JP3590459B2 - ラミネート用水性印刷インキ組成物およびそれを用いたラミネート方法 - Google Patents

ラミネート用水性印刷インキ組成物およびそれを用いたラミネート方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラミネート用水性印刷インキ組成物に関する。さらに詳しくは、特にポリオレフィン系フィルムに対する接着性、溶融ポリプロピレンのダイレクトラミネート適性に優れたラミネート用水性印刷インキ組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装容器の多様化、美粧化に対応すべく、プラスチックフィルムに印刷インキが印刷された後、更にラミネート加工された包装袋が製造されている。
【0003】
なお、ラミネート加工とは印刷面にポリマーを積層する加工のことであり、主に、アンカーコート剤を介して溶融ポリエチレンを圧着して積層する方法
(通常の押出しラミネート法)、接着剤を介してプラスチックフィルムを貼り合わせる方法(ドライラミネート法)、あるいは、ポリプロピレンフィルムにインキを印刷後、印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層する方法(ダイレクトラミネート法)の3種の方法がある。
【0004】
そして、ラミネート加工された包装容器は、インキと内容物とが非接触であるために衛生面で優れ、印刷物に高級感を与えることから、特に食品用途などの分野で好んで使用されている。
【0005】
本発明の対象とするラミネート用印刷インキ組成物は、これらのラミネート加工物の製造で使用されるインキであり、従来より、極性基を有するプラスチックフィルムに良好な接着性を示すポリウレタン樹脂をバインダーとした、有機溶剤系のものが利用されている。しかし、このタイプのインキは、ポリオレフィン系フィルムに対する接着性が得られにくいうえに、ポリオレフィン系ポリマーを積層する通常の押出しラミネートおよびダイレクトラミネート法では、印刷面と積層ポリマー層との接着性(ラミネート強度)が低く、中でもダイレクトラミネート加工物でその傾向は顕著である。
【0006】
そこで、特にダイレクトラミネート加工に使用されるインキでは、ポリオレフィン系ポリマーと良好な接着性を有する塩素化ポリプロピレンをバインダーとして併用する方法が利用されている。
【0007】
しかし、近年、環境問題や省資源、労働安全性及び火災等の見地から、有機溶剤の使用を極力抑えた水性タイプの印刷インキの要望が強くなっている。特にラミネート加工された包装袋では、インキ皮膜が被印刷体フィルムと積層フィルムとの間で埋封されて、有害な有機溶剤が残留し易く、内容物に有害な影響を及ぼすことから、ラミネート用インキの水性化の要望が強くなっている。
【0008】
この要望に応えるために、バインダー樹脂の水性化が図られているが、ポリウレタン樹脂の水性化は難しく、また、水性系では溶剤系にも増して、ポリオレフィン系フィルムに対する接着性、ラミネート適性が得られないという問題がある。
【0009】
さらに、塩素化ポリプロピレンを水系で利用しようとすると以下の問題が発生する。
【0010】
塩素化ポリプロピレンは特に芳香族系有機溶剤等に溶解することから、溶剤型被覆剤組成物のバインダー樹脂としては比較的容易に利用が可能で、ポリプロピレンフィルム表面との接着性、ダイレクトラミネート適性を向上させることができる。しかし、塩素化ポリプロピレンは水中には全く溶解せず、また、乳化剤等を使用しても水中での分散性が低いため、水性被覆剤組成物のバインダー樹脂として利用することが困難である。
【0011】
特に印刷インキ組成物では、分散性の低いバインダー樹脂を使用すると、印刷適性、経時粘度安定性が著しく低下することから、インキ以外の水性被覆剤組成物と比較しても、分散性の低い塩素化ポリプロピレンを使用することがより困難となる。
【0012】
この様な理由から、水性であって、かつ、ポリオレフィン系フィルムに対する接着性、ダイレクトラミネート適性の良好な印刷インキ組成物は未だ得られていないというのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は前記問題を解決することであり、水性でありながらポリオレフィン系フィルムに良好な接着性を示し、さらにダイレクトラミネート加工適性の優れた水性印刷インキを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、下記のa、b、c成分の群から選択される水性バインダー樹脂ワニスおよび顔料を主たる成分とするラミネート用水性印刷インキ組成物であって、前記a、b、c成分が水性バインダー樹脂ワニスの全固形分に対して、a成分の固形分が50〜95重量%、b成分の固形分が5〜50重量%、c成分の固形分が0〜30重量%となる範囲で含有されることを特徴とするラミネート用水性印刷インキ組成物。
【0015】
a成分:塩基性化合物または乳化剤の存在下、アクリル系共重合体を水中に溶解または分散せしめて得られる水性アクリル樹脂ワニス、および、塩基性化合物および/または乳化剤の存在下、エチレン−アクリル酸系共重合体を水中に分散せしめて得られるエチレン−アクリル酸系水性バインダー樹脂ワニスの群から選択される少なくとも1種の水性バインダー樹脂ワニス。
【0016】
b成分:数平均分子量2,000〜200,000のポリプロピレンをマレイン酸および/または無水マレイン酸で変性して得られる、酸価10〜100の変性ポリプロピレンを、塩基性化合物および乳化剤の存在下、水中に分散せしめて得られる変性ポリプロピレン系水性バインダー樹脂ワニス。
【0017】
c成分:aおよびb成分以外の水性樹脂を、塩基性化合物および/または乳化剤の存在下、水中に溶解または分散せしめて得られる水性バインダー樹脂ワニス。
【0018】
さらにその良好な態様として、a成分として、分子内にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体からなる高分子乳化剤の存在下、アクリル系共重合体を水中に分散せしめて得られる水性アクリル樹脂ワニスを使用するラミネート用水性印刷インキ組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、ポリオレフィン系フィルムに前記ラミネート用水性印刷インキ組成物を印刷した後、ポリオレフィン系フィルムを積層することを特徴とする印刷物のラミネート方法に関し、特に、ポリプロピレンフィルムに前記ラミネート用水性印刷インキ組成物を印刷した後、溶融ポリプロピレンを積層するラミネート方法に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、主なバインダー樹脂として、アクリル系樹脂および/またはエチレン−アクリル酸系樹脂と、酸価及び分子量の特定された(無水)マレイン酸変性ポリプロピレンとを併用したラミネート用水性印刷インキ組成物に関するものである。
【0021】
従来より、乳化剤の存在下で水中に分散させて得られる塩素化ポリプロピレン水分散物は、水性被覆剤組成物のバインダーとして使用されているが、塩素化ポリプロピレンが水中で安定な分散性を得るためには、塩素化度の高いポリプロピレンでなければならない。しかし、ポリプロピレンの塩素化度が高くなると、結晶性の高い分子構造を維持することができなくなり、ポリプロピレンフィルム表面に対する充分な接着性が得られなくなる。
【0022】
この様に、塩素化ポリプロピレンにおいて、水中での分散安定性とポリプロピレンフィルム表面に対する接着性は相反する性能である。
【0023】
しかし、本発明にかかるラミネート用水性印刷インキの分野で使用されるバインダー樹脂は、印刷適性を低下させないためのより良好な分散安定性と、ダイレクトラミネート適性のためのより高い接着性の双方が要求されるものである。
【0024】
そこで本出願人は、塩素化より低変性度で良好な分散安定性を有する(無水)マレイン酸変性ポリプロピレンを用い、さらにこの変性ポリプロピレンが低分子量であるほど分散安定性が良好となること、また、高分子量になると分子間凝集力が増大し、フィルムに対する接着性が良好となることに着目し、変性度と分子量の双方を規定することにより、水中での分散安定性とポリプロピレンフィルム表面に対する接着性の両方で優れる水性バインダー樹脂を得たものである。
【0025】
以下に本発明について更に詳しく説明する。
【0026】
まず、本発明で使用する顔料としては、一般に水性印刷インキで使用できる無機、有機あるいは体質顔料が使用できる。これらの顔料の通常の使用量は、水性印刷インキ組成物中、1〜50重量%である。
【0027】
次に、本発明で使用する水性バインダー樹脂ワニスとは、アクリル系共重合体、エチレン−アクリル酸系共重合体、(無水)マレイン酸変性ポリプロピレンおよびその他の水性樹脂を、塩基性化合物や乳化剤により水性化したものである。
【0028】
まず、アクリル系水性バインダー樹脂ワニスとは、以下に示すアクリル系化合物を必須成分として、必要に応じてスチレン系化合物、マレイン酸系化合物などを既知の方法で共重合して得られるアクリル系共重合体であって、分子内にカルボキシル基を有し、塩基性化合物の存在下で水中に溶解または分散させた水性アクリル樹脂ワニス、あるいはその水性アクリル樹脂ワニスを高分子乳化剤として、アクリル系化合物、必要に応じてスチレン系化合物などを既知の方法で乳化重合して得られる水性アクリル樹脂ワニスである。
【0029】
・アクリル系化合物
アクリル酸、メタクリル酸と、それらの炭素数が1〜18のアルキルエステル、炭素数が1〜18のアルキルアミド、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキルエステル等で、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0030】
・スチレン系化合物
スチレンおよびその誘導体で、具体的には、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0031】
・マレイン酸系化合物
(無水)マレイン酸と、その炭素数が1〜18のアルキルエステル、炭素数が1〜18のアルキルアミド、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキルエステル等で、具体的には、モノメチルマレート、ジメチルマレート、モノエチルマレート、ジエチルマレート、モノブチルマレート、モノオクチルマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルマレート等を挙げることができる。
【0032】
ここで、アクリル系共重合体を塩基性化合物の存在下で水中に溶解あるいは分散させて水性アクリル樹脂ワニスとする方法としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸または無水マレイン酸の内の1つを必須成分として、分子内にカルボキシル基を導入する方法が一般的である。
【0033】
なお、アクリル系共重合体の酸価は5〜250、より好ましくは10〜150である。アクリル系共重合体の酸価が前記範囲より小さくなると、アクリル系共重合体の水中での分散安定性が低下し、一方、酸価が前記範囲より大きくなると得られるインキの耐水性が低下するため、酸価が前記の範囲となるように調整することが望ましい。
【0034】
また、アクリル系共重合体を水中に溶解または分散させるために使用する塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属水酸化物等を挙げる事ができ、乾燥性を向上させるために、常温あるいはわずかの加温で容易に揮発するものが望ましい。
【0035】
塩基性化合物の添加量としては、アクリル系共重合体の水分散性およびインキ化したときの乾燥性が低下しない範囲として、通常約0.5〜1.5当量程度である。
【0036】
一方、前記水性アクリル樹脂ワニス(好ましくは分子内にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体を塩基性化合物の存在下に水中に溶解または分散して得られる水性アクリル樹脂ワニス)を高分子乳化剤として、アクリル系化合物、必要に応じてスチレン系化合物などを乳化重合して得られる水性アクリル樹脂ワニスとしては、高分子乳化剤の固形分と、乳化重合体との重量比率が20:80〜80:20の範囲のものが好適である。この範囲にある水性アクリル樹脂ワニスを用いることにより、流動性、再溶解性、耐水性などの良好な印刷インキ組成物を得ることができる。
【0037】
次に、本発明のエチレン−アクリル酸系水性バインダー樹脂ワニスとは、エチレン60〜90重量%、アクリル酸またはメタクリル酸10〜30重量%、その他の共重合可能なビニル基含有化合物0〜30重量%を共重合させてなるエチレン−アクリル酸系共重合体を、塩基性化合物及び/または乳化剤の存在下で水中に分散せしめたものである。
【0038】
ここで、その他の共重合可能なビニル基含有化合物としては、前記アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類、アルキルアミド類、スチレン系化合物類、さらにビニルクロライド、ビニルアセテート等が使用できる。
【0039】
これらエチレン−アクリル酸系共重合体は、エチレン、(メタ)アクリル酸及びその他の共重合可能なビニル基含有化合物の所定量を高温、高圧下、触媒を使用して直接共重合させるか、あるいはエチレン−アルキルアクリレート系共重合体を加水分解して得られる。
【0040】
本発明のエチレン−アクリル酸系共重合体において、アクリル酸またはメタクリル酸の含有量は10〜30重量%であり、この範囲より少なくなると、共重合体の水に対する乳化能が低くなり、一方、多くなると乾燥性が低下して好ましくない。
【0041】
また、その他の共重合可能なビニル基含有化合物の含有量が30重量%を超えると、本発明で特定するインキ性能が得られなくなり好ましくない。
【0042】
さらに本発明のエチレン−アクリル酸系共重合体のメルトインデックスは100〜2000g/10分、より好ましくは300〜1000g/10分の範囲であり、この範囲より小さくなると、共重合体の水中での分散安定性が低くなり、一方、大きくなると共重合体が柔軟になり過ぎて、インキ化した時に印刷物の耐ブロッキング性等が低下して好ましくない。
【0043】
本発明のエチレン−アクリル酸系共重合体を水中に分散させるための塩基性化合物としては、前記の塩基性化合物が使用でき、さらに乳化剤としては、既知の陰イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤が使用できる。
【0044】
前記水性アクリル樹脂ワニスおよび/またはエチレン−アクリル酸系水性バインダー樹脂ワニス(a成分)は、水性バインダー樹脂ワニスの全固形分に対して、a成分の固形分が50〜95重量%の範囲で使用するのが好ましい。a成分の割合が前記範囲未満では得られる印刷インキの再溶解性、印刷物の美粧性が低下し、一方前記範囲より多いと得られる印刷インキのポリオレフィンフィルムに対する接着性、ダイレクトラミネート適性が低下する。
【0045】
次に、本発明の変性ポリプロピレンとは、アイソタクチックな結晶構造を有するポリプロピレンにマレイン酸および/または無水マレイン酸を公知の方法、例えばラジカル重合開始剤の存在下でグラフト重合させる方法などによって得られるもので、乳化剤および塩基性化合物の存在下で水中に分散させて使用する。
【0046】
なお、グラフト重合の際に使用できるラジカル重合開始剤としては、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物やアゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾビス系化合物などが挙げられる。
【0047】
本発明において、(無水)マレイン酸のグラフト化率は、当該変性ポリプロピレンの酸価を10〜100とする量である。酸価が前記の範囲より小さくなると、水中での分散安定性が低下し、また、大きくなるとポリプロピレンフィルムに対する接着性、ダイレクトラミネート適性などが低下して好ましくない。
【0048】
また、本発明の(無水)マレイン酸で変性されるポリプロピレンの分子量(数平均分子量、以下同様)としては、2,000〜200,000のものが使用できる。ここで、当該ポリプロピレンの分子量が2,000未満になると、水性インキのポリプロピレンフィルムに対する接着性、ダイレクトラミネート適性が低下し、一方、分子量が200,000を超えると水中での分散安定性が低下して好ましくない。
【0049】
さらに、本発明の(無水)マレイン酸変性ポリプロピレンを水中に分散させるために使用する塩基性化合物および乳化剤としては、前記のものが利用できるほか、両性界面活性剤なども乳化剤として利用できる。
【0050】
前記(無水)マレイン酸変性ポリプロピレン系水性バインダー樹脂ワニス(b成分)は、水性バインダー樹脂ワニスの全固形分に対して、b成分の固形分が5〜50重量%の範囲で使用するのが好ましい。b成分の割合が前記範囲未満では得られる印刷インキのポリオレフィンフィルムに対する接着性、ダイレクトラミネート適性が低下し、一方前記範囲より多いと得られる印刷インキの再溶解性、印刷物の美粧性が低下する。
【0051】
本発明では必要に応じて、さらに水性ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、水性ポリエステル樹脂、通常の界面活性剤を使用した水性アクリル樹脂エマルジョン、水溶性セルロース、水溶性硝化綿等のハードレジン等の他の各種水性樹脂を固形分換算で全バインダー樹脂の30重量%程度まで添加することができる。
【0052】
また、本発明の水性印刷インキ組成物には、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、架橋剤等の各種添加剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール、N−メチルピロリドン等の水混和性溶剤を添加することができる。
【0053】
本発明の水性印刷インキ組成物中における、全水性バインダー樹脂ワニスの含有量は固形分換算で5〜30重量%の範囲が好ましい。
【0054】
次に、これら各種材料を使用して、ラミネート用水性印刷インキ組成物を製造する方法としては、前記アクリル系樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散用樹脂または顔料分散剤を混合して混練し、さらに所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
【0055】
以上の方法によって得られる印刷インキ組成物は、フレキソあるいはグラビア印刷方式によって、プラスチックフィルムに印刷することができる。
【0056】
本発明の印刷インキ組成物が印刷されるプラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン系フィルムが好適であり、一部、ポリエステル、ナイロンなどのプラスチックフィルムも利用され、特にコロナ放電処理などの表面処理されたものがより好適である。
【0057】
さらに本発明の印刷インキ組成物は、ポリプロピレンフィルムに印刷された
後、印刷面に直接溶融ポリプロピレン樹脂を積層するダイレクトラミネート法においてより有効に利用される。
【0058】
また、本発明のラミネート用水性印刷インキ組成物は、前記の各種フィルムに印刷された後、印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系などの各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常の押出ラミネート法、印刷面にウレタン系などの接着剤を塗工し、プラスチックフィルムを積層するドライラミネート法にも利用可能である。
【0059】
なお、通常の押出しラミネートおよびドライラミネート法を使用してラミネート加工する場合は、アンカーコート剤あるいは接着剤として水性系のものを使用することにより、完全水系のラミネート加工物が得られ、食品衛生などでより有利となる。
【0060】
本発明の印刷インキ組成物は、水性でありながらいずれのラミネート加工法にも利用可能で、特にダイレクトラミネート加工適性がより良好であることを特徴とするものである。
【0061】
【実施例】
以下、実施例でもって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特にことわりの無い限り、「部」および「%」は 「重量部」及び「重量%」を表す。
【0062】
<アクリル系水性バインダー樹脂ワニスの製造>
製造例1
撹拌機、冷却管、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応器に酢酸エチル600部を仕込み、75〜78℃に加熱した後、窒素ガスを導入しながらこれにアクリル酸38.4部、ブチルアクリレート180部、メチルメタクリレート181.6部、重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド4部の混合物を滴下ロートより3時間かけて滴下した。さらに滴下終了後、環流温度で3時間重合させて反応を完結し、酢酸エチルを留去して酸価75のアクリル系共重合体1を得た。
【0063】
撹拌機を備えた容器に、アクリル系共重合体1の破砕物300部、その中和量に対して1.2当量のアンモニアを含むアンモニア水700部を仕込み、撹拌しながら80℃で加熱溶解し、固形分30%の水性バインダー樹脂ワニスNo.1を得た。
【0064】
製造例2
製造例1と同様の反応器に酢酸エチル600部を仕込み、75〜78℃に加熱した後、窒素ガスを導入しながらこれにアクリル酸25.6部、ブチルアクリレート180部、メチルメタクリレート80部、スチレン114.4部、重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド4部の混合物を滴下ロートより3時間かけて滴下した。さらに滴下終了後、環流温度で3時間重合させて反応を完結し、酢酸エチルを留去して酸価50のアクリル系共重合体2を得た。
【0065】
撹拌機を備えた容器に、アクリル系共重合体2の破砕物300部、その中和量に対して1.2当量のアンモニアを含むアンモニア水700部を仕込み、撹拌しながら80℃で加熱溶解し、固形分30%の水性バインダー樹脂ワニスNo.2を得た。
【0066】
製造例3
製造例1と同様の反応器に酢酸エチル600部を仕込み、75〜78℃に加熱した後、窒素ガスを導入しながらこれにアクリル酸51.2部、ブチルアクリレート160部、メチルメタクリレート188.8部、重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド2部の混合物を滴下ロートより3時間かけて滴下した。さらに滴下終了後、環流温度で3時間重合させて反応を完結し、酢酸エチルを留去して酸価100のアクリル系共重合体3を得た。
【0067】
乳化機、冷却管、温度計、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた容器に、アクリル系共重合体3の破砕物150部、その中和量の1.2当量のアンモニアを含むアンモニア水700部を仕込み、撹拌しながら80℃で加熱溶解した後、更にブチルアクリレート81部、メチルメタクリレート69部、重合開始剤としてジターシャリーブチルハイドロパーオキサイド2部の混合物を滴下ロートより3時間かけて滴下した。さらに滴下終了後、環流温度で3時間重合させて反応を完結し、固形分30%の水性バインダー樹脂ワニスNo.3を得た。
【0068】
<無水マレイン酸変性ポリプロピレン水分散液の製造>
以下の方法により無水マレイン酸変性ポリプロピレン水分散液No.1〜10を製造した。
【0069】
還流管、温度計、乳化機を備えた容器に、高分子量のポリプロピレンを熱分解して得られた分子量2,000〜300,000のポリプロピレン及び無水マレイン酸のトルエン溶液を仕込み、窒素置換下110℃に昇温後、ベンゾイルパーオキサイドを添加して4時間反応させた後、未反応の無水マレイン酸を除去して、無水マレイン酸変性ポリプロピレンのトルエン溶液を得た。
【0070】
さらに、固形分に換算して200部となる無水マレイン酸変性ポリプロピレンのトルエン溶液に対して、中和量の1.2当量のアンモニアを含むアンモニア水400部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル20部を加え、均一に乳化し、減圧蒸留、pH調整および水の添加を繰り返してトルエンを留去し、固形分40%の無水マレイン酸変性ポリプロピレン水分散液No.1〜10を得た。ここで、無水マレイン酸変性ポリプロピレン水分散液8、10は、分散安定性が悪いため、水性印刷インキ組成物を製造しなかった。
【0071】
なお、無水マレイン酸変性ポリプロピレン水分散液No.1〜10の無水マレイン酸変性ポリプロピレン自体の性状及び水分散安定性は表1に示す通りである。
【0072】
実施例1〜12及び比較例1〜4
表2の配合に従って得られた各材料混合物をレッドデビル型ペイントコンディショナーで混練し、実施例1〜12及び比較例1〜4の水性印刷インキ組成物を得た。
【0073】
なお、顔料としてはシアニンブルー顔料(C.I.74100)を、顔料分散用水溶性樹脂ワニスとしてはジョンクリルJ−61(ジョンソンポリマー(株)製、固形分30%)を、エチレン−アクリル酸水分散液としてはザイクセン−AC(住友精化(株)製、アクリル酸含有量20%、メルトインデックス300g/10分、固形分30%)を使用した。
【0074】
試験方法及び評価
実施例1〜12及び比較例1〜4の水性印刷インキ組成物の接着性、ダイレクトラミネート試験、押出しラミネート強度、再溶解性および泳ぎの評価を以下の試験方法で行い、その評価結果を表2に記載した。なお、接着性、再溶解性および泳ぎではAおよびBを良好の範囲とする。
【0075】
接着性
試験方法 各試験インキをグラビア校正機でOPPフィルムに印刷し、印刷面にセロテープを貼り付け、これを急速に剥したときの、印刷皮膜がフィルムから剥離する度合いから接着性を評価した。
【0076】
評価基準 A:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しないもの
B:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから剥離するもの
C:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、50%未満がフィルムから剥離するもの
D:印刷皮膜の面積比率として、50%以上がフィルムから剥離するもの
ダイレクトラミネート試験
試験方法 各試験インキをグラビア校正機でOPPフィルムに印刷した後、押出しラミネート機にて305℃で溶融させたポリプロピレン樹脂を30μmの膜厚で積層してラミネート加工物を得た。これらのラミネート物を40℃で3日間放置した後、15mm幅に切断し、安田精機(株)製剥離試験機を用いて、T型剥離強度を測定した。
【0077】
評価方法 剥離強度(g/15mm)の実測値を記載した。
【0078】
押出しラミネート強度
試験方法 各試験インキをグラビア校正機でOPPフィルムに印刷後、イミン系アンカーコート剤(東洋モートン(株)製、EL−420)を塗布し、押出しラミネート機にて345℃で溶融させたポリエチレンを30μmの膜厚で積層してラミネート加工物を得た。これらのラミネート物を40℃で3日間放置した後、15mm幅に切断し、安田精機(株)製剥離試験機を用いて、T型剥離強度を測定した。
【0079】
評価方法 剥離強度(g/15mm)の実測値を記載した。
【0080】
再溶解性
試験方法 各試験インキをグラビア校正機で2分間OPPフィルムに印刷後、運転を止めてそのままの状態で60秒間放置した。その後、印刷を再開し、正常な印刷物が得られるまでのピッチ数から再溶解性を評価した。
【0081】
Figure 0003590459
【0082】
泳ぎ(印刷ムラ)
試験方法 グラビア校正機による各試験インキのOPPフィルム印刷物の印刷ムラを目視にて評価した。
【0083】
Figure 0003590459
なお、OPPフィルムとは延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)社製、P−2161、30μm)を表す。
【0084】
【表1】
Figure 0003590459
【0085】
【表2】
Figure 0003590459
【0086】
【発明の効果】
以上、実施例を挙げて具体的に示したように、本発明の水性印刷インキ組成物は、OPPフィルムに良好な接着性を示し、さらにダイレクトラミネート加工適性にも優れた水性印刷インキ組成物である。

Claims (4)

  1. 下記のa、b、c成分の群から選択される水性バインダー樹脂ワニスおよび顔料を主たる成分とするラミネート用水性印刷インキ組成物であって、前記a、b、c成分が水性バインダー樹脂ワニスの全固形分に対して、a成分の固形分が50〜95重量%、b成分の固形分が5〜50重量%、c成分の固形分が0〜30重量%となる範囲で含有されることを特徴とするラミネート用水性印刷インキ組成物。
    a成分:塩基性化合物または乳化剤の存在下、アクリル系共重合体を水中に溶解または分散せしめて得られる水性アクリル樹脂ワニス、および、塩基性化合物および/または乳化剤の存在下、エチレン−アクリル酸系共重合体を水中に分散せしめて得られるエチレン−アクリル酸系水性バインダー樹脂ワニスの群から選択される少なくとも1種の水性バインダー樹脂ワニス。
    b成分:数平均分子量2,000〜200,000のポリプロピレンをマレイン酸および/または無水マレイン酸で変性して得られる、酸価10〜100の変性ポリプロピレンを、塩基性化合物および乳化剤の存在下、水中に分散せしめて得られる変性ポリプロピレン系水性バインダー樹脂ワニス。
    c成分:aおよびb成分以外の水性樹脂を、塩基性化合物および/または乳化剤の存在下、水中に溶解または分散せしめて得られる水性バインダー樹脂ワニス。
  2. a成分として、分子内にカルボキシル基を有するアクリル系共重合体からなる高分子乳化剤の存在下、アクリル系共重合体を水中に分散せしめて得られる水性アクリル樹脂ワニスを使用する請求項1記載のラミネート用水性印刷インキ組成物。
  3. ポリオレフィン系フィルムに請求項1または2記載のラミネート用水性印刷インキ組成物を印刷した後、ポリオレフィン系フィルムを積層することを特徴とする印刷物のラミネート方法。
  4. ポリプロピレンフィルムに請求項1または2記載のラミネート用水性印刷インキ組成物を印刷した後、溶融ポリプロピレン樹脂を積層することを特徴とする印刷物のラミネート方法。
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