JP3589281B2 - 等速形自在軸継手の外輪部における外輪部材と軸部材との結合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、等速形自在軸継手の外輪部における外輪部材と軸部材との結合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術による等速形自在軸継手の外輪部における外輪部材と軸部材との結合方法には、例えば特開平8−49727号公報に開示されている次のような方法がある。
【0003】
等速形自在軸継手の外輪部における外輪部材1の底部1aに円形の結合孔部4を形成し、その内周面に多角形面又はセレーション溝を形成し、内周面を浸炭焼入れや高周波焼入れ等の表面硬化処理を施し、その結合孔部4に軸部材5の端部に形成した突出部7を圧入嵌合し、更に、外輪部材1内部に突出した突出部7を先端面をカシメ具9により軸方向に打撃して突出部7をの先端にカシメ部14を形成して外輪部材1と軸部材5とを抜け止め・回り止めして固着結合する。(特開平8−49727号公報・要約図参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の技術による等速形自在軸継手の外輪部における外輪部材と軸部材との結合方法では次のような問題点がある。
(1)軸部材5の突出部7を外輪部材1の結合孔部4に圧入嵌合させることにより結合孔部4におけるセレーション又は多角形状を軸部材5の突出部7に転写させて回転方向に拘束した結合を得ているので、軸部材5の突出部7と外輪部材1の結合孔部4とに硬度差が必要である。
【0005】
従って、外輪部材1の結合孔部4に対し浸炭焼入れや高周波焼入れ等の表面硬化処理が必要となる。
浸炭焼入れは、処理に数時間を要し、その後の結合工程と一連の工程とすることができない。
高周波焼入れは、短時間の処理であるので、その後の結合工程と一連の工程とすることが可能であるが、浸炭焼入れに比し得られる表面硬度が低く、又熱処理により発生する歪が大きいので、結合工程のための結合部分の寸法精度が悪くなる。
【0006】
(2)外輪部材の結合孔部に軸部材の突出部を圧入嵌合させるために、圧入時の荷重を高くする必要があり、嵌合部にかかる負荷により、外輪部材の割れ及び変形の発生の恐れがある。
上記の従来の技術の欠点を避けるために、軸部材5の突出部7と外輪部材1の結合孔部4との両者にセレーションや多角形状を成形して両者を遊嵌し、突出部7の先端面をカシメ具9により打撃して結合した場合、その対向面間の隙間により回転方向の拘束が不完全となる。又軸部材5の突出部7のセレーションや多角形の成形加工が突出部の基部までは不可能となり、これを避けるために結合孔部4にヌスミが必要となり、結合が不完全となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明による等速形自在軸継手における凹溝部が内周面に形成されたカップ体であり、底部には軸部材先端の結合端部が嵌め込まれる非円形の結合孔が貫通されている外輪部材と結合されて等速形自在軸継手の外輪部を構成する軸部材を製造する製造方法は、次のような工程を行う。
【0008】
(1)軸部材の結合端部の先端面から軸方向に所要距離離れた位置の外周面に所要径の鍔部を形成する。
(2)軸部材の先端面から鍔部までの間の軸部材の断面形状を非円形の結合孔に対応する非円形に形成し、結合端部とする。
(3)結合端部の基部の鍔部を、結合端部にかぶさるように結合端部側に向って変形させ、その先端縁を結合される外輪部材に対する止め部とすると共に結合端部の外周面との間に環状凹溝部を形成する。
そして、結合端部の断面形状が非円形が、例えば多角形又は外周面にセレーション形状が形成された円形である。
【0009】
又、この発明による等速形自在軸継手における凹溝部が内周面に形成されたカップ体であり、底部には軸部材先端の結合端部が嵌め込まれる非円形の結合孔が貫通されている外輪部材と、外輪部材の結合孔に遊嵌し得る寸法・断面形状であり、その基部に外輪部材が当接する止め部が形成され、先端面に凹穴部が形成された結合端部をもつ軸部材とを結合する結合方法は、次の工程を行う。
【0010】
(1)軸部材の結合端部に外輪部材の結合孔を外輪部材の底外面が結合端部の止め部に当るまで嵌め込み、結合端部を外輪部材の底部内面から適宜長さ突出させる。
(2)軸部材の結合端部の先端面に形成された凹穴部に丁度嵌合する形状寸法のマンドレルを嵌め込み、外輪部材の底部内面から突出した結合端部の凹穴部周辺の端面をかしめパンチで打撃する。
【0011】
(3)前記打撃により、軸部材の結合端部の外周面を外方に押し広げると共に、結合端部の端面を外輪部材の底部の結合孔周辺の内面にかぶせる。
そして、結合孔の非円形及び結合端部の断面形状の非円形は、多角形又は夫々の内周面及び外周面にセレーション形状が形成された円形である。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態における外輪部材と軸部材とから構成された等速形自在軸継手の一方の部材である外輪部の製造に際しての軸部材の製造方法及びその軸部材と外輪部材との結合方法について説明するのに当って、先ず、等速形自在軸継手自体について図面に従って説明する。
【0013】
トリポード形軸継手として例示された等速形自在軸継手は、図1に示すように軸部材10の先端にカップ状の外輪部材20が結合された外輪部Aと夫れ夫れが転動体、例えば球面ローラCを回転自在に支持した3本のトリポード軸40aが円周等間隔(120度間隔)で放射方向に外周面から突出した内輪部材40が軸部材30の先端に結合された内輪部Bとが球面ローラCを介して接続されて構成されている。即ち、球面ローラCを支持した内輪部材40が外輪部材20内に挿入され、外輪部材20の内周面に平行に列設された軸方向の各凹溝部21に内輪部材3に支持された球面ローラCが係合されている。
【0014】
外輪部Aの外輪部材20は、図2及び図3に示すように、球面ローラCが係合する凹溝部21,21,21を円周等配に形成して、略クローバ葉形状の断面となったカップ体であり、底部22には軸部材1の結合端部12の小径部14(後出)が嵌め込まれる結合孔23が貫通されている。結合孔23は非円形孔である。例えば、多角形孔であったり、図示の例のように内周面にセレーションが形成された円形孔であったりする。
【0015】
外輪部Aの軸部材10は、次のようにして形成される。
(1)先端面に円筒形凹部11が形成され、鍔部14aが形成された軸部材10の素材10aを鍛造で成形して用意する。(図4参照)
場合によっては、例えば特開平8−49727号公報に記載の結合方法に適用する場合には、円筒形凹部11は省略されていてもよい。
この実施の形態においては、特許請求の範囲請求項3に記載の発明に適用するべく円筒形凹部11が形成された素材10aで説明する。
【0016】
(2)素材10aは、ダイスD1に装填される。その場合、ダイスD1の段部に鍔部14aが支えられ、結合端部は、中心から順に同心的に嵌挿されたマンドレルM、押えリングR、内周面にセレーション成形刃を備えたパンチP1から成る工具が嵌挿されるダイスD1の大径部に突出する。そして、鍔部14aの外径は、ダイスD1の大径部の径より適宜小さい。
そして、押えリングR及びパンチP1は、結合端部の先端面に当接すると共に、マンドレルMは、円筒形凹部11内に押し込まれる。(図5右半分参照)
【0017】
(3)押えリングRは、結合端部の先端面を押圧して、マンドレルMと共にダイスD1に素材10aを固定すると共に、パンチP1が押込まれ、セレーション成形刃により結合端部13の外周面にセレーション成形が施される。セレーション成形刃は、軸方向先端が図示のようにテーパが付けられているので、切り上がりが可能である。
それと共に、ダイスD1の段部に支えられた鍔部14aに対しパンチPの先端面により打撃が加えられ、鍔部14aは、ダイスD1の大径部に相当する所定寸法にまで拡大し、鍔部14に成形される。(図5左半分参照)
【0018】
(4)次に、素材10aは、ダイスD2に装填される。その場合、ダイスD2のしごき段部に鍔部14が支えられる。
そして、マンドレルMに相当する先端小径部と鍔部14の外径に相当する大径部とからなり、ダイスD2に嵌挿されるパンチP2の先端小径部は円筒形凹部11内に押し込まれると共に、段部は結合端部の先端面に当接する。(図6右半分参照)
【0019】
(5)そして、パンチP2の押し込みにより、鍔部14は、ダイスD2のしごき段部により結合端部13側へ向って押し曲げられ、セレーション13aの切り上がり部に円筒状にかぶさるように変形し、環状凹溝部15が成形される。(図6左半分参照)
しごき加工において、必要に応じて、先端縁が環状凹溝部15に相当する型が結合端部13側から鍔部14に当てられていてもよい。
【0020】
(6)彎曲断面の鍔部14の軸方向の環状先端面は、同一平面上になるよう仕上げ切削される。
セレーション13aの切り上がり部の外周に変形された鍔部14で囲われた環状凹溝部15は、液状シールやOリング等のシール材溜りとして利用され得るし(図4参照)、鍔部14の軸方向の環状先端面14aは、後述のようにカップ状の外輪部材20のストッパとして機能する。従って、後述する外輪部材20の嵌め込みに際して、セレーションの切り上がり部が影響しない。
【0021】
かくして、先端面に円筒形凹部11及び外周端面12が形成されており、先端部がセレーション13a形成の結合端部13となり、結合端部13の基部には環状凹溝部15及びその周囲の鍔部14が形成された外輪部Aの軸部材10が製造される。そして鍔部14の軸方向の環状先端面14aと軸部材10の端面、即ち結合端部13の外周端面12との間の軸方向の寸法は、後述のようにカップ状の外輪部材20の底部の厚さより適宜の寸法だけ大きい。
【0022】
外輪部Aの外輪部材20は、図2及び図5に示すように、球面ローラCが係合する凹溝部21,21,21を円周等配に形成して、略クローバ葉形状の断面となったカップ体であり、底部22には軸部材1の結合端部13の結合端部13が遊嵌され結合孔23が貫通されている。結合孔23の内周面にセレーション23aが形成されている。
上記のような外輪部材20は板金材から塑性加工により形成される。
【0023】
等速形自在軸継手の外輪部Aは、軸部材10と外輪部材20と結合されて構成されているが、その結合は、次のような工程で行われる。
先ず、図6(a)に示すように、軸部材10の結合端部13の結合端部13に外輪部材20の結合孔23を、外輪部材20の底外面が軸部材10の鍔部14の環状先端面14aに当るまで嵌め込む。その嵌め込みはセレーション同士13a,23aを合わせて抵抗なく容易に行い得る。そして、外輪部材20の結合孔23が嵌め込まれた軸部材10の結合端部13は、外輪部材20の底部の厚さより適宜の寸法だけ長いので、先端面が外輪部材20の底内面より突出している。
【0024】
次に、結合端部13の円筒形凹部11に丁度嵌まる円筒状のマンドレルMとその外周に滑動可能に嵌められた中空円筒のかしめパンチP3とが用意される。かしめパンチP3の肉厚は、軸部11の結合端部13の外周端面12の幅より多少大きい程度である。円筒形凹部11が省略されている場合には、かしめパンチP3が中実のものでもよい。
【0025】
外輪部材20の結合孔23が十分に嵌め込まれた軸部材10に対してマンドレルMを同心位置において対向接近させ、先端が結合端部13の円筒形凹部11の底内面に当接するまで嵌め込み押圧する(又は結合端部13の先端面に熱接するまで押圧する)(図6(a)参照)。
それから、マンドレルMの外周に滑動可能に嵌められた中空円筒のかしめパンチP3により、マンドレルMの案内の下、軸部11の結合端部13の外周端面12に対して軸方向に打撃を加える。
【0026】
すると、外輪部材20の底内面より突出している結合端部13の突出部分は、結合孔23の縁部から底内面にかぶさるように外周に向って拡がりかしめられると共に、結合端部13は管状となり、その肉厚は変形し易いが、内周面側はマンドレルMにより拘束されているので、外周面側は拡径し、結合端部13の外周面のセレーション13aは、外輪部材20の結合孔23の内周面のセレーション23aに十分に食い込む(図6(b)参照)。
【0027】
かくして、外輪部材20の結合孔23の周辺は、軸部材10の軸部材10の鍔部14の環状先端面14aと結合端部13の突出部分のかしめ部との間に挟まれて、軸部材10と外輪部材20とは軸方向に強固に結合される。
それと共に、結合端部13の外周面のセレーション13aが外輪部材20の結合孔23の内周面のセレーション23aに強固に食い込むことにより、軸部材10と外輪部材20とは回転方向に強固に結合される。
【0028】
結合端部13の外周面と外輪部材20の結合孔23の内周面とが、セレーションでなく、共に多角形であり、互に遊嵌されるものであってもよい。
なお、上記の実施の形態における等速形自在軸継手は、ローラを介してトルク伝達を行うトリポード形軸継手であるが、他の形式の等速形自在軸継手、例えばボールを介してトルク伝達を行うバーフィールド形軸継手等であってもよい。
【0029】
【発明の効果】
この発明の製造方法で製造された軸部材と外輪部材とをこの発明の結合方法で結合する場合には、軸部材の断面形状が外輪部材の結合孔への圧入による転写でないので、外輪部材の結合孔の周辺の熱処理は不要の上、外輪部材の結合孔と軸部材の結合軸端部との嵌め合いが圧入でなく、抵抗ない挿入によるので、外輪部材の結合孔周辺の割れや変形が生じない上、一工程のかしめパンチの打撃により、外輪部材と軸部材とに対し軸方向及び回転方向に拘束された強固な結合を与えることができる。
【0030】
又、マンドレルの外周に滑動可能に嵌められた中空円筒のかしめパンチは、軸部材の小径部に略等しい径でよく、外輪部材の底部と干渉しないので、外輪部材の底部の形状の自由度は増す。
更に軸部材の結合端部の基部の鍔部を、結合端部にかぶさるように結合端部側に向って変形させ、その先端縁を結合される外輪部材に対する止め部とすると共に結合端部の外周面との間に環状凹溝部を形成しているので、結合における非円形部が完全に有効となると共に環状凹溝部はシール材溜りとして利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態における結合方法により軸部材と外輪部材とが結合された外輪部が構成する等速形自在軸継手の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態における結合方法により結合される等速形自在軸継手の軸部材と外輪部材との断面図である。
【図3】この発明の実施の形態における結合方法により軸部材に結合される外輪部材の側面図である。
【図4】この発明の実施の形態における軸部材の製造方法の説明図である。
【図5】この発明の実施の形態における軸部材の製造方法の説明図である。
【図6】この発明の実施の形態における軸部材の製造方法の説明図である。
【図7】この発明の実施の形態における軸部材の拡大図である。
【図8】この発明の実施の形態における軸部材と外輪部材との結合方法の説明図である。
【図9】図8の詳細説明図である。
【符号の説明】
A 外輪部
10 軸部材
11 円筒形凹部
12 外周端面
13 結合端部
13a セレーション
14 鍔部
14a 環状先端面
15 環状凹溝部。
20 外輪部材
21 凹溝部
22 底部
23 結合孔
B 内輪部
30 軸部材
40 内輪部材
40a トリポード軸
C 球面ローラ
D1,D2 ダイス
M マンドレル
R 押えリング
P1,P2 パンチ
P3 かしめパンチ
Claims (2)
- 等速形自在軸継手における凹溝部が内周面に形成されたカップ体であり、底部には軸部材先端の結合端部のが嵌め込まれる非円形の結合孔が貫通されている外輪部材と、外輪部材の結合孔に遊嵌し得る寸法・断面形状であり、その基部に外輪部材が当接する止め部が形成され、先端面に凹穴部が形成された結合端部をもつ軸部材とを次の工程で結合する結合方法。
(1)軸部材の結合端部に外輪部材の結合孔を外輪部材の底外面が結合端部の止め部に当るまで嵌め込み、結合端部を外輪部材の底部内面から適宜長さ突出させる。
(2)軸部材の結合端部の先端面に形成された凹穴部に丁度嵌合する形状寸法のマンドレルを嵌め込み、外輪部材の底部内面から突出した結合端部の凹穴部周辺の端面をかしめパンチで打撃する。
(3)前記打撃により、軸部材の結合端部の外周面を外方に押し広げると共に、結合端部の端面を外輪部材の底部の結合孔周辺の内面にかぶせるように外周に向って拡げかしめる。 - 結合孔の非円形及び結合端部の断面形状の非円形が、多角形又は夫々の内周面及び外周面にセレーション形状が形成された円形である請求項1に記載の結合方法。
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