JP3579582B2 - ストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法及びその装置 - Google Patents
ストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法及びその装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼、普通鋼等からなるストリップにめっき、コーティング、ラミネート、焼き戻し等の連続処理を行う際、ストリップを巻き取るのに使用されるストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯等のストリップに連続処理を施す際に、このストリップに発生する張力変動は、連続処理ラインにおけるストリップの通板性や、ストリップの表面性状(しわ、汚れ等)、トリム、スリット加工での寸法精度、及び形状に大きな影響を与える因子である。
特に、連続処理ラインの端部に設けられたストリップ巻取機のリールに所定量のストリップを巻き付けた後、これを次のリールに切り換える際には、連続処理におけるストリップの張力が大きく変動することになる。
従来、このようなストリップにかかる張力変動を抑制するために、例えば以下の▲1▼〜▲4▼に示すような方法や装置が提案されている。
▲1▼ロール制御方式は、ストリップの連続処理を行う連続処理部での張力を、連続処理部の入側と出側にそれぞれ設けた入側ロール送り装置と出側ロール送り装置とによって制御する一般的な方式である。
▲2▼ダンサーロール方式は、前記連続処理部と前記出側ロール送り装置との間に、上下に移動できるダンサーロールを設け、ダンサーロールの位置を調整して、ダンサーロールにかかるトルクとストリップにかかる張力とを釣り合わせて、張力変動を抑制、制御する方式である。
▲3▼フリーループ方式は、前記連続処理部と前記出側ロール送り装置との間に、ストリップを弛ませることのできるフリーループ部を設置して、ストリップにかかる張力変動をフリーループの深さの変動により吸収し遮断する方式である。
▲4▼特公昭62−48731号公報に示されるストリップ張力制御装置は、ストリップを巻掛けてこれを所定方向に搬送する複数組のブライドルロールを、それぞれに電源装置を有する複数の駆動電動機によって個々に駆動すると共に、上記複数のブライドルロール間に張力検出器を設け、上記両駆動電動機のそれぞれの速度調節装置に対し、個々に張力制御信号を入力してストリップの急峻な張力変動を防止するようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の▲1▼〜▲4▼に示す方法、装置ではストリップの張力変動に対して以下のような問題があった。
前記▲1▼ロール制御方式は、シャーカット及びリール巻き付けの際に、この張力変動が直接的に連続処理装置内のストリップに波及するために、急激な張力変動を両ロールに付加するトルクによって短時間で調整することが困難である。
▲2▼ダンサーロール方式では、張力変動をダンサーロールの位置変動として吸収して抑制しようとするが、ダンサーロールの慣性力やストリップの弾性歪み、ロールとストリップ間の滑りなどの要素が互いに干渉しあって張力変動を安定的に抑制、制御することが困難であった。さらに、過大な張力変動に対してはダンサーロールが追随しきらず破損することもあった。
▲3▼フリーループ方式は、張力変動をフリーループの深さ変動として抑制し、張力変動の影響を遮断するものであるが、フリーループが存在することでストリップが無拘束状態となるため、通板材(ストリップ)の蛇行やばたつき等の通板性そのものが阻害される要因となっていた。
▲4▼特公昭62−48731号公報に示される装置は、複数のブライドルロールを、各ブライドルロール間に配置された張力検出器からの信号に基づいて個々に制御するので、各ブライドルロールの制御操作が互いに干渉しあって、張力変動を逆に増幅させたり、振動させたりして安定して制御することが困難となる場合があった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ストリップ巻取機のリール切替時における張力変動を逓減して連続処理装置への張力変動の伝搬を効果的に防止することのできるストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法は、めっき、コーティング、焼き戻し等の連続処理を行ったストリップを、該ストリップの連続処理を行うストリップ連続処理装置の出側に設けられた第1のロール送り装置と第2のロール送り装置とに順次巻掛けて搬送し、搬送ラインの端部に配置されたストリップ巻取機のリールで所定量を巻き取った後、該ストリップを切断して次のリールに交換する際、前記ストリップ連続処理装置内のストリップに発生する張力変動を抑制するストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法であって、前記第1のロール送り装置をリール切替前の通常運転状態に維持すると共に、前記第1のロール送り装置と前記第2のロール送り装置との間で測定される前記ストリップのロール間張力を、該第2のロール送り装置に付加するロール速度を調整して規定張力値の範囲に維持する。
【0006】
請求項2記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置は、めっき、コーティング、焼き戻し等の連続処理を行うストリップ連続処理装置と、該ストリップ連続処理装置の出側に順次設けられた第1のロール送り装置と、第2のロール送り装置、及び搬送ラインの端部に配置されたストリップ巻取機とを有するストリップ連続処理ラインのストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置であって、リール切替前の通常運転状態に前記第1のロール送り装置を調整する第1のロール駆動制御装置と、前記第1のロール送り装置と前記第2のロール送り装置との間に設けられ、前記ストリップにかかるロール間張力を検出する張力検出器と、前記第2のロール送り装置に付加するロール速度を調整して前記ロール間張力を規定張力値に制御する第2のロール駆動制御装置とを有する。
請求項3記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置は、請求項2記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置において、前記第1及び第2のロール送り装置は、モータによって駆動される複数のブライドルロールと、前記ストリップを該ブライドルロールとの間で押圧しながら回転して摩擦によるグリップ力を付加する押さえロールとを有している。
【0007】
ストリップの連続処理においては、ストリップ搬送ラインの後端部に配置したストリップ巻取機を用いて所定長さ分のストリップをリールに巻き取ると、このストリップを走行状態のまま切断して、切断された後部のストリップの先端部を準備した次のリールに誘導して再度巻き取るリール切替の操作が行われる。このリール切替の際、発生した過大な張力変動が後部のストリップの下流側に伝搬して、ストリップ連続処理装置内での連続処理の際に、ストリップの通板性や、表面性状等に悪影響を与えることになる。本発明においては、前述のような構成とすることによりこのような張力変動の伝搬を効果的に抑制して、通板性を良好に維持させると共に、表面欠陥等の少ない品質に優れたストリップを得ることができるようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに図1は本発明の一実施の形態に係るストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法を適用するストリップ連続処理ラインの説明図、図2は同ストリップ連続処理ラインの一部拡大図、図3はリール切替時における張力の変化を示した模式図、図4はストリップ連続処理ラインにおける張力分布図である。
【0009】
本発明の一実施の形態に係るストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法を適用するストリップ連続処理ライン10は図1に示すように、ストリップ連続処理装置の一例であるめっき処理装置11と、めっき処理装置11の出側に設けられ、ストリップ12を搬送するための第1のロール送り装置13及び第2のロール送り装置14と、搬送ラインの端部に配置されストリップ12を巻き取るためのリール15を駆動させるためのストリップ巻取機16と、めっき処理装置11の入側に設けられた第3のロール送り装置17と、リール15に巻き取られたストリップ12をその走行状態で切断するための切断機18と、切断された後部のストリップの先端部を磁力により捕捉して待機している次のリール19に誘導するためのベルト誘導装置20と、特にリール切替時における張力変動を抑制するための張力変動抑制装置30とを有している。なお、図1は各装置の相互の配置構成を示すものであり、個々の装置の実際の大きさに対応するものではない。
【0010】
前記張力変動制御装置30は、第1のロール送り装置13をモータを用いて駆動させるための駆動装置31と、駆動装置31をリール切替前の通常運転時の状態に制御するための第1のロール駆動制御装置32と、第1のロール送り装置13及び第2のロール送り装置14との間に設けられ、ストリップ12に付加されるロール間張力を検出するための張力検出器33と、第2のロール送り装置14をモータを用いて駆動するための駆動装置34と、駆動装置34によって第2のロール送り装置14に付加されるロール速度を調整してロール間張力を規定張力値に制御するための第2のロール駆動制御装置35と、第3のロール送り装置17をモータ駆動する駆動装置36と、駆動装置36を制御してストリップ12を所定の通板張力に保持させるための第3のロール駆動制御装置37とを有して構成されている。
そして、図1及び図2に示すように第1〜第3のロール送り装置13、14、17はそれぞれ複数個のブライドルロール13a、14a、17aを組み合わせて構成されている。
なお、張力検出器33には、図2に示すように互いに弾性的に支持された複数のロール33aで構成され、ストリップ12を介してロール33aに設置したロードセル等のセンサーを用いる方式のものを適用できる。
【0011】
続いて、前記ストリップ連続処理ライン10に適用する本発明の一実施の形態に係るストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法につい説明する。
図1において▲1▼第3のロール送り装置17とめっき処理装置11との間、▲2▼めっき処理装置11と第1のロール送り装置13との間、▲3▼張力検出器33により測定される第1のロール送り装置13と第2のロール送り装置14との間、及び▲4▼ストリップ巻取機16と第2のロール送り装置14との間のストリップ12に作用する張力をそれぞれ▲1▼T1 (処理装置入側張力)、▲2▼T2 (処理装置出側張力)、▲3▼T3 (ロール間張力)、▲4▼T4 (リール張力)としている。なお、第3のロール送り装置17の上流側における張力をT0 とする。
そして、このようなストリップ12の全体を支配する張力制御系(T0 、T1 、T2 、T3 、T4 )は、第3、第1、第2のロール送り装置17、13、14及びめっき処理装置11でのそれぞれのロール回転速度V1 、V2 、V3 、V4 と、ストリップ12のヤング率E、断面積Aと、各装置間等にあるストリップ12の長さLとの関数として記述することができる。
【0012】
例えば、めっき処理装置11の中央部と第3のロール送り装置17との間にあるストリップ12の長さをL1 、めっき処理装置11の中央部と第1のロール送り装置13との間にあるストリップ12の長さをL2 、第1及び第2のロール送り装置13、14間にあるストリップ12の長さをL3 としたとき、前記T1 〜T3 は、以下の張力制御系のモデル式(1)〜(3)によって表すことが可能である。
【0013】
T3 =T4 ・V3 /(V2 (1+τ3 ・s))+T2 ・V3 /(V2 (1+τ3 ・s))+(V3 −V2 )・AE/(V3 (1+τ3 ・s))・・・(1)
但し、τ3 =(1+T3 /AE)・L3 /V3 である。
T2 =T3 ・V2 /(V4 (1+τ2 ・s))+T1 ・V2 /(V4 (1+τ2 ・s))+(V2 −V4 )・AE/(V2 (1+τ2 ・s))・・・(2)
但し、τ2 =(1+T2 /AE)・L2 /V2 である。
T1 =T2 ・V4 /(V1 (1+τ1 ・s))+T0 ・V4 /(V1 (1+τ1 ・s))+(V4 −V1 )・AE/(V4 (1+τ1 ・s))・・・(3)
但し、τ1 =(1+T1 /AE)・L1 /V1 である。
なお、sは時間tに関する微分演算子(d/dt)を形式的に記号(s)に置き換えたものである。
(1)〜(3)式の第1項及び第2項はそれぞれ出側及び入側での張力の影響要素を、第3項は入出側速度の影響要素を表している。また、前記τ1 〜τ3 は各制御要素における時定数を示している。
【0014】
なお、前記張力制御系のモデルは前提条件等によって、変わり得るものであり、本発明は必ずしも上記のような数式モデルの例に限定されるものではなく、他の数式モデルあるいは物理モデルを適用することも可能である。
【0015】
リール切替の際には、切断機18を用いてストリップ12がカットされて、リール張力T4 がそれまでの通常運転時の値から瞬間的に零に減少し、過大な張力変動が生じる。そして、(1)式で表されるロール間張力T3 に、この張力変動がまず伝搬することになる。従って、この張力変動が処理装置出側張力T2 に波及する前に、ロール間張力T3 を張力検出器33で測定して、これを制御することによって処理装置出側張力T2 の張力変動を抑制することができる。
なお、処理装置出側張力T2 にロール間張力T3 の変動が伝搬する時間は、この張力制御系が(2)式のような時定数τ2 を有する時間遅れ系であるため、この間でのストリップ12の長さL3 が増加する程、長くなることになる。
こうして、めっき処理装置11内での張力の変動を効果的に抑制して、品質特性に優れたストリップ12をリール15に巻き取ることができ、しかも、フリーループを使用する場合のように、ストリップ12の自由運動する部分がないので、ストリップ12の搬送走行中のばたつきや蛇行運動が防止できる。
【0016】
なお、処理装置出側張力T2 が変動するような場合には、この張力変動が更に処理装置入側張力T1 へと伝搬することになる。しかし、第1のロール送り装置13を、第1のロール駆動制御装置32を用いてリール切替前の通常運転時の状態を保持させることにより、即ち張力変動抑制装置30を作動させて、処理装置出側張力T2 が一定となるようにして、さらに効果的にめっき処理装置11内のストリップ12の張力変動を抑制できる。
以上説明したように、張力変動抑制装置30によって制御されるこのような全体の張力制御系は、例えば(1)、(2)、(3)式を用いる相互の関係として示される。本発明においては、ロール間張力T3 を測定して、これを予め定められた所定の基準値に制御して、ストリップ12に生じる張力変動の上流側への伝搬を阻止すると共に、処理装置出側張力T2 を通常運転時の状態に保持させて、めっき処理装置11内のストリップ12にかかる張力変動を効果的に抑制することができる。
【0017】
【実施例】
以下の実施例では、ストリップ連続処理ライン10のストリップ12の各張力の時間変化を示す図3を参照しながら更に具体的に説明する。
なお図2に示すロール駆動系は、第1のロール送り装置13を3個のブライドルロール13aと2個の押さえロール13bとで構成し、第2のロール送り装置14を4個のブライドルロール14aと3個の押さえロール14bとで構成して、その中間位置に張力検出器33を配置したものである。
ストリップ連続処理ライン10の通常運転期間においては、ストリップ12を所定の移動速度、例えば190〜200m/分で搬送するために、前記第1〜第3のロール送り装置13、14、17、及びストリップ巻取機16の運転状態を各装置に備えられた駆動装置及びロール駆動制御装置を用いて、それぞれに定められた所定のトルク値等に調整する。この結果、通常運転期間(図3の最初から0.5秒までの期間)では、T1 =75%、T2 =100%、T3 =50%、T4 =50%のレベルに各張力が維持された状態となっている。
なお、ここでは通常運転期間における処理装置出側張力T2 を基準値(100%)として、その他の張力の値を表示している。
【0018】
リール切替期間の初期(シャーカットの直後)においては、図1に示すように切断機18を用いて、所定量のストリップが巻き取られた時点でストリップ12を切断する。そして、図3に示すようにリール張力T4 が急激にそれまでの値(50%)から零に下降して、ロール間張力T3 がこれに伴って減少する。
このロール間張力T3 が張力検出器33によって検出され、予めリール切替時に設定された基準値Ta との差分(T3 −Ta )が第2のロール駆動制御装置35に入力される。そして、この差分に応じて第2のロール送り装置14が制御され、ブライドルロール14aを駆動させるモータ38のトルク又はロール速度が所定の値に維持され、ロール間張力T3 を図3に示すように約1.25秒後には元の張力値(50%)に復帰できる。
このように短時間でロール間張力T3 を復帰させることができるので、この間での処理装置入側張力T1 、処理装置出側張力T2 の変動を必要最少限度に留めることができる。さらに、めっき処理装置11の出側に設けられた第1のロール送り装置13がリール切替前の通常運転時の状態に制御されているので、たとえロール間張力T3 の変動が限度を超えて大きくなったとしても、この変動の影響を第1のロール送り装置13の部分で確実に阻止することができる。
このため、次のリール19に交換されるまでの過渡状態の期間にも、図3に示すように、処理装置入側張力T1 と処理装置出側張力T2 とで規定されるめっき処理装置11内のストリップ12にかかる張力変動を最少限度に抑制することができる。
【0019】
図1に示すように、ストリップ巻取機16側とその後部側とに切断された後部ストリップの先端部をベルト誘導装置20が捕捉して、次に準備されたリール19へのストリップ12の巻き付けが始まる瞬間(図3の時刻3秒の時点)には、リール張力T4 が零の状態から急激に増加することになる。そして、直上流側のロール間張力T3 もこれに伴って増大するが、この時も基準値Ta に維持するように第2のロール駆動制御装置35が働いて、第2のロール送り装置14が制御されるようになっている。
このようにしてロール間張力T3 をリール巻き付けが始まってから約1.5秒後には元の状態(50%のレベル)に復帰させることができる。このリール巻き付け時における張力変動の影響を最少限度の範囲に留めることができ、さらに第1のロール送り装置13のトルクがリール切替前の状態に維持されるようになっているので、結果として処理装置入側張力T1 と処理装置出側張力T2 の変動が少ない範囲に抑制される。
【0020】
以上説明した本発明に対して、ストリップ連続処理装置の出側に設けられた2台のロール送り装置を、それらの中間位置で測定されるストリップの張力値に基づいて個々に制御する従来例の場合には、各ロール送り装置の制御操作が互いに干渉しあうために、張力変動を逆に増幅させたり、振動させたりして、ストリップ搬送速度を安定的に維持させるためのラインマスターとして第1のロール送り装置を機能させることが困難となる。
具体的には、リール切替時にストリップ12が切断されてリール張力T4 が零になると、処理装置入側張力T1 、処理装置出側張力T2 は前記(2)、(3)式の時定数τ2 、τ3 で規定される時間遅れをもってストリップ12が大きく緩む。その後、切り離された後部ストリップの先部がベルト誘導装置20に捕捉されて次のリール19に巻き取られて牽引され、リール張力T4 が増大して、この部分のストリップ12が大きく張られることになる。こうして、図5に示すように処理装置入側張力T1 、処理装置出側張力T2 は時定数τ2 、τ3 に規定される遅れをもって、大きく変動してしまう。
また、このような張力変動の伝搬現象はストリップ巻取機16側に近い位置になる程、伝搬の時定数が小さくなる。さらに、2機の制御装置を同一の信号に基づいて制御しているので張力制御系が共振して、制御の安定性が減少することになる。
【0021】
本発明による張力変動抑制方法では、図3に示すようにリール切替時のシャーカットによりリール張力T4 が零となって、(1)式に従ってロール間張力T3 が減少すると、張力変動抑制装置30を用いて、この張力変動を吸収、制御できる。このシャーカットの影響を受けて、処理装置入側張力T1 、処理装置出側張力T2 は(2)、(3)式に従って減少するが、ロール間張力T3 を制御する応答時間が速いために大きなストリップ12の緩みは発生しない。
次のリール19の巻き付け時にはストリップ12が再び引かれて、リール張力T4 が大きくなると共に、ロール間張力T3 も大きくなる。これを張力検出器33によって検出する。そして、張力変動制御装置30の第2のロール駆動制御装置35によって第2のロール送り装置14を制御し、張力変動を吸収することができる。ここで吸収しきれなかった残余の張力変動が、めっき処理装置11内のストリップ12に伝搬するが、これには時間遅れがあり、かつロール間張力T3 の復帰動作が素速く行われるので、めっき処理装置11内のストリップ12に大きな張力変動が波及するのを防ぐことができる。
【0022】
このような効果を発揮させるための第2のロール送り装置14と第1のロール送り装置13の最適な設備仕様を決定するための方法を以下に述べる。
各ロールとストリップとの間で滑りを生じさせないための、ロール送り装置のグリップ力(exp(μ・θ))とストリップにかかる張力との関係は以下に示す(4)、(7)の不等式により規定され、これを満足するストリップ12の全体にわたる張力マップ(張力分布図)は図4に示すようになる。図4において横軸はストリップ連続処理ライン10の長さに相当し、縦軸は各張力の相対値を示している。
なお、μはロールとストリップ間の摩擦係数、θはロールとストリップとの巻き付け角度を表しており、Σθ3 及びΣθ4 は第1、第2のロール送り装置13、14のロール巻き付き角度のそれぞれの総和に対応し、P31、P41は第1及び第2のロール送り装置13、14にそれぞれ設けられた押さえロール13b、14bにより付加されるそれぞれの押圧力を示している。
【0023】
さらに、図4に示すように各ロール送り装置13、14の張力条件(T3 、T4min、T2min、T3min)を用いて各ロール送り装置13、14間の最大張力差ΔT4 、ΔT3 が(5)、(8)式によって決定される。ここで張力Tの添字(min)はそれぞれの最小値を意味している。
そして、(4)、(7)の不等式を満足する第2及び第1のロール送り装置14、13にそれぞれ対応する全ロール巻き付け角度Σθ4 、Σθ3 を、各ブライドルロール14a、13aの配置及びそれぞれのロール本数から設定して、(5)、(8)式から求めたΔT4 、ΔT3 を、(6)、(9)式に代入して、各ブライドルロール駆動系の張力容量(ΣM4 、ΣM3 )を決定することができる。なお、ΣM3 、ΣM4 は、それぞれ駆動装置31、34における各モータ38の容量の総和に等しくなる。
【0024】
但し、T40=μ・P41である。
但し、T30=μ・P31である。
但し、ηは駆動系の効率である。
【0025】
このようにブライドルロール13a、14aにそれぞれ押さえロール13b、14bを適用すれば、第1及び第2のロール送り装置13、14のグリップ力を効果的に高めると共に、より精密に制御することが容易になる。
また、第1のロール送り装置13を、リール切替時の張力変動がめっき処理装置11に伝搬するのを抑制するためのラインマスターとして機能させ、リール切替前の通常運転時のトルク状態に保持させることも可能となる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。例えば、本発明においては、特定個数のブライドルロール及び押さえロールを特定の状態に配置して第1及び第2のロール送り装置を構成したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、各ロールの配置、個数等を適宜、変更して用いることができる。
さらに、本発明はめっき処理装置のみならず、連続的にストリップを処理する熱処理装置やコーティング装置、焼き戻し装置等に適用できる。
【0027】
【発明の効果】
請求項1記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法においては、第1のロール送り装置をリール切替前の通常運転状態に維持するので、ロール間張力が仮に大きく変動しても、これを単独で制御して、このような張力制御系の制御特性に起因して発生する振動などを効果的に防止できる。さらに、第1のロール送り装置と第2のロール送り装置との間で測定されるストリップのロール間張力を、第2のロール送り装置に付加するロール速度を調整して規定張力値の範囲に維持するので、リール切替時に生じるストリップ巻取機側から伝搬する張力変動を効果的に抑制することができる。
【0028】
請求項2及び3記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置においては、リール切替前の通常運転状態に第1のロール送り装置を調整する第1のロール駆動制御装置を有するので、ストリップ下流側のロール間張力が大きく変動しても、その他の制御系への影響を最少限度とした状態で単独に制御を行うことができる。このため、制御系同士の干渉による有害な振動を防止することができる。さらに、ロール間張力を検出する張力検出器と、第2のロール送り装置に付加するロール速度を調整してロール間張力を規定張力値に制御する第2のロール駆動制御装置とを有するので、リール切替時に生じるストリップ巻取機側から伝搬する張力変動を第2のロール送り装置を制御することにより効果的に抑制できる。
特に、請求項3記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置においては、モータによって駆動される複数のブライドルロールと、ストリップをブライドルロールとの間で押圧しながら回転して摩擦によるグリップ力を付加する押さえロールとを有しているので、このような押さえロールを有して構成される張力制御系の時定数を大きくして、リール切替時の制御操作を安定にかつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法を適用するストリップ連続処理ラインの説明図である。
【図2】同ストリップ連続処理ラインの一部拡大図である。
【図3】リール切替時における張力変化の模式図である。
【図4】ストリップ連続処理ラインにおける張力分布図である。
【図5】従来例におけるのリール切替時の張力変化の模式図である。
【符号の説明】
10 ストリップ連続処理ライン
11 めっき処理装置(ストリップ連続処理装置)
12 ストリップ 13 第1のロール送り装置
13a ブライドルロール 13b 押さえロール
14 第2のロール送り装置 14a ブライドルロール
14b 押さえロール 15 リール
16 ストリップ巻取機 17 第3のロール送り装置
17a ブライドルロール 18 切断機
19 リール 20 ベルト誘導装置
30 張力変動抑制装置 31 駆動装置
32 第1のロール駆動制御装置 33 張力検出器
33a ロール 34 駆動装置
35 第2のロール駆動制御装置 36 駆動装置
37 第3のロール駆動制御装置 38 モータ
Claims (3)
- めっき、コーティング、焼き戻し等の連続処理を行ったストリップを、該ストリップの連続処理を行うストリップ連続処理装置の出側に設けられた第1のロール送り装置と第2のロール送り装置とに順次巻掛けて搬送し、搬送ラインの端部に配置されたストリップ巻取機のリールで所定量を巻き取った後、該ストリップを切断して次のリールに交換する際、前記ストリップ連続処理装置内のストリップに発生する張力変動を抑制するストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法であって、
前記第1のロール送り装置をリール切替前の通常運転状態に維持すると共に、前記第1のロール送り装置と前記第2のロール送り装置との間で測定される前記ストリップのロール間張力を、該第2のロール送り装置に付加するロール速度を調整して規定張力値の範囲に維持することを特徴とするストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制方法。 - めっき、コーティング、焼き戻し等の連続処理を行うストリップ連続処理装置と、該ストリップ連続処理装置の出側に順次設けられた第1のロール送り装置と、第2のロール送り装置、及び搬送ラインの端部に配置されたストリップ巻取機とを有するストリップ連続処理ラインのストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置であって、
リール切替前の通常運転状態に前記第1のロール送り装置を調整する第1のロール駆動制御装置と、
前記第1のロール送り装置と前記第2のロール送り装置との間に設けられ、前記ストリップにかかるロール間張力を検出する張力検出器と、
前記第2のロール送り装置に付加するロール速度を調整して前記ロール間張力を規定張力値に制御する第2のロール駆動制御装置とを有することを特徴とするストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置。 - 前記第1及び第2のロール送り装置は、モータによって駆動される複数のブライドルロールと、前記ストリップを該ブライドルロールとの間で押圧しながら回転して摩擦によるグリップ力を付加する押さえロールとを有している請求項2記載のストリップ巻取機のリール切替時における張力変動抑制装置。
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