JP3586550B2 - 車両用駆動力伝達装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用駆動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用駆動力伝達装置は、エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達するものであり、例えば特公平7−29558号公報に示されているように、四輪駆動車の駆動軸と従動軸間に配設されてエンジンから駆動軸に伝達されたトルクを従動軸へ伝達し、車両を四輪駆動状態とする。
【0003】
しかして、前記公報に示された駆動力伝達装置にあっては、従動軸側への伝達トルクが、急発進時にはアクセル開度に応じたトルクに、かつ、それ以外の時には前後輪の回転速度差に応じたトルクになるようにトルク配分制御がなされる構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した駆動力伝達装置によれば、車両の直進発進時には車両の姿勢が安定するが、旋回発進時にはタイトコーナブレーキンング現象が発生することがある。
【0005】
従って、本発明の目的は、車両の発進時の安定性を確保し、かつ、発進時(低速)のタイトターンでのタイトコーナブレーキンング現象の発生を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達する車両用駆動力伝達装置であって、前記他方の回転軸への伝達トルクを前記エンジンの負荷の変化速度の増大に応じて増大させるトルク配分制御を行う制御手段を備える車両用駆動力伝達装置である。
【0007】
本発明に係る車両用駆動力伝達装置においては、前記制御手段は、エンジンの負荷の増大側の変化速度が小さい時には前記伝達トルクをスロットルバルブの開度量に基づき決定されるトルク配分量に配分する制御を行うとともに、車速が所定値以下でかつ前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が大きい時には前記伝達トルクを前記トルク配分量以上に配分し、その後、当該伝達トルクを前記トルク配分量に漸次収束させる制御を行うことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る車両用駆動力伝達装置は、エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達するトルク伝達機構と、前記他方の回転軸への伝達トルクを前記エンジンの負荷の変化の増大に応じて増大させるトルク配分制御を行う制御手段を備えた車両用駆動力伝達装置であり、前記トルク伝達機構は、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内外両回転部材間に配設され摩擦係合によりこれら両回転部材間のトルク伝達を行うメインクラッチ機構と、通電により作動して摩擦係合する電磁式のパイロットクラッチ機構と、前記メインクラッチ機構と前記パイロットクラッチ機構間に位置し同パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記メインクラッチ機構に対する押圧力に変換するカム機構を備え、前記制御手段は、前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が小さい時には前記パイロットクラッチ機構に対してスロットルバルブの開度量に基づき決定される印加電流値の電流を印加する制御を行うとともに、車速が所定値以下でかつ前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が大きい時には前記パイロットクラッチ機構に対して前記印加電流値以上の電流を印加し、その後、電流の印加量を前記印加電流値に漸次収束させる制御を行うことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る車両用駆動力伝達装置においては、前記メインクラッチ機構を構成するインナクラッチプレートと前記カム機構を構成する従動側カム部材とが連結ピンを介して一体回転可能に連結されている構成を採ることができる。
【0010】
また、本発明に係る車両用駆動力伝達装置は、エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達するトルク伝達機構と、前記他方の回転軸への伝達トルクを前記エンジンの負荷の変化速度の増大に応じて増大させるトルク配分制御を行う制御手段を備えた車両用駆動力伝達装置であり、前記トルク伝達機構は、外側回転部材と、同外側回転部材に同軸的かつ相対回転可能に位置する左右一対の内側回転部材と、前記外側回転部材と前記各内側回転部材間にそれぞれ配設され摩擦係合によりこれら各内側回転部材と前記外側回転部材間のトルク伝達を行う左右一対のメインクラッチ機構と、通電により作動して摩擦係合する左右一対の電磁式のパイロットクラッチ機構と、前記各メインクラッチ機構と前記各パイロットクラッチ機構間に位置し同各パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記各メインクラッチ機構に対する押圧力に変換する左右一対のカム機構を備え、当該制御手段は、前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が小さい時には前記各パイロットクラッチ機構に対してスロットルバルブの開度量に基づき決定される印加電流値の電流を印加する制御を行うとともに、車速が所定値以下でかつ前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が大きい時には前記各パイロットクラッチ機構に対して前記印加電流値以上の電流を印加し、その後、電流の印加量を前記印加電流値に漸次収束させる制御を行うことを特徴とするものである。
【0011】
【発明の作用・効果】
本発明の請求項1に係る駆動力伝達装置においては、エンジン負荷の増大側の変化速度が大きい時には、スロットルバルブの開度量に基づき決定される所定のトルク配分量以上のトルクを他方の回転軸へ所定時間配分し、その後これを所定のトルク配分量に漸次収束させ、かつ、エンジン負荷の変化速度が小さい時には、前記の所定のトルク配分量のトルクを他方の回転軸へ伝達する。
【0012】
従って、車両が四輪駆動車であって、前記一方の回転軸が駆動軸で、前記他方の回転軸が従動軸である場合には、発進時の加速性が向上するとともに車両の姿勢が安定する。このため、所定のトルク配分量を従来のものより小さく設定することができる。また、タイトターンにおける急発進は通常起こり得ないので、旋回発進時(低速)では、所定のトルク配分量を従来のものより小さく設定できることにより、タイトコーナブレーキンング現象の発生が抑制される。かかる構成の駆動力伝達装置は、請求項2,3に係る駆動力伝達装置により容易に構成することができる。
【0013】
本発明に係る車両用駆動力伝達装置を請求項3に記載の構成とすれば、前記カム機構を構成する従動側カム部材を内側回転部材にスプライン結合にて一体回転可能かつ軸方向へ摺動可能に連結する構成に比較して摩擦抵抗に起因する推力の低減を防止し得て、トルク伝達をより効率よく行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る車両用駆動力伝達装置を請求項4に記載の構成とすれば、左右両輪軸間に配置して使用することができる。
【0015】
すなわち、当該駆動力伝達装置においては、外側回転部材を駆動軸に連結するとともに各内側回転部材を左右の各車輪軸に連結するように配設し、旋回加速時には、所定のトルク配分量以上のトルクを旋回内外輪へ所定時間配分し、その後漸次所定のトルク配分量に収束させるが、この場合、旋回外輪のゲインを大きくする。これにより、車両の旋回加速時における回頭性が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて説明すると、図1には、本発明に係る駆動力伝達装置の一例が示されている。当該駆動力伝達装置10は、図6に示すように、四輪駆動車における後輪側への駆動力伝達経路に配設される。
【0017】
当該四輪駆動車において、トランスアクスル21は、トランスミッション、トランスファ、およびフロントディファレンシャルを一体に備えているもので、エンジン22からのトルクを両アクスルシャフト23aに出力して左右の前輪23bを駆動させるとともに、プロペラシャフト24側に出力する。プロペラシャフト24は、駆動力伝達装置10を介してリヤディファレンシャル25に連結しており、プロペラシャフト24とリヤディファレンシャル25がトルク伝達可能に連結された場合には、トルクはリヤディファレンシャル25に伝達され、同ディファレンシャル25から両アクスルシャフト26aへ出力されて左右の後輪26bを駆動させる。
【0018】
駆動力伝達装置10は、リヤディファレンシャル25とともにディファレンシャルキャリヤ27内に収容されて同キャリヤ27に支持されていて、同キャリヤ27を介して車体に支持されている。なお、図1は、駆動力伝達装置10を軸心を中心に切断した半分の部分を示しており、図示しない半分の部分は軸心を中心とする略対称に形成されているため省略している。
【0019】
しかして、駆動力伝達装置10は、図1に示すように、外側回転部材であるアウタケース10a、内側回転部材であるインナシャフト10b、メインクラッチ機構10c、パイロットクラッチ機構10d、カム機構10e、および制御機構10fを備えている。当該駆動力伝達装置10においては、アウタケース10a、インナシャフト10b、メインクラッチ機構10c、パイロットクラッチ機構10d、およびカム機構10eが本発明のトルク伝達機構を構成し、かつ、制御機構10fが本発明の制御手段を構成する。
【0020】
アウタケース10aは、有底筒状のフロントハウジング11aと、フロントハウジング11aの後端開口部に螺着されて同開口部を覆蓋するリヤハウジング11bとからなるもので、フロントハウジング11aは非磁性材料であるアルミ合金にて形成されており、またリヤハウジング11bは磁性材料である鉄にて形成されている。リヤハウジング11bの径方向の中間部には、非磁性材料であるステンレス製の筒体11b1が埋設されていて、筒体11b1は環状の非磁性部位を形成している。
【0021】
アウタケース10aは、フロントハウジング11aの前端部の外周にてディファレンシャルキャリヤ27に回転可能に支持され、かつ、リヤハウジング11bの後端部外周にてディファレンシャルキャリヤ27に支持されている。フロントハウジング11aの前端部には、プロペラシャフト24の後端部がトルク伝達可能に連結される。
【0022】
インナシャフト10bは、リヤハウジング11bの中央部を液密的に貫通してフロントハウジング11a内に挿入されていて、軸方向の移動を規制された状態でフロントハウジング11aとリヤハウジング11bに回転可能に支持されている。インナシャフト10bには、ドライブピニオンシャフト28の先端部が挿入されてトルク伝達可能に連結される。
【0023】
メインクラッチ機構10cは、湿式多板式の摩擦クラッチであって、多数のクラッチプレート(インナクラッチプレート12a、アウタクラッチプレート12b)を備えており、フロントハウジング11aの奥壁側に配設されている。摩擦クラッチを構成する各インナクラッチプレート12aは、インナシャフト10bの外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられ、かつ、各アウタクラッチプレート12bは、フロントハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられている。各インナクラッチプレート12aと各アウタクラッチプレート12bとは交互に位置して、互いに当接して摩擦係合するとともに、互いに離間して自由状態になる。
【0024】
パイロットクラッチ機構10dは、電磁石13a、摩擦クラッチ13b、およびアーマチャ13cを備えている。電磁石13aは環状を呈しているもので、ヨーク14aに嵌着された状態でリヤハウジング11bの環状凹所11b2に嵌合されている。ヨーク14aは、ディファレンシャルキャリヤ27にコニカルスプリング14bを介して軸方向に支承された状態で支持されていて、リヤハウジング11bの後端部の外周に回転可能に支持されている。これにより、リヤハウジング11bとヨーク14aの間に所定のエアギャップが形成されている。
【0025】
摩擦クラッチ13bは、複数のクラッチプレート(インナクラッチプレート、アウタクラッチプレート)からなり、各インナクラッチプレートは、後述するカム機構10eを構成する駆動カム部材15aの外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられ、かつ、各アウタクラッチプレートは、フロントハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられている。各インナクラッチプレートと各アウタクラッチプレートとは交互に位置して、互いに当接して摩擦係合するとともに、互いに離間して自由状態になる。
【0026】
なお、摩擦クラッチ13bを構成するインナクラッチプレートおよびアウタクラッチプレートにおいては、それらの表面にナイトロテック処理が施されて表面硬度が高められていて、耐摩耗性の向上が図られている。
【0027】
アーマチャ13cは環状を呈するもので、フロントハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられていて、摩擦クラッチ13bの一側に位置して対向している。
【0028】
パイロットクラッチ機構10dにおいては、電磁石13aの電磁コイルへの通電により、ヨーク14a、リヤハウジング11b、摩擦クラッチ13b、アーマチャ13c、摩擦クラッチ13b、リヤハウジング11b、およびヨーク14a間に磁路が形成される。なお、電磁石13aの電磁コイルへの通電制御は、後述する制御機構10fによりなされる。
【0029】
カム機構10eは、駆動カム部材15a、従動カム部材15b、およびカムフォロアー15cにて構成されている。駆動カム部材15aおよび従動カム部材15bには、対向面に互いに対向するカム溝が周方向に所定間隔を保持して複数形成されている。
【0030】
駆動カム部材15aは、インナシャフト10bの外周に回転可能に嵌合されて、リヤハウジング11bに回転可能に支承されており、その外周に摩擦クラッチ13bの各インナクラッチプレートがスプライン嵌合している。従動カム部材15bは、連結ピン15dを介してメインクラッチ機構10cを構成する各インナクラッチプレート12aに連結されており、従動カム部材15bと駆動カム部材15aの互いに対向するカム溝には、ボール状のカムフォロアー15cが介在している。
【0031】
連結ピン15dは、各インナクラッチプレート12aを貫通した状態で従動カム部材15bに周方向等角度間隔に複数個固定されており、従動カム部材15bを各インナクラッチプレート12aと一体的に回転可能に連結し、かつ、アウタケース10aおよびインナシャフト10bに対しては自由状態にある。
【0032】
図2の(a)は、各インナクラッチプレート12aと従動カム部材15bとの連結状態を拡大して示すもので、従動カム部材15bの軸方向の移動時には、各インナクラッチプレート12aは同図の(b)に示すように、連結ピン15dにより従動カム部材15bの移動方向へ撓んだ状態で移動して、各アウタクラッチプレート12bに摩擦係合する。
【0033】
図3は制御機構10fを示すもので、マイクロコンピュータ16、スロットルバルブ開度センサ17a、および、車速センサ17bを備え、マイクロコンピュータ16はスロットルバルブ開度量判定手段16a、スロットルバルブ開速度判定手段16b、および、トルク配分量決定手段16cを備えている。
【0034】
制御機構10fにおいて、スロットルバルブ開度量判定手段16aはスロットルバルブ開度センサ17aからの開度検出信号に基づきスロットルバルブの開度量を判定し、かつ、スロットルバルブ開速度判定手段16bはスロットルバルブ開度センサ17aからの開度検出信号に基づきスロットルバルブの開速度を判定する。
【0035】
また、トルク配分量決定手段16cは、スロットルバルブ開度量判定手段16aからのスロットルバルブの開度量、および、スロットルバルブ開速度判定手段16bからのスロットルバルブの開速度の値に基づきトルク配分量を決定し、トルク配分量に対応する電流量を出力すべく指令する。これにより、パイロットクラッチ機構10dにおいては、電磁石13aの電磁コイルに、トルク配分量に対応する電流量が印加される。なお、トルク配分量決定手段16cは、車速センサ17bからの車速信号に基づき、車速が所定値以下か否かを判定して、その判定結果に基づいて上記したトルク配分量を決定する。
【0036】
図4はスロットルバルブの開度量と電流指令値との関係を示すグラフであり、実線のグラフは本発明における設定値を示し、破線のグラフは従来の設定値である。本発明においては、スロットルバルブの開度量に対する電流指令値を従来に比較して低い値に設定されている。
【0037】
図5はスロットルバルブの開速度と電流指令値との関係を示すグラフであり、実線のグラフは本発明における設定値を示し、破線のグラフは従来の設定値である。本発明においては、車速が所定値以下で、スロットルバルブの開速度が大きい場合には、スロットルバルブの開速度に応じた所定値以上の高い電流が所定時間印加され、その後、漸次所定値に収束されるように設定されている。なお、車速が所定値以上の場合や、車速が所定値以下でもスロットルバルブの開速度が小さい場合には、所定値の電流が印加されるように電流指令値が設定されている。これに対して、従来では、このような配慮は全くなされておらず、スロットルバルブの開速度の如何に関わらず電流指令値は一定に設定されている。
【0038】
かかる構成の駆動力伝達装置10においては、パイロットクラッチ機構10dを構成する電磁石13aの電磁コイルへの通電がなされていない場合には磁路は形成されず、摩擦クラッチ13bは非係合状態にある。このため、パイロットクラッチ機構10dは非作動の状態にあって、カム機構10eを構成する駆動カム部材15aは、カムフォロアー15cを介して従動カム部材15bと一体回転可能であり、メインクラッチ機構10cは非作動の状態にある。このため、車両は二輪駆動の駆動モードを構成する。
【0039】
一方、電磁石13aの電磁コイルへ通電されると、パイロットクラッチ機構10dには磁路が形成されて、電磁石13aはアーマチャ13cを吸引する。このため、アーマチャ13cは摩擦クラッチ13bを押圧して摩擦係合させ、カム機構10eの駆動カム部材15aをフロントハウジング11a側へ連結させて、従動カム部材15bとの間に相対回転を生じさせる。この結果、カム機構10eでは、カムフォロアー15cが従動カム部材15bを駆動カム部材15aから離間する方向へ押圧する。
【0040】
この結果、従動カム部材15bはメインクラッチ機構10c側へ押圧されて、メインクラッチ機構10cを摩擦クラッチ13bの摩擦係合力に応じて摩擦係合させ、アウタハウジング10aとインナシャフト10b間のトルク伝達を行う。このため、車両はプロペラシャフト24とドライブピニオンシャフト28が非直結状態の四輪駆動の駆動モードを構成する。
【0041】
また、電磁石13aの電磁コイルへの印加電流を所定の値に高めると、電磁石13aのアーマチャ13cに対する吸引力が増大し、アーマチャ13cは強く吸引されて摩擦クラッチ13bの摩擦係合力を増大させ、両カム部材15a,15b間の相対回転を増大させる。この結果、カムフォロアー15cは、従動カム部材15bに対する押圧力を高めてメインクラッチ機構10cを結合状態とする。このため、車両はプロペラシャフト24とドライブピニオンシャフト28が直結した四輪駆動の駆動モードを構成する。
【0042】
しかして、当該駆動力伝達装置10においては、車速が所定値以下の低速である場合、スロットルバルブの開速度が大きい時、すなわち、エンジン負荷の増大側の変化速度が大きい時には、パイロットクラッチ機構10dの電磁石13aの電磁コイルへ所定値以上の電流を印加して、プロペラシャフト24からドライブピニオンシャフト28への伝達トルクを所定値以上に配分し、その後この伝達トルクを所定値に漸次収束させるようにしている。
【0043】
従って、当該駆動力伝達装置10を搭載した四輪駆動車においては、発進時の加速性が向上するとともに車両の姿勢が安定する。このため、所定のトルク配分量を従来のものより小さく設定することができる。また、タイトターンにおける急発進は通常起こり得ないので、旋回発進時(低速)では、所定のトルク配分量を従来のものより小さく設定できることにより、タイトコーナブレーキング現象の発生が抑制される。
【0044】
なお、当該駆動力伝達装置10においては、カム機構10eを構成する従動カム部材15bを、連結ピン15dを介してメインクラッチ機構10cの各インナクラッチプレート12aに連結させている。このため、従動カム部材15bをインナシャフト10bにスプライン結合にて一体回転可能かつ軸方向へ摺動可能に連結する構成に比較して摩擦抵抗に起因する推力の低減を防止し得て、トルク伝達をより効率よく行うことができる。
【0045】
また、パイロットクラッチ機構10dにおいては、摩擦クラッチ13bを構成するインナクラッチプレートおよびアウタクラッチプレートの表面をナイトロテック処理を施して表面硬度を高め、耐摩耗性を向上させている。
【0046】
図7には、本発明に係る駆動力伝達装置の他の一例が示されている。当該駆動力伝達装置30は、四輪駆動車のリヤアクスルとして構成されているもので、外側回転部材であるアウタケース30a、内側回転部材である左右一対のインナシャフト30b、左右一対のメインクラッチ機構30c、左右一対のパイロットクラッチ機構30d、左右一対のカム機構30e、および制御機構30fを備えている。各インナシャフト30bは、アウタケース30a内にて左右に直列的に配列されていて、各メインクラッチ機構30c、各パイロットクラッチ機構30d、および各カム機構30eは、アウタケース30aと各インナシャフト30b間にて、左右対称に配設されている。
【0047】
当該駆動力伝達装置30においては、アウタケース30aを共通する左右一対のトルク伝達機構を備えた構成のものであり、各インナシャフト30b、各メインクラッチ機構30c、各パイロットクラッチ機構30d、各カム機構30e、および制御機構30fは、基本的には駆動力伝達装置10のインナシャフト10b、メインクラッチ機構10c、各パイロットクラッチ機構10d、各カム機構10e、および制御機構10fと同一構成のものである。但し、アウタケース30aの外周には、リングギヤ41が設けられている。
【0048】
当該駆動力伝達装置30においては、アウタケース30aを左右両端部にてリヤアクスルケース42に支持されて、リヤアクスルケース42内に回転可能に収容されており、リングギヤ41をリヤアクスルケース42内にて回転可能に支持したドライブピニオンシャフト43に噛合させている。ドライブピニオンシャフト43には、エンジンからトルク伝達されるプロペラシャフトがトルク伝達可能に連結され、また、各インナシャフト30bには左右の後輪の各アクスルシャフトがトルク伝達可能に連結される。
【0049】
かかる構成の駆動力伝達装置30においては、各パイロットクラッチ機構30dの電磁コイルへの通電量が同一になるように制御すれば、各アクスルシャフトに対する伝達トルクを同一にすることができ、電磁コイルへの印加電流を上記した駆動力伝達装置10と同様に制御すれば、同駆動力伝達装置10と同様に機能させることができる。
【0050】
また、車両の旋回時には、駆動力伝達装置30における各パイロットクラッチ機構30dの電磁コイルへの印加電流を、旋回外輪側となるアクスルシャフトへの伝達トルクが大きくなるように、かつ、旋回内側となるアクスルシャフトへの伝達トルクが小さくなるように制御することができる。これにより、車両の旋回加速時における回頭性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例に係る駆動力伝達装置を示す部分断面図である。
【図2】同駆動力伝達装置を構成するカム機構の従動カム部材とメインクラッチ機構のインナプレートとの連結状態を示す部分断面図である。
【図3】同駆動力伝達装置を構成する制御機構のブロック図である。
【図4】同駆動力伝達装置を構成する制御機構におけるスロットルバルブの開度量と電流指令値の関係を示すグラフである。
【図5】同駆動力伝達装置を構成する制御機構におけるスロットルバルブの開速度、時間、および電流指令値の関係を示すグラフである。
【図6】駆動力伝達装置を搭載した車両のスケルトン図である。
【図7】本発明の他の一例に係る駆動力伝達装置を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10…駆動力伝達装置、10a…アウタケース、10b…インナシャフト、10c…メインクラッチ機構、10d…パイロットクラッチ機構、10e…カム機構、10f…制御機構、11a…フロントハウジング、11b…リヤハウジング、11b1…筒体、11b2…環状凹所、12a…インナクラッチプレート、12b…アウタクラッチプレート、13a…電磁石、13b…摩擦クラッチ、13c…アーマチャ、14a…ヨーク、14b…コニカルスプリング、15a…駆動カム部材、15b…従動カム部材、15c…カムフォロアー、15d…連結ピン、16…マイクロコンピュータ、16a…スロットルバルブ開度量判定手段、16b…スロットルバルブ開速度判定手段、16c…トルク配分量決定手段、17a…スロットルバルブ開度センサ、17b…車速センサ、21…トランスアクスル、22…エンジン、23a…アクスルシャフト、23b…前輪、24…プロペラシャフト、25…リヤディファレンシャル、26a…アクスルシャフト、26b…後輪、27…ディファレンシャルキャリヤ、28…ドライブピニオンシャフト、30…駆動力伝達装置、30a…アウタケース、30b…インナシャフト、30c…メインクラッチ機構、30d…パイロットクラッチ機構、30e…カム機構、30f…制御機構、41…リングギヤ、42…リヤアクスルケース、43…ドライブピニオンシャフト。
Claims (4)
- エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達する車両用駆動力伝達装置であり、前記他方の回転軸への伝達トルクを前記エンジンの負荷の変化速度の増大に応じて増大させるトルク配分制御を行う制御手段を備え、当該制御手段は、前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が小さい時には前記伝達トルクをスロットルバルブの開度量に基づき決定されるトルク配分量に配分する制御を行うとともに、車速が所定値以下でかつ前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が大きい時には前記伝達トルクを前記トルク配分量以上に配分し、その後、当該伝達トルクを前記トルク配分量に漸次収束させる制御を行うことを特徴とする車両用駆動力伝達装置。
- エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達するトルク伝達機構と、前記他方の回転軸への伝達トルクを前記エンジンの負荷の変化速度の増大に応じて増大させるトルク配分制御を行う制御手段を備えた車両用駆動力伝達装置であり、前記トルク伝達機構は、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内外両回転部材間に配設され摩擦係合によりこれら両回転部材間のトルク伝達を行うメインクラッチ機構と、通電により作動して摩擦係合する電磁式のパイロットクラッチ機構と、前記メインクラッチ機構と前記パイロットクラッチ機構間に位置し同パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記メインクラッチ機構に対する押圧力に変換するカム機構を備え、前記制御手段は、前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が小さい時には前記パイロットクラッチ機構に対してスロットルバルブの開度量に基づき決定される印加電流値の電流を印加する制御を行うとともに、車速が所定値以下でかつ前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が大きい時には前記パイロットクラッチ機構に対して前記印加電流値以上の電流を印加し、その後、電流の印加量を前記印加電流値に漸次収束させる制御を行うことを特徴とする車両用駆動力伝達装置。
- 請求項2に記載の車両用駆動力伝達装置において、前記メインクラッチ機構を構成するインナクラッチプレートと前記カム機構を構成する従動側カム部材とが連結ピンを介して一体回転可能に連結されていることを特徴とする車両用駆動力伝達装置。
- エンジンから一方の回転軸に伝達されるトルクを他方の回転軸へ伝達するトルク伝達機構と、前記他方の回転軸への伝達トルクを前記エンジンの負荷の変化速度の増大に応じて増大させるトルク配分制御を行う制御手段を備えた車両用駆動力伝達装置であり、前記トルク伝達機構は、外側回転部材と、同外側回転部材に同軸的かつ相対回転可能に位置する左右一対の内側回転部材と、前記外側回転部材と前記各内側回転部材間にそれぞれ配設され摩擦係合によりこれら各内側回転部材と前記外側回転部材間のトルク伝達を行う左右一対のメインクラッチ機構と、通電により作動して摩擦係合する左右一対の電磁式のパイロットクラッチ機構と、前記各メインクラッチ機構と前記各パイロットクラッチ機構間に位置し同各パイロットクラッチ機構の摩擦係合力を前記各メインクラッチ機構に対する押圧力に変換する左右一対のカム機構を備え、当該制御手段は、前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が小さい時には前記各パイロットクラッチ機構に対してスロットルバルブの開度量に基づき決定される印加電流値の電流を印加する制御を行うとともに、車速が所定値以下でかつ前記エンジンの負荷の増大側の変化速度が大きい時には前記各パイロットクラッチ機構に対して前記印加電流値以上の電流を印加し、その後、電流の印加量を前記印加電流値に漸次収束させる制御を行うことを特徴とする車両用駆動力伝達装置。
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