JP3579151B2 - ポリエステル樹脂組成物およびフィルム - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物及びフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性の熱可塑性樹脂であるポリエステルは、その優れた機械的性質のために、様々な用途に広範に使用されている。しかしながら、ポリエステルは、結晶化速度が遅いので成形性が悪いという欠点がある。
【0003】
そこで、ポリエステルの結晶化速度を改善するために、種々の結晶核剤が添加されている。従来知られている結晶核剤としては、例えば特開平7−126496公報に列挙されており、具体的には、Zn粉末、Al粉末、グラファイト、カーボンブラック等の無機単体;ZnO、MgO、Al2O3、TiO2、MnO2、SiO2、Fe3O4等の金属酸化物;窒化アルミ、窒化珪素、窒化チタン、ボロンナイトライド等の窒化物;Na2CO3、CaCO3、MgCO3、CaSO4、CaSiO3、BaSO4、Ca3(PO4)3等の無機塩;タルク、カオリン、クレー、白土等の粘土類;シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩等の有機塩類;ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子化合物などがある。
【0004】
しかしながら、前記の無機単体、金属酸化物、窒化物、無機塩、粘土類などの無機物は、ポリエステル樹脂に対する分散性が良くないために、これらを結晶核剤に用いたときに、樹脂の機械的強度の低下や外観の悪化がみられるという問題がある。
【0005】
また、有機塩類を結晶核剤に用いたときには、それに含まれる金属によりポリエステル樹脂の劣化が促進される問題がある。
【0006】
また、高分子化合物を結晶核剤に用いたときには、十分な結晶化速度の向上がみられないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の結晶核剤の問題点を解決するためになされたものであり、インフレーション成形やTダイ成形等によるフィルム成形の際に、良好に製膜され、まきとりロールへの融着、フィルムどうしの融着、ブロッキングなどの問題も起こらず簡便に成形加工することができるポリエステル樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなるフィルムを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、これまで公知の結晶核剤にみられる問題点を解決すべく、新規な結晶核剤について鋭意検討を行った結果、マンニット類がポリエステルの結晶化速度の向上に有効であることを見いだした。すなわち、ポリエステルにマンニット類を配合してなるポリエステル樹脂組成物は、結晶化速度が早く成形性に優れることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリエステル(a)に、下記一般式(1)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基もしくはアシル基を示す。)
で表わされるマンニット類を配合してなるポリエステル樹脂組成物である。
【0012】
前記ポリエステル(a)が、脂肪族ポリエステルであることは、生分解性が向上する点で好ましい。
【0013】
また本発明の他の発明は、前記ポリエステル樹脂組成物を成形してなるフィルムである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリエステル(a)としては特に制限はなく、例を挙げれば、エチレングリコールや1,4−ブタンジオール等のジオールとテレフタル酸との重縮合により得られるポリエステルである、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;
エチレングリコールや1,4−ブタンジオール等のジオールと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステルである、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル;
ヒドロキシカルボン酸のポリエステルである、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明のポリエステル(a)は、ポリエステル樹脂組成物に用いられるものであって、その具体的製造方法には特に制限はないが、脂肪族ポリエステルについて、例えば以下の製造方法がある。
【0016】
(i)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法
(ii)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法
(iii)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法
(iv)環状エステルを開環重合する方法
このような脂肪族ポリエステル(a)を得る方法のなかで比較的短い時間で工業的に効率よく製造できる方法として、(iii)の環状酸無水物と環状エーテルとの開環重合を含む工程を有する方法が好ましい。以下、環状酸無水物と環状エーテルの開環重合についてさらに詳しく説明する。
【0017】
(iii)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0018】
これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。
【0019】
環状酸無水物に対し、重合触媒の存在下に、環状エーテルを逐次的に添加することによって、実質的に酸無水物と環状エーテルが交互に開環共重合したポリエステルを短時間で製造することができる。
【0020】
本発明に用いられるマンニット類としては、前記一般式(1)で示される化合物であれば特に限定されず、マンニトールや、マンニトールの6個の水酸基のうちのいくつかがアルキル基でエーテル化もしくはアシル基で置換された化合物などが挙げられる。なお本発明に用いられるマンニット類は、D体、L体、DL体のいずれでもよい。
【0021】
マンニット類は、食品添加物に用いられている化合物であり、微生物分解性が良好であるため、他の結晶核剤に比べ、ポリエステル樹脂組成物の生分解性の向上の効果も有する。さらに、ポリエステル(a)として、生分解性を有するポリエステル、例えば無水コハク酸とエチレンオキシドの開環共重合によって得られるポリエチレンサクシネート等を用いる場合、ポリエステル樹脂組成物の生分解性の向上の点で好ましい。
【0022】
前記マンニット類の配合量は、ポリエステル(a)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。0.01重量部より少ないと結晶核剤としての効果が十分ではなく、また10重量部より多いと経済的に不利である。
【0023】
ポリエステル(a)にマンニット類を配合する方法については特に制限はなく、例えば、二軸押出機中で、ポリエステルとマンニット類を溶融混練する方法や、適当な溶媒に溶解させて混合する方法などがある。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、前記の従来公知の結晶核剤をさらに配合してもよい。また必要に応じて他の成分、例えば顔料、染料、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、他の重合体等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルム成形する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、インフレーション成形やTダイ法等があげられる。
【0026】
なお、本発明におけるフィルムは、その厚みについては特に限定されず、一般的に言われる厚さ0.25mm未満のフィルムおよび厚さ0.25mm以上のシートを含むものである。
【0027】
ポリエステルの結晶化速度は、DSC測定による徐冷結晶化課程での発熱ピークの半値幅より求められる。すなわち、3℃/分の冷却速度で測定した発熱ピークの半値幅が狭いほど、結晶化速度は早いということができる。
【0028】
このDSC測定は、市販の装置、例えばセイコー電子工業社製のSSC5200型等を用いて常法により測定することができる。例えば、窒素雰囲気中で試料約20mgを、ポリエステルの融点以上に加熱して完全に溶融させた後、所定の速度で冷却し、結晶化に伴う発熱ピークを記録することによって行われる。
【0029】
脂肪族ポリエステルについて、このようにしてDSC測定を行うと、3℃/分の冷却速度では結晶化に基づく発熱ピークが10〜200℃の範囲に現れる。しかし、この発熱ピークは、極めて幅広くなるのが普通で、結晶核剤を添加しない場合、通常はそのピークの半値巾は25℃程度であり、このような徐冷結晶化に基づく発熱ピークの半値巾の広い脂肪族ポリエステルは結晶化が遅く、良好な成型品を得ることができない。
【0030】
また従来の結晶核剤では、結晶化速度の向上が不十分であったり、成型品の外観の悪化が見られるといった問題がある。
【0031】
これに対して、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、DSC測定の冷却過程における結晶化に基づく発熱ピークは、3℃/分の冷却速度で高温度側に移行してくるとともに半値巾が、15℃以下の極めて狭い鋭角の発熱ピークとなっている。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。例中の部は特に断りがない限り重量部を示す。
【0033】
ポリエステル樹脂組成物の融点、結晶化温度および発熱ピークの半値幅の測定は、DSC(セイコー電子工業社製 SSC5200型)を用い、窒素雰囲気中で、ポリエステル樹脂組成物約20mgを、融点以上に加熱して完全に溶融させてから、−50℃に急冷した後、6℃/分の速度で昇温し、この時の吸熱ピークを測定することにより融点を求め、さらに引き続き、3℃/分の速度で冷却し、結晶化に伴う発熱ピークを記録することにより、結晶化温度および半値巾を求めた。
【0034】
ポリエステルの数平均分子量は、GPCで求めたポリスチレン換算の分子量である。
【0035】
参考例1(ポリエステルの合成)
オートクレーブに、無水コハク酸500.0部およびオクチル酸ジルコニール4.9部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下にオートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を4.0〜8.5kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン231.1部を1時間あたり58部の添加速度で4時間にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後130℃で1時間熟成反応を行ってから系を常温にもどすことにより、数平均分子量1.3万、DSCによる融点101.2℃の重合生成物を得た。
【0036】
得られた重合生成物70.0部をセルフクリーニング型2軸混練機((株)栗本鉄工所製S1KRCリアクター、内径25mm、L/D=10.2)で窒素気流中、1〜2mmHgの減圧下、100rpm、ジャケット温度240℃の条件で4時間反応させることにより、数平均分子量6.3万のポリエステル(1)を合成した。
【0037】
実施例1
参考例1で合成したポリエステル(1)100部に、D−マンニトール1部を2軸混練機を用いて170℃で5分間混練し、ポリエステル樹脂組成物(2)を得た。
【0038】
DSC測定により求めた、ポリエステル樹脂組成物(2)の融点、結晶化温度、半値巾はそれぞれ、101.4℃、71.7℃、10.6℃であった。
【0039】
得られたポリエステル樹脂組成物(2)を、110℃で溶融、インフレーション成形した。成形時に、まきとりロールへの融着やフィルムどうしのブロッキング等もなく、良好なフィルムを得ることができた。
【0040】
得られたフィルムを、土壌を仕込んだプランター中に埋設し、100日後取り出したところ、フィルムがぼろぼろになっており、また重量減少が見られ、生分解性が認められた。
【0041】
比較例1
参考例1で合成したポリエステル(1)のDSC測定により求めた融点、結晶化温度、半値巾はそれぞれ、101.1℃、33.6℃、24.3℃であり、結晶化速度が遅く、インフレーション成形できなかった。
【0042】
比較例2
参考例1で合成したポリエステル(1)100部に、シュウ酸カルシウム1部を2軸混練機を用いて170℃で5分間混練し、ポリエステル樹脂組成物(3)を得た。
【0043】
DSC測定により求めた、ポリエステル樹脂組成物(3)の融点、結晶化温度、半値巾はそれぞれ、100.2℃、56.1℃、21.2℃であった。
【0044】
得られたポリエステル樹脂組成物(3)は結晶化速度が遅く、フィルム成形できなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、結晶化速度が速く成形性に優れており、インフレーション成形やTダイ成形によるフィルム成形時に、良好に製膜され、まきとりロールへの融着、フィルムどうしの融着、ブロッキングなどの問題も起こらず簡便に成形加工することができる。
【0046】
また本発明のフィルムは、樹脂の機械的強度の低下や外観の悪化等の問題が生じない。さらにポリエステル(a)に脂肪族ポリエステルを用いたフィルムは、生分解性に優れ、使い捨ての包装材料や日用雑貨品に好適に使用できる。
【0047】
本発明の樹脂組成物及びフィルムは、いずれも成形体、繊維、包装材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポリエステル樹脂組成物(2)のDSCのチャート図である。発熱ピークの半値幅の測定のための解析結果もあわせて示した。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物及びフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性の熱可塑性樹脂であるポリエステルは、その優れた機械的性質のために、様々な用途に広範に使用されている。しかしながら、ポリエステルは、結晶化速度が遅いので成形性が悪いという欠点がある。
【0003】
そこで、ポリエステルの結晶化速度を改善するために、種々の結晶核剤が添加されている。従来知られている結晶核剤としては、例えば特開平7−126496公報に列挙されており、具体的には、Zn粉末、Al粉末、グラファイト、カーボンブラック等の無機単体;ZnO、MgO、Al2O3、TiO2、MnO2、SiO2、Fe3O4等の金属酸化物;窒化アルミ、窒化珪素、窒化チタン、ボロンナイトライド等の窒化物;Na2CO3、CaCO3、MgCO3、CaSO4、CaSiO3、BaSO4、Ca3(PO4)3等の無機塩;タルク、カオリン、クレー、白土等の粘土類;シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩等の有機塩類;ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子化合物などがある。
【0004】
しかしながら、前記の無機単体、金属酸化物、窒化物、無機塩、粘土類などの無機物は、ポリエステル樹脂に対する分散性が良くないために、これらを結晶核剤に用いたときに、樹脂の機械的強度の低下や外観の悪化がみられるという問題がある。
【0005】
また、有機塩類を結晶核剤に用いたときには、それに含まれる金属によりポリエステル樹脂の劣化が促進される問題がある。
【0006】
また、高分子化合物を結晶核剤に用いたときには、十分な結晶化速度の向上がみられないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の結晶核剤の問題点を解決するためになされたものであり、インフレーション成形やTダイ成形等によるフィルム成形の際に、良好に製膜され、まきとりロールへの融着、フィルムどうしの融着、ブロッキングなどの問題も起こらず簡便に成形加工することができるポリエステル樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなるフィルムを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、これまで公知の結晶核剤にみられる問題点を解決すべく、新規な結晶核剤について鋭意検討を行った結果、マンニット類がポリエステルの結晶化速度の向上に有効であることを見いだした。すなわち、ポリエステルにマンニット類を配合してなるポリエステル樹脂組成物は、結晶化速度が早く成形性に優れることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリエステル(a)に、下記一般式(1)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基もしくはアシル基を示す。)
で表わされるマンニット類を配合してなるポリエステル樹脂組成物である。
【0012】
前記ポリエステル(a)が、脂肪族ポリエステルであることは、生分解性が向上する点で好ましい。
【0013】
また本発明の他の発明は、前記ポリエステル樹脂組成物を成形してなるフィルムである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリエステル(a)としては特に制限はなく、例を挙げれば、エチレングリコールや1,4−ブタンジオール等のジオールとテレフタル酸との重縮合により得られるポリエステルである、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;
エチレングリコールや1,4−ブタンジオール等のジオールと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステルである、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル;
ヒドロキシカルボン酸のポリエステルである、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明のポリエステル(a)は、ポリエステル樹脂組成物に用いられるものであって、その具体的製造方法には特に制限はないが、脂肪族ポリエステルについて、例えば以下の製造方法がある。
【0016】
(i)多塩基酸(あるいはそのエステル)とグリコールを重縮合する方法
(ii)ヒドロキシカルボン酸(あるいはそのエステル)を重縮合する方法
(iii)環状酸無水物と環状エーテルを開環重合する方法
(iv)環状エステルを開環重合する方法
このような脂肪族ポリエステル(a)を得る方法のなかで比較的短い時間で工業的に効率よく製造できる方法として、(iii)の環状酸無水物と環状エーテルとの開環重合を含む工程を有する方法が好ましい。以下、環状酸無水物と環状エーテルの開環重合についてさらに詳しく説明する。
【0017】
(iii)の方法で用いられる環状酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0018】
これらのうちで、得られるポリエステルの融点、生分解性、経済性を考慮すると無水コハク酸とエチレンオキシドの組合せが好ましい。
【0019】
環状酸無水物に対し、重合触媒の存在下に、環状エーテルを逐次的に添加することによって、実質的に酸無水物と環状エーテルが交互に開環共重合したポリエステルを短時間で製造することができる。
【0020】
本発明に用いられるマンニット類としては、前記一般式(1)で示される化合物であれば特に限定されず、マンニトールや、マンニトールの6個の水酸基のうちのいくつかがアルキル基でエーテル化もしくはアシル基で置換された化合物などが挙げられる。なお本発明に用いられるマンニット類は、D体、L体、DL体のいずれでもよい。
【0021】
マンニット類は、食品添加物に用いられている化合物であり、微生物分解性が良好であるため、他の結晶核剤に比べ、ポリエステル樹脂組成物の生分解性の向上の効果も有する。さらに、ポリエステル(a)として、生分解性を有するポリエステル、例えば無水コハク酸とエチレンオキシドの開環共重合によって得られるポリエチレンサクシネート等を用いる場合、ポリエステル樹脂組成物の生分解性の向上の点で好ましい。
【0022】
前記マンニット類の配合量は、ポリエステル(a)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。0.01重量部より少ないと結晶核剤としての効果が十分ではなく、また10重量部より多いと経済的に不利である。
【0023】
ポリエステル(a)にマンニット類を配合する方法については特に制限はなく、例えば、二軸押出機中で、ポリエステルとマンニット類を溶融混練する方法や、適当な溶媒に溶解させて混合する方法などがある。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、前記の従来公知の結晶核剤をさらに配合してもよい。また必要に応じて他の成分、例えば顔料、染料、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、他の重合体等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルム成形する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、インフレーション成形やTダイ法等があげられる。
【0026】
なお、本発明におけるフィルムは、その厚みについては特に限定されず、一般的に言われる厚さ0.25mm未満のフィルムおよび厚さ0.25mm以上のシートを含むものである。
【0027】
ポリエステルの結晶化速度は、DSC測定による徐冷結晶化課程での発熱ピークの半値幅より求められる。すなわち、3℃/分の冷却速度で測定した発熱ピークの半値幅が狭いほど、結晶化速度は早いということができる。
【0028】
このDSC測定は、市販の装置、例えばセイコー電子工業社製のSSC5200型等を用いて常法により測定することができる。例えば、窒素雰囲気中で試料約20mgを、ポリエステルの融点以上に加熱して完全に溶融させた後、所定の速度で冷却し、結晶化に伴う発熱ピークを記録することによって行われる。
【0029】
脂肪族ポリエステルについて、このようにしてDSC測定を行うと、3℃/分の冷却速度では結晶化に基づく発熱ピークが10〜200℃の範囲に現れる。しかし、この発熱ピークは、極めて幅広くなるのが普通で、結晶核剤を添加しない場合、通常はそのピークの半値巾は25℃程度であり、このような徐冷結晶化に基づく発熱ピークの半値巾の広い脂肪族ポリエステルは結晶化が遅く、良好な成型品を得ることができない。
【0030】
また従来の結晶核剤では、結晶化速度の向上が不十分であったり、成型品の外観の悪化が見られるといった問題がある。
【0031】
これに対して、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、DSC測定の冷却過程における結晶化に基づく発熱ピークは、3℃/分の冷却速度で高温度側に移行してくるとともに半値巾が、15℃以下の極めて狭い鋭角の発熱ピークとなっている。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。例中の部は特に断りがない限り重量部を示す。
【0033】
ポリエステル樹脂組成物の融点、結晶化温度および発熱ピークの半値幅の測定は、DSC(セイコー電子工業社製 SSC5200型)を用い、窒素雰囲気中で、ポリエステル樹脂組成物約20mgを、融点以上に加熱して完全に溶融させてから、−50℃に急冷した後、6℃/分の速度で昇温し、この時の吸熱ピークを測定することにより融点を求め、さらに引き続き、3℃/分の速度で冷却し、結晶化に伴う発熱ピークを記録することにより、結晶化温度および半値巾を求めた。
【0034】
ポリエステルの数平均分子量は、GPCで求めたポリスチレン換算の分子量である。
【0035】
参考例1(ポリエステルの合成)
オートクレーブに、無水コハク酸500.0部およびオクチル酸ジルコニール4.9部を加え、窒素置換を行った。次いで撹拌下にオートクレーブを徐々に130℃まで昇温して無水コハク酸を溶融し、同温度でオートクレーブ内の圧力を4.0〜8.5kgf/cm2 に維持しながら、酸化エチレン231.1部を1時間あたり58部の添加速度で4時間にわたって連続的に導入した。酸化エチレン導入後130℃で1時間熟成反応を行ってから系を常温にもどすことにより、数平均分子量1.3万、DSCによる融点101.2℃の重合生成物を得た。
【0036】
得られた重合生成物70.0部をセルフクリーニング型2軸混練機((株)栗本鉄工所製S1KRCリアクター、内径25mm、L/D=10.2)で窒素気流中、1〜2mmHgの減圧下、100rpm、ジャケット温度240℃の条件で4時間反応させることにより、数平均分子量6.3万のポリエステル(1)を合成した。
【0037】
実施例1
参考例1で合成したポリエステル(1)100部に、D−マンニトール1部を2軸混練機を用いて170℃で5分間混練し、ポリエステル樹脂組成物(2)を得た。
【0038】
DSC測定により求めた、ポリエステル樹脂組成物(2)の融点、結晶化温度、半値巾はそれぞれ、101.4℃、71.7℃、10.6℃であった。
【0039】
得られたポリエステル樹脂組成物(2)を、110℃で溶融、インフレーション成形した。成形時に、まきとりロールへの融着やフィルムどうしのブロッキング等もなく、良好なフィルムを得ることができた。
【0040】
得られたフィルムを、土壌を仕込んだプランター中に埋設し、100日後取り出したところ、フィルムがぼろぼろになっており、また重量減少が見られ、生分解性が認められた。
【0041】
比較例1
参考例1で合成したポリエステル(1)のDSC測定により求めた融点、結晶化温度、半値巾はそれぞれ、101.1℃、33.6℃、24.3℃であり、結晶化速度が遅く、インフレーション成形できなかった。
【0042】
比較例2
参考例1で合成したポリエステル(1)100部に、シュウ酸カルシウム1部を2軸混練機を用いて170℃で5分間混練し、ポリエステル樹脂組成物(3)を得た。
【0043】
DSC測定により求めた、ポリエステル樹脂組成物(3)の融点、結晶化温度、半値巾はそれぞれ、100.2℃、56.1℃、21.2℃であった。
【0044】
得られたポリエステル樹脂組成物(3)は結晶化速度が遅く、フィルム成形できなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、結晶化速度が速く成形性に優れており、インフレーション成形やTダイ成形によるフィルム成形時に、良好に製膜され、まきとりロールへの融着、フィルムどうしの融着、ブロッキングなどの問題も起こらず簡便に成形加工することができる。
【0046】
また本発明のフィルムは、樹脂の機械的強度の低下や外観の悪化等の問題が生じない。さらにポリエステル(a)に脂肪族ポリエステルを用いたフィルムは、生分解性に優れ、使い捨ての包装材料や日用雑貨品に好適に使用できる。
【0047】
本発明の樹脂組成物及びフィルムは、いずれも成形体、繊維、包装材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポリエステル樹脂組成物(2)のDSCのチャート図である。発熱ピークの半値幅の測定のための解析結果もあわせて示した。
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