JP3591968B2 - 混合ラテックス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機械的安定性に優れた重合体組成物のラテックスに関する。更に詳細に述べるとビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体のラテックス、ジエン系ゴム含有スチレン系重合体のラテックス、及び/またはビニル系重合体のラテックスを混合して得られる機械的安定性に優れたラテックス混合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリルゴム状重合体を含有した樹脂は、従来塗料や接着剤用途だけでなく、その優れた耐薬品性及び耐候性からABS樹脂またはAAS樹脂等の用途にも使用されている。
【0003】
アクリルゴム状重合体の工業的製法は乳化重合法が最も一般的であるので、樹脂分野にアクリルゴム状重合体を使用するには、例えば塩析工程等を経て固体化する必要がある。しかし、軟質のゴム状態のものを固体化することは困難であるため、例えば樹脂を構成する他の成分であるビニル系重合体ラテックス、及び/またはジエン系ゴム含有スチレン系重合体のラテックスをラテックス状態で混合した後に塩析工程等を経て固体化することが有利に用いられる。
【0004】
しかし、アクリルゴム状重合体のラテックスは機械的安定性が悪いため、このアクリルゴム状重合体のラテックスを含む混合ラテックスもまた機械的安定性が悪くなる。そのため混合ラテックスをポンプで配管を移送するときの圧力や濾過時の圧力等により、乳化破壊を起こし易く、これがもとで配管等を閉塞させてしまうことがある。
【0005】
このアクリルゴム状重合体のラテックスの機械的安定性を改良する方法としては、乳化剤を多量に使用することもできるが、泡立ちがひどくなりアクリルゴム状重合体のラテックスの取扱が困難になること、また前述の混合ラテックスも塩析工程によって固体化することが困難になるなどの不都合が生じる。
【0006】
また、アクリルゴム状重合体にビニル系単量体をグラフトして得られ、かつゴム状弾性を呈するアクリルゴム状グラフト重合体のラテックスは、機械的安定性に優れており工業的にも使用されている例もある(特開平4−170460号公報)。しかしながら、このアクリルゴム状グラフト重合体は、アクリルゴム状重合体の表面をビニル系単量体の重合体相で被覆するために、複数回もグラフト重合して多層化する工程が必要となり生産効率上好ましくない。更に、アクリルゴム状重合体の表面がビニル系単量体の重合体相で被覆されているのでアクリルゴム状重合体の特性が充分に発現されないという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状から本発明の課題は、アクリルゴム状重合体のラテックスを含む混合ラテックスに係わる前述の問題点を解決し、機械的に安定した混合ラテックスを得ること、及びアクリルゴム状重合体の特性を充分に発揮させるこができる混合ラテックスを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体の存在下で、1種以上のビニル系単量体を重合することにより得られるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体のラテックスを作成し、該重合体のラテックス、ジエン系ゴム含有スチレン系重合体のラテックス、及び/またはビニル系重合体のラテックスとの混合ラテックスにより機械的安定性に優れたラテックスが得られることを見出し、更にはビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体が、アクリル系ゴム状重合体をシェルとし、ビニル系単量体の重合体をコアとしたコア−シェル構成を成すことによってアクリル系ゴム状重合体の特性を充分に発現させることができる安定した混合ラテックスを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明はアクリル系ゴム状重合体の構成単量体単位中にカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下に1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)、及びジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)、及び/またはビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)との混合ラテックス(D)に関するものである。
【0010】
まず、本発明で用いるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)について説明する。
ラテックス(A)に用いるアクリル系ゴム状重合体(イ)としては、カルボキシル基または水酸基を有する単量体の中から選ばれた1種以上の単量体とメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等の1種以上のアクリル酸エステル単量体との共重合体、及びヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、デシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート及びペンチルメタクリレートから選ばれた1種以上のメタクリル酸エステル単量体との共重合体、並びにカルボキシル基または水酸基を有する単量体の中から選ばれた1種以上の単量体と、アクリル酸エステル単量体とメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び上記メタクリル酸エステル単量体等の1種もしくは2種以上の単量体との共重合体で、かつ共重合体のガラス転移温度が20℃以下であるゴム状重合体等が挙げられる。
【0011】
アクリル系ゴム状重合体(イ)に用いるカルボキシル基または水酸基を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸及びマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸などのカルボキシル基を有する単量体、並びにヒドロキシメタクリレ−ト、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド等の水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0012】
また、アクリル系ゴム状重合体(イ)に用いるカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位の量は、アクリル系ゴム状重合体(イ)のガラス転移温度が20℃以下を有する範囲でその用途に応じて決めることが必要である。
特に本発明の混合ラテックスとして用いる場合には、前記のカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位はアクリル系ゴム状重合体(イ)の構成単量体単位100重量%中に0.05〜10重量%含まれることが好ましく、更には0.05〜3重量%含まれることが特に好ましい。
【0013】
なお、アクリル系ゴム状重合体(イ)は、アクリル系ゴム状重合体(イ)の重合に際し多官能性ビニル単量体を用いたものでも用いないものでもよい。多官能性ビニル単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタアクリレート等が挙げられる。
アクリル系ゴム状重合体(イ)中における前記多官能性ビニル単量体単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(イ)のガラス転移温度が20℃以下を有する範囲内でその用途に応じて決めることができる。特にABS系樹脂用途の場合には、多官能性ビニル単量体単位はアクリル系ゴム状重合体(イ)中に0〜10重量%が好ましい。
【0014】
本発明のアクリル系ゴム状重合体(イ)の製造は、特に制限が無く乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知技術を使用することができる。アクリル系ゴム状重合体(イ)が乳化重合で得られる場合はそのままラテックスとして使用することができるので、製造法としては乳化重合法が最も有利に使用することができる。
他の重合法により製造される場合には、ラテックスとして使用するには得られた重合物を乳化する工程が必要である。重合物の乳化方法については特に制限が無く、公知技術を任意に使用することができる。例えば、重合物溶液を乳化剤と水と共に混合撹拌して乳化液とした後に水以外の溶媒を除去する方法、重合物を粉砕して得られた微粉を乳化剤と水の存在下で混合してラテックスとする方法等があるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
乳化剤の種類には特に制限が無く、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から任意に選択し得るが、アニオン性界面活性剤が最も好適に使用することができる。
【0016】
次に、本発明のビニル系単量体(ロ)について説明する。
ビニル系単量体(ロ)として使用する単量体にはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトル等のシアン化ビニル単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシメチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体などが挙げられる。
【0017】
なお、ビニル系単量体(ロ)の重合体中には、芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位が合計で80〜100重量%含まれることが好ましい。80重量%未満ではビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)の機械的安定性が不十分である。また、含有されるビニル系単量体単位中における芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位の割合は50〜85重量%と15〜50重量%が好ましい。
【0018】
本発明のラテックス(A)の製造は、アクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下でビニル系単量体(ロ)の重合を行うものである。
【0019】
重合する時の重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソピルベンゼンパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシイソブチレート、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、及び過硫酸カリウム等の無機過酸化物が挙げられる。
【0020】
また、重合する時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することが可能である。使用しうる連鎖移動剤は特に制限が無く、例えばオクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸エチル、o−メルカプト安息香酸エチル、四塩化炭素等のハロゲン化合物、リモネン、ターピノーレン等の炭化水素、トリニトロベンゼン等のニトロ化合物、ベンゾキノン等が挙げられる。
【0021】
本発明のラテックス(A)を成すアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスとビニル系単量体(ロ)の比率は、特に限定するものではないが本発明の混合ラテックス(D)の場合には、アクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの固形分であるアクリル系ゴム状重合体(イ)100重量部に対してビニル系単量体(ロ)50〜200重量部が好ましい。
【0022】
更に、本発明のラテックス(A)におけるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)は、カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)をシェルとし、ビニル系単量体(ロ)の重合体をコアとしたコア−シェル構造を有するものである。
【0023】
次に、本発明のジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)について説明する。
ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)は、ジエン系ゴムの存在下でビニル系単量体を重合したものであり、ジエン系ゴムの成分と樹脂成分であるスチレン系重合体とからなる。ジエン系ゴムとしては、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン単量体、及び2,5−ノルボルナジエン、4−エチリデンノルボルネン、1,4−シクロヘキサジエン等の非共役ジエン単量体等の単独重合体、または、共役ジエン単量体もしくは非共役ジエン単量体とスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン等のオレフィン単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、無水マレイン酸等の酸無水物単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン単量体などとの共重合体で、かつこの共重合体のガラス転移温度が20℃以下のゴム特性を有する範囲のゴム状重合体が挙げられる。
【0024】
更に、ジエン系ゴムは架橋用単量体として多官能性ビニル単量体を共重合させた共重合体も使用することができる。この多官能性ビニル単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0025】
また、ジエン系ゴムは、グラフト活性点を有していることが必要であり、具体的にはジエン系ゴム中に炭素−炭素二重結合を有していることが好ましい。
【0026】
本発明のジエン系ゴムの製造法は特に制限が無く、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知技術を使用することができるが、ジエン系ゴムが乳化重合で得られる場合はそのままラテックスとして使用することができるので、乳化重合法が最も有利に使用することができる。
他の重合法により製造される場合には、得られた重合物をラテックスとして用いる場合には乳化する工程が必要である。重合物の乳化方法については特に制限が無く、公知技術を任意に使用することができる。例えば、重合物溶液を乳化剤と水と共に混合撹拌して乳化液とした後に水以外の溶媒を除去する方法、重合物を粉砕して得られた微粉を乳化剤と水の存在下で混合してラテックスとする方法等があるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明のジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)の樹脂成分を構成するスチレン系重合体の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体とアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらの単量体のみでもよいが、これらと更にメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン等のオレフィン単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、無水マレイン酸等の酸無水物単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン単量体などをスチレン系重合体のガラス転移温度が20℃以上を有する範囲で単独または併用して共重合させてもよい。
【0028】
本発明のジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)の製造法は特に制限が無く、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知技術を使用することができるが、ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)が乳化重合で得られる場合はそのままラテックスとして使用することができるので、乳化重合法が最も有利に使用することができる。
他の重合法により製造される場合には、得られた重合物をラテックスとして用いる場合には乳化する工程が必要である。重合物の乳化方法については特に制限が無く、公知技術を任意に使用することができる。例えば、重合物溶液を乳化剤と水と共に混合撹拌して乳化液とした後に水以外の溶媒を除去する方法、重合物を粉砕して得られた微粉を乳化剤と水の存在下で混合してラテックスとする方法等があるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)は、ジエン系ゴムの存在下にスチレン系重合体となりうる前記の単量体を重合するが、ジエン系ゴム成分と樹脂成分であるスチレン系重合体との界面に、グラフト構造を介在していることが必要である。このような構造は、ジエン系ゴムのラテックスの存在下でスチレン系重合体を構成する単量体の一部あるいは全部を重合する所謂グラフト重合法により達成されることは公知であり、本発明のラテックス(B)も公知のグラフト重合技術により製造できるが、上記で述べたとおりこれに限定されるものではない。
【0030】
前記のジエン系ゴムのラテックス及びジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)の製造の際、乳化に用いる乳化剤の種類には特に制限が無く、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から任意に選択し得るが、アニオン性界面活性剤が最も好適に使用することができる。
【0031】
次に、本発明のビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)について説明する。まず、ビニル系重合体(ホ)を構成するビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、及びアクリロニトリル、メタクリロニトル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらの単量体のみでもよいが、更にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシメチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン等のオレフィン単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、無水マレイン酸等の酸無水物単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン単量体などが挙げられ、これらの単量体をビニル系重合体(ホ)のガラス転移温度が20℃以上の樹脂特性を有する範囲で共重合することができる。
【0032】
本発明のビニル系重合体(ホ)の製造法は、特に制限が無く乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知技術を使用することができるが、ビニル系重合体(ホ)が乳化重合で得られる場合はそのままラテックスとして使用することができるので、乳化重合法が最も有利に使用することができる。
他の重合法により製造される場合には、得られた重合物をラテックスとして用いる場合には乳化する工程が必要である。重合物の乳化方法については特に制限が無く、公知技術を任意に使用することができる。例えば、重合物溶液を乳化剤と水と共に混合撹拌して乳化液とした後に水以外の溶媒を除去する方法、重合物を粉砕して得られた微粉を乳化剤と水の存在下で混合してラテックスとする方法等があるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明のラテックス(C)の製造の際、乳化に用いる乳化剤の種類には特に制限が無く、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から任意に選択し得るが、アニオン性界面活性剤が最も好適に使用することができる。
【0034】
次に、本発明の混合ラテックス(D)について説明する。
本発明ではビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)に、ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)、及び/またはビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)とを混合して混合ラテックス(D)を得ることができる。
【0035】
混合ラテックス(D)を得る混合方法には、特に制限はなく固定容器型混合装置、回転容器型混合装置、パイプラインミキサー、スタチックミキサー等の装置を使用して混合を行うことが出来る。
【0036】
また、混合ラテックス(D)を得るのに、各ラテックスの混合比率には特に制限は無く目的に応じて決めることができる。
特に、ABS系樹脂に該混合ラテックス(D)を使用する場合の好ましい混合比率は、ラテックス(A)の固形分であるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)20〜60重量%、ラテックス(B)の固形分であるジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)0〜80重量%、及びラテックス(C)の固形分であるビニル系重合体(ホ)0〜80重量%である。
【0037】
【実施例】
次に実施例、比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお例中の部および%は重量基準で示した。
【0038】
[アクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの製造]
実験例1 イ−1〜イ−7のラテックス
純水120部、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム4部をオートクレーブに仕込み、撹拌しながら65℃に加熱した。ここに、硫酸第1鉄・7水塩0.005部、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム・2水塩0.01部、及びナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・2水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注加した。
次いで、表1に示したアクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体の混合物100部のうち20%をオートクレーブに注加し、過硫酸カリウム0.05部を20部の純水に溶解した水溶液を6時間かけて連続添加した。過硫酸カリウム溶液の添加終了後、オートクレ−ブの内容物を冷却し、イ−1〜イ−7のラテックスを得た。
このラテックスの一部をサンプリングしてガラス転移温度を測定し、その結果も表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、表1のアクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体を示す省略記号で、nBAはノルマルブチルアクリレートを、isoBAはイソブチルアクリレートを、EAはエチルアクリレートを、MMAはメチルメタクリレートを、MAAはメタクリル酸を、AAはアクリル酸を、HEAはヒドロキシエチルアクリレートを、EDMAはエチレングリコールジメタクリレートを表す。
【0041】
[ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)の製造]
実験例2 A−1〜A−9
表3に示したアクリル系ゴム状重合体(イ)を100部含むラテックス250部とステアリン酸カリウム2部及び純水50部をオートクレーブに仕込み、撹拌しながら50℃に加熱した。ここに、硫酸第1鉄・7水塩0.005部、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム・2水塩0.01部、及びナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・2水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注加した。
次いで、表2に示したビニル系単量体(ロ)の混合液を表3に示した割合でターシャリーブチルパーオキシアセテート0.1部とを5時間かけて連続添加した。単量体混合液の添加終了後、ターシャリーブチルパーオキシアセテート0.1部を更に添加し、70℃に昇温して、更に2時間撹拌して重合を終了し、ラテックスA−1〜A−9を得た。
なお、このラテックス状になっているビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体ハ−1の分散粒子の透過型電子顕微鏡写真を図1に、またその分散粒子の模式的断面図を図2に示した。
【0042】
【表2】
【0043】
なお、表2のビニル系単量体(ロ)の混合物中の単量体の省略記号で、SMはスチレンを、ANはアクリロニトリルを表す。
【0044】
【表3】
【0045】
[ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)の製造]
実験例3 B−1〜B−3
表4に示した様に固形分として100部含有するポリブタジエンのラテックス300部と純水60部とを仕込んだオートクレーブを撹拌しながら50℃に加熱した。ここに、硫酸第1鉄・7水塩0.005部、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム・2水塩0.01部、及びナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・2水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注加した。次いで、表4に示した組成のビニル系単量体混合物100部、ターシャリーブチルパーオキシアセテート0.4部及びステアリン酸カリウム2部とを5時間かけて連続添加した。単量体混合液の添加終了後、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、系を70℃に昇温して、更に2時間撹拌して重合を終了し、ラテックスB−1〜B−3を得た。
【0046】
【表4】
【0047】
なお、表4のビニル系単量体を示す省略記号で、SMはスチレンを、ANはアクリロニトリルを、またジエン系ゴムを示すPBdはポリブタジエンゴムを表す。
【0048】
[ビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)の製造]
実験例4 C−1〜C−3
純水150部、ステアリン酸カリウム2部をオートクレーブに仕込み、撹拌しながら50℃に加熱した。ここに、硫酸第1鉄・7水塩0.005部、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム・2水塩0.01部、及びナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート・2水塩0.3部を純水10部に溶解した水溶液を注加した。
次いで、表5に示した組成のビニル系単量体の混合液を4時間かけて連続添加した。単量体混合液の添加終了後、ターシャリーブチルパーオキシアセテート0.1部を添加し、系を70℃に昇温して、更に2時間撹拌して重合を終了し、ラテックスC−1〜C−3を得た。
これらのラテックスの一部をサンプリングしてガラス転移温度を測定し、その結果も表5に示した。
【0049】
【表5】
【0050】
なお、表5のビニル系重合体(ホ)の構成を示す単量体の省略記号で、SMはスチレンを、ANはアクリロニトリルを、MMAはメチルメタクリレートを、nBAはノリマルブチルアクリレートを表す。
【0051】
〔混合ラテックス(D)の製造〕
実施例1〜10及び比較例1〜2
表3に示すビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)、表4のジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)、及び表5のビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)を固形分として表6の割合で混合し、混合ラテックス(D)を得た。これらの混合ラテックスD−1〜12の機械的安定性を示すマロン値を測定し、その結果も表6に示した。
【0052】
【表6】
【0053】
なお各物性値は、以下の方法により求めた。
(1)ガラス転移温度
アクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスあるいはビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)をメタノール中に滴下して得た固体を乾燥し、デュポン式測定機である910示差走査熱量計及び990熱分析計を用いて測定した。
(2)マロン値(ラテックスの機械的安定性評価)
混合ラテックス(D)を約50g精秤した。これに理学工業株式会社製マロン式機械的安定度測定器を使用しJIS K−6392に従い、荷重10kg、マロンドリルの回転数1000rpmの条件で5分間撹拌した後に100メッシュの金網を通して残った析出物の重量を測定し、次式に従って算出した。このマロン値が10%未満のものを機械的安定性良好なラテックスと判断した。
【化1】
【0054】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の方法で製造される重合体の混合ラテックスは、機械的安定性に優れているので、製造時の配管移送及び濾過等の工程でのトラブルを防止することが出来るので安定した製造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は図面に代わる透過型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)であり、本発明の実験例2のラテックス状態におけるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体ハ−1の分散粒子を示す。
【図2】図2は図1の分散粒子の模式的断面図を示す。
【符号の説明】
1:シェル(アクリル系ゴム状重合体)
2:コア(ビニル系単量体の重合体)
Claims (14)
- カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)、ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)、及び/またはビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)とからなることを特徴とする混合ラテックス(D)。
- カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)のラテックス(A)、ジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)のラテックス(B)、及び/またはビニル系重合体(ホ)のラテックス(C)をラテックス混合してなることを特徴とする混合ラテックス(D)の製造方法。
- ラテックス(A)の固形分であるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)が20〜60重量%、ラテックス(B)の固形分であるジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)が0〜80重量%、及びラテックス(C)の固形分であるビニル系重合体(ホ)が0〜80重量%の割合で混合したことを特徴とする請求項1記載の混合ラテックス(D)。
- ラテックス(A)が、アクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体単位中にカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位の量を、該アクリル系ゴム状重合体(イ)のガラス転移温度が20℃以下を有する範囲内で含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られる重合体のラテックスであることを特徴とする請求項1または請求項3記載の混合ラテックス(D)。
- ラテックス(A)が、アクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体単位の100重量%中、カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位の量を0.05〜10重量%含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られる重合体のラテックスであることを特徴とする請求項1または請求項3記載の混合ラテックス(D)。
- ラテックス(A)が、アクリル系ゴム状重合体(イ)の100重量部に対してビニル系単量体(ロ)50〜200重量部を重合することにより得られる重合体のラテックスであることを特徴とする請求項1または請求項3記載の混合ラテックス(D)。
- ラテックス(A)において、アクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で重合したビニル系単量体(ロ)の重合体中、芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位の合計量が80〜100重量%で、かつ芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位の割合が50〜85重量%と15〜50重量%で含有することを特徴とする請求項1または請求項3記載の混合ラテックス(D)。
- ラテックス(A)において、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)の分散粒子がカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)をシェルとし、ビニル系単量体(ロ)の重合体をコアとしたコア−シェル構造を有する重合体であることを特徴とする請求項1または請求項3または請求項4または請求項5または請求項6または請求項7記載の混合ラテックス(D)。
- ラテックス(A)の固形分であるビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)が20〜60重量%、ラテックス(B)の固形分であるジエン系ゴム含有スチレン系重合体(ニ)が0〜80重量%、及びラテックス(C)の固形分であるビニル系重合体(ホ)が0〜80重量%の割合で混合したことを特徴とする請求項2記載の混合ラテックス(D)の製造方法。
- ラテックス(A)が、アクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体単位中にカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位の量を、該アクリル系ゴム状重 合体(イ)のガラス転移温度が20℃以下を有する範囲内で含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られる重合体のラテックスであることを特徴とする請求項2または請求項9記載の混合ラテックス(D)の製造方法。
- ラテックス(A)が、アクリル系ゴム状重合体(イ)を構成する単量体単位の100重量%中、カルボキシル基または水酸基を有する単量体単位の量を0.05〜10重量%含むアクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で、1種以上のビニル系単量体(ロ)を重合することにより得られる重合体のラテックスであることを特徴とする請求項2または請求項9記載の混合ラテックス(D)の製造方法。
- ラテックス(A)が、アクリル系ゴム状重合体(イ)の100重量部に対してビニル系単量体(ロ)50〜200重量部を重合することにより得られる重合体のラテックスであることを特徴とする請求項請求項2または請求項9記載の混合ラテックス(D)の製造方法。
- ラテックス(A)において、アクリル系ゴム状重合体(イ)のラテックスの存在下で重合したビニル系単量体(ロ)の重合体中、芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位の合計量が80〜100重量%で、かつ芳香族ビニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位の割合が50〜85重量%と15〜50重量%で含有することを特徴とする請求項2または請求項9記載の混合ラテックス(D)の製造方法。
- ラテックス(A)において、ビニル系樹脂含有アクリル系ゴム状重合体(ハ)の分散粒子がカルボキシル基または水酸基を有する単量体単位を構成単量体単位として含むアクリル系ゴム状重合体(イ)をシェルとし、ビニル系単量体(ロ)の重合体をコアとしたコア−シェル構造を有する重合体であることを特徴とする請求項2または請求項9または請求項10または請求項11または請求項12または請求項13記載の混合ラテックス(D)の製造方法。
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