JP3587393B2 - 硫黄含有ポリマー - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、プラスチック光学材料として、透明性に優れ、反射防止膜、光学レンズ、位相差フィルム等に好適に利用し得る硫黄含有ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光学材料は、無機ガラスに比べ軽量で、割れにくく、その上加工が容易であることから、近年は眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子として急速に普及してきている。
【0003】
上記プラスチック光学材料として現在広く用いられているものとしては、例えば、アクリル樹脂、ジエチレングリコールカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明性のプラスチック等が挙げられ、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートをラジカル重合させたもの等は、軽量で耐衝撃性に優れ、染色も容易で、切削、研磨等の加工性も良好である等の優れた性質を有しているが、屈折率(n)が無機ガラスの1.52に比べて1.50と低いため、例えば、ガラスレンズと同等の光学物性を得るには、レンズの中心厚、コバ厚及び曲率等を大きくする必要があり、このため全体に肉厚になることが避けられない欠点を有していた。
【0004】
特開昭61−28513号公報には、特殊なフマル酸ジエステルの重合物が高屈折率を有し、上記目的に適する技術が開示されているが、屈折率は最高でも1.53程度であり、無機ガラスを代替するものとしては必ずしも充分なものではなかった。
【0005】
プラスチック光学材料を、最近の高速応答性液晶の位相差補償を行うための位相差補償板として利用するには、さらに屈折率の高い材料が求められている。しかし、従来の光学材料では屈折率が最高で1.65程度であり、液晶の高性能化に対応しきれていないという欠点を有していた。
【0006】
また、プラスチック光学材料を、選択反射膜、選択透過膜等の光学多層膜として利用するには、1.70以上というさらに高い屈折率が要求されるが、そのような高屈折率を有するプラスチック光学材料は乏しく、また、1.70を超える屈折率を有していても透明性や材料の着色等の問題点を有しており、実際に利用できるものは存在しなかった。現在使用されている光学多層膜は無機ガラスの蒸着で作成されているが、大面積の蒸着が難しく高コストになるため、潜在的な市場要求はあるものの汎用的に利用されるには至っていない状態であり、簡便な塗工法によって塗膜を形成し得る高屈折率を有するプラスチック光学材料に対する要求が高まっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、プラスチック光学レンズ及び位相差フィルムとして使用できる高い屈折率を有し、しかも透明性に優れた硫黄含有ポリマーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の式(I)で表される繰り返し単位(A)、次の式(II)で表される繰り返し単位(B)、及び、次の一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種(C)よりなる芳香族ポリエーテルスルフィド共重合体であって、(A)のモル分率が0〜60モル%であり、〔(A)+(B)〕のモル分率が99〜5モル%であり、(C)のモル分率が1〜95モル%であり、還元粘度が0.30〜0.75dl/g(30℃、N−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)であることよりなる硫黄含有ポリマーである。
【0009】
【化2】
Figure 0003587393
【0010】
式中、R、Rは、同一又は異なって、水素、炭素数13以下のアルキル基又は炭素数13以下のアリール基を表す。また、R、Rは、フェニル基に置換する置換基を表し、その数は1個に限定されず、2個、3個又は4個であってもよい。Xは、SO、SO、CO、O、炭素数13以下のアルキレン基又は炭素数13以下の2価の芳香族基を表す。nは、1又は2を表す。
【0011】
上記式(I)の繰り返し単位を形成しうるモノマーとしては、例えば、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4−ヒドロキシ−4′−フルオロビフェニル、
4−ヒドロキシ−4′−クロロビフェニル、4−ヒドロキシ−4′−ブロモビフェニル、4,4′−ジフルオロビフェニル、4,4′−ジクロロビフェニル、4,4′−ジブロモビフェニル等が挙げられ、なかでも、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4−ヒドロキシ−4′−クロロビフェニル、4,4′−ジブロモビフェニルが好ましく用いられる。
【0012】
上記式(II)の繰り返し単位を形成しうるモノマーとしては、例えば、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4−ヒドロキシ−4′−フルオロジフェニルスルフィド、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルフィド、4−ヒドロキシ−4′−ブロモジフェニルスルフィド、4,4′−ジクロロジフェニルスルフィド、4,4′−ジフルオロジフェニルスルフィド等が挙げられ、なかでも、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルフィド、4,4′−ジクロロジフェニルスルフィドが好ましく用いられる。
【0013】
上記一般式(III)の繰り返し単位を形成しうるモノマーとしては、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジブロモジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−フルオロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ブロモジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジフルオロジフェニルスルホキシド、4,4′−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4′−ジブロモジフェニルスルホキシド、4−ヒドロキシ−4′−フルオロジフェニルスルホキシド、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルスルホキシド、4−ヒドロキシ−4′−ブロモジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジフルオロジフェニルケトン、4,4′−ジクロロジフェニルケトン、4,4′−ジブロモジフェニルケトン、4−ヒドロキシ−4′−フルオロジフェニルケトン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルケトン、4−ヒドロキシ−4′−ブロモジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジフルオロジフェニルエーテル、4,4′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジブロモジフェニルエーテル、4−ヒドロキシ−4′−フルオロジフェニルエーテル、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニルエーテル、4−ヒドロキシ−4′−ブロモジフェニルエーテル、4,4′−メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4′−エチリデンビスフェノール、4,4′−メチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)(ビスフェノールC)、4,4′−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2,6′−ジメチルフェノール)(テトラメチルビスフェノールA)、4,4′−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAP)4,4′−イソプロピリデンビス(2−フェニルフェノール)、4−クロロ−4′−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン、4−クロロ−4′−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルケトン等が挙げられ、なかでも、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジクロロジフェニルケトン、4−クロロ−4′−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン、4−クロロ−4′−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルケトン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAPが好ましく用いられる。
【0014】
本発明の硫黄含有ポリマーは、式(I)で表される繰り返し単位(A)、式(II)で表される繰り返し単位(B)、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種(C)よりなる芳香族ポリエーテルスルフィド共重合体であって、(A)のモル分率が0〜60モル%であり、〔(A)+(B)〕のモル分率が99〜5モル%であり、(C)のモル分率が1〜95モル%である。
【0015】
(A)のモル分率が60モル%を超えると、共重合体の結晶化度が高くなり、透明性が損なわれるので、上記範囲に限定される。好ましくは、10〜50モル%である。
式(I)で表される繰り返し単位は、nが2のときには、一般式(III)で表される繰り返し単位の一部に含まれる場合もある。この場合には、上記の計算をする際に、当該一般式(III)で表される繰り返し単位の一部は、(A)のモル分率中には含めないものとする。
【0016】
〔(A)+(B)〕のモル分率が99モル%を超え、又は、5モル%未満であると、屈折率の制御の効果がほとんどなくなるため、上記範囲に限定される。好ましくは98〜20モル%である。
【0017】
本発明の硫黄含有ポリマーの還元粘度は、0.30〜0.75dl/g(30℃、N−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)である。還元粘度が0.30dl/g未満であると、成形時に脆性破壊を起こし、0.75dl/gを超えると、成形時の応力歪みが成形体に残存し複屈折等が発生するので、上記範囲に限定される。
【0018】
本発明で用いられるモノマーに含まれる全ヒドロキシ基の数に対する全ハロゲン基の数は、0.95〜1.05の範囲であることが好ましい。上記範囲をはずれると、重合反応が阻害され、還元粘度0.30dl/g未満の重合体しか得られないので、好ましくない。
【0019】
本発明の硫黄含有ポリマーは、公知の方法によって製造され、好適には極性溶媒中でアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩の存在下で加熱重合する求核置換重縮合法を用いるとよい。
【0020】
上記反応で使用される極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン等のスルホン系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリン等のアミド系溶媒等が好適に用いられ、上記極性溶媒は、単独でも2種以上混合して用いてもよい。また、必要に応じて、水を除去する目的で、トルエン、クロロベンゼン等の水と共沸する溶媒を用いてもよい。
【0021】
上記アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム等が挙げられる。上記アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、重炭酸カリウム等が挙げられ、なかでも、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムが好ましい。
【0022】
上記重合反応を行う際の重合温度は、一般に120〜350℃の範囲であるが、好ましくは150〜300℃の範囲である。120℃未満であると、重合反応が進まず、350℃を超えると、副反応が増加して着色が激しくなるので好ましくない。
【0023】
上記重合反応を行う際には、重合漕にすべてのモノマーを一括して投入する方法以外に、分子構造を制御する目的で、一部のモノマーを重合後期に投入する方法をとることができる。また、重合を促進するために、重合に先立ち、上記の水と共沸する溶媒を用いて、還流脱水を行ってもよい。
【0024】
また、上記反応において、副生成物としてアルカリ金属塩が生成するが、ポリマーに対する良溶媒で反応混合物を希釈した後に、貧溶媒中に加えてポリマーを析出させて更に適切な洗浄液でポリマーを洗浄する再沈法、又は、固化した反応固化物を粉砕した後に、適切な溶媒で濾過又は抽出する粉砕抽出法のような公知の方法によって用いられた重合溶剤と共に除去することができる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を掲げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
攪拌機、ガス導入管、温度計及びデーンシュターク管を付した凝縮器を備えた反応容器に、4,4′−ジヒドロキシビフェニル44.47重量部、4,4′−ジクロロジフェニルスルフィド61.25重量部、ビスフェノールA13.70重量部、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン17.23重量部、無水炭酸カリウム45.6重量部を仕込み窒素置換を行った。次に窒素雰囲気下でN−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」)500重量部、トルエン200重量部を仕込み攪拌しながら昇温を開始した。180℃に達したところで昇温を停止して、その状態で5時間、トルエンと水を共沸させて還流脱水を行った。次に190℃に昇温し、NMPを2000重量部注ぎ、次に大量のメタノール−アセトン混合溶媒中に溶液を注ぎ、ホモジナイザーで攪拌しながら析出させた。そして、メタノール、水と順次洗浄することにより、溶媒と塩化カリウムを除去した。
【0027】
得られたポリマーの還元粘度は0.48dl/g(30℃、N−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)であった。次にこのポリマーを1軸型押出機でペレット化した。更に射出成形機で温度300℃の条件にて0.5×50×105mmの平板を作成した。同試験片を用いて分子量(還元粘度)、透明性、屈折率(n)の試験を行った。結果を表1に示した。
【0028】
屈折率は、自動エリプソメーター(溝尻光学社製、DVA−36L型)を用いて、波長632.8nmで測定した。
透明性は、全光線透過率が75%以上のものを○、75%未満のものを不透明と判断した。
なお、表1中、A〜Mは、下記の化合物又は繰り返し単位を表す。
【0029】
【化3】
Figure 0003587393
【0030】
実施例2〜13
モノマーの種類及びその分量を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして重合、洗浄、成形、評価を行った。結果を表1に示した。
【0031】
実施例14
攪拌機、ガス導入管、温度計及び還流脱水装置を備えた反応容器に、4,4′−ジヒドロキシビフェニル33.52重量部、4,4′−ジブロモビフェニル37.70重量部、4,4′−ジクロロジフェニルスルフィド15.31重量部、4−クロロ−4′−(p−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン82.76重量部、無水炭酸カリウム45.6重量部を仕込み窒素置換を行った。次に窒素雰囲気下でNMP500重量部、トルエン200重量部を仕込み攪拌しながら昇温を開始した。180℃に達したところで昇温を停止して、その状態で5時間、トルエンと水を共沸させて還流脱水を行った。次に系中からトルエンを除去した上で容器を密閉し、280℃に昇温し、そのまま5時間重縮合反応を行った。反応終了後、容器を室温まで冷却し、常圧に戻した後に、NMP2000重量部を注ぎ、次に大量のメタノール−アセトン混合溶媒中に溶液を注ぎ、ホモジナイザーで攪拌しながら析出させた。そして、メタノール、水と順次洗浄することにより、溶媒と塩化カリウムを除去した。後は実施例1と同様に成形、評価を行った。結果を表1に示した。
【0032】
実施例15
モノマーの種類及びその分量を表1に示したように変更した以外は、実施例14と同様にして重合、洗浄、成形、評価を行った。結果を表1に示した。
【0033】
比較例1
ポリカーボネート樹脂パンライト(分子量10万、帝人化成社製)を実施例1と同様に成形し、物性測定を行い、結果を表2に示した。
【0034】
比較例2〜5
モノマーの分量を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして重合、評価を行った。結果を表2に示した。
【0035】
比較例6及び7
モノマーの分量を表2に示したように変更した以外は、実施例14と同様にして重合、評価を行った。結果を表2に示した。
【0036】
比較例8
モノマーの分量を表2に示したように変更し、重合時間を10時間に延長した以外は実施例1と同様にして重合、評価を行った。結果を表2に示した。
【0037】
【表1】
Figure 0003587393
【0038】
【表2】
Figure 0003587393
【0039】
【発明の効果】
本発明の硫黄含有ポリマーは、上述の構成を有する芳香族ポリエーテルスルフィド共重合体からなるので、高屈折率材料として、各種光学材料、特に光学レンズ、光学多層膜及び液晶表示用位相差フィルム等に好適に利用できる。

Claims (1)

  1. 次の式(I)で表される繰り返し単位(A)、次の式(II)で表される繰り返し単位(B)、及び、次の一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1種(C)よりなる芳香族ポリエーテルスルフィド共重合体であって、
    (A)のモル分率が10〜50モル%であり、〔(A)+(B)〕のモル分率が98〜20モル%であり、
    還元粘度が0.30〜0.75dl/g(30℃、N−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)であり、
    全光線透過率が75%以上であり、
    屈折率が1.65より大きい
    ことを特徴とする硫黄含有ポリマー。
    Figure 0003587393
    式中、R1 、R2 は、同一又は異なって、水素、炭素数13以下のアルキル基又は炭素数13以下のアリール基を表す。また、R1 、R2 は、フェニル基に置換する置換基を表し、その数は1個に限定されず、2個、3個又は4個であってもよい。Xは、SO、SO2 、CO、O、炭素数13以下のアルキレン基又は炭素数13以下の2価の芳香族基を表す。nは、1又は2を表す。
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