JP3591664B2 - 可逆性感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、熱エネルギーを制御する事により画像形成及び消去が可能な可逆性感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録材料は一般に支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体と電子受容性の顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設けたものであり、熱ヘッド、熱ペン、レーザー光等で加熱することにより、染料前駆体と顕色剤とが瞬時反応し記録画像が得られるもので、特公昭43−4160号、特公昭45−14039号公報等に開示されている。
【0003】
一般にこのような感熱記録材料は、一度画像を形成するとその部分を消去して再び画像形成前の状態に戻すことは不可能であるため、さらに情報を記録する場合には画像が未形成の部分に追記するしかなかった。このため感熱記録部分の面積が限られている場合には、記録可能な情報が制限され必要な情報を全て記録できないという問題が生じていた。
【0004】
近年、この様な問題に対処するため画像形成・画像消去が繰り返して可能な可逆性感熱記録材料が考案されており、例えば、特開昭54−119377号公報、特開昭63−39377号公報、特開昭63−41186号公報では、樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子から構成された感熱記録材料が記載されている。しかしこの方法は、熱エネルギーによって感熱記録材料の透明度を可逆的に変化させる物であるため、画像形成部と画像未形成部のコントラストが不十分である。
【0005】
また、特開昭50−81157号公報、特開昭50−105555号公報に記載された方法においては、形成する画像は環境温度に従って変化するものであるため、画像形成状態と消去状態を保持する温度が異なっており、常温下ではこの2つの状態を任意の期間保持することが出来ない。
【0006】
さらに、特開昭59−120492号公報には、呈色成分のヒステリシス特性を利用し、記録材料をヒステリシス温度域に保つことにより画像形成状態・消去状態を維持する方法が記載されているが、この方法では画像形成及び消去に加熱源と冷却源が必要な上、画像の形成状態及び消去状態を保持できる温度領域がヒステリシス温度領域内に限られる欠点を有しており、日常生活の温度環境で使用するには未だ不十分である。
【0007】
一方、特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報、国際公開番号WO90/11898号には、ロイコ染料と加熱によりロイコ染料を発色及び消色させる顕減色剤から構成される可逆性感熱記録媒体が記載されている。顕減色剤は、ロイコ染料を発色させる酸性基と、発色したロイコ染料を消色させる塩基性基を有する両性化合物で、熱エネルギーの制御により酸性基による発色作用または塩基性基による消色作用の一方を優先的に発生させ、発色と消色を行うものである。しかしこの方法では、熱エネルギーの制御のみで完全に発色反応と消色反応を切り換えることは不可能で、両反応がある割合で同時に起こるため、十分な発色濃度が得られず、また、消色が完全には行えない。そのために十分な画像のコントラストが得られない。また、塩基性基の消色作用は常温で発色部にも作用するため、経時的に発色部の濃度が低下する現象が避けられない。そして、特開平5−124360号公報には加熱によりロイコ染料を発色及び消色させる可逆性感熱記録媒体が記載されており、電子受容性化合物として有機リン酸化合物、α−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、脂肪酸ジカルボン酸及び炭素数10以上の脂肪族基を有するアルキルチオフェノール、アルキルオキシフェノール、アルキルカルバモイルフェノール、没食子酸アルキルエステルなどの特定のフェノール化合物が例示されている。しかし、この記録媒体でもやはり発色濃度が低い、または、消色が不完全というふたつの問題を同時に解決することはできない。更には、特開平5−294063号公報に於いて、上記可逆性感熱記録媒体の消去性を改良する消色促進剤として脂肪酸類、ワックス、高級アルコール、燐酸/安息香酸/フタル酸またはオキシ酸の各種エステル類、シリコーンオイル、液晶性化合物、界面活性剤及び炭素数10以上の脂肪酸飽和炭化水素等が開示されているが、その効果は小さいため、未だ消去時の画像濃度が高く実用的とは云えない。更に消色促進剤として特開平6−270544号公報では、ヘキシルアミン、トリメチレンジアミンなどの有機アミンが開示されているが、少量添加時は、消色温度幅に改善は見られず、画像保存性を悪化させるに過ぎない。また、大量添加時は、発色が悪く画像保存性が低下してしまい、添加量の許容範囲を規定するのは非常に難しい。
【0008】
一般に可逆感熱材料を発色させるときには、加熱に引き続き急速な冷却が起こるような、例えばサーマルヘッド、レーザー光、熱ペン等の手段を用いれば良く、消色させるときには、加熱後ゆっくり冷却が起こるような、例えばサーマルヘッド、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、熱風、電熱ヒータ及びタングステンランプ、ハロゲンランプ等の光源などからの輻射熱等、何らかの特別な消去装置を用いなければならなかった。
【0009】
更に特開平6−155905号公報では、加熱せずに消色状態に変化させることが可能な消色剤として高級アルコール類、高級エステル類及び高級アミド類を開示しているが、発色が悪く、消去濃度も充分とは言えない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、印字画像を消去する際に伴う前記の問題を解決し、良好なコントラストで画像形成・消去が可能である極めて実用性の高い可逆性感熱記録材料を提供することである。本発明に於ける消去方法としては、加熱することなく自然環境に放置する方法、及び、日常生活には必需品であるドライヤー等を用いて加熱する方法等、比較的簡便な方法を用いることが可能である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物を含有する可逆性感熱記録材料において、その消去性をより改良すべく鋭意検討した結果、前記電子受容性化合物として下記一般式Iで示される化合物を用い、さらに下記一般式II、III、IVで示される化合物の少なくとも1種を含有させると、 驚くべきことに、自然環境下またはそれに近い低い温度領域で画像の消去が完全にかつ均一に実施可能な可逆性感熱記録材料が得られる事を見いだし本発明を完成するに至った。
【0012】
【化5】
(一般式I中、nは1から3の整数を、mは0から3の整数を示す。Xは酸素または硫黄原子を表し、kは0または1を示す。Rは炭素数が10から24の脂肪酸炭化水素基を表す。)
【0013】
【化6】
(一般式II中、Aは少なくとも窒素原子を1つ以上持つ複素環を表す。 Raは炭素数1から12の二価の炭化水素基を表す。Yは−CONH−結合を少なくとも1つ以上持つ二価の基を表す。 Rbは炭素数1から24の炭化水素基を表す。hは0または1を表す。)
【0014】
【化7】
(一般式III中、 Bは少なくとも窒素原子を1つ以上持つアミノ化合物を表す。Rc炭素数1から12の二価の炭化水素基を表す。 Yは一般式II中で定義した基を表す。 Rdは硫黄原子を1つ以上持つ炭素数1から24の炭化水素基を表す。iは0または1を表す。)
【0015】
【化8】
(一般式IV中、Reは炭素数1から12の二価の炭化水素基を、Rfは炭素数1から24の炭化水素基を表す。pは1から3の整数を、jは0または1を表す。)
【0016】
本発明に用いる、通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる上記一般式Iで示される電子受容性化合物の具体例としては、下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
n−テトラデシルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、n−ヘキサデシルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、n−オクタデシルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、n−ドコセニルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、(n−オクタデシルオキシ)コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、(n−テトラデシルチオ)コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、(n−オクタデシルチオ)コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、〔(n−オクタデシルチオ)〕メチルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、〔2−(n−ヘキサデシルチオ)エチル〕コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド、〔3−(n−ドデシルオキシ)プロピル〕コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド等。
【0018】
本発明に用いられる電子受容性化合物は特願平6−293281に記載されているように、入手容易な各種原料から種々の合成ルートにより極めて容易に合成することができる。
【0019】
本発明による電子受容性化合物はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよく、通常無色ないし淡色の染料前駆体に対する本発明による電子受容性化合物の使用量は、5〜5000重量%、好ましくは10〜3000重量%である。
【0020】
上記一般式IIで表される化合物中、Aは窒素原子を1つ以上持つ複素環であるが、窒素原子含有5及び6員環が好ましく、具体的には5員環のものとしてピロリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環及びチアゾール環等、6員環のものとして、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環及びピリミジン環等が挙げられるが、 環中の窒素原子はRaと直接結合しても、していなくともどちらでもよい。更に上記複素環が低級アルキル基、アラルキル基、アリール基及び水酸基等で置換されていてもよい。また、 Raは具体的には炭素数1から12の二価の炭化水素基であるが、好ましくはアルキレン基を表し、基中に芳香環を含んでもよいし、更には、芳香環のみであってもよい。Yは−CONH−結合を少なくとも一つ以上持つ二価の基を表わすが、その具体例としては、アミド(−CONH−、−NHCO−)、ウレタン(−NHCOO−、−OCONH−)、尿素(−NHCONH−)、ジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジド(−CONHNHCO−)、しゅう酸ジアミド(−NHCOCONH−)、アシル尿素(−CONHCONH−、−NHCONHCO−)、3−アシルカルバジド酸エステル(−CONHNHCOO−)、セミカルバジド(−NHCONHNH−、−NHNHCONH−)、アシルセミカルバジド(−CONHNHCONH−、−NHCONHNHCO−)、ジアシルアミノメタン(−CONHCH2NHCO−)、1−アシルアミノ−1−ウレイドメタン(−CONHCH2NHCONH−、 −NHCONHCH2NHCO−)、マロンアミド(−NHCOCH2CONH−)等の基が挙げられる。
【0021】
上記一般式IIで表されるの化合物の具体例としては、特願平6−272796に記載されている次の化合物などが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0022】
まず、Aが窒素含有5員複素環である例としては、N−(1−ピロリジニル)−テトラデカンアミド、N−(1−ピロリジニル)カルバミド酸オクタデシル、N−オクタデシルカルバミド酸〔2−(1−ピロリジニル)エチル〕、N−〔3−(1−ピロリジニル)プロピオノ〕−N´−テトラデカノヒドラジド、N−オクタデシルカルバミド酸〔3−(3−メチルイミダゾリジニル)プロピル〕、N−オクタデシル−3−(3−チアゾリジニル)プロパンアミド、1−〔6−(1−ピロリル)ヘキサノイル〕−4−テトラデシルセミカルバジド、N−〔2−(4−イミダゾリル)エチル〕−N´−オクタデシルオキサミド、1−〔3−(1−イミダゾリル)プロピオニルアミノ〕−1−テトラデカノイルアミノメタン、N−〔11−(1−ピラゾリル)ウンデカノイル〕−N´−オクタデシル尿素等が挙げられる。
【0023】
また、Aが窒素含有6員複素環である例としては、N−ピペリジノカルバミド酸ヘキサデシル、N−(2−ピペリジノエチル)オクタデカンアミド、N−オクタデシルカルバミド酸(2−ピペリジノエチル)、N−(2−ピペリジノエチル)カルバミド酸ヘキサデシル、N−(3−ピペリジノプロピオノ)−N´−オクダデカノヒドラジド、1−(3−ピペリジノプロピオニル)−3−オクタデシルセミカルバジド、N−(11−ピペリジノウンデカノ)−N´−デカノヒドラジド、N−〔2−(1−メチル)ピペリジニル〕カルボ−N´−オクタデカノヒドラジド、N−〔4−(1−ベンジル)ピペリジノ〕カルバミド酸ヘキサデシル、N−〔2−(4−ヒドロキシピペリジノ)エチル〕カルバミド酸ヘキサデシル、N−モルホリノカルバミド酸ヘキサデシル、N−(3−モルホリノプロピル)オクタデカンアミド、N−オクタデシルカルバミド酸(2−モルホリノエチル)、N−(2−モルホリノエチル)カルバミド酸ヘキサデシル、N−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシル、N−(3−モルホリノプロピオノ)−N´−オクタデカノヒドラジド、N−(3−モルホリノプロピオノ)−N´−ドコサノヒドラジド、N−(3−モルホリノプロピル)−N´−オクタデシルオキサミド、1−(3−モルホリノプロピオニル)−4−オクタデシルセミカルバジド、3−(6−モルホリノヘキサノイル)カルバジド酸ヘキサデシル、N−〔p−(モルホリノメチル)ベンゾ〕−N´−オクタデカノヒドラジド、N−(p−ピペリジノフェニル)カルバミド酸ヘキサデシル、N−(p−モルホリノフェニル)−N´−オクタデシルオキサミド、N−(11−モルホリノウンデカノ)−N´−デカノヒドラジド、N−(11−モルホリノウンデカノ)−N´−オクタデカノヒドラジド、N−オクタデシルカルバミド酸(2−チオモルホリノエチル)、N−(3−チオモルホリノプロピオノ)−N´−オクタデカノヒドラジド、1−(11−チオモルホリノウンデカニル)−4−デシルセミカルバジド、N−(4−メチルピペラジニル)カルバミド酸ヘキサデシル、N−(4−メチルピペラジニル)−N´−オクタデシルオキサミド、N−〔2−(4−メチルピペラジニル)エチル〕−N´−オクタデシルオキサミド、1−〔3−(4−メチルピペラジニル)プロピオニルアミノ〕−1−オクタデカノイルアミノメタン、N−〔2−(1,4−ジメチル)ピペラジニル〕カルボ−N´−オクタデカノヒドラジド、1−オクタデカノイル−4−〔2−(4−ベンジルピペラジニル)エチル〕セミカルバジド、N−〔2−(4−フェニルピペラジニル)エチル〕−N´−オクタデシルマロンジアミド、N−(2−ピリジル)カルバミド酸ヘキサデシル、N−(2−ピリジル)−N´−ドデシルオキサミド、1−(4−ピリジンカルボニルアミノ)−1−(N´−オクタデシルウレイド)メタン等が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0024】
上記一般式IIIで表される化合物中、 Bは窒素原子を1つ以上持つアミノ化合物であるが、好ましくは三級アミノ基含有化合物であり、更に好ましくは5及び6原子環形成三級アミノ基含有化合物である。 環中の窒素原子はRcと直接結合しても、していなくともどちらでもよく、更には上記アミノ化合物が水酸基を有する低級アルキル基、アラルキル基及びアリール基等で置換されていてもよい。また、 Rcは具体的には炭素数1から12の二価の炭化水素基であるが、好ましくはアルキレン基を表し、基中に芳香環を含んでもよいし、更には、芳香環のみであってもよい。Yは一般式IIで定義したものと同じである。
【0025】
上記一般式IIIで表される化合物の具体例としては、 特願平7−27864に記載されている次のような化合物などが挙げられる。
まず、Bが非環状アミノ化合物である例としては、N−(3−ジエチルアミノプロピル)−11−デシルチオウンデカンアミド、N−(3−ジエチルアミノプロピル)カルバミド酸−11−ドデシルチオウンデシル、N−(2―オクタデシルチオエチル)カルバミド酸−6−ジエチルアミノヘキシル、N−6−ジメチルアミノカプロノ−N´−3―ドデシルチオプロピオノヒドラジド、10−(ドデシルチオ)デシルカルバミド酸−6−ジシクロヘキシルアミノカプリル、1−(3−ジエチルアミノプロピオノ)−4−(10−デシルチオデシル)セミカルバジド、N−4−アミノシクロヘキシル−N′−10−デシルチオデシルオキサミド、1−(3−ジメチルアミノプロピオニルアミノ)−1−(11−ドデシルチオデカノイルアミノ)メタン、N−3−ジエチルアミノプロピル−N′−10−ドデシルチオデシルウレア等が挙げられる。
【0026】
また、Bが環状アミノ化合物である例としては、N−(2−ドデシルチオ)エチルカルバミド酸−2−(1−ピロリジニル)エチル、N−3−ピロリジニルプロピオノ−N′−11−デシルチオウンデカノヒドラジド、N−5−1H−テトラゾリル−N′−10−デシルチオデシルウレア、N−2−チアゾリル−N′−10−ドデシルチオデシルオキサミド、1−(11−ドデシルチオウンデカノ)−4−(2−チアゾリニル)セミカルバジド、N−ピペリジノカルバミド酸−6−オクタデシルチオヘキシル、N−〔2−(1−ピペリジノ)エチル〕−11−シクロヘキシルチオウンデカンアミド、N−(10−デシルチオデシル)カルバミド酸−2−(1−ピペリジノ)エチル、N−〔3−(1−ピペリジノ)プロピオノ〕−N′−3−ドデシルチオプロピオノヒドラジド、1−〔3−(1−ピペリジノ)プロピオノ〕−4−(10−デシルチオデシル)セミカルバジド、N−〔11−(1−ピペリジノ)ウンデカノ〕−N′−3−ドデシルチオプロピオノヒドラジド、N−(4−ピペリジニル)カルボ−N′−11−ドデシルチオウンデカノヒドラジド、1−〔4−(1−メチル)ピペリジニルカルボ〕−4−(10−ドデシルチオデシル)セミカルバジド、N−〔2−(4−ヒドロキシ−1−ピペリジニル)エチル〕−11−ドデシルチオウンデカンアミド、N−(2−モルホリノエチル)−11−デシルチオウンデカンアミド、N−(10−ドデシルチオデシル)カルバミド酸−6−モルホリノヘキシル、N−10−デシルチオデシルカルバミド酸−2−モルホリノエチル、N−11−モルホリノウンデカノ−N′−3−シクロヘキシルチオプロピオノヒドラジド、N−3−モルホリノプロピル−N´−10−デシルチオデシルオキサミド、N−11−ドデシルチオウンデシルオキシカルボ−N′−3−モルホリノプロピオノヒドラジド、N−(3−モルホリノプロピル)−3−ドデシルチオプロパンアミド、N−(4−メチルピペラジニル)−3−ドデシルチオプロパアンアミド、1−(3−モルホリノプロピオニルアミノ)−1−(11−デシルチオプロピオニルアミノ)メタン、N−2−モルホリノエチル−N´−10−デシルチオデシルマロンジアミド等が挙げられる。
【0027】
上記一般式IVで表される化合物中、pは1から3の整数を表すが、好ましくはpが1或いは2で表される化合物、即ち5及び6原子環形成化合物である。 Reは具体的には炭素数1から12の二価の炭化水素基であるが、好ましくはアルキレン基を表し、基中に芳香環を含んでもよいし、更には、芳香環のみであってもよい。jは硫黄原子の有無を表わす。
【0028】
上記一般式IVで表されるの化合物の具体例としては、特願平7−27865に記載されている次のような化合物などが挙げられる。
【0029】
まず、jが0の化合物である例としては、N−テトラデシルスクシンイミド、N−ヘキサデシルスクシンイミド、オクタデシルスクシンイミド、N−ドコシルスクシンイミド、N−ドデシルグルタルイミド、N−(4―ヘプチルフェニル)グルタルイミド、N−テトラデシルグルタルイミド、N−ヘキサデシルグルタルイミド、N−オクタデシルグルタルイミド、N−ドコシルグルタルイミド、N−ドデシルアジピンイミド、N−オクタデシルアジピンイミド等が挙げられる。
【0030】
また、jが1の化合物である例としては、N−(2−デシルチオ)エチルスクシンイミド、N−(2−ドデシルチオ)エチルスクシンイミド、N−(2−オクタデシルチオ)エチルスクシンイミド、N−(3−デシルチオ)プロピルスクシンイミド、N−(3−ドデシルチオ)プロピルスクシンイミド、N−(3−オクタデシルチオ)プロピルスクシンイミド、N−(5−オクチルチオ)ペンチルスクシンイミド、N−(5−デシルチオ)ペンチルスクシンイミド、N−(5−ドデシルチオ)ペンチルスクシンイミド、N−(5−オクタデシルチオ)ペンチルスクシンイミド、N−(10−オクチルチオ)デシルスクシンイミド、N−(10−デシルチオ)デシルスクシンイミド、N−(10−ドデシルチオ)デシルスクシンイミド、N−(10−オクタデシルチオ)デシルスクシンイミド、N−(4−ドデシルチオ)フェニルスクシンイミド、N−(4−ドデシルチオ)フェニルスクシンイミド、N−(4−オクタデシルチオ)フェニルスクシンイミド、N−(2−シクロヘキシルチオ)エチルスクシンイミド、N−(3−シクロヘキシルチオ)プロピルスクシンイミド、N−(5−シクロヘキシルチオ)ペンチルスクシンイミド、N−(10−シクロヘキシルチオ)デシルスクシンイミド、N−(4−シクロヘキシルチオ)フェニルスクシンイミド、N−(2−デシルチオ)エチルグルタルイミド、N−(2−ドデシルチオ)エチルグルタルイミド、N−(2−オクタデシルチオ)エチルグルタルイミド、N−(3−デシルチオ)プロピルグルタルイミド、N−(3−ドデシルチオ)プロピルグルタルイミド、N−(オクタデシルチオ)プロピルグルタルイミド、N−(5−オクチルチオ)ペンチルグルタルイミド、N−(5−デシルチオ)ペンチルグルタルイミド、N−(5−ドデシルチオ)ペンチルグルタルイミド、N−(5−オクタデシルチオ)ペンチルグルタルイミド、N−(10−オクチルチオ)デシルグルタルイミド、N−(10−デシルチオ)デシルグルタルイミド、N−(10−ドデシルチオ)デシルグルタルイミド、N−(10−オクタデシルチオ)デシルグルタルイミド、N−(4−ドデシルチオ)フェニルグルタルイミド、N−(4−ドデシルチオ)フェニルグルタルイミド、N−(4−オクタデシルチオ)フェニルグルタルイミド、N−(2−シクロヘキシルチオ)エチルグルタルイミド、N−(3−シクロヘキシルチオ)プロピルグルタルイミド、N−(5−シクロヘキシルチオ)ペンチルグルタルイミド、N−(10−シクロヘキシルチオ)デシルグルタルイミド、N−(4−シクロヘキシルチオ)フェニルグルタルイミド、N−(2−デシルチオ)エチルアジピンイミド、N−(2−ドデシルチオ)エチルアジピンイミド、N−(2−オクタデシルチオ)エチルアジピンイミド、N−(3−デシルチオ)プロピルアジピンイミド、N−(3−ドデシルチオ)プロピルアジピンイミド、N−(オクタデシルチオ)プロピルアジピンイミド、N−(5−オクチルチオ)ペンチルアジピンイミド、N−(5−デシルチオ)ペンチルアジピンイミド、N−(5−ドデシルチオ)ペンチルアジピンイミド、N−(5−オクタデシルチオ)ペンチルアジピンイミド、N−(10−オクチルチオ)デシルアジピンイミド、N−(10−デシルチオ)デシルアジピンイミド、N−(10−ドデシルチオ)デシルアジピンイミド、N−(10−オクタデシルチオ)デシルアジピンイミド、N−(4−ドデシルチオ)フェニルアジピンイミド、N−(4−ドデシルチオ)フェニルアジピンイミド、N−(4−オクタデシルチオ)フェニルアジピンイミド、N−(2−シクロヘキシルチオ)エチルアジピンイミド、N−(3−シクロヘキシルチオ)プロピルアジピンイミド、N−(5−シクロヘキシルチオ)ペンチルアジピンイミド、N−(10−シクロヘキシルチオ)デシルアジピンイミド、N−(4−シクロヘキシルチオ)フェニルアジピンイミド等が挙げられる。
【0031】
一般式II、III、 IVの化合物はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用しても良く、通常の好ましい使用量は染料前駆体に対し 0.5重量%以上1000%以下であり、より好ましくは1重量%以上200%以下であるが、発消色のコントラストを考慮すれば、5重量%以上100%以下が最も好ましい。
【0032】
一方、本発明に用いられる通常無色ないし淡色の電子供与性染料前駆体としては一般に感圧記録紙や感熱記録紙等に用いられるものに代表されるが、特に制限されるものではない。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(1)トリアリールメタン系化合物
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等。
【0034】
(2)ジフェニルメタン系化合物
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等。
【0035】
(3)キサンテン系化合物
ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0036】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)トリルアミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル)プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)イソアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル)シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル)テトラヒドロフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等。
【0037】
(4)チアジン系化合物
ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等。
【0038】
(5)スピロ系化合物
3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等。
【0039】
前記通常無色ないし淡色の染料前駆体はそれぞれ1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
本発明の可逆性感熱記録材料の製造方法の具体例としては、通常無色ないし淡色の染料前駆体と本発明による電子受容性化合物を主成分とし、更に消色促進剤を添加成分として、これらを支持体上に塗布或いは印刷して可逆性感熱記録層を形成する方法が挙げられる。
【0041】
染料前駆体と可逆性顕色剤及び本発明による消色促進剤を可逆性感熱記録層に含有させるための塗液作製方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが特定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてもよい。水が分散媒の場合の分散剤としてはポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種の界面活性剤が挙げられる。水系の分散の際は、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合してもよい。この他に炭化水素類に代表される有機溶媒が分散媒の場合は、レシチンや燐酸エステル類等を分散剤に用いてもよい。
【0042】
また、可逆性感熱記録層の強度を向上する等の目的でバインダーを可逆性感熱記録層中に添加する事も可能である。バインダーの具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のラテックスなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
また、可逆性感熱記録層の発色感度及び消色温度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を可逆性感熱記録層中に含有させることができる。60℃〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に80℃〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することもできる。例えば、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどのワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体等が挙げられ、2種以上併用して添加することもできる。
【0044】
本発明の可逆性感熱記録材料に用いられる支持体としては、紙、各種不織布、織布、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができるが、これらに限定されるものではなく、これらは不透明、半透明或いは透明のいずれであってもよい。地肌を白色その他の特定の色に見せるために、白色顔料や有色染顔料や気泡を支持体中又は表面に含有させても良い。特にフィルム類等水性塗布を行なう場合で支持体の親水性が小さく可逆性感熱記録層の塗布困難な場合は、コロナ放電等による表面の親水化処理やバインダーに用いるのと同様の水溶性高分子類を、支持体表面に塗布するなどの易接着処理してもよい。
【0045】
本発明の可逆性感熱記録材料の層構成は、可逆性感熱記録層のみであっても良い。必要に応じて、可逆性感熱記録層上に保護層を設けることも又、可逆性感熱記録層と支持体の間に中間層を設けることもできる。この場合、保護層および/または中間層は2層ないしは3層以上の複数の層から構成されていてもよい。可逆性感熱記録層も各成分を一層ずつに含有させたり層別に配合比率を変化させたりして2層以上の多層にしてもよい。更に可逆性感熱記録層中および/または他の層および/または可逆性感熱記録層が設けられている面および/または反対側の面に、電気的、磁気的、光学的に情報が記録可能な材料を含んでも良い。また、可逆性感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止、帯電防止を目的としてバックコート層を設けることもできる。
【0046】
なお、本発明における各層を支持体上に積層し、本発明の可逆性感熱記録材料を形成する方法は特に制限されるものではなく、従来の方法により形成することができる。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗抹装置、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いる事が出来る。さらに通常の乾燥工程の他、UV照射・EB照射により各層を保持させる事が出来る。
【0047】
可逆性感熱記録層は、各成分を微粉砕して得られる各々の分散液を混合し、支持体上に塗布乾燥する方法、各成分を溶媒に溶解して得られる各々の溶液を混合し、支持体上に塗布乾燥する方法などにより得ることができる。乾燥条件は水等の分散媒ないし溶媒によっても異なる。この他に各成分を混合し加熱して可融分を溶融し熱時塗布する方法もある。
【0048】
また、可逆性感熱記録層及び/または保護層及び/または中間層には、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂等の顔料、その他に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックス等のワックス類を、また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、さらに界面活性剤、蛍光染料などを含有させることもできる。
【0049】
次に、本発明の可逆性感熱記録材料の発色及び消色方法について述べる。発色を行うには、加熱に引き続き急速な冷却が起これば良く、例えばサーマルヘッド、レーザー光等による加熱により可能である。又、加熱後ゆっくり冷却すれば消色し、例えばサーマルヘッド、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、熱風、電熱ヒーター及びタングステンランプ、ハロゲンランプ等の光源などからの輻射熱等を用いることにより行うことができる。加熱温度は40℃以下でも十分であり、ドライヤーなど日常生活に用いている簡便な装置でも消去できるが、特に加熱せずとも自然環境下に放置することによって完全に消去することができる。消去速度は、添加剤の種類、添加剤の配合量、加熱温度によって自由にコントロールできる。
【0050】
本発明の感熱記録材料の画像形成及び消去原理は未だ明確ではないが、以下の様に考えられる。通常無色ないし淡色の染料前駆体は、フェノール性化合物のような電子受容性化合物と共に加熱すると染料前駆体から電子受容性化合物への電子移動が起こり発色する。この時、電子受容性化合物分子は発色した染料分子の極めて近傍に存在していると考えられる。また、発色した染料分子から電子受容性化合物分子を引き離すと、発色した染料分子は再び電子を受け取り、発色前の染料前駆体の状態となる。本発明は加熱により、電子受容性化合物分子と染料分子との距離を変化させ発色及び消色を行うものと考えられる。
【0051】
さらに詳しく述べるならば、本発明による電子受容性化合物は、その構造の中に大きな脂肪鎖を持つため、染料前駆体分子および発色した染料分子との相溶性が低く、凝固した状態では互いに殆ど溶け合わないと考えられる。また、加熱溶融状態の様に染料前駆体分子と本発明による電子受容性化合物分子が自由に運動できる状態では、染料前駆体分子と本発明による電子受容性化合物分子は互いにある割合で溶け合い、発色状態となる。それ故、発色している溶融状態の混合物をゆっくり冷却すると、降温するに従い本発明による電子受容性化合物と染料分子は互いに溶け合わなくなって相分離し、消色する。この時、本発明に使用される電子受容性化合物は分子内の水素結合能力が弱いため、発色状態は非常に不安定であり、染料と顕色剤が分離しやすい状態であると考えられる。一方、急速に冷却を行うと、相分離する前、即ち発色状態のままで固化するため、発色状態が固定され固化後も発色状態が安定に保持される。
【0052】
本発明に於いて用いられる前記一般式II、 III、IVで表される消色促進化合物は、上記可逆性顕色剤と同様に分子内に脂肪鎖及びアミド結合等の水素結合能力を持つ結合を併せ持つため、加熱により発色状態が崩れ可逆性顕色剤が染料と分離する際の結晶化の核として作用すると考えられる。一方、一般に電子供与性染料前駆体を用いる感熱記録材料は、アミン等の塩基性化合物との接触で印字画像が消色することが広く知られている。つまり、本発明で用いられる消色促進剤も分子内に消色作用を示す含窒素複素環を有しているため、降温後の電子供与性染料前駆体と電子受容性可逆性顕色剤の相分離時に、消色現象をより加速しているものと考えられる。
【0053】
【実施例】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明する。実施例中の部数や百分率は重量基準である。
【0054】
実施例1
(A)可逆性感熱塗液の作成
染料前駆体である3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン40部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液90部と共にペイントコンディショナーで18時間粉砕し、染料前駆体分散液(A液)を得た。次いで(n−オクタデシルチオ)コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミド100部を1.25%ポリビニルアルコール水溶液400部 と共にペイントコンディショナーで18時間粉砕し電子受容体化合物分散液(B液)を得た。更に、炭酸マグネシウム20部と0.2%ポリビニルアルコール水溶液47部をホモジナイザーで粉砕した分散液(C液)を得た。また、N−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシル1.0部を1.25%ポリビニルアルコール水溶液40部と共にペイントコンディショナーで18時間粉砕し消色促進剤分散液(D液)を得た。これらA、B、C及びD液の4種の分散液を混合した後、10%ポリビニルアルコール水溶液170部、水350部を添加、よく混合し、可逆性感熱塗液を作成した。
【0055】
(A)で調製した可逆性感熱塗液をポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、 固形分塗抹量4g/m2となる様に塗抹し、乾燥後、スーパーカレンダーで処理して可逆性感熱記録材料を得た。
【0056】
実施例2
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−(4−メチルピペラジニル)カルバミド酸ヘキサデシルを使用した他は実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0057】
実施例3
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−オクタデシルカルバミド酸〔2−(1−ピロリジニル)エチル〕を使用した他は実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0058】
実施例4
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−(2−モルホリノエチル)−11−デシルチオウンデカンアミドを使用した他は、実施例1と同様にして可逆感熱材料を得た。
【0059】
実施例5
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−(3−ジエチルアミノプロピル)−11−デシルチオウンデカンアミドを使用した他は、実施例1と同様にして可逆感熱材料を得た。
【0060】
実施例6
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−(4−メチルピペラジニル)−3−ドデシルチオプロパンアミドを使用した他は、実施例1と同様にして可逆感熱材料を得た。
【0061】
実施例7
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−オクタデシルスクシンイミドを使用した他は、実施例1と同様にして可逆感熱材料を得た。
【0062】
実施例8
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりに、N−(2−オクタデシルチオ)エチルスクシンイミドを使用した他は、実施例1と同様にして可逆感熱材料を得た。
【0063】
実施例9
実施例1で用いた(n−オクタデシルチオ)コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミドのかわりに、〔(n−オクタデシルチオ)〕メチルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミドを使用した他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0064】
実施例10
実施例1で用いた3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランのかわりに、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランを使用した他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0065】
比較例1
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルを除いた他は、実施例1と同様にした。
【0066】
比較例2
実施例1で用いたN−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルのかわりにステアリン酸アミドを用いた他は、実施例1と同様にした。
【0067】
比較例3
実施例1で用いた(n−オクタデシルチオ)コハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミドのかわりに、〔(n−オクタデシルチオ)〕メチルコハク酸〔N−(4−ヒドロキシフェニル)〕イミドを使用し、N−(3−モルホリノプロピル)カルバミド酸ヘキサデシルを除いた他は、実施例1と同様にして可逆性感熱記録材料を得た。
【0068】
試験1(発色濃度=熱応答性)
実施例1〜10および比較例1〜3で得た感熱記録材料を、京セラ製印字ヘッドKJT−256−8MGF1付き大倉電気製感熱ファクシミリ印字試験機TH−PMDを用いて印加パルス1.1ミリ秒で印加電圧26ボルトの条件で印字し、得られた発色画像の濃度を濃度計マクベスRD918を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0069】
試験2(室温での画像消去速度)
実施例1〜10および比較例1〜3で得た感熱記録材料を、試験1の方法で印字し、得られた発色画像部を室温(23℃)に放置し、発色画像の1時間おきの経時濃度変化を試験1と同様に測定した。 発色画像の光学濃度が0.15を下回った時間を表1に示した。
【0070】
試験3(室温での画像消去性)
試験2において、最も良く消去したときの消色部の光学濃度を試験1と同様にして測定した。結果を表1に示した。
【0071】
試験4(35℃での画像消去速度)
実施例1〜10および比較例1〜3で得た感熱記録材料を、試験1の方法で印字し、得られた発色画像部を35℃に放置し、発色画像の10分おきの経時濃度変化を試験1と同様に測定した。 発色画像の光学濃度が0.15を下回った時間を表1に示した。
【0072】
試験5(35℃での画像消去性)
試験4において、最も良く消去したときの消色部の光学濃度を試験1と同様にして測定した。結果を表1に示した。
【0073】
試験6(ドライヤーでの画像消去性)
試験1において得られた印字画像をドライヤーで加熱し、最も良く消去した消色部の光学濃度を試験1と同様にして測定した。結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
表1に示したように、支持体上に通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録材料において、 前記一般式Iで示される電子受容性化合物と、 消色促進剤として前記一般式II、IIIまたはIVで示される化合物を組み合わせることにより、自然環境に放置したりまたは比較的低い温度に放置したり、あるいはドライヤーなどで加熱するなどの簡便な方法で消去可能な、極めて実用性の高い可逆性感熱記録材料を得ることができた。
Claims (1)
- 通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる電子受容性化合物とを含有する可逆性感熱記録材料において、前記電子受容性化合物として下記一般式Iで示される化合物を用い、 さらに消色促進剤として下記一般式II、IIIおよびIVで示される化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする可逆性感熱記録材料。
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