JP3592899B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに関し、詳しくは、耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性に優れた特にトラック、バス等に用いられる重荷重用空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りタイヤの耐偏摩耗性を向上させるためには、トレッドゴムにSBRを添加することにより、高温域でのtanδを上げる方法が用いられている。また、耐引裂性向上のためには、トレッドゴムの弾性率を下げ、シリカおよびシランカップリング剤を添加してトレッドゴムの伸びを確保する方法が用いられている。また、発熱性向上のためには、トレッドゴムの弾性率を上げてタイヤの変形を抑え、また高温域でのtanδを下げる方法が用いられている。
このように、耐偏摩耗性向上のために、トレッドゴムのtanδを上げると、発熱性が悪化し、発熱性向上のために、トレッドゴムの弾性率を上げると、耐引裂性が悪化する、また、耐引裂性向上のために、シリカおよびシランカップリング剤を添加すると、発熱性については問題がないが、大幅なtanδの低下を招き、耐偏摩耗性が悪化するというように、耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性の3つを両立させることは困難であるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性の3つを両立させるためには、シリカおよびシランカップリング剤の添加により、低歪み域での弾性率を上昇させてトレッドゴムの変形を抑制し、高歪み域での弾性率を低下させてトレッドゴムの伸びを確保した上で、tanδの低下を防止することが必要である。
本発明は、上記の事実に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シリカおよびシランカップリング剤を配合したトレッドゴムのtanδの低下を防止し、耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性の総てに優れた重荷重用空気入りタイヤを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ポリエチレン成分の添加により、耐引裂性、低発熱性に優れるシリカおよびシランカップリング剤を配合したトレッドゴムのtanδ特性が向上することを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、(1)本発明の重荷重用空気入りタイヤは、天然ゴム50〜100重量部、スチレン−ブタジエンゴム0〜50重量部からなるゴム成分100重量部に対して、カーボンブラックおよびシリカからなる充填剤を45〜60重量部、該充填剤重量部のうち、シリカを5〜20重量部、ポリエチレンを2〜15重量部、シランカップリング剤をシリカ量の1〜30重量%配合してなるゴム組成物を、トレッドゴムに使用したことを特徴とする。
【0005】
(2)前記(1)に記載のポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする。
(3)前記(1)に記載のシランカップリング剤が、下記一般式、
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、nは1〜3の整数、mは1〜9の整数、yはポリサルファイド部の硫黄原子の平均数であり、2<y≦5の正数を表す。)
で表されるシランカップリング剤をシリカの量に対して3〜15重量%配合してなることを特徴とする。
【0008】
(4)前記(3)に記載のシランカップリング剤中の、ポリサルファイド部の硫黄原子の平均数yが、2.5≦y≦3の正数であることを特徴とする。
本発明のタイヤは上記のように、所定のゴム成分に、カーボンブラックおよびシリカからなる充填剤とシランカップリング剤に加えて、ポリエチレンを配合したことに大きな特徴がある。
【0009】
即ち、トレッドゴムにシリカおよびシランカップリング剤を配合することにより、耐引裂性は大幅に向上するものの、tanδの低下により偏摩耗性が悪化するが、そこに、上記ポリエチレンを配合することにより、ポリエチレンの高温域でのtanδの高さから偏摩耗性を改良することができ、また、ポリエチレンの低弾性域での弾性率は高いため、低発熱性を阻害しないという知見を得るに至り、トレッドゴムにシリカおよびシランカップリング剤とともに、ポリエチレンを配合することにより、耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性の総てに優れた重荷重用空気入りタイヤが得られたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のトレッドゴムのゴム組成物のゴム成分としては、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)を用いることができる。SBRとしては、特に制限は無いが、乳化重合SBR、溶液重合SBR等を用いることができる。これらの各ゴム成分の配合量は、全ゴム成分100重量部に対して、NRが50〜100重量部、SBRが0〜50重量部であり、SBRが30〜50重量部配合されているのが好ましい。SBRが50重量部を超えると発熱性の低下が激しく実用的ではない。
【0011】
本発明に用いられる充填剤はカーボンブラックおよびシリカからなる。
カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAFが好ましく使用できるが、特に限定されるものではない。シリカとしては沈降法による合成シリカが用いられ、コロイダル特性が120≦N2 SA≦240であり、かつ170≦DBP≦250であるシリカが好ましく使用される。具体的には、日本シリカ工業(株)製の「ニップシールAQ」、ドイツデグサ社製の「ULTRASIL VN3」、「BV3370GR」、ローヌ・プーラン社製の「RP1165MP」、「Zeosil 165GR」、「Zeosil 175VP」、PPG社製の「Hisil 233」、「Hisil 210」、「Hisil 255」等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0012】
充填剤の配合量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、45〜60重量部であり、45〜50重量部がより好ましい。充填剤の配合量が45重量部未満では耐摩耗性等の耐久特性が悪化し、60重量部を超えると走行時の発熱を抑えることができず、また作業性が低下するため好ましくない。充填剤のうち、シリカの配合量は、ゴム成分100重量部に対して、5〜20重量部であり、5〜15重量部がより好ましい。シリカの配合量が5重量部未満では耐引裂性、発熱性改善の効果が小さく、20重量部を超えると、カーボンブラックの比率の低下により耐摩耗性が悪化する。また、均一な分散が困難になる等の不都合もある。
【0013】
本発明のトレッドゴムのゴム組成物には、ポリエチレンを配合する。ポリエチレンを配合することにより、ポリエチレンの高温域でのtanδの高さから偏摩耗性の改善が図られる。また、ポリエチレンは低弾性域での弾性率が高いため、発熱性を阻害することがない。これによって、シリカおよびシランカップリング剤を使用した場合のtanδの低下という問題が改善される点で、極めて重要な要素である。
本発明で用いられるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられるが、高い弾性率と低いヒステリシスロスの点で、高密度ポリエチレンが好ましく用いられる。また、密度0.94〜0.97、融点110℃〜140℃のポリエチレンが好ましく用いられる。
【0014】
ポリエチレンの混練りは何ステージかに分かれるが、最終ステージより前であって、少なくとも一つのステージにおいて、混練物の最高温度が配合したポリエチレンの融点より高温であることが好ましく、特には10℃以上であることが好ましい。この最高温度がポリエチレンの融点よりも低い状態で配合された場合、ポリエチレンの粘度が高く、このためにポリエチレンの分散性およびマトリックスゴムとの親和性が十分でなく、この結果、配合物の破壊特性の低下を招くことがある。
【0015】
ポリエチレンの配合量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、2〜15重量部であり、好ましくは5〜10重量部である。ポリエチレンの配合量が2重量部未満ではポリエチレンの配合の効果が見られず、15重量部を超えると作業性が大幅に悪化する。
【0016】
本発明のトレッドゴムのゴム組成物には、シランカップリング剤を配合する。シリカ−ゴム成分間の物理的結合がカーボンブラック−ゴム成分間の結合に比べて弱いため、タイヤの耐摩耗性が低下する。そこで、シランカップリング剤は、このシリカ−ゴム成分間の結合を強化し、耐摩耗性を確保するために使用される。
【0017】
本発明では、シランカップリング剤として、前記一般式で表されるシランカップリング剤を用いるのが好ましい。
式中、nは1〜3の整数を表し、mは1〜9の整数、好ましくは2〜5の整数を表す。また、ポリサルファイド部のSy のyはポリサルファイド部の硫黄原子の平均数を表し、2<y≦5の正数、好ましくは2.5≦y≦3の正数である。ここで、硫黄原子の平均数とは、該ポリサルファイド部におけるS1 〜S9 のような原子数の異なる硫黄原子の分布の平均の数を意味する。硫黄原子の平均数yが2以下、すなわちS1 、S2 ではカップリング作用を示さないので補強性が悪化し、yが5を超えると150℃以上の高温練りにおいて、ゴム成分のゲル化が起こり易くなり、ムーニー粘度が大幅に上昇して、生産性が劣ることになる。
【0018】
上記のシランカップリング剤としては、例えば、ビス−(トリアルコキシシリルアルキル)ポリサルファイドのアルコキシ基がメチル基、エチル基、プロピル基であり、アルキル基がメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基であり、ポリサルファイド基−Sy −が上記硫黄原子の平均数を有する基である化合物等が用いられる。
【0019】
シランカップリング剤の配合量は、シリカの量に対して1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%である。1重量%未満では補強が十分ではなく、30重量%を超えると弾性率の上昇が大きい。また、コストも大幅に上昇し実用的でない。
【0020】
本発明のトレッドゴムのゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の配合剤として、ゴム工業で通常用いられる酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、WAX、加硫剤等の成分を適宜配合することができる。
本発明のトレッドゴムのゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより得られ、成形加工後、加硫を行ない、タイヤトレッド等に用いられる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0022】
各種のタイヤ特性の測定は以下の方法により行った。
(1)耐偏摩耗性
平均接地圧が8kg/cm2 で使用されるサイズTBR,11R22.5のリブパターンの試作タイヤを10トントラックのフロントに装着し、10万km走行後トレッドゴムの偏摩耗面積を測定し、その逆数を用いて、比較例1の値を100とした指数で表示した。従って、数値が大きいほど、耐偏摩耗性が良好であることを表す。
(2)耐引裂性
試作タイヤを10トントラックの全輪に装着し、2万km走行後のタイヤを縁石に対して5°の角度で乗り上げて、リブ引裂の長さを測定し、その逆数を用いて、比較例1の値を100とした指数で表示した。従って、数値が大きいほど、耐引裂性が良好であることを表す。
(3)発熱耐久性
試作タイヤを10トントラック全輪に装着し、走行時のタイヤの表面温度を測定した。
【0023】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
下記の表1に示す配合処方に従って、混練配合を行い、このトレッドゴム配合物を用いて、タイヤ構造として4ベルト、1スチールカーカス、リブパターンの平均接地圧が8kg/cm2 で使用されるサイズTBR,11R22.5のタイヤを試作し、タイヤの諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に表されるように、本発明の重荷重用空気入りタイヤは、タイヤの走行初期から末期まで、高度の耐引裂性、低発熱性を維持でき、かつ、耐偏摩耗性が大幅に改良されていることが分かる。
これに対し、比較例1と実施例1、2との比較、また、比較例3と実施例3、4との比較から、シリカとポリエチレンの併用で耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性を両立できることが分かる。また、比較例2から、カーボンブラックをシリカに置換するだけの場合には、耐偏摩耗性が低下すること、および、カーボンブラックの配合量とシリカの配合量との合計が40重量部以下では、耐偏摩耗性が悪化することが分かる。また、比較例3から、SBRを添加するだけの場合には発熱耐久性が低下することが分かる。さらに、比較例4より、シリカのみでは、耐偏摩耗性が悪化することが分かる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、上記のような構成としたことにより、耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性の両立を図ることができ、優れた耐偏摩耗性、耐引裂性、低発熱性を示すという効果を奏する。
Claims (4)
- 天然ゴム50〜100重量部、スチレン−ブタジエンゴム0〜50重量部からなるゴム成分100重量部に対して、カーボンブラックおよびシリカからなる充填剤を45〜60重量部、該充填剤重量部のうち、シリカを5〜20重量部、ポリエチレンを2〜15重量部、シランカップリング剤をシリカ量の1〜30重量%配合してなるゴム組成物を、トレッドゴムに使用したことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
- 前記ポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
- 前記請求項2に記載のシランカップリング剤中の、ポリサルファイド部の硫黄原子の平均数yが、2.5≦y≦3の正数であることを特徴とする請求項3に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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