JP3581224B2 - 平面型光学導波路素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面状光学導波路に関し、特に、共通の大量生産手法により、様々な受動光学要素を単一基板上に高性能機能集積することを可能にするために、均一のコア高さと導波路の機能領域によって変化するコア幅とを有する最適化された導波路構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学回路は、通常、レーザあるいはフォトダイオードのような光学能動素子と、相互接続および受動光学要素の両方を提供する光学導波路と、制御された環境および外部への通路を提供するパッケージとを有する。通常ドラゴンルータあるいはフーリエフィルタのような受動型光学要素は複数の導波路を有し、例えばカプラ領域あるいは位相制御されたアレイ領域のような1つあるいは複数の機能領域を構成している。市場においては、共通の大量生産技術でもって、単一の基板上に受動型光学素子と相互接続機能を集積することが望ましい。
【0003】
現在最新のそして技術的に最も優れた平面型導波路は、シリコン光学ベンチ(silicon optical bench (SiOB))技術を用いて形成したドープしたシリカ製導波路である。このドープしたシリカ製導波路は、低コスト,低損失,低複屈折,安定性,光ファイバへの結合可能性等の様々な特徴を有しているために通常最も好ましいものである。さらにまたその製造処理技術は、シリコン製の集積回路(IC)技術と適合性があり、そして大量生産に適し公知のものである。
【0004】
通常、このドープしたシリカ製導波路は、シリコン製あるいはシリカ製基板上に低屈折率のシリカ製のベース即ち下部クラッド層を先ず堆積することにより形成される。その後、高屈折率のドープしたシリカ層即ちコア層をこの下部クラッド層の上部表面に堆積する。その後このコア層をパターン化して、光リソグラフィ技術(集積回路の製造技術に用いられるものと類似のものである)を用いて光学回路に必要とされる構造体を形成する。最後に上部クラッド層をこのパターン化した導波路コアをカバーするよう堆積する。この技術は、米国特許第4,902,086号に開示されている。
【0005】
平面上光学導波路の性能に取って重要な点は、導波路の寸法、即ち導波路コアの高さと幅および導波路のコアとクラッド層との間の屈折率差(Δ)である。コアの高さ(H)即ち厚みはコア層の厚みにより決定され、コアの幅(W)は、光リソグラフマスクと化学エッチングのアンダカットにより決定される。
【0006】
先ず標準的なPドープ導波路は、約5μm幅の対称正方形コア構造体と約15μmの下部クラッド層と約15μmの上部クラッド層媒体の0.6%の中間Δを有する。幅と高さの等しい正方形のコアが選択される主な理由は、環状光学ファイバを最もよくエミュレート(近似)し、モデル化とマスクレイアウトが容易となるためである。このコアの寸法は、光学閉じ込め効果を強化し、伝送損失を低下させるためにできるだけ大きい方が好ましいが、導波路がシングルモードを維持する程度充分小さくなければならない。しかし、この導波路は、約0.3%のΔと約8μmのコア直径を有する標準のシングルモード光ファイバとは、モードフィールドがかなりミスマッチする。上記の導波路を用いたファイバ−導波路−ファイバの結合損失はλ=1.3μmの波長で約0.8dBである。以下の説明においては、低Δとは0.2%と0.5%の間で、中間Δとは0.5%から0.8%の間で、高Δとは0.8%から2.5%の間を表すものとする。
【0007】
低い挿入損失のアプリケーション用に、モードフィールドのミスマッチを減少するために、低Δ導波路が考えられている。しかし、高度に複雑化した光学回路のチップサイズを低減するためには、高Δ導波路が望ましい。その理由は、より強い光閉じ込め作用がより小さな曲げ半径を可能にするからである。このため異なるアプリケーションに対する要件を満足するために、異なる導波路構造体用に異なるプロセスが用いられている。例えば、Δが約0.3%,0.7%,1.5%であり、四角のコアの寸法が8μm,6μm,4μmである3種類の異なる導波路構造体を用いて、各機能領域で性能を最適化するために異なる機能領域を有する光学回路を実現する。しかしこのような多重導波路構造体は、単一の基板上に集積することは、極めて困難でさらにまた共通の製造プロセスを用いることは、ほとんど不可能である、その理由は、特にコアの高さ即ち厚さは、機能領域の間で変化しなければならないからである。
【0008】
第2に制御不可能な製造上の誤差に起因する結合長さのロット毎、あるいはウェハ毎の結合長さの変動は、異なる長さのカプラを有する数個のグループに分けた素子を、単一の光リソグラフマスク上に配置する事により現在のところ解決している。しかしこのアプローチは、導波路の断面の変動あるいはウェハのスケールの非均一性に関連する素子の性能問題のいずれをも解決していない。
【0009】
最後に、ドラゴンルータにおけるクロストークは、位相グレーティング導波路のランダム位相エラーに対して敏感である。このような導波路の幅の変動に起因するエラーを低減するためにΔが0.6%で、幅が8μm、高さが3.5μmの導波路を用いている。しかし、5μmの矩形の導波路に比較してこの導波路構造体は、標準の光ファイバとのモードフィールドミスマッチはさらに大きく、そしてカプラは導波路の高さと幅の制御不能の変動にさらにまた敏感である。さらにドラゴンルータ,フーリエフィルタ,他の光学素子等は、コアの厚さが異なる導波路構造体上に形成されるために、これらの素子を同一のウェハあるいは構造体上に複数の機能回路として組み込むことは不可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、単一の基板上に複数の機能領域を集積できる導波路構造体を提供することであり、さらにまた高密度の集積光回路を実現するために大量生産に適した集積回路技術を用いて上記のような導波路構造体を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ドープしたシリカ製の平面状導波路用の最適化構造体を提供することである。このような本発明の最適化導波路は、効率的な導波路−ファイバの結合とカプラと遅延要素の製造誤差の低減と小さな曲げ半径が可能となる。さらにまた本発明によれば、共通の製造プロセスが、例えばドラゴンルータ,フーリエフィルタのような基本要素を高い歩留まりで集積することができる。本発明による最適化は、通常の矩形コア導波路よりもより厚いコア層と光学回路の異なる機能領域毎に変化するコアの幅を用いることにより(光リソグラフィ製造技術を用いて)達成できる。例えば、約0.6%のΔを有する最適化したシングルモードPドープシリカ性導波路は、波長λが1.2から1.7μmに対し、Hが6.7μmで幅が4μmのコア寸法を有する。光ファイバとの結合領域においては、この導波路は、その幅Wが9μmに広がり、コアの高さは一定である。そして曲げ領域においては、導波路は幅Wが5.5μmに広がり、コアの高さは一定である。さらにまたドラゴンルータの位相列領域においては、各導波路は幅Wが10μmに広がり、コアの高さは一定である。したがって、本発明によればコアの高さは、基板全体に亘って均一に維持しながら導波路性能を最適化するために、光リソグラフィ技術を用いてコアの幅を様々に変化させることができる。
【0012】
本発明による最適化された導波路は、材料の堆積、化学プロセスをほとんど複雑にすることがないマスクデザインを用いることができるために極めて実用的である。さらにまた本発明の最適化方法は、同様に他の導波路システムにも適応可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
1.導入
本発明は高い適合性と高い素子効率と高い歩留まりを有する集積光回路用の導波路構造体を開示する。本発明は、光ファイバ通信システム、特にポイントトゥマルチポイント構成を用いたローカル分散ネットワーク用にドラゴンルータ,フーリエフィルタ,Y型ブランチ等の様々な種類の光学素子を機能受動型回路に集積するものである。本発明のプロセスは、コアの厚さは共通で異なる機能領域(例えば、ファイバ−導波路−ファイバの結合領域,カプラの結合領域,あるいは曲げ領域)毎にコアの幅が異なるものである。本発明は、波長が1.2から1.7μm用のPドープのシリカ性導波路を例にして説明する。しかし当業者であれば、本発明は、他の導波路システム、例えばガラス系あるいは有機材料系あるいは半導体系のいずれにも適応可能であることが分かるであろう。
【0014】
図1において、フーリエフィルタ10は本発明の最適化導波路12,14を有する。特に同図は、それぞれ最適化導波路12,14のコア16,18の平面上のパターンを表し、これらは基板20上のフーリエフィルタ10の製造の際のフォトリソグラフマスクを用いて規定されたものである。このコア16,18はほぼ同一で、同一の高さ(H)を有するが、以下に説明するように最適化導波路12,14の性能を最適化するために、異なる領域で変化する幅(W)を有する。
【0015】
2.最適化プロセス
A.シングルモード動作
多くの光学素子は、シングルモード導波路上に形成されるか、あるいはシングルモード領域を有している。例えば、フーリエフィルタ10の領域22,24,26,28は、この実施例ではシングルモードである。特に領域22,24,26は、シングルモードの最適化導波路12,14のカプラであり、領域28は光ファイバ32に結合される導波路端部30の高次モードを取り除くものである。フーリエフィルタ10の他の導波路領域は、シングルモードではなく、マルチモードを用いることができる。ただし、モード変換は少ないかあるいは変換された高次モードは領域28により除去されるものとする。
【0016】
弱い導波機能の導波路に対しては、(基本モードの)光強度の空間分布はほぼ対称のガウス分布であり、シングルモードの条件は、最低次の近似に対して、コアの断面積が最大値より小さいことが必要である。Δが約0.6%のPドープのシリカ製導波路において、最大コア面積は、1.3ないし1.7μmの波長に対して約30μm 2 である。そのため様々なコア寸法を用いることができ、断面積が30μm2 以下となるような様々なコア寸法、例えば5×5μm2 ,3×8μm2 ,6.7×4μm2 を用いることができる。しかし、導波路コアの高さは、製造時のコア層の厚さにより決定されるために、複数の高さを有する導波路コアを、単一の基板上に製造することは極めて困難である。したがって、コアの高さが基板全体に亘り一定かつ均一の導波路構造を得ることが極めて望ましい。このコアの高さは、導波路の異なる機能領域でも同一であるので、コアの幅は、各領域で性能を最適化するために異なる機能領域で変化させなければならない。
【0017】
H=6.7μmのコア高さが、Pドープのシリカ製導波路に対し最適なものと決定できる。シングルモード導波路に対応するコア幅は、W=4μmであるが、このコアの幅は、以下の設計事項を考慮することにより変化するものである。前述したようにここに開示した寸法は、単なる一実施例で本発明の範囲を制限するよう解釈されるべきものではない。しかし本明細書に開示した説明、例えばコアの高さと幅のアスペクト比は、他の導波路システムにも同様に適応できるものである。したがって、本発明による最適化導波路は、そのコア高さが約H=6.7μmで、その幅は約4μmから10μmの間で、これは以下に述べる設計事項に基づいて決まるものである。
【0018】
B.ファイバ結合損失
導波路が光ファイバに結合されると、導波路と光ファイバとの間のモードフィールドミスマッチとファイバと導波路との間の不整合のためにファイバ結合損失が発生する。前者のモードフィールドミスマッチは、導波路と光ファイバとのサイズとΔの差に起因する。例えば、1.3μmと1.55μmの波長通信用の通常使用されるシングルモードファイバは、AT&T社製の5Dファイバがあり、これはΔが0.3%でコアの直径が約8μmである。しかし、大部分の平面上導波路のΔは、それ以上高く例えばPドープのシリカ製導波路では0.6%である。このことは実際の導波路製造のサイズの制限のため、およびより高いΔは、基板上により高い集積密度が可能となるために好ましい。より高いΔの結果、コアサイズとガイドされた光学モードのサイズとは、通常のシングルモード導波路においては、例えばAT&T社製の5Dファイバのような通常使用されるファイバのそれよりも小さい。
【0019】
λ=1.3μmでPドープのシリカ製導波路と、AT&T社製の5Dシングルモードファイバとを用いると、コアの高さ(H)と幅(W)に関連する計算上のファイバ−導波路−ファイバ(2つの接合面)のモードフィールドミスマッチ損失を図2に示す。例えば、H=5μm,W=5μmの寸法のコアを有する導波路の結合損失は約0.8dBで、H=3μm,W=4μmの寸法のコアを有する導波路は1.0dBである。
【0020】
コアのサイズが大きくなると、光学モードも大きくなりファイバのそれにより適合する。正確な整合(マッチ)が発生するのは、導波路のΔが、光ファイバのそれに有効に拡散(diluted) する時にのみ発生し、このことを達成するのは現在の製造技術では困難である。しかし、図2に示すようにH=6.7μm,W=9μmの寸法のコアを有する導波路に対しては、デルタΔを減少させずに、矩形のボックス34に示すように結合損失は0.25dB以下であることが分かる。この損失量は多くの応用例においては、満足すべきものであり、以前では低Δの導波路を用いた場合のみ達成可能であった。またコアの高さが9μmまで増加すると、結合損失は0.1dBまでさらに減少する。しかし、シングルモードを維持するためには、H=9μmの導波路は現在の製造技術で信頼性よく製造するためには、コアの幅が狭くなりすぎる。さらにまた従来の導波路と同様にコアの高さを5μmにした場合には、コアの幅を大きくしたとしても結合損失は、0.5dB以上である。ファイバ−導波路−ファイバの結合損失が0.3dB以下で−50dBのクロストークの粗波長分割マルチプレクサ(WDM)は、H=6.7μmで達成できる。
【0021】
図1に示すように、ファイバ−導波路−ファイバの結合損失を減少するために導波路端部領域32は、W=9μmまで広げられる。その結果、導波路はH=6.7μmでW=9μmの端部領域ではマルチモードであり、このため不整合がある状態では光は高次モードとなる。そのため領域28が、高次モードを取り除くためにつけ加えられる。通常長さが500μmのモード不変換テーパが遷移領域として用いられ、その領域では、導波路の幅は徐々に拡張するかあるいは狭くなる。この遷移領域は、通常、図1の領域28と導波路端部30との間である。したがって、領域28と導波路端部30は、拡張モードテーパと称する。
【0022】
ファイバ−導波路結合損失を減少するために、別個のモードテーパが提案されているが、これはその挿入損失により、0.3dB以下のファイバ−導波路−ファイバ結合損失を提供するには実際的ではない。この別個のモードテーパに比較して、本発明の拡張モードテーパ構成は、挿入損失がはるかに低く、アンダーカットとチップダイスの位置の製造誤差に対し、許容度があり不利な点はない。
【0023】
ファイバと導波路との不整合に起因するファイバ結合損失に関しては、この結合損失は導波路とファイバのモードサイズに影響される。より大きなモードサイズにおいては、結合損失は、横方向の不整合に対しては小さくなり、角度的な不整合に対しては大きくなる。このため横方向の不整合がファイバの取付とウェハのテストでは支配的なために、導波路端部30における性能を最適化するためには、導波路の寸法を拡大し、したがってモードサイズを増加させることは、全体の不整合損失を減少させることになる。
【0024】
したがって、Pドープのシリカ製導波路の端部領域30(導波路が光ファイバに結合される領域)においては、コアの幅と高さとのアスペクト比は1.2以上(W/H>1.2)である。
【0025】
C.結合効率
近接して配置されたシングルモード導波路(図1の領域22,24,26)を含むカプラの結合効率は、光が導波路から他の導波路に結合するのに必要な最低カプラ長さである結合長さにより特徴づけられる。この結合長さは、2つの最適化導波路12,14のコアの幅と間隔(separation)に極めて敏感である。その理由は、結合は2つの導波路の光学フィールドのテールのオーバラップから得られるからである。製造に対しては、中心間の間隔は、比較的一定であるが、コアの幅と端部間の間隔は変化する、その理由は光リソグラフの条件とエッチングのアンダーカットの変化を制御できないからである。かくして高い歩留まりを得るためには、この結合長さは、製造誤差に対して安定していなければならない。
【0026】
次に、図3においてPドープのシリカ製導波路に対し、λ=1.55μmに対し中心間のずれC=9.0μmとC=9.5μmのカプラに対し、計算された結合長をそれぞれA,Bとして示す。
【0027】
図3Aにおいては、コアの幅W=4μmの周辺でのW軸に対してカーブは平行になる。このことは結合長は、この寸法の幅における変動が最も敏感ではないことを意味する。隣接するカーブの間の結合長のステップと大きさは、図3のA,B両方とも100μmである。しかし、図3のAの隣接するカーブ間の垂直方向のスペースは、図3Bのそれよりも約2倍以上大きく最適の導波路に対する結合長さは、矩形の導波路に対してよりもコアの高さ方向の変化に対し、より感受性が少ないことを意味する。図3Aの点線の矩形36に示すように、最適化された導波路のコア高さは6.7μmで、コア幅は4μmである。比較のために図3Bでは、導波路のコアの寸法は、5×5μm2 を中心にしてこれは、矩形の箱38に示すとおりである。
【0028】
このような安定した形状が存在することを次に説明する。一定の中心間のずれに対しては、両方の導波路の幅が減少した時には、2つの影響がある。その1つは光学フィールドの閉じ込めが少なくなり拡張して2つの導波路のギャップ内に拡張し、その結果より強い結合が得られる結果となる。他の影響は2つの導波路の間のギャップがさらに大きくなるとこれはより弱い結合となる。この2つの影響は上記の安定した構成においては、互いにバランスしている。結合波長は、この形状ではコアの高さに敏感ではなくなるが、その理由はモード閉じ込めは、最低次の近似ではコアの領域に依存し、高さを変化させることは幅を変化させるのと同様な2つの相反する影響を有する。
【0029】
この安定したコアの幅は、中心間のずれ(C)の関数であり、コアの高さと波長λには余り依存しない。この中心間のずれは、カプラの設計の便宜上λ=1.55μmにおいて結合長が約2000μmであるように選択される。コアの高さは、導波路がシングルモードとなるように選択されるが、この安定した形状においては、ほとんどダブルモードとなるように選択される。一般的にこのことはカプラ領域においては、コアの高さはコアの幅以上であり、これにより四角形の導波路よりもより厚いコアの層が必要であり、このことは同時に拡張したテーパ部を用いてファイバへのよりよい結合が可能となる。好ましくはPドープのシリカ製導波路の結合領域においては、コアの高さ対幅のアスペクト比は1.2以上である。
【0030】
D.安定な有効屈折率
ある種の素子においては、その素子に含まれる導波路の有効屈折率が製造上の誤差にも関わらず安定(一定)であることが必要である。例えば、図4において、ドラゴンルータ40は2つの誘電体性のスラブ(スターカプラ)44の間に配置された位相グレーティング列42と1つあるいは複数の入力導波路46と複数の出力導波路48とを有する。ドラゴンルータ40内のクロストークは、フォトリソグラフマスクのデジタルエラーとエッチングのアンダーカットの非規則性に起因する導波路コアの幅の変動により引き起こされる位相グレーティング列42内のランダム位相エラーに敏感である。例えば、1600Ghz自由スペクトル領域の8×8ルータにおいては、各グレーティング導波路の全長は1cm以上であるが、パス長の0.05μmに等しい位相エラーがあれば、クロストークの性能を非常に劣化させるのに充分である。そのため各グレーティング導波路のパス長(実際の長さ×有効屈折率)は、極めて正確に制御しなければならない。したがって、導波路の有効屈折率の変動は、クロストークの性能を劣化させその結果低歩留まりとなる。
【0031】
λ=1.55μmのPドープ導波路(クラッド層の屈折率nclad=1.445)に対する有効屈折率neff をコアの幅とコアの高さの関数として計算し図5に示す。隣接するカーブの間の水平方向のスペースは、有効屈折率neffを0.001だけ変えるのに必要なコアの幅の変化を表す。本発明によれば、図5の矩形の囲み50に示されるように、H=6.7μm,W=10μmの寸法を有するコアが、ここでいう安定なカプラと低損失ファイバ−導波路カプラ用に得られた高さのコアと一致する。好ましくはドラゴンルータ40の位相グレーティング列42を有する各導波路は、コアの幅対コアの高さに対するアスペクト比が1.15以上(W/H>1.15)である。
【0032】
図5から明かなように、6.7×10μm2 の寸法のコアを有する導波路のneff は、ドラゴンルータの高さが3μmで幅が8μmの寸法のコアを有する従来の導波路よりも、コアの幅の変化に対し感受性が少ない。このためこのような導波路構造体は、低クロストークを生成するのに必要なコアの幅に関して、製造誤差に対しより安定性がある。しかし導波路は、コアの高さとコアの幅が増加するためにマルチモードとなるので、シングルモード領域52が付加されて高次モードを取り除く。別の構成としては、各グレーティング導波路を小さな曲げ半径でもって湾曲させ、その結果全ての高次モードを有効に放射するようにしてシングルモード領域52を取り除くこともできる。
【0033】
図6は200Ghzのチャネル間隔の3個の8×8ドラゴンルータから測定された伝送スペクトラムを表す図である。このスペクトラムは、5番目の入力から5番目の出力の間で測定され、その際ファイバ−導波路の結合損失はないものとする。この素子は、同一基板上でコアの高さH=6.7μmのPドープのシリカ製導波路でもって形成された。この3個の素子は、グレーティング導波路のコアの幅が違うだけでそのコアの幅はそれぞれ8.5μm,6.5μm,5.5μmである。この伝送スペクトラムは、ピークのクロストークは、それぞれW=8.5,6.5,5.5μmの導波路に対し、−26dB,−22dB,−14dBである。上記のことからコアの幅が広くなればランダム位相エラーが小さくなり、ここに開示したコア高さの最適化導波路でもって、高性能のドラゴンルータが形成できる可能性があることを示すことになる。
【0034】
E.曲げ損失
曲げ領域は、多くの導波路素子にとって必要不可欠なものである。例えば、図1に示すフーリエフィルタ10は、湾曲領域54,56を有し、図4のドラゴンルータ40は、位相グレーティング列42内に湾曲領域を有する複数の導波路を有する。これらの湾曲部の曲げ半径は、充分に大きくその結果挿入損失が許される程度のものである。多くの場合これらの湾曲領域が素子が組み込まれる光学回路の大きさを決定するので小さな曲げ半径程好ましい。
【0035】
導波路にシングルモードが必要な場合には、より大きなコアの寸法を用いると、より小さな曲げ半径が可能となる。より大きなコア寸法は、光学フィールドの閉じ込めが強くなり、その結果光学パスはより簡単に曲げることができる。
【0036】
従来の導波路素子においては、15mmの最低曲げ半径は、5×5μm2 の正方形コアを有するPドープシリカ製導波路上で達成できた。しかしH=6.7μmで、W=5μmの寸法のコアを有する導波路を用いることによって、カプラのシングルモード動作には影響を及ぼすことなく、その曲げ半径は約10mmまで減少できた。さらに大きなコアの幅を用いることにより、曲げ半径をさらに減少することもできるが、湾曲部でのモード変換により図4のドラゴンルータ40のシングルモード領域52の高次モードの除去が必要となる。このためPドープのシリカ製導波路の湾曲領域では、コアの幅対高さのアスペクト比は、0.8以上且つ1.1以下(0.8<W/H<1.1)が好ましい。
【0037】
3.製造
本発明のPドープシリカ製導波路構造体の製造方法を以下に示す。
【0038】
先ず、アンドープSiO2(HiPOX) 製の第1の15μm厚の下部クラッド層を、高圧スチーム下でSiを酸化することにより形成する。7%のPドープのSiO2 (Pガラス)を含む所定厚のコア層を、低圧CVD(LPCVD)を用いてその後堆積する。このステップにより、導波路コアが基板全体に亘って均一の厚さ即ち高さを規定する。その後このコア層をアニールし、約1000℃で蒸気をかける。
【0039】
その後このコア層を、コンピュータにより生成されたフォトリソグラフマスクを用いてパターン化し形成する。かくして、このコアの幅は、導波路の特性を最適化するために、導波路の異なる機能領域で変化する。BとPをドープしたSiO2(BPTEOS)製の1.5μm厚のフロー層をLPCVDで堆積し、900℃でアニールして、カプラ領域の2つの導波路コアの間の狭いギャップを充填する。最後に7.5μm厚のBPTEOSの2つの層を上部クラッド層として堆積しアニールする。上部クラッド層は、下部クラッド層とほぼ同一の屈折率を有し、コアは、下部クラッド層と上部クラッド層よりも0.63%高い屈折率を有する。したがって、コア層は基板全体に亘って均一の厚さを有するため様々な種類の素子、例えばドラゴンルータ,フーリエフィルタ,Y型ブランチ等を同一の光リソグラフマスク上に機能回路として集積し、単一基板上に共通のプロセスで製造できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の平面上光学導波路は、例えばスパッタリング電子ビーム蒸着,反応性イオンエッチング等の様々な製造技術を用いて製造することができる。本発明は、現在の光ファイバと結合することができ、その低損失,低複屈折のためにドープしたシリカ製導波路でもって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による導波路の機能領域を表した最適導波路の上面図
【図2】本発明の導波路を用いたファイバ−導波路−ファイバのモードフィールドのミスマッチ損失を表した図
【図3】A 中心間の距離が9.0μmの本発明によるカプラ用の結合距離を表した図
B 中心間の距離が9.5μmの従来のカプラの結合距離を表した図
【図4】本発明によるドラゴンルータの上面図
【図5】コアの幅と高さの関数として有効屈折率を表した図
【図6】グレーティング導波路コアの幅がそれぞれ8.5,6.5,5.5μmの本発明による3種類のドラゴンルータから測定された伝送スペクトルを表す図
【符号の説明】
10 フーリエフィルタ
12,14 最適化導波路
16,18 コア
20 基板
22,24,26,28 領域
30 導波路端部
32 光ファイバ
40 ドラゴンルータ
42 位相グレーティング列
44 誘電体性スラブ(スターカプラ)
46 入力導波路
48 出力導波路
52 シングルモード領域
54,56 湾曲領域
Claims (3)
- 基板と、
前記基板上に形成された、一定の高さおよび変化する第1の幅を有する第1導波路と、
前記基板上に形成された、一定の高さおよび変化する第2の幅を有する第2導波路とを有し、
前記第1導波路および第2導波路は、シングルモードであり、
前記第1導波路および第2導波路は、カプラを形成するように、前記基板上の結合領域において光学的に結合されており、前記第1の幅および第2の幅は、前記結合領域において結合領域以外の幅に比して実質的に一定の幅に減少させられており、
前記結合領域における、前記第1導波路および第2導波路の各々のコアについての高さ対幅のアスペクト比は、1.2よりも大きくなっており、かつ所定のコア中心間のずれにおいて、各コアの幅の変動に対して結合長が実質的に影響を受けないようにしたことを特徴とする平面型光学導波路素子。 - 前記導波路がそれぞれの光ファイバとインターフェ−スされるインターフェース領域をさらに含み、
前記導波路の各々のインターフェース領域におけるコアの幅は、前記導波路と光ファイバとの間のモードフィールドのミスマッチ損失を減少させ、かつ前記導波路の各々に対し、前記高さの120%より大きくなるまで次第に増加している
ことを特徴とする請求項1に記載の平面型光学導波路素子。 - 前記導波路の各々が曲がる湾曲領域をさらに含み、
前記導波路の各々の幅が、曲げ損失を減少させるように、前記湾曲領域における一定の幅に至るまで除々に増加するようになっている
ことを特徴とする請求項2に記載の平面型光学導波路素子。
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