JP3578908B2 - アルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物、アルミニウム材ろう付け用ペースト及びアルミニウム材 - Google Patents

アルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物、アルミニウム材ろう付け用ペースト及びアルミニウム材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金から成る材料、即ち、アルミニウム材のろう付け(ブレージング)用ペーストに用いる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたろう付け用ペースト及び、該ペーストから成る被膜により被覆されたアルミニウム材に関する。更に詳しくは、自動車及び各種産業用アルミニウム合金製エバポレーター、コンデンサー、ラジエター等の熱交換器等を接合組立する際等のろう付けに適するろう付け用ペースト、該ペーストに用いられる樹脂組成物及び、ペーストから成る被膜により被覆されたアルミニウム材に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金製熱交換器の組立製造は、一般に、下記のように行われる。即ち、押出形成された多穴管から成るチューブに対し、ろう(ろう材)を母材にクラッドしたブレージングシートが使用されて、フィンがろう付けされている。
【0003】
しかし、近年では、熱交換器の小型化、軽量化のために、特開平9−85483号公報に示すように、薄肉化に限界があるろう材を母材にクラッドしたクラッドフィンをベアフィンに置き換えて、薄肉化し、チューブ外面に、ろう材粉末と樹脂組成物等から成るろう付け用ペーストを塗布することにより、チューブ外面に、ろう材粉末と樹脂組成物から成る被膜を形成して、チューブとフィンをろう付けすることが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記樹脂組成物としては、従来、多数の高分子化合物が提案されている。しかしながら、これら高分子化合物は、何れも、有機溶剤に対して可溶であった。
そのため、熱交換器の製造工程において、何らかの原因で、有機溶剤が上記被膜に付着した際には、高分子化合物が溶出して、被膜、即ち、ろう材粉末がチューブから剥離し易かった。このため、ろう付け性が悪く、フィンをチューブに良好にろう付けできないとの問題があった。
【0005】
本発明者は、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物として、エネルギー線照射で硬化可能な特定の樹脂組成物を用いることで、有機溶媒を使用せずに、ろう付け用ペーストを塗布できることを見い出し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のアルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物の特徴とするところは、多官能化合物(A1)を成分とする光硬化性化合物(A)を含有し、多官能化合物(A1)が、エネルギー線で硬化可能な官能基(a)を1分子中に2個以上有する点にある。
尚、光硬化性化合物(A)が、官能基(a)を1分子中に1個有する単官能化合物(A2)を含有することもある。
又、エネルギー線が紫外線、可視光線、又は赤外線とされ、光硬化性化合物(A)が光重合開始剤(B)を含有することもある。
更に、官能基(a)がエチレン性不飽和基であることもある。
又、官能基(a)が(メタ)アクロイル基であることもある。
更に、本発明のアルミニウム材ろう付け用ペーストの特徴とするところは、▲1▼上記樹脂組成物と、ろう材粉末、又は、▲2▼上記樹脂組成物と、ろう材粉末と、フラックスを含有する点にある。
又、本発明のアルミニウム材の特徴とするところは、上記ペーストから成る被膜により被覆され、被膜1m当たりの重量が5〜200gとされた点にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアルミニウム材ろう付け用ペーストは、樹脂組成物とろう材粉末を含有し、必要に応じて、更に、フラックスを含有する。
【0008】
ペースト中の樹脂組成物の配合量は、ろう材粉末やフラックスの粉末100重量部に対して、通常2〜200重量部、好ましくは、5〜100重量部とされる。樹脂組成物は光硬化性化合物(A)を含有する。
【0009】
光硬化性化合物(A)は、▲1▼1分子中に2個以上の官能基(a)を有する多官能化合物(A1)のみが成分とされて、該多官能化合物(A1)単独により構成される場合と、▲2▼多官能化合物(A1)と、1分子中に1個の官能基(a)を有する単官能化合物(A2)を成分として、両者により構成される場合がある。光硬化性化合物(A)中の多官能化合物(A1)と単官能化合物(A2)のモル比は、通常、(0.1〜100):(99.9〜0)とされ、耐溶剤性の点から、好ましくは、(1〜100):(99〜0)とされる。光硬化性化合物(A)は、多官能化合物(A1)を成分とするエネルギー線硬化性化合物であれば、特に、限定されない。
【0010】
官能基(a)としては、エネルギー線の照射により、硬化可能なものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和基、エポキシ基が挙げられ、この内、好ましいのは、エチレン性不飽和基である。エチレン性不飽和基としては、アルケニル基[例えば、アリル基、プロペニル基等]、(メタ)アクロイル基等が挙げられ、この内、特に好ましいのは、(メタ)アクロイル基である。
【0011】
多官能化合物(A1)の具体的な例としては、(1)多官能アルケニルエーテル化合物と、(2)多官能(メタ)アクロイル基含有化合物等が挙げられる。
上記(1)多官能アルケニルエーテル化合物としては、▲1▼多官能ビニルエーテル[例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロピレングリコールジビニルエーテル、1,3−プロピレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のジビニルエーテル、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド付加物のジビニルエーテル;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル];▲2▼多官能プロペニルエーテル[例えば、エチレングリコールジプロペニルエーテル、1,2−プロピレングリコールジプロペニルエーテル、1,3−プロピレングリコールジプロペニルエーテル、ジエチレングリコールジプロペニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジプロペニルエーテル、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のジプロペニルエーテル、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド付加物のジプロペニルエーテル;トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラプロペニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサプロペニルエーテル、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリプロペニルエーテル、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラプロペニルエーテル、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサプロペニルエーテル等]が挙げられる。尚、上記化合物は単独で使用してもよく、又、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記(2)多官能(メタ)アクロイル基含有化合物としては、▲1▼アクリル酸エステル[例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のジアクリレート、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド付加物のジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート];▲2▼メタクリル酸エステル[例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のジメタクリレート、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド付加物のジメタクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート]が挙げられる。尚、上記化合物は単独で使用してもよく、又、2種以上を併用してもよい。
【0013】
単官能化合物(A2)としては、(1)アルケニル基含有化合物と、(メタ)アクロイル基含有化合物等が挙げられる。
上記(1)アルケニル基含有化合物としては、例えば、▲1▼オレフィン[例えば、炭素数2〜20のα−オレフィン等]、▲2▼共役ジエン[例えば、ブタジエン、イソプレン等]、▲3▼アルケニル芳香族[例えば、スチレン、α−メチルスチレン等]、▲4▼アルケニルエステル[例えば、酢酸ビニル等]、▲5▼アルケニルアルコール基[例えば、アリルアルコール、プロペニルアルコール、アリルアルコール等]、▲6▼アルケニルエーテル[例えば、アリルアルコールのエチレンオキサイド1〜20モル付加物、プロペニルアルコールのエチレンオキサイド1〜20モル付加物等]、▲7▼アルケニルピリジン[例えば、N−ビニルピリジン等]、▲8▼アルケニルラクタム[例えば、N−ビニルピロリドン、3−メチル−N−ビニルピロリドン等]、▲9▼アルケニルイミダゾール[例えば、N−イミダゾール、2−メチル−2−イミダゾール等]が挙げられる。尚、上記化合物は単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0014】
上記(2)(メタ)アクロイル基含有化合物としては、▲1▼(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、炭素数2〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、エチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等)等]、▲2▼ポリアルキレングリコールノモ(メタ)アクリレート[例えば、付加モル数1〜20のエチレングリコールモノメタクリレート、付加モル数1〜20のプロピレングリコールモノメタクリレート]、▲3▼(メタ)アクリル酸、▲4▼(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。尚、上記化合物は単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0015】
官能基(a)を硬化させるエネルギー線の種類には特に限定はなく、赤外線、可視光線、紫外線及び、電子線等が挙げられ、この内、好ましいのは、紫外線、可視光線、赤外線であり、特に好ましいのは、紫外線である。紫外線の照射装置としては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。エネルギー線として、赤外線、可視光線又は紫外線を使用する場合には、光重合開始剤(B)が必要となる。尚、電子線を使用する場合には、光重合開始剤(B)は不要である。
【0016】
光重合開始剤(B)の使用量については、特に限定はないが、好ましくは、樹脂組成物の合計重量に基づいて、通常、0.01〜30重量%、好ましくは、0.5〜10重量%である。光重合開始剤(B)の使用量が0.01重量%未満では、十分な重合効果が得られない場合があり、又、30重量%を超えても、重合速度が向上せず、不経済である。
光重合開始剤(B)としては、特に限定はなく、例えば、(1)光カチオン開始剤、(2)光ラジカル開始剤、(3)光レドックス開始剤等が挙げられる。
上記(1)光カチオン開始剤としては、例えば、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロンチモネート、トリフェニルスルフォニウムホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記(2)光ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記(3)光レドックス開始剤としては、例えば、ナフタレンとジシアノベンゼンとの併用物が挙げられる。
【0017】
本発明のろう付け用ペーストを構成する、ろう材粉末には、▲1▼単独でろう材として使用可能な金属や、▲2▼アルミニウム材の表面と反応し、低融点合金層を形成して、ろう材として寄与する金属等が使用されるが、通常、各種アルミニウム合金が使用される。このアルミニウム合金には、珪素(元素)を通常よりも多量、即ち、10〜50wt%(重量%)含有するものが望ましい。それは、ろう材粉末として、通常よりも多量の珪素を含有するアルミニウム合金を使用すれば、ろう付けされるアルミニウム材(被作業材、被ろう付け材)に塗布するろう材粉末を低減でき、本発明の効果を十分に発揮できるからである。尚、ろう材粉末を、珪素を含有するアルミニウム合金とせずに、珪素粉単体とする場合もある。
【0018】
ろう材粉末には、耐食性改善等の目的で、珪素以外の亜鉛、鉄、銅、マンガン、スズ、インジウム等の元素を、ろう付け性に悪影響を与えない量の範囲で、添加してもよい。例えば、亜鉛は40wt%程度まで添加しても、ろう付け性に悪影響を与える等の問題はない。
【0019】
ろう材粉末の粒径は5〜100μm程度が望ましい。ろう材粉末の粒径が下限の5μm以下であると、ろう材粉末の製造コストが高くつくと共に、ろう材粉末に酸化被膜が形成され易くなり、ろう付け性が阻害される。又、ろう材粉末の粒径が上限の100μm以上になると、製造工程中で、ろう材粉末がアルミニウム材上に留まらずに、樹脂組成物と共に落下し易くなり、アルミニウム材上にろう材粉末を所定量付着させることが困難となる。
【0020】
ろう付け用ペースト中のろう材粉末(ろう材)の濃度は、ろう材粉末中の珪素の割合により変わるが、例えば、ろう材粉末として、Al−25%Siを用いる場合には、ペースト中のろう材粉末の濃度は、10〜80重量%、好ましくは、20〜60重量%である。ろう材粉末の濃度が10重量%未満であると、アルミニウム材上に形成したペーストから成る被膜中に、十分な量のろう材を混入できず、ろう付け性が悪化する。又、ろう材粉末の濃度が80重量%を超えると、ペーストの分散性や流動性が不足し、その結果、ペーストの塗装性が低下する。
【0021】
アルミニウム材のろう付け時において、アルミニウム材に対するフラックス塗布工程を省略する場合には、ろう付け用ペーストにフラックスが添加される場合がある。フラックスは、アルミニウム材の表面に形成される酸化被膜を還元して、除去せしめ、アルミニウム材とろう材粉末(ろう材)との共晶合金の形成を促進するもので、フッ化物系やセシウム系のフラックスであれば、従来公知の如何なるものも使用でき、より具体的には、KF−AlF、KAlF、KAlF、KAlF、RbF−AlFを挙げることができる。尚、フラックス粉末が空気中の水分により凝集すると、樹脂組成物中に均一に分散しにくくなるので、ペーストの製造工程では、フラックス粉末の凝集に常に注意する必要がある。
【0022】
ろう付け用ペースト中のフラックスの濃度は、好ましくは、5〜15重量%である。フラックスの濃度が5%未満であると、アルミニウム材上に形成したペーストから成る被膜中に、十分な量のフラックスを混入できず、ろう付け性が悪化する。又、フラックスの濃度が15重量%を超えると、フラックスがペースト中に分散しにくくなり、ペーストの塗装性が低下する。
【0023】
本発明のろう付け用ペーストや樹脂組成物に付与する各機能に応じて、ペーストや樹脂組成物に以下のものを添加してもよい。例えば、ろう付け用ペーストに平滑性を付与する場合には、ペーストや樹脂組成物に、低分子潤滑剤(メチルピロリドン、イソプロピルアルコール等)、高分子潤滑剤(ポリアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、、ポリアルキルメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、コロイダルシリカ等)、増粘剤(エアロゾル等)等を添加してもよい。
【0024】
更に、ろう付け用ペーストに、塗布時の均一塗布性を付与する場合には、ペーストや樹脂組成物に、レベリング剤として、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル等のアニオン活性剤、アルキルアミン塩等のカチオン活性剤、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン等の両性活性剤)を添加してもよい。
【0025】
又、ろう付け用ペーストや樹脂組成物に、防菌性や防かび性を付与する場合には、ペーストや樹脂組成物に、防菌剤(例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等)や、防かび剤[2−チアゾール−4−(メチルスルホニル)ピリジン等]を添加してもよい。
【0026】
更に、本発明の樹脂組成物の硬化速度を速めることで、ろう付けの作業性を向上させる場合には、ペーストや樹脂組成物に、増感剤[例えば、ベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物;ニトロベンゼン、2−ニトロフルオレン等のニトロ化合物;アントラセン、クリセリン等の芳香族化合物;ジフェニルジスルフィド等の硫化化合物等]を添加してもよい。
【0027】
ろう付け用ペーストの塗布方法には、特に限定はなく、例えば、刷毛塗布、スプレー塗布、ロールコーター塗布、浸積塗布等が挙げられる。
【0028】
本発明のろう付け用ペーストを使用して、ろう付けされるアルミニウム材、即ち、アルミニウム合金の材質は、ろう付けが行え、且つ、このアルミニウム合金により構成される製品や部品に要求される機能、用途及び目的等に適合するものであればよい。例えば、押出しチューブの場合には、チューブを構成するアルミニウム合金の材質を、押出し性が良好なものとすればよく、又、熱交換器の場合には、熱交換器を構成するアルミニウム合金の材質を、耐食性等が良好なものとすればよい。
【0029】
又、アルミニウム材に、ろう付け用ペーストの塗布により、ペーストから成る被膜を形成した際に、アルミニウム材に対する被膜の付着性や密着性を良好にし、被膜の厚さを均一にして、被膜の剥離や被膜の厚さの不均一(ばらつき)によるろう付け後の局部的な未着部(ろう付けされていない部分)の発生を防止するためには、アルミニウム材の表面が10〜60μm程度の凹凸を有することが望ましい。
【0030】
更に、上記のように、アルミニウム材上に、ろう付け用ペーストから成る被膜を形成した際において、被膜1m当たりの重量は、通常、5〜200g、好ましくは、10〜100gである。
【0031】
上記被膜中に必要とされるろう材粉末量(ろう材量)は、ろう材粉末中の珪素の割合によって変わるが、例えば、ろう材粉末として、Al−25%Siを使用した場合は、被膜1m当たりのろう材粉末量は15g以上が好ましく、又、ろう材粉末として、Si単体を使用した場合には、被膜1m当たりのろう材粉末量は4g以上が好ましい。
更に、被膜1m当たりのろう材粉末量は100g以下であることが好ましい。
【0032】
本発明のろう付け用ペーストにフラックスを含有させた場合には、上記被膜1m当たりのフラックス量は5g以上で、20g以下であることが好ましい。
【0033】
【実施例】
次に、本発明の実施例を、比較例と比較しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
JISA1050で規定されるアルミニウム製円筒状ビレットを、多穴偏平管(高さ1.8mm、幅16mm、19孔)に押出形成した後、表面にブラスト処理を施して、チューブを得た。
又、下記の[樹脂組成物の構成化合物]の内から、多官能化合物(A1)として、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)を、又、光重合開始剤(B)として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(B−1)を、それぞれ、選択した。そして、これらを、下記の表1の実施例1の欄の「樹脂組成物の組成」の項目に記載の重量比(配合比)に従って、配合して、本発明の樹脂組成物を調製し、これと、ろう材粉末である平均粒径40μmのAl−25%Si合金粉末を、表1の実施例1の欄の「ペーストの重量比」の項目に記載の重量比に従って、配合し、ろう付け用ペーストを製造した。尚、ペースト中のアルミニウム合金粉末と樹脂組成物の重量比は80:20で、ペーストには、フラックスやその他の添加剤を添加しなかった。
このペーストを上記チューブに塗布した後、ペーストに紫外線を1000mJ/cm の強度で10秒間照射して、チューブ上に、合金粉末と樹脂組成物からなる被膜を形成した。尚、被膜1m当たりの合金粉末の重量は25g、樹脂組成物の重量は10gであった。
【0035】
<実施例2〜6>
下記の[樹脂組成物の構成化合物]の内から、単官能化合物(A2)として、イソブチルメタクリレート(IBM)、又は、n−ブチルメタクリレート(NBM)を選択し、これらと、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(B−1)を、表1の実施例2〜6の欄の「樹脂組成物の組成」の項目に記載の重量比に従って、配合して、本発明の樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同一条件の処理を行い、実施例2〜6のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された実施例2〜6のチューブを得た。
【0036】
<実施例7>
表1の実施例7の欄に示すように、ろう付け用ペーストに対して、添加剤であるアエロジルを0.2%添加した以外は、実施例3と同一条件の処理を行い、実施例7のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された実施例7のチューブを得た。
【0037】
<実施例8>
表1の実施例8の欄に示すように、ろう付け用ペーストに、添加剤として、フッ化物系のフラックスを添加し、ペースト中における、合金粉末:樹脂組成物:フラックスの重量比を、70:20:10とした以外は、実施例3と同一条件の処理を行い、実施例8のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された実施例8のチューブを得た。尚、被膜1m当たりの合金粉末の重量は30g、樹脂組成物の重量は10g、フラックスの重量は7gであった。
【0038】
<比較例1>
表1の比較例1の欄に示すように、樹脂組成物の構成化合物として、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)の代わりに、イソブチルメタクリレート(IBM)を使用した以外は、実施例1と同一条件の処理を行い、比較例1のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された比較例1のチューブを得た。
【0039】
<比較例2>
表1の比較例2の欄に示すように、樹脂組成物の構成化合物に関し、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)及びイソブチルメタクリレート(IBM)の併用を、イソブチルメタクリレート(IBM)の単独使用に代えた以外は、実施例8と同一条件の処理を行い、比較例2のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された比較例2のチューブを得た。
【0040】
<比較例3>
表1の比較例3の欄に示すように、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)に代えて、下記の[樹脂組成物の構成化合物]の内から、既に高分子量化されたポリメタクリレート(C−1)を選択すると共に、ろう付け用ペーストに、添加剤として、有機溶剤であるトルエンを添加した以外は、実施例1と同一条件の処理を行い、比較例3のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された比較例3のチューブを得た。
【0041】
<比較例4>
表1の比較例4の欄に示すように、樹脂組成物の構成化合物として、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(B−1)の代わりに、ポリメタクリレート(C−1)を使用すると共に、ろう付け用ペーストに、添加剤として、有機溶剤であるトルエンを添加し、紫外線照射の代わりに、加熱乾燥処理(150℃×10秒)を行った以外は、実施例1と同一条件の処理を行い、比較例4のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された比較例4のチューブを得た。
【0042】
<比較例5>
表1の比較例5の欄に示すように、樹脂組成物の構成化合物として、トリエチレングリコールジメタクリレート(DM)及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(B−1)の代わりに、ポリメタクリレート(C−1)を使用した以外は、実施例1と同一条件の処理を行い、比較例5のろう付け用ペーストと、該ペーストの被膜が形成された比較例5のチューブを得た。
【0043】
次に、上記各実施例と比較例のろう付け用ペースト及びチューブについて、下記に示すように、ろう付け性、耐溶剤性の各試験を行った。結果を表1に示す。
【0044】
<試験方法>
(1)ろう付け性
チューブを60mmに切り出した。次に、波形(コルゲート)加工された板厚0.07mmのAl−0.5%Si−1%Fe−0.5%Ni−2%Zn合金製フィンの20波分(尚、1波は、山と谷から成る)と、上記切り出されたチューブを組み合わせて、ミニコアを作成した。
このコアにフッ化物系のフラックスを塗布した後(尚、実施例8と比較例2では、フラックスの塗布は省略した。)、窒素雰囲気下で、コアを、600℃の温度で3分間加熱して、チューブ上における、ろう付け用ペーストから成る被膜から樹脂組成物を揮発させ、フィンとチューブを20箇所(即ち、フィンにおける、各波のチューブ側に突出する山部分)でろう付けした。
次に、上記20箇所全部のろう付け部分で、チューブからフィンを剥離させて、20箇所のろう付け部分の内、完全に接合(ろう付け)されている箇所の数を数え、{(完全に接合(ろう付け)されている箇所数)/20}×100を、フィン接合率として、ろう付け性を評価した。フィン接合率が95%以上のものを○、フィン接合率が95%未満を×とした。
【0045】
(2)耐溶剤性
チューブを温度30℃のトルエン中に1分間浸積する「浸積試験」を行って、チューブ上の被膜の溶出状況を観察した後、チューブをトルエン中から取り出し、チューブ表面にトルエンが残存する状態で、チューブをガーゼにより擦る「剥離試験」を行って、被膜の剥離状況を観察した。そして、剥離試験後でも被膜の剥離が認められないものを◎、浸積試験では被膜が溶出しないが剥離試験では被膜が一部剥離するものを○、浸積試験で被膜が一部溶出するものを△、浸積試験で被膜が完全に溶出するものを×とした。
【0046】
[樹脂組成物の構成化合物]
DM :トリエチレングリコールジメタクリレート
(三洋化成工業株式会社製;ネオマーPM−201)
IBM:イソブチルメタクリレート
NBM:n−ブチルメタクリレート
B−1:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
(チバガイギー製;ダロキュアー1173)
C−1:ポリアルキルメタクリレート(三洋化成工業株式会社製;CB−1)
【0047】
【表1】
Figure 0003578908
【0048】
表1から明らかなように、実施例1〜8では、全ての試験結果が良好であるが、比較例1〜4では、耐溶剤性が悪いことが分かる。又、比較例5では、ろう付け性と耐溶剤性の何れの試験結果も悪いことが分かる。
【0049】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ろう付け性を阻害することなく、耐溶剤性を向上でき、これにより、熱交換器メーカーの製造時における、ろう付け用ペーストの取り扱いを極めて容易化でき、産業上顕著な効果を奏することができる。

Claims (7)

  1. 多官能化合物(A1)を成分とする光硬化性化合物(A)を含有し、
    多官能化合物(A1)が、エネルギー線で硬化可能な官能基(a)を1分子中に2個以上有するアルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物。
  2. 光硬化性化合物(A)が、官能基(a)を1分子中に1個有する単官能化合物(A2)を含有する請求項1記載のアルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物。
  3. エネルギー線が紫外線、可視光線、又は赤外線とされ、
    光硬化性化合物(A)が光重合開始剤(B)を含有する請求項1又は2記載のアルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物。
  4. 官能基(a)がエチレン性不飽和基である請求項1〜3の何れかに記載のアルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物。
  5. 官能基(a)が(メタ)アクロイル基である請求項1〜4の何れかに記載のアルミニウム材ろう付け用ペーストに用いる樹脂組成物。
  6. ▲1▼請求項1〜5の何れかに記載の樹脂組成物と、ろう材粉末
    、又は、
    ▲2▼請求項1〜5の何れかに記載の樹脂組成物と、ろう材粉末と、フラックスを含有するアルミニウム材ろう付け用ペースト。
  7. 請求項6記載のペーストから成る被膜により被覆され、
    被膜1m当たりの重量が5〜200gとされたアルミニウム材。
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