JP3586918B2 - 車両駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、エンジンの燃料供給をカットすることによって加速スリップを抑制する加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の発進時等に加速スリップが発生した場合に、多気筒エンジンの複数気筒のうちのいくつかの気筒への燃料供給をカット(燃料カット)して駆動輪の加速スリップを抑制する、いわゆる加速スリップ制御(トラクション制御)を行なう車両駆動力制御装置が知られている。
【0003】
この種の制御装置では、エンジンの燃焼サイクルの長い低速運転時には、燃料供給−燃料カットのサイクルが長くなり、例えばサスペンション系の状態に影響を与えてドライバビリティが悪化することがある。
この対策として、低速時には、燃料カットによる燃焼行程不作動期間に占める割合を短く設定することにより、エンジン1回転における燃料供給−燃料カットのサイクルを短くして、ドライバビリティを改善しようとする技術が提案されている(特開昭63−259132号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した技術の場合、エンジン1回転における燃料供給−燃料カットのサイクルを可変としているので、燃料カットを行なう気筒が常に変動することになる。ところが、一般に燃料カットを行なう場合には、吸気ポート付近に付着した燃料が未撚ガスとして排出される現象があり、それによって、排気ガスの悪化の程度が増大するという傾向があるので、前記の様に、燃料供給−燃料カットのサイクルが可変で常に変動している場合には、排気ガスの悪化の程度が著しくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、低温時に、燃料カットによってトラクション制御を行なう場合でも、排気の悪化を最小限にとどめて、ドライバビリティを改善することができる車両駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための請求項1の発明は、図1に例示する様に、
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態が、凹凸の少ない良路の状態である場合には、前記エンジン回転数制御手段によってエンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0007】
請求項2の発明は、
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態が、路面μの低い滑り易い状態である場合には、前記エンジン回転数制御手段によってエンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0008】
請求項3の発明は、
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記車両の目標駆動輪速度を増加させることによって、前記エンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
請求項4の発明は
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合には、前記エンジン回転数を一定の目標値に制御し、前記低速時でないと判定された場合には、前記車速に対応した目標値に制御することを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0009】
請求項5の発明は、
前記車両の目標駆動輪速度を増加させることによって、前記エンジン回転数を増加させることを特徴とする前記請求項1又は2記載の車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0010】
請求項6の発明は、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合には、前記エンジン回転数を一定の目標値に制御し、前記低速時でないと判定された場合には、前記車速に対応した目標値に制御することを特徴とする前記請求項1又は2記載の車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0011】
【作用及び発明の効果】
請求項1の発明では、車速検出手段によって、車両の速度を検出し、車速判定手段によって、この検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定し、路面状態検出手段によって、路面の状態を検出する。そして、車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、燃料カットによって加速スリップ制御を行なうときには、路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数制御手段によって、エンジン回転数を制御する。
【0012】
つまり、本発明では、車両が低速で走行している場合に、燃料カットによって加速スリップ制御を行なうときには、従来の様に燃料供給と燃料カットのサイクルを可変としてドライバビリティを改善しようとすると、排気の悪化が生じるので、それを回避するために、路面の状態に応じてエンジン回転数を制御している。この様に、路面の状態に応じて、例えば目標エンジン回転数を通常より高い所定値に設定する様にしてエンジン回転数を調節することによって、ドライバビリティが改善されるが、前記燃料のサイクルを可変とするものではないので、排気の悪化を防止することができる。
【0013】
即ち、本発明では、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、凹凸の少ない路面である場合には、エンジン回転数を増加させる制御を行なうので、凹凸の少ない良路において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。
【0014】
一般に、凹凸の少ない良路では、走行中の振動が少ないため、ドライバーを含む乗員は、走行振動以外の振動を感じ易くなる。この走行振動以外の振動には、エンジン振動も含まれており、一部気筒への燃料供給を停止(燃料カット)する減筒運転では、不等間隔で燃焼が行われるので、エンジン回転数に同期した振動が低回転ほど大きくなる。つまり、凹凸の少ない良路でエンジン回転数を高くすることにより、エンジン回転数に同期した振動を小さく抑えることができる。
【0015】
請求項2の発明では、前記請求項1の発明と同様に、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、低μ路である場合には、エンジン回転数を増加させる制御を行なうので、滑り易い路面において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。
一般に、低μ路においては、路面に加わる駆動力が小さいので、トルクコンバータ付自動変速機を備えた車両では、トルクコンバータのスリップが少なく、低速時にエンジン回転数が低くなる。そのため、燃料カットの減筒運転によるエンジン振動が大きくなるので、エンジン回転数を高くすることにより、エンジン振動を改善する。また、低μ路の場合は、加速性が良くないので、低速の状態が比較的長くなり、乗員が振動を感じ易くなる。従って、この点からも、エンジン回転数を高くすることによって、ドライバビリティを改善する大きな効果が得られる。
【0016】
請求項3の発明では、前記請求項1の発明と同様に、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、エンジン回転数を増加させる手段として、車両の目標駆動輪速度を増加させる手段を採用できる。
請求項4の発明では、前記請求項1の発明と同様に、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、低速時の場合には、エンジン回転数を一定の目標値に制御し、低速時でない場合には、車速に対応した目標値に制御することによって、全ての車速において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。特に、低速時の場合には、車速に関係なくエンジン回転数を一定値に制御するので、その点で確実にドライバビリティを改善できるという利点がある。
請求項5の発明では、エンジン回転数を増加させる手段として、車両の目標駆動輪速度を増加させる手段を採用できる。
請求項6の発明では、低速時の場合には、エンジン回転数を一定の目標値に制御し、低速時でない場合には、車速に対応した目標値に制御することによって、全ての車速において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。特に、低速時の場合には、車速に関係なくエンジン回転数を一定値に制御するので、その点で確実にドライバビリティを改善できるという利点がある。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図2は、本実施例の車両駆動力制御装置を備えた後輪駆動車両の全体構成を表す概略構成図である。
【0018】
本実施例の車両駆動力制御装置は、車両の加速スリップ発生時に加速スリップを抑制する加速スリップ制御(トラクション制御)を行なう構成を備えている。そして、このトラクション制御を行なう構成として、駆動輪のブレーキ装置を駆動して駆動輪の回転を直接抑制してブレーキ制御を行なう加速スリップ制御回路40と、該加速スリップ制御回路40からの指示に基づいて、点火時期の調節及び燃料カットによる燃料供給量の調節により、内燃機関(エンジン)1の出力トルクを抑制してエンジン制御を行なうエンジン制御回路60とを備えている。以下詳細に説明する。
【0019】
(1)まず、図2に基づいて、ブレーキ制御を行なうハード構成について説明する。
図2に示す様に、エンジン1を備えた車両には、遊動輪である左右前輪3,4のホイールシリンダ5,6と、駆動輪である左右後輪7,8のホイールシリンダ9,10とが設けられ、このホイールシリンダ5,6,9,10とブレーキマスタシリンダ2との間に、油圧源11,アンチスキッド制御用油圧回路12及び加速スリップ制御用油圧回路13が備えられている。
【0020】
ブレーキマスタシリンダ2の第1油圧室2aから左右前輪3,4のホイールシリンダ5,6に至るブレーキ油圧回路には、左右前輪アンチスキッド制御用容量制御弁14,15が配設されている。またブレーキマスタシリンダ2の第2の油圧室2bから左右後輪7,8のホイールシリンダ9,10に至るブレーキ油圧回路には、プロポーショナルバルブ16,後輪アンチスキッド制御用容量制御弁17,並列に配設された第1ソレノイドバルブ18及び逆止弁19,加速スリップ制御用容量制御弁20が設けられている。
【0021】
次に、このブレーキ制御を実行する加速スリップ制御回路40の構成について、図3に基づいて説明する。
図3に示す如く、加速スリップ制御回路40は、周知のCPU40a,ROM40b,RAM40c,バックアップRAM40d等を中心に論理演算回路として構成され、コモンバス40eを介して入力ポート40f及び出力ポート40gに接続されている。
【0022】
前記入力ポート40fには、ブレーキペダル50(図2)の操作の有無に応じてオン・オフ信号を出力するペダルスイッチ44,左前輪3の回転速度を検出する左前輪回転速度センサ45,右前輪4の回転速度を検出する右前輪速度センサ46,左右後輪の回転速度を検出する後輪回転速度センサ47,エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転数センサ49,及びアクセルペダル50の操作によって開閉されるスロットルバルブ51の開度を検出するスロットル開度センサ52が接続され、各センサからの検出信号が入力される。一方、出力ポート40gには、図示しない駆動回路を介して、第1〜第3ソレノイドバルブ18,21,22、及びポンプ駆動用モータ26が接続され、各アクチュエータに制御信号が送られる。
【0023】
これによって、各センサからの検出信号に基づき左右後輪の加速スリップ状態を検出して、加速スリップの状態に応じて後輪のブレーキ制御を実行する。
また、この加速スリップ制御回路40には、エンジン制御回路60が接続されており、加速スリップ発生時に、加速スリップ制御回路40からエンジン制御回路60にトルク制御実行信号を出力して、点火時期及び燃料噴射量を制御する出力トルク制御を実行できる様にされている。
【0024】
(2)次に、前記図2に基づいて、エンジン制御を行なうハード構成について説明する。
エンジン1の吸気管61には、上流側から、吸入空気量を測定するエアフロメータ76,スロットルバルブ51,各気筒毎に燃料を噴射するインジェクタ62が配置され、排気管64には、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ65,排気の浄化を行なう三元触媒66,触媒66の温度を検出する触媒温度センサ63が配置されている。また、エンジン1には、冷却水の温度を検出する温度センサ67,ノッキングを検出するノックセンサ68,各気筒毎に混合気の着火を行なう点火プラグ69が設けられ、この点火プラグ69にはディストリビュータ71を介して高圧パルスを供給する点火コイル73が接続されている。尚、ディストビュータ71には、クランク角の回転を検出するクランク角センサ74及び前記エンジン回転数センサ49が取り付けられている。また、エンジン1の駆動軸に接続された変速機75には、変速段を検出するために、変速位置検出用スイッチ77が設けられている。
【0025】
次に、エンジン制御を行なうエンジン制御回路60について、図3に基づいて説明する。
図3に示す如く、エンジン制御回路60は、前記加速スリップ制御回路40と同様に、周知のCPU60a,ROM60b,RAM60c,バックアップRAM60d等を中心に論理演算回路として構成され、コモンバス60eを介して入力ポート60f及び出力ポート60gに接続されている。
【0026】
前記入力ポート60fには、エンジン回転数センサ49,エアフロメータ76,水温センサ67,酸素センサ65,ノックセンサ68,クランク角センサ74,触媒温度センサ63,変速位置検出用スイッチ77が接続され、各センサからの検出信号が入力される。一方、出力ポート60gには、図示しない駆動回路を介して、点火コイル73,インジェクタ62が接続され、各アクチュエータに制御信号が送られる。
【0027】
つまり、このエンジン制御回路60は、通常は、各センサからの検出信号に基づき、点火コイル73から点火プラグ69への高電圧発生タイミング(即ち点火時期)や、インジェクタ62の開弁時間(燃料噴射量)等を制御する。そして、加速スリップ発生時には、前記加速スリップ制御回路40からのトルク制御実行信号に基づいて、点火時期の遅角制御及び燃料カット制御を実行する。また、加速スリップ制御回路40へ対して減筒許可などの情報を出力し、トルク低減信号を入力する。
【0028】
(3)次に、ブレーキ制御の処理について説明する。尚、この制御処理は、加速スリップ制御回路40にて実行される。
図4のフローチャートに示す如く、処理が開始されると、まずステップ100にて、当該ブレーキ制御の実行開始時にセットされるブレーキ制御実行フラグFBがリセット状態であるか否か、つまり現在ブレーキ制御が実行されていないか否かを判断する。ここで肯定判断されるとステップ110に進み、一方否定判断されるとステップ140に進む。
【0029】
ステップ110では、ブレーキ制御実行フラグFBがリセット状態でブレーキ制御が実行されていないので、駆動輪速度VRが上述のブレーキ制御実行用の制御基準値VB以上となったか否かによって、ブレーキ制御の実行条件が成立したか否かを判断する。そして、駆動輪速度VRが後述する制御基準値VB以上でなく、ブレーキ制御の実行条件が成立していない場合には、一旦本処理処理を終了し、そうでなければステップ120に進む。
【0030】
ステップ120では、ブレーキ制御実行条件が成立したので、ブレーキ制御の実行を表すブレーキ制御実行フラグFBをセットした後、ステップ140に移行し、ブレーキ制御を、次の表1に示す如く実行する。
【0031】
【表1】
【0032】
ここで、dVは駆動輪の回転加速度,G1は正の基準加速度,G2は負の基準加速度を表し、FUは前述した加速スリップ制御装置1に於ける増圧,SUは徐々に増圧,FDは減圧,SDは徐々に減圧する制御を表す。
即ちステップ140では、駆動輪速度VRに基づき駆動輪加速度dVを算出すると共に、駆動輪速度VRがVB以上かつ駆動輪加速度dVがG2以上であれば油圧を上昇させ、それ以外では油圧を下降させることにより、ブレーキによる迅速な速度低下を実施する。
【0033】
続くステップ150では、ブレーキ油圧の上昇制御時間TPの積分値ΣTPが、油圧の下降制御時間TDPの積分値ΣTDPに補正係数Kpを乗じた値を下回ったか否かによって、当該ブレーキ制御によるブレーキ油圧が0になったか否かを判断する。ここで、ブレーキ油圧が0になったと判断されると、ステップ160にて、ブレーキ制御は終了したとして、ブレーキ制御実行フラグFBをリセットした後、一旦本処理を終了し、そうでなければ、そのまま本処理を終了する。
【0034】
この様に、当該ブレーキ制御は、駆動輪速度VRが制御基準値VB以上となったとき開始され、その後ブレーキ油圧が0になるまでの間、駆動輪速度VR及び駆動輪加速度dVに応じて繰り返し実行される。
(4)次に、エンジン制御の処理について説明する。尚、この制御処理は、加速スリップ制御回路40からの信号に基づいて、エンジン制御回路60側で実行される。
【0035】
a)まず、目標速度を示す制御基準値VS等に応じて行われるエンジントルク低減処理について説明する。
図5のフローチャートに示す如く、まずステップ200にて、左右前輪及び後輪回転速度センサ45,46,47より検出信号を入力し、車体速度VFと駆動輪速度VRを算出する。尚、車体速度VFは、左右前輪回転速度センサ45,46の出力平均値又はその大きい方の値に前輪の周囲長を乗じて算出され、駆動輪速度VRは、後輪回転速度センサ47の出力に前輪の周囲長を乗じて算出される。
【0036】
続くステップ205では、エンジン制御(即ちエンジントルク低減制御)のための制御基準値VSを算出する。この制御基準値VSとは、目標速度(=目標駆動輪速度)のことであり、目標エンジン回転数に対応している。つまり、本実施例では目標速度を増加させることにより、エンジン回転数を増加させている。尚、制御基準値VSの算出方法は、後に図11にて詳述する。
【0037】
続くステップ210では、算出された車体速度VFより、次式(1)を用いて、上述したブレーキ制御のための制御基準値VBを算出する。
VB=VF・a2 …(1)
ここで、a2は1以上の定数である。
【0038】
続くステップ215では、減筒許可か否かを判定する。ここで、禁止状態であればステップ220で、VBへVSの値を代入し、そうでなければステップ220に進む。つまり減筒許可信号によってブレーキ制御基準値VBが変更される。ステップ225では、後述の処理で当該エンジントルク低減制御開始時にセットされるエンジントルク制御実行フラグFSがリセット状態であるか否か、即ち現在エンジントルク制御が実行されているか否かを判断する。ここで、エンジントルク制御実行フラグFSがリセット状態で、エンジントルク制御が実行されていないと判断されると、ステップ230に移行し、そうでなければ、ステップ270に進む。
【0039】
ステップ230では、スロットルバルブ51が全閉状態でなく、駆動輪速度VRが上述の制御基準値VS以上となっているか否かによって、加速スリップ制御の実行条件が成立しているか否かを判断する。
このステップ230で、制御の実行条件が成立していないと判断されると、一旦本処理を終了し、そうでなければ、ステップ235で、フラグFoへ1をセットした後、ステップ240に移行する。
【0040】
ステップ240では、加速スリップ発生の確実な判定のために、制御実行条件成立後所定時間(例えば8msec)経過したか否かを判断し、所定時間経過していない場合には、一旦本処理を終了し、そうでなければ、ステップ245に進む。ステップ245では、制御実行条件成立後所定時間経過したので、エンジントルク制御実行フラグFSをセットする。
【0041】
続くステップ250では、出力トルクとエンジン回転数NEとスロットル開度θとは、図6(a)に示す関係があるので、エンジン回転数NEとスロットル開度θとに基づいて、図6(b)のマップより、エンジントルク低減率TRの補正係数Kを補間して求める。
【0042】
続くステップ255では、前述のブレーキ制御実行中にセットされるブレーキ制御実行フラグFBが、リセット状態であるか否かを判断する。そしてブレーキ制御実行フラグFBがリセット状態で、ブレーキ制御が実行されていなければ、ステップ260に移行して、エンジントルク低減率TRを次式(2)によって算出する。
【0043】
TR=K(α・△V+β・dV) …(2)
尚、前記(2)式に於て、αは比例ゲイン,βは微分ゲイン,△Vは目標駆動輪速度となる制御基準値VSと駆動輪速度VRとの差(VS−VR)、dVはその時間微分値である。
【0044】
即ち、これによって、ブレーキ制御が行われていないときは、駆動輪速度VSが基準制御値VSに近づくようにエンジン制御を実行するのである。
一方、ブレーキ制御実行フラグFBがセット状態でブレーキ制御が実行されている場合には、ステップ265に移行して、エンジントルク低減率TRを所定値cだけ減少させる。これは、ブレーキ制御実行時にエンジントルクの低減速度を所定速度cに抑えることで、ブレーキ制御と出力トルク制御とが干渉し合うのを防止するためである。
【0045】
そして、このようにしてエンジントルク低減率TRが設定されると、一旦本処理を終了する。
次に、前記ステップ225で、エンジントルク制御実行フラグFSがセット状態であると判断された場合、即ち、エンジントルク制御が既に実行されている場合には、ステップ270に移行して、制御開始後フラグFoがセットされているか否かを判断し、フラグFoがセットされていなければ、そのまま前記ステップ250に移行する。
【0046】
一方、フラグFoがセットされており、制御開始後一旦スロットル開度全閉となった場合には、ステップ275に移行して、その後スロットルが開かれたか否かを判断する。そして、開であれば再度ステップ250に移行して、前記ステップ250以降の処理のように、エンジントルク低減率算出処理を実行し、一方、全閉であれば、もはや駆動輪に加速スリップが発生することはないと判断して、ステップ280及びステップ285でフラグFS及びFoをリセットした後、一旦本処理を終了する。
【0047】
b)次に、悪路判定等に応じて行われる燃料噴射制御等の処理について説明する。
まず、基本的な燃料噴射制御を説明する。ここでは、次の様にして、燃料噴射量Tiを算出する。
【0048】
即ち、検出された吸入空気量Qaとエンジン回転数NEとに基づいて、基本噴射量Tpを下記(3)式から算出後に、
Tp=K・Qa/NE 但し、K:定数 …(3)
この基本噴射量Tpを、冷却水温度と排気中の酸素温度等に基づいて、下記(4)の様に補正して、燃料噴射量Tiを求める。
【0049】
Ti=Tp×(1+KTW+KAS+KAI+KACC+KDEC)×KFC+TB…(4)
但し、KTW :水温増量補正係数
KAS :始動および始動後増量補正係数
KAI :アイドル後増量補正係数
KACC:加速補正係数
KDEC:減速補正係数
KFC :フューエルカット補正係数
TB :トルク低減係数
そして、この演算された燃料噴射量に対応するパルス信号をインジェクタ62に出力し、燃料噴射制御を行なう。
【0050】
次に、前記燃料噴射量Tiを用いて行われる噴射制御ルーチンを、図7のフローチャートに基づいて説明する。このルーチンは、図示しないタイマーとレジスターの比較によって発生する割込時に実行されるものであり、各気筒の吸気行程に同期して実行される。
【0051】
図7に示す様に、ステップ300では、減速時や最高速、過回転防止などによる燃料カット要求が発生しているかを判定する。ここで肯定判断されるとステップ350に進み、一方否定判断されるとステップ305に進む。
ステップ305では、後述する悪路判定の結果に基づいて設定される悪路フラグAKによって、悪路か否か、即ち凹凸の少ない良路ではないか否かを判定する。ここで、肯定判断されるとステップ315に進み、一方否定判断されるとステップ310に進む。
【0052】
ステップ310では、良路であるので、気筒判別カウンタCinjを、気筒別F/C実行値FCLBへ変換する。この気筒判別カウンタCinjは、後述する様に6までしかカウントしないので、気筒別F/C実行値FCLBは、2,6,10,4,8,12に限定される。つまり、良路の場合は、燃料カットする気筒の割合を低減することによって、より振動を下げることができる。
【0053】
一方、ステップ315では、図8(a)のマップを用い、燃料カットする気筒を判定する(減筒用の)カウンタCinj2を、気筒別F/C実行値FCLBへ変換する。
続くステップ320では、下記(5)式により、前記ステップ260又は265で算出したエンジントルク低減率TRに基づいて、F/C要求気筒数FCLを算出する。
【0054】
FCL=12×TR/100 …(5)
続くステップ325では、F/C要求気筒数FCLが気筒別F/C実行値FCLB以上か否かを判定し、そうであれば、ステップ330〜345を迂回し、ステップ355にて、気筒毎のF/C回数カウンタCFC#(#は気筒No.を意味し気筒判別カウンタCinjの値を用いる)をインクリメントする。
【0055】
一方、そうでなければ、ステップ330にて、図8(b)のマップを用い、F/C回数カウンタCFC#からF/C補正量TFCを算出し、続くステップ335にて、F/C回数カウンタCFC#をクリアする。
続くステップ340では、Tiにバッテリ電圧補正量TBとF/C補正量TFCを加算して、最終噴射時間Tinjを算出し、続くステップ345では、インジェクタ62へ噴射開始指令を送ると同時に、タイマの現時刻にTinjを加算した値を噴射制御レジスタへセットし、その時刻になると、ハードウェアロジックにより噴射が終了する。
【0056】
尚、前記ステップ300又は325でYesの場合は、ステップ345を迂回するので噴射が停止される。
続くステップ355では、次に本ルーチンへ入る時刻を計算し、噴射開始時期レジスタへセットする。この噴射開始時期は下記(6)式で算出する。
【0057】
【数1】
【0058】
但し、式の最後の2msはインジェクタ62の噴露到達時間
続くステップ360〜370は、気筒判別カウンタCinjを1〜6の範囲でインクリメントする。
続くステップ375〜385は、減筒用の気筒判別カウンタCinj2を1〜12の範囲でインクリメントし、一旦本処理を終了する。
【0059】
c)次に、前記図7の噴射制御ルーチンで使用される悪路判定を行なう悪路判定ルーチンについて説明する。尚、この処理は、50ms毎に実行される。
図9のフローチャートに示す様に、ステップ400にて、各車輪毎の車輪加速度の状態を示すフラグFRXを設定する処理を行なう。
【0060】
ここで、このステップ400の処理について説明するが、この処理は各車輪毎に実行されるものである。
図10に示す様に、ステップ500では、車輪速度を検出し、続くステップ505にて、前回検出した車輪速度と今回検出した車輪速度との差から車輪加速度GXを算出する。
【0061】
続くステップ510では、加速度GXの程度を示すフラグFGXWが1か否か、即ち前回加速度が1.5G以上であったか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ515に進み、一方否定判断されるとステップ525に進む。
続くステップ515では、加速度GXが1.0未満か否かを判定し、ここで肯定判断されると、ステップ520にて、フラグFGXWを0に設定し、一旦本処理を終了するが、否定判断されると、そのまま本処理を終了する。
【0062】
一方、前記ステップ525では、加速度GXが1.5以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ530に進み、一方否定判断されるとステップ545に進む。
ステップ545では、加速度GXが大きくはないので、前回同ステップを通過してから1000ms経過したか否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ550にて、フラグFRWを0に設定し、一旦本処理を終了するが、否定判断されると、そのまま本処理を終了する。
【0063】
一方、前記ステップ530では、加速度GXが大きいので、フラグFGXWを1と設定する。
続くステップ535では、前回同ステップを通過してから200ms経過したか否かを判定する。ここで否定判断されると、ステップ550にて、フラグFRWを1に設定し、一旦本処理を終了するが、肯定判断されると、そのまま本処理を終了する。
【0064】
つまり、この処理によって、各車輪毎に加速度GXが大きい等の条件が満たされた場合に、その状態を示すフラグFRXが1に設定され、そうでなければ、フラグFRXが0に設定される。
前記図9に戻り、ステップ410にて、前回図10の処理にて設定した各車輪のフラグFRXの値を加算して合計値TFRXの値を求める。
【0065】
続くステップ440では、この各車輪の状態を示す合計値TFRXに基づいて、現在総合的な悪路判定中か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ470に進み、一方否定判断されるとステップ450に進む。
ステップ470では、前記合計値TFRXの値が0であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ480に進み、一方否定判断されると、今回悪路か良路かの決定を行わず、そのまま今までの路面の判定を保持し、一旦本処理を終了する。
【0066】
ステップ480では、良路であるとみなして、前記ステップ305の悪路判定に使用するフラグAKをリセットし、一旦本処理を終了する。
一方、前記ステップ450では、前記合計値TFRXの値が2以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ460に進み、一方否定判断されると、今回悪路か良路かの決定を行わず、そのまま今までの路面の判定を保持し、一旦本処理を終了する。
【0067】
ステップ460では、悪路であるとみなして、前記ステップ305の悪路判定に使用するフラグAKをセットし、一旦本処理を終了する。
d)次に、前記図5のエンジントルク低減制御ルーチンで使用される目標速度VSの設定ルーチンについて説明する。尚、この目標速度(=前記制御基準値)VSとは、駆動輪の回転速度のことである。
【0068】
図11のフローチャートに示す様に、ステップ600にて、下記式(8)から目標速度VSを算出する。
VS=VF・a1 …(8)
ここで、a1は、1以上の定数であり、例えば1.12〜1.20に設定される。尚、a1<a2。
【0069】
続くステップ610にて、車体速度VFが15km/h以下の低速か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ620に進み、一方否定判断されると、目標車速をVSを変更することなく、一旦本処理を終了する。
ステップ620では、悪路か否かを前記悪路判定用のフラグAKに基づいて判定する。ここで肯定判断されると、一旦本処理を終了し、一方否定判断されるとステップ630に進む。
【0070】
ステップ630では、良路であるので、目標車速VSを悪路の場合よりも高く設定するために、15km/hと一定に設定し、一旦本処理を終了する。
以上詳述した様に、本実施例では、図12に示す様に、車体速度VFが所定値以上の場合は、悪路や良路にかかわらず、車体速度VFに対応した目標速度VSを設定しているが、車体速度VFが低速で且つ良路を走行しているときには、目標速度VSを悪路の場合より高い一定値に制御している。尚、悪路の場合は、全て車体速度VFに対応した目標速度VSを設定している。これによって、低速時に良路を走行しているときには、エンジン回転数が高くなるのでドライバビリティが改善されるという効果があり、しかも従来の様に、燃料供給−燃料カットのサイクルを変更しないので排気が悪化することもない。
【0071】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明するが、本実施例は、ハード構成は第1実施例と同一であり制御に関しても同一の部分があるので、異なる点である目標速度VSの設定処理のみを、図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
本実施例では、図13のフローチャートに示す様に、ステップ700にて、前記式(8)から目標速度VSを算出する。
続くステップ710にて、エンジン回転数NEが1500rpmh以下の低エンジン回転数(即ち低速)か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ720に進み、一方否定判断されると、目標車速VSを変更することなく、一旦本処理を終了する。
【0073】
ステップ720では、悪路か否かを前記悪路判定用のフラグAKに基づいて判定する。ここで肯定判断されると、一旦本処理を終了し、一方否定判断されるとステップ730に進む。
ステップ730では、良路であるので、目標車速VSを悪路の場合よりも高く設定するために、下記式(9)を用いて設定し、一旦本処理を終了する。
【0074】
VS=VS×1500/NE …(9)
以上詳述した様に、本実施例では、エンジン回転数NEが小さく、即ち低速で良路を走行しているときには、目標速度VSを悪路の場合より高い一定値に制御している。これによって、前記第1実施例と同様に、排気を悪化させることなく、ドライバビリティが改善されるという効果を奏する。
【0075】
特に本実施例では、目標速度VSをエンジン回転数NEに応じて変更しているので、運転状態に応じた好適な制御を行なうことができるという利点がある。
(第3実施例)
次に、第3実施例について説明するが、本実施例は、ハード構成は第1実施例と同一であり制御に関しても同一の部分があるので、異なる点である低μ路における目標速度VSの設定処理のみを、図14のフローチャートに基づいて説明する。
【0076】
本実施例では、図14のフローチャートに示す様に、ステップ800にて、前記式(8)から目標速度VSを算出する。
続くステップ810にて、車体速度VFが15km/h以下の低速か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ820に進み、一方否定判断されると、目標車速をVSを変更することなく、一旦本処理を終了する。
【0077】
ステップ820では、低μ路か否かを、例えばスリップの状態等に基づいて判定し、ここで否定判断されると、一旦本処理を終了し、一方肯定判断されるとステップ830に進む。
ステップ830では、低μ路であるので、目標車速VSを悪路の場合よりも高い15km/hの一定値に設定して、一旦本処理を終了する。
【0078】
以上詳述した様に、本実施例では、低速で低μ路を走行しているときには、目標速度VSを低μ路でない場合より高い一定値に制御している。これによって、低μ路を走行している場合でも、前記第1実施例と同様に、排気を悪化させることなく、ドライバビリティが改善されるという効果を奏する。
【0079】
尚、本発明は前記各実施例に何等限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、各種の態様で実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の基本的構成を例示する概略構成図である。
【図2】第1実施例の車両駆動力制御装置が適用された内燃機関及びその周辺装置を表す概略構成図である。
【図3】第1実施例の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】ブレーキ制御処理を示すフローチャートである。
【図5】エンジントルク低減制御を示すフローチャートである。
【図6】出力トルクの算出に使用する説明図であり、(a)はエンジン回転数NEとスロットル開度θの関係を示し、(b)スロットル開度と出力トルクの関係を示している。
【図7】噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】噴射気筒による補正を行うためのマップである。
【図9】悪路判定を行なう処理を示すフローチャートである。
【図10】車輪加速度に応じたフラグを設定する処理を示すフローチャートである。
【図11】目標車速を設定する処理を示すフローチャートである。
【図12】目標車速を設定の方法を示すグラフである。
【図13】第2実施例の目標車速を設定する処理を示すフローチャートである。
【図14】第3実施例の目標車速を設定する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…内燃機関 40…加速スリップ制御回路
45…左前車輪回転速度センサ 46…右前車輪回転速度センサ
47…後輪回転速度センサ 49…エンジン回転数センサ
52…スロットル開度センサ 60…エンジン制御回路
【産業上の利用分野】
本発明は、エンジンの燃料供給をカットすることによって加速スリップを抑制する加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の発進時等に加速スリップが発生した場合に、多気筒エンジンの複数気筒のうちのいくつかの気筒への燃料供給をカット(燃料カット)して駆動輪の加速スリップを抑制する、いわゆる加速スリップ制御(トラクション制御)を行なう車両駆動力制御装置が知られている。
【0003】
この種の制御装置では、エンジンの燃焼サイクルの長い低速運転時には、燃料供給−燃料カットのサイクルが長くなり、例えばサスペンション系の状態に影響を与えてドライバビリティが悪化することがある。
この対策として、低速時には、燃料カットによる燃焼行程不作動期間に占める割合を短く設定することにより、エンジン1回転における燃料供給−燃料カットのサイクルを短くして、ドライバビリティを改善しようとする技術が提案されている(特開昭63−259132号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した技術の場合、エンジン1回転における燃料供給−燃料カットのサイクルを可変としているので、燃料カットを行なう気筒が常に変動することになる。ところが、一般に燃料カットを行なう場合には、吸気ポート付近に付着した燃料が未撚ガスとして排出される現象があり、それによって、排気ガスの悪化の程度が増大するという傾向があるので、前記の様に、燃料供給−燃料カットのサイクルが可変で常に変動している場合には、排気ガスの悪化の程度が著しくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、低温時に、燃料カットによってトラクション制御を行なう場合でも、排気の悪化を最小限にとどめて、ドライバビリティを改善することができる車両駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための請求項1の発明は、図1に例示する様に、
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態が、凹凸の少ない良路の状態である場合には、前記エンジン回転数制御手段によってエンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0007】
請求項2の発明は、
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態が、路面μの低い滑り易い状態である場合には、前記エンジン回転数制御手段によってエンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0008】
請求項3の発明は、
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記車両の目標駆動輪速度を増加させることによって、前記エンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
請求項4の発明は
車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、を備え、前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合には、前記エンジン回転数を一定の目標値に制御し、前記低速時でないと判定された場合には、前記車速に対応した目標値に制御することを特徴とする車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0009】
請求項5の発明は、
前記車両の目標駆動輪速度を増加させることによって、前記エンジン回転数を増加させることを特徴とする前記請求項1又は2記載の車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0010】
請求項6の発明は、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合には、前記エンジン回転数を一定の目標値に制御し、前記低速時でないと判定された場合には、前記車速に対応した目標値に制御することを特徴とする前記請求項1又は2記載の車両駆動力制御装置を要旨とする。
【0011】
【作用及び発明の効果】
請求項1の発明では、車速検出手段によって、車両の速度を検出し、車速判定手段によって、この検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定し、路面状態検出手段によって、路面の状態を検出する。そして、車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、燃料カットによって加速スリップ制御を行なうときには、路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数制御手段によって、エンジン回転数を制御する。
【0012】
つまり、本発明では、車両が低速で走行している場合に、燃料カットによって加速スリップ制御を行なうときには、従来の様に燃料供給と燃料カットのサイクルを可変としてドライバビリティを改善しようとすると、排気の悪化が生じるので、それを回避するために、路面の状態に応じてエンジン回転数を制御している。この様に、路面の状態に応じて、例えば目標エンジン回転数を通常より高い所定値に設定する様にしてエンジン回転数を調節することによって、ドライバビリティが改善されるが、前記燃料のサイクルを可変とするものではないので、排気の悪化を防止することができる。
【0013】
即ち、本発明では、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、凹凸の少ない路面である場合には、エンジン回転数を増加させる制御を行なうので、凹凸の少ない良路において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。
【0014】
一般に、凹凸の少ない良路では、走行中の振動が少ないため、ドライバーを含む乗員は、走行振動以外の振動を感じ易くなる。この走行振動以外の振動には、エンジン振動も含まれており、一部気筒への燃料供給を停止(燃料カット)する減筒運転では、不等間隔で燃焼が行われるので、エンジン回転数に同期した振動が低回転ほど大きくなる。つまり、凹凸の少ない良路でエンジン回転数を高くすることにより、エンジン回転数に同期した振動を小さく抑えることができる。
【0015】
請求項2の発明では、前記請求項1の発明と同様に、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、低μ路である場合には、エンジン回転数を増加させる制御を行なうので、滑り易い路面において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。
一般に、低μ路においては、路面に加わる駆動力が小さいので、トルクコンバータ付自動変速機を備えた車両では、トルクコンバータのスリップが少なく、低速時にエンジン回転数が低くなる。そのため、燃料カットの減筒運転によるエンジン振動が大きくなるので、エンジン回転数を高くすることにより、エンジン振動を改善する。また、低μ路の場合は、加速性が良くないので、低速の状態が比較的長くなり、乗員が振動を感じ易くなる。従って、この点からも、エンジン回転数を高くすることによって、ドライバビリティを改善する大きな効果が得られる。
【0016】
請求項3の発明では、前記請求項1の発明と同様に、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、エンジン回転数を増加させる手段として、車両の目標駆動輪速度を増加させる手段を採用できる。
請求項4の発明では、前記請求項1の発明と同様に、低速時に燃料カットによって加速スリップ制御を行なう場合でも、排気を悪化させることなく、ドライバビリティを改善できるという顕著な効果を奏する。
更に、本発明では、低速時の場合には、エンジン回転数を一定の目標値に制御し、低速時でない場合には、車速に対応した目標値に制御することによって、全ての車速において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。特に、低速時の場合には、車速に関係なくエンジン回転数を一定値に制御するので、その点で確実にドライバビリティを改善できるという利点がある。
請求項5の発明では、エンジン回転数を増加させる手段として、車両の目標駆動輪速度を増加させる手段を採用できる。
請求項6の発明では、低速時の場合には、エンジン回転数を一定の目標値に制御し、低速時でない場合には、車速に対応した目標値に制御することによって、全ての車速において、排気の悪化をもたらすことなく、ドライバビリティを改善することができる。特に、低速時の場合には、車速に関係なくエンジン回転数を一定値に制御するので、その点で確実にドライバビリティを改善できるという利点がある。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図2は、本実施例の車両駆動力制御装置を備えた後輪駆動車両の全体構成を表す概略構成図である。
【0018】
本実施例の車両駆動力制御装置は、車両の加速スリップ発生時に加速スリップを抑制する加速スリップ制御(トラクション制御)を行なう構成を備えている。そして、このトラクション制御を行なう構成として、駆動輪のブレーキ装置を駆動して駆動輪の回転を直接抑制してブレーキ制御を行なう加速スリップ制御回路40と、該加速スリップ制御回路40からの指示に基づいて、点火時期の調節及び燃料カットによる燃料供給量の調節により、内燃機関(エンジン)1の出力トルクを抑制してエンジン制御を行なうエンジン制御回路60とを備えている。以下詳細に説明する。
【0019】
(1)まず、図2に基づいて、ブレーキ制御を行なうハード構成について説明する。
図2に示す様に、エンジン1を備えた車両には、遊動輪である左右前輪3,4のホイールシリンダ5,6と、駆動輪である左右後輪7,8のホイールシリンダ9,10とが設けられ、このホイールシリンダ5,6,9,10とブレーキマスタシリンダ2との間に、油圧源11,アンチスキッド制御用油圧回路12及び加速スリップ制御用油圧回路13が備えられている。
【0020】
ブレーキマスタシリンダ2の第1油圧室2aから左右前輪3,4のホイールシリンダ5,6に至るブレーキ油圧回路には、左右前輪アンチスキッド制御用容量制御弁14,15が配設されている。またブレーキマスタシリンダ2の第2の油圧室2bから左右後輪7,8のホイールシリンダ9,10に至るブレーキ油圧回路には、プロポーショナルバルブ16,後輪アンチスキッド制御用容量制御弁17,並列に配設された第1ソレノイドバルブ18及び逆止弁19,加速スリップ制御用容量制御弁20が設けられている。
【0021】
次に、このブレーキ制御を実行する加速スリップ制御回路40の構成について、図3に基づいて説明する。
図3に示す如く、加速スリップ制御回路40は、周知のCPU40a,ROM40b,RAM40c,バックアップRAM40d等を中心に論理演算回路として構成され、コモンバス40eを介して入力ポート40f及び出力ポート40gに接続されている。
【0022】
前記入力ポート40fには、ブレーキペダル50(図2)の操作の有無に応じてオン・オフ信号を出力するペダルスイッチ44,左前輪3の回転速度を検出する左前輪回転速度センサ45,右前輪4の回転速度を検出する右前輪速度センサ46,左右後輪の回転速度を検出する後輪回転速度センサ47,エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転数センサ49,及びアクセルペダル50の操作によって開閉されるスロットルバルブ51の開度を検出するスロットル開度センサ52が接続され、各センサからの検出信号が入力される。一方、出力ポート40gには、図示しない駆動回路を介して、第1〜第3ソレノイドバルブ18,21,22、及びポンプ駆動用モータ26が接続され、各アクチュエータに制御信号が送られる。
【0023】
これによって、各センサからの検出信号に基づき左右後輪の加速スリップ状態を検出して、加速スリップの状態に応じて後輪のブレーキ制御を実行する。
また、この加速スリップ制御回路40には、エンジン制御回路60が接続されており、加速スリップ発生時に、加速スリップ制御回路40からエンジン制御回路60にトルク制御実行信号を出力して、点火時期及び燃料噴射量を制御する出力トルク制御を実行できる様にされている。
【0024】
(2)次に、前記図2に基づいて、エンジン制御を行なうハード構成について説明する。
エンジン1の吸気管61には、上流側から、吸入空気量を測定するエアフロメータ76,スロットルバルブ51,各気筒毎に燃料を噴射するインジェクタ62が配置され、排気管64には、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ65,排気の浄化を行なう三元触媒66,触媒66の温度を検出する触媒温度センサ63が配置されている。また、エンジン1には、冷却水の温度を検出する温度センサ67,ノッキングを検出するノックセンサ68,各気筒毎に混合気の着火を行なう点火プラグ69が設けられ、この点火プラグ69にはディストリビュータ71を介して高圧パルスを供給する点火コイル73が接続されている。尚、ディストビュータ71には、クランク角の回転を検出するクランク角センサ74及び前記エンジン回転数センサ49が取り付けられている。また、エンジン1の駆動軸に接続された変速機75には、変速段を検出するために、変速位置検出用スイッチ77が設けられている。
【0025】
次に、エンジン制御を行なうエンジン制御回路60について、図3に基づいて説明する。
図3に示す如く、エンジン制御回路60は、前記加速スリップ制御回路40と同様に、周知のCPU60a,ROM60b,RAM60c,バックアップRAM60d等を中心に論理演算回路として構成され、コモンバス60eを介して入力ポート60f及び出力ポート60gに接続されている。
【0026】
前記入力ポート60fには、エンジン回転数センサ49,エアフロメータ76,水温センサ67,酸素センサ65,ノックセンサ68,クランク角センサ74,触媒温度センサ63,変速位置検出用スイッチ77が接続され、各センサからの検出信号が入力される。一方、出力ポート60gには、図示しない駆動回路を介して、点火コイル73,インジェクタ62が接続され、各アクチュエータに制御信号が送られる。
【0027】
つまり、このエンジン制御回路60は、通常は、各センサからの検出信号に基づき、点火コイル73から点火プラグ69への高電圧発生タイミング(即ち点火時期)や、インジェクタ62の開弁時間(燃料噴射量)等を制御する。そして、加速スリップ発生時には、前記加速スリップ制御回路40からのトルク制御実行信号に基づいて、点火時期の遅角制御及び燃料カット制御を実行する。また、加速スリップ制御回路40へ対して減筒許可などの情報を出力し、トルク低減信号を入力する。
【0028】
(3)次に、ブレーキ制御の処理について説明する。尚、この制御処理は、加速スリップ制御回路40にて実行される。
図4のフローチャートに示す如く、処理が開始されると、まずステップ100にて、当該ブレーキ制御の実行開始時にセットされるブレーキ制御実行フラグFBがリセット状態であるか否か、つまり現在ブレーキ制御が実行されていないか否かを判断する。ここで肯定判断されるとステップ110に進み、一方否定判断されるとステップ140に進む。
【0029】
ステップ110では、ブレーキ制御実行フラグFBがリセット状態でブレーキ制御が実行されていないので、駆動輪速度VRが上述のブレーキ制御実行用の制御基準値VB以上となったか否かによって、ブレーキ制御の実行条件が成立したか否かを判断する。そして、駆動輪速度VRが後述する制御基準値VB以上でなく、ブレーキ制御の実行条件が成立していない場合には、一旦本処理処理を終了し、そうでなければステップ120に進む。
【0030】
ステップ120では、ブレーキ制御実行条件が成立したので、ブレーキ制御の実行を表すブレーキ制御実行フラグFBをセットした後、ステップ140に移行し、ブレーキ制御を、次の表1に示す如く実行する。
【0031】
【表1】
【0032】
ここで、dVは駆動輪の回転加速度,G1は正の基準加速度,G2は負の基準加速度を表し、FUは前述した加速スリップ制御装置1に於ける増圧,SUは徐々に増圧,FDは減圧,SDは徐々に減圧する制御を表す。
即ちステップ140では、駆動輪速度VRに基づき駆動輪加速度dVを算出すると共に、駆動輪速度VRがVB以上かつ駆動輪加速度dVがG2以上であれば油圧を上昇させ、それ以外では油圧を下降させることにより、ブレーキによる迅速な速度低下を実施する。
【0033】
続くステップ150では、ブレーキ油圧の上昇制御時間TPの積分値ΣTPが、油圧の下降制御時間TDPの積分値ΣTDPに補正係数Kpを乗じた値を下回ったか否かによって、当該ブレーキ制御によるブレーキ油圧が0になったか否かを判断する。ここで、ブレーキ油圧が0になったと判断されると、ステップ160にて、ブレーキ制御は終了したとして、ブレーキ制御実行フラグFBをリセットした後、一旦本処理を終了し、そうでなければ、そのまま本処理を終了する。
【0034】
この様に、当該ブレーキ制御は、駆動輪速度VRが制御基準値VB以上となったとき開始され、その後ブレーキ油圧が0になるまでの間、駆動輪速度VR及び駆動輪加速度dVに応じて繰り返し実行される。
(4)次に、エンジン制御の処理について説明する。尚、この制御処理は、加速スリップ制御回路40からの信号に基づいて、エンジン制御回路60側で実行される。
【0035】
a)まず、目標速度を示す制御基準値VS等に応じて行われるエンジントルク低減処理について説明する。
図5のフローチャートに示す如く、まずステップ200にて、左右前輪及び後輪回転速度センサ45,46,47より検出信号を入力し、車体速度VFと駆動輪速度VRを算出する。尚、車体速度VFは、左右前輪回転速度センサ45,46の出力平均値又はその大きい方の値に前輪の周囲長を乗じて算出され、駆動輪速度VRは、後輪回転速度センサ47の出力に前輪の周囲長を乗じて算出される。
【0036】
続くステップ205では、エンジン制御(即ちエンジントルク低減制御)のための制御基準値VSを算出する。この制御基準値VSとは、目標速度(=目標駆動輪速度)のことであり、目標エンジン回転数に対応している。つまり、本実施例では目標速度を増加させることにより、エンジン回転数を増加させている。尚、制御基準値VSの算出方法は、後に図11にて詳述する。
【0037】
続くステップ210では、算出された車体速度VFより、次式(1)を用いて、上述したブレーキ制御のための制御基準値VBを算出する。
VB=VF・a2 …(1)
ここで、a2は1以上の定数である。
【0038】
続くステップ215では、減筒許可か否かを判定する。ここで、禁止状態であればステップ220で、VBへVSの値を代入し、そうでなければステップ220に進む。つまり減筒許可信号によってブレーキ制御基準値VBが変更される。ステップ225では、後述の処理で当該エンジントルク低減制御開始時にセットされるエンジントルク制御実行フラグFSがリセット状態であるか否か、即ち現在エンジントルク制御が実行されているか否かを判断する。ここで、エンジントルク制御実行フラグFSがリセット状態で、エンジントルク制御が実行されていないと判断されると、ステップ230に移行し、そうでなければ、ステップ270に進む。
【0039】
ステップ230では、スロットルバルブ51が全閉状態でなく、駆動輪速度VRが上述の制御基準値VS以上となっているか否かによって、加速スリップ制御の実行条件が成立しているか否かを判断する。
このステップ230で、制御の実行条件が成立していないと判断されると、一旦本処理を終了し、そうでなければ、ステップ235で、フラグFoへ1をセットした後、ステップ240に移行する。
【0040】
ステップ240では、加速スリップ発生の確実な判定のために、制御実行条件成立後所定時間(例えば8msec)経過したか否かを判断し、所定時間経過していない場合には、一旦本処理を終了し、そうでなければ、ステップ245に進む。ステップ245では、制御実行条件成立後所定時間経過したので、エンジントルク制御実行フラグFSをセットする。
【0041】
続くステップ250では、出力トルクとエンジン回転数NEとスロットル開度θとは、図6(a)に示す関係があるので、エンジン回転数NEとスロットル開度θとに基づいて、図6(b)のマップより、エンジントルク低減率TRの補正係数Kを補間して求める。
【0042】
続くステップ255では、前述のブレーキ制御実行中にセットされるブレーキ制御実行フラグFBが、リセット状態であるか否かを判断する。そしてブレーキ制御実行フラグFBがリセット状態で、ブレーキ制御が実行されていなければ、ステップ260に移行して、エンジントルク低減率TRを次式(2)によって算出する。
【0043】
TR=K(α・△V+β・dV) …(2)
尚、前記(2)式に於て、αは比例ゲイン,βは微分ゲイン,△Vは目標駆動輪速度となる制御基準値VSと駆動輪速度VRとの差(VS−VR)、dVはその時間微分値である。
【0044】
即ち、これによって、ブレーキ制御が行われていないときは、駆動輪速度VSが基準制御値VSに近づくようにエンジン制御を実行するのである。
一方、ブレーキ制御実行フラグFBがセット状態でブレーキ制御が実行されている場合には、ステップ265に移行して、エンジントルク低減率TRを所定値cだけ減少させる。これは、ブレーキ制御実行時にエンジントルクの低減速度を所定速度cに抑えることで、ブレーキ制御と出力トルク制御とが干渉し合うのを防止するためである。
【0045】
そして、このようにしてエンジントルク低減率TRが設定されると、一旦本処理を終了する。
次に、前記ステップ225で、エンジントルク制御実行フラグFSがセット状態であると判断された場合、即ち、エンジントルク制御が既に実行されている場合には、ステップ270に移行して、制御開始後フラグFoがセットされているか否かを判断し、フラグFoがセットされていなければ、そのまま前記ステップ250に移行する。
【0046】
一方、フラグFoがセットされており、制御開始後一旦スロットル開度全閉となった場合には、ステップ275に移行して、その後スロットルが開かれたか否かを判断する。そして、開であれば再度ステップ250に移行して、前記ステップ250以降の処理のように、エンジントルク低減率算出処理を実行し、一方、全閉であれば、もはや駆動輪に加速スリップが発生することはないと判断して、ステップ280及びステップ285でフラグFS及びFoをリセットした後、一旦本処理を終了する。
【0047】
b)次に、悪路判定等に応じて行われる燃料噴射制御等の処理について説明する。
まず、基本的な燃料噴射制御を説明する。ここでは、次の様にして、燃料噴射量Tiを算出する。
【0048】
即ち、検出された吸入空気量Qaとエンジン回転数NEとに基づいて、基本噴射量Tpを下記(3)式から算出後に、
Tp=K・Qa/NE 但し、K:定数 …(3)
この基本噴射量Tpを、冷却水温度と排気中の酸素温度等に基づいて、下記(4)の様に補正して、燃料噴射量Tiを求める。
【0049】
Ti=Tp×(1+KTW+KAS+KAI+KACC+KDEC)×KFC+TB…(4)
但し、KTW :水温増量補正係数
KAS :始動および始動後増量補正係数
KAI :アイドル後増量補正係数
KACC:加速補正係数
KDEC:減速補正係数
KFC :フューエルカット補正係数
TB :トルク低減係数
そして、この演算された燃料噴射量に対応するパルス信号をインジェクタ62に出力し、燃料噴射制御を行なう。
【0050】
次に、前記燃料噴射量Tiを用いて行われる噴射制御ルーチンを、図7のフローチャートに基づいて説明する。このルーチンは、図示しないタイマーとレジスターの比較によって発生する割込時に実行されるものであり、各気筒の吸気行程に同期して実行される。
【0051】
図7に示す様に、ステップ300では、減速時や最高速、過回転防止などによる燃料カット要求が発生しているかを判定する。ここで肯定判断されるとステップ350に進み、一方否定判断されるとステップ305に進む。
ステップ305では、後述する悪路判定の結果に基づいて設定される悪路フラグAKによって、悪路か否か、即ち凹凸の少ない良路ではないか否かを判定する。ここで、肯定判断されるとステップ315に進み、一方否定判断されるとステップ310に進む。
【0052】
ステップ310では、良路であるので、気筒判別カウンタCinjを、気筒別F/C実行値FCLBへ変換する。この気筒判別カウンタCinjは、後述する様に6までしかカウントしないので、気筒別F/C実行値FCLBは、2,6,10,4,8,12に限定される。つまり、良路の場合は、燃料カットする気筒の割合を低減することによって、より振動を下げることができる。
【0053】
一方、ステップ315では、図8(a)のマップを用い、燃料カットする気筒を判定する(減筒用の)カウンタCinj2を、気筒別F/C実行値FCLBへ変換する。
続くステップ320では、下記(5)式により、前記ステップ260又は265で算出したエンジントルク低減率TRに基づいて、F/C要求気筒数FCLを算出する。
【0054】
FCL=12×TR/100 …(5)
続くステップ325では、F/C要求気筒数FCLが気筒別F/C実行値FCLB以上か否かを判定し、そうであれば、ステップ330〜345を迂回し、ステップ355にて、気筒毎のF/C回数カウンタCFC#(#は気筒No.を意味し気筒判別カウンタCinjの値を用いる)をインクリメントする。
【0055】
一方、そうでなければ、ステップ330にて、図8(b)のマップを用い、F/C回数カウンタCFC#からF/C補正量TFCを算出し、続くステップ335にて、F/C回数カウンタCFC#をクリアする。
続くステップ340では、Tiにバッテリ電圧補正量TBとF/C補正量TFCを加算して、最終噴射時間Tinjを算出し、続くステップ345では、インジェクタ62へ噴射開始指令を送ると同時に、タイマの現時刻にTinjを加算した値を噴射制御レジスタへセットし、その時刻になると、ハードウェアロジックにより噴射が終了する。
【0056】
尚、前記ステップ300又は325でYesの場合は、ステップ345を迂回するので噴射が停止される。
続くステップ355では、次に本ルーチンへ入る時刻を計算し、噴射開始時期レジスタへセットする。この噴射開始時期は下記(6)式で算出する。
【0057】
【数1】
【0058】
但し、式の最後の2msはインジェクタ62の噴露到達時間
続くステップ360〜370は、気筒判別カウンタCinjを1〜6の範囲でインクリメントする。
続くステップ375〜385は、減筒用の気筒判別カウンタCinj2を1〜12の範囲でインクリメントし、一旦本処理を終了する。
【0059】
c)次に、前記図7の噴射制御ルーチンで使用される悪路判定を行なう悪路判定ルーチンについて説明する。尚、この処理は、50ms毎に実行される。
図9のフローチャートに示す様に、ステップ400にて、各車輪毎の車輪加速度の状態を示すフラグFRXを設定する処理を行なう。
【0060】
ここで、このステップ400の処理について説明するが、この処理は各車輪毎に実行されるものである。
図10に示す様に、ステップ500では、車輪速度を検出し、続くステップ505にて、前回検出した車輪速度と今回検出した車輪速度との差から車輪加速度GXを算出する。
【0061】
続くステップ510では、加速度GXの程度を示すフラグFGXWが1か否か、即ち前回加速度が1.5G以上であったか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ515に進み、一方否定判断されるとステップ525に進む。
続くステップ515では、加速度GXが1.0未満か否かを判定し、ここで肯定判断されると、ステップ520にて、フラグFGXWを0に設定し、一旦本処理を終了するが、否定判断されると、そのまま本処理を終了する。
【0062】
一方、前記ステップ525では、加速度GXが1.5以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ530に進み、一方否定判断されるとステップ545に進む。
ステップ545では、加速度GXが大きくはないので、前回同ステップを通過してから1000ms経過したか否かを判定する。ここで肯定判断されると、ステップ550にて、フラグFRWを0に設定し、一旦本処理を終了するが、否定判断されると、そのまま本処理を終了する。
【0063】
一方、前記ステップ530では、加速度GXが大きいので、フラグFGXWを1と設定する。
続くステップ535では、前回同ステップを通過してから200ms経過したか否かを判定する。ここで否定判断されると、ステップ550にて、フラグFRWを1に設定し、一旦本処理を終了するが、肯定判断されると、そのまま本処理を終了する。
【0064】
つまり、この処理によって、各車輪毎に加速度GXが大きい等の条件が満たされた場合に、その状態を示すフラグFRXが1に設定され、そうでなければ、フラグFRXが0に設定される。
前記図9に戻り、ステップ410にて、前回図10の処理にて設定した各車輪のフラグFRXの値を加算して合計値TFRXの値を求める。
【0065】
続くステップ440では、この各車輪の状態を示す合計値TFRXに基づいて、現在総合的な悪路判定中か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ470に進み、一方否定判断されるとステップ450に進む。
ステップ470では、前記合計値TFRXの値が0であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ480に進み、一方否定判断されると、今回悪路か良路かの決定を行わず、そのまま今までの路面の判定を保持し、一旦本処理を終了する。
【0066】
ステップ480では、良路であるとみなして、前記ステップ305の悪路判定に使用するフラグAKをリセットし、一旦本処理を終了する。
一方、前記ステップ450では、前記合計値TFRXの値が2以上か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ460に進み、一方否定判断されると、今回悪路か良路かの決定を行わず、そのまま今までの路面の判定を保持し、一旦本処理を終了する。
【0067】
ステップ460では、悪路であるとみなして、前記ステップ305の悪路判定に使用するフラグAKをセットし、一旦本処理を終了する。
d)次に、前記図5のエンジントルク低減制御ルーチンで使用される目標速度VSの設定ルーチンについて説明する。尚、この目標速度(=前記制御基準値)VSとは、駆動輪の回転速度のことである。
【0068】
図11のフローチャートに示す様に、ステップ600にて、下記式(8)から目標速度VSを算出する。
VS=VF・a1 …(8)
ここで、a1は、1以上の定数であり、例えば1.12〜1.20に設定される。尚、a1<a2。
【0069】
続くステップ610にて、車体速度VFが15km/h以下の低速か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ620に進み、一方否定判断されると、目標車速をVSを変更することなく、一旦本処理を終了する。
ステップ620では、悪路か否かを前記悪路判定用のフラグAKに基づいて判定する。ここで肯定判断されると、一旦本処理を終了し、一方否定判断されるとステップ630に進む。
【0070】
ステップ630では、良路であるので、目標車速VSを悪路の場合よりも高く設定するために、15km/hと一定に設定し、一旦本処理を終了する。
以上詳述した様に、本実施例では、図12に示す様に、車体速度VFが所定値以上の場合は、悪路や良路にかかわらず、車体速度VFに対応した目標速度VSを設定しているが、車体速度VFが低速で且つ良路を走行しているときには、目標速度VSを悪路の場合より高い一定値に制御している。尚、悪路の場合は、全て車体速度VFに対応した目標速度VSを設定している。これによって、低速時に良路を走行しているときには、エンジン回転数が高くなるのでドライバビリティが改善されるという効果があり、しかも従来の様に、燃料供給−燃料カットのサイクルを変更しないので排気が悪化することもない。
【0071】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明するが、本実施例は、ハード構成は第1実施例と同一であり制御に関しても同一の部分があるので、異なる点である目標速度VSの設定処理のみを、図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
本実施例では、図13のフローチャートに示す様に、ステップ700にて、前記式(8)から目標速度VSを算出する。
続くステップ710にて、エンジン回転数NEが1500rpmh以下の低エンジン回転数(即ち低速)か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ720に進み、一方否定判断されると、目標車速VSを変更することなく、一旦本処理を終了する。
【0073】
ステップ720では、悪路か否かを前記悪路判定用のフラグAKに基づいて判定する。ここで肯定判断されると、一旦本処理を終了し、一方否定判断されるとステップ730に進む。
ステップ730では、良路であるので、目標車速VSを悪路の場合よりも高く設定するために、下記式(9)を用いて設定し、一旦本処理を終了する。
【0074】
VS=VS×1500/NE …(9)
以上詳述した様に、本実施例では、エンジン回転数NEが小さく、即ち低速で良路を走行しているときには、目標速度VSを悪路の場合より高い一定値に制御している。これによって、前記第1実施例と同様に、排気を悪化させることなく、ドライバビリティが改善されるという効果を奏する。
【0075】
特に本実施例では、目標速度VSをエンジン回転数NEに応じて変更しているので、運転状態に応じた好適な制御を行なうことができるという利点がある。
(第3実施例)
次に、第3実施例について説明するが、本実施例は、ハード構成は第1実施例と同一であり制御に関しても同一の部分があるので、異なる点である低μ路における目標速度VSの設定処理のみを、図14のフローチャートに基づいて説明する。
【0076】
本実施例では、図14のフローチャートに示す様に、ステップ800にて、前記式(8)から目標速度VSを算出する。
続くステップ810にて、車体速度VFが15km/h以下の低速か否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ820に進み、一方否定判断されると、目標車速をVSを変更することなく、一旦本処理を終了する。
【0077】
ステップ820では、低μ路か否かを、例えばスリップの状態等に基づいて判定し、ここで否定判断されると、一旦本処理を終了し、一方肯定判断されるとステップ830に進む。
ステップ830では、低μ路であるので、目標車速VSを悪路の場合よりも高い15km/hの一定値に設定して、一旦本処理を終了する。
【0078】
以上詳述した様に、本実施例では、低速で低μ路を走行しているときには、目標速度VSを低μ路でない場合より高い一定値に制御している。これによって、低μ路を走行している場合でも、前記第1実施例と同様に、排気を悪化させることなく、ドライバビリティが改善されるという効果を奏する。
【0079】
尚、本発明は前記各実施例に何等限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、各種の態様で実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の基本的構成を例示する概略構成図である。
【図2】第1実施例の車両駆動力制御装置が適用された内燃機関及びその周辺装置を表す概略構成図である。
【図3】第1実施例の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】ブレーキ制御処理を示すフローチャートである。
【図5】エンジントルク低減制御を示すフローチャートである。
【図6】出力トルクの算出に使用する説明図であり、(a)はエンジン回転数NEとスロットル開度θの関係を示し、(b)スロットル開度と出力トルクの関係を示している。
【図7】噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】噴射気筒による補正を行うためのマップである。
【図9】悪路判定を行なう処理を示すフローチャートである。
【図10】車輪加速度に応じたフラグを設定する処理を示すフローチャートである。
【図11】目標車速を設定する処理を示すフローチャートである。
【図12】目標車速を設定の方法を示すグラフである。
【図13】第2実施例の目標車速を設定する処理を示すフローチャートである。
【図14】第3実施例の目標車速を設定する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…内燃機関 40…加速スリップ制御回路
45…左前車輪回転速度センサ 46…右前車輪回転速度センサ
47…後輪回転速度センサ 49…エンジン回転数センサ
52…スロットル開度センサ 60…エンジン制御回路
Claims (6)
- 車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、
前記車両の速度を検出する車速検出手段と、
該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、
前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、
を備え、
前記路面状態検出手段によって検出した路面状態が、凹凸の少ない良路の状態である場合には、前記エンジン回転数制御手段によってエンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置。 - 車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、
前記車両の速度を検出する車速検出手段と、
該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、
前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、
を備え、
前記路面状態検出手段によって検出した路面状態が、路面μの低い滑り易い状態である場合には、前記エンジン回転数制御手段によってエンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置。 - 車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、
前記車両の速度を検出する車速検出手段と、
該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、
前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、
を備え、
前記車両の目標駆動輪速度を増加させることによって、前記エンジン回転数を増加させることを特徴とする車両駆動力制御装置。 - 車両の加速スリップの状態に応じてエンジンの気筒毎の燃料供給をカットすることにより、加速スリップを抑制して加速スリップ制御を行なう車両駆動力制御装置において、
前記車両の速度を検出する車速検出手段と、
該車速検出手段によって検出した車両の速度が所定値以下の低速か否かを判定する車速判定手段と、
前記車両が走行する路面の状態を検出する路面状態検出手段と、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合に、前記加速スリップ制御を 行なうときには、前記路面状態検出手段によって検出した路面状態に応じて、エンジン回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、
を備え、
前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合には、前記エンジン回転数を一定の目標値に制御し、前記低速時でないと判定された場合には、前記車速に対応した目標値に制御することを特徴とする車両駆動力制御装置。 - 前記車両の目標駆動輪速度を増加させることによって、前記エンジン回転数を増加させることを特徴とする前記請求項1又は2記載の車両駆動力制御装置。
- 前記車速判定手段によって低速時であると判定された場合には、前記エンジン回転数を一定の目標値に制御し、前記低速時でないと判定された場合には、前記車速に対応した目標値に制御することを特徴とする前記請求項1又は2記載の車両駆動力制御装置。
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