JP5846164B2 - ボーリング加工工具、およびそれを用いたボーリング加工方法 - Google Patents

ボーリング加工工具、およびそれを用いたボーリング加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、ワークに形成された複数の貫通孔を加工するボーリング加工工具、およびそれを用いたボーリング加工方法に関する。
従来、ワークに形成された穴の内周面を切削することにより、当該穴の内径を調整するボーリング加工工具が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
一般的に、従来のボーリング加工工具は、一端部が工作機械に取り付けられて軸心回りに回転駆動される略円柱状の軸部材と、当該軸部材に固定され、ワークの穴の内周面を切削する切削刃と、前記軸部材に固定され、前記切削刃によって切削されたワークの穴の内周面上を摺動するガイドとを具備する。
このようなボーリング加工工具においては、ガイドが切削刃によって切削されたワークの穴の内周面上を摺動することにより、軸部材の振動を抑制しているため、ワークの穴の内周面を精度良く切削することが可能となっている。
しかしながら、上記のようなボーリング加工工具を用いて、同軸上に複数の貫通孔が形成されたワーク(例えば、シリンダヘッド、およびシリンダブロック)にボーリング加工を施す場合には、ワークの貫通孔の内周面を精度良く切削することが困難である。
以下では、図12を参照して、従来のボーリング加工工具100を用いて、ワークWにボーリング加工を施す際に生じる問題について詳細に説明する。
図12に示すように、ボーリング加工工具100は、軸部材101と、切削刃102と、ガイド103とを具備する。
軸部材101は、略円柱状に形成され、工作機械に取り付けるための取付部101aが一端部(図12における左端部)に形成されている。
切削刃102は、軸部材101の外周面から径方向外側に突出するように、軸部材101の他端部(図12における右端部)に固定されている。
ガイド103は、軸部材101の外周面から径方向外側に突出するように、軸部材101の他端から取付部101a近傍にかけて軸方向へ連続的に設けられている。ガイド103は、軸部材101の周方向において、切削刃102と対向するように配置されている。
ワークWは、カムシャフトおよびクランクシャフト等の回転軸を支持するための四つの支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4を有する。
支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4には、それぞれ四つの貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4が同軸上に形成されている。
ボーリング加工工具100は、貫通孔Wh1、貫通孔Wh2、貫通孔Wh3、貫通孔Wh4の順で、各貫通孔の内周面を切削刃102によって切削する。
ボーリング加工工具100の軸部材101は、ワークWの最も奥に位置する貫通孔Wh4にも切削刃102およびガイド103が到達するように、一つの貫通孔のみを有するワークにボーリング加工を施すためのボーリング加工工具の軸部材よりも、軸方向の寸法を大きくする必要がある。軸部材101は、その一端部(取付部101a)のみが工作機械によって支持された片持ち梁の状態であるため、軸部材101における取付部101aから切削刃102が固定された部分までの距離が大きくなると、切削刃102が固定された部分が軸方向に直交する方向に振動し(図12における黒塗り矢印参照)、切削刃102によって切削される各貫通孔の内径が狙いの値よりも大きくなるおそれがある。
特開2006−305641号公報
本発明は、ワークに形成された複数の貫通孔の内周面を精度良く切削可能な技術を提供することを課題とする。
本発明に係るボーリング加工工具は、同軸上に形成された互いに離間する複数の貫通孔を有するワークを加工対象とし、当該複数の貫通孔に進入して順にボーリング加工を施すボーリング加工工具であって、一端部が工作機械に取り付けられ、当該工作機械によって軸心回りに回転駆動される軸部材と、前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記ワークの貫通孔が所定の内径となるように、当該貫通孔の内周面を切削する第一切削刃と、前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記第一切削刃によって切削された貫通孔の内周面上を摺動する第一ガイドと、前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記第一切削刃によって切削された貫通孔の内径が所定の内径となるように、当該貫通孔の内周面を切削する第二切削刃と、前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記第二切削刃によって切削された貫通孔の内周面上を摺動する第二ガイドと、を具備し、前記第二切削刃は、前記第一切削刃と所定の間隔を空けて、前記第一切削刃よりも前記軸部材の一端部側に配置され、前記第一ガイドは、前記第二切削刃によって前記貫通孔の内周面が切削される際、前記第一切削刃によって切削された、少なくとも一つの貫通孔の内周面を摺動するように配置され、前記第二ガイドは、前記第二切削刃によって前記貫通孔の内周面が切削される際、前記第二切削刃によって切削された、少なくとも一つの貫通孔の内周面を摺動するように、前記第一ガイドよりも前記軸部材の一端部側に配置される。
本発明に係るボーリング加工工具において、前記軸部材は、所定の外径を有し、前記軸部材の他端から軸方向における中途部にかけて形成される小径部と、前記小径部よりも大きい外径を有し、前記小径部よりも前記軸部材の一端部側において、前記小径部と同心的かつ一体的に形成される大径部と、を有し、前記小径部には、前記第一切削刃および前記第一ガイドが固定され、前記大径部には、前記第二切削刃および前記第二ガイドが固定されることが好ましい。
本発明に係るボーリング加工工具において、前記第一切削刃は、前記第二切削刃によって前記貫通孔の内周面が切削される際、前記第二切削刃によって切削されている貫通孔に隣接する貫通孔の内周面を切削可能な位置に配置されることが好ましい。
本発明に係るボーリング加工方法は、上記のボーリング加工工具を用いて、前記ワークにおける複数の貫通孔にボーリング加工を施すボーリング加工方法であって、一端部に取り付けられる前記工作機械によって軸心回りに回転駆動され、軸方向の寸法が前記軸部材よりも小さい短軸部材と、前記短軸部材の外周面から突出するように前記短軸部材に固定され、前記ワークの貫通孔が、前記第一切削刃の加工径以上かつ前記第二切削刃の加工径よりも小さい内径となるように、当該貫通孔の内周面を切削する切削刃と、当該切削刃によって切削された貫通孔の内周面上を摺動するガイドと、を具備する基準孔形成工具を用意する工程と、前記ワークにおける複数の貫通孔のうちの一端に位置する貫通孔の内周面を、前記基準孔形成工具の切削刃によって切削することによって、当該貫通孔を基準孔とする工程と、前記基準孔に前記ボーリング加工工具の軸部材を挿通させ、前記基準孔の内周面を前記第二切削刃によって切削する工程と、前記基準孔に隣接する貫通孔の内周面を前記第一切削刃によって切削する工程と、を含む。
本発明によれば、ワークに形成された複数の貫通孔の内周面を精度良く切削できる。
(a)は、本発明に係るボーリング加工工具の側面図を示す図であり、(b)は、同じく切断端面図。 第一切削刃および第二切削刃、ならびに第一ガイドおよび第二ガイドの回転軌跡の外径を示す図。 本発明に係るボーリング加工工具を用いたボーリング加工工程を示す図。 基準孔形成工程を示す図。 第一切削工程を示す図。 第一切削刃および第二切削刃によって、ワークにおける隣接する貫通孔が同時に切削される様子を示す図。 第二切削工程を示す図。 第三切削工程を示す図。 第四切削工程を示す図。 ワークにおける隣接する支持部の間隔が小さい場合を示す図。 ワークにおける隣接する支持部の間隔が大きい場合を示す図。 従来のボーリング加工工具を用いて、ワークにボーリング加工を施す様子を示す図。
以下では、図1および図2を参照して、本発明に係るボーリング加工工具の一実施形態であるボーリング加工工具1について説明する。
ボーリング加工工具1は、ワークWにボーリング加工を施すための工具である。
ワークWは、同軸上に複数の貫通孔が形成された、シリンダヘッドおよびシリンダブロック等の部材である。本実施形態において、ワークWは、内燃機関の一部を成すシリンダヘッドである。ワークWは、カムシャフトを支持するための四つの支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4を有し、支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4には、それぞれ四つの貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4が同軸上に形成されている(図12参照)。
支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4は、同一の厚み(図12における左右寸法)を有する壁状に形成され、互いに同一の間隔を空けて配置されている。
貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4は、それぞれ支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4を厚み方向に貫通するように形成されている。貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4は、支持部Ws1・Ws2・Ws3・Ws4の厚み方向から見て円状に形成され、同軸上に配置されている。貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4は、同一の内径に設定されている。
なお、以下において、説明の便宜上、図1(a)における左右方向をボーリング加工工具1の左右方向と定義する。
図1(a)に示すように、ボーリング加工工具1は、軸部材11と、第一切削刃12と、第一ガイド13と、第二切削刃14と、第二ガイド15とを具備する。
軸部材11は、略円柱状に形成され、左右方向に延出している。
軸部材11は、取付部11aと、小径部11bと、大径部11cとを有する。
取付部11aは、軸部材11の左端部に形成され、マシニングセンタ等の工作機械に取り付けられる。つまり、軸部材11は、取付部11aを介して前記工作機械に取り付けられ、当該工作機械によって軸心回りに回転駆動される。
小径部11bは、大径部11cの外径よりも小さく、かつ、ワークWの貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4の内径と同程度の外径を有する。小径部11bは、軸部材11の右端部側に位置する。詳細には、小径部11bは、軸部材11の右端から軸方向における中途部にかけて形成されている。
大径部11cは、小径部11bの外径よりも大きい外径を有する。大径部11cは、軸部材11の左端部側に位置する。詳細には、大径部11cは、取付部11aから小径部11bにかけて、取付部11aおよび小径部11bと同心的かつ一体的に形成されている。
第一切削刃12は、ワークWにおける各貫通孔の内周面を切削可能に構成された部材である。第一切削刃12は、小径部11bの外周面から径方向外側に向けて突出するように、小径部11bの右端部に固定されている。第一切削刃12は、軸部材11の回転に伴って回転し、ワークWの各貫通孔が所定の内径となるように各貫通孔の内周面を切削する。第一切削刃12の加工径は、第二切削刃14の加工径よりも小さくなるように設定されている。
ここで、加工径とは、第一切削刃12および第二切削刃14等の、ワークWにおける各貫通孔の内周面を切削する部材の回転軌跡の外径である。つまり、第一切削刃12の加工径は、第一切削刃12によって内周面が切削された貫通孔の内径に一致する。
第一ガイド13は、第一切削刃12によって切削された貫通孔の内周面上を摺動可能に構成された部材である。第一ガイド13は、小径部11bの外周面から径方向外側に向けて突出するように、小径部11bの軸方向における両端に亘って連続的に設けられ、ろう付けによって小径部11bの外周面に固定されている。
図1(b)に示すように、第一ガイド13は、小径部11bの周方向において、第一切削刃12と対向するように配置されている。つまり、第一ガイド13および第一切削刃12は、互いに180度の位相差をもって配置されている。
図2に示すように、第一ガイド13の摺動面(図2における下端面)から軸部材11の軸心までの距離は、第一切削刃12の先端(図2における上端)から軸部材11の軸心までの距離と等しくなるように設定されている。つまり、第一ガイド13の回転軌跡の外径は、第一切削刃12の加工径と同一である。なお、以下において、第一ガイド13および第二ガイド15等の、ワークWにおける各貫通孔の内周面を摺動する部材の回転軌跡の外径を、ガイド径と記す。
第一ガイド13は、軸部材11の回転に伴って、第一切削刃12によって切削された貫通孔の内周面上を摺動することにより、第一切削刃12が貫通孔の内周面を切削する際に、軸部材11が軸方向に直交する方向に振動することを抑制する。
第二切削刃14は、第一切削刃12によって切削された貫通孔の内周面を切削可能に構成された部材である。
図1(a)に示すように、第二切削刃14は、大径部11cの外周面から径方向外側に向けて突出するように、大径部11cの右端部に固定されている。第二切削刃14は、軸部材11の周方向において、第一切削刃12と同位置に配置されている。第二切削刃14の加工径は、第一切削刃12の加工径よりも大きくなるように設定されている。第二切削刃14は、軸部材11の回転に伴って回転し、第一切削刃12によって切削された貫通孔が所定の内径となるように当該貫通孔の内周面を切削する。
第二ガイド15は、第二切削刃14によって切削された貫通孔の内周面上を摺動可能に構成された部材である。第二ガイド15は、大径部11cの外周面から径方向外側に向けて突出するように、大径部11cの右端から取付部11a近傍にかけて連続的に設けられ、ろう付けによって大径部11cの外周面に固定されている。第二ガイド15は、軸部材11の周方向において、第一ガイド13と同位置に配置されている。つまり、第二ガイド15は、大径部11cの周方向において、第二切削刃14と対向するように配置されている。
図2に示すように、第二ガイド15の摺動面(図2における下端面)から軸部材11の軸心までの距離は、第二切削刃14の先端(図2における上端)から軸部材11の軸心までの距離と等しくなるように設定されている。つまり、第二ガイド15のガイド径は、第二切削刃14の加工径と同一である。
第二ガイド15は、軸部材11の回転に伴って、第二切削刃14によって切削された貫通孔の内周面上を摺動することにより、第二切削刃14が貫通孔の内周面を切削する際に、軸部材11が軸方向に直交する方向に振動することを抑制する。
以下では、図3〜図11を参照して、本発明に係るボーリング加工方法の一実施形態である、ボーリング加工工具1を用いたボーリング加工工程S1について説明する。
ボーリング加工工程S1は、ボーリング加工工具1を用いて、ワークWの貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4の内径を調整する工程である。
図3に示すように、ボーリング加工工程S1は、基準孔形成工程S10と、第一切削工程S20と、第二切削工程S30と、第三切削工程S40と、第四切削工程S50とを含む。
基準孔形成工程S10は、基準孔形成工具2を用いて、貫通孔Wh1の内周面を切削する工程である。
図4に示すように、基準孔形成工具2は、短軸部材21と、切削刃22と、ガイド23とを具備する。
なお、以下において、説明の便宜上、図4における左右方向を基準孔形成工具2の左右方向と定義する。
短軸部材21は、略円柱状に形成され、前記工作機械に取り付けるための取付部21aが左端部に形成されている。短軸部材21の軸方向における寸法は、ボーリング加工工具1の軸部材11のものよりも小さく設定されている。短軸部材21における取付部21a以外の部分の外径は、貫通孔Wh1の内径と同程度に設定されている。
短軸部材21は、取付部21aを介して前記工作機械に取り付けられ、当該工作機械によって軸心回りに回転駆動される。
切削刃22は、ワークWの貫通孔Wh1の内周面を切削可能に構成された部材である。切削刃22は、短軸部材21の外周面から径方向外側に向けて突出するように、短軸部材21の右端部に固定されている。切削刃22は、短軸部材21の回転に伴って回転し、貫通孔Wh1が所定の内径となるように貫通孔Wh1の内周面を切削する。切削刃22の加工径は、第一切削刃12の加工径以上、かつ、第二切削刃14の加工径よりも小さくなるように設定されている。本実施形態において、切削刃22の加工径は、第一切削刃12の加工径と同程度に設定されている。
ガイド23は、切削刃22によって切削された貫通孔Wh1の内周面上を摺動可能に構成された部材である。ガイド23は、短軸部材21の外周面から径方向外側に向けて突出するように、短軸部材21の右端から取付部21a近傍にかけて連続的に設けられ、ろう付けによって短軸部材21の外周面に固定されている。ガイド23は、短軸部材21の周方向において、切削刃22と対向するように配置されている。ガイド23のガイド径は、切削刃22の加工径と同一である。
ガイド23は、短軸部材21の回転に伴って、切削刃22によって切削された貫通孔Wh1の内周面上を摺動することにより、切削刃22が貫通孔Wh1の内周面を切削する際に、短軸部材21が軸方向に直交する方向に振動することを抑制する。
基準孔形成工程S10においては、前記工作機械によって駆動された基準孔形成工具2を、その右端部からワークWの貫通孔Wh1に挿入し、切削刃22が貫通孔Wh1を通過するまで右方向に移動させる。
こうして、貫通孔Wh1の内径が切削刃22の加工径と同一に調整される。
なお、基準孔形成工具2を貫通孔Wh1に挿入する際には、切削後の貫通孔Wh1の中心が適切な位置となるように、基準孔形成工具2の位置が調整される。そのため、貫通孔Wh1が適切な位置からずれている場合でも、基準孔形成工具2によって貫通孔Wh1の内周面を切削することによって、貫通孔Wh1の位置が修正されるのである。なお、短軸部材21の軸方向における寸法は、比較的小さいため、短軸部材21の左端部のみが前記工作機械によって支持された片持ち梁の状態であっても、短軸部材21が軸方向に直交する方向に振動することは抑制される。
このように、基準孔形成工具2によって切削された貫通孔Wh1の中心が適切な位置となるため、後の工程(第一切削工程S20)において、ボーリング加工工具1を貫通孔Wh1に挿入した際には、ボーリング加工工具1が適切な位置に配置されることとなる。つまり、基準孔形成工具2によって切削された貫通孔Wh1は、ボーリング加工工具1が適切な位置でワークWにボーリング加工を施すための基準孔として機能するのである。
貫通孔Wh1を切削した後は、基準孔形成工具2を左方向に移動させ、貫通孔Wh1から引き抜く。
第一切削工程S20は、ボーリング加工工具1を用いて、基準孔形成工具2によって切削された貫通孔Wh1を最終的な内径に調整する工程である。
図5に示すように、第一切削工程S20においては、まず、前記工作機械を停止した状態で、ボーリング加工工具1を、その右端部からワークWの貫通孔Wh1に挿入し、第一切削刃12が貫通孔Wh1を通過するまで右方向に移動させる。
そして、前記工作機械によって駆動されたボーリング加工工具1を、第二切削刃14が貫通孔Wh1を通過するまで右方向に移動させる。
こうして、貫通孔Wh1の内径が第二切削刃14の加工径と同一に調整される。
なお、本実施形態においては、軸部材11の小径部11bの軸方向における寸法は、ワークWにおける隣接する支持部の左右方向における一方の端面(例えば、支持部Ws1およびWs2の左端面)同士の距離と同程度に設定されているものとする。
そのため、第二切削刃14が貫通孔Wh1の内周面を切削すると同時に、第一切削刃12が貫通孔Wh2の内周面を切削することとなる。そして、第二切削刃14が貫通孔Wh1を通過すると同時に、第一切削刃12が貫通孔Wh2を通過し、貫通孔Wh2の内径が第一切削刃12の加工径と同一に調整される。
第一切削工程S20において、ボーリング加工工具1を貫通孔Wh1に挿入した際には、第一切削刃12によって貫通孔Wh1の内周面に傷が付くおそれがある。
しかしながら、基準孔形成工程S10において、基準孔形成工具2における切削刃22の加工径を、第一切削刃12の加工径と同程度とし、貫通孔Wh1が最終的な内径(第二切削刃14の加工径)よりも小さくなるように、基準孔形成工具2の切削刃22によって貫通孔Wh1を切削している。つまり、基準孔形成工具2の切削刃22によって、取り代が残るように貫通孔Wh1を切削している。
そのため、基準孔形成工具2の切削刃22によって切削された貫通孔Wh1の内周面は、第二切削刃14によって切削されることとなり、最終的に貫通孔Wh1の内周面に傷が残ることを防止できる。
図6に示すように、第一切削工程S20において、第二切削刃14が貫通孔Wh1の内周面を切削する際には、第一切削刃12が貫通孔Wh2の内周面を切削する。
この時、小径部11bおよび大径部11cが、それぞれ貫通孔Wh2および貫通孔Wh1に挿入された状態となる。
そのため、第一ガイド13が、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh2の内周面と、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh1の内周面とを摺動すると共に、第二ガイド15が、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh1の内周面を摺動することとなる。
このように、第二切削刃14の右側および左側において、軸部材11が第一ガイド13および第二ガイド15によって支持された状態となっている。更に、軸部材11の左端部に位置する取付部11a(図1(a)参照)が、前記工作機械によって支持されている。つまり、軸部材11は、両持ち梁の状態となっている。
これにより、軸部材11が、第二切削刃14が取り付けられた部分(大径部11cの右端部)において、軸方向に直交する方向に振動することを抑制することができる。
したがって、貫通孔Wh1の内径が狙いの値よりも大きくなることなく、貫通孔Wh1の内周面を精度良く切削することができる。
第二切削工程S30は、ボーリング加工工具1を用いて、貫通孔Wh2を最終的な内径に調整する工程である。
図7に示すように、第二切削工程S30においては、前記工作機械によって駆動されたボーリング加工工具1を、第二切削刃14が貫通孔Wh2を通過し、かつ、第一切削刃12が貫通孔Wh3を通過するまで右方向に移動させる。
こうして、貫通孔Wh2の内径が第二切削刃14の加工径と同一に調整されると共に、貫通孔Wh3の内径が第一切削刃12の加工径と同一に調整される。
第二切削工程S30において、第二切削刃14および第一切削刃12が貫通孔Wh2および貫通孔Wh3を切削する際には、第一ガイド13が、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh3の内周面と、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh2の内周面とを摺動すると共に、第二ガイド15が、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh2の内周面と、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh1の内周面とを摺動することとなる。
このように、第二切削刃14の右側および左側において、軸部材11が第一ガイド13および第二ガイド15によって支持された状態となっている。更に、軸部材11の左端部に位置する取付部11a(図1(a)参照)が、前記工作機械によって支持されている。つまり、軸部材11は、両持ち梁の状態となっている。
これにより、軸部材11が、第二切削刃14が取り付けられた部分(大径部11cの右端部)において、軸方向に直交する方向に振動することを抑制することができる。
したがって、貫通孔Wh2の内径が狙いの値よりも大きくなることなく、貫通孔Wh2の内周面を精度良く切削することができる。
第三切削工程S40は、ボーリング加工工具1を用いて、貫通孔Wh3を最終的な内径に調整する工程である。
図8に示すように、第三切削工程S40においては、前記工作機械によって駆動されたボーリング加工工具1を、第二切削刃14が貫通孔Wh3を通過し、かつ、第一切削刃12が貫通孔Wh4を通過するまで右方向に移動させる。
こうして、貫通孔Wh3の内径が第二切削刃14の加工径と同一に調整されると共に、貫通孔Wh4の内径が第一切削刃12の加工径と同一に調整される。
第三切削工程S40において、第二切削刃14および第一切削刃12が貫通孔Wh3および貫通孔Wh4を切削する際には、第一ガイド13が、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh4の内周面と、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh3の内周面とを摺動すると共に、第二ガイド15が、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh3の内周面と、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh2の内周面と、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh1の内周面とを摺動することとなる。
このように、第二切削刃14の右側および左側において、軸部材11が第一ガイド13および第二ガイド15によって支持された状態となっている。更に、軸部材11の左端部に位置する取付部11a(図1(a)参照)が、前記工作機械によって支持されている。つまり、軸部材11は、両持ち梁の状態となっている。
これにより、軸部材11が、第二切削刃14が取り付けられた部分(大径部11cの右端部)において、軸方向に直交する方向に振動することを抑制することができる。
したがって、貫通孔Wh3の内径が狙いの値よりも大きくなることなく、貫通孔Wh3の内周面を精度良く切削することができる。
第四切削工程S50は、ボーリング加工工具1を用いて、貫通孔Wh4を最終的な内径に調整する工程である。
図9に示すように、第四切削工程S50においては、前記工作機械によって駆動されたボーリング加工工具1を、第二切削刃14が貫通孔Wh4を通過するまで右方向に移動させる。
こうして、貫通孔Wh4の内径が第二切削刃14の加工径と同一に調整される。
第四切削工程S50において、第二切削刃14が貫通孔Wh4を切削する際には、第一ガイド13が、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh4の内周面を摺動すると共に、第二ガイド15が、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh4の内周面と、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh3の内周面と、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh2の内周面と、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh1の内周面とを摺動することとなる。
このように、第二切削刃14の右側および左側において、軸部材11が第一ガイド13および第二ガイド15によって支持された状態となっている。更に、軸部材11の左端部に位置する取付部11a(図1(a)参照)が、前記工作機械によって支持されている。つまり、軸部材11は、両持ち梁の状態となっている。
これにより、軸部材11が、第二切削刃14が取り付けられた部分(大径部11cの右端部)において、軸方向に直交する方向に振動することを抑制することができる。
したがって、貫通孔Wh4の内径が狙いの値よりも大きくなることなく、貫通孔Wh3の内周面を精度良く切削することができる。
以上のように、ボーリング加工工程S1においては、基準孔形成工程S10、第一切削工程S20、第二切削工程S30、第三切削工程S40、および第四切削工程S50を順に行うことによって、ワークWの貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4の内径を調整する。
なお、基準孔形成工程S10を行わずに、第一切削工程S20において、貫通孔Wh1を第一切削刃12によって切削することも可能である。
また、本実施形態においては、軸部材11の小径部11bの軸方向における寸法を、ワークWにおける隣接する支持部の左右方向における一方の端面同士の距離と同程度に設定し、第二切削刃14がワークWの貫通孔を切削する工程と、第一切削刃12がワークWの貫通孔を切削する工程とを同時に行っているが、本構成に限定するものではない。
例えば、図10に示すように、ワークWにおける支持部Ws1と支持部Ws2との間隔が比較的小さい場合には、第二切削刃14が貫通孔Wh1を切削する工程と、第一切削刃12が貫通孔Wh2を切削する工程とが時間差をもって行われる。
この場合、第二切削刃14が貫通孔Wh1を切削する際には、第一ガイド13が、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh2の内周面と、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh1の内周面とを摺動すると共に、第二ガイド15が、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh1の内周面を摺動することとなる。
また、図11に示すように、ワークWにおける支持部Ws1と支持部Ws2との間隔が比較的長い場合には、第二切削刃14が貫通孔Wh1を切削する工程と、第一切削刃12が貫通孔Wh2を切削する工程とが時間差をもって行われる。
この場合、第二切削刃14が貫通孔Wh1を切削する際には、第一ガイド13が、第一切削刃12によって切削された貫通孔Wh1の内周面を摺動すると共に、第二ガイド15が、第二切削刃14によって切削された貫通孔Wh1の内周面を摺動することとなる。
このように、ワークWにおける隣接する支持部の間隔に関係なく、第二切削刃14がワークWの貫通孔を切削する際には、軸部材11が第二切削刃14の右側および左側にて第一ガイド13および第二ガイド15によって支持された状態となる。
したがって、ボーリング加工工具1によれば、種々のワークWに対して、汎用的にボーリング加工を施すことができる。
なお、図10および図11においては、説明の便宜上、支持部Ws1および支持部Ws2のみを図示している。
また、本実施形態においては、第一ガイド13を、小径部11bの軸方向における全域に連続的に形成し、第二ガイド15を大径部11cの軸方向における略全域に連続的に形成しているが、本構成に限定するものではない。
第一ガイド13は、第二切削刃14によってワークWの貫通孔が切削される際、第一切削刃12によって切削された、少なくとも一つの貫通孔の内周面を摺動するように配置されていればよい。更に、第二ガイド15は、第二切削刃14によってワークWの貫通孔が切削される際、第二切削刃14によって切削された、少なくとも一つの貫通孔の内周面を摺動するように配置されていればよい。
また、本実施形態においては、軸部材11に小径部11bおよび大径部11cを形成したが、軸部材11における取付部11a以外の部分を同一径としてもよい。
この場合、第一切削刃12の加工径が第二切削刃14の加工径よりも小さくなるように、第一切削刃12および第二切削刃14の位置を調整すればよい。更に、第一ガイド13のガイド径が第一切削刃12の加工径と同一となるように、第一ガイド13の摺動面から軸部材11の軸心までの距離を変更すると共に、第二ガイド15のガイド径が第二切削刃14の加工径と同一となるように、第二ガイド15の摺動面から軸部材11の軸心までの距離を変更すればよい。
また、軸部材11の軸方向における第一切削刃12および第二切削刃14の位置を変更可能に構成してもよい。
これにより、ワークWにおける隣接する支持部の間隔が変わった場合においても、第一切削刃12および第二切削刃14によって、ワークWにおける隣接する支持部に形成された貫通孔を同時に切削することができる。
したがって、第二切削刃14が貫通孔を切削する際、第一切削刃12が切削した貫通孔の内周面を第一ガイド13が摺動することとなるため、ワークWの貫通孔を精度良く切削することができる。
また、本実施形態においては、ボーリング加工工具1の加工対象として、四つの貫通孔Wh1・Wh2・Wh3・Wh4を有するワークWを採用したが、少なくとも二つの貫通孔が設けられていればよい。
1 ボーリング加工工具
2 基準孔形成工具
11 軸部材
11a 取付部
11b 小径部
11c 大径部
12 第一切削刃
13 第一ガイド
14 第二切削刃
15 第二ガイド
21 短軸部材
22 切削刃
23 ガイド
W ワーク
Ws1、Ws2、Ws3、Ws4 支持部
Wh1、Wh2、Wh3、Wh4 貫通孔

Claims (4)

  1. 同軸上に形成された互いに離間する複数の貫通孔を有するワークを加工対象とし、当該複数の貫通孔に進入して順にボーリング加工を施すボーリング加工工具であって、
    一端部が工作機械に取り付けられ、当該工作機械によって軸心回りに回転駆動される軸部材と、
    前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記ワークの貫通孔が所定の内径となるように、当該貫通孔の内周面を切削する第一切削刃と、
    前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記第一切削刃によって切削された貫通孔の内周面上を摺動する第一ガイドと、
    前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記第一切削刃によって切削された貫通孔の内径が所定の内径となるように、当該貫通孔の内周面を切削する第二切削刃と、
    前記軸部材の外周面から突出するように前記軸部材に固定され、前記第二切削刃によって切削された貫通孔の内周面上を摺動する第二ガイドと、を具備し、
    前記第二切削刃は、前記第一切削刃と所定の間隔を空けて、前記第一切削刃よりも前記軸部材の一端部側に配置され、
    前記第一ガイドは、前記第二切削刃によって前記貫通孔の内周面が切削される際、前記第一切削刃によって切削された、少なくとも一つの貫通孔の内周面を摺動するように配置され、
    前記第二ガイドは、前記第二切削刃によって前記貫通孔の内周面が切削される際、前記第二切削刃によって切削された、少なくとも一つの貫通孔の内周面を摺動するように、前記第一ガイドよりも前記軸部材の一端部側に配置される、
    ことを特徴とするボーリング加工工具。
  2. 前記軸部材は、
    所定の外径を有し、前記軸部材の他端から軸方向における中途部にかけて形成される小径部と、
    前記小径部よりも大きい外径を有し、前記小径部よりも前記軸部材の一端部側において、前記小径部と同心的かつ一体的に形成される大径部と、を有し、
    前記小径部には、前記第一切削刃および前記第一ガイドが固定され、
    前記大径部には、前記第二切削刃および前記第二ガイドが固定される、
    ことを特徴とする請求項1に記載のボーリング加工工具。
  3. 前記第一切削刃は、前記第二切削刃によって前記貫通孔の内周面が切削される際、前記第二切削刃によって切削されている貫通孔に隣接する貫通孔の内周面を切削可能な位置に配置される、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボーリング加工工具。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のボーリング加工工具を用いて、前記ワークにおける複数の貫通孔にボーリング加工を施すボーリング加工方法であって、
    一端部に取り付けられる前記工作機械によって軸心回りに回転駆動され、軸方向の寸法が前記軸部材よりも小さい短軸部材と、前記短軸部材の外周面から突出するように前記短軸部材に固定され、前記ワークの貫通孔が、前記第一切削刃の加工径以上かつ前記第二切削刃の加工径よりも小さい内径となるように、当該貫通孔の内周面を切削する切削刃と、当該切削刃によって切削された貫通孔の内周面上を摺動するガイドと、を具備する基準孔形成工具を用意する工程と、
    前記ワークにおける複数の貫通孔のうちの一端に位置する貫通孔の内周面を、前記基準孔形成工具の切削刃によって切削することによって、当該貫通孔を基準孔とする工程と、
    前記基準孔に前記ボーリング加工工具の軸部材を挿通させ、前記基準孔の内周面を前記第二切削刃によって切削する工程と、
    前記基準孔に隣接する貫通孔の内周面を前記第一切削刃によって切削する工程と、を含む、
    ことを特徴とするボーリング加工方法。
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