JP3580282B2 - 熱間圧延システム及びランナウトテーブル通板方法並びに圧延板の製造方法 - Google Patents

熱間圧延システム及びランナウトテーブル通板方法並びに圧延板の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間圧延システム(以下、熱延システムという)に関するものである。特に連続圧延において、仕上圧延を終えた圧延板を冷却し、巻き取りを行う区間であるランナウトテーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は熱間圧延システムおける従来のランナウトテーブルを表す図である。通常、熱延システムにおいて仕上圧延装置からコイラまでの最終区間をランナウトテーブルという。ランナウトテーブルには、圧延板を冷却するための冷却バンクが設けられている。仕上圧延を終えて仕上圧延機から出てきた圧延板は、冷却バンクで水等の液体(以下、総称して水という)を吹き付けられ、巻き取り温度まで冷却されてからコイラにより巻き取られる。
【0003】
従来の冷却バンクは低水圧、低流量、長時間で水を吹き付けていたので、冷却バンク内を搬送される圧延板の走行安定性に重大な支障をきたすことはなかった。ただ、そのために冷却バンクの長さは長くなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そして、最近、品質向上等を図るため、冷却バンクの冷却能力を向上させる傾向にある。このため、冷却バンクは高圧力化、高流量化しつつある。冷却バンクが高圧力化、高水量化することにより次のような問題が生じることが多くなる。(1)高水圧の水が圧延板に衝突するため、冷却バンク内での圧延板の走行抵抗が増大する。
(2)高流量の水が搬送ローラと圧延板との間に入り込み、搬送推力がローラに伝わりにくくなる(つまり、接触圧が低下し、圧延板が滑ってしまう)。
【0005】
したがって、圧延板の先端から高圧力、高水量の水を吹き付けると、圧延板の先端部分における走行速度が減少してしまうことがある。一方、仕上圧延装置の搬送速度(仕上圧延装置を出た時の圧延板の走行速度)は変わらない。
【0006】
これは、先端部分は速度が低下しているにもかかわらず、仕上圧延装置では一方的に圧延板を押し出していることになり、冷却バンク内で圧延板がアコーディオン状に詰まってしまう可能性が高いことを意味する。そして、このような搬送事故を発生させてしまうと製品の歩留まりが低くなってしまう。
【0007】
また、冷却装置とコイラとの間で走間切断装置を設けている場合には、その前後にピンチローラが設けられている場合もある。
【0008】
ただ、このピンチローラは、あくまで走間切断装置での圧延板の走行を安定させるものである。
【0009】
そこで、本出願に係る発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、高水圧、高流量の強冷却の冷却バンクを用いたとしても、圧延板を安定して搬送することができ、高歩留まりの熱間圧延システム等を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そのため、本出願に係る熱間圧延システムは、熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、回転する複数のロールで圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、冷却装置の仕上圧延装置側とは反対側に、冷却装置に直近させて配置し、ピンチローラの複数のロールを、それぞれ独立したモータにより、独立した速度制御で駆動させるものである。
【0011】
また、本出願に係る熱間圧延システムは、それぞれのロールとモータとの間を、減速機を設けずに軸直結するものである。
【0012】
また、本出願に係る熱間圧延システムは、慣性の大きさが同じになるように、ロール及びモータによる系の組み合わせをそれぞれ構成し、また、ロールの周における速度及び圧延板に加える力の大きさが同じになるように周速度制御するものである。
【0013】
また、本出願に係る熱間圧延システムは、熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、回転する複数のロールで圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、冷却装置の仕上圧延装置側とは反対側に、冷却装置に直近させて配置し、複数のロールの直径をそれぞれ0.5m未満にするものである。
【0014】
また、本出願に係る熱間圧延システムは、熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、回転する複数のロールで圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、冷却装置の仕上圧延装置側とは反対側に、冷却装置に直近させて配置し、複数のロールにより圧延板を押し付ける力を、油圧により伝達するものである。
【0015】
また、本出願に係る熱間圧延システムは、熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、回転する複数のロールで圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、冷却装置の仕上圧延装置側とは反対側に、冷却装置に直近させて配置し、圧延板を押し付ける前の待機状態における複数のロールの周における速度を、圧延板が搬送される速度よりも高い速度にしておくものである。
【0016】
また、本出願に係る熱間圧延システムでは、周速度制御は、モータに供給される電流量に基づいて圧延板の張力を検出する張力検出手段と、張力検出手段が検出した圧延板の張力のデータとあらかじめ定められた張力目標値データとの偏差に基づいて速度変更量を算出し、あらかじめ定められた圧延板基準速度に加えた速度を指示速度として算出する張力制御手段と、張力検出手段が算出した指示速度に基づいた量の電流をモータに供給し、ローラの周における速度で制御しつつ回転させるロール速度制御手段とにより行われる。
【0017】
また、本出願に係る熱間圧延システムは、ローラの周における速度の上限値は、圧延板の張力が2kg/mmを越えない値にするものである。
【0018】
また、本出願に係る熱間圧延システムでは、熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、回転する複数のロールで圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、冷却装置の仕上圧延装置側とは反対側に、冷却装置に直近させて配置し、複数のロールにより圧延板を押し付ける力は、目標とする圧延板の張力、摩擦係数及び圧延板の断面積に基づいて設定するものである。
【0019】
また、本出願に係るランナウトテーブル通板方法は、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げ、あらかじめ定めた搬送速度で送り出す仕上圧延装置と、圧延板を巻き取る巻取装置との間にあって、仕上圧延装置から送り出された圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を備えた熱間圧延システムのランナウトテーブル区間において、冷却装置による圧延板の冷却を開始する際、待機状態の周における速度が搬送速度よりも高速である複数のロールを、冷却装置の巻取装置側に、冷却装置に直近させて配置したピンチローラの各ロールを、冷却装置を通過した圧延板の先端部分に押し付けて圧延板を送り出させる工程と、仕上げ圧延装置とピンチローラとの間における圧延板の張力が、あらかじめ定めた目標の張力に維持されるように各ロールのそれぞれの周における速度の制御を開始すると同時に、冷却装置から高水圧、高水流の液体を圧延板に吹き付けて冷却を開始する工程とを有するものである。
【0020】
また、本出願に係るランナウトテーブル通板方法は、できるだけ短い時間で目標の張力維持を達成できるように、張力を制御するものである。
【0021】
また、本出願に係るランナウトテーブル通板方法は、各ロールによる押し付けを開始した時に、張力がオーバーシュートしないようにした上で、できるだけ短い時間で目標の張力維持を達成できるように、張力を制御するものである。
【0022】
また、本出願に係る圧延板の製造方法は、圧延対象である圧延材を粗圧延する工程と、粗圧延した圧延材を圧延板に仕上げ圧延する工程と、圧延板を設定温度範囲内に冷却する工程と、圧延板を巻き取る工程とを少なくとも有する圧延材の製造方法において、圧延板を冷却する工程で、圧延板が少なくとも前記仕上圧延された時の速度を維持しながら冷却装置を通過できる状態に制御されたと判断すると、冷却装置による冷却を開始するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図1は本発明の実施の形態に係る方法を適用する熱延システムの一例を表す図である。図1において1は加熱炉である。加熱炉1は、圧延板8となるスラブ状の圧延材料を加熱するものである。2は粗圧延装置である。粗圧延装置2は、上下1組で回転するロールの間に、帯状に固められたスラブ状態の圧延材料を通過させて圧延し、粗バーとして成形するためのものである。3は誘導加熱装置である。誘導加熱装置3は、粗バーを均一に加熱するためのものである。また、誘導加熱装置3は、仕上圧延装置4が圧延を行いやすくするために圧延方向の加熱温度調整も行うことができる。4は仕上圧延装置である。仕上圧延装置4は製品として鋼板等の圧延板8を仕上げるための圧延機である。
【0024】
5は冷却装置である冷却バンクである。冷却バンク5は仕上圧延装置から搬送される圧延板8を、巻き取りを行うための設定温度まで冷却する。冷却バンク5には、複数のノズルが設けられており、制御を行いながらそれぞれのノズルから水を吹き付けて冷却を行う。本実施の形態では、冷却バンク5として高水圧、高流量のものを用いるものとする。そのため、短時間で設定温度まで冷却を行うことができ、従来約80m設けていた冷却バンクの長さも短くできる(本実施の形態の場合、約5m〜10mの冷却バンク5を想定する)。6はピンチローラである。ピンチローラ6は上側ピンチロール6Aと下側ピンチロール6Bで構成される(これらを特に区別しない場合にはピンチローラ6ということにする)。ピンチローラ6は冷却バンク5のできるだけ直後の位置に設ける。そして、製品としての質に影響を与えない程度の張力(以下、ここで、張力とは特にユニット張力(単位断面積あたりの張力)のことをいうものとする)となる力を圧力板8に加えながら、送り出しを行う(以下、この力により圧延板8に生じる内力を圧延板の張力という)。ここで、図1では特に示してはいないが、上側ピンチロール6Aと下側ピンチロール6Bのそれぞれを独立に駆動できるように、それぞれにモータが備えられているものとする。また、上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bはそれぞれが独立に速度制御されることができるものとする。
【0025】
7はコイラピンチ及び巻取装置であるコイラで構成されるコイラ部である。コイラ部7は、製品となる圧延板8を省スペースでコンパクトに管理できるように巻き取るためのものである。8は被加工対象の圧延板である。
【0026】
そして、図1では示していないが、本実施の形態では圧延板8の先端部分、尾端部分をはじめとする圧延板8の各位置を検出するための位置検出センサが設けられている。そして、位置検出センサから送信される測定信号により圧延板8の先端位置等を判断する制御装置が設けられている。また、本実施の形態では、この制御装置は、圧延板8の位置判断だけでなく、位置検出センサをはじめ、物理量を測定信号にして送信する種々のセンサ、指示を含む指示信号等、入力される各種信号に基づいて熱延システムを構成する各装置の動作制御、システム全体の制御を行う。
【0027】
本実施の形態は、まず、冷却バンク5が冷却を開始するタイミングを、ピンチローラ6が圧延板8の送り出しを開始した時(圧延板8の先端部分がピンチローラ6を通過し、圧延板8の張力の制御を開始した時)とし、先端部分が冷却バンク5内に詰まるのを防ぐものである。そして、仕上圧延装置4とピンチローラ6との間で圧延板8の張力を制御しながら送り出しを行い、高水圧、高流量下でも圧延板8の走行速度の安定、製品の質の向上をはかる。ここで、圧延板8の先端部分には冷却処理が施されていないので品質の面から製品として用いることができない。そこで、圧延板8の冷却処理を施していない部分をできるだけ少なくしたいのだが、コイラ部7を冷却バンク5の直後に配置することはできない。そこで、ピンチローラ6を冷却バンク5のすぐ後ろの位置に設けて歩留まりの低下を防ぐ。したがって、ピンチローラ6は、いわばコイラ部7の代わりにいち早く適切に圧延板の張力を制御し、圧延板8の走行速度を制御するものであるといえる。
【0028】
次に本実施の形態における圧延システムのランナウトテーブルでの動作及びその制御について説明する。仕上圧延装置4において製品形状に圧延された圧延板8は、ランナウトテーブルに設けられた搬送ローラ上を走行する。制御手段は各所に設けられた位置検出センサから送信された測定信号に基づいて、圧延板の先端部分の走行位置を判断する。
【0029】
一方、ピンチローラ6では、上側ピンチロール6Aと下側ピンチロール6Bとの間隔を圧延板8の板厚よりも広くしておき、それぞれを回転させながら待機させる。これは、圧延板8の板厚先端部分が目標の板厚よりも厚かったり、反りがあったりすると、ピンチローラ6が圧延板8をうまく噛み込めない場合があるからである。このようにうまく噛み込めなかった場合にはピンチローラ6で圧延板8の詰まりが生じる。ここで、上側ピンチロール6Aと下側ピンチロール6Bの周における速度(以下、これを周速度という)は、圧延板8の走行速度よりも速いものである。これは、仕上圧延装置4により搬送された圧延板8のたるみを取り、いち早く圧延板8に張力が生じるようにするためである。ただ、あまりにも速い周速度で圧延板8に力を加えようとすると問題が生じる。まず、経験則上、圧延板8の走行速度に対して周速度が約130%以上になると、圧延板8に疵を発生させてしまう。また、圧延板8内部の張力が約20N/mm(約2kgf/mm)を越えると、圧延板8にネッキング(局部収縮)と呼ばれる現象を発生させてしまう。これは圧延板8に生じる張力が大き過ぎることにより、圧延加工が施されていない圧延板8の幅方向にひずみが生じるものである。そこで、疵やネッキングを発生させない程度に、圧延板8の走行速度より速い周速度で上側ピンチロール6A及び下側ピンチロール6Bを回転させておく。
【0030】
測定信号に基づいて、制御手段は、ピンチローラ6が圧延板8の押し付けを行える位置に先端部分がきたものと判断すると、回転している上側ピンチロール6A又は下側ピンチロール6Bの両方又はいずれかを垂直に動かして、圧延板8の押し付け及び送り出しを開始する。それと同時に、制御手段は冷却バンク5に指示信号を送信し、冷却バンク5に対し、圧延板8に水を吹き付けさせる。その際、冷却バンク5の各ノズルから圧延板8に高水圧、高流量の水を同時に十分に吹き付けることができればよいが、それが不可能であれば、未冷却部分ができるだけ少なくなるように、ピンチローラ6側に設けられたノズルから優先して水を吹き付けるようにする。
【0031】
そして、さらに未冷却部分をより少なくするためには、ピンチローラ6をできるだけ早く圧延板8に押し付け、圧延板8に適当な張力を生じさせる必要がある。また、ピンチローラ6の押し付け力が十分でないと、圧延板8の接触部分はスリップしてしまうため圧延板8に擦り疵が発生する。したがって、必要な押し付け力を速く加えないと、スリップする時間を長引かせてしまい、その分、圧延板8に付く擦り疵の距離も長くなる。ここで、制御手段からの押し付け指示に対して素速い応答を行い、未冷却部分、擦り疵を少なくするために、超伝導磁石等による力を用いて押し付け力を確保してもよいが、これは現実的ではない。そこで、本実施の形態では、現実的に考えた中で最も応答性がよい油圧を用いた上でピンチローラ6を圧延板8に素速く押し付ける。これにより、未冷却部分及び擦り疵の部分を少なくして歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0032】
ここで、必要な押し付け力について考える。必要な押し付け力は、摩擦係数、張力及び圧延板8の断面積によって決まり、次式(1)を満たすような力P(N)となる。ここでμは摩擦係数、Tは張力、hは板厚、wは板幅である。
P>T・h・w/μ …(1)
【0033】
また、適当な張力について考えると、張力は多くても約10N/mmが確保できれば十分であるものと考えられる。従来、仕上圧延装置とコイラピンチとの間に加わる力により、圧延板に生じる張力は約20N/mmである。これにより、圧延板端部に生じる波等、形状の潜在化を防ぐことができる。ここで、ピンチローラ6の最大の目的は、高水圧、高流量の冷却バンク5内で、圧延板8の走行速度を落とさないようにすることであるし、ネッキングの問題もある。したがって、仕上圧延装置4とピンチローラ6との間では、従来のように仕上圧延装置とコイラピンチとの間で生じる以上の張力にする必要はないし、それはピンチローラ6とコイラピンチとの間ですればよい。そのため、ネッキング、疵等を発生させずに目的を果たすことができる、上述した程度の張力が確保できればよいことになる。
【0034】
以上より、例えば、圧延板8の張力を5.9N/mm、板厚を2mm、板幅を1000mmとして(1)式に代入すると、39200Nより大きな力を押し付け力とする。ここで、圧延板8及びピンチローラ6は動いているので、摩擦係数μは動摩擦も考慮する必要があるが、計算等の複雑さの関係で、ここでは静止摩擦係数として考えている。
【0035】
図2は張力制御を行うための構成を表すブロック図である。図2において、61Aは上側ピンチロール6Aを回転駆動させる上側モータである。また、61Bは下側ピンチロール6Bを回転駆動させる下側モータである。62は前述したように、圧延板8にピンチローラ6を押し付けるための油圧シリンダである。
【0036】
張力制御手段100A、張力検出手段100B、上側ロール速度制御手段100C及び下側ロール速度制御手段100Dは、前述した制御手段の機能又は処理の一部を表す手段である。張力制御手段100Aは、目標張力データを含む信号(以下、目標張力信号という)及び張力検出手段100Bから送信される推定張力データを含む信号(以下、推定張力信号という)のに基づく偏差(差分)により自動的に張力を制御するための張力制御データを算出する。そして、速度基準データを含む信号(以下、板速度基準信号という)と張力制御データとの偏差に基づいて速度修正信号を送信する。張力制御手段100Aは、主に自動張力制御装置(ATR)の役割を果たす。張力検出手段100Bは、モータ61Aに供給される電流をデータとした電流実績データを含む信号(以下、電流実績信号という)に基づいて推定張力データを算出し、張力信号を送信する。上側ロール速度制御手段100Cは、速度修正信号に基づいて、自動的に速度制御演算を行い、トルクを考慮した上で、その速度に制御するための電流を上側モータ61Aに供給する。上側ロール速度制御手段100Cは、主に自動速度制御装置(ASR)及び自動電流制御装置(ACR)の役割を果たす。下側ロール速度制御手段100Dも上側ロール速度制御手段100Cと同様に、板速度基準信号と張力制御信号との差分により、自動的に速度を制御するための電流を下側モータ61Bに供給する。
【0037】
圧延板8にピンチローラ6を押し付けた後、圧延板8の張力を適当なものにするためには、単にピンチローラ6を圧延板8に押し付ければよいというわけではなく、ピンチローラ6の各ピンチロールの周における速度(以下、周速度という)を制御する必要がある。上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bにはそれぞれ上側モータ61A、下側モータ61Bが備えられている。それぞれが独立して上側ロール速度制御手段100C、下側ロール速度制御手段100Dによる速度制御がなされる。
【0038】
ここで、上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bのそれぞれが異なる周速度で圧延板8と接触した場合、圧延板8、ピンチローラ6に疵を発生させる。疵がついた部分の圧延板8は製品とすることはできない。また、ピンチローラ6に疵が付いた場合には、その疵により圧延板8に疵をつけることになる。
【0039】
この上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bがそれぞれ異なる周速度となってしまう原因としては、モータ61A、モータ61Bから伝達される速度応答性が悪いことが挙げられる。特にモータ61A及びモータ61B又は上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bに加わる慣性モーメント(回転に対する慣性の大きさを示す量をいう。以下、これを単に慣性ということにする)が大きい程応答性が悪くなる。
【0040】
図3は減速機付きピンチローラと軸直結型ピンチローラとの張力変動推移を表すシミュレーション結果を表す図である。図3(a)は減速機付きピンチローラの張力変動推移を表し、図3(b)は軸直結型ピンチローラの張力変動推移を表している。図3(a)及び図3(b)では、実績張力σ及びモータトルク及び供給電流から推定した推定張力σxを示している。実際にはこれらの間には、伝達差(約10ms)がある。この比較は、板厚2.0mm、板幅1000mm、板速度900mpm、目標張力を4.9N/m(0.5kgf/m)の条件で、圧延板8の先端通過後0.1秒後に制御を開始として計算したものである。ここで、減速機付きピンチローラの総慣性を約1960N・m(GD=800kgf・m)で計算した。また、軸直結型ピンチローラの総慣性を約858N・m(GD=350kgf・m)で計算した。ここで、0.1秒まではピンチローラ6が圧延板8のたるみを除去している時間である。
【0041】
図3から、慣性の大きい減速機付きピンチローラは、軸直結型ピンチローラに比べると、張力が十分に制御されるまでに時間を要している。減速機を設けることによりピンチローラの総慣性が増大しているからである。慣性が大きければ応答がよくないし、慣性のエネルギが圧延板8に与えられるから圧延板の張力は過張力となる。例えば(1)式に基づいて、約4000Nの押し付け力を加えている場合、スリップが発生しない張力の限界は約5.9N/mmであるが、図3(a)ではこの値以下に制御されるまでには時間を要している。そして、この場合、減速機付きピンチローラにおいては、900mpm×(0.35−0.1)s=3.75mのロール疵が発生することになる。一方、軸直結型ピンチローラにおいては、900mpm×(0.25−0.1)s=2.25mのロール疵を発生させるだけですむ。
【0042】
そこで、慣性を小さくするために、上側モータ61Aと上側ピンチロール6Aとの間には減速機を配置せずに軸直結させる。下側ピンチロール61Bと下側ピンチロール6Bとの間についても同様に軸直結させる。また、上側ピンチロール6A及び下側ピンチロール6Bの直径を500mm(0.5m)未満とすることが望ましい。また、可能であれば、下側ローラ61B及び下側ピンチロール6Bとの慣性をできるだけ同一になるようにする。ただ、同一でなくともその差を10%未満とすることにより、後述する制御手段の制御によってこの差をカバーすることができる。
【0043】
図4は仕上圧延装置5とピンチローラ6との間で走行する圧延板8による振動系モデルを表す図である。次に張力制御について述べる。前述したように、本実施の形態では冷却バンク5が5〜8m、ランナウトテーブルの長さが10〜13mとすることができ、従来のランナウトテーブルに比べると、その距離がかなり短縮されることになる。ただ、このような構造を採ったことにより、従来では考慮しなくてもよかった問題が発生する。
【0044】
この振動系におけるバネ定数kxの大きさは、板ヤング率及び圧延板8の断面積に比例し、圧延板8の長さに反比例する。また、慣性質量Mはピンチロールとモータとの系が有する慣性の大きさによって決まる。従来のランナウトテーブルでも仕上圧延装置4及びコイラ部7により圧延板8内に張力が発生するが、圧延板8には特にダンピング要素(制振要素)が存在しないため、その張力には振動が伴っていた(以下、これを張力振動という)。しかし、仕上圧延装置からコイラ部までの距離が長かったので(約100m以上)、バネ定数kxは小さくなり、したがって張力振動も小さく、圧延板の走行速度、品質に影響を及ぼすことは少なかった。
【0045】
図5は張力振動制御を伴わない場合の張力の推移を表す図である。図5のように、本実施の形態ではランナウトテーブルの距離が短いため、バネ定数kxが大きくなってしまい、その振幅が無視できない程度の張力振動が発生する。そのため、圧延板8が急激に引っ張られたり、たるんだりする。しかもそれが収束するまでには時間がかかる。このため、圧延板8の走行が安定しないばかりか、圧延板8に疵をつけてしまう。そこで、次は張力振動を防ぐための制御及びその場合のピンチローラ6の速度制御について考える。
【0046】
図6は図2で示した張力制御を行う構成手段の制御機能を制御ブロックで表した図である。張力制御手段100Aは、目標張力信号と推定張力信号との偏差に基づいて、自動張力制御部が張力制御データを算出し、速度基準信号と張力制御データとの偏差に基づいた速度修正信号を送信する。そして、上側ロール速度制御手段100C及び下側ロール速度制御手段100Dは速度修正信号に基づいて、それぞれ電流を上側モータ61A、下側モータ61Bに供給する。ここで、速度修正信号は、速度基準信号に基づいて算出されたものであるので、例えば圧延板の尾端部分が仕上圧延装置を通過した時、破断した時等においてもロール回転の暴走を防止することができる。
【0047】
以上のような制御機能を有した構成手段により制御を行うことによって、冷却バンク5に直近させてピンチローラ6を設けて力を加え、圧延板8の送り出しを行っても、圧延板8に張力振動を発生させることなく、たとえ冷却バンク5が高水圧、高流量であっても安定した搬送を行うことができる。
【0048】
以上のように第1の実施の形態によれば、冷却バンク5のコイラ部7側に、冷却バンクに直近させてピンチローラ6を配置し、仕上圧延装置4から送り出された圧延板8の先端部分をいち早く押さえ付け、力を加えて送り出せるようにし、圧延板8の速度を維持しながら冷却バンク5を通過できるように張力制御を開始した後に、冷却バンク5が冷却を開始するようにしたので、高水圧、高流量の冷却バンク内でも圧延板8(特に先端部分)を詰まらせてしまうことがなく、安定した走行を行わせることができる。しかも、これにより高水圧、高流量の冷却能力が高い冷却バンク5が有効に使えるようになるので、冷却に必要な時間が短くなり、その分、冷却バンク5、ランナウトテーブルの距離が短くなることにより設備面積を小さくすることができ、建設費用を削減することができる。しかも、圧延板材料が再結晶できないほどの急激な冷却を行うことができるので、強度が高い圧延板8を得ることができる。また、ピンチローラ6の上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bをそれぞれ上側モータ61A、下側モータ61Bで駆動し、その駆動を上側ロール速度制御手段100C、下側ロール速度制御手段100Dで行うようにしたので、上側ピンチロール6A、下側ピンチロール6Bの周速度を細かく制御しながら圧延板8に接触させることができ、擦り疵、焼き疵、ネッキング等を発生させずにすみ、高歩留まりの圧延板8を得ることができる。また、上側ピンチロール6Aと上側モータ61A、下側ピンチロール6Bと下側モータ61Bとを減速機を設けずに軸直結するようにしたので、ロールとモータとの系による慣性の大きさを小さくすることができ、圧延板8速度維持のために圧延板の張力を制御しようとする際に、応答よく圧延板に加える力を伝達することができる。また、上側ピンチロール6Aと上側モータ61A、下側ピンチロール6Bと下側モータ61Bとの系による慣性の大きさが同じになるようにし、周速度及び圧延板に加える力の大きさが同じになるように速度制御するようにしたので、圧延板の張力の制御がしやすくなる。圧延板8を押し付ける力を油圧シリンダにより伝達するようにしたので、押し付け開始時のような急激な押し付け力を最もはやく、応答よく圧延板に加えることができる。また、張力検出手段100Bがモータに供給される電流量に基づいて圧延板8の張力を検出し、張力制御手段100Aがそれらに基づいて指示速度を算出し、上側ロール速度制御手段100C及び下側ロール速度制御手段100Dが電流をそれぞれ上側モータ61A、下側モータ61Bに供給し、速度制御を行うようにしたので、例えば、冷却装置、ランナウトテーブルの距離が短くなることにより起こり得る張力振動を起こさないようにしつつ、素速く安定した圧延板速度の維持を図ることができる。
【0049】
実施形態2.
上述の第1の実施の形態では熱延システムの制御を全て制御手段で行わせるようにした。したがって、例えば制御手順をあらかじめプログラムとして記述しておき、コンピュータ等のデータ処理手段に実行させることもできる。
【0050】
逆に、各制御をその制御を行うハードウェアに実行させることもできる。この場合には、張力制御手段100Aの主要部分である自動張力制御装置(ATR)は、即応性を向上させるための比例器及び残留偏差除去のための積分器で構成することが望ましい。また、上側ロール速度制御手段100C及び下側ロール速度制御手段の主要部である自動速度制御装置(ASR)は、安定性を確保するために比例器のみで構成することが望ましい。
【0051】
実施形態3.
上述の実施の形態では特に示さなかったが、圧延板8の先端部分は製品として用いることができないのは明らかである。そこで、圧延板8の先端部分を切断するため、また、圧延板8を適当な長さで切断するための走間切断装置をピンチローラ6とコイラ部7との間に設けてもよい。
【0052】
実施例1.
上述の第1の実施の形態で説明したシステムを、次に示す表1のそれぞれの値に基づいてシミュレーションした。
【0053】
【表1】
Figure 0003580282
【0054】
図7は表1に基づいてシミュレートした結果を表す図である。第1の実施の形態で説明した図5と比較すると張力振動が全く発生していない。また、張力制御開始後、約1秒で応答よく張力目標が達成できている。したがって、安定した張力制御ができているといえる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本願に係る発明によれば、冷却装置の仕上圧延装置側とは反対側に、冷却装置に直近させてピンチローラを配置したので、冷却装置にできるだけ近い位置で圧延板の速度制御を応答よく行える状態にし、たとえ、高水圧、高流量の水等を圧延板に吹き付けて冷却させる、冷却能力が高い冷却装置を用いたとしても、冷却装置内での圧延板速度低下を防ぐことができ、冷却装置内での圧延板の詰まりを防ぐことができる。特に圧延板の先端部分を最先に挟める位置にピンチローラを設けているので、圧延板の速度維持状態を確保した後に、冷却を開始する構成の場合には、短時間で速度維持状態を確保でき、製品として用いることができない圧延板の未冷却部分の距離を短くすることができ、歩留まり低下を防ぐことができる。
【0056】
また、このような構成を採ったことにより、冷却能力が高い冷却装置が有効に使えるようになるので、冷却に必要な時間が短くなり、その分、冷却装置、ランナウトテーブルの距離が短くなることにより、設備面積を小さくすることができ、建設費用を削減することができる。しかも、圧延板材料が再結晶できないほどの急激な冷却を行うことができるので、強度が高い圧延板を得ることができる。
【0057】
さらに、ピンチローラの複数のロールを、それぞれ独立したモータにより、独立した速度制御で駆動させるようにしたので、それぞれのローラの周における速度を細かく制御しながら圧延板に接触させることができ、擦り疵、焼き疵、ネッキング等を発生させずにすみ、高歩留まりの圧延板を得ることができる。
【0058】
また、本出願に係る発明によれば、ロールとモータとの間を減速機を設けずに軸直結するようにしたので、ロールとモータとの系による慣性の大きさを小さくすることができ、圧延板速度維持のために圧延板の張力を制御しようとする際に、応答よく圧延板に加える力を伝達することができる。また、周における速度と圧延板の速度との差の修正を応答よくできるので、速度差により生じる擦り疵、焼き疵、ネッキング等を発生させずにすみ、高歩留まりの圧延板を得ることができる。
【0059】
また、本出願に係る発明によれば、慣性の大きさが同じになるように、ロール及びモータの組み合わせをそれぞれ構成し、また、ロールの周における速度及び圧延板に加える力の大きさが同じになるように速度制御するようにしたので、圧延板の張力の制御がしやすくなる。また、応答の違い等による周における速度と圧延板の速度と速度差により生じる擦り疵、焼き疵、ネッキング等の発生を抑えることができるので、高歩留まりの圧延板を得ることができる。
【0060】
また、本出願に係る発明によれば、複数のロールの直径をそれぞれ0.5m未満にしたので、ロールの慣性モーメントを小さくすることができ、モータとロールとによる系全体としても慣性を小さくすることができ、圧延板の張力を制御しようとする際に、応答よく圧延板に加える力を伝達することができる。また、周における速度と圧延板の速度との差の修正を応答よくできるので、速度差により生じる擦り疵、焼き疵、ネッキング等を発生させずにすみ、高歩留まりの圧延板を得ることができる。
【0061】
また、本出願に係る発明によれば、複数のロールにより圧延板を押し付ける力を油圧により伝達するようにしたので、押し付け開始時のような急激な押し付け力を最もはやく、応答よく圧延板に加えることができる。そのため、周における速度と圧延板の速度と速度差により生じる擦り疵、焼き疵、ネッキング等の発生を抑えることができるので、高歩留まりの圧延板を得ることができる。
【0062】
また、本出願に係る発明によれば、待機状態における複数のロールの周における速度を、圧延板が搬送される速度よりも高い速度にしておくようにしたので、圧延板の張力制御開始時において、圧延板に生じているたるみを除くことができる。
【0063】
また、本出願に係る発明によれば、張力検出手段がモータに供給される電流量に基づいて圧延板の張力を検出し、張力制御手段がそれらに基づいて指示速度を算出し、ロール速度制御手段が指示速度に基づいた量の電流をモータに供給し、圧延板の張力を一定にするようなローラの周における速度でローラを回転させることにより、速度制御を行うようにしたので、例えば、冷却装置、ランナウトテーブルの距離が短くなることにより起こり得る張力振動を起こさないようにしつつ、素速く安定した圧延板速度の維持を図ることができる。
【0064】
また、圧延板基準速度をデータとして含めて算出した指示速度に基づいてロール速度制御手段がローラを回転させているので、圧延板の尾端部分が仕上圧延装置を通過した時、破断した時等においてもロール回転の暴走を防止することができる。
【0065】
また、本出願に係る発明によれば、ローラの周における速度の上限値を圧延板の張力が2kg/mmを越えない値にするようにしたので、押し付け開始時も含め、ネッキングを発生させずにすみ、製品の歩留まり低下を防ぐことができる。また、この程度の速度値であれば擦り疵も焼き付きも生じない。
【0066】
また、本出願に係る発明によれば、複数のロールにより圧延板を押し付ける力は、目標とする圧延板の張力、摩擦係数及び圧延板の断面積に基づいて設定するようにしたので、これらのパラメータにより算出される値より大きな力で押し付けることでスリップを防止し、スリップにより発生する擦り疵やロール疵を防ぐことができる。
【0067】
また、本出願に係る発明によれば、ランナウトテーブル区間において、複数のロールを、冷却装置の巻取装置側に、冷却装置に直近させて配置し、冷却装置を通過した圧延板の先端部分に押し付けて圧延板を送り出させ、仕上圧延装置とピンチローラとの間における圧延板の張力が、あらかじめ定めた目標の張力に維持されるように各ロールのそれぞれの周における速度の制御を開始すると同時に、冷却装置から高水圧、高水流の液体を圧延板に吹き付けて冷却を開始するようにしたので、高水圧、高水流の冷却能力の高い冷却装置でも、冷却装置内の圧延板速度低下を防ぐことができ、冷却装置内での圧延板の詰まりを防ぐことができる。特にこの場合、圧延板の先端部分が通過してから冷却を行うことになるので、先端部分を詰まらせてしまうという最悪の事態を防ぐことができる。また、冷却能力が高い冷却装置が有効に使えるようになるので、冷却に必要な時間が短くなり、その分、冷却装置、ランナウトテーブルの距離が短くなることにより、設備面積を小さくすることができ、建設費用を削減することができる。しかも、圧延板材料が再結晶できないほどの急激な冷却を行うことができるので、強度が高い圧延板を得ることができる。
【0068】
また、本出願に係る発明によれば、できるだけ短い時間で目標の張力維持を達成できることを優先して張力を制御するようにしたので、圧延板において、製品として用いることができない未冷却部分の発生距離、擦り疵、ロール疵等の発生距離を短くすることができ、歩留まり低下を防ぐことができる。
【0069】
また、本出願に係る発明によれば、各ロールによる押し付けを開始した時に、張力がオーバーシュートしないようにした上で、できるだけ短い時間で目標の張力維持を達成できるように張力を制御するようにしたので、張力維持までの時間を最優先させようとする制御に比べると多少時間がかかるものの、過張力によるネッキングの発生を抑えながら未冷却部分の発生距離、擦り疵、ロール疵等の発生距離を短くすることができ、歩留まり低下を防ぐことができる。
【0070】
また、本出願に係る発明によれば、圧延材を粗圧延し、また仕上げ圧延した圧延板を、設定温度範囲内に冷却し、巻き取る場合に、圧延板が少なくとも仕上圧延された時の速度を維持しながら冷却装置を通過できる状態に制御されたと判断すると、冷却装置による冷却を開始するようにしたので、低水圧、低流量の冷却装置での冷却はもちろん、高水圧、高流量の水等を圧延板に吹き付けて冷却させる冷却装置の場合でも、冷却装置内での圧延板速度低下を防ぐことができ、冷却装置内での圧延板の詰まりを防ぐことができる。特にこの場合、圧延板の先端部分が通過してから冷却を行うことになるので、先端部分を詰まらせてしまうという最悪の事態を防ぐことができる。また、これにより高水圧、高流量の水等を圧延板に吹き付けて冷却させる、冷却能力が高い冷却装置が有効に使えるようになるので、冷却に必要な時間が短くなり、その分、冷却装置、ランナウトテーブルの距離が短くなることにより、設備面積を小さくすることができ、建設費用を削減することができる。しかも、圧延板材料が再結晶できないほどの急激な冷却を行うことができるので、強度が高い圧延板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る方法を適用する熱延システムの一例を表す図である。
【図2】張力制御を行うための構成を表すブロック図である。
【図3】減速機付きピンチローラと軸直結型ピンチローラとの張力変動推移を表すシミュレーション結果を表す図である。
【図4】仕上圧延装置5とピンチローラ6との間で走行する圧延板8による振動系モデルを表す図である。
【図5】張力振動制御を伴わない場合の張力の推移を表す図である。
【図6】図2で示した張力制御を行う構成の制御機能を制御ブロックで表した図である。
【図7】表1に基づいてシミュレートした結果を表す図である。
【図8】熱間圧延システムおける従来のランナウトテーブルを表す図である。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 粗圧延装置
3 誘導加熱装置
4 仕上圧延装置
5 冷却バンク
6 ピンチローラ
6A 上側ピンチロール
6B 下側ピンチロール
7 コイラ部
8 圧延板
61A 上側モータ
61B 下側モータ
62 油圧シリンダ
100A 張力制御手段
100B 張力検出手段
100C 上側ロール速度制御手段
100D 下側ロール速度制御手段

Claims (13)

  1. 熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、
    回転する複数のロールで前記圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、前記冷却装置の前記仕上圧延装置側とは反対側に、前記冷却装置に直近させて配置し、
    前記ピンチローラの複数のロールを、それぞれ独立したモータにより、独立した周速度制御で駆動させることを特徴とする熱間圧延システム。
  2. それぞれの前記ロールと前記モータとの間を、減速機を設けずに軸直結することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延システム。
  3. 慣性の大きさが同じになるように、前記ロール及び前記モータによる系の組み合わせをそれぞれ構成し、また、前記ロールの周における速度及び前記圧延板に加える力の大きさが同じになるように前記周速度制御することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延システム。
  4. 熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、
    回転する複数のロールで前記圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、前記冷却装置の前記仕上圧延装置側とは反対側に、前記冷却装置に直近させて配置し、
    前記複数のロールの直径をそれぞれ0.5m未満にすることを特徴とする熱間圧延システム。
  5. 熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、
    回転する複数のロールで前記圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、前記冷却装置の前記仕上圧延装置側とは反対側に、前記冷却装置に直近させて配置し、
    前記複数のロールにより前記圧延板を押し付ける力を、油圧により伝達することを特徴とする熱間圧延システム。
  6. 熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、
    回転する複数のロールで前記圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、前記冷却装置の前記仕上圧延装置側とは反対側に、前記冷却装置に直近させて配置し、
    前記前記圧延板を押し付ける前の待機状態における前記複数のロールの周における速度を、前記圧延板の搬送速度よりも高い速度にしておくことを特徴とする熱間圧延システム。
  7. 前記速度制御は、
    前記モータに供給される電流量に基づいて前記圧延板の張力を検出する張力検出手段と、
    該張力検出手段が検出した前記圧延板の張力のデータとあらかじめ定められた張力目標値データとの偏差に基づいて速度変更量を算出し、あらかじめ定められた圧延板基準速度に加えた速度を指示速度として算出する張力制御手段と、
    該張力検出手段が算出した指示速度に基づいた量の電流を前記モータに供給し、前記ローラの周における速度を制御しつつ回転させるロール速度制御手段と
    により行われることを特徴とする請求項1記載の熱間圧延システム。
  8. 前記ローラの周における速度の上限値は、前記圧延板の張力が2kg/mm2 を越えない値にすることを特徴とする請求項6又は7記載の熱間圧延システム。
  9. 熱間圧延システム内で、圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げる仕上圧延装置と、該仕上圧延装置を通過した圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を設けた熱間圧延システムにおいて、
    回転する複数のロールで前記圧延板を挟み、押し付けて送り出すピンチローラを、前記冷却装置の前記仕上圧延装置側とは反対側に、前記冷却装置に直近させて配置し、
    前記複数のロールにより前記圧延板を押し付ける力は、目標とする前記圧延板の張力、摩擦係数及び前記圧延板の断面積に基づいて設定することを特徴とする熱間圧延システム。
  10. 圧延対象である圧延板を最終板厚に仕上げ、あらかじめ定めた搬送速度で送り出す仕上圧延装置と、前記圧延板を巻き取る巻取装置との間にあって、前記仕上圧延装置から送り出された圧延板を設定温度範囲内に冷却する冷却装置を備えた熱間圧延システムのランナウトテーブル区間において、前記冷却装置による前記圧延板の冷却を開始する際、
    待機状態の周における速度が前記搬送速度よりも高速である複数のロールを、前記冷却装置の前記巻取装置側に、前記冷却装置に直近させて配置したピンチローラの前記各ロールを、前記冷却装置を通過した前記圧延板の先端部分に押し付けて前記圧延板を送り出させる工程と、
    前記仕上げ圧延装置と前記ピンチローラとの間における前記圧延板の張力が、あらかじめ定めた目標の張力に維持されるように前記各ロールのそれぞれの周における速度の制御を開始すると同時に、前記冷却装置から高水圧、高水流の液体を前記圧延板に吹き付けて冷却を開始する工程と
    を有することを特徴とするランナウトテーブル通板方法。
  11. できるだけ短い時間で前記目標の張力維持を達成できるように、前記張力を制御することを特徴とする請求項10記載のランナウトテーブル通板方法。
  12. 前記各ロールによる押し付けを開始した時に、前記張力がオーバーシュートしないようにした上で、できるだけ短い時間で前記目標の張力維持を達成できるように、前記張力を制御することを特徴とする請求項10記載のランナウトテーブル通板方法。
  13. 圧延対象である圧延材を粗圧延する工程と、
    粗圧延した圧延材を圧延板に仕上げ圧延する工程と
    冷却装置により前記圧延板を設定温度範囲内に冷却する工程と、
    前記圧延板を巻き取る工程と
    を少なくとも有する圧延材の製造方法において、前記圧延板を冷却する工程では、
    前記圧延板が少なくとも前記仕上圧延された時の速度を維持しながら前記冷却装置を通過できる状態に制御されたと判断すると、前記冷却装置による冷却を開始することを特徴とする圧延板の製造方法。
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