JP3589419B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに関し、特に氷路面上での制動、駆動、コーナリング性等の走行性能（以下単に「氷上性能」と称する場合がある）を著しく向上した空気入りタイヤに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、氷結路を安全に走行することができるように、スタッドレスタイヤの氷上摩擦力の向上が強く望まれている。このため、タイヤトレッドに発泡ゴムや短繊維を用いたものが、例えば、特開平４−３８２０６号公報、特開平４−１７６７０７号公報、特開平４−１７６７０８公報等で報告されている。また、タイヤ周方向にパイプ状の空間をもたせたものが特開平７−８１３１６号公報にて提案されている。これらはいずれも、氷結路面でのタイヤ踏面から湧き出てきて形成された水膜を効率的に排水することを重要な改良点としている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
氷結路面走行時にタイヤ踏面から湧き出てきて形成された水膜を排水する効果（以下単に「除水効果」と称する）は、従来の発泡ゴムや短繊維を用いたものに比し、前記特開平７−８１３１６号公報に開示されている構造のものが、より効果的であるが、かかる構造は周方向すべてに溝を設けているため、耐摩耗性、一般路における走行性能が著しく低下してしまうという問題点を有している。
【０００４】
そこで本発明の目的は、耐摩耗性や一般路における走行性能を損なうことなく除水効果を大幅に高め、氷上性能を向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の課題を解決すべく鋭意検討した結果、タイヤトレッドを発泡ゴム層より構成し、該発泡ゴム層の独立気泡の形状を所定の円筒形状とし、かつそれをタイヤ周方向に実質的に配向させることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【０００６】
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、タイヤトレッドの少なくとも路面と実質的に接する面に発泡ゴム層を設けた空気入りタイヤにおいて、
前記発泡ゴム層が直径４０〜６０μｍおよびアスペクト比２．０以上の円筒状の独立気泡を含有し、該円筒状の独立気泡がタイヤ周方向に実質的に配向してなることを特徴とするものである。
【０００７】
前記発泡ゴム層の発泡率は、好ましくは５〜３０％である。
【０００８】
タイヤ周方向に対する延伸弾性率（ａ）とタイヤ横方向に対する延伸弾性率（ｂ）との比（ａ／ｂ）は、好ましくは１．１以上である。
【０００９】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りタイヤにおけるトレッドの発泡ゴム層の独立気泡は円筒状であることを要し、その直径が３０〜６０μｍ、好ましくは４０〜６０μｍで、アスペクト比（図１に示す長さＬと直径Ｄとの比Ｌ／Ｄ）が２．０以上、好ましくは５．０以上である。この直径が３０μｍ未満では氷上性能の改良効果が小さく、一方６０μｍを超えると耐摩耗性が低下する。また、アスペクト比が２．０未満であると、独立気泡を円筒状にしたことによる除水効果の向上があまり望めなくなり、好ましくない。
【００１０】
また、本発明においては、かかる円筒状の独立気泡がタイヤ周方向に実質的に配向してなる。タイヤ周方向に実質的に配向する円筒状の独立気泡が、氷結路面走行時にタイヤ踏面の水膜を排水する流路を形成し、これにより除水効果が高められ、氷上性能が従来の発泡トレッドに比し大幅に向上することになる。
【００１１】
円筒状の独立気泡の配向の程度を表す指標として、タイヤトレッドのタイヤ周方向に対する延伸弾性率（ａ）とタイヤ横方向に対する延伸弾性率（ｂ）との比（ａ／ｂ）で表すことができ、好ましくはａ／ｂが１．１以上となるように独立気泡を配向させる。
【００１２】
さらに、本発明においては、前記発泡ゴム層の発泡率は、好ましくは５〜３０％である。５％未満では氷上性能の改良効果が小さく、一方３０％より大きいと耐摩耗性が低下する。
【００１３】
本発明に用いられる発泡ゴム層の作製において、発泡剤として、例えば、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウムおよび窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、Ｎ，Ｎ’−ジメチル−Ｎ，Ｎ’−ジニトロソフタルアミド、アゾジカルボンアミド、Ｎ，Ｎ’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ｐ，ｐ’−オキシ−ビス（ベンゼンスルホニルヒドラジド）、ｐ−トリエンスルホニルセミカルバジド、ｐ，ｐ’−オキシ−ビス（ベンゼンスルホニルセミカルバジド）等が挙げられ、加硫温度に応じてこれらを適宜選択して使用する。また、発泡助剤としては尿素等が挙げられる。
【００１４】
また、円筒状の独立気泡を形成させるには、例えば、上述の発泡剤および発泡助剤を加硫温度で分解するような円筒状のカプセルに予め詰め込み、該カプセルをゴム組成物に配合すればよい。かかる円筒状の独立気泡は、トレッドゴムの押出時にタイヤ周方向に配向する。
【００１５】
発泡ゴム層のマトリックスゴムのゴム成分としては、天然ゴム（ＮＲ）、ポリブタジエンゴム（ＢＲ）や、その他のゴムとのブレンドを用いることができ、特に制限されるべきものではない。
【００１６】
また、本発明の発泡ゴム層には、上述した配合成分の他、カーボンブラック等の充填剤、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤、加硫剤、シランカップリング剤、分散剤、ステアリン酸、亜鉛華、軟化剤、例えば、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系可塑剤、液状ポリマー（液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム）等を適宜配合することができる。
【００１７】
また、本発明の空気入りタイヤにおいては、発泡ゴム層がトレッド部の外側（上層）にあり、内側には他のゴム層を持つ、いわゆるキャップ・ベース構造としてもよい。
【００１８】
【実施例】
次に本発明を実施例および比較例により、具体的に説明する。
従来例、実施例、比較例１，２
下記の表１に示す配合処方に従い、各種供試タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。
得られた各ゴム組成物を用いて供試タイヤを作製した。発泡ゴムの性質及びタイヤ性能に関する各試験方法を以下に示す。
【００１９】
（イ）平均発泡径
平均気泡径は、試験タイヤのトレッドゴムからブロック状の試料を切出し、その試料断面の写真を倍率１００〜４００倍の光学顕微鏡で撮影し、２００個以上の独立気泡の気泡直径を測定し、算術平均値として表した。
【００２０】
（ロ）アスペクト比
平均発泡径の測定と同様にして、２００個以上の独立気泡の気泡直径（Ｄ）および長さ（Ｌ）を測定し、長さと直径の比（Ｌ／Ｄ）を算出し、その算術平均値として表した。
【００２１】
（ハ）発泡率Ｖ_Ｓ
平均発泡径測定のときと同様のブロック状の試料の密度ρ_１ （ｇ／ｍ^３ ）を測定し、一方、無発泡ゴム（固相ゴム）の密度ρ_０ を測定し、次式より求めた。
Ｖ_Ｓ ＝（ρ_０ ／ρ_１ −１）×１００（％）
【００２２】
（ニ）氷上性能
１１Ｒ２２．５サイズの各試験タイヤをターンテーブル上の氷結路面に押し付け、ターンテーブルの停止距離を測定した。このとき、速度２０ｋｍ／時、荷重２７２５ｋｇ、路面温度−２℃とした。氷上性能は従来例の停止距離を１００として指数表示した。数値が大きい程結果が良好である。
【００２３】
（ホ）耐摩耗性
１１Ｒ２２．５サイズの各試験タイヤをトラックに装着し、２万ｋｍ走行後のトレッドの摩耗量を測定した。耐摩耗性は従来例の摩耗量を１００として指数表示した。数値が大きい程結果が良好である。
得られた結果を下記の表１に併記する。
【００２４】
【表１】

＊ジニトロソペンタメチレンテトレミン（ＤＰＴ）と尿素との混合物が混合比１／１（＝ＤＰＴ／尿素）で詰め込まれたカプセル（直径：２０μｍ，長さ：５００μｍ）
【００２５】
図２に従来例のトレッド表面１と実施例のトレッド表面とを比較して示す。従来例の（イ）では気泡断面２が実質的に円形であるのに対し、実施例の（ロ）では細長い楕円形状をしている。表１から明らかなように、実施例では従来例に比し耐摩耗性は変わらずに氷上性能が大幅に向上している。
【００２６】
一方、発泡径が２０μｍと小さい比較例１では、氷上性能の改良効果があまり観られない。逆に、発泡径が１００μｍと大きい比較例２では氷上性能は向上するものの、耐摩耗性が低下してしまっている。
【００２７】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明の空気入りタイヤは、上記構成としたことで従来の発泡タイヤに比し、耐摩耗性等のタイヤ諸性能を低下させることなく氷上性能において、より優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】発泡ゴム層における円筒状の独立気泡の直径Ｄと長さＬを示す説明図である。
【図２】（イ）は従来例のトレッド表面の拡大図である。
（ロ）は実施例のトレッド表面の拡大図である。
【符号の説明】
１ トレッド面
２ 発泡孔
Ｄ 直径
Ｌ 長さ

Claims (3)

1. タイヤトレッドの少なくとも路面と実質的に接する面に発泡ゴム層を設けた空気入りタイヤにおいて、
   前記発泡ゴム層が直径３０〜６０μｍおよびアスペクト比２．０以上の円筒状の独立気泡を含有し、該円筒状の独立気泡がタイヤ周方向に実質的に配向してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
2. 前記発泡ゴム層の発泡率が５〜３０％である請求項１記載の空気入りタイヤ。
3. タイヤ周方向に対する延伸弾性率（ａ）とタイヤ横方向に対する延伸弾性率（ｂ）との比（ａ／ｂ）が１．１以上である請求項１または２記載の空気入りタイヤ。

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