JP3587997B2 - 建築用積層パネルとそれを使用した建物構造 - Google Patents

建築用積層パネルとそれを使用した建物構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は木造住宅や鉄骨住宅等の建物を建築する際に使用される建築用積層パネルと、それを使用した建物構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日の住宅やビル等の建物は2×4工法、パネル工法といった様々な工法で作られている。何れの工法で作られる場合も、冷暖房システムにより快適な住環境が得られる様にしてある。この場合、冷暖房効率を高めて省エネルギー化を実現するために、室内構造が高気密化、高断熱化されている。しかし、そのような構造にすると壁面の室内側や壁の内側に結露が発生し易くなり、その周囲の土台や柱が腐食して建物の耐久性が低下するといった問題がある。
【0003】
各種工法のうちパネル工法において結露の問題を解決するために図5(a)に示すようなパネル材が開発されている。このパネル材は図5(a)に示すように長方形の構造用合板Aの一方の面に枠材Bを取付け、同枠材Bと構造用合板Aとによって囲まれた空間内に断熱材Cを充填すると共に、構造用合板Aの他方の面に、同構造用合板Aよりやや横幅が狭く、表裏面に多数の凸部Dが突設されたポリスチレン製の通気ボードEを貼り、同通気ボードEより外側にはみ出した構造用合板Aの側縁四隅に、外仕上げ材Gを取り付けるための下地材Fを取付けてなるものである。尚、図5(a)に示した凸部Dは全体のうちの一部であり、実際には凸部Dは縦横に連続的に突設されている。
【0004】
図5(a)に示すパネル材は通気ボードEを外側に向けて建物の土台と桁材の間、又は上下の桁材の間に配置してから、図5(b)に示す様に通気ボードEの表面に前記下地材Fを利用して外仕上げ材Gを取付け、断熱材Cの表面に内仕上げ材Hを取付けることによって建物の内壁や外壁を形成すると、同図に示す様にパネル材の通気ボードEに突設されている前記凸部Dによって、同通気ボードEと構造用合板Aの間及び通気ボードEと外仕上げ材Gとの間に通気層Iが形成され、この通気層Iから湿気が排出されて壁内部や壁表面の結露の発生が防止されるようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記図5(a)に示すパネル材は、結露の発生防止という所期の目的を達成するものではあるが次のような課題があった。
(1)ポリスチレン製の通気ボードを製作するには専用の機械や設備を必要とするため、コストが高くなる。
(2)近年、林業の盛んな地域を中心として、木造建築の良さを見直し、当該地域の特産品である県産材を使用して建物を建築しようとする動きが活発になっているが、ポリスチレン製の通気ボードを使用するパネル材ではこのような社会の要請に十分対応できない。
(3)また、間伐材を有効利用して資源保護を図ろうとする動きも活発になっているが、ポリスチレン製の通気ボードを使用するパネル材ではこのような要請にも対応できない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、壁内部や壁表面の結露の発生を防止できることは勿論のこと、県産材や間伐材を有効利用しようとする社会の要請にも応えることができる建築用積層パネルと、それを使用した建物構造に関するものである。
【0007】
本件出願の請求項1記載の建築用積層パネルは、複数枚の帯状幅の木製下板を所定間隔で並べて、隣接する木製下板間に木製下板の幅よりも狭い幅の下層隙間を形成し、それら木製下板の上にそれと位置をずらして複数枚の帯状幅の木製上板を斜めに又は縦横に交差させて所定間隔で並べて下層隙間の一部を閉塞するように積層すると共に、隣接する木製上板間に木製上板の幅よりも狭い幅の上層隙間を下層隙間の非閉塞部と連通するように形成し、積層した木製下板と木製上板を固定し、その表面と裏面の一方又は双方に不燃材、難燃材、断熱材、吸湿材、吸音材の1種又は2種以上が積層されたものである。
【0008】
本件出願の請求項2記載の建築用積層パネルは、請求項1記載の建築用積層パネルにおいて、積層して固定された木製下板と木製上板表面と裏面の一方又は双方に断熱材又は吸湿材又は吸音材が積層され、その上に不燃材又は難燃材が積層されたものである。
【0009】
本件出願の請求項3記載の建物構造は、請求項1又は請求項2記載の建築用積層パネルを、下層隙間同士又は上層隙間同士が繋がるようにして、且つ不燃材又は難燃材を屋内側にして二枚以上並べて、建物の壁板又は床板又は屋根裏板又は天井板としたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の建築用積層パネルの第1の実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。図1に示す建築用積層パネルは同図(a)、(b)に示す様に例えば約30度傾斜させた木製下板1を一定間隔で複数並べて夫々の木製下板の間に約4cmの下層隙間2を形成し、その木製下板1の上に、同木製下板1と同一形状の木製上板3を、前記木製下板1とは逆方向に例えば約30度傾斜させると共に、一定間隔で並べて夫々の木製上板3の間に、前記下層隙間2に連通する約4cmの上層隙間4を形成した状態で、上下の木製下板1と木製上板3とを釘5によって固定してから、周縁をカットして全体として長方形に成形してから、裏面に板状の不燃材を張設してなるものである。尚、本実施例では木製下板1及び木製下板3は、図1(a)に示す様に共に幅(w)を900mm〜1000mm、高さ(h)を120mm、厚み(t)を15mmとした。また、不燃材として鉄板(例えば銅板)7を張設した。不燃材7は鉄板以外のものであっても良いが、鉄板を用いると強度が高まり、白蟻対策にもなる。尚、上記数値は一例であり、これ以外とすることもできる。
【0011】
前記木製下板1及び木製上板3の原料となる木材には材木にすることを目的として育成された杉、桧、ヒバ、松や集成材等を使用することもできるが、間伐材や県産材を使用するのが望ましい。即ち、間伐材を使用すれば現在処理に苦慮している間伐材の有効利用を図ることができ、県産材を使用すれば地域林業の活性化が図れる。
【0012】
(使用例)
図1に示す本発明の建築用積層パネル6を使用して建物の壁を施工するには例えば次の様にする。
1)図2に示す様に建物の土台10及び棟桁11の外側(屋外側)に、同土台10及び棟桁11の長手方向に沿って本発明の建築用積層パネル6を複数枚取り付ける。このとき本発明の建築用パネル6は、不燃材7を内側(屋内側)に向けた状態で取り付ける。また、図2に示す様に隣り合う建築用積層パネル6の隙間2又は4同士が繋がるように並べる。
2)図2に示す様に土台10及び棟桁11の内側(屋内側)に、先に取り付けた本発明の建築用積層パネル6と対抗するように別の建築用積層パネル6を夫々取り付ける。この場合も隣り合う建築用積層パネル6の隙間2又は4同士が繋がるように並べることは上記と同様である。これによって土台10及び棟桁11を挟んで屋内側と屋外側に本発明の建築用積層パネル6が夫々取り付けられる。
3)図3に示す様に屋外側に取り付けた建築用積層パネル6の表面に外仕上げ材8を張り、屋内側に取り付けた建築用積層パネル6の表面に内仕上げ材9を張る。
4)以上によって建物の壁(内壁及び外壁)施工することができる。尚、壁の防音効果や断熱効果を高めたい場合には、屋外側の建築用積層パネル6と、屋内側の建築用積層パネル6との間に必要に応じて吸音材や断熱材を配置する。
【0013】
以上の様にして建物の壁を施工すると土台10及び棟桁11の屋外側に取り付けた本発明の建築用積層パネル6においては、図3(a)、(b)に示す様に不燃材7と外仕上げ材8の間に位置することとなる前記隙間2、4が通気路となる。同様に土台10及び棟桁11の屋内側に取り付けた本発明の建築用積層パネル6においては、不燃材7と内仕上げ材9の間に位置することになる前記隙間2、4が通気路となる。これによって建物の壁の内側に通気路が形成され、図3(a)に矢印で示す様に同通気路を通って空気が移動するため壁の内側に湿気がこもることがなくなる。尚、図3(a)、(b)に示す本発明の建築用積層パネル6では説明の都合上、外仕上げ材8と内仕上げ材9の双方が張設されているが、実際には外仕上げ材8又は内仕上げ材9の何れか一方のみを張設する。
【0014】
以上は本発明の建築用積層パネル6を使用して建物の壁を施工する場合の例であるが、図4に示す様に本発明の建築用積層パネル6を使用して建物の床、屋根裏、天井裏等を施工することもできる。即ち、パネル工法によって施工することのできる部分であればいかなる部分であっても施工することができる。従って、本発明の建築用積層パネル6を使用して床、壁、屋根裏板、天井裏板の全てを施工すれば、建物全体に通気路が張り巡らされるため、建物内に自然なエアーサイクルが形成されて通気性の良い建物となる。尚、図4には図示されていないが、本発明の建築用積層パネル6を使用して床等を施工する場合は床、屋根裏板、天井裏板等の夫々の用途に応じた仕上げ材を張る。また、必要に応じて補強材(例えば構造用合板)を配置する。
【0015】
(他の実施の形態)
図1に示す本発明の建築用積層パネルは、裏面に不燃材7を張設したものであるが、この不燃材7に替えて吸音材、吸湿材、断熱材等を張設することもできる。この場合は、上記使用例に示す様に屋外側の建築用積層パネル6と屋内側の建築用積層パネル6との間に吸音材や断熱材を配置する必要はない。また、裏面に張設したこれら吸音材、吸湿材、断熱材等の上に不燃材2を重ねて張設しても良い。また、上記不燃材2は難燃材に代えることもできる。何れにしても不燃材2又は難燃材3は鉄板以外の合成樹脂、複合繊維等であっても良い。
【0016】
木製下板1及び木製上板3の大きさ、形状、配置間隔、傾斜角度等は上記のものに限定されるものではなく所望の大きさ、形状、配置間隔、傾斜角度とすることができる。また、吸音材、吸湿材、防音材、仕上げ材等は従来から存在する各種のものをそのまま使用することもでき、本発明の建築用積層パネル用に新たに開発したものを使用することもできる。
【0017】
【発明の効果】
本件出願の請求項1記載の建築用積層パネルは、複数枚の帯状幅の木製下板を所定間隔で並べて、隣接する木製下板間に木製下板の幅よりも狭い幅の下層隙間を形成し、それら木製下板の上にそれと位置をずらして複数枚の帯状幅の木製上板を斜めに又は縦横に交差させて所定間隔で並べて下層隙間の一部を閉塞するように積層すると共に、隣接する木製上板間に木製上板の幅よりも狭い幅の上層隙間を下層隙間の非閉塞部と連通するように形成し、積層した木製下板と木製上板を固定し、その表面と裏面の一方又は双方に不燃材、難燃材、断熱材、吸湿材、吸音材の1種又は2種以上が積層されたものであるため次のような効果がある。
(1)上層隙間を下層隙間の非閉塞部と連通するように形成したので、下層隙間と上層隙間間に通気路が形成されるので、建築用積層パネルを壁板、床板、屋根裏板、天井板として使用すれば、壁、床、屋根裏、天井裏の結露が防止される。
(2)積層した木製下板と木製上板の表面と裏面の一方又は双方に不燃材、難燃材、断熱材、吸湿材、吸音材の1種又は2種以上が積層されているので、不燃材や難燃材を積層したときは耐熱、耐火性に優れ、万一、建物の内部で火災が発生しても隣接する部屋や別の建物に延焼しにくい。また、隣接する別の建物で発生した火災の飛び火を受けても火災になることがない。
(3)断熱材を積層したときは断熱性に優れ、建物の断熱効果が高まり、省エネルギー化が図られる。
(4)吸湿材を積層したときは吸湿材に優れ、壁、屋根裏、床等の内側の湿気が吸収されため、更に結露が発生しにくい。
(5)吸音材を積層したときは吸音性に優れ、特別な防音措置を講じなくても防音効果の高い建物を施工することができる。
(6)木材を使用するため、間伐材や県産材の有効利用を図ることができる。
(7)構造が簡潔であるため製作が容易であり、特別の施設や機械を必要としないので低コストで製作することができる。
(8)化学材料を使用していないので廃棄処理をしても環境を汚染することがない。
【0018】
本件出願の請求項2記載の建築用積層パネルは、請求項1記載の建築用積層パネルにおいて、積層して固定された木製下板と木製上板の表面と裏面の一方又は双方に断熱材又は吸湿材又は吸音材が積層され、その上に不燃材又は難燃材を積層したので、請求項1記載の建築用積層パネルの効果と同様の効果があり、更に、次のような効果もある。
(1)断熱材を積層し、断熱材の上に不燃材或は難燃材を積層すれば、断熱材と不燃材或は難燃材の双方の効果が得られる。
(2)吸湿材を積層し、吸湿材の上に不燃材或は難燃材を積層すれば、吸湿材と不燃材或は難燃材の双方の効果が得られる。
(3)吸音材を積層し、吸音材の上に不燃材或は難燃材を積層すれば、吸音材と不燃材或は難燃材の双方の効果が得られる。
【0019】
本件出願の請求項3記載の建物構造は、請求項1又は請求項2記載の建築用積層パネルを、下層隙間同士又は上層隙間同士が繋がるようにして、且つ不燃材又は難燃材を屋内側にして二枚以上並べて、建物の壁板又は床板又は屋根裏板又は天井板としたので、次のような効果がある。
(1)建築用積層パネルが有する前記の各種効果を備えた建築構造となる。
(2)二枚以上の建築用パネルを下層隙間同士又は上層隙間同士が繋がるようにして並べたので、壁、床、屋根裏、天井裏の内側に下層隙間と上層隙間による通気路が形成され、壁板又は床板又は屋根裏板又は天井板の通気性が向上し、同壁、床、屋根裏、天井裏の結露が防止される。
(3)積層した木製下板と木製上板の表面と裏面の一方又は双方に不燃材、難燃材、断熱材、吸湿材、吸音材の1種又は2種以上が積層されているので、従来の建築用パネルを使用する場合のように、施工した建築用パネルに不燃材、難燃材、断熱材、吸湿材、吸音材等を張る作業が必要なく、工期が短縮され、低コストで建物を建築することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の建築用積層パネルの第1の実施形態を示す斜視図、(b)は(a)のX−X断面図
【図2】本発明の建築用積層パネルの使用例の一例を示す説明図。
【図3】(a)は本発明の建築用積層パネルに内仕上げ材及び外仕上げ材を張った状態を示す、(b)は同断面図。
【図4】本発明の建築用積層パネルの使用例の一例を示す説明図。
【図5】(a)は従来のパネル材の一例を示す斜視図、(b)は同断面図。
【符号の説明】
1 木製下板
2 下層隙間
3 木製上板
4 上層隙間
20 非閉塞部

Claims (3)

  1. 複数枚の帯状幅の木製下板(1)を所定間隔で並べて、隣接する木製下板(1)間に木製下板(1)の幅よりも狭い幅の下層隙間(2)を形成し、それら木製下板(1)の上にそれと位置をずらして複数枚の帯状幅の木製上板(3)を斜めに又は縦横に交差させて所定間隔で並べて下層隙間(2)の一部を閉塞するように積層すると共に、隣接する木製上板(3)間に木製上板(3)の幅よりも狭い幅の上層隙間(4)を下層隙間(2)の非閉塞部(20)と連通するように形成し、積層した木製下板(1)と木製上板(3)を固定し、その表面と裏面の一方又は双方に不燃材、難燃材、断熱材、吸湿材、吸音材の1種又は2種以上が積層されたことを特徴とする建築用積層パネル。
  2. 請求項1記載の建築用積層パネルにおいて、積層して固定された木製下板(1)と木製上板(3)の表面と裏面の一方又は双方に断熱材又は吸湿材又は吸音材が積層され、その上に不燃材又は難燃材が積層されたことを特徴とする建築用積層パネル。
  3. 請求項1又は請求項2記載の建築用積層パネルを、下層隙間(2)同士又は上層隙間(4)同士が繋がるようにして、且つ不燃材又は難燃材を屋内側にして二枚以上並べて、建物の壁板又は床板又は屋根裏板又は天井板としたことを特徴とする建物構造。
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