JP3581719B2 - 帯電防止剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な高分子帯電防止剤及び、それを用いた帯電防止剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に高分子材料は、電気絶縁性に優れているため、帯電しやすく、成型品にホコリが付着し外観を損ねるばかりでなく、フィルム、繊維等の製造時には、静電気によるさまざまなトラブルが発生する。また、電気製品に使用される場合は、蓄積した静電気により誤動作を引起こす等、大きな問題点を有している。
【0003】
このような問題を解決するため、従来から、しばしば種々の界面活性剤を成形品の表面に塗布して、帯電防止性をもたせるということが行われてきた。しかしこの方法は、簡便で速効性はあるものの、樹脂の表面にベタつきが残り、また容易に帯電防止剤が剥落するなど、耐久性に大きな問題がある。一方、より長期にわたって安定した帯電防止性能を得る方法としては、しばしば帯電防止剤を予め樹脂自体に練り込むという方法も採用されている。練り込み法は、塗布法と異なり、表面の帯電防止剤の層が失われても、濃度勾配によって内部の帯電防止剤が表面に拡散し、新たな層を形成するため、長期的に帯電防止性能を維持するといわれている。しかしながら、この場合も、帯電防止剤が表面へブリードアウトすることが前提となっているため、しばしば塗布によるものと同様の問題点が生じる。すなわち、帯電防止剤を予め練り込まれた成形品も、しばしば表面の汚染の問題が生じ、また、水拭きなどで容易に表面の帯電防止剤層が失われ、一時的に帯電防止性が失われるという現象がみられる。
【0004】
これらの諸問題を解決するため、帯電防止性を有するモノマーを単独で、ないしは種々のモノマー、マクロモノマーと共重合した高分子帯電防止剤が提案されている。しかしこれらの方法も、基材となる樹脂への密着性、相溶性と帯電防止性を高いレベルで両立させることは困難であるため、表面抵抗を十分に下げ、その性能を長期にわたって維持するという目標を完全に満足するものではなく、更なる改良が望まれていた。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い帯電防止性と耐熱性を有し、ブリードアウトによる表面の汚染がなく、しかもその性能が長期間にわたって変化しない高分子帯電防止剤、該高分子帯電防止剤を用いた高分子帯電防止剤組成物及び該帯電防止剤を用いた長期にわたって帯電防止性が保たれる帯電防止剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その要旨は、下記一般式〔I〕で示される繰り返し単位及び下記一般式〔II〕で示される繰り返し単位とからなり、〔I〕と〔II〕の比率が重量比で10対90ないし90対10の範囲にあり、かつ極限粘度ηinhが0.02以上の共重合体であることを特徴とする高分子帯電防止剤に存する。
【0007】
【化3】
Figure 0003581719
【0008】
(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基、Rは、水素原子またはメチル基、nは2〜200、mは1〜8の整数である。)
【0009】
【化4】
Figure 0003581719
【0010】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは4級アンモニウム塩、金属塩を含有するイオン性残基である。)
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の高分子帯電防止剤は、前記一般式〔I〕で示される繰り返し単位及び前記一般式〔II〕で示される繰り返し単位とからなり、繰り返し単位〔I〕と繰り返し単位〔II〕との比率が重量比で10対90ないし90対10の範囲であって、通常下記一般式〔III 〕で表されるポリエステルマクロモノマーと下記一般式〔IV〕で表されるビニル系モノマーを通常のラジカル開始剤の存在下で共重合させることによって得られる。
【0011】
【化5】
Figure 0003581719
【0012】
(式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基、Rは、水素原子またはメチル基、nは2〜200、mは1〜8の整数である。)
【0013】
【化6】
Figure 0003581719
【0014】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは4級アンモニウム塩、金属塩を含有するイオン性残基である。)
一般式〔III 〕で表わされるポリエステルマクロモノマーにおけるRは、2価の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは分岐、または直鎖の炭素数3〜8の脂肪族炭化水素基である。具体的には、後述するラクトン化合物の開環重合によるポリエステルの脂肪族炭化水素基に相当し、好ましくは
【0015】
【化7】
Figure 0003581719
【0016】
が挙げられる。
は水素原子またはメチル基であり、mは1〜8の整数であり、好ましくは2〜4の整数である。
ポリエステル構造の重合度を表すnは、通常2〜200であるが、帯電防止性の発現及び他の樹脂に混合する際の親和性の点より好ましくは2〜100さらに好ましくは2〜50である。
【0017】
上述のポリエステルマクロモノマーのうち好ましいものとしては以下のものが挙げられる。
【0018】
【化8】
Figure 0003581719
【0019】
ポリエステルマクロモノマー〔III 〕の製造は、通常、以下のように行なう。すなわち、
【0020】
【化9】
Figure 0003581719
【0021】
(R及びmは、前記一般式〔I〕と同義)で示される化合物を開始剤として
【0022】
【化10】
Figure 0003581719
【0023】
(Rは、前記一般式〔I〕と同義)で示されるラクトン化合物を開環重合して、下記のポリエステルマクロマーを得る。
【0024】
【化11】
Figure 0003581719
【0025】
前記、開始剤として好ましくは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。また、ラクトン化合物としては、炭素数3〜8のラクトンが好ましく、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−エチル−β−バレロラクトンが特に好ましい。
【0026】
この反応は、通常触媒の存在下で行われるが、触媒としては、ラクトンの開環重合に用いられる公知の触媒、例えば硫酸、リン酸等の鉱酸、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、n−ブチルリチウム等のアルキル金属化合物、チタンテトラブトキシドのような金属アルコキシド、ジブチルチンジラウレートのようなスズ化合物などを用いることができる。
【0027】
この反応は、無溶媒でも行なえるが、場合により溶媒を用いても良い。
溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素などが使用できる。反応条件は、0℃から200℃の間の温度で10分から30時間の反応時間で好適に行なえる。
【0028】
ここで繰返し単位の数nは開始剤とラクトン化合物のモル比によってコントロールすることができ、2〜約200程度である。
一般式〔IV〕で表されるビニルモノマーにおけるRは、水素原子または、メチル基であり、Xは、アニオン性ないしはカチオン性のイオン性の残基を有するもの、ないしは重合後容易にイオン性基を導入できるものであればとくに制限はない。具体的には従来公知のラジカル重合性モノマーである。具体例を挙げれば、カチオン性基を有するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノ(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノビニルサルファイド、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ビニルベンジル−N,N′−ジメチルアミン、ビニルピリジン、ビニルキノリン等の含窒素モノマーの4級化物などである。この4級化は、公知の手法により、第3級アミノ基に、塩化水素、臭化水素、硫酸等の無機酸やベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、メチルクロライド、メチルブロマイド等の4級化剤を作用させて行うことができる。4級化の工程は、共重合の前のモノマーの状態で、ないしは共重合後、いずれの段階においておこなってもよい。
【0029】
アニオン性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、スルホン化スチレン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホメチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、1−フェニルビニルスルホン酸、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−アミドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を有するビニル系単量体あるいは、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ないしは、ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩、テトラブチルホスホニウム塩などが挙げられる。金属塩ないしは有機塩を使用する場合は、相当するモノマーを直接重合に用いても、また有機酸モノマーの段階で重合した後、中和をおこなってもよい。
【0030】
これらイオン性残基を有するモノマーとして特に好ましいのは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩および(メタ)アクリル酸の金属塩である。
ポリエステルマクロモノマー〔III 〕とビニル系モノマー〔IV〕との共重合は、通常のラジカル重合法で容易に行うことができる。すなわち、ポリエステルマクロモノマー〔III 〕とビニル系モノマー〔IV〕を、アゾ化合物ないしは、過酸化物等のラジカル重合開始剤を通常、0.1〜10重量%添加し、0℃〜200℃の温度で1時間〜24時間で好適に行うことができる。なおここで、重合度を調節するために、アルキルメルカプタン等の連鎖移動剤を添加してもよい。重合法としては、ラジカル重合で通常採用される、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等のいずれを用いてもよい。
【0031】
ポリエステルマクロモノマー〔III 〕とビニル系モノマー〔IV〕の比率は、前記繰り返し単位〔I〕と前記繰り返し単位〔II〕の比率が重量比で10対90ないし90対10の範囲になるように適宜選択できるが、通常は重量比で10対90ないしは90対10程度、好ましくは、20対80ないし80対20程度の範囲である。ビニル系単量体〔IV〕の比率が、10程度より小さくなると、帯電防止性が発現しにくくなり、また、ポリエステルマクロモノマー〔III 〕の比率が10程度より小さいと、他の樹脂に混合する際の親和性が悪くなるため好ましくない。
【0032】
ポリエステルマクロモノマー〔III 〕とビニル系モノマー〔IV〕との共重合においては、更に別のラジカル重合性のビニルモノマーを存在させ共重合することもできる。該ラジカル重合性のビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル等が挙げられる。この場合上述したのと同様の通常のラジカル重合法で容易に行うことができる。
【0033】
この場合、ポリエステルマクロマー〔III 〕とビニル系モノマー〔IV〕と別のラジカル重合性のビニルモノマーの比率は、重量比で10〜90対90〜10対0〜80程度で良いが帯電防止性の発現及び他の樹脂に混合する際の親和性の点より20〜80対80〜20対0〜60程度の範囲がより好ましい。
本発明で用いる共重合体をメチルエチルケトン/メタノール(7/3)混合溶媒中に0.5g/dlとなるよう溶解し、25℃で測定した極限粘度ηinhは、0.02以上である。極限粘度が0.02より低い場合は、高分子量化したことによる利点が失われ、基材からブリードアウトしやすくなるばかりでなく、帯電防止性能も低下する。極限粘度の上限は特に限定されることはないが通常2.0程度以下のものが使用される。
【0034】
本発明で得られる高分子帯電防止剤は、各種樹脂に配合、混練ないしはその表面に塗布することにより、樹脂の電気抵抗値を下げ、優れた帯電防止性を発揮する。また、各種の樹脂と相溶性の高い側鎖を有するため、樹脂への密着性、相溶性に優れ、その性能が長期間にわたって変化することがない。
また、本発明の共重合体を樹脂に塗布する場合は、そのまま溶液として使用しうるが、塗膜の風合い、強度などを改良するため、各種の樹脂をバインダーとして併用し帯電防止剤組成物として用いることもできる。すなわち、バインダーである熱可塑性ないしは熱硬化性樹脂100重量部に本発明の共重合体を0.1〜200重量部配合してなる帯電防止性樹脂組成物を溶液として樹脂に塗布すれば、両者が均一に相溶ないしは、分散した塗膜が得られ、塗膜としての強度、密着性のさらに改善されたものを得ることができる。これらのバインダーを含む帯電防止剤組成物は、適当なバインダーと配合比を選定すれば、均一で透明な皮膜を形成し、しかも、実質的にイオン濃度が低くなるにもかかわらず、共重合体のみを塗布したものと同等の帯電防止効果が得られる。
【0035】
ここで使用しうるバインダーである熱可塑性樹脂としては、溶媒に可溶であれば、特に制限はなく、塗布する基材の種類に応じて適宜選択すればよい。たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタンなどが挙げられる。これらの樹脂と本発明の高分子帯電防止剤を両者の共通の溶媒に溶解し、基材に塗布、乾燥させることにより、容易に帯電防止性の皮膜を形成させることができる。
【0036】
また、塗膜により高い強度、耐薬品性などが要求される場合は、バインダーとして熱硬化性樹脂を使用しうる。すなわち、ウレタン工業で一般に使用されるポリオール類に本発明の高分子帯電防止剤を混合し、さらにイソシアナート化合物を含む硬化剤と混合させた後、基材に塗布し、硬化、乾燥すれば、より耐摩耗性に優れた耐久性の高い塗膜を形成させることができる。この際、ウレタン工業で一般に使用される溶媒、及び硬化触媒等の添加剤を使用してもよい。
【0037】
さらに、速乾性で硬度の高い塗膜が要求される場合などは、紫外線硬化樹脂の併用が効果的である。すなわち、公知の紫外線硬化型樹脂組成物に本発明の高分子帯電防止剤を配合し、基材に塗布後、常法に従って紫外線で硬化させることにより、短時間で表面性のよい塗膜を得ることができる。ここで使用しうる紫外線硬化型樹脂としては特に制限はなく、ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ビニルピロリドンなどの単官能モノマー、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどの多官能オリゴマー等を、常法に従って適宜混合して使用すればよい。
【0038】
本発明の共重合体は、これら種々のバインダー樹脂と高い相溶性を示すため、均一な塗膜を形成する。このようにして得られる本発明の帯電防止性組成物からなる塗膜は、べたつきがなく、透明で堅牢であり、耐久性に優れ、水洗によってもその表面抵抗値が変化することがない。
更に本発明の高分子帯電防止剤は、末端に水酸基を有しているため、該水酸基と反応しうる置換基を有する化合物を併用することは、メチルエチルケトンやイソプロパノール等の有機溶媒に不溶性の塗膜を得る上で好ましいことである。即ち、本発明の高分子帯電防止剤に、該高分子帯電防止剤の水酸基と反応しうる置換基を有する化合物を、水酸基と反応しうる置換基の当量が高分子帯電防止剤の水酸基の当量以下の割合で配合してなる帯電防止剤組成物は、耐薬品性や、より機械的強度の向上した塗膜を樹脂上に形成することができる。
【0039】
水酸基と反応しうる置換基としては、特に限定されるものではないが、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等であり、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等を形成して塗膜をより高分子化することができるものである。
これら水酸基と反応しうる置換基を有する化合物は、向上すべき物性を考慮することにより、適宜選択することが可能であるが、具体的な化合物の例としては、上記官能基を2個以上有する化合物が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等のジイソシアネート類等が挙げられるが、反応性の観点からはジイソシアネート類が特に好ましい。
【0040】
【発明の効果】
以上のようにして、本発明によって得られる高分子帯電防止剤は、帯電防止性に優れるばかりでなく、各種樹脂との相溶性が良いため、高い耐久性を有する。また、本発明の高分子帯電防止剤と各種バインダー樹脂よりなる帯電防止剤樹脂組成物及び本発明の高分子帯電防止剤に水酸基と反応しうる置換基を有する化合物を配合、含有した帯電防止剤組成物は、各種プラスチック材料等の基材に塗布することにより、べたつかず、塗膜強度、密着性、帯電防止性に優れた塗膜を容易に形成し、水拭きなどによってもその帯電防止性が劣化することがない。従って、電気製品のハウジング、床材、各種フィルム製品など、静電気による弊害を嫌うあらゆる製品に使用して、長期にわたって安定した帯電防止性を付与できるため、工業上きわめて重要である。
【0041】
【実施例】
以下本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、表面抵抗値の測定は、横河−HEWLETT−PACKARD社の2329A型絶縁抵抗計を使用し、測定電圧100V、測定条件25℃、50%RHで測定した。
【0042】
参考例A ポリエステルマクロモノマーの合成
撹拌翼、還流冷却器を備えた反応器にε−カプロラクトン22.8gを加え140℃に加熱した。これに2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.6gとオクチル酸スズ0.03gとハイドロキノンモノメチルエーテル0.02gを10分で加え、140℃で6時間加熱反応した。
【0043】
この物の水酸基価は55.4KOHmg/g、酸価は0.07KOHmg/gであった。
生成物のIRスペクトルとH−NMRを測定し、以下のような構造のポリエステルマクロモノマーが得られることを確認した。
【0044】
【化12】
Figure 0003581719
【0045】
参考例B ポリエステルマクロマーの合成
撹拌翼、滴下ロート及びガス導入口を備えたフラスコを乾燥窒素で十分置換した後、2−ヒドロキシルメタアクリレート13gと金属ナトリウム0.4gを仕込み、撹拌して金属ナトリウムを溶解させた。次にこのフラスコを40℃のオイルバスに浸漬し、撹拌しながらβ−メチル−δ−バレロラクトン100gを滴下ロートより滴下した。1時間後、撹拌を停止し、フラスコの内容物を取り出し、クロロホルム500mlに溶解した。この溶液を500mlの脱イオン水中に投入し、洗浄を行い、クロロホルム層を分液した。この洗浄をもう一度繰り返した後、クロロホルム溶液から減圧下に溶媒を留去し、無色透明のポリエステルマクロマーを得た。このものの水酸基価は58.1KOHmg/g、酸価は0.04KOHmg/gであった。
【0046】
生成物のIRスペクトルとH−NMRを測定し、以下のようなマクロモノマーが得られたことを確認した。
【0047】
【化13】
Figure 0003581719
【0048】
実施例1
撹拌翼、還流冷却器、ガス導入口を備えたフラスコに参考例(A)で合成したポリエステルマクロモノマー10.0g、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド10.0g、アゾビスイソブチロニトリル0.2g、n−ドデシルメルカプタン0.4g及びイソプロピルアルコール40gを仕込み、窒素気流下で、70℃で7時間、さらに95℃で2時間重合した。重合後、イソプロパノールを留去し、減圧乾燥した。ここで得られた共重合体のηinhは、0.21dl/gであった。
【0049】
この共重合体1gと塩化ビニル系樹脂粉末(三菱化成ビニル社製P−500)9gをメチルエチルケトン/メタノールの9/1混合液に、濃度10wt%となるように溶解した。この溶液をガラス板上にキャストし、70℃で6時間乾燥し、厚さ70μのブレンドフィルムを得た。このフィルムの表面抵抗値は6.5×10Ω/□であった。
【0050】
実施例2
実施例1で用いたフラスコに参考例(B)で合成したポリエステルマクロモノマー10.0g、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド10.0g、アゾビスイソブチロニトリル0.2g及びイソプロピルアルコール25gを仕込み、窒素気流下で、70℃で7時間、さらに95℃で2時間重合した。重合後、イソプロパノールを留去し、減圧乾燥した。ηinhは、0.17dl/gであった。次に実施例1と同様にして塩化ビニル系樹脂とのブレンドフィルムを作成した。得られたフィルムの表面抵抗値は4.3×10Ω/□であった。
【0051】
実施例3
実施例1で用いたフラスコに参考例(A)で合成したポリエステルマクロモノマー40.0g、メタクリル酸17.0g、アゾビスイソブチロニトリル0.6g及びイソプロピルアルコール85gを仕込み、窒素気流下で、70℃で8時間重合した。重合後、イソプロパノールを留去し、減圧乾燥した。ηinhは、0.18dl/gであった。
【0052】
この生成物20gをメチルエチルケトン/メタノール7/3混合溶媒200gに溶解し、KOHの5%メタノール溶液41.6gを添加して、室温で1時間撹拌した。反応後、溶媒を減圧で留去し、22gの生成物を得た。
次に実施例1と同様にして、塩化ビニル系樹脂とのブレンドフィルムを作成した。得られたフィルムの表面抵抗値は4.1×10Ω/□であった。
【0053】
実施例4
実施例1で合成した共重合体とポリビニルブチラール樹脂(積水化学 エスレックBMS)を2/8の混合比でエタノールに溶解し、濃度10wt%の溶液を調整した。
この溶液から、実施例1と同様にして70μのフィルムを作成した。このフィルムの体積抵抗値は8.3×10Ω/□であった。
【0054】
実施例5
実施例2で合成した共重合体のメチルエチルケトン/メタノール(7/3)溶液(樹脂固形分10wt%)0.5gとウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂PR−202(50%メチルエチルケトン溶液、三菱化成社製)4.5gを混合し、樹脂固形分23wt%の溶液を得た。この溶液をガラス板上にキャストし120W/cmの紫外線ランプを12秒間照射して硬化させて70μのブレンドフィルムを得た。このブレンドフィルムの表面抵抗値は7.5×10Ω/□であった。
【0055】
実施例6
実施例1で合成した共重合体1gと塩化ビニル系樹脂(P−500)9gをメチルエチルケトン/インソプロパノールの9/1混合液に濃度10wt%になるように溶解した。この溶液に100gのヘキサメチレンジイソシアネート0.3gを加えテフロンシート上にキャストし、80℃で24時間乾燥した。このフィルムの表面抵抗値は6.1×10Ω/□であり、このフィルムはもはやメチルエチルケトン/イソプロパノールの混合溶媒や他の有機溶媒に溶解しなくなった。尚、ヘキサメチレンジイソシアネートを加えなかった場合には、フィルムはメチルエチルケトン/イソプロパノールに再び溶解した。
【0056】
実施例7
実施例6において実施例1で合成した共重合体の代りに実施例2で合成した共重合体を用いる以外は実施例6と全く同様にしてキャストフィルムを作成した。このフィルムの表面抵抗値は7.3×10Ω/□であり、このフィルムはもはやメチルエチルケトン/イソプロパノールの混合溶媒や他の有機溶媒に溶解しなくなった。尚、ヘキサメチレンジイソシアネートを加えなかった場合には、フィルムはメチルエチルケトン/イソプロパノールに再び溶解した。
【0057】
実施例8
実施例3で得られたポリエステルマクロマーとメタクリル酸の共重合体をKOHで中和した。生成物1gとポリメチルメタクリレート(数平均分子量4.7×10)をメチルエチルケトン/イソプロパノールの9/1混合液に濃度10wt%になるように溶解した。この溶液100gにイソホロンジイソシアネート0.4gを加え、テフロンシート上にキャストし、80℃で24時間乾燥した。このフィルムの表面抵抗値に6.1×10Ω/□であり、このフィルムはもはやメチルエチルケトン/イソプロパノール混合溶媒や有機溶媒に溶解しなくなった。尚、イソホロンジイソシアネートを加えなかった場合ははフィルムは、メチルエチルケトン/イソプロパノールに再び溶解した。
【0058】
比較例1
撹拌翼、還流冷却器、ガス導入口を備えたフラスコにメチルメタアクリレート10.0g、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド10.0g、アゾビスイソブチロニトリル0.9gを仕込み、さらに溶媒としてトルエン13gとn−ヘキサン7gを加え、均一溶液としたのち、窒素気流下で、80℃で8時間重合した。重合後、反応液をメタノール中に投入し、生成物を析出させ、メタノールで十分洗浄し、乾燥した。収率は、ほぼ100%であった。
【0059】
このようにして得られたランダム共重合体4gと塩化ビニル系樹脂粉末(三菱化成ビニル社製P−500)6gを使用すること以外実施例1と全く同様にしてブレンドフィルムを作成した。このフィルムは、やや白濁しており、表面抵抗値は、4.7×1014Ω/□であった。
【0060】
比較例2
実施例1で合成した共重合体の代わりに、実施例1で使用したマクロモノマーと4級アンモニウム塩系モノマーをそのまま各1.5g使用する以外、実施例1と全く同様にして、4級アンモニウム塩を含有する塩化ビニルフィルムを作成した。このフィルムの表面は、べたつきがあり、製膜直後の表面抵抗値は、3.3×10Ω/□であったが、5分間水洗した後には、2.0×1012Ω/□まで上昇した。

Claims (3)

  1. 下記一般式〔I〕で示される繰り返し単位及び下記一般式〔II〕で示される繰り返し単位とからなり、〔I〕と〔II〕の比率が重量比で10対90ないし90対10の範囲にあり、かつ極限粘度ηinhが0.02以上の共重合体であることを特徴とする高分子帯電防止剤。
    Figure 0003581719
    (式中、Rは2価の脂肪族炭化水素基、Rは、水素原子またはメチル基、nは2〜200、mは1〜8の整数である。)
    Figure 0003581719
    (式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは4級アンモニウム塩、金属塩を含有するイオン性残基である。)
  2. 熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂100重量部に、請求項1に記載の高分子帯電防止剤を0.1〜200重量部配合してなることを特徴とする帯電防止剤組成物。
  3. 請求項1に記載の高分子帯電防止剤に、水酸基と反応しうる置換基を有する化合物を、水酸基と反応しうる置換基の当量が高分子帯電防止剤の水酸基の当量以下で配合してなることを特徴とする帯電防止剤組成物。
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