加熱薬液蒸散装置の一実施例は、器体1と薬液容器2とからなり、薬液容器2は器体1内部のねじ部にねじ込み吊架される構造となっている。器体1は中空であって、発熱体ユニット3、天面開口部4、蒸散筒5、上昇流強化孔6、薬液容器用ねじ口17等が付設され、一方、薬液8を収容した薬液容器2はその容器口の周囲に雄ねじを有し、容器内から外部に突出した吸液芯9を具えている。器体1の薬液容器用ねじ口17に薬液容器2の雄ねじをねじ込むと、器体1の下面側が密封状態となり、中空の器体1の内部と通ずる箇所は天面開口部4と上昇流強化孔6のみとなる。
蒸散筒5は、器体1内に設けられた発熱体ユニット3の上部に位置する天面開口部4から器体1内の下方に突出しており、上昇流強化孔6は天面開口部4の周囲に複数個(本例では放射状・等間隔に6個)配設されている。
又、図3の加熱薬液蒸散装置は、更に第2の蒸散筒7が突設された構造のものである。このように、上昇流強化孔6の外周に位置して第2の蒸散筒7を設けた構造にすれば、蒸散効率をより高めることができる。
さらに、図4は器体1の構造を縮小し、薬液容器2の頭部に器体1を装着したタイプの加熱薬液蒸散装置を示し、図中符号16は薬液容器2を嵌合、載置するための窪みを有する台座である。
【0015】
器体1は半硬質もしくは硬質の合成樹脂を用いて成形されるが、これを適当な部品に分割して組みたてて所要の一個の形態に構成してもかまわない。又、器体1は、薬液容器2中の液量を装置外から確認できるように、一部透明樹脂を用い、あるいは穿孔して液量確認窓を設けることもできる。
【0016】
薬液容器2は耐薬品性合成樹脂からなり、薬液8を充填し、適当な保持部材を介して吸液芯9を密栓状に保持したのち、器体1に取付け、装着される。薬液容器2を器体1に取付ける方法としては、例えば、薬液容器2の上に設けた保持体に螺合ないし嵌合させる方法(例として図1に示すように、器体1の下面に位置するねじ口17に薬液容器2の容器口をねじ込み、吊架する方法)や、底面に螺合式の底蓋を設け、この上に薬液容器2を載置する方法、又は、薬液容器2の頭部に器体1を螺合ないし嵌合させ、薬液容器2の周囲の面を露出させる方法(例として図4に示すように、器体1の下面に位置するねじ口17に薬液容器2の容器口をねじ込み、薬液容器2の頭部に器体1を装着する方法)等があり、この際、薬液容器2を台座上に載置して保持するようにしてもよい。
【0017】
発熱体ユニット3は、吸液芯9の上端部の周囲を間隙10を存して囲繞するように器体1の頂面中央に備えられる。通電時、該発熱体ユニットの吸液芯に対面する部分は105〜150℃の温度に加熱され、この輻射熱により、吸液芯9に含まれる薬液は蒸散筒5を通って天面開口部4から空中に蒸散する。
【0018】
更に本発明の加熱薬液蒸散装置の器体1の外部又は内部には、オンオフ操作スイッチ11、ヒューズ12、パイロットランプ13、電源コード14等が適宜付設され、これらはリード線15によって相互に発熱体ユニット3に接続している(図面上、リード線15Aとリード線15Bは分断されているが、実際は接続している)。
オンオフ操作スイッチ11はオン操作中光を発するような光源を内蔵してもよく、電源コード14は、延長コード取り付けタイプとしても、又、プラグ端子を器体1に固定するいわゆるコードレスタイプとしてもよいし、あるいは、電源コードを収納するための収納室を別途器体1に設けても差支えない。
【0019】
本発明で用いられる薬液8としては、殺虫剤等を、引火点が高くて臭みがなく、かつ毒性学上安全な溶剤、例えば、炭素数11以上のノルマルパラフィン、イソパラフィンあるいはナフテン系炭化水素類に溶かしたものが好適である。
更に、ポリオキシアルキレンエーテル系の界面活性剤と水を配合して、殺虫剤等を可溶化した水性の薬液を用いることもできる。この水性薬液は前記油性薬液と異なり、引火性を有しないのでより安全である。
【0020】
殺虫剤としては、従来より用いられている各種の揮散性殺虫剤を用いることができ、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等を挙げることができる。一般に、安全性が高いことから、ピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられ、例えば、以下の如き殺虫剤を例示することができるが、もちろんこれらのみに限定されるものではない。
a)3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イルd−シス/トランス−クリサンテマート(商品名;ピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
b)(S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)シクロペンタ−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名;プラレトリン)
c)5−プロパルギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名;ピナミンDフォルテ:住友化学工業株式会社製)
d)1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名;エムペントリン)
【0021】
薬液8には、前記殺虫剤、溶剤のほかに、必要に応じ、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、香料等が添加される。
又、共力剤、忌避剤等を配合して、殺虫効果もしくは防虫効果をより高めることができ、更に殺菌剤、防黴剤等の配合により、殺虫、防虫以外の効果を付与させることも可能である。
【0022】
又、吸液芯9は、炭酸カルシウム、マグネシア、クレー、タルク、カオリン、ケイソウ土、石コウ、磁器物質等の無機物質や、耐熱性高分子物質、木粉、パルプ、炭粉、活性炭等の有機質粉体を、デンプン、デキストリン、メチルセルロース、CMC、PVA等の糊剤で固めることによって得ることができる。
又、無機質及び/又は有機質粉体を成形焼成したもの、あるいは、フェルト、綿、布、不織布等の編組、あるいはガラス、無機繊維、合成樹脂、木材、多孔質セラミックス、多孔質高分子等の多孔質蒸散層からなり、好ましくはその周囲をガラス、無機繊維、合成樹脂等の保持材で被覆したものは、強度的にすぐれ、かつ吸液量、蒸散速度の調整も容易でより適している。そして、これらの吸液芯9は適当な保持部材を介して薬液容器2に密栓状に保持される。
【0023】
このようにして得られた本発明の加熱薬液蒸散装置を通電使用すると、吸液芯9の受熱部に浸透した薬液が発熱体ユニット3に間接加熱されて蒸散される。すなわち、薬液の蒸気と、発熱体ユニット3に接触している空気は、温度の上昇に伴い上方に流動したのち、蒸散筒5内に移動し、蒸散筒5の煙突効果と上昇流強化孔6から生じる相互作用を受けて天面開口部4から効率よく空中に蒸散することになる。
【0024】
本発明を更に詳しく説明するため、以下に試験例を示す。
【0025】
試験例1
殺虫剤としてピナミンDフォルテ(商品名;住友化学工業株式会社製)1.5重量%、ジエチレングリコールモノブチルエーテル50重量%、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8重量%および精製水を含有する水性薬液45mlを内容積50mlの合成樹脂製薬液容器に充填し、保持部材付き吸液芯(外径7.0mm、長さ75.5mm)を装着した。吸液芯としては、ポリエステル繊維を束ねたものの周囲を、同材質の編組芯にシリコーンワニスを塗布したもので被覆し、上面は熱により溶封したものを用いた。この薬液容器を、表1に示す仕様の各種加熱薬液蒸散装置に装着して通電使用し、以下の項目について試験を行った。その結果を表2に示す。
(I)蒸散効率:蒸散した殺虫液をシリカゲル充填カラムでトラップし、ガスクロマトグラフで分析して蒸散ピナミンDフォルテ量を求め、殺虫液重量減少量に対する有効揮散率を算出した。
(II)装置の汚れの程度:300時間使用後、器体1あるいは蒸散筒5の内部に付着した薬液を観察した。
【0026】
【表1】
*1 蒸散筒:内径20mm,深さ10mm,蒸散筒下端と発熱体ユニットとの距離3mm
*2 上昇流強化孔:幅3mm,高さ10mmのスリットを放射状・等間隔に6ヶ所
*3 第2の蒸散筒:内径50mm,深さ10mm
*4 比較例2:天面開口部の内径20mm,開口部と発熱体ユニットとの距離20mm
【0027】
【表2】
【0028】
試験の結果、本発明の加熱薬液蒸散装置を使用した場合には、蒸散効率が非常に高く、しかも装置の汚れ防止の点でも有効であった。一方、蒸散筒を有するも上昇流強化孔を具備しない装置(比較例1)や、蒸散筒および上昇流強化孔のいずれも持たない装置(比較例2)は、蒸散効率が低く、しかも汚れの付着も認められた。なお、本発明の装置は、発熱体ユニットの上端より下側を密閉しているので金属物の挿入による感電の危険性が極めて低く、この点、器体の胴部や底部に通気孔を有する市販品に比べすぐれている。
【0029】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の加熱薬液蒸散装置は、蒸散筒と上昇流強化孔とが薬液蒸散に対して良好に作用して高い薬液蒸散効率を示し、かつ金属物の挿入による感電の危険性が極めて低く、有用なものである。
又、本発明において、蒸散筒および上昇流強化孔の外周に第2の蒸散筒を突設することにより、蒸散効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱薬液蒸散装置の一実施例の断面図を示す。
【図2】図1の加熱薬液蒸散装置の平面図を示す。
【図3】本発明の加熱薬液蒸散装置の別の実施例の断面図を示す。
【図4】本発明の加熱薬液蒸散装置の他の実施例の断面図を示す。
【符号の説明】
1 器体
2 薬液容器
3 発熱体ユニット
4 天面開口部
5 蒸散筒
6 上昇流強化孔
7 第2の蒸散筒
8 薬液
9 吸液芯
10 間隙
11 オンオフ操作スイッチ
12 ヒューズ
13 パイロットランプ
14 電源コード
15 リード線
16 台座
17 薬液容器用ねじ口
Claims (2)
- 吸液芯を具有する薬液容器を器体に装着し、該吸液芯の周囲に、器体の天面開口部に臨む環状の間隙を形成する発熱体ユニットを備えた加熱薬液蒸散装置において、
前記器体の天面開口部の内側に、前記環状の間隙の上方に位置する蒸散筒を設け、前記器体の天面開口部の周囲で、かつ前記発熱体ユニットの上端より上方に、複数の上昇流強化孔を設け、しかも、前記器体内は前記天面開口部および前記上昇流強化孔以外は密閉されていることを特徴とする加熱薬液蒸散装置。 - 請求項1に記載の加熱薬液蒸散装置において、
前記器体の天面内面に、前記蒸散筒および前記上昇流強化孔の外周に位置する第2の蒸散筒を前記蒸散筒とほぼ同心状に突設してなることを特徴とする加熱薬液蒸散装置。
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