JP3581776B2 - 耐汚れ性に優れた塗膜形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に耐候性、耐汚れ性に優れた塗膜形成方法に係る。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、屋外の基材(例えば建造物、表示物、ガードフェンス、器具、機械など)には装飾又は保護を目的として耐候性に優れた屋外用塗料が塗装されている。
【0003】
現在、屋外用として使用されている塗料としてはポリウレタン樹脂系塗料、フッ素樹脂塗料などが例示されるが、このものはバクロ中に砂塵、鉄粉、雨(酸性雨)、太陽光線などの影響によって塗装物表面が汚れ易くなり塗膜外観が悪くなるという欠点がある。
【0004】
また、表面の汚れを防止する方法として、特開昭61−221282号公報に、成型品の表面にアルキルシリケートの有機溶剤溶液を塗布する方法及び熱可塑性樹脂成形品中にアルキルシリケートを練り込む方法が開示されている。しかしながら、これらの方法によって得られたものは耐汚染性の保護性、耐久性が劣るという欠点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記した欠点を解消するために鋭意研究を重ねた。その結果、有機塗料組成物にオルガノシリケート及びその縮合物を配合した塗料組成物を基材表面に塗布することにより、汚れ難い(耐汚染性の良い)塗膜を提供するものであることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、
「1. 基材表面に、水酸基含有フッ素樹脂および/または水酸基含有アクリル樹脂から選んだ1分子中に平均2個以上の水酸基を有し、水酸基価20〜200で数平均分子量2000〜100,000の水酸基含有樹脂と(ブロック化)ポリイソシアネート化合物架橋剤とを水酸基含有樹脂の水酸基に対しイソシアネート基0.6〜1.5当量の割合で配合したものを反応硬化系有機樹脂として含有する有機溶剤系塗料組成物に下記一般式
Figure 0003581776
(式中、Rは同一もしくは異なって水素原子又は炭素数1〜3の1価の炭化水素基を示す。)
で表されるオルガノシリケートの縮合度2〜10の縮合物を有機溶剤系塗料組成物の樹脂固形分100重量部当たり0.1〜50重量部配合してなる上塗り塗料組成物を、膜厚が10〜100μmとなるように塗装し、次いで乾燥することによりオルガノシリケートの縮合物を多く含有する表面層と、少なく含有する内部層とからなる、オルガノシリケートの縮合物の含有量が表面層から内面層に傾斜した塗膜で、且つ酸処理後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となる塗膜を形成することを特徴とする、耐汚れ性に優れた塗膜形成方法。
2. 形成された塗膜の表面をpH6以下の酸性水溶液に5〜98℃で酸処理することを特徴とする請求項1記載の塗膜形成方法。」
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明方法において、上塗り塗料組成物で用いる有機塗料組成物は、溶剤系有機塗料組成物、水系有機塗料組成物、溶剤及び水を含有しない液状有機塗料組成物及び粉体塗料組成物などが包含される。
【0008】
溶媒系有機塗料組成物としては反応硬化形有機樹脂を樹脂成分として含有する反応硬化形塗料組成物が包含される。
【0009】
反応硬化形塗料組成物は、これ自体反応硬化して架橋塗膜構造を形成することができる硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解もしくは分散してなるものである。
【0010】
また、反応硬化形塗料組成物は、最終的に形成される硬化塗膜の硫酸水処理後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となるものが使用される。
【0011】
該反応硬化形塗料組成物としては、上記した条件を満足するものであれば特に制限されず従来から公知のものを選択して使用することができるが、中でも水酸基含有樹脂を基体樹脂とするものが、長期間の屋外バクロにおいて耐汚染性に優れた塗膜を形成するのでこのものを用いることが好ましい。
【0012】
水酸基含有樹脂としては、具体的にはフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂及びポリエステル変性アクリル樹脂などの変性樹脂などが包含される。これらの中でも特にフッ素系樹脂及びアクリル系樹脂を用いたものは耐汚染性に優れた効果を発揮するのでこのものを用いることが好ましい。
【0013】
上記水酸基含有フッ素系樹脂としては水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)、フルオロオレフィン(b)及び必要に応じて他のラジカル重合性不飽和単量体(c)とを共重合反応させて得られるものが包含される。
【0014】
上記水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)としては、フルオロオレフィンとラジカル共重合可能なラジカル重合性不飽和二重結合及び水酸基を有するものであり、具体的には、例えばヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテルなどのヒドロキシアリルエーテルが好適に使用できる。
前記フルオロオレフィン(b)としては下記一般式
Figure 0003581776
(式中、R、R及びRはH、F及びClを示す。R、R及びRは同一もしくは異なってもよい。)で表わされるものが使用できる。具体的には、例えばフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、三フッ化塩化エチレン及び四フッ化エチレン等が挙げられる。中でも好ましくは耐久性及び耐汚染性に優れた塗膜が得られることから四フッ化エチレン及び三フッ化塩化エチレンである。
【0015】
他のラジカル重合性不飽和単量体(c)としては、前記フルオロオレフィンとラジカル共重合可能な不飽和二重結合を有するものであり、要求される塗膜性能に応じて、従来から公知の単量体から選択して使用できる。具体的には、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、ブチレン−1等の如きα−オレフィン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の如きビニルエーテル類;酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ピバリック酸ビニル、カプリル酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類;酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニルなどの脂肪酸イソプロペニルエステル類などが挙げられる。
【0016】
また、該水酸基含有フッ素系樹脂はカルボキシル基を有することができる。該カルボキシル基は例えば水酸基含有フッ素樹脂中の水酸基の一部と多塩基酸無水物(例えば無水イタコン酸、無水コハク酸など)とを付加反応させることに導入できる。
【0017】
また、上記した以外にも水酸基含有フッ素樹脂として、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を一端に有し、他端にエチレン性二重結合を有する単量体(d)、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(e)及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(f)を共重合反応させて得られる重合体が使用できる。
【0018】
パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を一端に有し、他端にエチレン性二重結合を有する単量体(d)としては、好ましくはパーフルオロブチルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルエチルメタクリレート、パーフルオロデシルエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0019】
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(e)としては、好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0020】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(f)としては、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリルなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキル(C1−18)エステル;アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸:スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族モノマー;アクリル酸又はメタクリル酸のアミド化合物及びその誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。また、水酸基含有アクリル系樹脂としては、前記水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)及び/又は(e)、前記アクリル酸又はメタクリル酸(C1−18)のアルキルエステル又は下記のその他のラジカル重合性不飽和単量体(g)とを共重合反応して得られるものが包含される。
【0021】
上記その他の重合性不飽和単量体(g)としては、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸:スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族モノマー;アクリル酸又はメタクリル酸のアミド化合物及びその誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。水酸基含有樹脂は、数平均分子量約2,000〜100,000、好ましくは約5,000〜80,000の範囲を有することができる。分子量が約2,000を下回ると塗膜の耐久性、耐汚染性の保持性が低下し、一方、100,000を上回ると硬化剤、アルキルシリケートとの相溶性が低下し塗料貯蔵安定性が低下するので好ましくない。
【0022】
また、水酸基含有樹脂は、水酸基価約20〜200、好ましくは約50〜150の範囲を有することができる。水酸基価が約20を下回ると塗膜の耐久性、耐汚染性の保持性が低下し、一方、200を上回ると塗膜の耐久性、耐水性、耐汚染性が低下するので好ましくない。
【0023】
上記水酸基含有樹脂は、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの反応性硬化剤と組合わせて使用することができる。
【0024】
アミノ樹脂としてはメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0025】
上記ポリイソシアネート化合物は1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えばヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族系、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系等のものがあげられる。
【0026】
ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物に、例えばε−カプロラクタムなどのラクタム系ブロック化剤、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系ブロック化剤、アセトキシムなどのオキシム系ブロック化剤などでブロック化したものなどが挙げられる。
【0027】
水酸基含有樹脂とアミノ樹脂との混合割合は両者の総合計量で水酸基含有樹脂90〜40重量%、好ましくは80〜50重量%、アミノ樹脂10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%が良い。上記した範囲をはずれると塗膜の耐汚染性、耐水性、耐候性などが低下するので好ましくない。
【0028】
また、水酸基含有樹脂と(ブロック)ポリイソシアネート化合物の混合割合は、水酸基含有樹脂の水酸基に対し(ブロック)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を約0.6〜1.5当量、好ましくは約0.8〜1.2当量の範囲が良い。配合割合が約0.6当量を下回ると塗膜の耐候性、耐汚染性、耐水性などが低下し、一方、約1.5当量を上回ると塗膜の耐汚染性、耐候性などが低下するので好ましくない。
【0029】
本発明で用いる反応硬化形塗料組成物の硬化性樹脂組成物として、上記した以外にもシラノール基及び/又は加水分解性シリル基、水酸基及びエポキシ基を必須官能成分として含有する樹脂又は樹脂混合物(以下、このものを単に「基体樹脂」と略すことがある。)に硬化触媒を配合してなるものが使用できる。このものは基体樹脂とオルガノシリケート又はその縮合物とが結合した塗膜が形成できるので長期間にわたって耐汚染性に優れた効果を発揮するといった利点がある。以下、このものについて説明する。
【0030】
上記塗料で用いる基体樹脂が有する加水分解性シリル基は、水の存在下で加水分解してヒドロキシシラン基を生成する残基であり、例えばC1−8 のアルコキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、パラメトキシフェノキシ基、パラニトロフェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、フェニルアセトキシ基、ホルミルオキシ基などのアシロキシ基及び−N(R、−ON(R、−ON=C(R、−NRCOR(式中、それぞれRは同一もしくは異なってC1−8 のアルキル基、アリール基(例えばフェニル基など)、アラルキル基(例えばベンジル基など)を示し、RはH、C1−8 のアルキル基を示す。該アルキル基としては例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチルなどの基が挙げられる。)で表わされる残基などがある。
【0031】
基体樹脂としては、例えば、
▲1▼ 水酸基含有樹脂(A)、エポキシ基含有樹脂(B)、シラノール基及び/又は加水分解性シリル基を含有する樹脂(C)の3成分を含有する樹脂混合物(以下、「樹脂▲1▼」と略す。)、
▲2▼ エポキシ基含有樹脂(B)、シラノール基及び/又は加水分解性シリル基を含有する樹脂(C)の2成分の樹脂混合物であって、かつ樹脂(B)及び樹脂(C)のいずれか一方もしくは両方に水酸基を含有する樹脂混合物(以下、「樹▲2▼」と略す。)、
▲3▼ 水酸基、エポキシ基、シラノール基及び/又は加水分解性シリル基を含有する樹脂(以下、「樹脂▲3▼」と略す。)
などが挙げられる。
【0032】
樹脂▲1▼:
水酸基含有樹脂(A)としては、1分子中に平均2個以上の水酸基を有し、好ましくは数平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは3,000〜80,000のものが使用できる。水酸基が平均2個より少ないと硬化性(ゲル分率)が劣るものとなるので好ましくない。水酸基の数は、耐汚染性、耐水性などの観点から、平均400個以下であることが好ましい。数平均分子量が1,000未満では耐候性、耐汚染性等が劣るものとなり、一方、100,000を上回ると他の成分との相溶性が低下して、その結果、硬化が不均一で耐汚染性が劣るものとなるので好ましくない。
水酸基含有樹脂(A)としては、従来から公知の樹脂が使用できるが、特に耐候性、耐汚染性などの観点からビニル系重合体を用いることが好ましい。
【0033】
該ビニル系重合体としては、例えば下記水酸基含有重合性不飽和単量体(h)及び必要に応じてその他の重合性不飽和単量体(i)をラジカル重合して得られる(共)重合体が使用できる。
【0034】
水酸基含有重合性不飽和単量体(h)としては、例えば(h−1)〜(h−5)が挙げられる。
(h−1)ヒドロキシアルキルビニルエーテル:ヒドロキシブチルビニルエーテルなど、
(h−2)アリルアルコール及びメタリルアルコール
(h−3)(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル:ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど、
(h−4)(ポリ)アルキレングリコールモノアクリレート:エチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートなど、
(h−5)(h−1)〜(h−4)とラクトン類(例えばε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン)との付加物など。
【0035】
また、その他の重合性不飽和単量体(i)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの如き(メタ)アクリル酸のC1−24個のアルキル又はシクロアルキルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの如きビニル芳香族化合物類;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどの如きパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート類及び(メタ)アクリロニトリル類、オレフィン類、フルオロオレフィン類、ビニルエステル類、シクロヘキシル又はアルキルビニルエーテルオレフィン類、ビニルエステル類、シクロヘキシル又はアルキルビニルエーテル類、アリールエーテル類などが挙げられる。
【0036】
エポキシ基含有樹脂(B)は、1分子中に平均2個〜300個のエポキシ基を有し、好ましくは数平均分子量が120〜100,000、好ましくは240〜60,000のものである。エポキシ基の数が平均2個より少ないと耐候性、耐汚染性が劣るものとなるので好ましくない。数平均分子量が120未満の化合物を得ることは困難であり、一方、数平均分子量が100,000を上回ると他との相溶性が劣り、その結果得られる塗膜の耐候性、耐汚染性などが低下するので好ましくない。
【0037】
エポキシ基含有樹脂(B)としては、エポキシ基含有重合性不飽和単量体(j)(例えば特開平2−160879号公報に記載される一般式(4)〜(18)の脂環族ビニルモノマーなど)の単独重合体もしくは前記その他の重合性不飽和単量体(i)との共重合体などが好適に使用できる。
【0038】
シラノール基及び/又は加水分解性シリル基を含有する樹脂(C)としては、例えばγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリシラノール、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどの如きシラノール基及び/又は加水分解性シリル基を有するシランモノマー(k−1);該シラン化合物(k−1)及びトリアルコキシ又はトリヒドロキシシラン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリシラノール)を反応させて得られるシラノール基及び/又は加水分解性シリル基と重合性不飽和基を有するポリシロキサン系マクロモノマー(k−2)(例えば特開平2−160879号公報に記載されるポリシロキサン系マクロモノマー)の単独重合体もしくはその他の重合性不飽和単量体(i)との共重合体及びジフェニルシランジオールなどが好適に使用できる。
【0039】
上記樹脂(A)、(B)及び(C)の配合割合は、これら3成分の総合計量で樹脂(A)5〜95重量%、好ましくは20〜80重量%、樹脂(B)95〜5重量%、好ましくは80〜20重量%、樹脂(C)0.1〜80重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲が耐候性、耐汚染性などの点から好ましい。
【0040】
樹脂▲2▼:
エポキシ基含有樹脂(B)、シラノール基及び/又は加水分解性シリル基を含有する樹脂(C)としては前記と同様のものが使用できる。
【0041】
また、樹脂▲2▼においては、樹脂(B)及び樹脂(C)のいずれか一方もしくは両方に水酸基を有するが、該樹脂(B)及び樹脂(C)中に水酸基を導入する方法としては、例えば単量体成分として前記水酸基含有重合性不飽和単量体(h)を必須単量体成分として用いることにより行なえる。この場合の水酸基の数は、1分子中に平均1個以上、好ましくは平均400個以下含有させるのが好ましい。また水酸基を導入した樹脂の数平均分子量はそれぞれ1,000〜100,000、好ましくは3,000〜60,000のものが望ましい。
【0042】
また、上記樹脂(B)及び(C)の配合割合は、これら2成分の総合計量で樹脂(B)5〜95重量%、好ましくは20〜80重量%、樹脂(C)95〜5重量%、好ましくは80〜20重量%の範囲か耐候性、耐汚染性などの点から好ましい。
樹脂▲2▼には必要に応じて前記水酸基含有樹脂(A)を配合することができる。
【0043】
樹脂▲3▼:
該樹脂▲3▼は、1分子中に平均1個以上、好ましくは平均2〜40個のシラノール基及び/又は加水分解性シリル基、1分子中に平均1個以上、この好ましくは2〜40個のエポキシ基及び1分子中に平均2〜200個の水酸基を有することが、耐候性、耐汚染性などの点から好ましい。
樹脂▲3▼は例えば前記水酸基含有重合性不飽和単量体(h)、前記エポキシ基含有重合性不飽和単量体(j)、前記シラン化合物(k−1)及び/又は反応物(k−2)、必要に応じてその他の重合性不飽和単量体(i)との共重合体が好適に使用できる。
該単量体(h)〜(k−2)の配合割合は、樹脂中の官能基が前記範囲内に入るように配合すればよい。
【0044】
また樹脂▲3▼の数平均分子量は1,000〜100,000、好ましくは3,000〜60,000のものが望ましい。
【0045】
樹脂▲3▼には必要に応じて前記水酸基含有樹脂(A)を配合することができる。上記した樹脂▲1▼〜▲3▼の中でも耐候性、耐汚染性に優れた▲3▼の樹脂を用いることが望ましい。
【0046】
上記塗料で用いる硬化触媒は基体樹脂中のシラノール基、加水分解性シリル基、エポキシ基、水酸基の反応を促進するために使用するものであって、例えばアルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、カルシウム、バリウムなどの金属類にアルコキシ基が結合した金属アルコキシド類:該金属アルコキシド類にケト・エノール互変異性体を構成し得るキレート化合物類;ACl
Al(CCl、TiCl、ZrCl、SnCl、FeCl、BF、BF:(OCなどの如きルイス酸類;有機プロトン酸(
メタスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸など)、無機プロトン酸(リン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、硫酸など)のプロトン酸類;ケイ酸アルミニウムなどの如きSi−O−Al結合を有する化合物などが好適に使用できる。上記した中でも金属キレート化合物が好ましく、更にはジイソプロポキエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエチルアセトアセテート・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナート)アルミニウム、アセチルアセトナート・ビス(プロピオニルアセトナート)アルミニウムなどの如きアルミニウムキレート化合物類;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウムなどの如きチタニウムキレート化合物類;テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどの如きジルコニウムキレート化合物類などが好適である。
【0047】
硬化触媒の配合割合は基体樹脂100重量部に対して、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部とする。硬化触媒が0.01重量部未満では耐候性、耐汚染性が低下し、30重量部を上回ると塗膜の耐水性が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明において、反応硬化形塗料組成物に使用される有機溶剤は、前記硬化性樹脂組成物に対して実質的に不活性であり、かつ該硬化性樹脂組成物を溶解もしくは分散が可能なものを従来公知のものから適宜選択して使用できる。具体的には例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、ブタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素等が挙げられる。
【0049】
該有機溶剤の配合割合は硬化性樹脂組成物との総合計算換算で、約10〜95重量%、好ましくは約20〜90重量%の範囲が良い。
【0050】
また、溶剤系有機塗料組成物として、上記した反応硬化形塗料組成物以外に非架橋形塗料組成物も使用できる。
【0051】
非架橋形塗料組成物は常温もしくは加熱により有機溶剤が揮発することによって塗膜を形成する溶液形もしくは分散形の有機溶剤系塗料組成物である。
【0052】
また、該塗料組成物は、形成された塗膜を酸処理した後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となるものである。
【0053】
該塗料組成物としては、上記した条件を満足するものであれば、特に制限なしに従来から公知のものを選択して使用することができる。具体的には、セルロース誘導体塗料(ニトロセルロースラッカー、アセチルセルロースラッカー、アセチルブチルセルロースラッカー、エチルセルロースラッカーなど)、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、塩化ビニル樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、酢酸ビニル樹脂系塗料、スチレン−ブタジエン樹脂系塗料、塩化ビニルオルガノゾル塗料などが挙げられる。
【0054】
また、有機溶剤は塗料種によって適宜選択すれば良いが、具体的には炭化水素系(ヘキサン、ヘプタンなど)、アルコール系(プロパノール、ブタノールなど)、エーテル系(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、ケトン系(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなど)などが使用できる。
【0055】
有機溶剤の含有量は約10〜95重量%、好ましくは約20〜90重量%が良い。
【0056】
水性塗料組成物は従来から公知の例えば硬化もしくは未硬化形のもの、水溶解、水分散もしくはエマルジョン形のもの及びアニオン、カチオンもしくはノニオン形のものが使用できる。具体的には、塗料種としては例えばアルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、ポリブタジエン樹脂系及びこれらの変性樹脂を基体樹脂とするものが挙げられる。また、硬化形としては例えばアミノ硬化形、(ブロック)イソシアネート硬化形、酸化重合硬化形及び活性エネルギー線硬化形などが挙げられる。
【0057】
水性塗料組成物は、形成された塗膜を酸処理した後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となるものが使用される。
【0058】
有機溶剤もしくは水を含まない液状塗料組成物は有機溶剤を含まない架橋もしくは非架橋の溶液形もしくは分散形の液状塗料組成物である。具体的には、活性エネルギー線硬化型塗料、塩化ビニルプラスチゾル塗料などが挙げられる。
【0059】
該塗料組成物を用いて塗膜を形成するには、例えば活性エネルギー線硬化型塗料の場合は紫外線、電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、また、塩化ビニルプラスチゾル塗料の場合は加熱することにより塗膜が得られる。
【0060】
粉体塗料組成物は、粉体用硬化性樹脂組成物を樹脂成分とするものであって、これ自体反応硬化して架橋塗膜構造を形成することができる、従来から公知の熱硬化形粉体組成物が使用できる。
【0061】
また、粉体塗料組成物は、最終的に形成される硬化塗膜の酸処理後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となるものが使用される。
【0062】
該粉体用硬化性樹脂組成物としては、例えば官能基を有する粉体用硬化性樹脂に、該粉体用硬化性樹脂中の官能基と反応する硬化剤を配合したものが一般的に使用される。粉体用硬化性樹脂中の官能基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などが包含される。また、粉体用硬化性樹脂の種類としては、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂及びこれらの変性樹脂(例えばシリコン変性アクリル樹脂など)が挙げられる。
【0063】
また、硬化剤としては、例えばポリカルボン酸(アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸など)、ブロック化ポリイソシアネート(ε−カプロラクタムでブロック化したイソホロンジイソシアネートなど)及びポリエポキシド(トリグリシジルイソシアヌレートなど)などが挙げられる。
【0064】
粉体用硬化性樹脂組成物として、上記した中でもグリシジル(メタ)アクリレートを共重合体成分として含有するグリシジル基含有アクリル系樹脂を粉体用硬化性樹脂とし、かつドデカン2酸のポリカルボン酸を硬化剤として含有するもの及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合体成分として含有する水酸基含有アクリル系樹脂を粉体用硬化性樹脂とし、かつブロック化ポリイソシアネートを硬化剤として含有するものなどのアクリル系硬化性樹脂組成物並びにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を粉体用硬化性樹脂とし、かつトリグリシジルイソシアヌレートなどのポリエポキシドを硬化剤として含有するポリエステル系硬化性樹脂組成物が耐候性、耐汚染性に優れかつシリコン系、フッ素などの硬化性樹脂組成物と比較して比較的安価であることからこのものを用いることが好ましい。
【0065】
本発明方法に使用される上塗り塗料組成物において、オルガノシリケートは、下記一般式
Figure 0003581776
(式中、Rは同一もしくは異なって水素原子又は炭素数1〜の1価の炭化水素基を示す。)
で表される縮合度2〜10の縮合物である。Rの炭素数が10を越えたオルガノシリケートを用いると、加水分解速度が遅くなり塗膜の耐汚染性、耐久性などが劣る。
【0066】
該一般式において炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、例えばアルキル基、アリール基などが例示される。
【0067】
上記「アルキル基」は、直鎖状又は分枝状のいずれのタイプであってもよく、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、n−オクチル基などが挙げられるが、中でも炭素数1〜3の低級アルキル基が好適である。また、「アリール基」は、単環及び多環のいずれのタイプのものであってもよく、例えばフェニル、トルイル、キシリル、ナフチル基などが挙げられるが、中でもフェニル基が好適である。
【0068】
本発明で用いるオルガノシリケートの好ましい具体例としては、例えばテトラヒドロキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどが挙げられる。これらのものは1種もしくは2種以上組合わせたものも使用できる。
【0069】
また、オルガノシリケートの縮合物としては、前記一般式で表わされるオルガノシリケート同士の分枝状もしくは直鎖状の縮合物であって、縮合度が2〜100のものが好ましく、具体的には式:
Figure 0003581776
(式中、Rは前記と同様の意味を示し、nは2〜100の整数を示す。)
で表わされる縮合物が好ましい。
上記一般式において、nが100を越えると耐汚染性の効果が小さくなるので好ましくない。
【0070】
本発明で用いられるオルガノシリケートとしては、好ましくは一般式のRが炭素数1〜3の低級アルキル基のもの及びその縮合物としてはRが炭素数1〜3の低級アルキル基であって縮合度が2〜10のものが特に好ましい。
【0071】
オルガノシリケート及びその縮合物の配合割合は、前記塗料組成物の樹脂固形分100重量部当たり、約0.1〜50重量部、好ましくは約1〜40重量部の範囲が良い。オルガノシリケート及びその縮合物の配合割合が約0.1重量部を下回ると塗膜の耐汚染性が劣り、一方、約50重量部を上回ると塗膜が堅くなりワレ、光沢低下などの欠陥を生じる恐れがあるので好ましくない。
【0072】
本発明方法に用いられる上塗り組成物は、上記した以外にも必要に応じて着色剤、充填剤、流動調整剤、可塑剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、前記以外の樹脂(例えばトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、モノアルコキシシラン及びこれらの低縮合物など)などを配合することができる。
【0073】
本発明方法に使用される上塗り塗料組成物は、最終的に形成させた硬化塗膜の表面を酸処理し、その塗膜表面が水に対する接触角で70度以下、好ましくは20〜65度の範囲に入るものである。接触角は、硬化直後の塗膜を2.5重量%硫酸水20℃、24時間処理(浸漬)し、次いで付着した硫酸水を水洗し、乾燥をおこなったのち、塗膜表面に0.03cc脱イオン水の水滴を滴下し、20℃にて3分後の水滴の接触角を協和化学(株)製コンタクタングルメーターDCAA型にて測定した数値である。接触角が70度より大きくなると耐汚染性、耐久性などが劣る。
【0074】
本発明方法に使用される上塗り塗料組成物は、前記上塗り塗料組成物を基材に塗布し、次いで室温もしくは加熱することによって硬化塗膜を形成することができる。屋外などに晒された際に酸性雨などの酸成分によって塗膜表面は水に対する接触角が徐々に低下することによって塗膜表面の汚れを防止することができる。
【0075】
また、本発明においては、上記塗膜を屋外などに晒す前に予め酸で処理しておくことが好ましい。酸で処理することによって初期の段階から塗膜表面の汚れを防止することができる。
【0076】
上塗り塗料組成物を塗布する基材としては、ガラス、スレート、コンクリートなどの無機質基材;アルミニウム、鉄鋼、亜鉛、錫、銅、ステンレスなどの金属、鉄鋼表面に亜鉛、スズ、クロムなどをメッキした金属、鉄鋼などの表面をクロム酸、リン酸などで処理した金属などの金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABSなどのプラスチック基材;ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムなどの基材フィルムに接着剤又は粘着剤を設けてなるテープ並びにこれらの基材に必要に応じて公知のプライマー中塗り塗料、上塗り塗料を塗布した基材など広範な基材に塗布することができる。
【0077】
上塗り塗料組成物の塗装方法は、例えば刷毛塗り、吹付け塗り、ローラー塗り、浸漬塗り、静電粉体塗装などの手段で基材表面に塗布することができる。塗布量は塗料種、塗装手段などによって異なるが、一般には約1〜500μm、好ましくは約10〜100μmの範囲にある。該膜が10μm未満では耐汚れ性の耐久性に劣り、100μmを越えるものは塗装膜厚が確保できないとともに塗装できたとしても塗装膜厚が不均一となり、塗膜表面に均一なオルガノシリケート塗膜が確保できない。
【0078】
塗膜の乾燥は上塗り塗料組成物のタイプに応じて条件を選択することができる。例えば加水分解性シリル基、水酸基及びエポキシ基を必須官能基成分として含有する基体樹脂及び金属キレート化合物を含む上塗り塗料を用いた場合には、室温で約24時間程度もしくは加熱する場合には約140℃で約20分間程度の乾燥で、また、水酸基含有樹脂を基体樹脂としてポリイソシアネート化合物を架橋剤として含有する上塗り塗料組成物は室温で8時間程度で、また、水酸基含有樹脂を基体樹脂としブロック化ポリイソシアネート化合物又はアミノ樹脂を架橋剤として含有する上塗り塗料組成物は約140℃−約30分間程度で十分と考える。また、粉体塗料の場合は一般的には約140℃〜300℃で約10秒〜約60分間で十分と思われる。
【0079】
塗膜の酸処理は塗膜表面が水に対する接触角70度以下、好ましくは20〜65度の範囲に入るようにおこなわれる。該酸処理方法は上記した条件を満たす方法であれば特に制限はないが、具体的にはpH6以下の酸性水溶液に約5℃〜98℃で処理するのが好ましい。ここで用いる酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸が特に好ましい。処理した塗膜上の酸性水溶液は除去することが好ましい。また、接触角は前記した方法で測定することができる。
【0080】
【実施例1】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例中の「部」及び「%」は重量基準である。
【0081】
反応硬化形有機溶剤系塗料組成物
反応硬化形樹脂組成物▲1▼
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0部、グリシジルメタクリレート14.2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.0部、n−ブチルメタクリレート63.8部、アゾビスイソブチルバレロニトリル2.0部の混合物をキシレン中でラジカル重合反応して得られる樹脂固形分50%、数平均分子量40,000の樹脂200部にトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム1部を配合したもの。
【0082】
反応硬化形樹脂組成物▲2▼
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部、メチルトリメトキシシラン95部、脱イオン水30部、98%ギ酸の混合物を100℃で8時間反応させて得られる数平均分子量2,500のシロキサンマクロモノマーを得た。
次いで、上記シロキサンマクロモノマー15部、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート18部、n−ブチルメタクリレート32部、スチレン15部、アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を酢酸イソブチル中でラジカル重合反応して得られる樹脂固形分50%、数平均分子量8,000の樹脂200部にトリス(アセチルアセトナト)アルミニウム1部を配合したもの。
【0083】
反応硬化形樹脂組成物▲3▼
レタン1026クリヤー(商標名、関西ペイント(株)社製、アクリルポリイソシアネート硬化形有機溶剤塗料、樹脂固形分50%)
【0084】
反応硬化形樹脂組成物▲4▼
カンペフロンCWクリヤー(商標名、関西ペイント(株)社製、フッ素ポリイソシアネート硬化形有機溶剤塗料、樹脂固形分50%)
【0085】
反応硬化形樹脂組成物▲5▼
カンペフロン160クリヤー(商標名、関西ペイント(株)社製、フッ素アミノ硬化形有機溶剤塗料、樹脂固形分50%)
【0086】実施例1〜
表1に記載の配合(固形分)で実施例1〜のものを得た。
【0087】
比較例1〜5
表1に記載の配合で比較例1〜5のものを得た。
【0088】
塗板の調製
リン酸亜鉛処理した鋼板(0.8mm厚さ)にカンペ焼付プラサフ#500アイボリー(商標名、関西ペイント(株)社製、エポキシ樹脂系下塗り塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、乾燥を行なったのち、カンペフロンCW(商標名、関西ペイント(株)社製、フッ素系白上塗り塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、乾燥を行なって基材を作成した。
次いで、得られた基材の表面を軽く研磨した後に実施例及び比較例のものを乾燥膜厚が20μmになるようにバーコーター塗装を行なったのち表1の条件で乾燥を行なって塗装板を作成した。
塗膜性能試験結果を表1に示した。
【0089】
【表1】
Figure 0003581776
【0090】
表1中の(*1)〜(*6)は下の意味を示す。
(*1)メチルシリケート51、エチルシリケート40及びエチルシリケート48:それぞれコルコート(株)社製の商標名、テトラアルキルシリケートの低縮合物。
【0091】
(*2)付着性:JIS K−5400 8.5.2ゴバン目テープ法に準じて1mm×1mmのマス目を100個作成し、その表面にテープを密着させ剥離したマス目の剥れ程度を評価した。剥がれの全くないもの○、少しマス目のカドが剥れるもの△、マス目が1/3以上剥れるもの×。
【0092】
(*3)加工性:デュポン衝撃試験器を用い、撃芯端半径1/2インチ、落錘重量500gで試験した。塗面にワレ目の入らない最大の高さを示す。
【0093】
(*4)水に対する接触角:得られた直後の塗膜を、2.5重量%硫酸水20℃、24時間処理(浸漬)し、次いで付着した硫酸水を水洗し、乾燥をおこなったのち、塗膜表面に0.03cc脱イオン水の水滴を滴下し、20℃にて3分後の水滴の接触角を協和化学(株)製コンタクタングルメーターDCAA型にて測定した数値である。なお、**は溶出して測定不可能であった。
【0094】
(*5)外観:塗膜表面を目視で観察した。
◎ (塗膜にヒビワレ、ツヤボケ、ハガレなどの欠陥のないもの)
○ (塗膜に若干のヒビワレ、ツヤボケが認められるもの)
△ (塗膜にヒビワレ、ツヤボケ、ハガレが認められるもの)
× (塗膜に著しい、ヒビワレ、ツヤボケ、ハガレが認められるもの)
【0095】
(*6)光沢保持率:(屋外バクロ後の60度鏡面反射率/屋外バクロ前の60度鏡面反射率)×100で求めた数値。
【0096】
色差:バクロ前とバクロ後の色差をJIS Z8730に基づいてΔE abを求めた。
【0097】
外観:(*5)と同様の方法で評価した。
【0098】
比較例は処理を行なわない塗膜を用いた。
【0099】
非架橋形有機溶剤系塗料組成物
フッカロン(白):商品名、関西ペイント(株)社製、フッ素樹脂系塗料、樹脂固形分34%
アクリック2000GL(白):商品名、関西ペイント(株)社製、アクリル樹脂系塗料、樹脂固形分30%
ビニボン100(白):商品名、関西ペイント(株)社製、塩化ビニル樹脂系塗料、樹脂固形分27%
マメチタイル上塗AC(白):商品名、関西ペイント(株)社製、酢ビアクリル樹脂系塗料、樹脂固形分25%
KPカラー400g(白):商品名、関西ペイント(株)社製、塩化ビニルゾル樹脂塗料、樹脂固形分85%
【0100】
無溶剤形塗料組成物
ゾンネ上塗W−2000クリヤー:商品名、関西ペイント(株)社製、ウレタンアクリレート樹脂系紫外線硬化塗料、樹脂固形分100%
【0101】
実施例10
表2に記載の非架橋形又は無溶剤形塗料組成物及びオルガノシリケート及びその縮合物を配合し、実施例10の塗料を得た。(表2において、配合割合は塗料組成物の樹脂固形分100重量部当たりオルガノシリケートの縮合物の重量部である。)
【0102】
比較例6〜11
表2に記載の非架橋形又は無溶剤形塗料組成物を比較例として用いた。
【0103】
【表2】
Figure 0003581776
* メチルシリケート51、エチルシリケート40及び48はそれぞれフルコート(株)社製の商標名、テトラアルキルシリケートの低縮合物(以下同様の意味を表わす。)
【0104】
塗膜外観及び性能
結果は表3に示す。
【0105】
塗板の調整
実施例15〜24及び比較例6〜10:リン酸亜鉛処理鋼板(0.8mm厚さ)にカンペ焼付プラサフ#500アイボリー(商品名、関西ペイント(株)社製、エポキシ樹脂系下塗り塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、乾燥を行なったのちその上に実施例及び比較例に相当する塗料を塗装し、次いで、室温又は加熱により有機溶剤を揮発させて、実施例及び比較例に相当する塗板を調整した。
【0106】
比較例11リン酸亜鉛処理鋼板(0.8mm厚さ)にカンペ焼付プラサフ#500アイボリー(商品名、関西ペイント(株)社製、エポキシ樹脂系下塗り塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、乾燥を行ったのち、その上にレタン1026白(商品名、関西ペイント(株)社製、アクリルポリイソシアネート樹脂系塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、乾燥を行ったのち、その上に実施例及び比較例の塗料を塗装し、次いで紫外線を照射して硬化させ塗板を調整した。
【0107】
(*4)〜(*6)は前記と同様の意味を表わす。
【0108】
(*7)処理:得られた塗膜を2.5重量%硫酸水20℃、24時間浸漬し、次いで付着した硫酸水を水洗し室温で乾燥をおこなったものを処理ありとし、また、これらの処理をおこなわないものをなしとした。次いで、処理ありのものと処理なしのものとをそれぞれ屋外バクロ試験に供した。
【0109】
【表3】
Figure 0003581776
【0110】
水性塗料組成物
ビニデラックス300(白):商品名、関西ペイント(株)社製、アクリル樹脂エマルション塗料。
アスカ(白):商品名、関西ペイント(株)社製、自己架橋アクリル樹脂系水性塗料。
アレスゴムテックス(白):商品名、関西ペイント(株)社製、アクリルゴムラテックス塗料。
アクリルメラミン(白):アクリル樹脂(水酸基価100、酸価60)/ブチル化メラミン樹脂(樹脂固形分重量比60/40)/ジエタノールアミン(中和当量0.8)/チタン白(樹脂100重量部に対して80重量部)の水分散化物。
【0111】
実施例1113
表4に記載の水性塗料組成物及びオルガノシリケート及びその縮合物を配合し、実施例1113の塗料を得た。(表4において、配合割合は塗料組成物の樹脂固形分100重量部当たりオルガノシリケート及びその縮合物の重量部である。)
【0112】
比較例12〜15
表4に記載の水性塗料組成物を比較例として用いた。
【0113】
【表4】
Figure 0003581776
【0114】
塗膜外観及び性能
結果は表5に示す。
【0115】
塗板の調整
実施例1113及び比較例12〜15:リン酸亜鉛処理鋼板(0.8mm厚さ)にカンペ焼付プラサフ#500アイボリー(商品名、関西ペイント(株)社製、エポキシ樹脂系下塗り塗料)を乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、乾燥を行ったのちその上に実施例及び比較例に挿通する塗料を塗装し、次いで、室温(20℃−24時間、ビニデラ300、アスカ及びアリスゴムテックス)加熱(180℃−20分間、アクリルメラミン)により乾燥させて、実施例及び比較例に相当する塗板を調整した。
【0116】
(*4)〜(*7)は前記と同様の意味を表わす。
【0117】
【表5】
Figure 0003581776
【0118】
粉体塗料組成物
実施例1418
表6に記載の成分をヘンシェルミキサーで混合し、ブスコニーダーPR46(スイス:ブス社製)混練機で吐出量30〜70kg/H、室温80〜120℃、スクリュー回転数100ppmの条件で混練りする。混練り物を3〜6mm厚の平板状に取り出し速やかに冷却する。
その後2〜3mm大に粗粉粉砕後アトマイザー(富士産業(株)製)を用いて微粉砕する。そして150メッシュ標準ふるいを用いてふるいを分ける。粗粒を除去して実施例1418の粉体塗料組成物を得た。
【0119】
比較例16〜18
表6に記載の成分をアクリル樹脂A100、ドデカン2酸20、テトラフェニルシリケート10として粉体塗料組成物を得た。
表6中の各成分は次の通りである。なお、表6中の各成分の配合割合は重量部を示す。
【0120】
樹脂
アクリル樹脂A:メチルメタクリレート/スチレン/n−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート=37/20/23/20(重量比)、重量平均分子量7,000、ガラス転移温度約40℃
アクリル樹脂B:メチルメタクリレート/スチレン/n−ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート=41/15/24/20(重量比)、重量平均分子量5,000、ガラス転移温度約40℃
ポリエステル樹脂A:ウララックP−2400(カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、DSMレジンズBV社製、商品名)
【0121】
硬化剤
(*8)B−1530:ダイセルヒュルス社製、商品名、ε−カプロラクタムでブロック化されたイソホロンジイソシアネート。
【0122】
【表6】
Figure 0003581776
【0123】
塗膜外観及び塗膜性能試験
実施例35の粉体塗料組成物をリン酸亜鉛処理した鋼板(0.8mm厚さ)に硬化膜厚が約60μmになるように静電粉体塗装をおこない、次いで170℃−30分間加熱をおこなったもの(処理なし)を用いて評価した。続いて得られた硬化塗膜を2.5重量%硫酸水20℃、24時間(浸漬)し、次いで付着した硫酸水を水洗し室温で乾燥をおこなったもの(処理あり)を用いて評価した。
【0124】
実施例1418及び比較例16〜18の粉体塗料組成物を実施例14と同様にして硬化塗膜を得たものを用いて評価した。
【0125】
なお、比較例19は比較例16の粉体塗料組成物を比較例16と同様の方法で硬化塗膜を形成し、次いでこの硬化塗膜の表面にテトラエチルシリケートを約10μmになるように塗布し20℃で24時間乾燥をおこなった。続いて得られた塗膜を比較例16と同様にして硫酸水処理、水洗、乾燥をおこなったものを用いて評価した。
結果は表7に示す。
得られた塗膜の外観及び性能の試験方法、評価基準は次の通りである。(*2)〜(*6)は前記と同様の意味を示す。
【0126】
【表7】
Figure 0003581776
【0127】
【発明の効果】
本発明方法は、従来の成型品の表面にアルキルシリケートの有機溶剤溶液を塗布する方法及び熱可塑性樹脂中にアルキルシリケートを練り込む方法と比較して耐汚染性の保持性、耐久性に優れた効果を発揮するものである。この理由は以下の通りである。
アルキルシリケートの有機溶剤溶液によって形成される従来の被膜は、該アルキルシリケート自体造膜性が悪いためにヒビワレ、ワレ、チヂミなどの欠陥を生じ、このために屋外に晒された際に雨、太陽、熱、砂塵などの人的因子によって基材からはがれ落ち、耐汚染性の効果がなくなる。また、膜厚を薄くすることによりヒビワレなどの欠陥を少なくすることも可能であるがこのものでは屋外バクロ中に被膜が砂塵などにより摩耗するための効果を長期間保持することは難しい。
これに対して本発明方法に使用される上塗り塗料組成物は、前記した成分から構成されかつ塗膜の接触角が70度以下であることから、塗膜は、塗膜表面層又はその近傍にオルガノシリケート又はその縮合物成分の多い層が形成され、かつ塗膜内部に有機塗膜の多い層が形成され、その結果として表面層のオルガノシリケート又はその縮合物成分が有機塗膜によって補強され耐汚染性の保持性及び耐久性が向上する。
また、熱可塑性樹脂中にアルキルシリケートを練り込む方法は、アルキルシリケートを多量に配合すれば熱可塑性樹脂の性質が失われ加工性などが悪くなり、一方、加工性が失われない程度にアルキルシリケートの配合量を調整したものでは耐汚染性に優れたものが得られず両者を満足するものではない。
これに対して本発明方法により形成される塗膜は上記した如く表面層はオルガノシリケート又はその縮合物成分、その内部は有機塗膜で構成され、耐汚染性はオルガノシリケート又はその縮合物成分により、そして耐久性、加工性、付着性などは有機塗膜によって機能の分担を計ることにより耐汚染性と耐久性の両者の性能を満足させる顕著な効果が認められるものである。
また、本発明方法によって形成された塗膜は、その塗膜表面層又はその近傍にオルガノシリケート又はその縮合物成分の多い層で形成されかつ該オルガノシリケート又はその縮合物は酸によって高分子量化(縮合)するので初期の段階から耐汚染性及び耐久性に優れた効果を発揮する。
本発明の塗膜形成方法は、建造物、表示物、ガードフェンス、器具、機械などの屋外の基材の塗装に有用である。

Claims (2)

  1. 基材表面に、水酸基含有フッ素樹脂および/または水酸基含有アクリル樹脂から選んだ1分子中に平均2個以上の水酸基を有し、水酸基価20〜200で数平均分子量2000〜100,000の水酸基含有樹脂と(ブロック化)ポリイソシアネート化合物架橋剤とを水酸基含有樹脂の水酸基に対しイソシアネート基0.6〜1.5当量の割合で配合したものを反応硬化系有機樹脂として含有する有機溶剤系塗料組成物に下記一般式
    Figure 0003581776
    (式中、Rは同一もしくは異なって水素原子又は炭素数1〜3の1価の炭化水素基を示す。)
    で表されるオルガノシリケートの縮合度2〜10の縮合物を有機溶剤系塗料組成物の樹脂固形分100重量部当たり0.1〜50重量部配合してなる上塗り塗料組成物を、膜厚が10〜100μmとなるように塗装し、次いで乾燥することによりオルガノシリケートの縮合物を多く含有する表面層と、少なく含有する内部層とからなる、オルガノシリケートの縮合物の含有量が表面層から内面層に傾斜した塗膜で、且つ酸処理後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となる塗膜を形成することを特徴とする、耐汚れ性に優れた塗膜形成方法。
  2. 形成された塗膜の表面をpH6以下の酸性水溶液に5〜98℃で酸処理することを特徴とする請求項1記載の塗膜形成方法。
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