JP3587830B2 - 医療器具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はロボティックエンドサージェリー等の様にロボットに装着されて診断・処置を行なう医療器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、手術の操作性を高め、機能を拡張するために、例えばロボティックエンドサージェリー等のようにロボットに医療器具を装着し、患者の診断・処置を行うものが考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種のものでは体腔内に挿入される医療器具本体の挿入部、例えば処置具の先端で組織を把持する把持部に触覚センサを設け、組織を把持する時に組織の損傷を防止するようにしている。しかしながら、触覚センサのセンサ自体、または触覚センサの配線が壊れる等の事態が発生した場合には安全性を確保できないおそれがある。このように、触覚センサのセンサ自体の不良が生じた場合には、例えば、処置具が生体組織を押圧する際に、予め設定されている安全値よりも大きな押圧力が生体組織に作用し、生体組織の不容易な穿孔などが発生するおそれがある。
【0004】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、生体組織の不容易な穿孔などを防止することができ、安全性を確保できる医療器具を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、複数のアーム部がそれぞれ関節部を介して回動可能に連結された多関節型マニピュレータの最先端のアーム部に電磁石を配設し、処置具を支持する処置具支持部材を前記最先端アーム部に前記電磁石の電磁力によって係脱可能に吸着させるとともに、
前記処置具の外套管に固定されたベース部材と、前記外套管内に挿入される処置具に固定された処置具固定部と、前記ベース部材に対して前記処置具固定部を前記処置具の挿入方向と反対方向に付勢する付勢手段とを前記処置具支持部材に設け、
前記処置具が生体組織を押す際に前記処置具が生体組織から受ける反力がしきい値を超え、前記処置具支持部材の前記アーム部に対するすべり力が前記電磁石の電磁力を上回る時点で、前記処置具支持部材が前記最先端のアーム部から外れ、前記処置具が生体組織から離脱する処置具離脱手段を設けたことを特徴とする医療器具である。
【0006】
そして、本請求項1の発明では、処置具が生体組織を押す圧力が閾値以上になると、処置具支持部材がアーム部から外れ、処置具が生体組織から離脱することにより、生体組織の不容易な穿孔などを防止するようにしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1(A)乃至図3は医療器具の一例を示すものである。図2は内視鏡下外科手術用の医療器具のシステム全体の概略構成を示すものである。図2中で、1は外部装置の本体である。この外部装置本体1には支持台2上に光源装置3、カメラコントロールユニット(CCU)4、触覚検出制御部5、駆動制御部6、吸引・気腹部7がそれぞれ配設されている。ここで、駆動制御部6には複数の外部操作部8a,8b,8cが接続されている。さらに、CCU4にはTVモニタ9が接続されている。
【0008】
また、10は例えば手術室内のベッド11に装着される医療器具取付け台である。この取付け台10には内視鏡12、第1の処置具13、第2の処置具14等の各種の医療器具が着脱可能に装着される端子部15a,15b,15cが設けられている。
【0009】
また、内視鏡12には体内に挿入される挿入部16と、基端部に連結され、体外に配置される体外配置部17とが設けられている。さらに、体外配置部17にはケーブル18の一端部が連結されている。このケーブル18の他端部はコネクタ19を介して取付け台10のコネクタ受けに着脱可能に連結されている。
【0010】
また、第1の処置具13には体内に挿入される挿入部20と、基端部に連結され、体外に配置される体外配置部21とが設けられており、体外配置部21にはケーブル22の一端部が連結され、このケーブル22の他端部はコネクタ23を介して取付け台10のコネクタ受けに着脱可能に連結されている。
【0011】
さらに、第2の処置具14も第1の処置具13と同様に体内に挿入される挿入部24と、体外に配置される体外配置部25とが設けられ、体外配置部25にはケーブル26の一端部が連結され、このケーブル26の他端部はコネクタ27を介して取付け台10のコネクタ受けに着脱可能に連結される構成になっている。
【0012】
また、取付け台10の端末部には外部接続部28,29が設けられている。これらの外部接続部28,29には外部装置本体1側の接続ケーブル30,31がそれぞれコネクタ30a,31aを介して着脱可能に接続されている。
【0013】
そして、内視鏡12、第1の処置具13、第2の処置具14は取付け台10の内部配線および接続ケーブル30,31を介して外部装置本体1側に接続されており、例えば外部操作部8aによって内視鏡12の動作が制御され、外部操作部8bによって第1の処置具13の動作が制御され、外部操作部8cによって第2の処置具14の動作が制御されるようになっている。さらに、内視鏡12によって撮影される観察画像はTVモニタ9に表示されるようになっている。
【0014】
また、図1(A)は第1の処置具13の挿入部20の先端部を示すものである。この挿入部20にはシース32と、このシース32の先端開口部から外部に突出可能に収容される把持具33とが設けられている。この把持具33の先端部には開閉可能な一対の把持部材34a,34bが設けられている。
【0015】
ここで、少なくとも一方の把持部材34aの内面にはロバスト性を有する触覚センサ35が装着されている。この触覚センサ35には図1(B)に示すセンサアレイである分布型センサユニット36によって形成されている。このセンサユニット36内には複数のセンサ37が略マトリックス状に縦方向および横方向にそれぞれ並設されている。
【0016】
また、図3に示すように各センサ37の奇数行と偶数行をそれぞれ独立の検出回路38によって独立して検出し、その検出値から、1つセンサ出力を出す信号処理回路39が設けられている。なお、図3中で、40は比較回路、41は演算回路である。
【0017】
ここで、各センサ37毎の信号はマトリックス状になった各センサ37を順次スイッチングして読み出すことにより、図1(C)に示す様な時系列で出力される。
【0018】
そして、信号処理回路39では例えば、それぞれ隣り合う2つのセンサ37、例えばC11とC21がほぼ同じ値であれば、加算して平均を計算する。また、一方が断線して出力が適正値より外れていた場合には他方の出力をセンサ出力とする。これらの判断は比較回路40及び演算回路41によって行なわれる。
【0019】
次に、上記構成の作用について説明する。まず、内視鏡下外科手術時にはTVモニタ9に表示される内視鏡12からの観察画像を目視しながら第1の処置具13、第2の処置具14が操作される。そして、第1の処置具13の挿入部20の先端部および第2の処置具14の挿入部24の先端部が患者の体腔内の患部等の目的部位の近くまで導かれる。ここで、第1の処置具13および第2の処置具14がそれぞれ独立に操作され、患部に対する適正な処置が行なわれる。
【0020】
また、第1の処置具13の使用時には外部操作部8bの操作によって把持具33がシース32の先端開口部から外部側に突出され、この把持具33の先端部の把持部材34a,34bが開閉操作される。
【0021】
さらに、把持部材34a,34bの閉動作の途中で、患部等の把持対象組織が把持されると把持部材34aの内面の触覚センサ35によってその感触がただちに検出される。この触覚センサ35の動作時には信号処理回路39によって1つセンサ出力が出される。すなわち、触覚センサ35のセンサユニット36内の各センサ37の奇数行と偶数行がそれぞれ独立の検出回路38によって独立して検出され、その検出値から、1つセンサ出力が出される。
【0022】
そこで、上記構成のものにあっては触覚センサ35のセンサユニット36内に複数のセンサ37を略マトリックス状に縦方向および横方向にそれぞれ並設し、センサ配線及び検出回路38をそれぞれ独立に設けるようにしたので、センサユニット36内の複数のセンサ37の中のどこか1ヶ所が断線、センサ破壊等の故障を起こしても、確実にセンサ出力が得られる。
【0023】
なお、上記例では触覚センサ35のセンサユニット36内の2つのセンサセルより、センサ出力を得たが、更に多くのセルから1つのセンサ出力を得る構成にしてもよい。
【0024】
また、図4および図5は図1(A)乃至図3の医療器具の第1の変形例を示すものである。これは、図4に示すようにセンサユニット36内に複数のセンサ37をまとめて1つのブロックとしたセンサブロック51を複数設け、各センサブロック51内のセルとなる各センサ37の出力を加算して、1つの出力を出す構成にしたものである。
【0025】
図5はその信号処理回路52を示すものである。ここで、53は各センサブロック51内の各センサ37の出力を加算して、1つの出力を出す加算回路、54はこの加算回路53からの出力信号を検出する検出回路である。
【0026】
そこで、上記構成のものにあっては各センサブロック51内のセンサ37の数が多ければ、たとえ、1つのセンサ37がこわれても、出力への影響は最小限に抑えられる。
【0027】
また、図6は図1(A)乃至図3の医療器具の第2の変形例を示すものである。これは、図1(A)乃至図3の内視鏡下外科手術用の医療器具のシステムにおける第1の処置具13のシース32の外表面に3つのロバスト性を有する分布型の触覚センサ61、62、63を設けたものである。
【0028】
ここで、第1の触覚センサ61はTVモニタ9上に写し出されている範囲に配置されている。また、第2の触覚センサ62は端子部15bより先端側に配置され、第3の触覚センサ62は端子部15bより根元側に配置されている。
【0029】
そこで、上記構成のものにあっては第2の触覚センサ62にものが当り、出力が出た場合にはTVモニタ9上に写し出されていない部分、すなわち観察できていない組織または、処置具が第1の処置具13のシース32の外表面に当っていることが検出されるので、外科手術の操作が中止される。
【0030】
また、第3の触覚センサ62に出力が出た場合には、第1の処置具13のシース32の外表面における端子部15bより根元側の部分に不潔物が当ったことが考えられることや、他の術者が触ってしまったことが考えられる為、やはり操作が中止される。
【0031】
また、図6中で、第2の処置具14には挿入部24の先端側に生体組織を持ち上げる湾曲部64が配設されている。そして、この湾曲部64の先端側には第4の触覚センサ65、中間側には第5の触覚センサ66、根元側には第6の触覚センサ67がそれぞれ設けられている。
【0032】
そして、第4〜第6の各触覚センサ65〜67からの出力状態にもとづいて生体組織の持ち上げ状況が判断される。ここで、判断の基準となる第4〜第6の各触覚センサ65〜67からの出力の組合せ状態は次の表1の通りである。
【0033】
【表1】
Figure 0003587830
【0034】
ここで、(1)の場合には湾曲部64で持ち上げる生体組織が大きくて、持ち上げられていない状態と判断される。また、(2)の場合には第2の処置具14の挿入部24の先端が持ち上げる生体組織の反対側まで突出できていない状態と判断される。(3)の場合には第2の処置具14の挿入部24の先端の押込みが不足状態と判断される。(4)の場合には生体組織の持ち上げがうまくできている状態と判断される。そして、この判断結果により、第1の処置具13の動作が制御される。
【0035】
なお、これは、第2の処置具14の挿入部24の湾曲部64で生体組織を持ち上げる場合の例を示したが、エンドGIA等に設けて、確実にクリップできるかどうかの判断に用いても良い。
【0036】
また、図7は手術システム全体の概略構成を示すものである。この手術システムには術中生体画像3次元シミュレーションシステムと、画面表示による器具入力システムとが設けられており、これらをリンクさせ、同一システム内で作動させるようになっている。
【0037】
ここで、術中生体画像3次元シミュレーションシステムには術前の生体画像情報を3次元で蓄積し、モニタ71に表示する手段と、術中の内視鏡画像、超音波画像を蓄積する手段と、該術前の3次元情報を基礎として、術中の画像情報をとり込み、生体の弾性係数を、演算しながら、術中画像情報で得られた部位の情報と得られていない部分の情報とを該術前に3次元情報で修正し、これを蓄積し、表示する手段とが設けられている。
【0038】
また、画面表示による器具入力システムは内視鏡画像上、又は、術中生体画像3次元シミュレーションシステムに於て、どちらか一方の画像上の臓器を把持又は圧排している鉗子に対し、モニタ72の画像上で、別位置に指示すると、鉗子を支えるマニピュレータが、自動的に該位置に移動するように臓器を痛めない上限力量内で、作動する構成になっている。
【0039】
そこで、上記構成のものにあっては術中生体画像3次元シミュレーションシステムによって術前の生体画像情報(CT、NMR、US断層像)を蓄積し、術中の対象物からの画像、内視鏡画像を合成して、3次元のシミュレーション画像を形成し、これをモニタ71に表示することができる。
【0040】
そのため、術前のCT、NMR、又は超音波診断情報を得て、これをガイドに、術中の穿刺等に用いる従来技術のように対象臓器が脳のように比較的動かないものであれば有効であるが、腹部臓器など、術中の操作により、動くものについては、不適となるおそれがなく、術中の操作により、動くものについても良好な処置を行なうことができる。
【0041】
また、内視鏡画像上、又は、シミュレーション画像で鉗子等で臓器をある位置から別の位置に圧排したい時、画像上で圧排後の臓器位置を指示すると、自動的に圧排することができる。そのため、体腔内の一部を手術している途中で、体腔内の器具の位置や、臓器の位置を確認する等の必要が生じた際に、現状の内視鏡外科手術のように内視鏡の位置を変えて、視野を変換する等の措置が不要となり、内視鏡下の手術の能率化を図ることができる。
【0042】
また、図8(A)は体腔内手術を遠隔操作で行う体腔内手術用マニピュレータである多関節マニピュレータ81を示すものである。この多関節マニピュレータ81には体内に挿入される挿入部82の先端部には先端側に配置された第1の湾曲部83と、この第1の湾曲部83の後端部に連結された第2の湾曲部84とが設けられている。
【0043】
さらに、挿入部82の基端部85には第1の湾曲部83および第2の湾曲部84の駆動装置86が設けられている。なお、第1の湾曲部83および第2の湾曲部84の駆動装置86は略同一構成であるので、図8(A)には第2の湾曲部84の駆動装置86のみを示す。
【0044】
この駆動装置86には第2の湾曲部84の一対のアングルワイヤ87,88を牽引操作する牽引機構89の駆動モータ90が設けられている。さらに、アングルワイヤ87,88の途中にはコンプライアンス設定部91がそれぞれ設けられている。
【0045】
図8(B)はこのコンプライアンス設定部91の概略構成を示すものである。このコンプライアンス設定部91にはシリンダ92と、このシリンダ92内に配設されたピストン93とが設けられている。そして、このピストン93のピストンロッド94が各アングルワイヤ87,88の途中に介設されている。
【0046】
さらに、シリンダ92内にはコイルばね95が配設されている。また、シリンダ92の一端部側外周面に突設された管路連結部96には連結管路97の一端部が連結されている。この連結管路97の他端部はポンプ98に連結されている。
【0047】
そして、ポンプ98によってコンプライアンス設定部91のシリンダ92内の液圧を変えることでワイヤ87,88牽引時のコンプライアンスをコントロールできる。
【0048】
例えば、第2の湾曲部84の湾曲操作時に挿入部82の先端部が体腔壁に接触した場合のようにワイヤ87,88の牽引時に過度の力を与えたくない場合には、あらかじめシリンダ92内の圧を下げ、コイルばね95のばね弾性でワイヤ87,88の張力を逃がす。
【0049】
また、逆に、ワイヤ87,88の牽引時に力を与えたい場合は、シリンダ92内の圧を上げる。なお、図8(B)ではピストン93の左側にのみコイルばね95を配設しているが両側に配設してもよい。
【0050】
そこで、上記構成のものにあってはポンプ98によってコンプライアンス設定部91のシリンダ92内の液圧を変えることでワイヤ87,88牽引時のコンプライアンスをコントロールできるので、マニピュレータ81に格別に触覚センサを設けることなく生体への安全性の向上を図ることができる。
【0051】
また、図9(A),(B)は上記ワイヤ駆動式の駆動装置86を屈曲型マニピュレータ101に適用した例を示すものである。ここで、屈曲型マニピュレータ101を患部組織Hまでアプローチする時には図9(A)に示すように各関節用のアングルワイヤ87,88に弾性をもたせ柔軟とする。そして、患部組織Hの処置作業時には図9(B)に示すように屈曲型マニピュレータ101の手元側の関節部分101aの弾性を下げて硬度を上げ、先端作業用関節101bは弾性を上げておくようにしている。
【0052】
さらに、図10は図8(B)とは異なる構成のコンプライアンス設定部102を示すものである。このコンプライアンス設定部102には各アングルワイヤ87,88の途中に介設されたSMAコイル103の温度変化により、ばね弾性をコントロールする通電制御部104が設けられている。
【0053】
また、図11は図10はとは異なる構成のコンプライアンス設定部111を示すものである。これは、各アングルワイヤ87,88の途中に大径プーリ112および2つの小径プーリ113,114を介設し、小径プーリ113,114間に配設された大径プーリ112の支軸部にSMAコイル115の一端を連結し、このSMAコイル115の他端を適宜の固定部に固定したものである。この場合もSMAコイル115の温度変化により、ばね弾性をコントロールする通電制御部116が設けられている。
【0054】
また、図12は図11のコンプライアンス設定部111の変形例を示すものである。これは、図11のSMAコイル115をコイルばね121によって形成するとともに、大径プーリ112を接離可能に吸着する電磁チャック122を設けたものである。
【0055】
ここで、電磁チャック122のOFF時にはプーリ112に接続したばね121の弾性によりアングルワイヤ87,88の張力がゆるめられる。また、電磁チャック122のON時にはプーリ112が吸着固定され、アングルワイヤ87,88の張力が直接かかる。
【0056】
また、図14および図15は本発明の第1の実施の形態の安全機構付き処置ロボット131を示すものである。この処置ロボット131には多関節型マニピュレータ132が設けられている。このマニピュレータ132には複数のアーム部133がそれぞれ関節部134を介して回動可能に連結されている。
【0057】
この場合、アーム部133の関節部134の内部には関節回転用モータ135が配置されている。さらに、各アーム部133のモータ135はケーブル136を介してコントローラ137に接続されている。
【0058】
また、最先端のアーム部133の先端部には処置具支持部材138が配設されている。この処置具支持部材138はアーム部133の先端部に固定された電磁石139によって離脱可能に吸着されている。この電磁石139はケーブル140を介してコントローラ137に接続されている。
【0059】
さらに、処置具支持部材138にはねじ部材によって処置具141が着脱可能に取付けられている。この処置具141の駆動装置142はケーブル143を介してコントローラ137に接続されている。
【0060】
また、処置具141はトラカール(外套管)144を通じて体内へ挿入されている。このトラカール144の基端部には図15に示すように略箱型の処置具受け部材(ベース部材)145が固定されている。この処置具受け部材145の軸心部にはトラカール144に連通する処置具141の挿通孔が形成されている。
【0061】
さらに、この処置具受け部材145の内部には内箱(処置具固定部)146が図15中で上下方向に摺動可能に装着されている。この場合、処置具受け部材145の内底部には内箱146を図15中で上方向に押圧する状態に付勢するばね部材(付勢手段)147が配設されている。なお、内箱146の軸心部には処置具141の挿通孔が形成されている。
【0062】
次に、上記構成の作用について説明する。まず、マニピュレータ132の各アーム部133の動作時にはこのアーム部133の動きに連動して処置具支持部材138および処置具141が動作する。このとき、あらかじめコントローラ137に設定しておいた値の電流が電磁石139に通電され、処置具支持部材138は所定の吸着力でアーム部133の電磁石139に吸着されている。
【0063】
そして、処置具141が体内へ深く挿入されてゆく場合には、処置具141の挿入動作にともない処置具受け部材145の内部の内箱146がばね部材147のばね力に抗して処置具受け部材145の内底部側に押し込み操作される。
【0064】
ここで、処置具141が生体組織Hに接触した際に、処置具141が組織Hから受ける反力がしきい値を超え、処置具支持部材138のアーム部133に対するすべり力が上記電磁石139の電磁力を上回る場合には処置具支持部材138とアーム部133との間が分離する。このとき、処置具141を体内に挿入したことにより縮んでいたばね部材147の復元力により、処置具受け部材145の内部の内箱146が上方へ押出される。そのため、処置具141も上へ押出されるので、生体組織Hに過大な力がかかることが防止される。
【0065】
そこで、上記構成のものにあっては生体組織Hと処置具141との間に働く圧力値が異常に高くなると、処置具支持部材138とアーム部133との間が分離したのち、ばね部材147の復元力により、処置具受け部材145の内部の内箱146が上方へ押出され、処置具141も上へ押出されて生体組織から離脱するので、術者が誤って、処置具141から生体組織Hに強い力を与えるおそれがなく、処置の安全性を高めることができる。
【0066】
また、使用後は、ねじ部材を取外すことにより、処置具支持部材138から処置具141を簡単に分離することができるので、処置具141のみを消毒・減菌することができ、処置具141の消毒・減菌が容易となる。
【0067】
また、図16は図14の処置ロボットの変形例を示すものである。これは、処置具支持部材138とアーム部133との間を固定状態で接続するとともに、処置具支持部材138における処置具受け部材145の内箱146と接触する下面と側面に圧力センサ151を接着し、かつこの圧力センサ151のセンサ出力線をアーム部133の内部を通り、定電流回路152と接続し、さらにそのセンサ出力をコントローラ137に入力させるようにしたものである。
【0068】
そこで、上記構成のものにあってはマニピュレータ132の動作によって処置具141が、生体内へ深く挿入されていく動作中に、処置具支持部材138の下面と側面の圧力センサ151が処置具受け部材145の内部の内箱146に接触することにより、上記センサ出力がコントローラ137へ送られる。
【0069】
ここで、あらかじめ、コントローラ137にセンサ出力の上限値を設定しておくことにより、上記センサ出力値が上限値を超えるような、強い圧力が、処置具141から生体へ加えられた場合、コントローラ137によって駆動装置142の電源がOFFになり、アーム部133の動きが止まるので、縮んだばね部材147が自然長に復元する力が内箱146に働き、この内箱146が上へ押出されることにより、処置具141も上へ押出され、生体組織Hに過大な圧力がかかることを防止できる。
【0070】
また、処置具141から生体組織Hへ、水平方向の過大な圧力が加わる状態も処置具支持部材138の側面の圧力センサ151により、検出される。そのため、この場合も水平方向の過大な圧力が加わる状態が圧力センサ151により、検出された時点で、駆動装置142の電源がOFFになり、アーム部133の動きが止まるので、同様に処置具141も上へ押出され、生体組織Hに過大な圧力がかかることを防止できる。したがって、水平方向に過大な圧力が加わることで起こる生体組織Hの挫滅・穿孔などの危険性も回避できる。
【0071】
また、図17(A)は糸の張力を検出することで、生体組織へのダメージを防止するようにマニピュレータを制御する手段を有する張力検出機構付き手術装置161の全体の概略構成を示すものである。
【0072】
この手術装置161には多関節型マニピュレータ162が設けられている。このマニピュレータ162には複数のアーム部163が設けられている。各アーム部163には関節と、その回転機構とが設けられている。
【0073】
また、最先端のアーム部163の先端部には一対の処置具164の基端部が連結されている。各処置具164の先端部には生体組織または医用器具を把持する開閉可能な把持部165が設けられている。この場合、アーム部163の先端部には図示しない処置具回転機構が設けられているとともに、各処置具164の先端部には図示しない把持部開閉機構が設けられている。さらに、マニピュレータ162には各アーム部163と処置具164の動きを制御するロボット駆動制御装置166が接続されている。
【0074】
また、一方の把持部165の内面には先端部側に糸挿通口165aが形成され、この把持部165の内部には糸挿通口165aに連通させた糸挿通路165bが処置具164との連結部側に向けて延設されている。この処置具164の内部には図17(B)に示すように軸心方向に沿って延出される糸挿通用の空洞167aが設けられている。この空洞167aの基端部には糸巻き収納室167bが形成されている。
【0075】
さらに、処置具164の把持部165が縫合針176を把持した状態で、把持部165の糸挿通口165aから糸挿通路165bを通り、処置具164の空洞167aに縫合針176から導かれる糸177が収納される。また、糸巻き収納室167b内にはこの糸177を巻くための糸巻き168が配設されている。
【0076】
この糸巻き168は中心の棒169と、そのまわりの筒170とによって構成されている。さらに、アーム部163の先端部には糸巻き収納室167b内に連通する凹陥部171が形成されている。
【0077】
この凹陥部171の内底部の隔壁172外面にはフック173が取り付けられている。そして、このフック173と、糸巻き168の中心の棒169との間は張り糸174によって接続されている。
【0078】
さらに、隔壁172の内面には歪みゲージ175が接着されている。このゲージ175からのゲージ出力線はアーム部163の内部を通って定電流回路179に接続されている。この回路179には糸巻きロックスイッチ178が接続され、このスイッチ178は糸巻き168の中心棒169に取り付けられた糸巻きロック機構180と接続されている。
【0079】
次に、上記構成の作用について説明する。まず、処置具164の把持部165が針176を把持して縫合を始める時、糸巻きロックスイッチ178がOFFになっている。そのため、糸巻き168は回転し、糸177が組織中の縫合部位へ到達するまで糸177が伸びてゆく。
【0080】
また、縫い目を締めて、糸を結び、縫合作業を終える時は糸巻きロックスイッチ178をONにし、糸177にテンションをかけることによって縫合が終了する。
【0081】
ここで、縫合作業の途中に目的以外の組織などに糸177がからまってしまった場合、糸177にテンションをかけると、糸177に異常な張力が加わることになる。このとき、糸巻き168の中心の棒169が糸177に引っ張られるため、この棒169に接続されている張り糸174によってフック173が引っ張られる。そのため、隔壁172がたわむので、これに接着されている歪ゲージ175の変形から、定電流回路179によりゲージ出力がとり出される。
【0082】
ここで、あからじめ糸巻きロックスイッチ178にゲージ出力の上限値を設定しておけば、この上限値を超えるような異常に強い張力が糸177に加わり、生体組織へのダメージを与える危険性のある時には、このスイッチ178がOFFとなり、糸巻き168が回転するので、糸177はフリーの状態に戻る。
【0083】
そこで、上記構成のものにあっては内部に糸177を収納する空洞167aを有する処置具164を設けたので、糸177のからみつきが少なくなる。さらに、この糸177の張力を歪みゲージ175によって検出するとともに、この検出値からマニピュレータ162の動きを制御するようにしたので、糸177の張力による生体組織のダメージ発生の危険性が防止できる。
【0084】
また、図18(A)は図17(A)の手術装置の変形例を示すものである。ここでは、図18(B)に示すように一方の把持部165の内面における基端部側に第2の開口部181が形成され、処置具164の内部に形成された空洞167aの先端部がこの第2の開口部181に連通されている。さらに、他方の把持部165の内面には第2の開口部181と対応する位置に刃182が突設されている。
【0085】
次に、上記構成の作用について説明する。血管等の結紮の際、図18(A)に示すように片方の処置具164の内部の糸巻き168でロックされた糸177を、他方の処置具164の把持部165で把持して、糸177にテンションをかけながら、結紮動作を行う。
【0086】
そして、最後、結紮が終わると、糸177を切る必要があるので、あらかじめロボット駆動制御装置166に歪みゲージ出力値を設定しておき、この値を超えるような強い張力を糸177に加えると、ロボット駆動制御装置166が、把持部165を閉じるように作動し、刃182が把持部165と一緒に下へ動く。このとき、糸177は強いテンションがかけられているので、第2の開口部181の上面に位置している。そのため、把持部165が全閉された状態で刃182が第2の開口部181を通って糸177に接触するので、糸177が切れる。
【0087】
また、目的外の組織などに糸177がからみつき、糸177の張力が異常に強くなった場合には、図17(A)の場合と同様に、ゲージ出力を取り出し、ロボット駆動制御装置166に上限値を設定しておけば、上記の機構により、糸177が切れ、組織へのダメージを防止できる。
【0088】
したがって、上記構成のものにあっては、把持部165が全閉された状態で刃182によって糸177を切ることができるので、糸177がからみついた場合の縫い直しが容易にできる。
【0089】
また、図19は患者の体位変換を検知することで、生体組織への危険を防止させる機構を有する体位変換検知手段付き手術装置191を示すものである。この手術装置191には複数の関節を備えたマニピュレータ192が設けられている。このマニピュレータ192には複数のアーム部193が設けられている。このアーム部193には関節と、その関節の内部に回転用もしくは処置具把持部の開閉用のモータ194とが設けられている。
【0090】
また、最先端のアーム部193の先端部には処置具195の基端部が取付けられている。この処置具195は患者の皮膚に穴をあけてはめ込まれたトラカール196の中に挿入されている。このトラカール196の外周壁面には圧電フィルム197が一周巻き付けられて接着されている。
【0091】
このフィルム197は増幅回路198を介して手術装置191の制御回路199に接続されている。この制御回路199にはモータ194および駆動装置200が接続されている。
【0092】
次に、上記構成の作用について説明する。まず、手術中、術者が患者の体位を変換させる時には、初めの一瞬、トラカール196に生体の皮膚からの圧力が加わる。このとき、トラカール196の外周壁面の皮膚と接触する部分の圧電フィルム197により上記圧力が検出されると、図20に示すようなパルス電圧が発生する。
【0093】
このパルス電圧は増幅回路198により増幅された状態で、制御回路199に送信される。このパルス電圧の入力時には制御回路199からモータ194の電源をOFFにする信号がモータ194に送られ、アーム部193の関節がフリー状態に切換えられる。
【0094】
これにより、患者の体位を変えている最中ではアーム部193は関節がフリー状態で保持され、トラカール196の動きと連動して動くので、生体へのダメージがない。
【0095】
また、患者が所望の体位に変えられて、体位の変換動作を終える時には、またトラカール196に患者の皮膚からの圧力が加わるので、このときの圧電フィルム197からの出力パルスを上記と同様にして、制御回路199に送信するとモータ194の電源をONにする信号がモータ194に送られる。そのため、一旦フリーになったアーム部193を再度固定することができるので、術者は再度所望の位置で手術を行なうことができる。
【0096】
そこで、上記構成のものにあっては患者の体に挿入されるトラカール196に設けられた圧電フィルム197で検知された出力を利用して、マニピュレータ192の状態を制御することができるので、患者の体位変えながら行う手術が、スピーディーに行なえ、また、生体組織のダメージを防止できる。そのため、患者の体位を変換しても、トラカールの圧力による生体へのダメージを防止することができる。
【0097】
また、図21は図19の手術装置191の変形例を示すものである。これは、トラカール196の外周壁面に巻きつけられて接着された圧電フィルム197に増幅回路198、ブザースイッチ201を介してブザー200を接続したものである。
【0098】
そして、この場合には術者が患者の体位を変換させずに、一定の位置で手術を行っている最中に、万一患者の体が僅かに動いたり、または、術者が誤って患者の体に接触したり、マニピュレータ192のアーム部193が誤動作をしたとき、圧電フィルム197には患者の皮膚から僅かな圧力が働くので、このフィルム197の電圧出力パルスを増幅回路198により増幅し、ブザースイッチ201に送ると、パルスの発生時間だけONになり、ブザー202の音が鳴り、術者に警告を促すことができる。なお、上記パルスの大きさによってこのブザー202の音量も上下する。
【0099】
そこで、上記構成のものにあってはブザー202によって発生させた音を聞き取ることにより、患者の体位が僅かでも変化したことが術者にすぐわかる。また、その音の大きさにより、急激な変化かどうかを判別でき、生体組織へのダメージを防止せさる一つの目安となる。
【0100】
また、図22は故障時に生体組織に対する接触状態を容易に解除することが可能な手術用マニピュレータ211を示すものである。この手術用マニピュレータ211には多関節からなるアーム212が設けられている。
【0101】
このアーム212の先端部には処置具駆動ユニット213が取付けられている。この処置具駆動ユニット213には体内に挿入される挿入部214が連結されている。この挿入部214の先端部には湾曲部215を介して処置部216が連結されている。この処置部216には例えば持針器、生体組織を採取する生検鉗子、あるいは生体組織の把持を行う把持鉗子等がある。
【0102】
また、駆動ユニット213には処置部216および湾曲部215を動作させるアクチュエータが内蔵されている。このアクチュエータの動作は、例えばワイヤ、ロッド等の機械的伝達要素218により、処置部216および湾曲部215に伝達されるが、固定ねじ217をゆるめると、図23(A)のように挿入部214と一緒に機械的伝達要素218も分離される構造となっている。なお、アーム212及び処置部216はアーム212内に内蔵されたアクチュエータにより駆動され、その位置、速度がコンピュータにより制御される。
【0103】
そこで、上記構成のものにあっては、手術用マニピュレータ211に挿入部216とアーム212側の処置具駆動ユニット213とを機械的に分離する固定ねじ217を設けたので、コンピュータ、アクチュエータの故障あるいは、停電等により、手術中に、マニピュレータ211が動作しなくなった場合には、固定ねじ217をゆるめることにより、挿入部214を分離し、図23(B)に示すように挿入部214を体外へ、取り出すことが可能である。
【0104】
この際、処置部216及び湾曲部215はアクチュエータから分離されているため、機械的に動作自由の状態となり、取り出すのに都合の良い、一直線の形状にすることができる。
【0105】
また、図24(A)は図22の手術用マニピュレータ211の変形例を示すものである。これは、マニピュレータ211のアーム212の先端部に駆動ユニット取付け部221を設け、この駆動ユニット取付け部221に処置具駆動ユニット213を着脱可能に連結したものである。
【0106】
この場合、駆動ユニット取付け部221における駆動ユニット213の結合部222にはアクチュエータの電気信号を接続するコネクタ部223と、一対のねじ挿通孔224と、一対の位置決めのピン225とが設けられている。
【0107】
さらに、処置具駆動ユニット213におけるアーム212との結合部213aにはアーム212側のコネクタ部223に着脱可能に連結されるコネクタ部227と、アーム212側の位置決めピン225が挿入される一対のピン挿通孔226と、一対のねじ穴228とが設けられている。
【0108】
そして、処置具駆動ユニット213の結合部213aとアーム212側の結合部222との間の連結時にはアーム212側のコネクタ部223と駆動ユニット213側のコネクタ部227との間が連結されるとともに、位置決めピン225がピン挿通孔226に挿入された状態で、固定ねじ229がねじ挿通孔224を介してねじ穴228に螺着されるようになっている。
【0109】
また、駆動ユニット213は固定ねじ229を外すと、アーム212側から分離されるので、故障等でマニピュレータ211が動作しなくなった場合にはアーム212側から駆動ユニット213を分離させることにより、挿入部214を体外へ取り出すことが可能である。
【0110】
また、図25(A)〜(D)および図26(A),(B)はマニピュレータ211のアーム212の先端部に対し、少なくとも2種類以上の処置ユニット231,232を交換可能に連結させたものである。
【0111】
ここで、処置ユニットは処置の目的に応じて図25(B)に示す持針器231、図25(C)に示す把持鉗子232等の形状の異なるものがあるが、結合部213aが共通なため、アーム212に対し、交換可能となっている。なお、把持鉗子232には挿入部233の先端部に開閉可能な把持部234が設けられている。
【0112】
さらに、コネクタ部223,227にはモータ242の駆動制御回路243の接続ライン用端子244,245と、処置ユニット231,232の種別の判別ラインの端子246がある。
【0113】
ここで、処置ユニット231,232側の判別端子246はVCCと、AD1〜nのどれかと短絡されており、短絡する組み合わせを処置ユニット231,232の種別ごとに割り当てられている。また、マニピュレータ211の制御部241には短絡された判別ラインを検出するフォトカプラ247などからなる検出回路248が設けられている。
【0114】
このため、処置ユニット231または232のコネクタ部227をマニピュレータ211側のコネクタ部223に接続すると、処置ユニット231または232の種別が認識できる。
【0115】
そこで、上記構成のものにあっては処置ユニット231,232の種別を認識することができるので、各処置ユニット231,232の関節数、長さ、関節のストローク、最大速度、駆動機構の速比等の制御に要する情報を予めマニピュレータ制御装置241内で記憶されたデータの中から選び出すことが可能となる。そのため、手術を1台のマニピュレータ211によって行う場合に、処置の内容に応じてマニピュレータ211の先端の処置ユニット231,232を適宜交換できるので、複数の処置を1台で行うことができる。
【0116】
また、図27は医療用ロボットマニピュレータ251を示すものである。このマニピュレータ251には電気駆動要素が内蔵され、患者体腔内で観察・処置を行う為のエンドエフェクタ252が着脱可能に取付けられている。このエンドエフェクタ252には患者体腔内に挿入される挿入部254が設けられており、この挿入部254の先端部には湾曲部255が設けられている。そして、このエンドエフェクタ252の内部には図29に示す駆動要素としてのサーボモータ253が内蔵されており、このサーボモータ253を駆動する事によって図27中に点線で示す様に先端の湾曲部255が湾曲する様になっている。
【0117】
また、マニピュレータ251には空間的に、エンドエフェクタ252を所望の位置に位置決めする為のアーム256が設けられている。このアーム256の先端部には図28に示すようにエンドエフェクタ252の取付け台256aが設けられている。そして、アーム256の取付け台256aにエンドエフェクタ252が取り外し可能に取付けられている。
【0118】
このアーム256には各関節に図示しない駆動用のサーボモータが内蔵されている。これらのサーボモータはエンドエフェクタ252、アーム256の駆動用モータを制御する為の制御装置257に接続されている。そして、この制御装置257によって、所望のアーム256の動作、エンドエフェクタ252の動作を行う事ができる。
【0119】
また、258は入力手段であり、操作者の入力情報を制御装置257に伝達し、それによって、先端エンドエフェクタ252、アーム256を操作者によって所望の動作をさせる事ができる。なお、この入力装置については、例えば、ジョイスティックや産業用ロボットで利用されているティーチングペンダント等でも構わない。
【0120】
また、図29はエンドエフェクタ252とアーム256との間の駆動用電力供給部を示すものである。この場合、アーム256のエンドエフェクタ取付け台256aには駆動用電力供給コイル259が配設され、エンドエフェクタ252にはサーボモータ253に接続されたコイル260がコイル259と対応する位置に配置されている。
【0121】
そして、制御装置257から出力されるサーボモータ253駆動用電力を、アーム256からエンドエフェクタ252に電磁結合によって供給することができるようになっている。
【0122】
ところで、医療用ロボットを使用し、体腔内観察、処置を行った後、エンドエフェクタ252は体腔内に挿入される事から、減菌・消毒を行わなければならない事がある。そこで、上記構成によって、先端エンドエフェクタ252を取り外し可能になっている為、その部分が減菌可能となる。
【0123】
しかも、コイル259,260による電磁結合でエネルギーを先端エンドエフェクタ252内のサーボモータ253に供給し、これを駆動する構造になっている為、取り外しの為にエネルギー供給手段としての導線及びそれを接続するコネクタ等が不要となり、接続部の減菌時の保護対策を行う必要がなくなる。
【0124】
また、電磁結合によるエネルギ供給方式であるので、絶縁トランスと同様の機能をするため、患者漏れ電流による電撃の恐れもなくなる。そのため、減菌対策および電撃対策が可能となり、衛生的にも電気的にも安全な医療用ロボットが実現できる。
【0125】
また、図30はエンドエフェクタ252とアーム256との間の駆動用電力供給部の変形例を示すものである。これは、アーム256のエンドエフェクタ取付け台256aの内部に一対の電極261、262を配設するとともに、エンドエフェクタ252の内部にこれらの電極261、262にそれぞれ対向配置させた一対の電極263、264を配設したものである。
【0126】
これによって、そこの部分で、電気的容量結合が実現され、その部分に交流を流す事によって、エンドエフェクタ252の内部のサーボモータ253に電力を供給する事が可能となる。
【0127】
そこで、上記構成のものにあってもエンドエフェクタ252とアーム256との間の接続部の減菌保護対策を不要として、かつ、人体に流れやすい直流分の電力をカットする構成になっているため、電撃の恐れが少なくなる。これによって、減菌対策および電撃対策が可能となり、衛生的にも電気的にも安全な医療用ロボットが実現できる。
【0128】
また、図31は術中に停電になっても、診断処置を続行する事を可能にする医療用ロボットマニピュレータ256のシステムを示すものである。これは、制御装置257内にバッテリ部272を内蔵させ、制御装置257が通常の電源コンセント(以下メイン電源とする)271からの供給電力によって作動している時には、機能しないが、ひとたび、メイン電源271が供給されなくなると、バッテリ部272が機能する様にしたものである。
【0129】
また、図32はメイン電源271とバッテリ部272との接続回路を示すものである。ここで、273は電位差検出回路からなる電源検出手段であり、メイン電源271から電力が供給されているかどうかを検知する為のものである。また、274は電源検出手段273からの検知情報によって予め充電されているバッテリ部272からの電源によってマニピュレータ256を制御するかを判断する為の制御回路である。さらに、275は制御回路274の指令によってメイン電源271とバッテリ部272との切り換えを行う為の切り換え手段である。
【0130】
上記構成において、術中にメイン電源271からの電源が停電により供給されなくなった時、バッテリ部272内の電源検出手段273から制御回路274に停電である事を知らせる電気信号が出力され、それによって制御回路274は切り換え手段275に切り換え信号を送り、それによってマニピュレータ制御装置257にバッテリ部272からの電源が供給される様になる。
【0131】
また、メイン電源271が停電から回復した時は、バッテリ部272内の電源検出手段273から回復信号が制御回路274に出力され、制御回路274から電源切り換え手段275がメイン電源271に切り替わる。
【0132】
これによって、停電が回復したら、すぐにバッテリ部272の駆動を止め、バッテリ部272のエネルギを無駄なく利用することができる。そのため、術中の停電が生じても電力を供給する事が可能となり、手術を継続的に行う事が可能となる。
【0133】
また、図33(A)は術者にとって重要な視野の自動的な提供およびスコープ保持の省力化が可能な処置具追従型スコープ281を示すものである。ここで、282は処置具、283はこの処置具282の先端部の処置部である。さらに、この処置具282には位置・姿勢検出用の可動コイル284が取り付けられている。
【0134】
また、285は垂直多関節型6自由度ロボットである。この垂直多関節型6自由度ロボット285のアームの先端にはスコープ292および撮像部293が取り付けられている。
【0135】
さらに、垂直多関節型6自由度ロボット285のアームには6つの関節286〜291が設けられている。そして、スコープ292の位置及び姿勢は、ロボット285の各関節286〜291の角度から得られる。また、処置具282の位置・姿勢検出の基準となる固定発信器294はロボット285との相対位置関係が定められた場所に設けられている。
【0136】
また、図33(B)は処置具追従型スコープ281の処理回路を示すものである。ここで、295は処置具282の位置・姿勢検出装置、296は先端部の処置部283の位置を算出する先端部位置算出部、297はロボットの各軸の回転角算出部、298はモニタドライバーである。この場合、位置・姿勢検出装置295には可動コイル284、固定発信器294がそれぞれ接続されている。
【0137】
次に、上記構成の作用について説明する。3個のコイルからなる可動コイル284と、同じく3個のコイルからなる固定発信器294を用いて、電磁誘導を用いて固定発信器294に対する可動コイル284の相対的な位置および姿勢を求める方法は、特願平3−235019号に開示されているように公知である。この方法を用いて、固定発信器294に対する可動コイル284の相対的な位置関係を求められる。
【0138】
また、可動コイル284の処置具282への取り付け位置・方向は既知であるから、可動コイル284から処置具282の先端の処置部283への長さLを用いれば、処置具282の先端部の位置が求められる。
【0139】
さらに、ロボット285と、固定発信器294の関係も既知であるから、ロボット285に対する処置具282の先端の位置および処置具282の方向が求められる。
【0140】
そのため、スコープ292の軸心の延長上の直線上に処置具282の先端部が通るように、ロボット285の各軸の回転角を制御することによってスコープ292の画像中央に常に処置具282の先端を捉えることができる。
【0141】
そこで、上記構成のものにあってはロボット285の各軸の回転角を、処置具282の先端とスコープ292の先端の距離が一定であるという拘束条件を付加して決定すると、倍率が常に一定の画像が得られる。また、スコープ292の軸が指定された空間上の一点を常に通るような拘束条件を付加することによって、内視鏡下手術におけるトラカールの使用時にトラカール部位を余り動かさないようにできる。
【0142】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば生体組織の不容易な穿孔などを防止することができ、安全性を確保できる医療器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は処置具の把持部を示す斜視図、(B)は触覚センサのセンサユニットを示す平面図、(C)はセンサユニットからの信号出力を示す図。
【図2】内視鏡下外科手術用の医療器具のシステム全体の概略構成図。
【図3】信号処理回路を示すブロック図。
【図4】図1(A)乃至図3の医療器具の第1の変形例の要部構成を示す触覚センサのセンサユニットの平面図。
【図5】信号処理回路を示すブロック図。
【図6】図1(A)乃至図3の医療器具の第2の変形例のシステム全体の概略構成図。
【図7】術中生体画像3次元シミュレーションシステムを示す概略構成図。
【図8】(A)は体腔内手術用マニピュレータの概略構成図、(B)は多関節マニピュレータのコンプライアンス設定部を示す縦断面図。
【図9】屈曲型マニピュレータを示すもので、(A)は屈曲型マニピュレータを患部組織までアプローチする状態を示す側面図、(B)は患部組織の処置作業状態を示す側面図。
【図10】コンプライアンス設定部の変形例を示す概略構成図。
【図11】コンプライアンス設定部の第2の変形例を示す概略構成図。
【図12】コンプライアンス設定部の第3の変形例を示す概略構成図。
【図13】コンプライアンス設定部の電磁チャックを示す概略構成図。
【図14】本発明の第1の実施の形態の安全機構付き処置ロボットの全体の概略構成を示す斜視図。
【図15】第1の実施の形態の安全機構付き処置ロボットのトラカールの上部構造を示す概略構成図。
【図16】図14の処置ロボットの変形例を示す概略構成図。
【図17】(A)は張力検出機構付き手術装置の全体の概略構成図、(B)は処置具の概略構成図。
【図18】(A)は図17(A)の手術装置の変形例を示す概略構成図、(B)は処置具の概略構成図。
【図19】体位変換検知手段付き手術装置を示す概略構成図。
【図20】圧電フィルムにより圧力が検出された際に発生するパルス電圧を示す特性図。
【図21】図19の手術装置の変形例を示す概略構成図。
【図22】手術用マニピュレータを示す概略構成図。
【図23】(A)は挿入部と一緒に機械的伝達要素も分離された状態を示す斜視図、(B)はアクチュエータから分離された処置部216及び湾曲部215が一直線の形状に伸ばされた状態を示す斜視図。
【図24】(A)は図23の手術用マニピュレータの変形例を示す概略構成図、(B)は駆動ユニット側の結合部を示す平面図。
【図25】(A)は手術用マニピュレータのアームを示す斜視図、(B)は持針器からなる処置ユニットを示す斜視図、(C)は把持鉗子からなる処置ユニットを示す斜視図、(D)は処置ユニット側の結合部を示す平面図。
【図26】(A)は手術用マニピュレータ全体の概略構成図、(B)はマニピュレータの制御部の概略構成図。
【図27】医療用ロボットマニピュレータ全体の概略構成図。
【図28】エンドエフェクタとアームとの連結部を示す概略構成図。
【図29】エンドエフェクタとアームとの間の駆動用電力供給部を示す概略構成図。
【図30】エンドエフェクタとアームとの間の駆動用電力供給部の変形例を示す概略構成図。
【図31】医療用ロボットマニピュレータ全体の概略構成図。
【図32】電源検出回路を示す概略構成図。
【図33】(A)は処置具追従型スコープ全体の概略構成図、(B)は処理回路を示す概略構成図。
【符号の説明】
131 処置ロボット
132 マニピュレータ
133 アーム部
138 処置具支持部材
139 電磁石
141 処置具
144 トラカール(外套管)
145 処置具受け部材(ベース部材)
146 内箱(処置具固定部)
147 ばね部材(付勢手段)

Claims (1)

  1. 複数のアーム部がそれぞれ関節部を介して回動可能に連結された多関節型マニピュレータの最先端のアーム部に電磁石を配設し、処置具を支持する処置具支持部材を前記最先端アーム部に前記電磁石の電磁力によって係脱可能に吸着させるとともに、
    前記処置具の外套管に固定されたベース部材と、前記外套管内に挿入される処置具に固定された処置具固定部と、前記ベース部材に対して前記処置具固定部を前記処置具の挿入方向と反対方向に付勢する付勢手段とを前記処置具支持部材に設け、
    前記処置具が生体組織を押す際に前記処置具が生体組織から受ける反力がしきい値を超え、前記処置具支持部材の前記アーム部に対するすべり力が前記電磁石の電磁力を上回る時点で、前記処置具支持部材が前記最先端のアーム部から外れ、前記処置具が生体組織から離脱する処置具離脱手段を設けたことを特徴とする医療器具。
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