JP3591164B2 - 吸着式冷凍装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着器が有する吸着剤の冷却および加熱により蒸発器で気化した冷媒の吸着および凝縮器への冷媒蒸気の供給を行うようにした吸着式冷凍装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷凍装置として、吸着剤を冷却状態にして蒸発器で気化した冷媒蒸気を吸着し、吸着剤を加熱状態に切り替えることにより、吸着した冷媒を脱着して凝縮器に供給するように構成した吸着式冷凍装置が知られている。
【0003】
最近では、この吸着式冷凍装置を自動車用空調装置(カーエアコン)に採用することが試みられており、その構成例を図25に示す。同図において、第1,第2の吸着器1,2内には、吸着剤Sおよび熱交換流路3,4が設けられており、これら第1,第2の吸着器1,2の冷媒出口は三方弁5を介して凝縮器6に接続されている。そして、凝縮器6は蒸発器7に接続され、更に蒸発器7は三方弁8を介して第1,第2の吸着器1,2の冷媒入口に接続されている。
【0004】
一方、第1,第2の吸着器1,2の熱交換流路3,4に加熱流体と冷却流体とを交互に供給するために、加熱流体の供給パイプ9と冷却流体の供給パイプ10とが三方弁11および12を介して熱交換流路3,4の入口に接続されていると共に、熱交換流路3,4の出口が三方弁13および14を介して加熱流体の排出パイプ15および冷却流体の排出パイプ16に接続されている。
【0005】
ここで、加熱流体としてはエンジン17の冷却水が使用され、冷却流体としては大気に放熱する放熱器18により冷却される水が使用されるようになっており、加熱流体の供給パイプ9と排出パイプ15とがそれぞれエンジン17の冷却水出口および冷却水入口に接続されていると共に、冷却流体の供給パイプ10と排出パイプ16とがそれぞれ放熱器18の出口および入口に接続されている。
【0006】
さて、今、各三方弁5,8,11〜14が実線で示す状態にあるとすると、加熱流体が供給パイプ9、三方弁11、第1の吸着器1の熱交換流路3、三方弁13を経て排出パイプ15から排出されると共に、冷却流体が供給パイプ10、三方弁12、第2の吸着器2の熱交換流路4、三方弁14を経て排出パイプ16から排出される。
【0007】
そして、加熱流体が熱交換流路3を流通することにより、第1の吸着器1内の吸着剤Sが加熱され、これに吸着されていた冷媒が蒸発して脱着される。この冷媒蒸気は三方弁5を介して凝縮器6に入り、ここで外部と熱交換して凝縮し、冷媒液となる。凝縮器6から流出した冷媒液は蒸発器7に供給され、ここで外部と熱交換して蒸発気化する。蒸発器7で気化した冷媒蒸気は三方弁8を経て第2の吸着器2に入り、吸着剤Sに吸着される。この冷媒蒸気の吸着の際に発生する熱は熱交換流路4を流通する冷却流体に奪い去られる。
【0008】
上記の運転により、吸着剤Sから冷媒の脱着が終了し、或いは吸着剤Sの冷媒の吸着能力が低下すると、各三方弁5,8,11〜14が実線で示す状態から破線で示す状態に切り換えられる。これにより前述とは逆に加熱流体が第2の吸着器2の熱交換流路4を流通し、冷却流体が第1の吸着器1の熱交換流路3を流通する状態となるので、第2の吸着器2が脱着側、第1の吸着器1が吸着側となり、第1の吸着器2の吸着剤Sから脱着された冷媒蒸気は凝縮器6により凝縮された後、蒸発器7で蒸発して第1の吸着器1の吸着剤Sに吸着されるようになり、その吸着時に発生する熱は熱交換流路3を流通する冷却流体に奪い去られる。
【0009】
そして、第2の吸着器2の吸着剤Sからの冷媒の脱着が終了し、或いは第1の吸着器1の吸着剤Sの冷媒の吸着能力が低下すると、各三方弁5,8,11〜14が破線で示す状態から実線で示す状態に切り替えられ、以下、上述したと同様にして、第1および第2の吸着器1および2が交互に吸着行程と脱着行程とを繰り返す。
【0010】
このように従来の自動車用空調装置に使用される吸着式冷凍装置では、一般に一対の吸着器を1段だけ設け、それら一対の吸着器に交互に吸着行程と脱着行程とを実行させるために、放熱器18で放熱することにより冷やされた冷却流体とエンジン17を冷やすことにより熱せられた加熱流体(エンジン冷却水)とを交互に供給するようにしているのである。
【0011】
これに対し、特開平7−120100号公報に示された吸着式冷凍装置では、吸着器を多段に設けた形態になされている。これは、図24に示すように、吸着剤Sおよび熱交換流路21が設けられた反応器22内を複数のチャンバーC1〜C7に区画した構成のものである。
【0012】
このものでは、各チャンバーC1〜C7と凝縮器24或いは蒸発器25との間を開閉するためのバルブV1〜V7およびV8〜V14を備えており、脱着行程時にはバルブV1〜V7を開き、V8〜V14を閉じた状態で伝熱流体を熱源25から熱交換流路21を通じて冷熱源26に流し、吸着行程では逆に、バルブV8〜V14を開き、V1〜V7を閉じた状態で伝熱流体を冷熱源26から熱交換流路21を通じて熱源25に流す。
【0013】
特に、脱着行程から吸着行程に切り替える際には、バルブV1〜V14の開閉を次のように制御している。すなわち、脱着行程の終了状態では、各チャンバーC1〜C7を凝縮器24に接続するバルブV1〜V7は全て開かれており、各チャンバーC1〜C7を蒸発器25に接続するバルブV8〜V14は全て閉じられている。
【0014】
この脱着行程終了状態から吸着行程に切り替えるには、まず、1段目のチャンバーC1の凝縮器24側のバルブV1を閉じて冷熱源26のピストン27を押圧し、冷却された伝熱流体を熱交換流路21を通じて熱源25に向けて流す。これにより、1段目のチャンバーC1の冷却が開始され、その圧力が低下する。そして、1段目のチャンバーC1が所定の蒸発圧力に達したところで、該1段目のチャンバーC1の蒸発器24側のバルブV8を開くと同時に2段目のチャンバーC2の凝縮器23側のバルブV2を閉じる。
【0015】
すると、蒸発器24内の冷媒蒸気が1段目のチャンバーC1の吸着剤Sに吸着されると共に、2段目のチャンバーC2の冷却が開始されるようになる。そして、2段目のチャンバーC2が所定の蒸発圧力に達したところで、該2段目のチャンバーC2の蒸発器24側のバルブV9を開くと同時に3段目のチャンバーC3の凝縮器23側のバルブV3を閉じる。以後、同様にしてバルブV3〜V7が順次閉じられると共に、バルブV10〜14が順次開かれ、最終的には、凝縮器23側のバルブV1〜V7は全て閉じられ、蒸発器24側のバルブV8〜V14は全て開かれた状態となる。
【0016】
このようにバルブV1〜V14を制御することにより、急峻な温度前線を得ることができるようにして、吸着行程から脱着行程への切り替わり時に吸着剤Sの液化潜熱によって伝熱流体を予熱し、熱的効率を高めると共に、脱着効率を高めるようにしようとするものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
吸着式冷凍装置をカーエアコンに適用した場合にあっては、エンジンを熱源として利用することにより、十分に高温度の加熱流体(エンジン冷却水)を得ることができる。しかし、自動車が冷熱源を備えていないことから、図25を参照して説明したように、冷却流体として、大気に放熱する放熱器18で冷却した水を用いざるを得ず、この結果、十分低温の冷却流体が得られない。
【0018】
このため、吸着剤の吸着時に、蒸発器での冷媒の蒸発温度に比べて吸着剤の吸着温度が高く、その分、吸着剤の吸着能力を十分に発揮させることができず、冷却(冷房)能力が十分に得られないという不具合があった。
また、このような不具合は、特開平7−120100号公報に示された吸着式冷凍装置では解決できない。
【0019】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、吸着剤の吸着能力を十分に発揮させることができ、高い冷却能力を発揮することができる吸着式冷凍装置を提供するにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の吸着式冷凍装置では、蒸発器と吸着器とを一対一の関係をもって複数段設け、各段の蒸発器で冷やされた冷却流体を前段の吸着器の熱交換流路に供給する構成としている。このため、各段の蒸発器で気化した冷媒蒸気を各段の吸着器の吸着剤で吸着する際、冷媒蒸気の温度に対し、冷却流体による吸着剤の冷却温度を近付けることができるので、吸着剤の吸着時の吸着率と脱着時の吸着率との差を大きくすることができる。従って、少量の吸着剤で多量の冷媒蒸気を凝縮器に供給することができるので、大型化を回避しながら、冷却能力を高くすることができる。
【0021】
特に、請求項1または請求項2の発明では、複数段の吸着器のうち、少なくとも隣り合う2段の吸着器の熱交換流路を直列に接続し、または複数段の蒸発器のうち、少なくとも隣り合う蒸発器により冷却される冷却流体の流路を直列に接続するので、吸着器が複数段存在しても、それらに供給する冷却流体の循環経路数を少なくすることができ、配管構成の簡略化を図ることができる。
【0022】
この場合、請求項3の発明のように、各段の吸着器の熱交換流路と外部に放熱する放熱器と各段の蒸発器により冷却される複数個の熱交換器と外気を冷却するための冷却器とを直列に接続し、放熱器で冷やされた冷却流体を更に最終段の蒸発器から1段目の蒸発器までの熱交換器により順次冷やし、そして、その冷却流体をまず冷却器に供給して外部を冷却し、その後、1段目の吸着器から最終段の吸着器までの熱交換流路に順次供給する構成とすることにより、冷却流体の循環経路を1経路にすることができる。
【0023】
吸着剤は同じ相対湿度でも圧力が高いほど、冷媒蒸気に対する吸着速度が速くなる。複数段の吸着器に吸着される冷媒の蒸発圧力は後段側ほど高いので、後段側の吸着剤ほど吸着速度は速い。このため、請求項4の発明のように、複数段の吸着器のうち、後段側の吸着器ほど前記吸着剤の充填量を少なくすることにより、吸着器の小形化を図ることができ、且つこのような小形化を図っても冷媒の吸着能力を損なうおそれがない。
【0024】
また、吸着剤は粒径が小さいほど単位重量当たりの表面積が広くなるので、冷媒蒸気に対する吸着速度が速くなる。半面、粒径が小さいほど吸着剤の層内への冷媒蒸気の到達性が悪化する。この両者の兼ね合いで吸着剤の最適粒径が決まる。しかし、冷媒蒸気の吸着剤層内への到達性は圧力が高くなるほど向上する。そこで、請求項5の発明のように、冷媒蒸気の圧力が高い後段側の吸着器の吸着剤ほどその粒径を小さくすることにより、冷媒の吸着能力を損なうことなく、吸着器の小形化を図ることができる。
【0025】
ところで、冷却器で外気を0℃程度に冷却したい場合がある。冷却器で0℃を得るには、熱交換効率を考慮して、1段目の蒸発器では冷媒蒸発温度を−5℃程度にする必要があるが、このような低温度では冷媒が純水であると凍結してしまう。そこで、凝固点降下剤を混合した水を冷却流体として用いることが考えられるが、凝固点降下剤は冷却能力の低下、腐食などの問題を生ずる。このことに関し、請求項6の発明では、前記凝縮器を各段の前記蒸発器および吸着器に対応して複数設けて冷媒の循環系が各段毎に独立するように構成し、それら各段の凝縮器、蒸発器および吸着器に封入する冷媒のうち、前方段側の所要の段の冷媒に凝固点降下剤を混入する構成としたので、冷却能力低下、腐食などをもたらすおそれのある凝固点降下剤の使用を前段側の最小限の範囲に限定することができる。
【0026】
この場合、請求項7の発明のように、前段側の所要の段は、冷媒としてアルコール系物質を用い、吸着剤として活性炭を用いるようにしても良い。このようにすることにより、アルコール系物質は凍結温度が低いので、冷媒の凍結を確実に防止でき、また活性炭はアルコール系物質を吸着し易いので、吸着剤の少量化を図ることができる。
【0027】
本発明において、各段の吸着器の熱交換流路は全体としてみたとき対向流形の熱交換器を構成するが、請求項8の発明のように、前記放熱器から流出する冷却流体と前記冷却器から流出する冷却流体とを混合して最終段の前記蒸発器の熱交換器と1段目の前記吸着器の熱交換流路に供給するように構成すると、1段目の吸着器の熱交換流路に流入する冷却流体の温度が高くなるので、吸着剤の冷媒吸着時の放出熱量が少なくなり、熱交換効率が高くなる。
【0028】
請求項9記載の発明は、前記各段の吸着器は2個ずつ設けられ、それら2個の吸着器は、一方が自身の前記熱交換流路に冷却流体が供給されることによって吸着を行う時、他方が自身の前記熱交換流路に加熱流体が供給されることによって脱着を行うという関係をもって、吸着行程と脱着行程を交互に実行するように構成され、その行程の切り換え時に、前記各段の吸着器の熱交換流路は、切り換え前の実行行程と切り換え後の実行行程とが同じ吸着器の熱交換流路が直列に接続される状態を経た後、切り換え後に同じ行程を実行する吸着器の熱交換流路が直列に接続されることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、行程の切り換えの際に各段の熱交換流路内に残った冷却流体或いは加熱流体は、切り換え後に吸着行程或いは脱着行程を実行する吸着器の熱交換流路に供給されるので、特に後段側の吸着器が実際に吸着或いは脱着を実行できる状態になるまでの時間が短くなる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車用空調装置(カーエアコン)に適用した実施例により具体的に説明する。
図1〜図4は本発明の第1実施例を示す。なお、この実施例では、蒸発器および吸着器を2段備え、各段の吸着器は、一方が脱着行程を実行するとき、他方が吸着行程を実行するという関係をもって交互に脱着行程と吸着行程とを繰り返す2個の吸着器からなるものとして説明する。
【0031】
図1および図2は吸着式冷凍装置31の全体のシステム構成が互いに異なる状態にして示されている。この吸着式冷凍装置31は、例えば1個の凝縮器32、1段目蒸発器33、2段目蒸発器34、前記1段目凝縮器33に対応する第1および第2の1段目吸着器35および36、前記2段目蒸発器34に対応する第1および第2の2段目吸着器37および38を備えており、これらは、自動車のエンジンルーム内に設けられている。
【0032】
上記凝縮器32は、入口32aから供給された冷媒蒸気を凝縮し、液冷媒として出口32bから排出し、各蒸発器33および34は、入口33aおよび34aから供給された冷媒液を蒸発させて出口33b,33cおよび34b,34cから放出する。
【0033】
一方、前記吸着器35〜38は、容器内に無数の粒状の吸着剤Sを収納すると共に、この吸着剤Sと熱交換する熱交換流路39〜42を設けて構成されている。そして、熱交換流路39〜42に低温の冷却流体が流されているときには、その冷却流体により冷却される吸着剤Sが入口35a〜38aを通して冷媒蒸気を吸着し、熱交換流路39〜42に高温の加熱流体が流されているときには、その加熱流体により加熱される吸着剤Sが冷媒を脱着し、冷媒蒸気にして出口35b〜42bから放出するようになっている。なお、冷媒としては例えば水が使用され、吸着剤Sとしては例えばシリカゲル、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ等が使用されている。
【0034】
上述のように冷媒を吸着および脱着する吸着器35〜38に対して前記凝縮器32、蒸発器33,34が次のような通路(配管)構成により相互に接続されている。すなわち、1段目蒸発器33に対応する第1および第2の1段目吸着器35および36は、その入口35aおよび36aが1段目蒸発器33の出口33bおよび33cに開閉弁43および44を介して接続されている。また、前記2段目蒸発器34に対応する第1および第2の2段目吸着器37および38は、その入口37aおよび38aが2段目蒸発器34の出口34bおよび34cに入口側開閉弁45および46を介して接続されている。
【0035】
そして、各吸着器35〜38の出口35b〜38bは、それぞれ出口側開閉弁47〜50を介して冷媒蒸気通路51および52に接続され、それら冷媒蒸気通路51および52は、前記凝縮器32の入口32aに接続されている。
【0036】
また、凝縮器32の出口32bは、冷媒液通路たる絞り兼用のキャピラリ管53を介して2段目蒸発器34の入口34aに接続され、更に、この2段目蒸発器34に1段目蒸発器33の入口33aが冷媒液通路たるキャピラリ管54を介して接続されている。これにより、凝縮器32で凝縮された冷媒液が2段目蒸発器34、1段目蒸発器33の順に供給されるようになっている。
【0037】
前記両蒸発器33,34の内部には、熱交換器55,56が設けられており、これら熱交換器55,56の内部の熱交換流体(例えば水)は蒸発器33,34での冷媒液の気化潜熱によって冷却される。そのうち1段目蒸発器33の熱交換器55は、外部冷却用すなわちカーエアコンの送風ダクト(図示せず)を通じて自動車の乗員室内に送風される空気を冷却するために用いられる。
【0038】
外部冷却用の熱交換器55は上記カーエアコンの送風ダクト内に設けられる空調用冷却器57に循環路58を介して接続されている。そして、1段目蒸発器33での冷媒液の気化潜熱により冷却された熱交換流体は循環路58中に設けられたポンプ59により矢印A方向に送られて熱交換器55と空調用冷却器57との間を循環するようになっている。
【0039】
ここで、1段目蒸発器33での冷媒液の気化潜熱により乗員室内への送風空気を冷却するには、1段目蒸発器33を直接カーエアコンの送風ダクト内に配置しても良いが、この実施例のように、熱交換器55と空調用冷却器57とを介して送風ダクト内を流れる空気を冷却するように構成すれば、1段目蒸発器33で気化した冷媒蒸気を第1の1段目吸着器35或いは第2の1段目吸着器36に戻すための冷媒配管には、管径の大きなものを使用せねばならないという事情下において、その太い冷媒配管をエンジンルームと乗員室との間で長く引き回さずとも済む。
【0040】
一方、2段目蒸発器34の熱交換器56は前記吸着器35〜38の熱交換流路39〜42に供給する冷却流体を生成するために用いられる。この熱交換器56は、大気中に放熱する放熱器60と直列に接続され、放熱器60で放熱することにより冷やされた冷却流体を2段目蒸発器34での冷媒液の気化潜熱により更に冷やす。
【0041】
吸着器35〜38の熱交換流路39〜42には、放熱器60および熱交換器56で冷やされた冷却流体の他、高温度の加熱流体が供給されるが、この実施例では加熱流体としてエンジンの冷却水が使用される。
【0042】
この場合、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37のペア、第2の1段目吸着器36と第2の2段目吸着器38のペアのうち、一方が吸着行程を実行するとき、他方が脱着行程を実行するという関係をもって、それら両ペアが吸着行程と脱着行程とを交互に繰り返すように構成される。そのために、冷却流体と加熱流体との供給路は以下のように構成されている。
【0043】
まず、第1の1段目吸着器35および第1の2段目吸着器37の熱交換流路39および41は直列に接続され、熱交換流路39の入口39aが入口側四方弁(4ポート2位置切換弁)61の第1ポート61aに接続され、熱交換流路41の出口41aが出口側四方弁(4ポート2位置切換弁)62の第1ポート62aに接続されている。また、第2の1段目吸着器36および第2の2段目吸着器38の熱交換流路40および42は直列に接続され、熱交換流路40の入口40aが入口側四方弁61の第2ポート61bに接続され、熱交換流路42の出口42aが出口側四方弁62の第2ポート62bに接続されている。
【0044】
一方、図示しないエンジンの冷却水流出口および流入口には往路パイプ63および復路パイプ64が接続されている。そして、往路パイプ63は入口側四方弁61の第3ポート61cに接続され、復路パイプ64は出口側四方弁62の第3ポート62cに接続されている。また、冷却流体を生成するために直列に接続された放熱器60および熱交換器56のうち、熱交換器56の出口56aが冷却流体を矢印B方向に送るためのポンプ65を介して入口側四方弁61の第4ポート61dに接続されていると共に、放熱器60の入口60aが出口側四方弁62の第4ポート62dに接続されている。
【0045】
上記両四方弁61,62は図1に示す第1の状態と、図2に示す第2の状態とに切り替えられるようになっている。そして、第1の状態では、入口側四方弁61は第1ポート61aと第4ポート61dを接続すると共に、第2ポート61bと第3ポート62cとを接続し、出口側四方弁62も同様に第1ポート62aと第4ポート62dを接続すると共に、第2ポート62bと第3ポート62cとを接続する。
【0046】
これにより、エンジンから流出した加熱流体が第2の1段目吸着器36の熱交換流路40から第2の2段目吸着器38の熱交換流路42へと流れてエンジンに戻されるというように循環する共に、放熱器60および2段目蒸発器34の熱交換器56で冷やされた冷却流体が第1の1段目吸着器35の熱交換流路39から第1の2段目吸着器37の熱交換流路41へと流れて放熱器60に戻るというように循環する。
【0047】
また、両四方弁61,62が図2に示す第2の状態に切り替えられると、入口側四方弁61は第1ポート61aと第3ポート61cを接続すると共に、第2ポート61bと第4ポート61dとを接続し、出口側四方弁62も同様に第1ポート62aと第3ポート62cを接続すると共に、第2ポート62bと第4ポート62dとを接続する。
【0048】
これにより、エンジンから流出した加熱流体が第1の1段目吸着器35の熱交換流路39から第1の2段目吸着器37の熱交換流路41へと流れてエンジンに戻されるというように循環する共に、放熱器60および2段目蒸発器34の熱交換器56で冷やされた冷却流体が第2の1段目吸着器36の熱交換流路40から第2の2段目吸着器38の熱交換流路42へと流れて放熱器60に戻るというように循環する。
【0049】
そして、前記四方弁61,62は、電動式例えばモータにより駆動されるロータリ式のもので、冷媒流路を切り替えるための前記開閉弁43〜50と共にマイクロコンピュータ等を備えた制御手段としての制御装置(ECU)により制御される。この場合、四方弁61,62および開閉弁43〜50は一定時間(例えば60秒)毎に切り替わり動作するように制御される。
なお、四方弁61,62および開閉弁43〜50の切り替わり周期は、吸着剤Sの脱着・吸着に要する時間を予め実験或いは理論的に求めた時間に設定されたものである。
【0050】
次に上記構成の作用を説明する。
カーエアコンの運転スイッチがオンされると、上述のように制御装置は、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37とのペア、第2の1段目吸着器36と第2の2段目吸着器38とのペアのうち、一方が吸着行程にあるとき、他方が脱着行程を実行するように両四方弁61,62および開閉弁43〜50を制御する。なお、図1および図2において、開閉弁43〜50は、白抜きが開状態を示し、黒塗りが閉状態を示す。
【0051】
今、図1に示すように、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37とのペアが吸着行程を実行し、第2の1段目吸着器36と第2の2段目吸着器38とのペアが脱着行程を実行する状態にあるとする。この状態では、第1の1段目吸着器35および第1の2段目吸着器37は開閉弁43および45の開によりそれぞれ1段目蒸発器33および2段目蒸発器34に連通されていると共に、開閉弁47および49の閉により凝縮器32とは遮断された状態にあり、その熱交換流路39および41は冷却流体の供給を受ける。また、第2の1段目吸着器36および第2の2段目吸着器38は開閉弁48および50の開により凝縮器32に連通されていると共に、開閉弁44および46の閉により1段目蒸発器33および2段目蒸発器34とは遮断された状態にあり、その熱交換流体40および42は加熱流体の供給を受ける。
【0052】
これにて、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37の吸着剤Sが冷却されて吸着作用を呈するため、1段目蒸発器33および2段目蒸発器34に溜められていた冷媒液が気化し、気化した冷媒蒸気はそれぞれ第1の1段目吸着器35および第1の2段目吸着器37に吸着される。このときの1段目蒸発器33の冷媒の気化潜熱により、熱交換器55内を流れる熱交換媒体が冷却されるようになり、これにより空調用冷却器57が冷却作用を呈してエアコンの送風ダクト内を流れる空気を冷却する。
【0053】
一方、第2の1段目吸着器36と第2の2段目吸着器38では、その吸着剤Sが加熱流体により加熱されるため、それら吸着剤Sが吸着していた冷媒が脱着され、その脱着により生じた冷媒蒸気が凝縮器32に供給され、ここで大気との熱交換により冷やされて凝縮する。そして、凝縮器32で凝縮した冷媒液は、2段目蒸発器34および1段目蒸発器33に供給され、ここで気化して第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37の吸着剤Sにそれぞれ吸着される。
【0054】
そして、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37において、その吸着剤Sが吸着作用を呈することにより冷媒から発せられた凝縮潜熱は熱交換流路39および41を流れる冷却流体により奪われ、その凝縮潜熱を奪うことによって温度上昇した冷却流体は、まず放熱器60で大気中への放熱により冷やされた後、熱交換器56で2段目蒸発器34での冷媒液の気化潜熱により更に冷やされ、その後、再び第1の1段目吸着器35および第1の2段目吸着器37の熱交換流路39および41を順次流れるというように循環する。
【0055】
このような状態が一定時間続くと、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37の吸着剤Sの吸着能力が低下し、第2の1段目吸着器36と第2の2段目吸着器38では吸着剤Sの脱着が終了する。すると、四方弁61,62および開閉弁43〜50が図2に示す状態に切り替わるので、第1の1段目吸着器35および第1の2段目吸着器37が開閉弁47および49の開により凝縮器32に連通され、開閉弁43および45の閉によりそれぞれ1段目蒸発器33および2段目蒸発器34と遮断されると共に、その熱交換流路39および41は加熱流体の供給を受ける。
【0056】
また、第2の1段目吸着器36および第2の2段目吸着器38が開閉弁44および46の開により1段目蒸発器33および2段目蒸発器34と連通され、開閉弁48および50の閉により凝縮器32と遮断されると共に、その熱交換流路40および42は冷却流体の供給を受ける。
【0057】
この図2の状態は、第1の1段目吸着器35と第1の2段目吸着器37とのペアが脱着行程を実行し、第2の1段目吸着器36と第2の2段目吸着器38とのペアが吸着行程を実行するというように、吸着行程と脱着行程とを行うペアが図1の状態と逆になるだけであるから、詳細な説明は省略する。そして、この図2の状態が一定時間続くと、四方弁61,62および開閉弁43〜50が図1に示す状態に切り替わる、というように一定時間毎に図1の状態と図2の状態とが交互に繰り返えされる。
【0058】
このように本実施例によれば、放熱器60で冷やされた冷却流体を更に2段目蒸発器34の熱交換器56で冷却して第1の1段目吸着器35および第1の2段目吸着器37の熱交換流路39および41、或いは第2の1段目吸着器36および第2の2段目吸着器38の熱交換流路40および42に供給するようにしたので、吸着器35〜38を大型化することなく、吸着式冷凍装置31全体としての冷却能力を高めることができる。
【0059】
このことを図25に示す従来の吸着式冷凍装置と比較して説明する。
まず、吸着器の脱着時における最小吸着率は、冷媒の露点温度すなわち凝縮器での凝縮温度と、吸着剤の加熱温度すなわち加熱流体の温度とによって決まり、また吸着時における最大吸着率は、冷媒の露点温度すなわち蒸発器での冷媒液の気化温度と、吸着剤の冷却温度すなわち冷却流体の温度とによって決まる。そして、その最小吸着率と最大吸着率との差分だけの冷媒が凝縮器および蒸発器に供給され、蒸発器で冷凍(冷却)作用を呈する。このため、脱着時の最小吸着率と吸着時の最大吸着率との差が大きいほど冷凍能力が高いといえる。
【0060】
さて、今、加熱流体であるエンジン冷却水の温度が90℃、大気によって冷却される凝縮器での冷媒の凝縮温度が40℃、放熱器で冷やされる冷却流体の温度が30℃、乗員室に送風される空気を冷やすための蒸発器での冷媒の気化温度が10℃であるとする。
【0061】
すると、図25の従来構成のものにおいて、脱着行程においては、加熱流体により90℃に加熱された吸着剤Sから脱着された冷媒蒸気が凝縮器6で40℃に冷やされて凝縮することから、図4の水分吸着率−温度特性図に点P1で示すように、吸着剤Sは吸着率が約6%となるまで冷媒を脱着する。
【0062】
この脱着行程における吸着剤Sの吸着率は本実施例も同様で、第1の1段目および2段目吸着器35および37、または第2の1段目および2段目吸着器36および38で加熱流体により90℃に加熱された吸着剤Sから脱着された冷媒蒸気が凝縮器32で40℃に冷やされて凝縮するから、各吸着器35〜38の脱着剤Sは吸着率約6%となるまで冷媒を脱着する。
【0063】
一方、吸着行程においては、図25の従来構成のものでは、蒸発器7において10℃で気化した冷媒蒸気を冷却流体により30℃に冷やされた吸着剤Sで吸着することとなるから、このとき吸着剤Sは図4の点P2で示すように、吸着率が約15%となるまで冷媒を吸着する。従って、脱着時との差約9%相当分が吸着剤Sによって吸着および脱着される冷媒量であり、これでは蒸発器7に十分な量の冷媒液を供給して十分な冷凍能力を得るには多量の吸着剤Sを必要とする。
【0064】
これに対し、本実施例では、冷却流体の循環系のみを示す図3のように、冷却流体は放熱器60で30℃まで冷却され、2段目の蒸発器34で更に20℃まで冷やされ、その後、第1の1段目吸着器35或いは第1の2段目吸着器37の吸着剤Sを冷却して20℃から30℃に温度上昇し、そして第2の1段目吸着器36或いは第2の2段目吸着器38の吸着剤Sを冷却して30℃から40℃まで温度上昇し、放熱器60で30℃まで冷却されるというように循環する。
【0065】
このため、1段目吸着器35,36では、平均温度25℃に冷却された吸着剤Sが10℃の冷媒蒸気を吸着し、2段目吸着器37,38では平均温度35℃に冷却された吸着剤Sが20℃の冷媒蒸気を吸着することとなるから、1段目吸着器35,36の吸着剤Sの吸着率は図4にP3で示すように約21%となり、2段目吸着器37,38の吸着剤Sの吸着率は同P4で示すように約23%となる。従って、1段目吸着器35,36の吸着剤Sが吸着および脱着する冷媒量は約15%、2段目吸着器37,38の吸着剤Sが吸着および脱着する冷媒量は約17%となり、図25の従来構成のものよりも吸着および脱着する冷媒量が増加する。このため、吸着器35〜38の大型化を回避しながら、冷凍能力を高めることができるのである。
【0066】
ところで、上述のように吸着行程と脱着行程との間での吸着剤Sの吸着率の差を大きくして大型化を回避しながら冷凍能力の向上を図る他の構成例として、図23に示すように放熱器60で冷却した冷却流体で2段目吸着器37,38を冷却し、2段目蒸発器34で冷却した冷却流体で1段目吸着器33,34を冷却し、1段目蒸発器33で冷却した熱交換媒体で空調用冷却器57を冷却することが考えられる。
【0067】
しかしながら、これでは冷却流体、熱交換媒体を循環させるための循環路が3系統となり、各系統毎にポンプPが必要となるため、3台のポンプを要する。 これに対し、本実施例では、放熱器60と2段目蒸発器34とを直列に接続すると共に、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39と第1の2段目吸着器37の熱交換流路41、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40と第2の2段目吸着器38の熱交換流路42をそれぞれ直列に接続するようにしたので、冷却流体、熱交換媒体を循環させるための循環路が2系統となり、冷却流体や熱交換媒体の配管構成が簡単で、ポンプ59,65も2台で済むこととなって製造コストの低減化を図ることができる。
【0068】
しかも、本実施例では、放熱器60および2段目蒸発器34で冷やされた冷却流体を直列に接続された熱交換流路39,41或いは熱交換流路40,42に流す場合、蒸発温度のより低い冷媒蒸気を吸着する側の吸着器、すなわち1段目吸着器35,37の熱交換流路39,40に先に供給してその吸着剤Sを冷却し、この後で蒸発温度のより高い冷媒蒸気を吸着する側の吸着器、すなわち2段目吸着器37,38に供給してその吸着剤Sを冷却するようにしたので、一種の対向流形の熱交換形式となって効率良く吸着剤Sを冷却することができる。
【0069】
その上、各段の吸着器35〜38の吸着剤Sが吸着する冷媒蒸気の温度と冷却流体の温度との温度差を吸着器35〜38相互間で同等にすることができる。従って、各段の吸着器35〜38において、吸着剤Sの吸着時の吸着率と脱着時の吸着率との差が同等になるようにし、各段の吸着器35〜38共に多量の冷媒を凝縮器32に供給できるようになる。
【0070】
ところで、上述の第1実施例では、蒸発器33,34と凝縮器32とを別のものとし、1段目吸着器35,36、2段目吸着器37,38が吸着行程で蒸発器33,34で蒸発した冷媒蒸気を吸着し、脱着行程で脱着した冷媒蒸気を凝縮器32に送るように構成されている。このため、冷媒蒸気の流路を切り替えるための開閉弁43〜50が必要となるが、これらは圧力損失を低減するために大型のものにしなければならず、これに付随して開閉のために大きな操作力が必要となるため、操作源も大型となり、スペース的、コスト的に不利となる。
【0071】
この点を改良した構成例を本発明の第2実施例として図5に示す。すなわち、図5に示す第2実施例では、冷媒蒸気の流路を切り替えるための開閉弁43〜50をなくしている。そのため、上記第1実施例では第1および第2の1段目吸着器35および36に対応して1個の1段目蒸発器33、第1および第2の2段目吸着器37および38に対応して1個の2段目蒸発器34を設置していたものを、この第2実施例では、各吸着器35〜38のそれぞれに対応して1個の凝縮器兼用の蒸発器33,33´,34,34´を設置するようにしている。
【0072】
このものでは、三方弁SV1〜SV6、四方弁FV1,FV2が図5に実線で示す状態にあるときには、第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程にあり、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程にある。このとき、加熱流体は第2の1段目吸着器36の熱交換流路40および第2の2段目吸着器38の熱交換流路42を順に流れて第2の1段目および2段目吸着器36および38の吸着剤Sを加熱し、これにより吸着剤Sから脱着された冷媒蒸気は蒸発器33´および34´に流入する。
【0073】
これに対し、放熱器60で冷却された冷却流体は2個の2段目蒸発器34,34´内にそれぞれ設けられた熱交換器56,56´に分流し、一方の熱交換器56´に分流した冷却流体は蒸発器34´の冷媒蒸気を凝縮した後、一方の1段目蒸発器33´内に設けられた熱交換器55´に流入して蒸発器33´の冷媒蒸気を凝縮し、放熱器60に戻る。そして、各蒸発器33´,34´で凝縮された冷媒液はそれぞれ蒸発器33,34に供給される。
【0074】
また、他方の熱交換器56に分流した冷却流体は蒸発器34で冷却された後、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39および第1の2段目吸着器37の熱交換流路41に順に流れて第1の1段目および2段目吸着器35および37の吸着剤Sを冷却し、放熱器60に戻る。これにより、各吸着器35および37の吸着剤Sは各蒸発器33,34で蒸発した冷媒蒸気を吸着する。そして、熱交換器55で冷却された熱交換媒体は冷却器57に供給され、エアコンの送風ダクト内を流れる空気を冷却する。
【0075】
なお、三方弁SV1〜SV6、四方弁FV1,FV2が図5に破線で示す状態に切り替えられた場合には、逆に、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を行い、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を行うだけで、加熱流体、冷却流体、熱交換媒体の流通経路は上述したと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0076】
このように構成することにより、冷媒は各吸着器35〜38と、各吸着器35〜38に対応する各蒸発器33,33´,34,34´との間を往復するだけとなるから、大型にする必要のある開閉弁43〜50を省略することができるものである。ここで、開閉弁43〜50を省略した代わりに三方弁SV1〜SV6、四方弁FV1,FV2の数が第1実施例のものよりも多くなるが、これらには蒸気ではなく、液体が流れるので、大型に構成しなくとも圧力損失の増大はなく、スペース的、コスト的に有利となるものである。
【0077】
図6および図7は本発明の第3実施例を示す。まず、本第3実施例の特徴を前記第1実施例との比較で概略説明する。
▲1▼第1実施例では、吸着行程を行う際、熱交換流路39および41、または熱交換流路40および42が直列に接続されるのに対し、第2実施例では、熱交換流路39〜42は独立して流路系になされる。
【0078】
▲2▼第1実施例では、冷却流体の生成のために放熱器60と2段目蒸発器34とを直列に接続しているのに対し、第2実施例では、放熱器60は独立し、2段目吸着器37,38の熱交換流路41,42に供給する冷却流体を生成するために用いられている。
【0079】
▲3▼第1実施例では、1段目蒸発器33は外部冷却用としてだけ用いられているのに対し、第2実施例では、1段目および2段目蒸発器33および34は外部冷却用の他に1段目吸着器35,36の熱交換流路39,40に供給する冷却流体を生成するためにも用いられている。
【0080】
さて、この実施例では、2段目蒸発器34の熱交換器56、1段目蒸発器33の熱交換器55および空調用冷却器57は直列に接続され、熱交換器56および55で順次冷やされた冷却流体は、熱交換器55と空調用冷却器57との間に設けられたポンプ66により矢印C方向に送られるようになっている。また、放熱器60で冷やされた冷却流体は、ポンプ67により矢印D方向に送られるようになっている。
【0081】
本実施例では、冷却流体および加熱流体の供給先を切り替えるために、4個の四方弁68〜71を備えている。そして、それら四方弁68〜71が図6に実線で示す状態にあるとき、2段目蒸発器34の熱交換器56および1段目蒸発器33の熱交換器55で順次冷却された冷却流体は、空調用冷却器57で自動車の乗員室内に送風される空気を冷却した後、四方弁68、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39、四方弁69,70を順に経て2段目蒸発器34の熱交換器56に戻される。
【0082】
また、放熱器60で冷却された冷却流体は、ポンプ67により矢印D方向に送られ、四方弁71、第1の2段目吸着器37の熱交換流路41を順に介して放熱器60に戻される。
【0083】
一方、エンジンから流出した加熱流体は、往路パイプ63、四方弁68、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40、四方弁70、第2の2段目吸着器38の熱交換流路42、四方弁71、復路パイプ64を順に経てエンジンに戻される。
【0084】
従って、この状態では、第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程を実行し、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程を実行するようになる。
【0085】
四方弁68〜71が図6に破線で示す状態に切り替わると、2段目蒸発器34の熱交換器56および1段目蒸発器33の熱交換器55で順次冷却された冷却流体は、空調用冷却器57で自動車の乗員室内に送風される空気を冷却した後、四方弁68、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40、四方弁70を順に経て2段目蒸発器34の熱交換器56に戻される。
【0086】
また、放熱器60で冷却された冷却流体は、ポンプ67により矢印D方向に送られ、四方弁71、第2の2段目吸着器38の熱交換流路42,四方弁70,69を順に介して放熱器60に戻される。
【0087】
一方、エンジンから流出した加熱流体は、往路パイプ63、四方弁68、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39、四方弁69、第1の2段目吸着器37の熱交換流路41、四方弁71、復路パイプ64を順に経てエンジンに戻される。
【0088】
従って、この状態では、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を実行し、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を実行するようになる。
【0089】
なお、図6では、開閉弁43〜50の開閉状態は第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程で、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程の時の状態で示してある。従って、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程の時には、開閉弁43〜50は図6とは逆の開閉状態となる。
【0090】
このように本実施例によれば、1段目蒸発器33は外部冷却用として機能する他、第1の1段目および2段目吸着器35および36の熱交換流路39および40に供給する冷却流体の生成用としても機能し、2段目蒸発器33は外部冷却用として機能する他、前段である1段目の吸着器35および36の熱交換流路39および40に供給する冷却流体の生成用としても機能する。
【0091】
このため、第1の1段目および2段目吸着器35および36の吸着行程時には、熱交換流路39および40に1段目および2段目蒸発器33および34で冷却された冷却流体が供給されるので、第1実施例で説明したと同様に、大型化を招来することなく、冷凍効率の向上を図ることができる。ちなみに、図7に冷却流体だけの流路系、その各部での温度および蒸発器33,34での冷媒液の気化温度を示した。
【0092】
また、本実施例では、冷却流体の供給時、熱交換流路39と41、熱交換流体40と42は直列接続されることなく互いに独立しているが、1段目蒸発器33、2段目蒸発器34および空調用冷却器57が直列に接続されているため、第1実施例と同様に、冷却流体の供給のための循環路は2系統で済むので、冷却流体の配管構成が簡単となり、ポンプ66,71も2台で済むこととなって製造コストの低減化を図ることができる。
【0093】
図8は本発明の第4実施例を示すもので、これは前述した第1実施例に対する第2実施例と同様に、第3実施例における冷媒蒸気の流路切替用の開閉弁43〜50をなくしたものである。すなわち、上記第3実施例では第1および第2の1段目吸着器35および36に対応して1個の1段目蒸発器33、第1および第2の2段目吸着器37および38に対応して1個の2段目蒸発器34を設置いていたものを、この第4実施例では、各吸着器35〜38のそれぞれに対応して1個の凝縮器兼用の蒸発器33,33´,34,34´を設置するようにしている。
【0094】
このものでは、三方弁SV7〜SV17、四方弁FV3が実線で示す状態にあるときには、第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程にあり、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程にある。
【0095】
このとき、加熱流体は第2の1段目吸着器36の熱交換流路40および第2の2段目吸着器38の熱交換流路42を順に流れて第2の1段目および2段目吸着器36および38の吸着剤Sを加熱し、これにより吸着剤Sから脱着された冷媒蒸気は蒸発器33´および34´に流入する。
【0096】
これに対し、放熱器60で冷却された冷却流体は第1の2段目吸着器37の熱交換流路41と一方の2段目の蒸発器34´内に設置された熱交換器56´とに分流し、熱交換器56´に分流した冷却流体は蒸発器34´の冷媒蒸気を凝縮した後、蒸発器33´内に設置された熱交換器55´に流入して蒸発器33´の冷媒蒸気を凝縮し、放熱器60に戻る。そして、各蒸発器33´,34´で凝縮された冷媒液はそれぞれ蒸発器33,34に供給される。また熱交換流路41に分流した冷却流体は第1の2段目吸着器37の吸着剤Sを冷却し、放熱器60に戻る。これにより、吸着器37の吸着剤Sは蒸発器34で蒸発した冷媒蒸気を吸着する。
【0097】
一方、蒸発器34´,33´から冷媒液が供給される蒸発器34,33の熱交換器56,55で順に冷却された冷却流体はまず冷却器57に供給され、エアコンの送風ダクト内を流れる空気を冷却した後、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39を経て蒸発器34の熱交換流路56に戻される。そして、第1の1段目吸着器35の吸着剤Sは熱交換流路39を流れる冷却流体により冷却され、蒸発器33で蒸発した冷媒蒸気を吸着する。
【0098】
なお、三方弁SV7〜SV17、四方弁FV3が図8に破線で示す状態に切り替えられた場合には、逆に、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を行い、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を行うだけで、加熱流体、冷却流体、熱交換媒体の流通経路は上述したと同様であるので詳細な説明は省略する。
このように構成することにより、第3実施例に示された大型にする必要のある開閉弁43〜50を省略することができるものである。
【0099】
図9および図10は本発明の第5実施例を示す。この実施例は冷却流体の循環経路が1系統だけとなるようにしたもので、第1の1段目および2段目吸着器35および37の熱交換流路39および41のペア、第2の1段目および2段目吸着器36および38の熱交換流路40および42のペアが直列に接続されていると共に、放熱器60、2段目蒸発器34の熱交換器56、1段目蒸発器33の熱交換器55および空調用冷却器57は直列に接続され、冷却流体を矢印E方向に送るポンプ72が空調用冷却器57の出口側に設けられている。
【0100】
そして、冷却流体および加熱流体の供給先を切り替えるために、2個の四方弁73および74が設けられており、これら四方弁73,74が図9に実線で示す状態にあるとき、放熱器60、2段目蒸発器34の熱交換器56および1段目蒸発器33の熱交換器55で順次冷却された冷却流体は、空調用冷却器57で自動車の乗員室内に送風される空気を冷却した後、四方弁73、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39、第1の2段目吸着器37の熱交換流路41、四方弁74を順に経て放熱器60に戻される。
【0101】
一方、エンジンから流出した加熱流体は、往路パイプ63、四方弁73、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40、第2の2段目吸着器38の熱交換流路42、四方弁74、復路パイプ64を順に経てエンジンに戻される。
従って、この状態では、第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程を実行し、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程を実行するようになる。
【0102】
四方弁73,74が図9に破線で示す状態に切り替わると、放熱器60、2段目蒸発器34の熱交換器56および1段目蒸発器33の熱交換器55で順次冷却された冷却流体は、空調用冷却器57で自動車の乗員室内に送風される空気を冷却した後、四方弁73、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40、第2の2段目吸着器38の熱交換流路42を順に経て放熱器60に戻される。
【0103】
一方、エンジンから流出した加熱流体は、往路パイプ63、四方弁73、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39、第1の2段目吸着器37の熱交換流路41、四方弁74、復路パイプ64を順に経てエンジンに戻される。
【0104】
従って、この状態では、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を実行し、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を実行するようになる。
【0105】
なお、図9では、開閉弁43〜50の開閉状態は第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程で第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程の時の状態で示してある。従って、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程の時には、開閉弁43〜50は図9とは逆の開閉状態となる。
【0106】
このように構成した本実施例では、放熱器60で冷却した冷却流体を更に2段および1段目の蒸発器34および33で冷却して熱交換流路39,41または40,42に供給するようにしたので、第1実施例で説明したように、大型化を招くことなく、冷凍効率を高くすることができる。ちなみに、図10に冷却流体の循環系、その各部での温度および蒸発器33,34での冷媒液の気化温度を示した。しかも、本実施例によれば、特に、冷却流体の循環路が1系統となるので、より一層冷却流体の配管構成が簡単化されると共に、1台のポンプ72で済み、より一層製造コストを低減できる。
【0107】
図11は本発明の第6実施例を示すもので、これは前述した第1実施例に対する第2実施例と同様に、第5実施例における冷媒蒸気の流路切替用の開閉弁43〜50をなくしたものである。すなわち、第5実施例では第1および第2の1段目吸着器35および36に対応して1個の1段目蒸発器33、第1および第2の2段目吸着器37および38に対応して1個の2段目蒸発器34を設置いていたものを、この第6実施例では、各吸着器35〜38のそれぞれに対応して1個の凝縮器兼用の蒸発器33,33´,34,34´を設置するようにしている。
【0108】
このものでは、四方弁FV18〜20が実線で示す状態にあるときには、第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程にあり、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程にある。
【0109】
このとき、加熱流体は第2の1段目吸着器36の熱交換流路40および第2の2段目吸着器38の熱交換流路42を順に流れて第2の1段目および2段目吸着器36および38の吸着剤Sを加熱し、これにより吸着剤Sから脱着された冷媒蒸気は蒸発器33´および34´に流入する。
【0110】
これに対し、放熱器60で冷却された冷却流体は2個の2段目蒸発器34,34´内にそれぞれ設けられた熱交換器56,56´に分流し、一方の熱交換器56´に分流した冷却流体は蒸発器34´の冷媒蒸気を凝縮した後、蒸発器33´内に設けられた熱交換器55´に流入して蒸発器33´の冷媒蒸気を凝縮し、放熱器60に戻る。そして、各蒸発器33´,34´で凝縮された冷媒液はそれぞれ蒸発器33,34に供給される。
【0111】
また、他方の熱交換器56に分流した冷却流体は蒸発器34で冷却された後、更に蒸発器33の熱交換器55に流入し、該蒸発器33により冷却される。その後、冷却流体は冷却器57に供給されてエアコンの送風ダクト内を流れる空気を冷却し、次いで第1の1段目吸着器35の熱交換流路39および第1の2段目吸着器37の熱交換流路41に順に流れてそれら吸着器35,37の吸着剤Sを冷却し、放熱器60に戻る。これにより、各吸着器35および37の吸着剤Sは各蒸発器33,34で蒸発した冷媒蒸気を吸着する。
【0112】
なお、四方弁FV18〜20が図11に破線で示す状態に切り替えられた場合には、逆に、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を行い、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を行うだけで、加熱流体、冷却流体、熱交換媒体の流通経路は上述したと同様であるので詳細な説明は省略する。
このように構成することにより、第5実施例に示された大型にする必要のある開閉弁43〜50を省略することができるものである。
【0113】
図12および図13は本発明の第7実施例を示す。この実施例は3段以上例えば5段の蒸発器75〜79と各段の蒸発器75〜79に一対一の関係をもって対応する5段の吸着器を備え、各段の吸着器は2個の第1および第2の吸着器80〜89からなっている。
【0114】
各段の蒸発器75〜79はキャピラリ管54により相互に接続され、放熱器60からキャピラリ管53を介して5段目蒸発器79に供給された冷媒液は順次前段の蒸発器78,77,76,75にキャピラリ管54を介して供給されるようになっている。
【0115】
各段の蒸発器75〜79は熱交換器90〜94を備えている。そのうち1段目蒸発器75は外部冷却用とされ、その熱交換器90は空調用冷却器57と直列に接続されている。また、2段目蒸発器76〜4段目蒸発器78はそれぞれ前段である1段目〜3段目の各吸着器80〜84の熱交換流路95〜100に供給する冷却流体生成用とされ、残る最終段である5段目蒸発器79は放熱器60と協働して4段目および5段目の各吸着器86〜89の熱交換流路101〜104に供給する冷却流体生成用とされている。
【0116】
すなわち、第1の1段目〜5段目の吸着器80,82,84,86,88が吸着行程にあるとき、第2の1段目〜5段目の吸着器81,83,85,87,89が脱着行程を行う。このとき、各三方弁105〜118および四方弁119は図12に実線で示す状態にあり、2段目蒸発器76の熱交換器91で冷やされた冷却流体は第1の1段目吸着器80の熱交換流路95と熱交換器91との間を循環し、3段目蒸発器77の熱交換器92で冷やされた冷却流体は第1の2段目吸着器82の熱交換流路97と熱交換器92との間を循環し、4段目蒸発器78の熱交換器93で冷やされた冷却流体は第1の3段目吸着器84の熱交換流路99と熱交換器93との間を循環し、放熱器60および5段目蒸発器79の熱交換器94で冷やされた冷却流体は第1の4段目吸着器86の熱交換流路101、第1の5段目吸着器88の熱交換流路103、放熱器60および熱交換器94の間を循環する。
一方、加熱流体は第2の1段目〜5段目吸着器81,83,85,87,89の熱交換流路96,98,100,102,104に直列に供給される。
各三方弁105〜118および四方弁119が図12に破線で示す状態に切り替えられると、第1の1段目〜5段目の吸着器80,82,84,86,88が脱着行程を行い、第2の1段目〜5段目の吸着器81,83,85,87,89が吸着行程を行う状態となる。
【0117】
すると、2段目蒸発器76の熱交換器91で冷やされた冷却流体は第2の1段目吸着器81の熱交換流路96と熱交換器91との間を循環し、3段目蒸発器77の熱交換器92で冷やされた冷却流体は第2の2段目吸着器83の熱交換流路98と熱交換器92との間を循環し、4段目蒸発器78の熱交換器93で冷やされた冷却流体は第2の3段目吸着器85の熱交換流路100と熱交換器93との間を循環し、放熱器60および5段目蒸発器79の熱交換器94で冷やされた冷却流体は第2の4段目吸着器87の熱交換流路102、第2の5段目吸着器89の熱交換流路104、放熱器60および熱交換器94の間を循環する。
一方、加熱流体は第1の1段目〜5段目吸着器80,82,84,86,88の熱交換流路95,97,99,101,103に直列に供給される。
【0118】
なお、各吸着器86〜95の入口と出口とを開閉する開閉弁121〜140は、図12では第1の1段目〜5段目の吸着器80,82,84,86,88が吸着行程で、第2の1段目〜5段目の吸着器81,83,85,87,89が脱着行程を行う開閉状態で示されている。
【0119】
このように構成した本実施例では、第1実施例で説明したと同様に、冷却流体が放熱器60で30℃に冷やされ、一方、1段目蒸発器75での冷媒液の蒸発温度が10℃であった場合、相互に隣接する2組の蒸発器での冷媒液の蒸発温度の差が小さくなる。
【0120】
このため、例えば1段目蒸発器75で10℃で気化した冷媒蒸気を、これと温度差の余り違わない気化温度の2段目蒸発器76で冷却された冷却流体で1段目吸着器80,81の吸着剤Sを冷却することとなる。このような関係が、2段目吸着器82,83と3段目蒸発器77で冷却された冷却流体、3段目吸着器84,85と4段目蒸発器78で冷却された冷却流体、4段目および5段目吸着器86,87および88,89と放熱器60および5段目蒸発器79で冷却された冷却流体との関係においても同様に成立する。従って、各段の吸着器の吸着剤Sはより低温度に冷やされて冷媒蒸気の温度との差が小さくなるので、図4から理解されるように、より多くの冷媒を吸着し、吸着式冷凍装置全体としての冷却能力がより一層高くなる。
【0121】
また、4段目吸着器86,87の熱交換流路101,102と5段目吸着器88,89の熱交換流路103,104とが直列に接続されているので、吸着器を5段有しながら、その冷却流体の循環経路が4系統で済むので、配管構成が簡単となり、また冷却流体を送るポンプ141〜145も、空調用冷却器57用も含めて5台で済み、製造コストを低く抑えることができる。ちなみに、図13に冷却流体の循環経路を示した。
【0122】
図14および図15は本発明の第8実施例を示す。この実施例では、1段目および2段目蒸発器75および76を外部冷却用および1段目吸着器80,81の熱交換流路95,96に供給する冷却流体生成用とし、5段目蒸発器79を前段である4段目吸着器86,87の熱交換流路101,102に供給する冷却流体生成用とし、放熱器60を5段目吸着器88,89の熱交換流路103,104に供給する冷却流体生成用としたところにある。
【0123】
そして、第1の1段目〜5段目の吸着器80,82,84,86,88が吸着行程、第2の1段目〜5段目の吸着器81,83,85,87,89が脱着行程を行うとき、四方弁146,160および三方弁147〜159が実線の状態にあり、2段目および1段目蒸発器76および75の熱交換器91および90で順に冷やされた冷却流体は、空調用冷却器57、第1の1段目および2段目吸着器80および82の熱交換流路95および97、熱交換器91,90との間を循環し、3段目蒸発器77の熱交換器92で冷やされた冷却流体は第1の2段目吸着器82の熱交換流路97と熱交換器92との間を循環し、4段目蒸発器78の熱交換器93で冷やされた冷却流体は第1の3段目吸着器84の熱交換流路99と熱交換器93との間を循環し、5段目蒸発器79の熱交換器94で冷やされた冷却流体は第1の4段目吸着器86の熱交換流路101と熱交換器94との間を循環し、放熱器60で冷やされた冷却流体は第1の5段目吸着器88の熱交換流路103と放熱器60との間を循環する。
【0124】
一方、加熱流体は第2の1段目〜5段目吸着器81,83,85,86,89の熱交換流路96,98,100,102,104に直列に供給される。
四方弁146,160および三方弁147〜159が破線の状態に切り替えられると、第1の1段目〜5段目の吸着器80,82,84,86,88が脱着行程を行い、第2の1段目〜5段目の吸着器81,83,85,87,89が吸着行程を行う状態となる。
【0125】
すると、2段目および1段目蒸発器76および75の熱交換器91および90で順に冷やされた冷却流体は、空調用冷却器57、第2の1段目および2段目吸着器81および83の熱交換流路96,98、熱交換器91,90との間を循環し、3段目蒸発器77の熱交換器92で冷やされた冷却流体は第2の2段目吸着器83の熱交換流路98と熱交換器92との間を循環し、4段目蒸発器78の熱交換器93で冷やされた冷却流体は第2の3段目吸着器85の熱交換流路100と熱交換器93との間を循環し、5段目蒸発器79の熱交換器94で冷やされた冷却流体は第2の4段目吸着器87の熱交換流路102と熱交換器94との間を循環し、放熱器60で冷やされた冷却流体は第2の5段目吸着器89の熱交換流路104と放熱器60との間を循環する。
【0126】
一方、加熱流体は第1の1段目〜5段目吸着器80,82,84,86,88の熱交換流路95,97,99,101,103に直列に供給される。なお、図15に冷却流体の循環経路を示した。
このように構成しても、図15に示すように、冷却流体の循環経路は5系統となるので、ポンプ161〜165も5台で済み、上記第7実施例と同様の効果を得ることができる。
【0127】
図16は本発明の第9実施例を示す。これは、蒸発器166−1〜166−nと吸着器167−1〜167−nとを多段に設け、放熱器60、各段の蒸発器166−1〜166−nの熱交換器168−1〜168−nおよび空調用冷却器57を直列に接続すると共に、各段の吸着器167−1〜167−nの熱交換流路169−1〜169−nを直列に接続し、脱着行程を行うときには、各段の吸着器167−1〜167−nの熱交換流路169−1〜169−nに加熱流体を直列に供給し、吸着行程を行うときには、放熱器60で冷やした冷却流体を、最終段の蒸発器166−nの熱交換器168−nから前段側の蒸発器の熱交換器で順に冷やし、そして1段目蒸発器166−1の熱交換器168−1から流出した冷却流体で、まず空調用冷却器57を冷却し、以後、1段目吸着器167−1の熱交換流路169−1から順に後段の吸着器の熱交換流路に流して、放熱器60に戻すというように循環させる。
【0128】
このように蒸発器と吸着器とを多段に設けると、放熱器60で30℃まで冷やされた冷却流体を、1段目蒸発器166−1の熱交換器168−nに至るまでに10℃に冷やせば良くなるので、冷媒液の気化温度は最終段の蒸発器166−nでは30℃より若干低い程度で済み、以後、前段側の蒸発器に行くに従って少しずつ低くなるようにされるので、各段の吸着器で吸着される冷媒蒸気と吸着剤Sとの温度差が一層小さくなる。
【0129】
例えば、最終段の吸着器167−nでは30℃より若干低い温度の冷媒蒸気を、40℃より若干低い温度の冷却流体で冷却することとなるので、図4に点P5で示すように吸着率約30%となり、1段目の吸着器167−1では10℃より若干低い温度の冷媒蒸気を、20℃程度の冷却流体で冷却することとなるので、図4に点P6で示すように吸着率約28%となる。以上のことから理解されるように、蒸発器と吸着器とを多段に設けるより一層冷却能力を高くすることができるものである。
【0130】
また、本実施例では、冷却流体の循環経路が1系統のみとなるので、冷却流体の循環経路のための配管構成がより簡単となると共に、冷却流体を送るためのポンプ170が1台で済み、製造コストの低減化を図ることができる。
【0131】
以上説明した各実施例において、吸着器の小形化を図るには、吸着剤Sについて考慮すると良い。
図17は吸着剤Sとしてシリカゲルを使用した場合、その粒径と吸着速度との関係を、1段目吸着器と2段目吸着器について示したものである。この図17から分かるように、冷媒蒸気の圧力(温度)が高くなると、相対湿度が同一であっても吸着剤Sの吸着速度は速くなる。複数段の吸着器を備える本発明の場合、後段の吸着器ほど冷媒の蒸発温度(蒸発圧力)は高くなる。このため、各段の吸着器への吸着剤Sの充填量に関し、後段側の吸着器ほど少なくすると良い。これにより、吸着器の小形化を図ることができ、且つ、この吸着剤Sの充填量の少量化による小形化を図っても、吸着剤Sによる冷媒の吸脱着量が減少するという不具合は生じない。
【0132】
また、吸着剤Sは粒径が小さいほど単位重量当たりの表面積が大きくなるので、図17にも示されているように、吸着速度は速くなる。しかし、粒径が小さくなると、吸着剤Sの層内への冷媒蒸気の到達性が悪くなり、図17に実線と破線の差で示されるように、吸着剤S層全体としての吸着速度は低下する。このため、吸着剤Sの粒径は表面積増加による吸着速度の増加と到達性の悪化による吸着速度の低下との兼ね合いによって決まる。このとき、前述したように冷媒の蒸発圧力が高くなると、相対湿度が同一であっても吸着剤Sの吸着速度は速くなるので、蒸発圧力の高い後段側の吸着器ほど、吸着剤Sの粒径を小さくすると良い。
【0133】
以上のことから、吸着剤Sとしては、各段の吸着器ほど充填量を少なくし、且つ各段の吸着器について同一粒径とせず、後段側の吸着器ほど粒径を小さくすると良い。このようにすることにより、吸着器の小形化を図ることができるものであり、このようにしても吸着剤Sの冷媒蒸気の吸着速度、吸着量が低下するおそれはないものである。
【0134】
カーエアコンにおいては、空調用冷却器57により送風ダクト内を流れる空気を0℃程度に冷却したい場合がある。例えば、冬季において、車室内を除湿暖房する際、フロントガラス内側の防曇のためには、空気を0℃位まで冷やし、フロントガラスに吹き当てられる空調空気の露点が外気温度と同じ位になるまで除湿する必要がある。
【0135】
このように空調用冷却器57により空気を0℃程度に冷却するには、例えば図16において、1段目蒸発器166−1の冷媒の蒸発温度は熱交換効率を考慮して−5℃程度にしなければならない。しかしながら、このような低温度になると、冷媒に純水が用いられていた場合、冷媒が凍結する。これを避けるには、水に凝固点降下剤を混ぜたものを冷媒として使用すれば良いが、凝固点降下剤は添加し過ぎると、アルコール系では冷凍(冷却)能力が低下したり、塩系では冷媒の循環経路の腐食の問題が生ずる。
【0136】
そこで、図5の第2実施例に示された構成のように、凝縮器兼用の蒸発器を接続した2個の吸着器を複数段設けて、各段毎に独立して冷媒を封入する構成とし、それら各段のうち、前方段側の所要の段、すなわち冷媒の蒸発温度が0℃以下となる段に、水に凝固点降下剤を混ぜたものを冷媒として使用する。このようにすれば、凝固点降下剤を混入した冷媒が全部の段ではなく、必要な段だけに限定されるので、冷凍(冷却)能力の低下の問題を極力防止できると共に、腐食などが発生するおそれがある範囲を狭い範囲に限定することができる。
【0137】
この場合、前方段側の所要の段の冷媒としてアルコール系物質、例えばエタノールを用い、吸着剤Sとして活性炭を用いることができる。アルコール系物質は凍結温度が低いので冷媒の凍結を確実に防止でき、また活性炭はアルコール系物質を吸収し易いので少量の吸着剤Sで多量の冷媒を吸着でき、吸着器の小形化を図ることができる。
【0138】
本発明では、冷却流体を、複数段の吸着器のうち、蒸発温度の低い側の吸着器から高い側の吸着器の熱交換流路へと流すので、一種の対向流形の熱交換形式を構成する。この対向流形の熱交換器の熱交換効率を高めるには、図18に示す本発明の第10実施例のように構成すると良い。なお、この第10実施例の冷凍装置の基本構成は図9および図10に示す第5実施例の冷凍装置と同一のものである。
【0139】
放熱器60の出口と空調用冷却器57の出口は混合タンク170に接続され、放熱器60と空調用冷却器57から流出する冷却流体とはこの混合タンク170で混合されるようになっている。この混合タンク170には2つの出口が設けられ、一方の出口は最終段の蒸発器である2段目蒸発器34の熱交換器56に接続され、他方の出口はポンプ72の吸入口に接続されている。
【0140】
このように構成した場合、放熱器60の出口から流出する冷却流体と空調用冷却器57の出口から流出する冷却流体とは混合タンク170内で混合され、その混合後の冷却流体が2段目蒸発器34の熱交換器56に供給されると共に、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39或いは第2の1段目吸着器36の熱交換流路40に供給される。このようにすることにより、熱交換効率が高くなる。
【0141】
冷凍機としての能力は空調用冷却器57の吸熱量で決まり、その吸熱量Qcは
Qc=Gb×Cpb×(Tco−Tci)
である。
但し、Gb………冷却流体の単位時間当たりの流量
Cpb……冷却流体の比熱
Tci……空調用冷却器57の入口の冷却流体温度
Tco……空調用冷却器57の出口の冷却流体温度
である。
【0142】
一方、吸着剤Sが冷媒を吸着する際に放出する熱量Qsは
Qs=Gb×Cpb×(Texo−Texi)
である。
但し、Texi…1段目吸着器の熱交換流路39,40の入口の冷却流体温度Texo…2段目吸着器の熱交換流路41,42の出口の冷却流体温度
である。
【0143】
吸着剤Sの吸着時の放出熱量Qsと脱着時に必要な熱量Qdとは同一と考えられるので、Qs=Qdである。そして、対向流形の熱交換器の効率ηは
Figure 0003591164
である。
【0144】
そして、図10に示した通り、混合タンク170を設けない場合、
空調用冷却器57の入口の冷却流体温度Tciは10℃、
空調用冷却器57の出口の冷却流体温度Tcoは20℃、
1段目吸着器の熱交換流路39,40の入口の冷却流体温度Texiは20℃
2段目吸着器の熱交換流路41,42の出口の冷却流体温度Texoは40℃
であり、混合タンク170を設けた場合、
空調用冷却器57の入口の冷却流体温度Tciは10℃、
空調用冷却器57の出口の冷却流体温度Tcoは20℃、
1段目吸着器の熱交換流路39,40の入口の冷却流体温度Texoは25℃
2段目吸着器の熱交換流路41,42の出口の冷却流体温度Texiは40℃
となる。
【0145】
これを表にしてまとめると、
【表1】
Figure 0003591164
となる。
【0146】
そこで、熱交換効率を混合タンク170を設けない場合と、設けた場合との双方について求めると、
混合タンク170を設けない場合には、
Figure 0003591164
混合タンク170を設けた場合には、
Figure 0003591164
となり、混合タンク170を設けた場合の方が熱交換器の効率が向上することが分かる。
【0147】
図19は本発明の第11実施例を示すもので、これは混合タンク170を用いることなく、放熱器60の出口から流出する冷却流体と空調用冷却器57の出口から流出する冷却流体とを混合し、その混合後の冷却流体を2段目蒸発器34の熱交換器56に供給すると共に、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39或いは第2の1段目吸着器36の熱交換流路40に供給するようにしたものである。
【0148】
この実施例では、混合割合調整手段として2個の三方弁171,172が設けられており、空調用冷却器57の出口が三方弁171の入口aに接続され、放熱器60の出口が三方弁172の入口aに接続されている。そして、三方弁171の一方の出口bおよび三方弁172の一方の出口bが一本にまとめられてポンプ72の吸入口に接続されていると共に、三方弁171の他方の出口cと三方弁172の他方の出口cが一本にまとめられて2段目蒸発器34の熱交換器56に接続されている。なお、三方弁171の他方の出口側にはポンプ173が接続されている。
【0149】
上記構成において、三方弁171,172の出口b,cの開度を調節することにより、放熱器60からの冷却流体と空調用冷却器57からの冷却流体の混合割合を変えて熱交換器56、熱交換流路39或いは40に供給することができる。この場合、三方弁171,172の出口b,cの開度を同じにすれば図18に示す第10実施例と同様に放熱器60からの冷却流体と空調用冷却器57からの冷却流体の混合割合を50%ずつにして供給できる。三方弁171の出口C、三方弁172の出口Cを閉じれば、図5に示す第2実施例と同様に混合のない1経路のものになり、方弁171の出口b,172の出口cを閉じれば、冷却流体を空調用冷却器57、2段目蒸発器34の熱交換器56、1段目蒸発器33の熱交換器55の経路と、1段目吸着器35或いは36の熱交換流路39或いは40、2段目吸着器37或いは38の熱交換流路41或いは42、空調用冷却器57の経路とにそれぞれ独立して流す2経路のものにすることができる。
【0150】
ところで、冷却流体、加熱流体を各段の吸着器の熱交換流路に直列に流す場合、図9および図10に示す第5実施例の冷凍装置を例にとって流路切換用の四方弁73,74の切り換え動作タイミングを図20を参照しながら説明する。
【0151】
図20(a)は第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程にあり、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程にある状態を示す。この状態では、第1の1段目および2段目吸着器35および37の熱交換流路39および41には空調用冷却器57からの冷却流体が順に供給され、第2の1段目および2段目吸着器36および38の熱交換流路40および42にはエンジン冷却水が順に供給されている。
【0152】
この状態から第1の1段目および2段目吸着器35および37を脱着行程に切り換えると共に、第2の1段目および2段目吸着器36および38を吸着行程に切り換えるには、まず図20(b)に示すように、四方弁73だけを切り換え動作させて、冷却流体が第2の1段目吸着器36の熱交換流路40に供給され、エンジン冷却水が第1の1段目吸着器35の熱交換流路39に供給されるようにする。
【0153】
すると、第1の1段目および2段目吸着器35および37の熱交換流路39および41内に残っている冷却流体がエンジン冷却水によって押し出されるようにして放熱器60へと送り出されると共に、第2の1段目および2段目吸着器36および38の熱交換流路40および42内に残っているエンジン冷却水が冷却流体によって押し出さるようにしてエンジンへと送り出される。
【0154】
そして、所定時間経過し、第1の1段目および2段目吸着器35および37の熱交換流路39および41内に残っていた冷却流体、第2の1段目および2段目吸着器36および38の熱交換流路40および42内に残っていたエンジン冷却水が排出されると、四方弁74も切り換えられ、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を実行すると共に、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を実行する。
【0155】
このように通常は四方弁73の切り換わり動作から遅れて四方弁74を切り換わり動作させることにより、吸着器35〜38内に残っている冷却流体およびエンジン冷却水をそれぞれ放熱器60およびエンジンに送り出すようにしている。なお、この四方弁73の切り換わり動作に対する四方弁74の切り換わり動作の送れ時間をタイムラグということとする。
【0156】
しかしながら、この構成のものでは、図20(b)に示す状態で、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40には直ちに冷却流体が流入して来るが、第2の2段目吸着器38の熱交換流路42には第2の1段目吸着器36の熱交換流路40内に残っていたエンジン冷却水が流入して来るため、第2の2段目吸着器38は吸着行程に移ることができない。
【0157】
同様に、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39には直ちにエンジン冷却水が供給されるが、第1の2段目吸着器37の熱交換流路41には第1の1段目吸着器35の熱交換流路39内に残っていた冷却流体が流入して来るため、第1の2段目吸着器37は脱着行程に移ることができない。このように2段目の吸着器37,38は四方弁73,74のタイムラグ時間は吸着も脱着も実行できない状態になり、冷却能力を呈しなくなる。
【0158】
このような不具合を解消するために、図21に示す本発明の第12実施例が存在する。この実施例が第5実施例と異なるところは、1段目吸着器35,36の熱交換流路39,40と2段目吸着器37,38の熱交換流路41,42との間に流路切換手段としての四方弁174を設けたところにある。
【0159】
すなわち、1段目吸着器35,36の熱交換流路39,40の出口、2段目吸着器37,38の熱交換流路41,42の入口はそれぞれ四方弁174の各ポートに接続されている。そして、四方弁174の切り換わり動作により、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39と第1の2段目吸着器37の熱交換流路41とが接続されると共に、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40と第2の2段目吸着器38の熱交換流路42とが接続される状態(第1の切換状態)と、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39と第2の2段目吸着器38の熱交換流路42とが接続されると共に、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40と第1の2段目吸着器37の熱交換流路41とが接続される状態(第2の切換状態)とに切り換えられるようになっている。
【0160】
次に上記構成の作用を説明するに、図20(a)は第1の1段目および2段目吸着器35および37が吸着行程にあり、第2の1段目および2段目吸着器36および38が脱着行程にある状態を示す。この状態では、四方弁174は第1の切換状態にあり、第1の1段目および2段目吸着器35および37の熱交換流路39および41には空調用冷却器57からの冷却流体が順に供給され、第2の1段目および2段目吸着器36および38の熱交換流路40および42にはエンジン冷却水が順に供給されている。
【0161】
この状態から第1の1段目および2段目吸着器35および37を脱着行程に切り換えると共に、第2の1段目および2段目吸着器36および38を吸着行程に切り換えるには、まず図20(b)に示すように、四方弁73を切り換え動作させて冷却流体が第2の1段目吸着器36の熱交換流路40に供給され、エンジン冷却水が第1の1段目吸着器35の熱交換流路39に供給されるようにする。この四方弁73の切り換えと同期して四方弁174を第2の切換状態にする。
【0162】
すると、第1の1段目吸着器35の熱交換流路39内に残っている冷却流体がエンジン冷却水によって押し出されるようにして第2の2段目吸着器38の熱交換流路42に供給されると共に、第2の1段目吸着器36の熱交換流路40内に残っているエンジン冷却水が空調用冷却器57からの冷却流体によって押し出されるようにして第1の2段目吸着器37の熱交換流路41に供給される。
【0163】
これにより、第2の2段目吸着器38の熱交換流路42内に残っていたエンジン冷却水が熱交換流路39からの冷却流体によって押し出されるようにしてエンジンに戻されると共に、第1の2段目吸着器37の熱交換流路41内に残っていた冷却流体が熱交換流路40からのエンジン冷却水によって放熱器60へと送り出される。
【0164】
このように各段の吸着器35〜38の熱交換流路39〜42は、切り換え前の実行行程と切り換え後の実行行程とが同じ吸着器の熱交換流路が直列に接続される状態となるので、切り換え後の行程を実行するに必要な冷却流体、エンジン冷却水を、他の吸着器の熱交換流路から受けることができるものである。
【0165】
そして、第1の1段目および2段目吸着器35,37の熱交換流路39,41内に残された冷却流体が押し出されると共に、第2の1段目および2段目吸着器36,38の熱交換流路40,42内に残されたエンジン冷却水が押し出されると、四方弁174が第2の状態に切り換えられると同時に四方弁74も切り換わり動作し、第1の1段目および2段目吸着器35および37が脱着行程を実行すると共に、第2の1段目および2段目吸着器36および38が吸着行程を実行する状態となる。
【0166】
このように本実施例によれば、各吸着器35〜38を脱着行程と吸着行程との間で切り換える際、前段側の吸着器35,36の熱交換流路39,40は、後段側の吸着器37,38に必要な流体を供給するので、各吸着器35〜38の熱交換流路39〜42に残された不要な流体を排出するに要する時間は1個の吸着器の熱交換流路の残された流体を排出する時間相当となり、タイムラグは図20のものの半分程度で済み、短時間のうちに行程を切り換えることができる。
【0167】
なお、この第12実施例のタイムラグ減少のための考え方は、吸着器を2段設けたものに限られず、3段、或いはそれ以上の多段に吸着器を設けた場合にも同様に適用できる。図22に示す第13実施例は吸着器を3段設けたもので、このように隣合う段の吸着器の熱交換流路を四方弁FVで接続することによりタイムラグを1段の吸着器の熱交換流路から流体を排出するに要する時間に短縮することができるものである。
【0168】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
四方弁61,62,68〜71,73,74、三方弁105〜119、四方弁146,160、三方弁147〜159は、冷却流体と加熱流体とを、吸着器に交互に供給するための流路切換手段に相当するが、これは、四方弁や三方弁に限られるものではなく、配管構成によっては開閉弁の組み合わせであっても良い。
【0169】
開閉弁43〜50、121〜140は、各段一対の吸着器を凝縮器および蒸発器に選択的に連通させるための冷媒流路切換手段に相当するが、これは、三方弁や四方弁であっても良い。
各段の吸着器は、必ずしも一対設ける必要はなく、1個にして脱着と吸着とを交互に実行する構成にしても良い。
【0170】
図12において、1段目〜4段目の熱交換器90〜93は、少なくとも隣接する熱交換器90と91、91と92、92と93、90〜92、91〜93或いは90〜93を直列に接続し、冷却流体を、空調用冷却器57と1段目吸着器の熱交換器とに直列に供給したり、1段目と2段目の吸着器の熱交換流路、2段目と3段目の吸着器の熱交換流路に直列に供給したり、空調用冷却器57と1段目と2段目の吸着器の熱交換流路に直列に供給したり、或いは1段目から3段目の吸着器の熱交換流路に直列に供給したりするように構成しても良い。
【0171】
更に、図12において、5段目の熱交換器91〜94を、少なくとも前段の熱交換器93、93と92、93〜91に直列に接続し、冷却流体を、3段目〜5段目の吸着器の熱交換流路に直列に流し、2段目〜5段目の吸着器の熱交換流路に直列に流し、或いは1段目〜5段目の吸着器の熱交換流路に直列に流してそれぞれ放熱器60に戻したりするように構成しても良い。
凝縮器32は複数個設けても良い。
図5、図8、図11において、各段に設置された2個の蒸発器33,33´および34,34´はキャピラリチューブによって相互に接続されて冷媒が行き来するようになっているが、キャピラリチューブはなくとも良い。その理由は、吸着器35〜38の脱着時に蒸発器33,33´,34,34´で凝縮させた冷媒液をそのまま各蒸発器に溜めておき、吸着器35〜38の吸着時に蒸発器33,33´,34,34´内に溜められた冷媒液を蒸発させれば良いからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すもので、第1の状態にあるときの吸着式冷凍装置の全体構成を概略的に示す図
【図2】第2の状態に切り替えられた状態で示す図1相当図
【図3】冷却流体の循環系統のみを示す概略図
【図4】吸着剤の吸着率−温度特性図
【図5】本発明の第2実施例を示す概略構成図
【図6】本発明の第3実施例を示す概略構成図
【図7】図3相当図
【図8】本発明の第4実施例を示す概略構成図
【図9】本発明の第5実施例を示す概略構成図
【図10】図3相当図
【図11】本発明の第6実施例を示す概略構成図
【図12】本発明の第7実施例を示す概略構成図
【図13】図3相当図
【図14】本発明の第8実施例を示す概略構成図
【図15】図3相当図
【図16】本発明の第9実施例を示す図3相当図
【図17】吸着剤の粒径と吸着速度との関係を示すグラフ
【図18】本発明の第10実施例を示す図6相当図
【図19】本発明の第11実施例を示す図6相当図
【図20】本発明における行程切り換えを示す概略構成図
【図21】本発明の第12実施例を示す図20相当図
【図22】本発明の第13実施例を示す図20相当図
【図23】本発明と比較するために示した別の構成例を示す図3相当図
【図24】従来の吸着式冷凍装置の一例を示す図
【図25】従来の吸着式冷凍装置の他の例を示す図
【符号の説明】
図中、32は凝縮器、33,34は蒸発器、35〜38は吸着器、39〜42は熱交換流路、55,56は熱交換器、57は空調用冷却器、59,65〜67,72はポンプ、75〜79は蒸発器、80〜89は吸着器、90〜94は熱交換器、95〜104は熱交換流路、141〜145,161〜165はポンプ、170は混合タンク、171,172は三方弁、174は四方弁である。

Claims (9)

  1. 冷媒を凝縮する少なくとも1個の凝縮器と、
    この凝縮器からの冷媒液を蒸発させる複数段の蒸発器と、
    これら各段の蒸発器に対応して設けられ、冷却されることにより前記各段の蒸発器にて気化した冷媒蒸気を吸着し、加熱されることにより冷媒蒸気を脱着して前記凝縮器に放出する吸着剤を有した複数段の吸着器と、
    これら複数段の吸着器に設けられ、冷却流体の供給を受けて前記吸着剤を冷却する熱交換流路と、
    前記複数段の吸着器のうち、少なくとも最終段の吸着器の前記熱交換流路からの流体を冷却する放熱器と、
    前記複数段の蒸発器のうち少なくとも1段目の蒸発器により冷却された流体と外気との間で熱交換を行う冷却器とを具備し、
    前記蒸発器を少なくとも前段の前記吸着器の前記熱交換流路に供給する冷却流体生成用とし、前記複数段の吸着器のうち少なくとも隣り合う2段の吸着器の前記熱交換流路を直列に接続して前記冷却流体が前段側の吸着器の熱交換流路から後段側の吸着器の熱交換流路へと流れるように構成したことを特徴とする吸着式冷凍装置。
  2. 冷媒を凝縮する少なくとも1個の凝縮器と、
    この凝縮器からの冷媒液を蒸発させる複数段の蒸発器と、
    これら各段の蒸発器に対応して設けられ、冷却されることにより前記各段の蒸発器にて気化した冷媒蒸気を吸着し、加熱されることにより冷媒蒸気を脱着して前記凝縮器に放出する吸着剤を有した複数段の吸着器と、
    これら複数段の吸着器に設けられ、冷却流体の供給を受けて前記吸着剤を冷却する熱交換流路と、
    前記複数段の吸着器のうち、少なくとも最終段の吸着器の前記熱交換流路からの流体を冷却する放熱器と、
    前記複数段の蒸発器のうち、少なくとも1段目の蒸発器により冷却された流体と外気との間で熱交換を行う冷却器とを具備し、
    前記蒸発器を少なくとも前段の前記吸着器の前記熱交換流路に供給する冷却流体生成用とし、少なくとも隣り合う2段の蒸発器により冷却される冷却流体の流路を直列に接続して前記冷却流体が後段側の蒸発器から前段側の蒸発器によって順次冷却されるように構成したことを特徴とする吸着式冷凍装置。
  3. 冷媒を凝縮する少なくとも1個の凝縮器と、
    この凝縮器からの冷媒液を蒸発させる複数段の蒸発器と、
    これら各段の蒸発器に設けられた複数個の熱交換器と、
    前記各段の蒸発器に対応して設けられ、冷却により前記各段の蒸発器にて気化した冷媒蒸気を吸着し、加熱により冷媒蒸気を脱着して前記凝縮器に放出する吸着剤を有した複数段の吸着器とを具備し、
    外部に放熱する放熱器と前記各段の蒸発器の前記熱交換器とを直列に接続し、前記放熱器で冷やされた後、最終段の前記蒸発器から1段目の前記蒸発器までの前記熱交換器によって順次冷やされた冷却流体を、外気を冷却する冷却器を経て1段目の前記吸着器から最終段の前記吸着器までの前記熱交換流路に順次直列に供給する構成としたことを特徴とする吸着式冷凍装置。
  4. 前記複数段の吸着器のうち、後段側の吸着器ほど前記吸着剤の充填量を少なくしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の吸着式冷凍装置。
  5. 前記複数段の吸着器のうち、後段側の吸着器ほど前記吸着剤の粒径を小さくしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の吸着式冷凍装置。
  6. 前記凝縮器は各段の前記蒸発器および吸着器に対応して複数設けられて冷媒の循環系が各段毎に独立するように構成され、それら各段の凝縮器、蒸発器および吸着器に封入された冷媒のうち、前方段側の所要の段の冷媒には、凝固点降下剤が混入されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の吸着式冷凍装置。
  7. 前記凝縮器は各段の前記蒸発器および吸着器に対応して複数設けられて冷媒の循環系が各段毎に独立するように構成され、それら各段の凝縮器、蒸発器および吸着器に封入された冷媒のうち、前方段側の所要の段は、冷媒にアルコール系物質が用いられ、これを吸着する吸着剤に活性炭が用いられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の吸着式冷凍装置。
  8. 前記放熱器から流出する冷却流体と前記冷却器から流出する冷却流体とを混合して最終段の前記蒸発器の熱交換器と1段目の前記吸着器の熱交換流路とに供給するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の吸着式冷凍装置。
  9. 前記各段の吸着器は2個ずつ設けられ、それら2個の吸着器は、一方が自身の前記熱交換流路に冷却流体が供給されることによって吸着を行う時、他方が自身の前記熱交換流路に加熱流体が供給されることによって脱着を行うという関係をもって、吸着行程と脱着行程を交互に実行するように構成され、その行程の切り換え時に、前記各段の吸着器の熱交換流路は、切り換え前の実行行程と切り換え後の実行行程とが同じ吸着器の熱交換流路が直列に接続される状態を経た後、切り換え後に同じ行程を実行する吸着器の熱交換流路が直列に接続されることを特徴とする請求項3記載の吸着式冷凍装置。
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