JP3581124B2 - リチウム2次電池用陰極薄膜 - Google Patents

リチウム2次電池用陰極薄膜 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム2次電池用陰極薄膜に係り、より詳細には、充放電サイクル特性が改善されたリチウム2次電池用陰極薄膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、マイクロエレクトロニクス産業の発展および電子素子の小型化、高性能化および超小型センサー機器などの開発に伴い、これらを駆動させる電源として超小型および超薄型の電池に対する必要性が次第に高まりつつある。
【0003】
図1は、従来の技術による薄膜電池の構造を概略的に示したものである。図1を参照すれば、薄膜電池は、基本的に、集電体11上にカソード12、電解質14、アノード13および保護層15が、薄膜状に順次積層された構造を有し、全体的な厚さが約10μmであることから、下記のような利点を有している。
【0004】
すなわち、それぞれの層を薄膜として蒸着することによってカソードの近くにアノードを配置できることから、電流密度が高く、電池効率特性に優れている。加えて、薄膜状に形成されるので電極間のイオンの移動距離が短くなってイオンの移動がより容易になると共に速くなり、その結果、反応物質量を大幅に減らすことができる。また、このような薄膜電池は、特別な目的に合わせて任意の形状や大きさに製作し易いことから、超小型電子素子、MEMS(Micro Electro Mechanical System)素子、超小型センサー等を駆動させる主電源として極めて有望である。
【0005】
このような薄膜電池は、特に半導体の製造工程と同一の方法により製造されるため、半導体チップ上に電子回路と共に実装でき、これをバックアップ電源とするCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)メモリチップを実現できる。また、電子機器の不用空間を最小化させて空間利用効率を極大化でき、適切な設計およびエッチング工程を通じての直列および並列接続により各種の電圧や容量を有する電池を実現できるので、その利用範囲は極めて広い。
【0006】
これまで薄膜電池に対する研究は主としてV、LiCoO、LiMn等を用いた陽極薄膜の製造や評価に集中しており、これらについて満足すべき結果が報告されている。またこのような薄膜電池の陰極薄膜としては、リチウム金属を蒸着して形成されたリチウム金属薄膜に対するものが主流をなしている。
【0007】
しかしながらリチウム金属は、融点が約180℃と低く、パッケージング工程中の半田付けによって生じる熱で溶融してデバイスを損傷させる恐れがある。またリチウム金属は、空気中で高い反応性を有するため水分や酸素から隔離するための別途の装置をさらに設けなければならないなど取扱いが難しく、超小型電子機器電源の電極物質として実質的に応用されるには多くの問題点を抱いている。
【0008】
前述したリチウム金属薄膜のほかに、陰極薄膜としてシリコンチンオキシナイトライド(silicon tin oxynitride:SITON)、錫酸化物(SnO)および窒化物系よりなる陰極薄膜の開発が試みられているが、初回の充放電サイクル中に起こる不可逆反応が抑えられないのが実情である。
【0009】
一方、リチウムの低い充放電効率を克服するために、リチウム合金に対する研究が進んでいる。リチウムと合金可能な金属としては、錫、シリコンまたはアルミニウムが挙げられ、これらとのリチウム合金は次世代の陰極活物質として注目されている。ところがこれらの陰極活物質は、リチウムに対し低い電圧区間での容量特性には優れているが、充放電中にリチウムが挿入(インターカレーション)および脱離(デインターカレーション)されることにより起こる活物質の体積変化により薄膜の内部や界面で応力が発生し、陰極薄膜の構造を壊し、その結果サイクル特性が劣化する。特に固体電解質を用いる薄膜電池の場合、電極と集電体との間の界面における接着力が顕著に低下するため、電池の性能が低下する恐れがある。これらの理由から、初回の充放電サイクルでリチウムの挿入または脱離により起こる不可逆反応による容量の減少を抑制し、かつサイクル特性に優れた物質の開発が望まれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電サイクル特性が改善されたリチウム2次電池用陰極薄膜を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、集電体とその上部に形成された陰極活物質層とを具備するリチウム2次電池用陰極薄膜であって、前記陰極活物質層は、シリコン層と銀層とが積層された多層薄膜よりなることを特徴とするリチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0012】
さらに本発明は、前記集電体と前記陰極活物質層との間に、バナジウム、ニッケル、モリブデンおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む緩衝膜を有することを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0013】
さらに本発明は、前記緩衝膜の厚さが50〜250Åであることを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0014】
さらに本発明は、前記シリコン層の厚さが50〜250Åであり、前記銀層の厚さが10〜70Åであることを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0015】
さらに本発明は、前記シリコン層と前記銀層とが交互に積層されることを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0016】
さらに本発明は、前記銀層は二層のシリコン層の間に形成されることを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0017】
さらに本発明は、前記多層薄膜の最上層が銀層であることを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0018】
さらに本発明は、集電体とその上部に形成された陰極活物質層とを具備するリチウム2次電池用陰極薄膜であって、前記陰極活物質層は、シリコンおよび銀を含む単一層よりなることを特徴とするリチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0019】
さらに本発明は、前記単一層におけるシリコンおよび銀の混合モル比が7:3〜3:7であることを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0020】
さらに本発明は、前記集電体と前記陰極活物質層との間に、バナジウム、ニッケル、モリブデンおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む緩衝膜を有することを特徴とする、前記リチウム2次電池用陰極薄膜である。
【0021】
【発明の実施の形態】
一般的にシリコンは、リチウムに対して低い電圧区間で大きい容量を示すことから陰極活物質として多くの長所を有する一方で、充放電中に生じる大きい体積変化による活物質の劣化が制御できず、陰極活物質としての応用が制限的であるという短所を有する。本発明では、このようなシリコンの短所、すなわちシリコンの体積膨脹による応力を緩和すると共に、リチウムイオンや電子が移動できる媒質として、銀をシリコンと併用して陰極活物質層を形成した点にその特徴がある。銀はシリコンと反応しないため、リチウム−シリコン反応の容量および可逆性が確保でき、薄膜電池のパッケージング工程で要求される加熱条件で活物質の構造的な安定性が確保できる。加えて、このような陰極活物質層を採用するリチウム2次電池において、陰極活物質として用いたシリコンおよび銀の各層の厚さや配列順序、陰極活物質層の総厚さ、薄膜形成時の熱処理条件、または、陰極活物質層として銀およびシリコンを含む単一層を用いる場合には銀およびシリコンの混合質量比、混合モル比などにより、シリコン層および銀層を構成する各物質の微細構造、結晶性、大きさ、分布様相を制御することができ、これにより様々な充放電特性を得ることができる。
【0022】
以下、図2の(a)〜(e)を参照し、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。図2の(a)〜(e)に示すように、本発明のリチウム2次電池用陰極薄膜は、集電体とその上部に形成された陰極活物質とを含み、前記陰極活物質層は、シリコン層と銀層とが積層された多層薄膜よりなることを特徴とする。
【0023】
本発明の陰極薄膜において、陰極用の集電体は、特別に限定されないが、銅薄膜を使用することが一般的であり、その場合、集電体の厚さは通常100〜300nmである。
【0024】
本発明の陰極薄膜は、望ましくは、前記シリコン層および前記銀層が交互に形成され、より望ましくは、前記銀層は二層のシリコン層の間に形成される。このような構成にすることによって、銀によるシリコンの体積膨脹を抑える効果を一層大きくすることができる。さらに本発明の陰極薄膜は、望ましくは、多層薄膜の最上層が銀よりなる。このような構成にすることによって、この銀層が電解質と電極との界面でシリコンの体積膨脹や収縮によるクラッキングやシリコン活物質の消失を抑え、リチウム2次電池のサイクル特性をより良好に改善することができる。
【0025】
これらの構成の具体例として図2(a)〜(e)を詳述すると、(a)の陰極活物質層は、Si/Ag/Si/Ag/Si/Ag/Si/Agの順でシリコン層と銀層が順次積層された構造を有し、(b)の活物質層は、Si/Ag/Si/Ag/Si/Agの順でシリコン層と銀層が順次積層された構造を有し、(c)の陰極活物質層は、Si/Ag/Si/Agの順でシリコン層と銀層が順次積層された構造を有し、図2の(d)の陰極活物質層は、Si/Ag/Siの順でシリコン層と銀層が順次積層された構造を有し、図2の(e)の陰極活物質層は、Ag/Si/Ag/Si/Ag/Si/Agの順でシリコン層と銀層が順次積層された構造を有し、いずれも好ましい構成であるがこれらに限定されない。
【0026】
本発明の陰極薄膜において、シリコン層の厚さや積層数は陰極活物質の量に相関しており、デバイスの要求およびカソードの容量に応じて様々に変えられるが、望ましくは、50〜250Åである。ここでシリコン層が50Åよりも薄い場合には要求される容量設計のためにシリコン/銀の多層薄膜の層数が増え、結果的に銀層の数が所定範囲以上に増えてしまい、陰極薄膜の過電圧が増えるという問題がある。これに対し、シリコン層が250Åよりも厚い場合にはシリコンの体積膨脹を十分に抑えられないという問題がある。
【0027】
また、銀は、0.08V以下の低い電圧区間でリチウムと反応し、安定した銀−リチウム合金(以下、「Ag−Li合金」とも記載)を形成する。しかしその一方で、充電中においてLi−Ag合金はLiとAgとに分解する反応が遅いため、反応したリチウムが完全に放出されず、可逆性が低下して不可逆容量として反映される。従って、銀層を最小限の厚さに蒸着し、望ましくは、10〜70Åに形成する。ここで銀層が10Åよりも薄い場合にはシリコン層の体積変化を抑える効果が弱く、銀層が70Åよりも厚い場合にはLi−Ag合金がLiとAgとに分解する速度が低下するという問題がある。
【0028】
本発明の陰極薄膜において、シリコンおよび銀の積層順序やそれぞれの積層厚さを様々に調節することにより、様々な性能を有するリチウム2次電池を形成することができる。多層薄膜の最上層が図2の(d)のようにシリコン層である場合には特に電池容量に優れ、最上層が図2の(a)〜(c)および(e)のように銀層である場合には、上述したようにサイクル特性に極めて優れる、という特徴がある。
【0029】
さらに本発明の他の実施形態として、集電体とその上部に形成された陰極活物質層とを具備するリチウム2次電池用陰極薄膜において、前記陰極活物質層が、シリコンおよび銀を含む単一層よりなることを特徴とするリチウム2次電池用陰極薄膜を提供する。この実施形態は図2(f)で示される。当該実施形態においては、銀は、シリコン中に微細な粒子状態でかつ均一に分布されるように前記単一層中に存在することが好ましく、それによって図2の(a)〜(e)のような多層薄膜のと同様の効果を得ることができる。前記単一層におけるシリコンおよび銀の混合モル比は、望ましくは、7:3〜3:7である。ここでシリコンに対する銀の含量が前記範囲を超過する場合には、リチウムの反応活物質であるシリコンの周りに多くの銀が存在して、シリコンが周りの銀により遮蔽され、全ての利用可能なシリコンにリチウムが近づけず、電極の容量が実際の設計容量よりも極めて低くなる。また、銀の含量が前記範囲未満である場合にはシリコン層の体積変化を抑える効果が弱いという問題点がある。また前記単一層の厚さは、デバイスの要求およびカソードの容量に応じて様々に変えることができ、前述した混合モル比範囲内でシリコン間に銀を微細な粒子状態でかつ均一に分布できるのであれば、適切な範囲で厚くしてもよい。
【0030】
本発明の陰極薄膜において、上述したシリコン層と銀層とが積層された多層薄膜、または、シリコンおよび銀を含む単一層を形成する方法は特別に制限されず、従来周知の方法が使用され得る。具体的な形成方法としては、スパッタリング法、電子線蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(ion beam assisted deposition)などが挙げられ、本発明において好ましく用いられる。ここで各方法の工程条件は特別に制限されず、一般的な設定を用いてなされ得るが、所望の実施形態に応じて適宜選択され得る。上記の方法について以下に詳細に説明する。
【0031】
スパッタリング法は、各成分が極めて微細かつ均一な分布を有する薄膜を得ることができ、さらに基板の冷却度により非晶質またはナノ結晶構造の薄膜を得ることもできる。加えて、多成分系の薄膜を製造する場合には、モザイク状のターゲットを用いたモザイクスパッタリング法(Mosaic sputtering method)、二つ以上のターゲットを用いた同時スパッタリング法(Co−sputtering method)、または合金ターゲットを用いたスパッタリング法も適用可能である。
【0032】
これらの方法のうち、別々のスパッタリングターゲットを同時にスパッタリングして蒸着する同時スパッタリング法は、各々のターゲットに印加される高周波電力(rf電力)を調節することにより様々な組成の薄膜を得ることができる。従って、同時スパッタリング法において、蒸着圧力、ガスの流速、ガス比などの蒸着条件は同一であり、薄膜の組成を調節するための変数は各々のターゲットに印加される高周波電力のみである。通常、基本物質(ここではシリコン)の蒸着電力は同一に維持され、添加されるその他の物質の蒸着電力を変えることによって調節する。例えば、シリコンの蒸着電力は100〜300Wであり、金属(ここでは銀)の蒸着電力は0〜100Wであることが一般的である。また、モザイクスパッタリング法を用いる場合にはスパッタリングの工程条件がいずれも同一であり、薄膜の組成を調節するための変数はチップの個数となる。
【0033】
一方、イオンビームアシスト蒸着法は、加速された電子ビームが基板に蒸着される原子と衝突することにより増大された原子の移動度および反応性を用いてイオン線条件を適宜に調節することにより、多成分系非晶質および結晶質の薄膜を製造することができる。薄膜の組成は各蒸着源に印加される電子線の電流を調節して変えることができ、蒸着された薄膜の結晶性および微細構造はアルゴンイオンの線束や加速電圧を変えることにより調節することができる。
【0034】
電子線蒸着法は、電子線を相異なる蒸着源に同時に集束、蒸発させて基板に同時に蒸着する。
【0035】
薄膜の組成は、各蒸着源に印加される電子ビームの電子線束を調節して変えることができ、また蒸着された薄膜の結晶性および微細構造は、アルゴンイオンの加速電圧を変えることにより調節することができる。
【0036】
また上述したシリコンおよび銀を含む単一層を形成する場合には、前述した方法のうち、特にシリコンおよび銀を同時にスパッタリングできる同時スパッタリング法により蒸着することが好ましい。同時スパッタリング法により単一層を形成する時には、シリコン内の銀の分布様相、粒子径、混合比などにより最終的に得られる陰極活物質層の特性がやや異なってくるが、シリコンの間に銀が微細な粒子状態でかつ均一に分布されるように制御することにより、シリコン/銀の多層薄膜のような効果を得ることができる。
【0037】
一方、本発明による陰極薄膜は、図2の(a)〜(f)に示すように、望ましくは、集電体と陰極活物質層との間に緩衝膜を形成する。この緩衝膜は、バナジウム、ニッケル、モリブデンおよび銅よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の金属を含んでなるものであり、陰極活物質層と集電体との間の応力を緩和すると共に、界面における安定性を確保する役割をする。なお、前記緩衝膜の厚さは、望ましくは50〜250Åである。ここで前記緩衝膜が50Åよりも薄い場合には、前述したように、集電体と陰極活物質層との間の応力緩和などの緩衝の役割を十分に果たせない。これに対し、緩衝膜が250Åよりも厚い場合には電気化学的な特性には大きく影響しないが、陰極薄膜の体積が全体的に嵩む結果となるため、望ましくない。
【0038】
【実施例】
実施例1
銅基板上に2インチの直径のシリコン、銀およびバナジウムターゲットを各々用いて薄膜の各成分を順次蒸着し、下記表1に示す6種類の構造の陰極薄膜を製造した(MSA−1〜6)。
【0039】
蒸着に際し、まず初期真空度を2×10−6torr以下に調節し、アルゴンガス5mTorr、流量10sccmの条件下で、バナジウムを50Wの高周波電力(以下、「rf電力」とも記載)で200Åの厚さに蒸着した。その上部に、銀層およびシリコン層を交互に蒸着した。この時、シリコン層は200Wのrf電力で70〜200Åの厚さに蒸着し、銀層は270Vの直流および30mAの条件下でシリコン層の間に25〜50Åの厚さに蒸着した。
【0040】
【表1】
Figure 0003581124
【0041】
前述のように製造された陰極薄膜の電気化学的な特性を測定するために、対電極および基準電極として金属リチウムを用い、電解液としてエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒中に溶解させた1M LiPFを用いて、リチウム2次電池を製造した。
【0042】
比較例1
銅集電体の上部に、表1に記載のMSA−2の総シリコン量と同量のシリコンを使用して、純粋なシリコン層を300Åの厚さに蒸着することによりシリコン層のみからなる陰極薄膜を得、この陰極薄膜を用いて実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【0043】
実施例1の陰極薄膜(MSA−2)、および、比較例1の陰極薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性をそれぞれ調べ、その結果を図3に示す。ここでサイクル特性は、50μA/cmの電流密度でリチウムに対し0.08〜1.5Vの区間で50回以上充電および放電を行う方法により評価した。
【0044】
図3を参照すれば、実施例1のMSA−2を用いた電池は、比較例1のシリコン単一層を用いた電池よりもサイクル特性が改善されていることが分かる。特に、実施例1のMSA−2を用いた電池は、50サイクル後でも初期容量の95%以上が維持された。このように、陰極活物質層としてシリコン/銀の多層薄膜を用いれば、シリコン単一層よりなる陰極活物質層を用いるよりも、シリコンの体積膨脹や収縮による活物質の劣化を抑制することができ、サイクル特性を改善することができる。
【0045】
また、実施例1で得られた試料のMSA−1、MSA−2またはMSA−4の多層陰極薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性を調べ、その結果を図4に示す。ここで、サイクル特性は、50μA/cmの電流密度でリチウムに対し0.08〜1.5Vの区間で定電流方式により100回以上充電および放電を行う方法により評価した。
【0046】
図4を参照すれば、陰極活物質層を形成する各シリコン層の厚さがが薄いほど充放電サイクル特性に優れていることが分かる。シリコン層の厚さが200ÅであるMSA−4を用いた電池は、約50サイクル後に容量の減少が見られたが、シリコン層の厚さが各々70Å、100ÅであるMSA−1およびMSA−2を用いた電池では、100回に亘る充電および放電反復によっても容量の減少がほとんど見られなかった。
【0047】
一方、図3および図4を参照すれば、初回のサイクルにおいて不可逆容量が観察された。
【0048】
このような不可逆容量の原因を把握するために、図5AおよびBに、実施例1で得られた多層薄膜からなる陰極薄膜を用いたリチウム2次電池における初回サイクルの充電容量、放電容量および不可逆容量を示す。これらの特性は、50μA/cmの電流密度でリチウムに対し0.08〜1.5Vの区間での、充電(初回充電容量)および放電(初回放電容量)によって評価した。図5のAは実施例1で得られた多層薄膜を用いたリチウム2次電池の、初回サイクルの充電容量、放電容量および不可逆容量を、陰極のシリコン層の総厚さに対して示したグラフであり、Bは、実施例1で得られた多層薄膜を用いたリチウム2次電池の、初回サイクルの充電容量、放電容量および不可逆容量を、陰極の銀層の総厚さに対して示したグラフである。なお、上記した「シリコン層の総厚さ」とは、多層薄膜中に含まれる各シリコン層の厚さを合計した値であり、銀層についても同様の定義である。例えば、試料MSA−1の場合、シリコン層は4層であり、シリコン層厚さは70Åであるので、総厚さは280Åとなる。
【0049】
図5AおよびBを参照すれば、初回サイクルの放電および充電容量(グラフ中、■および●)は活物質であるシリコンの量に比例するが、不可逆容量(○)は活物質として用いたシリコンおよび銀の量とは相関せずにほぼ一定の値を示した。この結果から、初回サイクルの不可逆容量は、電極と電解液との間の界面で生じた副反応によるものと推定され、活物質自体の構造的な損傷によるものではないと思われる。
【0050】
次に、銀層の厚さによるサイクル特性を調べるために、実施例1で得られたMSA−1(銀層厚さ:25Å)およびMSA−6(銀層厚さ:50Å)の陰極薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性を調べ、その結果を図6に示す。ここで、サイクル特性は、50μA/cmの電流密度でリチウムに対し0.08〜1.5Vの区間で定電流方式により100回以上充電および放電を行う方法により評価した。
【0051】
図6を参照すると、MSA−1およびMSA−6を用いた電池は共に優れたサイクル特性を示しているが、特に銀層が50ÅであるMSA−6の電池のサイクルによる容量減少が、銀層厚さ25ÅのMSA−1の電池に比べてやや改善され、さらに、初回充電容量である18μAhの約95%が100サイクルまで維持され、グラフには示さなかったが100サイクルを過ぎても維持された。
【0052】
一方、陰極活物質層の最上部層が銀層である場合、または、シリコン層である場合を比較するために、実施例のMSA−4およびMSA−5の多層薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性を比較および測定し、その結果を図7に示す。ここで、サイクル特性は、50μA/cmの電流密度でリチウムに対し0.08〜1.5Vの区間で定電流方式により100回以上充電および放電を行う方法により評価した。
【0053】
図7を参照すれば、陰極活物質層の最上部層がシリコン層であるMSA−5を用いた電池はより大きい電池容量を示し、一方、陰極活物質層の最上部層が銀層であるMSA−4を用いた電池は、シリコンが電解液に露出しているMSA−5を用いた電池に比べてサイクル特性に優れることがわかる。これは、最上部層が銀層である場合、銀が電解質と電極との界面でシリコンの体積膨脹および収縮によるクラッキングおよび活物質の消失を抑えるからである。この結果から、陰極活物質層の最上部に銀層を形成して固体電解質を用いたリチウム2次電池を製作する場合、電極と電解質との界面間の化学的および機械的な安定性を大きく向上できると期待される。
【0055】
実施例2
バナジウムターゲットに代えてニッケルターゲットを用いたことを除いては、実施例1の方法と同様にして陰極薄膜を製造した。
【0056】
実施例3
バナジウムターゲットに代えてモリブデンターゲットを用いたことを除いては、実施例1の方法と同様にして陰極薄膜を製造した。
【0057】
実施例4
バナジウムターゲットに代えて銅ターゲットを用いたことを除いては、実施例1の方法と同様にして陰極薄膜を製造した。
【0058】
実施例5
バナジウムターゲットを用いないことを除いては、実施例1の方法と同様にして陰極薄膜を製造した。
【0059】
以上、実施例2〜5で得られた陰極薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性を調べた。ここで実施例2〜5の陰極薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性は、50μA/cm2 の電流密度でリチウムに対し0.08〜1.5Vの区間で50回以上充電および放電を行う方法により評価した。
【0060】
評価の結果、実施例2〜5の陰極薄膜を用いたリチウム2次電池のサイクル特性が従来のものに比べて優れていることが分かった。
【0061】
以上、本発明について実施例を参考として説明したが、これは単なる例示的なものに過ぎず、本発明の分野の当業者であれば、これより各種の変形および均等な他の実施例が可能であるということは言うまでもない。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の2次電池用陰極薄膜は、充放電中に生じるシリコンの体積膨脹や収縮を抑えてサイクル特性を大きく改善することができる。従って、このような薄膜陰極を採用すれば、電極と電解質との界面の化学的および機械的な安定性が大きく改善され、寿命特性が改善されたリチウム2次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常の薄膜電池の構造を示した概略図である。
【図2】実施例1で得られた多層薄膜を用いた陰極の構造を概略的に示した図である。
【図3】実施例1および比較例1により製造されたリチウム2次電池のサイクル特性を比較した結果を示すグラフである。
【図4】実施例1のMSA−1、MSA−2、MSA−4の多層陰極薄膜を用いたリチウム2次電池を用いて、陰極のシリコン層の厚さによるサイクル特性を比較した結果を示すグラフである。
【図5】Aは、実施例1で得られた多層薄膜を用いたリチウム2次電池の、初回サイクルの充電容量、放電容量および不可逆容量を、陰極のシリコン層の総厚さに対して示したグラフであり、Bは、実施例1で得られた多層薄膜を用いたリチウム2次電池の、初回サイクルの充電容量、放電容量および不可逆容量を、陰極の銀層の総厚さに対して示したグラフである。
【図6】実施例1で得られたMSA−1およびMSA−6の多層陰極薄膜を用いたリチウム2次電池の、陰極の銀層の厚さによるサイクル特性を比較したグラフである。
【図7】実施例1により得られたMSA−4およびMSA−5の多層陰極薄膜を用いたリチウム2次電池の、陰極のサイクル特性を示したグラフである。
【符号の説明】
11 集電体
12 カソード
13 アノード
14 電解質
15 保護層

Claims (6)

  1. 集電体とその上部に形成された陰極活物質層とを具備するリチウム2次電池用陰極薄膜であって、前記陰極活物質層は、シリコン層と銀層とが交互に積層された多層薄膜よりなることを特徴とするリチウム2次電池用陰極薄膜。
  2. 前記集電体と前記陰極活物質層との間に、バナジウム、ニッケル、モリブデンおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む緩衝膜を有することを特徴とする、請求項1に記載のリチウム2次電池用陰極薄膜。
  3. 前記緩衝膜の厚さが50〜250Åであることを特徴とする、請求項2に記載のリチウム2次電池用陰極薄膜。
  4. 前記シリコン層の厚さが50〜250Åであり、前記銀層の厚さが10〜70Åであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム2次電池用陰極薄膜。
  5. 前記銀層は二層のシリコン層の間に形成されることを特徴とする、請求項1〜4に記載のリチウム2次電池用陰極薄膜。
  6. 前記多層薄膜の最上層が銀層であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウム2次電池用陰極薄膜。
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