JP3587561B2 - 段付リーマ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、段付穴の内面を仕上加工する段付リーマにおいて、加工精度の向上を図り、工具の剛性を高めるようにした段付リーマに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、段付穴を同時にリーマ加工する段付リーマとして、例えば工具正面図である図6に示すような3枚刃リーマ51が知られている。
【0003】
つまり、このリーマ51の外周部には3箇所の切屑排出溝52が設けられ、回転方向に対面する側の壁面であるすくい面53と、回転方向と反対側の壁面であるポケット面54とは夫々正面視で一直線になるように形成されるとともに、軸方向に沿って刃部径が4段階に変化している。
【0004】
そして、刃具先端の最も径の小さい刃部には第1の切刃チップ55が、2番目に径の小さい刃部には第2の切刃チップ56が、3番目に径の小さい刃部には第3の切刃チップ57が、一番径の大きい基端側の刃部には第4の切刃チップ58が夫々設けられ、これらは軸心Pからほぼ放射方向に延びるすくい面53の先端陵線部に半径方向に段差を持って配設されている。
【0005】
また、軸心を挟んで各切刃チップ55〜58の反対側には、加工穴の内面に摺接して切削負荷を受ける第1〜第4のサポート部61〜64が形成され、この第1〜第4のサポート部61〜64は、ポケット面54の先端陵線部に沿って半径方向に段差を持って配置されている。
【0006】
つまり、例えば偶数枚刃リーマでは、切刃チップ同士を180度反対の位置に配置すれば切削負荷を有効に支えることが出来るが、奇数枚刃の時は加工精度の悪化を防止するため、切削負荷を受けるサポート部を設ける必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように軸心Pを中心として放射状に設けられたすくい面53に対して、軸心Pを中心とする放射方向からずれたポケット面54を直線状に形成すると、切屑排出溝52の加工は容易なものの、刃部径に変化によってサポート部62、63、64の位置が切刃チップ56、57、58の180度反対の位置からずれ、サポート性が悪くなって加工穴の同軸度が低下するという不具合があった。
【0008】
しかも、刃部径が大きくなるに連れてネジリ負荷が高まるのに対して、軸心附近の肉厚は変化しないため、工具の剛性確保に問題が生じていた。
【0009】
また、図5のような鋳抜穴を有するバルブボディWのリーマ加工の場合は予め下穴を成形しておく必要があり、例えば貫通穴として加工すべき下穴をドリル加工でなく鋳抜穴にしようとすると、鋳抜きピンの引き抜き等の関係上バリ等の発生を防止することが望ましく、このため貫通穴でなく盲穴の下穴にするのが好都合であるが、従来のリーマ加工は径仕上のみで盲穴を貫通させることが出来ないという問題があった。
このため、下穴を鋳抜穴で形成する場合には、鋳抜きピンで盲穴を成形し、ドリル加工で貫通穴とした後にリーマ加工を行うような複雑な工程を経る必要があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は複数の異径部が連なる刃部外周に奇数個の切屑排出溝(6・・・)を形成し、これら切屑排出溝(6・・・)の一方側の壁面の外周陵線部であって各異径部の軸方向先端に夫々の外周切刃(8、9、10、11)を設けるようにした段付リーマ(1)において、
この段付リーマ(1)に、
前記異径部の各外周切刃(8、9、10、11)を軸方向に沿って同一線上に配置し、前記各外周切刃(8、9、10、11)に対して軸心(P)を中心に180度位相が異なる位置に形成するサポート部(13、14、15、16)と、
前記サポート部(13、14、15、16)から前記排出溝(6・・・)の溝底へ延びる平面で形成するとともに、手前の刃部より奥の刃部の径が大きくなるように段付リーマを見たときに、隣合う切屑排出溝(6、6)で挟まれた部位で且つその軸心側の肉厚が手前の刃部より奥の刃部が厚くなるように傾斜して形成するポケット面(12a、12b、12c、12d)と、
手前に対して奥の方が大径となるように、前記各刃部(2、3、4、5)の径に合わせて、その径が変化している前記排出溝(6・・・)の溝底と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
【作用】
外周切刃に対して軸心を中心に180度位相が異なる位置にサポート部を形成することで、サポート性が良好になり同軸度が増す。
【0014】
また、切削排出溝の溝底の径を刃部の径に合せて変化させ、例えば刃部の径が大きくなった時に溝底の径を大きくすれば工具の芯径が大きくなって剛性が高まり、ネジリ負荷を有効に受けることが出来る。
【0016】
【実施例】
本発明の段付リーマの実施例について添付した図面に基づき説明する。
図1は本段付リーマの斜視図、図2は同正面図、図3は同側面図である。
【0017】
本発明の段付リーマは、例えば図5に示すようなAT車のメインバルブボディWにバルブ孔を形成する際に使用され、このバルブボディWには予め大径と小径の2段の段付下穴Hが形成されている。
【0018】
そして、本段付リーマ1は、先端側から基端側に向けて順次径が大きくなる4段の異径部を備えており、先端側の第1の刃部2が最も小さい径で、これに段差を介して連なる第2の刃部3が2番目に小さい径であり、順次第3の刃部4、第4の刃部5と基端側に向けて径が大きくなってゆく。
【0019】
この段付リーマ1には、図1及び図2に示すように、円周方向に3本の切屑排出溝6、‥が設けられている。
【0020】
そして、この切屑排出溝6、‥の回転方向に面する壁面に形成されるすくい面7、‥は、ほぼすくい角0度の状態で軸心Pから放射方向に延び、また軸方向には第1の刃部2から第4の刃部5まで同じ平面のすくい面として形成され、径方向には各刃部2、3、4、5間に段差が形成されている。
【0021】
そして、このすくい面7の外周陵線部であって、各刃部2、3、4、5の軸方向先端側にはチップ取付凹部が形成され、このチップ取付凹部に外周切刃としての切刃チップ8、9、10、11が取付けられている。
尚、この切刃チップ8、9、10、11は例えばダイヤモンドチップである。
【0022】
また、切屑排出溝6、‥の反対側の壁面であるポケット面12a、12b、12c、12dは段差を持って連なっており、このポケット面12a、12b、12c、12dの陵線に丸みを持って形成される第1のサポート部13、第2のサポート部14、第3のサポート部15、第4のサポート部16を、軸心Pを中心に各切刃チップ8、9、10、11から180度位相を異ならした位置に設定している。
【0023】
従って、第2のサポート部14、第3のサポート部15、第4のサポート部16は、第1の刃部2の切屑排出溝6のポケット面12aの平面上から僅かづつ切屑排出溝6の内側に張り出した状態になり、また、各ポケット面12a、12b、12c、12dは、各刃部2、3、4、5の径が大きくなるに連れて軸心側の肉厚が厚くなる方向に僅かづつ傾斜させている。
【0024】
このため、図2に示すように、各刃部2、3、4、5の径が大きくなる程、切屑排出溝6の溝底の径(例えば第1の刃部2の溝底の径であればT2、第2の刃部の溝底の径であればT3)は大きくなる。
【0025】
尚、段付リーマ1の軸心には、図3に示すような油路18が形成され、クーラントを流通させることが出来るようにしている。
【0026】
かかる段付リーマ1において、軸周りに回転する各切刃チップ8、9、10、11が下穴内面を切削しつつ加工送りされると、各サポート部13、14、15、16は穴内面に摺接して切削負荷を受けるが、各サポート部13、14、15、16は、各切刃チップ8、9、10、11から180度位相が異なった位置に設定されているため、すべての刃部2、3、4、5におけるサポート性は非常に良好である。
【0027】
しかも、各刃部2、3、4、5の径が大きくなる程工具が受けるネジリトルクは大きくなるが、切屑排出溝6の溝底の径を大きくして軸心側の肉厚を厚くするようにしているため、刃具の剛性を高めることが出来、例えば撓み等による加工精度の低下を防止出来る。
【0028】
ところで、本段付リーマ1の第1の刃部2の切刃チップ8は、図4に示すような底刃17を備えている。
【0029】
つまり、図5に示すようなバルブボディWに段付下穴Hを形成する際、ドリル加工を行うことなく鋳抜穴として形成しようとすると、鋳抜きピンの引き抜き性を良くするため貫通穴としないで盲穴にして、バリ等による抜き出し阻害要因を避けることが望ましい。
【0030】
そこで、段付下穴Hとして最先端部に薄い膜状の未加工部分Mを残した盲穴状の鋳抜穴を形成し、これをリーマ1先端面の底刃17によって同時に加工し未加工部分Mを取り除くようにしたものである。
【0031】
また、以上のような切刃チップ8、9、10、11は、例えばワイヤカット法で加工する。
【0032】
そして、このように段付下穴Hを鋳抜穴とすることで、ドリル加工の手間を省くことが出来、生産効率が高まる。
【0033】
また、本実施例では段付下穴Hを2段の異径穴とし、リーマ1を段付下穴Hに挿入した際、第1の刃部2の切刃チップ8を段付下穴Hの小径入口部分に当接させて加工を開始し、その後、第4の刃部5の切刃チップ11を大径入口部分に当接させて両持ち支持の状態で加工することで、工具のあおられを防止し加工精度を高めるようにしている。
【0034】
そして、このような段付ドリル1を用いて加工した結果、従来の段付リーマより同軸度が向上することが実証された。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本発明の段付リーマは、すべての外周切刃に対して軸心を中心に180度位相が異なる位置に夫々のサポート部を形成するようにしたため、サポート性が良好になり同軸度を高めることが出来る。
また、切削排出溝の溝底の径を、例えば刃部の径が大きくなった時に合せて大きくするようにすれば、工具の芯径が大きくなって剛性が高まりネジリ負荷を有効に受けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本段付リーマの斜視図
【図2】同正面図
【図3】同側面図
【図4】第1の刃部の切刃チップに形成した底刃の拡大図
【図5】加工状態を示す説明図
【図6】従来の段付リーマの正面図
【符号の説明】
1 段付リーマ
2 第1の刃部
3 第2の刃部
4 第3の刃部
5 第4の刃部
6 切屑排出溝
8、9、10、11 切刃チップ
13 第1のサポート部
14 第2のサポート部
15 第3のサポート部
16 第4のサポート部
17 底刃
T2 第1の刃部の溝底の径
T3 第2の刃部の溝底の径
P 軸心
Claims (1)
- 複数の異径部が連なる刃部外周に奇数個の切屑排出溝を形成し、
これら切屑排出溝の一方側の壁面の外周陵線部であって各異径部の軸方向先端に夫々の外周切刃を設けるようにした段付リーマにおいて、
前記異径部の各外周切刃を軸方向に沿って同一線上に配置し、前記各外周切刃に対して軸心を中心に180度位相が異なる位置に形成するサポート部と、
前記サポート部から前記排出溝の溝底へ延びる平面で形成するとともに、手前の刃部より奥の刃部の径が大きくなるように段付リーマを見たときに、隣合う切屑排出溝で挟まれた部位で且つその軸心側の肉厚が手前の刃部より奥の刃部が厚くなるように傾斜して形成するポケット面と、
手前に対して奥の方が大径となるように、前記各刃部の径に合わせて、その径が変化している前記排出溝の溝底と、
を備えたことを特徴とする段付リーマ。
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