JP3586364B2 - 電解イオン水生成装置、電解イオン水生成方法及び洗浄方法 - Google Patents

電解イオン水生成装置、電解イオン水生成方法及び洗浄方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気分解によりイオン水を生成するイオン水生成装置に係り、とくにその電極構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電解イオン水生成装置により生成されたイオン水は、各分野に利用され、とくに半導体装置の製造や液晶の製造などに多く用いられている。半導体装置の製造においては、純水や超純水を電気分解して得られたイオン水を用いてシリコン半導体などの半導体基板を洗浄したり、ポリッシング等を行っている。半導体装置の製造工程において、半導体基板の洗浄などには、従来フロンなどの弗素系溶剤が用いられていたが、これら溶剤は生活環境に悪影響を及ぼすので敬遠され始め、代わりに純水や超純水などの水が最も安全な溶剤として利用されるようになった。純水は、イオン、微粒子、微生物、有機物などの不純物をほとんど除去した抵抗率が5〜18MΩcm程度の高純度の水である。超純水は、超純水製造装置により水中の懸濁物質、溶解物質及び高効率に取り除いた純水よりさらに純度の高い極めて高純度の水である。これらの水(以下これらを全て純水という)を電気分解することによって酸化性の強い陽極水や還元性の強い陰極水などのイオン水が生成される。半導体装置や液晶などの製造において、これら陽極水や陰極水などの純水を用いて基板の表面を洗浄することが検討されている。
【0003】
従来の電解イオン水生成装置を図6に示す。電解槽50は、陰極室52と陽極室53とを備え、陰極室52には陰極55が配置され、陽極室53には陽極57が配置されている。そして、これら電極54(陰極55、陽極57)は共に白金や白金をコートしたチタン基体などから構成されている。陰極室52で形成される陰極側イオン水(陰極水)58及び陽極室53で形成される陽極側イオン水 (陽極水)59とを効率よく分離するために陰極室52と陽極室53とはセラミックや高分子などの多孔質の隔膜56によって仕切られている。電解槽50に配置された陰極55は、直流電源66の負極67に接続され、陽極57は、その正極68に接続されている。電解槽50では直流電源66から電流を通電して電解槽50に取り付けられた純水供給パイプ61から供給され、純水に、例えば、塩化アンモニウムなどの支持電解質を添加した希釈電解質溶液(電解水)51を電気分解する。この電気分解の結果陰極55側で生成される陰極水は、アルカリ性イオン水(アルカリ性水)であり、陽極57側で生成される陽極水は、酸性イオン水(酸性水)である。
【0004】
なお、例えば、蓚酸を支持電解質として電解槽で純水を電気分解すると、陰極側で生成される陰極水も、陽極側で生成される陽極水もともに酸性を示すことが知られている。陰極室52で生成された陰極水(アルカリ性水)58は、アルカリ性水供給パイプ62から外部に供給され、陽極室53で生成された陽極水(酸性水)59は、酸性水供給パイプ63から外部に供給される。通常は陰極室52でアルカリ性水が生成されるので、例えば、半導体装置の製造に用いられるポリッシング装置を使用する場合、アルカリ性水を用いてポリッシングを行うには、電解槽50に接続されたアルカリ性水供給パイプ62からアルカリイオン水をポリッシング装置の研磨布に供給する。この場合、陽極室53で生成される酸性イオン水は不要なので廃棄されるか、もしくは半導体ウェーハ洗浄などの他の用途に用いる。したがって、廃棄する場合には酸性水供給パイプ63はイオン水を排出するイオン水排出パイプに接続される。また、酸性イオン水を用いてポリッシングを行うには、酸性水供給パイプ63から酸性水を研磨布に供給する。この場合、陰極室52で生成されるアルカリイオン水は必要に応じて廃棄されるか、もしくは他の用途に用いられる。従って廃棄する場合陰極水供給パイプ62はイオン水排出パイプに接続される。
【0005】
以上のように、電解槽50は、隔膜56により2槽に分離され、各電極は分離されたそれぞれの槽に配置されるので、それぞれの槽からアルカリ性水又は酸性水を目的に応じて取り出すことができる。
前述のようにイオン水には、アルカリ性水と酸性水があり、電解槽内で希釈された、例えば、HNO、NHCl、NHFなどの電解質溶液を電解することによって任意のpHのイオン水が生成される。
しかし、この従来方法では、金属電極から発生する金属イオンが電極で発生する電界に引かれ、電解槽、特に陰極室内に多く入り込み、電解水の純度を低下させていた。
最近イオン水を半導体装置の製造における半導体ウェーハなどの洗浄用として使用する要求が強くなってきた。このような現状において半導体装置では微量な金属不純物がデバイス特性に大きな影響を与えるためにイオン水の高純度化が必要となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電気分解によるイオン水生成方法では、溶液に含まれる金属イオンや金属電極から発生する金属イオンも電極から発生する電界に引かれ、各電解槽、とくに陰極室内に多く入り込み、電解水の純度を低下させており、イオン水を半導体装置や液晶等の高精度性を必要とする製造に使用することは難しかった。
また、電解イオン水生成装置から生成されたイオン水を前述のように半導体ウェーハの洗浄などに用いる場合、アルカリ性水は、通常半導体ウェーハ上に付着しているカーボンなどのパーティクルを取り除くために用いられ、酸性水は、メタルを除去するために用いられる。酸性水やアルカリ性水を半導体ウェーハ洗浄に用いる場合には一般に純水で希釈される。
しかし、酸性水やアルカリ性水を希釈するとそれらのpH値は、あまり変化しないがアルカリ性水の場合はその酸化還元電位(ORP)が大きく変わる。したがってORPを所定の値に止めて洗浄したい場合には希釈することは難しい。また、図4に示すように、アルカリ性水は、酸性水と異なり電解イオン水生成装置から生成された直後からORPが安定せず、数時間後もORP値は大きく変わっている。これに対し酸性水は、生成直後から安定し、この状態は変化しない。
【0007】
従来の電解イオン水生成装置は、金属電極を用いていたが、金属電極は、金属がイオンとなって陽極に溶出してくるので半導体ウェーハの特性を劣化させることがあり、そのため、炭素などを電極にした装置も用いられるようになった。また、炭素電極などを用いると特に陽極が破損されて高い電圧を維持することができないという問題があった。例えば、炭素電極の場合、電解電圧は、20〜30V、電流は、2〜3A程度しか使用できず、このため、特にアルカリ性水は、酸性水に比較して生成量が十分でないという問題があった。
本発明は、このような事情によりなされたものであり、金属が電解水に溶け出さない電極を備え、半導体装置や液晶などの高純度な環境を必要とする分野にも使用できる金属イオンの存在の著しく少ない高純度なイオン水、とくに特性的に安定したアルカリ性水を生成し、しかも酸性水の生成量とほぼ等しいアルカリ性水の生成量がえられる電解イオン水生成装置、電解イオン水生成方法及びこの装置及び方法により生成されたイオン水、とくにアルカリ性水を用いて半導体ウェーハなどを洗浄する方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この様な課題を解決するために、陽極及び陰極を備えた電気分解装置にダミー陽極を設け、このダミー陽極と前記陰極とに電流を通電することを特徴とする。
陽極と陰極とに電流を通電して純水を電気分解する時に、ダミー陽極と陰極にも電流を通電することにより、一方の陽極4には規定量の電流を流し他方の陰極5には過剰分の電流を流して電流バランスをとるとともに、陰極の電解作用の活性化をはかることができるので酸性水とアルカリ性水の等量生成が可能になる。ダミー陽極−陰極間に通電される電流により水素ガスが多量に陰極に生成されるので電解作用が活性化される。
【0009】
すなわち、本発明の電解イオン水生成装置は、陽極、陰極及びダミー陽極からなる電気分解用電極と、前記陽極が配置された陽極室と、前記陽極室とは隔壁によって隔てられ、前記陰極が配置された陰極室と、前記陰極室とは隔壁によって隔てられ、前記ダミー陽極が配置されたダミー陽極室と、前記陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第1の電源と、前記ダミー陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第2の電源とを備え、純水もしくは超純水を電気分解する場合において、前記第1の電源及び前記第2の電源に電源電流を通電することを特徴としている。本発明の電解イオン水生成方法は、陽極、陰極及びダミー陽極からなる電気分解用電極と、前記陽極が配置された陽極室と、前記陽極室とは隔壁によって隔てられ、前記陰極が配置された陰極室と、前記陰極室とは隔壁によって隔てられ、前記ダミー陽極が配置されたダミー陽極室と、前記陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第1の電源と、前記ダミー陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第2の電源とを具備した電解イオン水生成装置の前記第1の電源から前記陽極及び前記陰極に電流を通電する工程と、前記第2の電源から前記ダミー陽極及び前記陰極に電流を通電する工程とを備え、前記陰極室及び前記陽極室に供給された純水もしくは超純水を電気分解することを特徴としている。また、本発明の洗浄方法は、前記電解イオン水生成装置により生成されたイオン水を洗浄槽に供給する工程と、前記イオン水を用いて半導体ウェーハを洗浄する工程とを備えていることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して発明の実施の形態を説明する。
まず、図1乃至図4を参照して第1の発明の実施の形態に係る電解イオン水生成装置を説明する。
図1は、電解イオン水生成装置の模式断面図、図2は、電解イオン水生成装置の斜視図、図3は、図1の電解イオン水生成装置を利用した半導体ウェーハの洗浄工程を説明するシステム図、図4は、イオン水のORP値の時間依存性を説明する特性図である。電解槽1は、陽極室2と、陰極室3と、ダミー陽極室2′の電極室からなる。陽極室2は、通常ここで酸性イオン水が生成されるので酸性水槽といい、陰極室3は、アルカリ性イオン水が生成されるのでアルカリ性水槽という。この電解槽1は、テフロンや塩化ビニールなどの合成樹脂からなっていて、例えば、四角柱形状をしており、各電極室にはそれぞれ少なくとも1つの電極が配置されている。陽極室2には、陽極4が配置され、陰極室3には陰極5が配置され、ダミー陽極室2′には、ダミー陽極4′が配置形成されている。電極は、各電極室ともこの発明の実施の形態では棒状体であり、それぞれ10本配列しているが、例えば、薄い板状体のような他の形状でも良い。また、電極室は、円筒などの他の形状でも良い。電解槽1は、断面形状が10cm〜30cm程度の四角形であり、その高さは20〜50cm程度である。電極は、電解槽1の上部蓋に気密に固定されている。
【0011】
電解槽1は、三分され、陰極室3と陽極室2とを分離する隔膜6及び陰極室3とダミー陽極室2′とを分離する隔膜6′が配置されている。隔膜6、6′には、例えば、イオン交換膜が用いられる。
陽極4及び陰極5は、第1の直流電源12に接続されている。第1の直流電源12の正極は、陽極4に接続され、負極は、陰極5に接続されている。ダミー陽極4′及び陰極5は、第2の直流電源13に接続されている。第2の直流電源13の正極は、ダミー陽極4′に接続され、負極は、陰極5に接続されている。
陽極室2、陰極室3及びダミー陽極室2′には、純水を溶媒とし電解質を溶質とする電解質溶液がそれぞれ電解質溶液供給パイプ8、9、8′を介して供給される。電解質には、例えば、HNO、NHCl、NHFなどを用いる。この発明の実施の形態では、陽極室2及びダミー陽極室2′にはHClが電解質として供給され、陰極室3にはHCl+NHが電解質として供給される。陽極室2に供給される電解質溶液のHCl濃度は、例えば、1000ppmであり、陰極室3に供給される電解質溶液のHCl+NH濃度は、例えば、1000ppmであり、ダミー陽極室2′に供給される電解質溶液のHCl濃度は、例えば、1〜10wt%と高濃度である。
【0012】
第1及び第2の電源12、13を動作させて電解質溶液の溶媒である純水が電気分解され、陽極室2に酸性水が生成され、陰極室3にアルカリ性水が生成される。そして、ダミー陽極室2′には高濃度酸性水が生成され、これは排水パイプ10′から排出される。この酸性水は、陽極水(酸性水)供給パイプ10を介して外部の半導体製造装置などの酸性イオン水を必要とする製造装置に供給される。アルカリ性水は、陰極水(アルカリ性水)供給パイプ11を介して外部の半導体製造装置などのアルカリ性水を必要とする製造装置に供給される。
【0013】
次に、図1及び図2に示す電解イオン水生成装置を参照しながらイオン水の生成方法を説明する。
陽極室2にはHCl電解質溶液を供給し、陰極室3にはHCl+NH電解質溶液を供給し、ダミー陽極室2′にはHClの高濃度電解質溶液を供給する。そして、陽極4及び陰極5には第1の直流電源12から20〜30V(2〜3A)の電圧が印加される。それと同時に、ダミー陽極4′及び陰極5には第2の直流電源13から数10A(50〜100V)の電流が通電される。このように、この電気分解では陽極4と陰極5とを対比して高電流を陰極5側に流すことを特徴としている。一方の陽極4には規定量の電流を流して、図4に示すように、経時的に安定なORP値を有する陽極水を陽極室2に生成させる。他方の陰極5には過剰分の電流を流すことにより電流バランスをとる。イオン水を半導体装置の製造に利用する場合、イオン水のpH値及びORP値によってその用途を決定する。したがって、ORP値が従来のように時と共に変化するのでは所定の用途に決めることができない。そこで、本発明の電解イオン水生成装置で生成されるような安定なイオン水が望まれる。
【0014】
このような方法で電気分解を行うことにより、陰極5には水素が十分供給され、アルカリ水の生成量が多くなると共に、経時的に安定なORP値を有するアルカリ性水が生成される。アルカリ性水の生成レートは、酸性水とほぼ等しくなるので、アルカリ性水と酸性水の等量生成が可能になる。陽極室2から生成される酸性水は、pH値が2であり、ORP値が+1100mV以上である。陰極室3から生成されるアルカリ性水は、pH値が9〜11であり、ORP値が−600mV以下である。
【0015】
次に、図3を参照して前記電解イオン水生成装置を利用した半導体ウェーハの洗浄方法を説明する。
電解イオン水生成装置により生成されたイオン水は、半導体ウェーハの洗浄に用いられる。半導体装置の製造工程におけるウェーハ処理工程では、各処理の後処理工程における半導体ウェーハの洗浄が半導体装置の特性を維持する上で不可欠である。図3は、例えば、図1に示した電解イオン水生成装置を半導体ウェーハの洗浄に適用した半導体製造装置のシステム図である。このシステムは、基本的には、超純水もしくは純水を収容している超純水タンク14、電解槽1を含む電解イオン水生成装置及び半導体ウェーハ洗浄槽15から構成されている。電解槽には、通常、電解槽内を洗浄するための水を給水及び排水する洗浄用超純水供給パイプ及び排水パイプが取り付けられているがウェーハ洗浄に直接関わっていないので図示を省略する。イオン水で半導体ウェーハを洗浄する場合、イオン水を純水で希釈して使用する方法と希釈しないでイオン水のまま使用する(この場合でも塩酸や界面活性剤などを微量添加することがある)方法とがあるが、このシステムではアルカリ性水の利用に重点を置き、これに超純水を加えて洗浄する方法を説明する。
【0016】
超純水タンク14からは第1の超純水パイプ16及び第2の超純水パイプ17が導出されている。第1の超純水パイプ16は、電解質溶液供給パイプ8、8′を分岐し、電解イオン水生成装置の陽極室2に接続された酸性水供給パイプ10に接続される。酸性水供給パイプ10は、洗浄槽などの半導体製造装置に接続して半導体装置の製造に利用するが、図3ではアルカリ性水の利用を説明しているので、酸性水供給パイプ10の接続先は図示を省略する。第2の超純水パイプ17は、電解質溶液供給パイプ9を分岐し、アルカリ性水供給パイプ11に接続される。アルカリ性水供給パイプ11は、第2の超純水パイプ17と合流した後半導体ウェーハ洗浄槽15に接続されている。電解質溶液供給パイプ8′は、ダミー陽極室2′に接続され、高濃度の電解質溶液をダミー陽極室2′に供給する。ダミー陽極室2′では酸性水が生成され、これは、排水パイプ10′から外へ排出される。電解質溶液供給パイプ8は、電解質タンク18から供給された塩酸(HCl)と超純水とがミキサー19でミキシングされて形成された電解質溶液を電解槽1の陽極室2に供給する。電解質溶液供給パイプ9は、電解質タンク20から供給された塩酸(HCl)と電解質タンク21から供給されたアンモニア(NH)と超純水とがミキサー22でミキシングされて形成された電解質溶液を電解槽1の陰極室3に供給する。
【0017】
陽極室2で生成された酸性水は、酸性水供給パイプ10で外部へ供給される。酸性水は、希釈後の溶存塩素濃度が2〜20ppm程度になるように第1の超純水パイプ16から供給される超純水で希釈され、ミキサー23でミキシングされて半導体ウェーハ洗浄装置などの半導体製造装置へ供給される。陰極室3で生成されたアルカリ性水は、アルカリ性水供給パイプ11で外部へ供給される。アルカリ性水は、第2の超純水パイプ17から供給される超純水で希釈され、ミキサー24でミキシングされて半導体ウェーハ洗浄槽15へ供給され、半導体ウェーハ30を洗浄する。その希釈の度合いは、10〜100倍程度とする。洗浄については、パーティクルや金属コンタミの除去効果を上げるため、酸性水では弗酸(HF)、硝酸(HNO)、塩酸(HCl)等の他の薬液と組み合わせて使用する。アルカリ性水においても界面活性剤などの薬液と組み合わせて使用する。薬液の濃度は、0.1〜5%程度が適当である。
HF、HNO、HCl等は、薬液タンク25からポンプ26により吸い上げられ酸性水に混合される。酸性水は、さらにミキサー23により均一に混合されて半導体ウェーハ洗浄槽などの半導体製造装置へ供給される。
【0018】
界面活性剤は、薬液タンク27からポンプ28により吸い上げられアルカリ性水に混合される。アルカリ性水は、さらにミキサー24により均一に混合されて半導体ウェーハ洗浄槽15へ供給される。
電解イオン水を半導体ウェーハの洗浄に用いる場合、金属系電極を用いればパーティクルは抑えられるものの、金属がイオンとなって陽極から溶出してくる。炭素電極単体では、陽極が酸化すること(CO発生)により表面が浸食され、炭素片が欠落し多量のパーティクルが発生してしまう。
金属イオンが半導体ウェーハに付着すると半導体装置の特性を劣化させるので、この発生を極力避けなければならない。そのため陽極及び陰極には炭素電極が良く用いられる。炭素電極は、パーティクルの発生を少なくするためにグラファイトなどの結晶性炭素成型体とその表面に堆積させたアモルファス炭素層とから構成された電極を用いることができる。
また、パーティクルのイオン水への混入を防ぐために、例えば、電極表面を石英を焼き固めたセラミックフィルタなどのシリカ性の清浄度の高いフィルタで被覆することもできる。
【0019】
電極材料としては、上記の他に燐(P)やボロン(B)などの不純物をドープした単結晶シリコン、不純物をドープした多結晶シリコン、不純物をドープしたアモルファスシリコン、炭化珪素、表面が炭化珪素膜で被覆された導電体などを用いることができる。炭化珪素で被覆された導電体としては、炭素、チタン、シリコンなどがある。また、金属イオンを避けるために陽極及び陰極には金属を避ける必要がある。しかし、ダミー陽極は、ダミー陽極室で形成されるイオン水は廃棄していまうので金属電極を用いることができる。その結果ダミー電極には高い電圧を印加することができるという利点がある。なお、半導体ウェーハを洗浄する場合、パーティクルを除去するにはアルカリ性水が良く、金属を除去するには酸性水を適用するのが良い。
また、半導体ウェーハを洗浄するに際して任意のpHを有するアルカリ性水を要することがある。例えば、RIE(Reactive Ion Etching)を行うウェーハ処理工程の後処理では、pHが7程度で、ORPが任意であるアルカリ性水が半導体ウェーハ表面のダストを除去するのに効果がある。この様にアルカリ性水のpHを任意に設定するには、電解イオン水生成装置から生成されたアルカリ性水にアンモニア水を適宜の量加えると得られる。この時、電解イオン水生成装置の陰極室にはHCl電解質溶液を供給する。
【0020】
次に、図5を参照して第2の発明の実施の形態を説明する。
図は、電解イオン水生成装置の模式断面図である。電解槽1は、陽極室2と、陰極室3と、ダミー陽極室2′と、中間室2″と構成されている。陽極室2は、酸性イオン水が生成されるので酸性水槽といい、陰極室3は、アルカリ性イオン水が生成されるのでアルカリ性水槽という。この電解槽1は、テフロンや塩化ビニールなどの合成樹脂から構成されていて、例えば、四角柱形状である。陽極室2には、陽極4が配置され、陰極室3には陰極5が配置され、ダミー陽極室2′にはダミー陽極4′が配置形成されている。中間室2″には電極が配置されていない。この発明の実施の形態では電極は、各電極室とも棒状体であり、それぞれ10本配列しているが、例えば、薄い板状体のような他の形状でも良い。また、電極室は、円筒などの他の形状でも良い。各電極は、電解槽1の上部蓋に気密に固定されている。
【0021】
電解槽1は、四分され、陰極室3と陽極室2とを分離する隔膜6、陰極室3と中間室2″とを分離する隔膜6′及び中間室2″とダミー陽極室2′とを分離する隔膜6″が配置されている。隔膜6、6′、6″には、例えば、イオン交換膜が用いられる。陽極4及び陰極5は、第1の直流電源12に接続されている。第1の直流電源12の正極は、陽極4に接続され、負極は、陰極5に接続されている。ダミー陽極4′及び陰極5は、第2の直流電源13に接続されている。第2の直流電源13の正極は、ダミー陽極4′に接続され、負極は、陰極5に接続されている。陽極室2、陰極室3、中間室2″及びダミー陽極室2′には純水を溶媒とし電解質を溶質とする電解質溶液がそれぞれ電解質溶液供給パイプ8、9、8′を介して供給される。この発明の実施の形態では、陽極室2及びダミー陽極室2′にはHClが電解質として供給され、陰極室3にはHCl+NHが電解質として供給される。陽極室2に供給される電解質溶液のHCl濃度は、例えば、1000ppmであり、陰極室3に供給される電解質溶液のHCl+NH濃度は、例えば、1000ppmであり、ダミー陽極室2′に供給される電解質溶液のHCl濃度は、例えば、1〜10wt%と高濃度である。
【0022】
第1及び第2の電源12、13を動作させて電解質溶液の溶媒である純水が電気分解され、陽極室2に酸性水が生成され、陰極室3にアルカリ性水が生成される。そして、ダミー陽極室2′には高濃度酸性水が生成され、これは排水パイプ10′から排出される。中間室2″にはダミー陽極室2′から発生する高濃度の塩素ガスが浸透していくので、ダミー陽極室2′にはパーティクルの含まない酸性水が得られる。酸性水は、陽極水(酸性水)供給パイプ10を介して外部の半導体製造装置などの酸性イオン水を必要とする製造装置に供給される。アルカリ性水は、陰極水(アルカリ性水)供給パイプ11を介して外部の半導体製造装置などのアルカリ性水を必要とする製造装置に供給される。
【0023】
陽極室2にはHCl電解質溶液を供給し、陰極室3にはHCl+NHを供給し、ダミー陽極室2′にはHClの高濃度電解質溶液を供給する。そして、陽極4及び陰極5には第1の直流電源12から20〜30V(2〜3A)の電圧を印加する。それと同時に、ダミー陽極4′及び陰極5には第2の直流電源13から50〜100V(数10A)の電圧を印加する。このように、この電気分解では陽極4と陰極5とを対比して高電流を陰極5側に流すことを特徴としている。一方の陽極4には規定量の電流を流して、図4に示すように、経時的に安定なORP値を有する陽極水を陽極室2に生成させる他方の陰極5には過剰分の電流を流すことにより電流バランスをとっている。イオン水を半導体装置の製造に利用する場合、イオン水のpH値及びORP値によってその用途を決定する。したがって、ORP値が従来のように時と共に変化するのでは所定の用途に決めることができない。そこで、本発明の電解イオン水生成装置で生成されるような安定なイオン水が望まれる。
このような方法で電気分解を行うことにより、陰極5には水素が十分供給されアルカリ水の生成量が多くなると共に、経時的に安定なORP値を有するアルカリ性水が生成される。アルカリ性水の生成レートは、酸性水とほぼ等しくなるので、アルカリ性水と酸性水の等量生成が可能になる。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、以上のような構成により、陰極には水素が十分供給されアルカリ水の生成量が多くなると共に、経時的に安定なORP値を有するアルカリ性水が生成される。また、アルカリ性水の生成レートは、酸性水とほぼ等しくなるので、アルカリ性水と酸性水の等量生成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電解イオン水生成装置の模式図。
【図2】本発明の電解イオン水生成装置の斜視図。
【図3】本発明の電解イオン水生成装置を用いた半導体ウェーハ洗浄のシステム図。
【図4】イオン水が有するORP値の経時的変化を示す特性図。
【図5】本発明の電解イオン水生成装置の模式図。
【図6】従来の電解イオン水生成装置の模式図。
【符号の説明】
1・・・電解槽、 2・・・陽極室、 2′・・・ダミー陽極室、 2″・・・中間室、 3・・・陰極室、 4・・・陽極、 4′・・・ダミー陽極、 5・・・陰極、 6、6′、6″・・・隔膜(イオン交換膜)、 8、8′、9・・・電解質溶液供給パイプ、 10・・・酸性水供給パイプ、10′・・・排水パイプ、 11・・・アルカリ性水供給パイプ、12・・・第1の直流電源、 13・・・第2の直流電源、 14・・・超純水タンク、 15・・・半導体ウェーハ洗浄槽、 16・・・第1の超純水パイプ、 17・・・第2の超純水パイプ、 18、20、21・・・電解質タンク、 19、22、23、24・・・ミキサー、 25、27・・・薬液タンク、 26、28・・・ポンプ、 30・・・半導体ウェーハ。

Claims (12)

  1. 陽極、陰極及びダミー陽極からなる電気分解用電極と、
    前記陽極が配置された陽極室と、
    前記陽極室とは隔壁によって隔てられ、前記陰極が配置された陰極室と、
    前記陰極室とは隔壁によって隔てられ、前記ダミー陽極が配置されたダミー陽極室と、
    前記陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第1の電源と、
    前記ダミー陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第2の電源とを備え、
    純水もしくは超純水を電気分解する場合において、前記第1の電源及び前記第2の電源に電源電流を通電することを特徴とする電解イオン水生成装置。
  2. 純水もしくは超純水を電気分解する場合において、前記第2の電源から前記電極に印加される電源電流は、前記第1の電源から前記電極に印加される電源電流より大きいことを特徴とする請求項1に記載の電解イオン水生成装置。
  3. 前記電気分解用電極は、炭素、表面にアモルファス炭素膜が被覆された結晶性炭素、不純物ドープ単結晶シリコン、不純物ドープ多結晶シリコン、不純物ドープアモルファスシリコン、炭化珪素、表面が炭化珪素膜で被覆された導電体から選択された1つを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電解イオン水生成装置。
  4. 前記隔壁は、イオン交換膜からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電解イオン水生成装置。
  5. 前記ダミー陽極は、金属から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電解イオン水生成装置。
  6. 前記陰極室と前記ダミー陽極室との間に電極が配置形成されていない中間室を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電解イオン水生成装置。
  7. 陽極、陰極及びダミー陽極からなる電気分解用電極と、前記陽極が配置された陽極室と、前記陽極室とは隔壁によって隔てられ、前記陰極が配置された陰極室と、前記陰極室とは隔壁によって隔てられ、前記ダミー陽極が配置されたダミー陽極室と、前記陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第1の電源と、前記ダミー陽極に正極が接続され、前記陰極に負極が接続された第2の電源とを具備した電解イオン水生成装置の前記第1の電源から前記陽極及び前記陰極に電流を通電する工程と、
    前記第2の電源から前記ダミー陽極及び前記陰極に電流を通電する工程とを備え、
    前記陰極室及び前記陽極室に供給された純水もしくは超純水を電気分解することを特徴とする電解イオン水生成方法。
  8. 前記陰極室及び前記陽極室に供給された純水もしくは超純水にさらにアンモニア水を加えることを特徴とする請求項7に記載の電解イオン水生成方法。
  9. 前記第2の電源から前記電極に通電される電流は、前記第1の電源から前記電極に通電される電流より大きくすることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の電解イオン水生成方法。
  10. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された電解イオン水生成装置により生成されたイオン水を洗浄槽に供給する工程と、
    前記イオン水を用いて半導体ウェーハを洗浄する工程とを備えていることを特徴とする洗浄方法。
  11. 前記イオン水は、前記洗浄槽に供給される前に純水もしくは超純水で希釈することを特徴とする請求項10に記載の洗浄方法。
  12. 前記電解イオン水生成装置により生成されたアルカリ性イオン水にアンモニア水を添加することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の洗浄方法。
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