JP3582893B2 - 表面光沢の優れた感熱転写記録体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、表面光沢に優れると共に高濃度印字が可能でドット抜けが無く、画像の均一性が良好で、且つ画像受容層の塗布・成形時に溶剤負けを起こすこともなく、優れた画像品質を与える感熱転写記録体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
顔料を含む熱溶融型の色剤や昇華性または気化性の染料を含む転写層を有する転写シートを重ね合わせ、該転写シートを加熱することにより、転写層中に含まれる顔料や染料を熱溶融、昇華または気化させて受容シートに転着させ、受容シート上に顔料画像や染料画像を形成させる熱転写方法は知られているが、近年これらの用途においては、写真印画紙の様に光沢感に優れた感熱転写記録体の要望が強くなっている。
【0003】
写真分野に用いられる感熱転写記録体における画像受容層の種類は、用いる色材の種類によって異なり、顔料を含む熱溶融型色材の場合は、ポリアクリル系やポリオレフィン系等の高分子材料或はそれらに活性白土等の無機質充填材を混合したものが使用され、昇華性の塩基性染料型色材の場合には活性白土(活性クレー)層が、また昇華性の分散染料型色材の場合にはポリエステル等の高分子材料層が用いられている。
【0004】
熱転写画像受容シートとしては、紙や無機質微細粉末を含む熱可塑性樹脂の延伸フィルムよりなる合成紙や、透明フィルムからなる支持層の表面に白色度やインキ受容性向上のためシリカや炭酸カルシウム等の無機化合物をバインダーと共に表面に塗布した塗工合成紙等の表面に、上記の様な画像受容層を塗布・形成したものが一般的である。中でも空洞含有ポリオレフィン系樹脂フィルムは、その空洞によって与えられる優れたクッション性によりサーマルヘッドの熱が良好に伝達されるので、高濃度画像記録が得られ易い。
【0005】
また光沢の優れた感熱転写記録体とするため、微細な空洞を多数含有する空洞含有ポリオレフィン系樹脂フィルム層の少なくとも片面に、実質的に空洞を含有しないポリオレフィン系樹脂層を重ね合わせ、これを延伸することによって得られる光沢の優れた空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを、感熱転写記録体における画像受容層の支持層の一構成要素として使用することも公知である。
【0006】
このとき、ポリオレフィン系樹脂フィルム内に空洞を発現させる方法としては、ポリオレフィン系樹脂に炭酸カルシウムや二酸化珪素等の無機質微細粒子、あるいは該ポリオレフィン系樹脂に非相溶の樹脂を配合し、押出機のスクリュー等によってこれらをポリオレフィン系樹脂中に均一に分散させた組成物をシート状に成形し、次いで延伸することにより、ポリオレフィン系樹脂と無機質微粒子または微粒子状で分散した非相溶の樹脂との界面剥離によって微細な空洞を無数に形成させる方法が知られている。
【0007】
ところが無機質微粒子を使用する方法では、一般的に使用される炭酸カルシウムや二酸化珪素等の粒度分布が広く粗大粒子を含むため、延伸フィルムの表面が荒くなり、空洞を含まないポリオレフィン系樹脂層を積層しても光沢の優れたものが得られ難く、またフィルム表面が均質なものになりにくいため画像が不均一になったりドット抜けを生じ易くなり、満足な印刷適性の感熱転写記録体が得られない。
【0008】
また、ポリオレフィン系樹脂に対して非相溶の樹脂を微粒子状に分散させる方法では、無機質微粒子の場合に見られる様な粗大微粒子に起因する問題を生じることはないが、分散状態の制御が困難であるためフィルム表面が均質なものになりにくく、やはり満足な画像印刷適性が得られない。しかもこの方法では、画像受容層の塗布・形成等を行なうときに、ポリオレフィン系樹脂中に分散した樹脂の溶出が起こって表面状態を更に悪くするという問題も指摘されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な問題点に着眼してなされたものであって、その目的は、従来の空洞含有ポリオレフィン系樹脂フィルムを画像受容層の支持層とする感熱転写記録体に指摘される問題を改善し、表面光沢が良好で且つ画像の均一性に優れ、しかもドット抜け等の問題を生じることもなく、更には画像受容層を塗布・形成する際に溶剤負けを起こすこともなく、高濃度で鮮明な記録を達成し得る様な感熱転写記録体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る光沢に優れた感熱転写記録体の構成は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径が0.1〜7μmである有機質の架橋高分子微粒子を1.5重量部超40重量部以下配合してなる組成物をシート状に成形してなる未延伸シート若しくはその1軸延伸シートを基材層(A)とし、
該基材層(A)の片面もしくは両面に、
ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、該ポリオレフィン系樹脂に非相溶で且つ平均粒径が0.1〜7μmである無機質微粒子および/または有機質架橋高分子微粒子を0.05〜1.5重量部含有する微粒子含有樹脂組成物をシート状に成形してなる未延伸シート若しくはその1軸延伸シートからなる光沢改善層(B)を積層し、
該積層体を延伸してなる空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを、感熱転写記録体における画像受容層を支持する支持層の一構成要素として用いたものであるところに要旨を有する。
【0011】
尚、上記基材層(A)および光沢改善層(B)に使用される有機質の架橋高分子微粒子としては、ポリオレフィン系樹脂内への分散性が良好で均一な空洞を万遍なく形成することができ、且つ耐溶剤性の一段と優れたものを与えるという理由から、(メタ)アクリル系モノマーやスチレン系モノマーをモノマー単位として含む架橋高分子微粒子が好ましいものとして用いられる。
【0012】
【作用】
上記の様に本発明に係る表面光沢に優れた感熱転写記録体は、画像受容層を支持する支持層の一構成要素として、ポリオレフィン系樹脂に対し、平均粒子径の特定された有機質の架橋高分子微粒子を特定重量部配合してなる組成物からなる基材層(A)の少なくとも片面に、実質的に空洞を含有しないポリオレフィン系樹脂からなる光沢改善層(B)を積層してから延伸してなる空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを使用するものであり、基材層(A)の内部には微細な空洞が全体に渡って万遍なく形成されており、優れたクッション性を有すると共に、光沢改善層(B)は、表面荒れがなく優れた光沢を有すると共に、耐溶剤性や耐ブロッキング性の優れたものであってコーティング等の表面処理工程で表面荒れ等を生じることが無く、柔軟性や腰、クッション性等の機械的特性はもとより、表面光沢や耐ブロッキング性等の表面特性においても非常に優れたものである。従って、該表面光沢に優れた空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルム層を支持層の一構成要素として用いた感熱転写記録体は、優れた表面光沢と耐溶剤性を有し、高濃度で且つ均一性に優れ、ドット抜け等のない鮮明な画像を与える感熱転写記録体となる。
【0013】
本発明において、基材層(A)および光沢改善層(B)のベースとなるポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン、エチレン、ブテン、4−メチルペンテン−1の如く、公知のオレフィンをモノマー成分とする単独重合体や共重合体もしくはそれらの任意の混合物が使用される。また該ポリオレフィン系樹脂中に分散される有機質の架橋高分子微粒子としては、上記ポリオレフィン系樹脂の溶融成形温度条件下で溶融することがなく、且つ同温度に耐える耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、付加重合法、重縮合法、重付加反応法などの任意の方法で製造される架橋高分子微粒子を使用することができ、また一旦非架橋構造のポリマーを製造した後架橋剤を用いて事後的に架橋させた高分子微粒子を使用することも可能である。
【0014】
但し、基材層(A)中に配合される有機質架橋高分子微粒子は、平均粒子径が0.1〜7μmの範囲のものを使用する必要があり、該粒子径が0.1μm未満の極微細なものである場合は、たとえ添加量をかなり増やしたとしても本発明で意図する様な空洞含有量を得ることはできず、一方粒子径が7μmを超える粗粒物になると、得られるフィルムが表面凸凹の著しいものとなって表面光沢が悪化するばかりでなく、製膜性や延伸性にも欠けるものとなる。該微粒子のより好ましい粒子径は0.5〜5.0μmの範囲であり、また該微粒子は粒度分布の小さいものが好ましい。
【0015】
また、基材層(A)内への該微粒子の配合量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1.5重量部超40重量部以下の範囲とすることが必須であり、微粒子の配合量が不足する場合はやはり本発明で意図する様な空洞含有量を得ることができず、逆に多すぎる場合は製膜性や延伸性に問題が生じてくる。該微粒子のより好ましい配合量は2.0〜30重量部の範囲である。
【0016】
一方、光沢改善層(B)中に配合される微粒子としては、上記と同様の有機質架橋高分子微粒子の他、炭酸カルシウム、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト等の無機質微粒子を使用することができ、これらは単独で使用してもよく或は必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。該微粒子の好ましい平均粒子径は前記と同様の理由から0.1〜7μmのものを使用することが必要となる。そしてこれらの微粒子の配合量は、優れた表面光沢を保証するため、基材層(A)への配合量よりも少な目に抑え、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.05〜1.5重量部の範囲から選ぶ必要がある。しかして該微粒子の配合量が0.05重量部未満では、表面が平滑になり過ぎるため、得られるフィルムの耐ブロッキング性が不良となる。耐ブロッキング性悪化の問題は、平均粒子径が0.1μm未満の極微細な粒子を使用したときにも生じてくる。一方、光沢改善層(B)内への該微粒子の配合量が1重量部を超えると、表層部の表面凹凸が大きくなって満足のいく光沢が得られなくなる。耐ブロッキング性と表面光沢の両者を加味して、光沢改善層(B)内へ配合される該微粒子のより好ましい平均粒子径は0.2〜2.5μm、より好ましい配合量は0.08〜1.2重量部の範囲である。
【0017】
尚、基材層(A)の厚みは特に限定されないが、最も一般的な厚みは15〜250μmの範囲である。一方、該基材層(A)の上に形成される光沢改善層(B)は、上記の様に耐ブロッキング性を阻害することなく表面光沢を高めるために設けられるものであり、その厚みは、基材層(A)の空洞に起因する凹凸を平滑化し、且つ空洞含有複層フィルムに求められる基本特性であるクッション性を確保し得る範囲で、基材層(A)に添加される架橋高分子微粒子の配合量や平均粒径などを考慮して適宜に決めるべきであるが、好ましいのは0.5〜15μmの範囲である。
【0018】
有機質架橋高分子を微粒子化する方法も特に限定されないが、乳化重合や懸濁重合等の方法を採用し、重合時に直接微粒子化する方法が好適である。これらの重合方法を採用する場合、自己乳化性を付与し得る特殊構造の極性モノマーを少量共重合する手段を採用することも有効である。有機質架橋高分子微粒子の形状は特に限定はされないが、実質的に球状、あるいはラグビーボール状のものが好ましい。
【0019】
尚、上記基材層(A)や光沢改善層(B)内に配合される微粒子の選択に当たっては、後述する水滴保持時間を選択基準に加え、基材層(A)と光沢改善層(B)に配合されるものとして、水滴保持時間の異なる微粒子を適宜選択して使用するのが好ましい。即ち基材層(A)では、空洞を効率よく形成させるため、延伸工程で該微粒子の回りにボイドを形成させ易くするのがよく、一方、光沢改善層(B)では、この様なボイドが大きくなり過ぎると光沢を阻害するので、できるだけボイドを小さく且つ少なめに抑えることが好ましい。こうした観点から、基材層(A)内に配合される微粒子は水滴保持時間が5分程度以下のものが好ましく、一方光沢改善層(B)内に配合される微粒子は水滴保持時間が5分程度を超えるものを選択使用することが望まれる。
【0020】
上記において、水滴保持時間とは、下記の方法で測定される値であって、微粒子の疎水性の度合いを示す指標となるものであり、水滴保持時間が5分以下のものでは、延伸時にポリオレフィン系樹脂と微粒子間の界面剥離が起こり易くなって高い空洞含有量が得られ易く、一方5分を超えるものでは、延伸時に上記の様な界面剥離が起こり難いために空洞含有量が上がりにくく、従ってより高い光沢のものが得られ易くなるものである。
【0021】
(水滴保持時間の測定法)
架橋高分子微粒子を水平で平滑な台上で2枚の2軸延伸ポリプロピレンフィルムの間に狭持し、上側フィルムを手で軽く押さえて厚さ2mmの平滑な微粒子層を形成した後、上側フィルムを静かに取り外す。得られた架橋高分子微粒子層の表面にスポイドで直径3mmの水滴を高さ1cmの位置から落とし、該水滴が架橋高分子微粒子層に吸収されて消失するまでの時間を測定し、疎水性
の指標とする。
【0022】
尚、上記の有機質架橋高分子微粒子として特に好ましいのは、(メタ)アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーをモノマー成分として含む架橋高分子、中でも(メタ)アクリル−スチレン系の共重合架橋高分子であって、これらの架橋高分子微粒子は耐熱性および耐溶剤性が良好で、かつ空洞形成性の優れたものであり、微細な空洞が均一に分散して形成された高品質の空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを与える。
【0023】
(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸またはそのエステル誘導体を挙げることができ、これらのモノマーは単独で使用してもよくあるいは2種以上を併用することもできる。また、少量であれば(メタ)アクリル酸の金属塩、アミド誘導体、ヒドロキシエチルエステル、ジメチルアミノエステル等の誘導体を併用しても構わない。
【0024】
スチレン系モノマーとしてはスチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレンまたはその誘導体が挙げられる。また全モノマー成分中の含有率が20重量%程度以下であれば酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合性ビニル系モノマーを配合することも有効である。これらモノマー成分の架橋法としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル等の多官能性モノマーを架橋高分子微粒子製造時に共重合させるか、高分子生成後に添加して架橋させる等の方法が例示されるが、これらの製法には一切制限されない。
【0025】
上記の有機質架橋高分子微粒子や無機質微粒子の平均粒径や配合割合の最適値は、ポリオレフィン系樹脂の種類やフィルムの厚さ、要求特性等によっても変わってくるので、目的とするフィルム特性に応じて前記範囲から最適の値に設定すればよい。
【0026】
また、更に他の成分として他の有機質樹脂や無機質微粒子を少量併用したり、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、ワックス、金属石鹸等の潤滑剤を併用するなどによって隠蔽性、滑り性、生産性などを高めることも有効である。特に本発明に係る感熱転写記録体においては、隠蔽性や白色度調整のため、フィルム欠陥や耐溶剤性、生産性等を損なわない範囲で二酸化チタンを添加することは有効である。また、通常のポリオレフィン系樹脂フィルムに配合される公知の各種安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、加工助剤、可塑剤などを適宜配合することも可能である。
【0027】
また、ポリオレフィン樹脂系フィルムへの前記有機質架橋高分子微粒子や無機質微粒子、更には必要により配合される副添加剤等の配合法にも格別の制限はないが、一般的な方法としては、V型ブレンダー、スクリュー型ブレンダー、ドライブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機を使用して均一に混合した後、混練ペレット化する方法が一般的である。このペレットを使用して常法によりシート状またはフィルム状に成形した後、基材層(A)構成シートまたはフィルムと光沢改善層(B)構成シートまたはフィルムを下記の様な方法によって重ね合わせて1軸もしくは2軸(好ましくは2軸)延伸すると、本発明の表面光沢の優れた感熱転写記録体の一構成要素となる空洞含有ポリオレフィン系樹脂フィルムが得られる。
【0028】
基材層(A)を構成する未延伸もしくは1軸延伸シートの片面もしくは両面に光沢改善層(B)を積層して、支持層構成フィルムを製造する代表的な方法としては、下記の様な方法が例示される。
【0029】
(a):2台の押出機を使用し、1台の押出機から基材層(A)を構成する樹脂組成物を溶融押出しすると共に、他の押出機から光沢改善層(B)を構成する樹脂組成物を溶融押し出しし、それらをダイス内またはダイス外で重ね合わせて積層し、次いで延伸する方法。
(b):予めシート状に押出し成形した基材層(A)構成シートを、そのまま若しくは1軸延伸し、その片面もしくは両面に光沢改善層(B)を溶融押出しして積層し、次いで延伸する方法。
【0030】
(c):基材層(A)構成シートまたはフィルムと光沢改善層(B)構成シートまたはフィルムを夫々予め製造しておき、これらを事後的に貼り合わせて複合し、次いで延伸する方法。
(d):基材層(A)構成シートまたはフィルムと光沢改善層(B)構成シートまたはフィルムを夫々予め製造し、更に1軸もしくは2軸に延伸しておき、これらを事後的に貼り合わせて複合する方法。
【0031】
尚延伸に当たっては、面積倍率で8〜50倍程度、好ましくは10〜40倍程度に延伸すると、該延伸工程で前述の如く基材層(A)内には空洞含有量の高い大きめの空洞が形成され、一方光沢改善層(B)内に形成される空洞は小さく且つ少なく抑えられるため、本発明の意図する表面光沢に優れた感熱転写記録体の一構成要素として使用される表面光沢の高い空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムが得られる。
【0032】
逐次2軸延伸を行う場合の条件としては、まず縦方向に40〜170℃程度の温度で3〜7倍延伸し、次いで横方向に前記延伸温度よりも若干高めの温度で且つ200℃を超えない温度で6〜10倍程度に延伸するのがよく、通常はその後130〜210℃で熱固定処理が行われる。
【0033】
この延伸工程では、前述の如くポリオレフィン系樹脂と架橋高分子微粒子との界面で剥離が起こってその周囲に微細な空隙ができ、分散された該微粒子の数に応じた数の微細な空洞が無数に形成されるが、前述の如く基材層(A)と光沢改善層(B)に配合される微粒子の粒径や配合量などを変えることによって、基材層(A)では相対的に空洞含有量が高められ、一方、光沢改善層(B)は実質的に空洞が小さく且つ少なめに抑えられるために表面光沢が高められ、表面光沢の優れた空洞含有複層ポリオレフィン系複合樹脂フィルムが得られる。
【0034】
尚上記延伸に当たっては、延伸後における基材層(A)内の空洞含有率が10〜100cc/100gの範囲となる様、前記架橋高分子微粒子の配合量等に応じて延伸倍率をコントロールすることが好ましい。しかして、空洞含有率が10cc/100g未満では、支持体として使用したときにクッション性が不足気味となってサーマルヘッドとの密着性が不十分となるばかりでなく、断熱性も不足気味となり、高濃度で且つ色抜け等の無い高品位な画像が得られ難くなる。逆に100cc/100gを超える高空洞含有量になるとフィルム強度が乏しくなるばかりでなく、延伸性や生産性も著しく低下するため好ましくない。
【0035】
また、上記基材層(A)および光沢改善層(B)は、夫々単層構造および2層以上の複層構造のものを包含するものであり、複層構造のものには、積層状態で延伸を行ったものおよび延伸後に積層したものが含まれる。また、必要によっては表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等を施してヒートシール性や接着性を高めることも可能である。
【0036】
この様にして得られた空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを感熱転写記録体における画像受容層の支持体の一構成要素として使用する場合の支持体の構成としては、空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルム単独、紙あるいはポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂フィルムの片面あるいは両面への積層などが挙げられるが、本発明の趣旨から空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムが画像受容層側の最表面に位置し、その上に画像受容層を設けることが必須であるが、発明の趣旨を損なわない範囲で隠蔽層や易接着層等を設けることを排除するものではない。
【0037】
上記構成の支持体の上に画像受容層を設けることによって感熱転写記録体が得られる。画像受容層の構成素材は、熱溶融転写記録方式の場合、基本的には顔料と接着剤を主成分とする塗料であり、顔料としては、クレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカなど従来の印刷用紙などに用いられる顔料塗工用の顔料から適宜選定し使用すれば良く、また、接着剤としては、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−スチレン−ブタジエン系、酢酸ビニル系またはアクリル系等の重合体、共重合体エマルジョンなどを単独または混合して使用することができる。
【0038】
また、ポリビニルアルコール、澱粉、カゼインなどの水溶性高分子接着剤も単独または混合して使用できるし、トルエンなどの非水系溶剤に可溶な接着剤を用いて溶剤塗工により塗工層を形成することも可能である。
【0039】
画像受容層における顔料と接着剤の比率は特に限定されないが、強度や耐熱性を考慮し、接着剤を通常50〜90重量%とするのが好ましい。もちろん、接着剤や顔料の種類、シートの用途などにより適宜この比率は変更できる。この他、高分子物質などを塗布するなど各種の方法によって画像受容層を形成することができ、塗工する画像受容層の厚みは通常3〜50μm程度で十分である。
【0040】
また、昇華型熱転写記録方式の場合、昇華性染料に対して充分な接着性を有するものであれば広く各種のものが使用でき、例えば熱可塑性ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル系樹脂等が使用できる。これらの接着性樹脂中には熱転写紙との融着防止のために離型性物質として固型ワックス類、シリコン油類、フッ素系あるいはリン酸エステル系の界面活性剤等が含有されていてもよい。また、必要に応じてシリカ、酸化チタン等の無機質微粒子を含有させてもよいし、接着性樹脂を一部架橋させてもよい。
【0041】
かくして得られる感熱転写記録体は、従来の空洞含有ポリオレフィン系樹脂フィルムを支持体として用いたときに見られる、画像の不均一やドット抜け等を生じることなく優れた画像品質が保証され、更には画像受容層を塗布・形成するときに溶剤負け等を起こすこともなく、高濃度且つ鮮明な画像記録が可能でしかも表面光沢の非常に優れたな感熱転写記録体となる。
【0042】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に包含される。尚、下記実施例で採用した測定方法は次の通りである。
【0043】
(空洞含有量)
空洞含有ポリオレフィン系樹脂フィルム100g中に存在する空洞容積を意味するものであり、下記式によって計算する。
空洞含有量=100×(1/D−(ΣMi/ρi)/100)
式中Miはフィルムを構成する原料別の混合割合(重量%)、ρiは各々の密度、Dは延伸フィルムの見掛け密度を表わす。
(光沢度)
JIS Z 8741(2)に準拠し、画像受容層塗布後の光沢度を求めた。
【0044】
(耐溶剤性)
得られたフィルム上に、トルエン/メチルエチルケトン=3/1の混合溶媒100重量部に対し、共重合ポリエステル(東洋紡績(株)製商品名「バイロン200」)を30重量部混合した溶液を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚みが10μmとなる様に塗布した後120℃の雰囲気中で1分間乾燥し、塗布前後の光沢度の差を耐溶剤性の指標とした。
【0045】
(印字適性)
耐溶剤性の評価に用いた画像受容シートを用い、市販の昇華染料を用いた熱転写カラープリンター(三菱電機社製カラープリンター「S3410−30」)を用いインクシートを段階的に加熱し、受容シートに染料を熱転写させ、各色の単色および色重ねの画像をプリントした。この受容シート上の画像の濃度、均一性、画像ドット抜けについて目視で評価した。
各々の項目について、特に優秀なものを◎、良好なものを○、少し欠陥のあるものを△、欠陥の著しいものを×としてランク付けした。
【0046】
(耐ブロッキング性)
試料フィルムをカッターで80mm×120mmに裁断し、この裁断片2枚を長手方向に上下に20mmずつずらして重ね合わせ、サンプルとする。これをタイプ用紙と交互に5組重ね合わせ、ガラス板で挟んだ後2kgの加重をかけて50℃の雰囲気で48時間放置する。その後サンプルを取り出して放冷し、20mm幅で長手方向に裁断し、これを試験片として引張試験機にかけ、引張速度200mm/分で剪断応力を測定し、その値で耐ブロッキング性を評価する。
【0047】
[実施例1]
メルトインデックス2.5g/10分のポリプロピレン100重量部に対して、水滴保持時間が2秒以内、平均粒子径1.7μmのほぼ単分散の粒径分布を示す球状の架橋アクリル−スチレン系共重合体粒子[メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/スチレン/ジベニルベンゼン=36/27/36/1(重量比)からなるモノマー成分を乳化重合法により重合調製したもの]12重量部、グリセリン樹脂酸エステル0.3重量部およびエルカ酸アミド0.3重量部を混合した樹脂組成物(a)と、
メルトインデックス3.0g/10分のポリプロピレン100重量部に対し、上記樹脂組成物(a)における架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子をポリマー型シランカップリング剤で表面処理して得た、水滴保持時間が10分以上の架橋共重合体微粒子を0.1重量部配合した樹脂組成物(b)を使用し、
これらを夫々別の溶融押出機を用いて、樹脂温度270℃で厚みが延伸後の状態で(b)/(a)/(b)=1/30/1となる様に重ね合わせて溶融押出しし60℃の冷却ロールで冷却することにより未延伸シートを得る。
【0048】
次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用し、延伸温度135℃で縦方向に4.5倍延伸し、引き続きテンター式延伸機により、165℃で横方向に8倍延伸した。次いで170℃で熱処理を行い、厚さ120μmの2軸延伸フィルムとした後、片面にコロナ処理を施した。更に、共重合ポリエステル(東洋紡社製「バイロン200」):30重量部とシリコーン樹脂(トーレダウコーニング社製「SH3746」):3重量部およびトルエン/メチルエチルケトン=3/1の混合溶媒:100重量部の混合物からなる画像受容層形成剤を塗布した後、熱転写カラープリンターを用い、印刷適性の評価を行った。得られた熱転写記録紙の特性値を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
上記実施例1において、光沢改善層(B)を構成する樹脂組成物(b)中に配合される架橋共重合体微粒子の添加量を5.0重量部に代えた以外は全く同様にして、感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
前記実施例1において、光沢改善層(B)を構成する樹脂組成物(b)内に架橋共重合体微粒子を配合しなかった以外は全く同様にして感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0051】
[比較例3]
前記実施例1において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子を、平均粒子径10μmの架橋アクリル−スチレン系共重合体(形状、組成等は同じ)に代えた以外は全く同様の方法で感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0052】
[比較例4]
前記実施例1において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子を、平均粒子径が0.05μmの架橋アクリル−スチレン系共重合体(粒子形状、粒子組成は実施例1と同じ)とした以外は全く同様の方法で感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0053】
[比較例5]
前記実施例1において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子の含有量を0.5重量部に代えた以外は全く同様にして感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0054】
[比較例6]
前記実施例1において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子の含有量を50重量部に代えた以外は全く同様にして感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0055】
[比較例7]
前記実施例1において、光沢改善層(B)を構成する樹脂組成物(b)内に配合する架橋共重合体微粒子を、平均粒子径が8μmの架橋共重合体微粒子(形状、組成等は同じ)に代えた以外は全く同様にして、感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0056】
[比較例8]
前記実施例1において、光沢改善層(B)を構成する樹脂組成物(b)内に配合する架橋共重合体微粒子を、平均粒子径が0.03μmの架橋共重合体微粒子(形状、組成等は同じ)に代えた以外は全く同様にして、感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
前記実施例1において基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)中に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子に代えて、水滴保持時間が1分である平均粒子径が1.7μmのほぼ単分散の粒度分布を示す球状の架橋アクリル系樹脂微粒子〔組成:メチルメタクリレート/トリメチロールプロパントリメタクリレート=98/2(重量部)〕を使用し、且つその添加量を13重量部とし、更に隠蔽剤として二酸化チタンを3重量部添加した以外は実施例1と全く同様の方法で感熱転写記録体を得た。表1に特性値を示す。
【0058】
[比較例9]
上記実施例2において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子に代えて、シクロペンタジエン系石油樹脂を使用した以外は全く同様の方法で感熱転写記録体を得た。表1に特性値を示す。
【0059】
[比較例10]
前記実施例2において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子に代えて、重質炭酸カルシウムを使用した以外は全く同様の方法で感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0060】
[比較例11]
前記実施例2において、基材層(A)を構成する樹脂組成物(a)内に配合する架橋アクリル−スチレン系共重合体微粒子を配合しなかった以外は全く同様にして感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
前記実施例1において、光沢改善層(B)を構成する樹脂組成物(b)中に配合される架橋共重合体微粒子の添加量を1.0重量部に代えた以外は全く同様にして、感熱転写記録体を得た。特性値を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1からも明らかである様に、実施例1、2、3で得られた感熱転写記録体はいずれも画像受容層を塗布・形成する時の溶剤負がなく画像濃度や均一性が良好で且つドット抜けなども見られず、優れた印刷適性を有すると共に表面光沢も非常に良好であるが、比較例の感熱転写記録体は、何れも耐ブロッキング性、耐溶剤性、光沢度、印刷適性のいずれかに問題があり、本発明の目的に合致しないものであることが分かる。
【0064】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、感熱転写記録体における画像受容層の支持体構成要素として、基材層(A)および光沢改善層(B)に配合する有機質および/または無機質の微粒子の粒子径、添加量を特定の範囲内とした空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを使用することにより、受容層塗布・形成時の溶剤負けがなく、画像印刷時の画像濃度や画像均一性が良好で且つドット抜け等がなく優れた印刷適性を有し、しかも表面光沢の非常に優れた感熱転写記録体を提供し得ることになった。
Claims (1)
- ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径が0.1〜7μmである有機質の架橋高分子微粒子を1.5重量部超40重量部以下配合してなる組成物をシート状に成形してなる未延伸シート若しくはその1軸延伸シートを基材層(A)とし、
該基材層(A)の片面もしくは両面に、
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、該ポリオレフィン系樹脂に非相溶で且つ平均粒子径が0.1〜7μmである無機質微粒子および/または有機質架橋高分子微粒子を0.05〜1.5重量部含有する微粒子含有樹脂組成物をシート状に成形してなる未延伸シート若しくはその1軸延伸シートからなる光沢改善層(B)を積層し、
該積層体を延伸してなる空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムを、感熱転写記録体における画像受容層を支持する支持層の一構成要素として用いたものであり、
この空洞含有複層ポリオレフィン系樹脂フィルムの光沢改善層(B)の上に画像受容層が形成されていることを特徴とする表面光沢の優れた感熱転写記録媒体。
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- 1995-06-21 JP JP15456495A patent/JP3582893B2/ja not_active Expired - Lifetime
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