(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。本第1実施形態では、本発明の吸着式冷凍機を車両空調用吸着式冷凍機に適用している。
図1、図2に示すように、吸着式冷凍機は2つの吸着器10、20が設けられている。第1吸着器10および第2吸着器20は同一の構成であり、一方の吸着器10、20で被吸着媒体の蒸発と吸着が行われているときに、他方の吸着器10、20で被吸着媒体の脱離と凝縮が行われる。
第1吸着器10には、第1密閉容器11が設けられ、第2吸着器20には、第2密閉容器21が設けられている。これらの密閉容器11、21は気密構造となっており、内部が略真空状態に保たれている。密閉容器11、21の内部には被吸着媒体(冷媒)が封入されている。本第1実施形態では、被吸着媒体として水を用いている。
第1密閉容器11の内部には、第1吸着部12と第1蒸発凝縮部13が設けられ、第2密閉容器21の内部には、第2吸着部22と第2蒸発凝縮部23が設けられている。吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23には、熱媒体が流通する配管と、熱媒体と被吸着媒体との熱交換を促進する伝熱部とが設けられており、吸着部12、22では被吸着媒体の吸着および脱離が行われ、蒸発凝縮部13、23では被吸着媒体の蒸発および凝縮が行われる。
吸着部12、22には、被吸着媒体を吸着するための吸着剤が充填されている。吸着剤は、冷却されることで気相状態の被吸着媒体(水蒸気)を吸着し、加熱されることで吸着した被吸着媒体を脱離して気相状態の被吸着媒体を放出する。吸着剤は、例えばシリカゲルやゼオライトである。
吸着部12、22には、被吸着媒体の吸着が行われる際に吸着を促進するための熱媒体が外部から供給され、被吸着媒体の脱離が行われる際に脱離を促進するための熱媒体が外部から供給される。また、蒸発凝縮部13、23には、被吸着媒体の蒸発が行われる際に蒸発を促進するための熱媒体が外部から供給され、被吸着媒体の凝縮が行われる際に凝縮を促進するための熱媒体が外部から供給される。
吸着部12、22には、車両走行用のエンジン30から高温水流路60を介してエンジン冷却用の熱媒体が供給される。エンジン30は水冷式内燃機関であり、熱源装置を構成している。本実施形態では、エンジン冷却用の熱媒体として、水にエチレングリコール系の不凍液を混合した流体(つまり、エンジン冷却水)を用いている。エンジン冷却用の熱媒体は、本実施形態で用いられる熱媒体のうち高温(例えば90℃)の熱媒体であり、以下「高温水」ともいう。高温水が本発明の「脱離用熱媒体」に相当している。
吸着部12、22には、第1放熱器50を通過した熱媒体が第1中温水流路61を介して供給される。第1放熱器50は、熱媒体と室外空気とを熱交換して熱媒体を冷却する室外熱交換器である。
蒸発凝縮部13、23には、第2放熱器51を通過した熱媒体が第2中温水流路62を介して供給される。第2放熱器51は、熱媒体と室外空気とを熱交換して熱媒体を冷却する室外熱交換器である。
放熱器50、51を流通する熱媒体として、高温水と同一の流体、すなわち水にエチレングリコール系の不凍液を混合した流体を用いている。放熱器50、51を流通する熱媒体は、高温水(つまり、エンジン冷却用の熱媒体)と後述の低温水(つまり、空調用の熱媒体)の中間の温度(例えば40℃)の熱媒体であり、以下「中温水」ともいう。第1中温水流路61を流れる中温水が本発明の「吸着用熱媒体」に相当し、第2中温水流路62を流れる中温水が本発明の「凝縮用熱媒体」に相当している。
蒸発凝縮部13、23には、車両用空調装置40から低温水流路63を介して空調用の熱媒体が供給される。本第1実施形態では、空調用の熱媒体として高温水および中温水と同一の流体、すなわち水にエチレングリコール系の不凍液を混合した流体を用いている。空調用の熱媒体は、本実施形態で用いられる熱媒体のうち低温(例えば10℃)の熱媒体であり、以下「低温水」ともいう。低温水が本発明の「蒸発用熱媒体」に相当している。
車両用空調装置40は、車室内に吹き出す空調用空気の通路を構成する空調ケース41が設けられている。空調ケース41の内部には、空気流れ上流側から順に送風機42、室内熱交換器43、ヒータコア44が設けられている。なお、室内熱交換器43が本発明の「熱交換器」に相当している。
室内熱交換器43は、蒸発凝縮部13、23で被吸着媒体の蒸発潜熱によって冷却された熱媒体から冷凍能力を得て、空調ケース41内を流通する空調用空気を冷却するようになっている。ヒータコア44には、エンジン30から流出した高温水が流通し、室内熱交換器43を通過した後の空気を加熱するようになっている。ヒータコア44の空気流れ上流側には図示しないエアミックスドアが設けられている。このエアミックスドアでヒータコア44を通過する風量割合を調整することで、空調用空気の温度調整が可能となっている。
上述のように、吸着部12、22には、高温水または中温水が流入し、蒸発凝縮部13、23には、低温水または中温水が流入する。これらの熱媒体流路の切り替えは、切替弁70〜76によって行われる。
本実施形態の切替弁70〜76は三方弁であり、2個の切替弁を組み合わせて用いられる。具体的には、第1切替弁70および第2切替弁71、第3切替弁72および第4切替弁73、第5切替弁74および第6切替弁75、第7切替弁76および第8切替弁77がそれぞれ組み合わせて用いられる。
吸着部12、22に供給される高温水および中温水の切り替えは、第1切替弁70、第2切替弁71、第3切替弁72および第4切替弁73によって行われる、蒸発凝縮部13、23に供給される低温水および中温水の切り替えは、第5切替弁74、第6切替弁75、第7切替弁76および第8切替弁77によって行われる、なお、切替弁70〜77が本発明の「切替部」に相当している。
第1切替弁70は、エンジン30の流出側と第1吸着部12の流入側を連通させる状態と、エンジン30の流出側と第2吸着部22の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第2切替弁71は、第1放熱器50の流出側と第1吸着部12の流入側を連通させる状態と、第1放熱器50の流出側と第2吸着部22の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第1切替弁70と第2切替弁71は連動して作動する。
第3切替弁72は、第1吸着部12の流出側とエンジン30の流入側を連通させる状態と、第1吸着部12の流出側と第1放熱器50の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第4切替弁73は、第2吸着部22の流出側と第1放熱器50の流入側を連通させる状態と、第2吸着部22の流出側とエンジン30の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第3切替弁72と第4切替弁73は連動して作動する。
第5切替弁74は、第2放熱器51の流出側と第1蒸発凝縮部13の流入側を連通させる状態と、第2放熱器51の流出側と第2蒸発凝縮部23の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第6切替弁75は、室内熱交換器43の流出側と第2蒸発凝縮部23の流入側を連通させる状態と、室内熱交換器43の流出側と第1蒸発凝縮部13の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第5切替弁74と第6切替弁75は連動して作動する。
第7切替弁76は、第2蒸発凝縮部23の流出側と室内熱交換器43の流入側を連通させる状態と、第2蒸発凝縮部23の流出側と第2放熱器51の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第8切替弁77は、第1蒸発凝縮部13の流出側と第2放熱器51の流入側を連通させる状態と、第1蒸発凝縮部13の流出側と室内熱交換器43の流入側を連通させる状態とを切り替えることができる。第7切替弁76と第8切替弁77は連動して作動する。
吸着式冷凍機は、熱媒体を吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23に供給するためのポンプ80〜83を備えている。第1ポンプ80および第2ポンプ81は、熱媒体を吸着部12、22に供給するためのポンプであり、第3ポンプ82および第4ポンプ83は、熱媒体を蒸発凝縮部13、23に供給するためのポンプである。第1ポンプ80および第2ポンプ81は、本発明の「吸着脱離用供給部」に相当し、第3ポンプ82および第4ポンプ83は、本発明の「蒸発凝縮用供給部」に相当している。
ポンプ80〜83は、熱媒体の供給量を調整することができる。具体的には、ポンプ80〜83によって、熱媒体を所定流量で供給すること、熱媒体の供給量を減少させること、熱媒体の供給を停止すること、熱媒体の供給量を減少あるいは供給を停止させた後に、熱媒体を所定流量で供給すること等を行うことができる。
第1ポンプ80は、高温水流路60に設けられている。第1ポンプ80は、エンジン30の熱媒体流入側に設けられ、エンジン30から高温水を第1吸着部12または第2吸着部22に供給する。
第2ポンプ81は、第1中温水流路61に設けられている。第2ポンプ81は、第1放熱器50の流出側に設けられ、第1放熱器50から中温水を第1吸着部12または第2吸着部22に供給する。
第3ポンプ82は、第2中温水流路62に設けられている。第3ポンプ82は、第2放熱器51の流出側に設けられ、第2放熱器51から中温水を第1蒸発凝縮部13または第2蒸発凝縮部23に供給する。
第4ポンプ83は、低温水流路63に設けられている。第4ポンプ83は、室内熱交換器43の流出側に設けられ、室内熱交換器43から低温水を第1蒸発凝縮部13または第2蒸発凝縮部23に供給する。
図3に示すように、吸着式冷凍機には、制御装置100が設けられている。制御装置100は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路を備えている。制御装置100は、送風機42、切替弁70〜77およびポンプ80〜83に制御信号を出力し、これらの機器の作動を制御する。
本実施形態の吸着式冷凍機は、図1に示す第1作動状態と図2に示す第2作動状態を交互に切り替えることができる。
図1に示す第1作動状態では、エンジン30から流出した高温水が第1吸着部12に循環する高温水回路と、第1放熱器50から流出した中温水が第2吸着部22に循環する第1中温水回路と、第2放熱器51から流出した中温水が第1蒸発凝縮部13に循環する第2中温水回路と、室内熱交換器43から流出した低温水が第2蒸発凝縮部23に循環する低温水回路の各熱媒体回路が形成される。
第1作動状態の各熱媒体回路について説明する。高温水回路では、高温水がエンジン30→ヒータコア44→第1切替弁70→第1吸着部12→第3切替弁72→第1ポンプ80→エンジン30の順に流通する。第1中温水回路では、中温水が第1放熱器50→第2ポンプ81→第2切替弁71→第2吸着部22→第4切替弁73→第1放熱器50の順に流通する。第2中温水回路では、中温水が第2放熱器51→第3ポンプ82→第5切替弁74→第1蒸発凝縮部13→第8切替弁77→第2放熱器51の順に流通する。低温水回路では、低温水が室内熱交換器43→第4ポンプ83→第6切替弁75→第2蒸発凝縮部23→第7切替弁76→室内熱交換器43の順に流通する。
第1作動状態では、第1吸着部12にエンジン30から高温水が流入し、第2吸着部22に第1放熱器50から中温水が流入する。また、第1蒸発凝縮部13に第2放熱器51から中温水が流入し、第2蒸発凝縮部23に室内熱交換器43から低温水が流入する。
第1吸着部12では、エンジン30からの高温水によって、吸着剤に吸着されている被吸着媒体の脱離が促進される。第1蒸発凝縮部13では、第2放熱器51からの中温水によって、第1吸着部12から脱離した気相の被吸着媒体の凝縮が促進される。第2蒸発凝縮部23では、室内熱交換器43からの低温水によって、被吸着媒体の蒸発が促進される。被吸着媒体の蒸発潜熱で冷却された低温水は室内熱交換器43に流入し、空調用空気が冷却される。第1作動状態では、第2蒸発凝縮部23を通過する前後の低温水の温度差が吸着式冷凍機の冷凍出力となる。
第2吸着部22では、第2蒸発凝縮部23で蒸発した気相の被吸着媒体を吸着し、第2蒸発凝縮部23での被吸着媒体の蒸発が促進される。このとき、第2吸着部22で被吸着媒体の吸着に伴って発生する熱は、第1放熱器50からの中温水によって除去される。これにより、第2吸着部22の温度上昇が抑制され、吸着剤の吸着能力低下が抑制される。
以上のように、第1作動状態では、第1吸着器10で被吸着媒体の脱離および脱離した気相の被吸着媒体の凝縮が行われ、第2吸着器20で被吸着媒体媒の蒸発および蒸発した気相の被吸着媒体の吸着が行われる。したがって、第1作動状態では、第1蒸発凝縮部13は気相の被吸着媒体を凝縮させる凝縮器として機能し、第2蒸発凝縮部23は液相の被吸着媒体を蒸発させる蒸発器として機能する。
図2に示す第2作動状態では、エンジン30から流出した高温水が第2吸着部22に循環する高温水回路と、第1放熱器50から流出した中温水が第1吸着部12に循環する第1中温水回路と、第2放熱器51から流出した中温水が第2蒸発凝縮部23に循環する第2中温水回路と、室内熱交換器43から流出した低温水が第1蒸発凝縮部13に循環する低温水回路の各熱媒体回路が形成される。
第2作動状態で形成される各熱媒体回路について説明する。高温水回路では、高温水がエンジン30→ヒータコア44→第1切替弁70→第2吸着部22→第4切替弁73→第1ポンプ80→エンジン30の順に流通する。第1中温水回路では、中温水が第1放熱器50→第2ポンプ81→第2切替弁71→第1吸着部12→第3切替弁72→第1放熱器50の順に流通する。第2中温水回路では、中温水が第2放熱器51→第3ポンプ82→第5切替弁74→第2蒸発凝縮部23→第7切替弁76→第2放熱器51の順に流通する。低温水回路では、低温水が室内熱交換器43→第4ポンプ83→第6切替弁75→第1蒸発凝縮部13→第8切替弁77→室内熱交換器43の順に流通する。
第2作動状態では、上述した第1作動状態に対して、第1吸着器10と第2吸着器20の作動が入れ替わる。つまり、第1吸着器10では、被吸着媒体の蒸発および蒸発した被吸着媒体の吸着が行われ、第2吸着器20では、被吸着媒体の脱離および脱離した被吸着媒体の冷却凝縮が行われる。したがって、第2作動状態では、第1蒸発凝縮部13は液相の被吸着媒体を蒸発させる蒸発器として機能し、第2蒸発凝縮部23は気相の被吸着媒体を凝縮させる凝縮器として機能する。
第2作動状態では、第1蒸発凝縮部13で液相の被吸着媒体が蒸発し、被吸着媒体の蒸発潜熱で室内熱交換器43に循環する低温水が冷却される。つまり、第2作動状態では、第1蒸発凝縮部13を通過する前後の低温水の温度差が、吸着式冷凍機の冷凍出力となる。
第1作動状態および第2作動状態の切り替えは、切替弁70〜77によって熱媒体流路を切り替えることで行うことができる。吸着式冷凍機の作動状態の切り替えは、所定周期毎に行われる。2つの吸着部12、22で所定周期毎に被吸着媒体の吸着と脱離を切り替えることで、冷凍能力を継続的に発揮させることができる。本実施形態では、吸着式冷凍機の作動状態の切替周期を60秒としている。
次に、吸着式冷凍機の作動状態の切り替えに伴う吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23に流入する熱媒体の切り替えについて説明する。切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始から切替終了までの期間が作動状態の切替期間である。本実施形態では、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替期間を4秒としている。以下、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替期間を単に「切替期間」ともいう。
「発明が解決しようとする課題」で上述したように、切替弁70〜77による熱媒体流路の切り替えには、開始から完了までに所定時間を要するため、切替弁70〜77で温度が異なる熱媒体が混合する。切替弁70〜77で混合する熱媒体のうち高い温度の熱媒体(以下、「高温側熱媒体」ともいう)は温度低下し、低い温度の熱媒体(以下、「低温側熱媒体」ともいう)は温度上昇する。高温側熱媒体は、中温水と高温水が混合する場合であれば高温水であり、低温水と中温水が混合する場合であれば中温水である。低温側熱媒体は、中温水と高温水が混合する場合であれば中温水であり、低温水と中温水が混合する場合であれば低温水である。
例えば、中温水と高温水との切り替えでは、中温水と高温水が混合することで、中温水が温度上昇し、高温水が温度低下する。また、低温水と中温水との切り替えでは、低温水と中温水が混合することで、低温水が温度上昇し、中温水が温度低下する。このため、作動状態の切替に伴って熱ロスが発生する。特に低温水と中温水が混合する場合には、室内熱交換器43に流入する低温水が温度上昇するため、室内熱交換器43による冷房能力が低下する。
そこで、本実施形態では、切替期間中に高温側熱媒体の供給を一時的に停止することで、高温側熱媒体から低温側熱媒体への熱エネルギーの移動を制限している。切替期間中における高温側熱媒体の供給停止は、吸着部12、22に高温水を供給する第1ポンプ80と、蒸発凝縮部13、23に中温水を供給する第3ポンプ82を一時的に停止することによって行う。具体的には、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始を契機として、ポンプ80、82を停止する。これにより、切替弁70〜77に供給される高温側熱媒体の流量が低減する。この結果、温度が異なる熱媒体の混合を抑制でき、低温側熱媒体が温度上昇することによる熱ロスを低減することができる。
温度が異なる熱媒体の混合量をできるだけ少なくするために、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始時に切替弁70〜77に流入する高温側熱媒体の流量ができるだけ少なくなっていることが望ましい。このため、ポンプ80、82の停止時期は、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始と同時あるいは切替開始前とすることが望ましい。
ポンプ80、82の再開時期は、ポンプ80、82の停止時間に基づいて設定すればよい。ポンプ80、82の再開時期は、例えば、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替終了と同時、切替終了前、あるいは切替終了後とすることができる。
ここで、ポンプ80〜83の作動状態と、吸着部12、22、蒸発凝縮部13、23、放熱器50、51、室内熱交換器43のそれぞれに流入する熱媒体温度および熱媒体流量との関係を図4を用いて説明する。
図4において、吸着部12、22、蒸発凝縮部13、23、放熱器50、51、室内熱交換器43の熱媒体流量を示す部分に記載されているP1、P2、P3、P4は、これらの機器に熱媒体を供給するポンプ80〜83を示している。P1が第1ポンプ80に対応し、P2が第2ポンプ81に対応し、P3が第3ポンプ82に対応し、P4が第4ポンプ83に対応している。また、図4において、一点鎖線は切替期間中にポンプ80、82を停止させない場合の熱媒体温度を示しており、右上がりの斜線で示す部分はポンプ80、82を停止させない場合に発生する熱ロスを示している。
吸着部12、22には、第1ポンプ80からの高温水(高温側熱媒体)と第2ポンプ81からの中温水(低温側熱媒体)が交互に供給される。切替期間中は、第1ポンプ80による高温水の供給を停止し、第2ポンプ81による中温水の供給を継続している。
中温水から高温水への切り替えでは、切替期間中は吸着部12、22に供給される熱媒体の流量はゼロになり、切替期間終了時に定常時の流量に戻る。また、高温水から中温水への切り替えでは、切替期間開始時に吸着部12、22に供給される熱媒体の流量はゼロになり、その後徐々に増加して切替期間終了時に定常時の流量に戻る。
切替期間中に第1ポンプ80を停止させない場合には、中温水と高温水が混合して吸着部12、22に供給される。このため、吸着部12、22では、図4の一点鎖線に示すように、吸着行程での熱媒体温度が上昇し、吸着部12、22の吸着能力が低下する。
これに対し、本実施形態では、切替期間中に第1ポンプ80を停止させることで、中温水と高温水の混合を抑制でき、高温水から中温水への熱エネルギーの移動を制限できるため、熱媒体の温度上昇を抑制できる。また、切替期間中に第2ポンプ81を継続して作動させているので、高温水から中温水への切替時には、切替期間開始時に吸着部12、22に供給される熱媒体の温度が中温水の温度になっている。このため、切替期間中においても、吸着部12、22の吸着行程を極力途切れることなく継続させることができる。
蒸発凝縮部13、23には、第3ポンプ82からの中温水(高温側熱媒体)と第4ポンプ83からの低温水(低温側熱媒体)が交互に供給される。切替期間中には、第3ポンプ82による中温水の供給を停止し、第4ポンプ83による低温水の供給を継続している。
蒸発凝縮部13、23に供給される熱媒体の流量は、低温水から中温水への切替期間中はゼロになり、切替期間終了時に定常時の流量に戻る。また、蒸発凝縮部13、23に供給される熱媒体の流量は、中温水から低温水への切替期間開始時にゼロになった後、徐々に増加して切替期間終了時に定常時の流量に戻る。
第1放熱器50には、第1吸着部12または第2吸着部22から流出した中温水が供給される。切替期間中には、第1ポンプ80による高温水の供給は停止し、第2ポンプ81による中温水の供給は継続される。第1放熱器50に供給される熱媒体の流量は、切替期間開始時にゼロになった後、徐々に増加して切替期間終了時に定常時の流量に戻る。
切替期間中に第1ポンプ80を停止させない場合には、中温水と高温水が混合する。このため、第1放熱器50に供給される熱媒体の温度は、図4の一点鎖線に示すように一時的に上昇する。このように熱媒体温度が上昇すると、第1放熱器50の放熱負荷が増大する。
これに対し、本実施形態では、切替期間中に第1ポンプ80を停止させることで、中温水と高温水の混合を抑制でき、高温水から中温水への熱エネルギーの移動を制限できる。これにより、第1放熱器50に供給される熱媒体の温度は中温水の温度が維持されるため、第1放熱器50の放熱負荷が増大することを抑制できる。
第2放熱器51には、第1蒸発凝縮部13または第2蒸発凝縮部23から流出した中温水が供給される。切替期間中には、第3ポンプ82による中温水の供給は停止し、第4ポンプ83による低温水の供給は継続される。第2放熱器51に供給される熱媒体の流量は、切替期間中はゼロになり、切替期間終了時に定常時の流量に戻る。
室内熱交換器43には、第1蒸発凝縮部13または第2蒸発凝縮部23から流出した低温水が供給される。切替期間中には、第3ポンプ82による中温水の供給は停止し、第4ポンプ83による低温水の供給は継続される。このため、室内熱交換器43に供給される熱媒体の流量は、切替期間開始時にゼロになった後、徐々に増加して切替期間終了時に定常時の流量に戻る。
切替期間中に第3ポンプ82を停止させない場合には、低温水と中温水が混合する。このため、図4の一点鎖線に示すように、室内熱交換器43に供給される熱媒体の温度は一時的に上昇する。このように熱媒体温度が上昇すると、室内熱交換器43の冷房能力が低下する。
これに対し、本実施形態では、切替期間中に第3ポンプ82を停止させることで、低温水と中温水の混合を抑制でき、中温水から低温水への熱エネルギーの移動を制限できる。これにより、室内熱交換器43に供給される熱媒体の温度は低温水の温度が維持されるため、室内熱交換器43の冷房能力が低下することを抑制できる。
次に、吸着式冷凍機の作動状態切替時における切替弁70〜77による熱媒体の切替制御を図5のフローチャートに基づいて説明する。図5に示す熱媒体の切替制御は、制御装置100からの制御信号に基づいて切替弁70〜77、ポンプ80、82が作動することによって実行される。
まず、吸着式冷凍機の作動状態の切替タイミングであるか否かを判定する(S10)。第1作動状態または第2作動状態が継続すると、吸着部12、22における被吸着媒体の吸着量が増大する。これに伴い、吸着部12、22における被吸着媒体の吸着能力が低下し、吸着式冷凍機の冷凍出力が低下する。このため、本実施形態では、第1作動状態または第2作動状態での運転開始から所定時間が経過した時点を作動状態の切替タイミングとしており、所定時間を60秒に設定している。
S10の判定処理で、吸着式冷凍機の作動状態の切替タイミングでないと判定された場合には(S10:NO)、吸着式冷凍機の作動状態の切替タイミングが到来するまで待機する。一方、吸着式冷凍機の作動状態の切替タイミングであると判定された場合には(S10:YES)、第1ポンプ80および第3ポンプ82の作動を停止させる(S11)。
S11の処理では、制御装置100からの作動停止信号に基づいて、ポンプ80、82が作動を停止する。本実施形態では、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始前にポンプ80、82を停止させている。
次に、切替弁70〜77による熱媒体の流路切替を開始し(S12)、ポンプ80、82の停止時間が経過したか否かを判定する(S13)。
この結果、ポンプ80、82の停止時間が経過していないと判定された場合には(S13:NO)、ポンプ80、82の停止時間が経過するまで待機する。一方、ポンプ80、82の停止時間が経過したと判定された場合には(S13:YES)、ポンプ80、82の作動を再開する(S14)。本実施形態では、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替終了前にポンプ80、82の作動を再開させている。その後、切替弁70〜77による熱媒体流路の切り替えが終了する(S15)。
ここで、本実施形態の吸着式冷凍機の冷房能力について図6を用いて説明する。図6は吸着式冷凍機の冷房能力の計算結果を示している。図6の冷房能力の計算では、高温水の温度を95℃とし、定常運転時の熱媒体流量を15L/minとし、室内熱交換器43を通過する空気を温度25℃、相対湿度50%、流量300m3/hとし、放熱器50、51を通過する外気を温度35℃、風速4m/secとしている。
図6の一番左側のグラフは、全ポンプ80〜83を連続的に作動させ、切替期間をゼロ秒(つまり、熱媒体の切り替えが即時に行われる)と仮定した比較例1である。比較例1は、熱媒体の切り替えに伴う熱ロスが発生しない理想例である。図6の左から2番目のグラフは、切替期間中に全ポンプ80〜83を停止させることなく連続的に作動させる比較例2である。図6の左から3番目のグラフは、切替期間中に全ポンプ80〜83を停止させる比較例3である。図6の一番右側のグラフは、切替期間中に高温側熱媒体用のポンプ80、82のみを停止させる本実施形態を示している。本実施形態、比較例2、3では、切替期間を4秒としている。
図6に示すように、切替期間中にポンプ80〜83を停止させない比較例2は、比較例1よりも冷房能力が45.3%低下している。また、切替期間中に全ポンプ80〜83を停止させる比較例3は、比較例1よりも冷房能力が6.9%低下している。これに対し、切替期間中に高温側熱媒体用のポンプ80、82のみを停止させる本実施形態は、比較例1よりも3.4%低下している。
つまり、切替期間中に全ポンプ80〜83を停止させる比較例3では、切替期間中にポンプ80〜83を停止させない比較例2よりも、冷房能力を向上させることができる。しかしながら、全ポンプ80〜83を停止させると、室内熱交換器43に低温水が流入しなくなるため、切替期間が長くなるほど室内熱交換器43の冷却能力が低下する。
これに対し、本実施形態では、切替期間中に高温側熱媒体用のポンプ80、82を停止させ、低温側熱媒体用のポンプ81、83を作動させているため、低温水が温度上昇することがなく、かつ、室内熱交換器43に低温水が連続的に供給される。このため、本実施形態では、比較例3よりも室内熱交換器43の冷却能力を向上させることができる。
以上説明した本第1実施形態によれば、吸着式冷凍機の作動状態切替時に、高温側熱媒体用のポンプ80、82を一時的に停止させている。これにより、切替期間中に高温側熱媒体の流量をできるだけ減少させることができ、高温側熱媒体と低温側熱媒体が混ざり合うことを抑制できる。このため、低温側熱媒体が供給される吸着部12、22、第1放熱器50、室内熱交換器43では、低温側熱媒体に高温側熱媒体が混合することに起因する温度上昇を抑制でき、熱ロスを低減することができる。特に室内熱交換器43では、低温水が連続的に供給され、さらに低温水に中温水が混合することを抑制できるので、冷房能力の低下を極力抑制できる。
また、本実施形態では、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始前にポンプ80、82を停止させている。これにより、ポンプ80、82の作動を停止してから熱媒体流量が減少するのに時間がかかる場合であっても、切替弁70〜77による切替開始時に切替前の熱媒体の流量を確実に減少させることができ、切替前の熱媒体と切替後の熱媒体が混ざり合うことを抑制できる。
また、本実施形態では、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替終了前にポンプ80、82を再作動させている。これにより、ポンプ80、82の作動を再開してから熱媒体流量が増加するのに時間がかかる場合であっても、切替弁70〜77による切替終了時に切替後の高温側熱媒体の流量を確実に増大させた状態で吸着部12、22、蒸発凝縮部13、23、第2放熱器51に供給することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図7、図8に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本第2実施形態では、上記第1実施形態と比較して、第1作動状態と第2作動状態を切り替える際に、2つの吸着部12、22の間と、2つの蒸発凝縮部13、23の間でそれぞれ熱交換させる第3作動状態を経由させる点が異なっている。本第2実施形態では、第1作動状態→第3作動状態→第2作動状態→第3作動状態→第1作動状態の順に作動状態が切り替わる。第3作動状態では、第1吸着部12と第2吸着部22の間で高温水および中温水を循環させる熱媒体回路と、第1蒸発凝縮部13と第2蒸発凝縮部23の間で中温水および低温水を循環させる熱媒体回路とが形成させる。
第1作動状態および第2作動状態との間で作動状態が切り替わると、吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23に温度が異なる熱媒体が供給される。例えば、第1作動状態から直接第2作動状態に切り替わると、第1吸着部12に供給される熱媒体は高温水から中温水に切り替わり、第2蒸発凝縮部23に供給される熱媒体は中温水から高温水に切り替わる。同様に、第1作動状態から直接第2作動状態に切り替わると、第1蒸発凝縮部13に供給される熱媒体は中温水から低温水に切り替わり、第2蒸発凝縮部23に供給される熱媒体は低温水から中温水に切り替わる。
このように、第1作動状態と第2作動状態との間で直接切り替えを行った直後には、吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23と、切替後の熱媒体との温度差が大きくなる。このため、吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23での熱ロスが増加し、外部からの投入熱量が多く必要となる。
これに対し、本第2実施形態の第3作動状態を経由させることで、第1吸着部12と第2吸着部22との間で熱交換させることができ、第1蒸発凝縮部13と第2蒸発凝縮部23との間で熱交換させることができる。これにより、中温水が供給されていた吸着部12、22は高温水の温度に近づけることができ、高温水が供給されていた吸着部12、22は中温水の温度に近づけることができる。また、低温水が供給されていた蒸発凝縮部13、23は中温水の温度に近づけることができ、中温水が供給されていた蒸発凝縮部13、23は低温水の温度に近づけることができる。
第3作動状態は、第1作動状態および第2作動状態を切り替える際に、切替弁70〜77の切替開始時期を異ならせることで実現できる。具体的には、第1切替弁70および第2切替弁71と、第3切替弁72および第4切替弁73とで、切替開始時期を異ならせることで、第1吸着部12と第2吸着部22の間で熱媒体を循環させる熱媒体回路を形成できる。また、第5切替弁74および第6切替弁75と、第7切替弁76および第8切替弁77とで、切替開始時期を異ならせることで、第1蒸発凝縮部13と第2蒸発凝縮部23の間で熱媒体を循環させる熱媒体回路を形成できる。
本第2実施形態では、切替弁72、73の切替開始時期を切替弁70、71の切替開始時期よりも遅らせており、さらに切替弁76、77の切替開始時期を切替弁74、75の切替開始時期よりも遅らせている。
図7は、本第2実施形態の吸着式冷凍機において、第1作動状態から第2作動状態に切り替わる際に経由する第3作動状態を示している。第3作動状態は、作動状態の切替開始を契機としてポンプ80、82を停止させた後、熱媒体の流量が減少する過程で実行される。
図1に示す第1作動状態では、吸着部12、22側の切替弁70〜73は以下の状態になっている。第1切替弁70は、エンジン30の流出側と第1吸着部12の流入側を連通させる状態になっている。第2切替弁71は、第1放熱器50の流出側と第2吸着部22の流入側を連通させる状態になっている。第3切替弁72は、第1吸着部12の流出側とエンジン30の流入側を連通させる状態になっている。第4切替弁73は、第2吸着部22の流出側と第1放熱器50の流入側を連通させる状態になっている。
また、第1作動状態では、蒸発凝縮部13、23側の切替弁74〜77は以下の状態になっている。第5切替弁74は、第2放熱器51の流出側と第1蒸発凝縮部13の流入側を連通させる状態になっている。第6切替弁75は、室内熱交換器43の流出側と第2蒸発凝縮部23の流入側を連通させる状態になっている。第7切替弁76は、第2蒸発凝縮部23の流出側と室内熱交換器43の流入側を連通させる状態になっている。第8切替弁77は、第1蒸発凝縮部13の流出側と第2放熱器51の流入側を連通させる状態になっている。
図7に示す第3作動状態では、吸着部12、22側の切替弁70〜73は以下の状態になっている。第1切替弁70は、エンジン30と第1吸着部12を連通させる状態からエンジン30と第2吸着部22を連通させる状態に切り替わり、第2切替弁71は、第1放熱器50と第2吸着部22を連通させる状態から第1放熱器50と第1吸着部12を連通させる状態に切り替わる。第3切替弁72および第4切替弁74は、第1作動状態のまま維持する。
また、第3作動状態では、蒸発凝縮部13、23側の切替弁74〜77は以下の状態になっている。第5切替弁74は、第2放熱器51と第1蒸発凝縮部13を連通させる状態から第2放熱器51と第2蒸発凝縮部23を連通させる状態に切り替わり、第6切替弁75は、室内熱交換器43と第2蒸発凝縮部23を連通させる状態から室内熱交換器43と第1蒸発凝縮部13を連通させる状態に切り替わる。第7切替弁76および第8切替弁77は、第1作動状態のまま維持する。
図7に示す第3作動状態では、第1吸着部12および第2吸着部22が同一の熱媒体回路で接続される。具体的には、第3作動状態では、熱媒体は第1吸着部12→第3切替弁72→第1ポンプ80→エンジン30→ヒータコア44→第1切替弁70→第2吸着部22→第4切替弁73→第1放熱器50→第2ポンプ81→第2切替弁71→第1吸着部12の順に流れる。
また、図7に示す第3作動状態では、第1蒸発凝縮部13および第2蒸発凝縮部23が同一の熱媒体回路で接続される。具体的には、第3作動状態では、熱媒体は第1蒸発凝縮部13→第8切替弁77→第2放熱器51→第3ポンプ81→第5切替弁74→第2蒸発凝縮部23→第7切替弁76→室内熱交換器43→第4ポンプ83→第6切替弁75→第1蒸発凝縮部13の順に流れる。
第3作動状態を所定時間継続した後、図2に示す第2作動状態に移行する。具体的には、第3切替弁72が第1吸着部12の流出側とエンジン39の流入側を連通させる状態から第1吸着部12の流出側と第1放熱器50の流入側を連通させる状態に切り替わる。また、第4切替弁73が第2吸着部22の流出側と第1放熱器50の流入側を連通させる状態から第2吸着部22の流出側とエンジン30の流入側を連通させる状態に切り替わる。また、第7切替弁76が第2蒸発凝縮部23の流出側と室内熱交換器43の流入側を連通させる状態から第2蒸発凝縮部23の流出側と第2放熱器51の流入側を連通させる状態に切り替わる。また、第8切替弁77が第1蒸発凝縮部13の流出側と第2放熱器51の流入側を連通させる状態から第1蒸発凝縮部13の流出側と室内熱交換器43の流入側を連通させる状態に切り替わる。
図8は、本第2実施形態の吸着式冷凍機において、第2作動状態から第1作動状態に切り替わる際に経由する第3作動状態を示している。
図8に示す第3作動状態では、吸着部12、22側の切替弁70〜73は以下の状態になる。第1切替弁70は、エンジン30と第2吸着部22を連通させる状態からエンジン30と第1吸着部12を連通させる状態に切り替わり、第2切替弁71は、第1放熱器50と第1吸着部12を連通させる状態から第1放熱器50と第2吸着部22を連通させる状態に切り替わる。第3切替弁72および第4切替弁73は、第2作動状態のまま維持する。
これにより、第1吸着部12および第2吸着部22が同一の熱媒体回路で接続された状態となる。吸着部12、22側の熱媒体は、第1吸着部12→第3切替弁72→第1放熱器50→第2ポンプ81→第2切替弁71→第2吸着部22→第4切替弁73→第1ポンプ80→エンジン30→ヒータコア44→第1切替弁70→第1吸着部13の順に流れる。
また、図8に示す第3作動状態では、蒸発凝縮部13、23側の切替弁74〜77は以下の状態になる。第5切替弁74は、第2放熱器51と第2蒸発凝縮部23を連通させる状態から第2放熱器51と第1蒸発凝縮部13を連通させる状態に切り替わり、第6切替弁75は、室内熱交換器43と第1蒸発凝縮部13を連通させる状態から室内熱交換器43と第2蒸発凝縮部23を連通させる状態に切り替わる。第7切替弁76および第8切替弁77は、第2作動状態のまま維持する。
これにより、第1蒸発凝縮部13および第2蒸発凝縮部23が同一の熱媒体回路で接続された状態となる。蒸発凝縮部13、23側の熱媒体は、第1蒸発凝縮部13→第8切替弁77→室内熱交換器43→第4ポンプ83→第6切替弁75→第2蒸発凝縮部23→第7切替弁76→第2放熱器51→第3ポンプ82→第5切替弁74→第1蒸発凝縮部13の順に流れる。
第3作動状態において、2つの吸着部12、22の間で熱交換した場合と、2つの蒸発凝縮部13、23との間で熱交換した場合の顕熱交換量Q(kJ)は、以下の数式1で算出することができる。
ただし、m(t)は熱媒体流量(kg/秒)であり、Cpは熱媒体比熱(kJ/kgK)であり、Tout(t)は吸着部12、22または蒸発凝縮部13、23の出口温度(℃)であり、Tin(t)は吸着部12、22または蒸発凝縮部13、23の入口温度(℃)であり、Δtは制御実行時間(秒)である。
第3作動状態の実行時間は、2つの吸着部12、22の間の顕熱交換量および2つの蒸発凝縮部13、23の間の顕熱交換量に基づいて設定することができる。例えば、第3作動状態の実行時間を顕熱交換量が所定値に達するまでに要する時間とすることができる。
以上説明した本第2実施形態によれば、吸着式冷凍機の作動状態を切り替える際に、2つの吸着部12、22の間と、2つの蒸発凝縮部13、23との間でそれぞれ熱交換する第3作動状態を設けている。これにより、2つの吸着器12、22の間で熱交換させることができ、作動状態の切替直後において、吸着部12、22と切替後の熱媒体との温度差を小さくすることができる。さらに、2つの蒸発凝縮器13、23の間で熱交換させることができ、作動状態の切替直後において、蒸発凝縮部13、23と切替後の熱媒体との温度差を小さくすることができる。この結果、作動状態の切替時において、吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23での熱ロスが抑制され、外部からの投入熱量を小さくすることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図9に基づいて説明する。上記各実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図9に示すように、本第3実施形態では、高温側熱媒体を供給するポンプ80、82の下流側にリリーフ弁90、91が設けられている。具体的には、高温水流路60における第1ポンプ80の下流側に第1リリーフ弁90が設けられており、第2中温水流路62における第3ポンプ82の下流側に第2リリーフ弁91が設けられている。リリーフ弁90、91は、熱媒体の水圧が所定圧力以上になった場合に開放する弁である。
本第3実施形態によれば、ポンプ80、82が停止時に熱媒体の逆流を伴う構成であっても、リリーフ弁90、91によって高温側熱媒体の逆流を防止できる。これにより、切替期間中にポンプ80、82を停止した場合に、温度が異なる熱媒体が混合することを確実に防止できる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図10に基づいて説明する。上記各実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図10に示すように、本第3実施形態の高温水流路60には、第1ポンプ80およびエンジン30の上流側と下流側を接続する第1バイパス流路60aが設けられている。高温水流路60における第1バイパス流路60aの下流側分岐部には、第1三方弁92が設けられている。高温水流路60における第1バイパス流路60aの上流側分岐部の上流側には、第1リリーフ弁90が設けられている。
また、第2中温水流路62には、第3ポンプ82および第2放熱器51の上流側と下流側を接続する第2バイパス流路62aが設けられている。第2中温水流路62における第2バイパス流路62aの下流側分岐部には、第2三方弁93が設けられている。第2中温水流路62における第2バイパス流路62aの上流側分岐部の上流側には、第2リリーフ弁91が設けられている。
第1三方弁92は、エンジン30から流出した高温水の流路を、通常運転時は第1切替弁70側にしており、切替期間中は第1バイパス流路60a側に切り替える。第2三方弁93は、第2放熱器51から流出した中温水の流路を、通常運転時は第5切替弁74側にしており、切替期間中は第2バイパス流路62a側に切り替える。
本第4実施形態によれば、切替期間中は三方弁92、93によって高温側熱媒体の流路をバイパス流路60a、62a側に切り替えている。これにより、高温水がエンジン30および第1ポンプ80を循環する閉回路と、中温水が第2放熱器51および第3ポンプ82を循環する閉回路が形成される。
このため、本第3実施形態によれば、ポンプ80、82が停止時に熱媒体の逆流を伴う構成であっても、閉回路によって高温側熱媒体の逆流を防止できる。これにより、切替期間中にポンプ80、82を停止した場合に、温度が異なる熱媒体が混合することを確実に防止できる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
(1)上記各実施形態では、本発明を車両空調用吸着式冷凍機に適用したが、これに限らず、家庭用や業務用等の吸着式冷凍機に適用してもよい。
(2)上記各実施形態では、三方弁からなる切替弁70〜77を2個1組で用いたが、これに限らず、第1切替弁70および第2切替弁71、第3切替弁72および第4切替弁73、第5切替弁74および第6切替弁75、第7切替弁76および第8切替弁77を、それぞれ1つの四方弁としてもよい。
(3)上記各実施形態では、切替弁70〜77による熱媒体流路の切替開始を契機としてポンプ80、82を停止させたが、ポンプ80、82を完全に停止させず、ポンプ80、82による高温側熱媒体の供給量を減少させるようにしてもよい。
(4)上記第2実施形態の第3作動状態では、切替弁72、73の切替開始時期を切替弁70、71の切替開始時期よりも遅らせることで、2つの吸着部12、22を同一の熱媒体回路で接続するように構成したが、これに限らず、切替弁70、71の切替開始時期を切替弁72、73の切替開始時期よりも遅らせるようにしてもよい。このような構成によっても、2つの吸着部12、22を同一の熱媒体回路で接続することができる。
同様に、上記第2実施形態の第3作動状態では、切替弁76、77の切替開始時期を切替弁74、75の切替開始時期よりも遅らせることで、2つの蒸発凝縮部13、23を同一の熱媒体回路で接続するように構成したが、これに限らず、切替弁74、75の切替開始時期を切替弁76、77の切替開始時期よりも遅らせるようにしてもよい。このような構成によっても、2つの蒸発凝縮部13、23を同一の熱媒体回路で接続することができる。
(5)上記各実施形態では、吸着部12、22に中温水を供給する第1放熱器50と、蒸発凝縮部13、23に中温水を供給する第2放熱器51を設けたが、これに限らず、1個の放熱器から吸着部12、22および蒸発凝縮部13、23に中温水を供給するようにしてもよい。