JP3594159B2 - 車体フレームに取付けた当板部の水抜き構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車体フレームに取付けた当板部の水抜き構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
車体フレームに補強の目的で当板を溶接する場合に、補強を効果的にするために当板を車体フレームに全周溶接する。この場合、当板に封じ込められた空気を逃がすために当板にガス抜き孔が形成される。
この溶接の後、車体フレームの塗装を実施する。塗装方法としては、通常、カチオン電着塗装法が採用される。
【0003】
カチオン電着塗装法は、被塗装物を陰極とし、この被塗装物を電着槽に満たした電着塗料中に漬け、この被塗装物と電着塗料中に設けた陽極板との間に電圧を印加することにより、被塗装物の表面に塗膜を形成する方法である。
この方法は、塗料のつきまわり性(つきまわり性とは電解着色における均一着色性をいう。)が良く、防錆性や仕上がり性に優れるため、特に車体フレームなどの下塗り塗装として広く実施されている。
この電着塗装が行われる被塗装物には、通常、前処理として脱脂、水洗、表面調整、化成処理、水洗、水切り乾燥が施される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9(a)〜(d)はカチオン電着塗装法の前処理及び塗装工程における塗装欠陥の発生を説明する断面図であり、(a)は湯洗・脱脂工程、(b)水洗・水洗ディップ工程、(c)は水切り乾燥工程、(d)は電着塗装工程を示す。
(a)において、車体フレーム100全体を脱脂した時に、脱脂液101がパイプ102に溶接した当板103の不完全溶接部などの隙間104からパイプ102と当板103との間の隙間105に入る。
(b)において、隙間105に入り込んだ脱脂液101は、不完全溶接部などの隙間104から侵入した水洗液106で置換されずに残留する。
【0005】
(c)残留した脱脂液101は、乾燥の際に温められて当板103に開けたガス抜き孔107からあふれ出し、当板103の外面108及び当板103の下方のパイプ102の外面109に付着し、脱脂液101は熱により乾かされ、乾燥跡111として残る。
(d)当板103及びパイプ102の外面108,109に脱脂液101の乾燥跡111が付着した状態で電着塗装が行われる。乾燥跡111部分には電位差が生じ、塗料が異常付着して、アルカリコンタミ112と称される電着塗装欠陥が生成される。(コンタミ:contamination=汚れ)
【0006】
このような塗装欠陥は、車体フレーム100の外観を損い、欠陥部分を削り落として修復しなければならないという不都合がある。
そこで、本発明の目的は、車体フレームとこの車体フレームに溶接した当板との間の隙間に侵入した水又は他の液体を車体フレーム側へ流すために車体フレームに取付けた当板部の水抜き構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、車体フレーム内に貫通する水抜き孔を開けた。
車体フレームとこの車体フレームに溶接した当板との間の隙間に侵入した水又は他の液体は、水抜き孔から車体フレーム内に流れ出し、当板や車体フレームの外面を水又は他の液体で汚すことはない。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る自動二輪車の側面図であり、自動二輪車1は、クレードル型車体フレーム2のヘッドパイプ3にフロントフォーク4を取付け、このフロントフォーク4に前輪5及びフロントフェンダ6を取付け、一方、クレードル型車体フレーム2の各パイプで囲まれたスペース内にエンジンハンガー7…(…は複数を示す。)を介して4サイクルエンジン8を取付け、このエンジン8から排気管9を延ばしてサイレンサ11に接続し、さらに、車体フレーム2の後端部のピボット12を介してスイングアーム13を取付け、このスイングアーム13に後輪14を取付けたものである。
【0009】
図中、15は車体フレーム2の後部に取付けたリヤサスペンション、16はドライブチェーン、21は車体フレーム2のメインパイプ41を跨いで取付けた燃料タンク、22はエアクリーナ、23は気化器、24はバッテリである。
また、31はシート、32はステップ用ブラケット、33はステアリングハンドル、34はメータ、35はヘッドライト、36はテールライト、37はリヤフェンダ、38はサイドカバーである。
【0010】
図2は本発明に係る自動二輪車の車体フレームの側面図であり、車体フレーム2は、ヘッドパイプ3から後方へメインパイプ41を延ばし、このメインパイプ41の後部からセンタパイプ42を立ち下げ、一方、前記ヘッドパイプ3からダウンチューブ43を立ち下げ、このダウンチューブ43の下部からロアパイプ44を後方へ延ばし、このロアパイプ44の後部を前記センタパイプ42の下部に接合してなり、前記メインパイプ41、センタパイプ42、ダウンチューブ43及びロアパイプ44を角パイプとしたシングルクレードル型車体フレームである。
【0011】
前記車体フレーム2は、上部においてメインパイプ41とダウンチューブ43との間にのみ補強用パイプ45を掛け渡し、この補強用パイプ45の下方に補強部材を設けない、比較的柔軟構造のフレームである。
ヘッドパイプ3とメインパイプ41とダウンチューブ43と補強用パイプ45とは、前部ガセット46で補強したものであり、メインパイプ41と補強用パイプ45とは、後部ガセット47で補強したものである。
【0012】
センタパイプ42は、メインパイプ41の後部から屈曲しながら立ち下がり、その屈曲した上部コーナにシートレール48を接合したものであり、このシートレール48は後方に延びた角パイプである。
図中、49,49(この図では一方のみ示す。)は、センタパイプ42から後上方に延びた左右1対のサブフレームであり、シートレール48の略中間部を支持する部材である。51はリアサスペンション用の上部ブラケット、52はエアクリーナ取付け用ブラケット、53はスイングアーム13(図1参照)を支持するためのパイプ状支持ブラケットである。また、55はオイルレベル検知口、56はオイル取入れ口、58はオイルドレン口、61は盲板、63は接合ジョイントである。
【0013】
図3は本発明に係る自動二輪車の車体フレームの平面図であり、ヘッドパイプ3、メインパイプ41、センタパイプ42、ダウンチューブ43(図2参照)、ロアパイプ44及びシートレール48が車幅中心を通ることを示す。
センタパイプ42の横幅(左右L,R方向の幅)L1は、メインパイプ41の横幅L2より大きい。
【0014】
図4は本発明に係るリヤサスペンション用上部ブラケットの取付け状態を示す斜視図であり、上部ブラケット51は、センタパイプ42の後壁42aに当てるブラケット本体51aと、このブラケット本体51aの左右両端からセンタパイプ42の左右の側壁42b,42b(片側は省略)に沿って延ばした延出部51b,51b(片側は省略)と、上記ブラケット本体51aに接合し、且つリヤサスペンション15の上部を回転可能に支持したサブブラケット51cと、これらのブラケット本体51a、サブブラケット51c間に渡して接合した補強部材51dとからなる。
【0015】
ここで、15aはアウタチューブ、15bは懸架スプリング、15cは上下位置調整可能なアッパスプリングシート、15dはアッパスプリングシート15cを固定するためのロックナット、15eはリヤサスペンション取付け用のボルトである。
上記した接合は、全て溶接による。
【0016】
図5は本発明に係るリヤサスペンション用上部ブラケットの取付け状態を示す側面図であり、上部ブラケット51の延出部51b,51bは、センタパイプ42の側壁42b,42b(奥側は省略)に溶接にて接合するものである。なお、42cはセンタパイプ42の前壁である。
補強部材51dは、断面コ字形状であり、サブブラケット51cの上部から跨いで溶接にて接合することで、ブラケット本体51a、サブブラケット51c及び補強部材51dで囲まれる三角柱形状の閉空間を有する構造物を形成して、上部ブラケット51全体の剛性を高めることができ、リヤサスペンション15から作用する力によって生じるブラケット本体51a及びセンタパイプ42の後壁42aのたわみを効果的に抑えることができる。
【0017】
図6は本発明に係るリヤサスペンション用上部ブラケットの取付け状態を示す背面図であり、ブラケット本体51aは、門形状部材であり、周縁全体をセンタパイプ42に溶接するものである。これにより、一体になったブラケット本体51a及び延出部51b,51bは、センタパイプ42の後壁42aから側壁42b,42bにわたって全周を溶接するものとなる。
このように、ブラケット本体51aを門形状にすることで、門形の内側も溶接することができ、溶接長さを大きくとることができるので、後壁42aとの接合が強固となる。
【0018】
サブブラケット51cは、断面コ字形状であり、ブラケット本体51aの上記した逆コ字形状の部分に接合し、このサブブラケット51cの中央部51eは、側部51f,51fよりも前方に突出し、センタパイプ42にも接合するものである。
サブブラケット51cの側部51f,51fの接合位置は、ブラケット本体51cの延出部51b,51b寄りである。
【0019】
ここで、42d,42dは通孔であり、一体になったブラケット本体51a、延出部51b,51bとセンタパイプ42との間の隙間に侵入する水又は他の液体や、この隙間に溜まる溶接時のガスをセンタパイプ42内に抜くためにセンタパイプ42に開けた水抜き孔である。51gはガス抜き孔であり、ブラケット本体51a、サブブラケット51c及び補強部材51dで囲まれた閉空間内に溜まる水又は他の液体、ガスを抜くための通孔である。51h,51jは、リヤサスペンション15(図4参照)取付け用のボス部である。
上記のように、上部ブラケット15を構成するブラケット本体15a、延出部15b,15b、サブブラケット15c及び補強部材15dは、どれも簡素な形状なので、成形が容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0020】
以上に述べた上部ブラケットのセンタパイプへの接合要領を図5及び図6に基づいて説明する。
▲1▼センタパイプ42に一体になったブラケット本体51a及び延出部51bを溶接にて接合する。
▲2▼ブラケット本体51aにサブブラケット51cを溶接にて接合する。このとき、サブブラケット51cの中央部51eの突出した前端はセンタパイプ42に溶接する。
▲3▼サブブラケット51cの上部に補強部材51dを跨がせ、全周を溶接にて接合する。
これで、センタパイプ42への上部ブラケット51の接合は完了する。
【0021】
以上に述べた上部ブラケットの作用を次に説明する。
図7は図5の7−7線断面図であり、リヤサスペンション15(図4参照)からサブブラケット51cに作用した力Fは、延出部51b,15b寄りのブラケット本体51aに伝わる。
この力Fを、センタパイプ42は、後壁42a、角部42e,42e及び側壁42b,42bという広い範囲で受けるので、力Fを分散させることができ、集中させることがないので、上部ブラケット51の剛性を必要以上に大きくせずに済み、上部ブラケット51を小型化し、軽量化することができる。
更に、角部42e,42e及び力Fの方向に延びた側壁42b,42bは、剛性が高いので、センタパイプ42でリヤサスペンション15から伝わる力を十分に支えることができる。
【0022】
以上に述べた水抜き孔の作用を次に説明する。
図8は本発明に係る水抜き孔の作用を示す断面図であり、センタパイプ42に一体となったブラケット本体51a及び延出部51b,51b(図7参照)を全周溶接したときに、不完全溶接部などの隙間Wが生じることがあり、この隙間Wからセンタパイプ42とブラケット本体51a、延出部51b,51bとの間の隙間Cに水又は他の液体、例えば、カチオン電着塗装の前処理における脱脂液Fが侵入する。前記隙間Wには、ガス抜き孔を設けた場合に、ガス抜き孔も含む。
【0023】
この脱脂液Fは、センタパイプ42に開けた水抜き孔である通孔42d,42d(片側は省略)からセンタパイプ42内に流れ出る。
そして、センタパイプ42の内面42fに付着した脱脂液Fは電着塗装の乾燥工程で乾燥され、乾燥跡として残るが、外部からは目に触れないので、問題はない。
【0024】
このように、水抜き孔である通孔42d,42dを当板としたブラケット本体51a、延出部51b,51b側に開けずにセンタパイプ42に開けたことで、センタパイプ42とブラケット本体51a、延出部51b,51bとの間の隙間Cに侵入した水又は他の液体は、通孔42d,42dからセンタパイプ42内部に流れるので、ブラケット本体51a、延出部51b,51bの外面51kやセンタパイプ42の外面42gを水又は他の液体で汚すことはなく、外観を向上させることができる。
尚、本発明の通孔42dは、この実施の形態に限るものではなく、例えば、形状を三角孔、四角孔、だ円孔としたり、数量を更に増やしてもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の車体フレームに取付けた当板部の水抜き構造は、車体フレーム内に貫通する水抜き孔を開けたので、車体フレームとこの車体フレームに溶接した当板との間の隙間に侵入した水又は他の液体は、水抜き孔から車体フレーム内に流れ出し、当板や車体フレームの外面を水又は他の液体で汚すことはなく、外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動二輪車の側面図
【図2】本発明に係る自動二輪車の車体フレームの側面図
【図3】本発明に係る自動二輪車の車体フレームの平面図
【図4】本発明に係るリヤサスペンション用上部ブラケットの取付け状態を示す斜視図
【図5】本発明に係るリヤサスペンション用上部ブラケットの取付け状態を示す側面図
【図6】本発明に係るリヤサスペンション用上部ブラケットの取付け状態を示す背面図
【図7】図5の7−7線断面図
【図8】本発明に係る水抜き孔の作用を示す断面図
【図9】カチオン電着塗装法の前処理及び塗装工程における塗装欠陥の発生を説明する断面図
【符号の説明】
2…車体フレーム、42…センタパイプ、42d…水抜き孔(通孔)、42f…センタパイプの内面、42g…センタパイプの外面、51a,51b…当板(ブラケット本体、延出部)、51k…当板の外面、C…隙間、W…不完全溶接部などの隙間。
Claims (1)
- 中空断面の車体フレームに当板をその周囲を溶接して取付けたときに、当板と車体フレームとの間に侵入した水又は他の液体を抜くための水抜き構造において、車体フレーム内に貫通する水抜き孔を開けたことを特徴とする車体フレームに取付けた当板部の水抜き構造。
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